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ELISAの アッセイ・バリデーション Performance改善 群馬大学名誉教授 群馬大学名誉教授 株式会社シバヤギ技術顧問 1

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ELISAの

アッセイ・バリデーション

Performanceの改善改善

群馬大学名誉教授群馬大学名誉教授

株式会社シバヤギ技術顧問

若 林 克 己若 林 克 己

1

Page 2: ELISAの アッセイ・バリデーション とCV% 2.48 1.29 0.61 0.28 0.15 0.09 0.07 0.06 Absorbance of each Std point ELISAでは標準品または検体を加える過程にのみピペットのバラ

アッセイ・バリデーション

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内 容1 ELISAの原理と標準曲線1.ELISAの原理と標準曲線2.ELISAにおける試薬,標準液,試料の量的バラツキの影響と

吸光度,測定値のバラツキ実例検証3 固相化(キャプチャー)抗体への抗原の結合を解析する3.固相化(キャプチャ )抗体への抗原の結合を解析する4.誤差(error)の種類5. ELISAでの偶然誤差:バラツキの生じる要因6.国際協調会議で実施項目とされている分析能パラメータ6.国際協調会議で実施項目とされている分析能 ラメ タ

(アッセイ・バリデーション)7. Assay system の吟味-Assay validationの実際

7-1:検量線(標準曲線)7-2:偶然誤差に関連するパラメータ

8.系統誤差:偏りについて-なぜ偏った測定値が出るのか.9.真度(正確度,accuracy) 測定対象物質の量が正確に測定値として

得られるか?9-1:抗体とアッセイ系の特異性(Specificity)9-2:希釈試験(Dilution linearity test, 特に血液成分の影響の有無)

加 収試験9-3:添加回収試験(Recovery test, Spike recovery)9-4:他のアッセイ系との相関性試験

10.測定試料の安定性11 精度管理

3

11.精度管理

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●非競合的測定(代表としてELISA)では出来るだけ大量のELISA)では出来るだけ大量の抗体を固相化し、低濃度での結合率の低下防止を意図しているる。

●また結合抗原を検出するための抗体を標識(ELISAでは酵の抗体を標識(ELISAでは酵素)する。

●サンドイッチ結合は抗原を二結 抗原をか所で認識することになるので測定の特異性が優れている。 4

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ELISA の検量線 -縦、横軸共ノーマルスケールの場合-

測定範囲が広いので、標準点が通常「等比級数的」に設定されるため低濃度領域が読みにくくなり、方眼紙を使って肉眼的に読み取ることは困難である。

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ELISA の検量線 -縦軸ノーマルスケール横軸対数スケールの場合-

標準点は横軸では等間隔で並ぶが低濃度領域では縦座標の間隔が狭く、やはりマニュアル計算は困難である。

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ELISA の検量線 -縦、横軸共に対数スケールの場合-

両対数方眼紙を用いると標準点は縦 横 共にほぼ等間隔に並び両対数方眼紙を用いると標準点は縦、横、共にほぼ等間隔に並びマニュアル計算が可能となる。 パソコンなどを使った回帰計算もよくフィットするようになる。

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おける試薬 標準液 試料2.ELISAにおける試薬,標準液,試料の量的バラツキの影響

及び及び吸光度,測定値のバラツキ実例検証

試薬,標準液,試料の量的バラツキの影響

要因 添加状況 量的バラツキの影響

固相化抗体 過剰に固相化 少ない固相化抗体 過剰に固相化 少な

標準液,試料 ピペットで添加 そのまま測定値に影響

標識(酵素,ビオチン)抗体 過剰に添加 少ない

酵素標識アビジン 過剰に添加 少ない

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ELISA での吸光度の絶対的、相対的バラツキ

●吸光度の絶対的バラ きは吸光度とともに増大するが吸光度に対す●吸光度の絶対的バラつきは吸光度とともに増大するが吸光度に対する相対的バラつきは逆に減少する。しかし相対的バラツキの範囲はそれほど大きくならず、せいぜい2倍程度である。

SD and CV of Absorbance (10Replicates assay)

0 035

0.04 3

0.025

0.03

0.035

bance 2

2.5

0.015

0.02

SD

of ab

sorb

1

1.5

CV

, %

SD

0

0.005

0.01

S

0

0.5CV%

0

2.48 1.29 0.61 0.28 0.15 0.09 0.07 0.06Absorbance of each Std point

0

ELISAでは標準品または検体を加える過程にのみピペットのバラELISAでは標準品または検体を加える過程にのみピペットのバラつきが影響する.他の試薬は大過剰に加えるため,ピペッティングの影響は少ない.RIAよりも有利な点である. 11

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ELISA では吸光度のバラつきは測定値にどう反映するかELISA では吸光度のバラつきは測定値にどう反映するか

●吸光度が2%増加したと仮定した場合各標準点での測定値増加率試算 (ラットインスリン S タイプ)

RIA と比べて、ELISAにおける縦軸、すなわち吸光度のバラツキは低濃度領域で

も測定値のバラツキに対する影響ははるかに小さい。しかし標準曲線の中間に比べ 低濃度領域と高濃度領域では大きくなる傾向がある

STD濃度 吸光度 計算値 吸光度2%↑ 計算値 ⊿%

0 1 0 063 0 1004 0 06426 0 1047 4 28

べ、低濃度領域と高濃度領域では大きくなる傾向がある。

0.1 0.063 0.1004 0.06426 0.1047 4.28

0.25 0.105 0.2496 0.1071 0.2572 3.04

0 5 0 199 0 5018 2 034 0 5124 2 110.5 0.199 0.5018 2.034 0.5124 2.11

1 0.426 0.9977 0.4345 1.0159 1.82

2.5 1.173 2.5119 1.1965 2.5612 1.96

5 2.206 4.9683 2.25 5.0902 2.49

10 3.558 10.0479 3.629 10.4286 3.79

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3 固相化(キャプチャー)抗体への抗原の結合を解析する3.固相化(キャプチャ )抗体への抗原の結合を解析する

ELISAではウェルに固相化された抗体が抗原をcaptureする.

固相化された抗体の量は抗原に比べてはるかに多いので,

抗体は効率よく結合される筈である.

取り敢えず 両者が溶液状態で反応するとして計算してみると取り敢えず,両者が溶液状態で反応するとして計算してみると,

抗体の親和性が高い(解離定数Kdが小さい)ほど結合率は

上がる筈である.

そのことを先ずシミュレートし,次いで抗体が固相化された

状態での結合を実際のキットで検討してみよう.

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抗体の親和性は抗原結合量にどう影響するか

抗原結合曲線(抗体1000 M)抗原結合曲線(抗体1000pM)

1000

100

濃度

 pM

Kd= 1

Kd= 3

Kd= 10

10

合抗

原濃 Kd= 30

Kd= 100

Kd= 300

1

5 10 20 40 80 160 320 6401280

結合 Kd= 300

Kd=1000

5 10 20 40 80 160 320 6401280

標準品濃度 pM

Kd大きくなると(親和性が低下すると)標準曲線は右方向に移動し,測定感度はやはり親和性に依存しているように見えるがKd<300pMでは余り移動しない.ELISAではRIAよりも抗体親和性の影響は少ない.

この標準曲線のシミュレーションは抗原と抗体が溶液状態で反応すると仮定しているのだが,実際には抗体は固相化されている.その場合結合はどうなるのだろう? 14

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ELISA では各標準点で実際にどのくらい添加ELISA では各標準点で実際にどのくらい添加

抗原が固相化抗体にキャプチャーされているのだろうか

●或る量の抗原を添加した時,それが実際にどの程度固相化抗体と結合したのかを調べるには,抗体と結合したのかを調 るには,

一定量の標準品を抗体固相化ウェルに反応させた後 反応液を他の抗体固相化ウ ルに移すことによ て後,反応液を他の抗体固相化ウェルに移すことによって「反応し残りの抗原量」を測定すれば判明する.

レビスインスリンキットラットTを用いて試してみた.反応①:通常通り反応反応②: 反応①のBiotin STD 2hr反応後の各STDを反応②: 反応①のBiotin,STD 2hr反応後の各STDを

100μl/wellずつ別のウェル移し、反応させ、その後は通常通りの測定過程を行う。

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検量線

3 0各標準点での抗原の

2.0

2.5

3.0

nm

反応①

反応②

結合量と結合率

1.0

1.5

abs.

450(⊿

620)n

● 高添加量(10ng/ml)での結合率は90%であったが、添加量の減少と共に結

0.0

0.5

0 1 1 10

が、添加量の減少と共に結合率は低下し、 少標準点では約45%、つまり結合率は半分となった。

0.1 1 10

Insulin(ng/ml)

添加量ng/ml 残渣測定値ng/ml 残渣(%) 結合率(%) 結合量ng/ml

10 0.9672 9.7 90.3 9.035 0.8273 16.55 83.45 4.17

2.5 0.588 23.52 76.48 1.9121.25 0.4844 38.75 61.25 0.7656

0.625 0.2868 45.89 54.11 0.33810.3125 0.1444 46.21 53.79 0.16810.156 0.086 55.13 44.87 0.07

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自由抗体と固相化抗体への抗原の結合

溶液中結合と固相化抗体への結合

100

60

80

率 

(%)

0

20

40

結合

Std.7 Std.6 Std.5 Std.4 Std.3 Std.2 Std.1

Standard

結合率(%) 溶液中結合理論値

インスリン測定系の場合 50ng/ml でプラトーに達する事がわかっている.これはインスリンの場合約 10 000pM に相当するこれはインスリンの場合約 10,000pM に相当する.すなわち抗体は10,000pM 程度が固相化されていると考えてよいであろう.溶液中で反応すると仮定し,Kd は1000pMとして計算してみると結合率は赤線のようになる計算してみると結合率は赤線のようになる.この濃度範囲では結合率は抗原濃度が低くても90%以上で一定になる筈であるが,実際には黒線のようにインスリン濃度が下がると結合率は減少する結合率は減少する.

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添加濃度と結合率との関係

●結合率は添加濃度の対数に比例する。(結合効率低下因子1,f1(x))

添加量と結合率 インスリン ラットT

11 231L ( ) 6 81490

100

y = 11.231Ln(x) + 6.814

R2 = 0.9622

60

70

80

90

30

40

50

60

結合

率,

 

10

20

30結

0

10 100 1000

添加濃度, pM

18

添加濃度, pM

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結合抗原あたりの吸光度 すなわち吸光度率も添加抗結合抗原あたりの吸光度、すなわち吸光度率も添加抗原量と同様な関連を示した。(結合効率低下因子2, f2(x) )

添加抗原量と吸光度率

1 2y = 0.1641Ln(x) - 0.0724

R2 = 0.9073

1

1.2

0.6

0.8

吸光

度率

0.2

0.4吸

0

10 100 1000

添加抗原 M添加抗原, pM

19

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従ってELISAでは検量線の吸光度は,Abs. = f1(x) ・f2(x) ・b であらわされることになる.Abs. f1(x) f2(x) b であらわされることになる.

f1(x): 結合効率低下因子1f2(x): 結合効率低下因子2

実際にラットインスリンTキットについて,固相化抗体10000pMと解離定数1000 Mの組み合わせでの添加抗原0 156 10 / l即ち27 1724 Mの範囲1000pMの組み合わせでの添加抗原0.156~10ng/ml即ち27~1724pMの範囲で結合量を計算し,それに結合効率低下因子1と添加抗原量10ng/mlと5ng/mlの吸光率(pMあたりに換算したもの)を乗じ,更に結合効率低下因子2を乗じて計算した標準曲線と実際の標準曲線を重ねて見た。2を乗じて計算した標準曲線と実際の標準曲線を重ねて見た。両曲線は良好な重なりを示した。

シミュレーションと実際

10

0 1

1

Abs

.

Simulated

Observed

0.01

0.1

0.156 0.3125 0.625 1.25 2.5 5 10

標準品濃度,ng/ml20

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4.誤差(error)の種類

1.偶然誤差,確率誤差(accidental error, random error)= variation(変動,バラツキ)⇒ 精密さ(precision),再現性(reproducibility)に関連

2.系統誤差(systematic error)=真の価との隔たり,bias(偏り,バイアス)⇒ 真度,正確さ(accuracy)に関連

両種の誤差による4種類の判定

系統誤差が小さい 系統誤差が大きい

偶然誤差が小さい 精密で,かつ正確 精密であるが不正確

偶然誤差が大きい 正確ではあるが不精密 不精密で かつ不正確偶然誤差が大きい 正確ではあるが不精密 不精密で,かつ不正確

3 ひどい誤り( i ) 有 てはならない誤り3.ひどい誤り(mistake, gross error)= 有ってはならない誤り試薬の取り違え,試薬のcontamination,試薬の変性,希釈倍率の誤り,目盛りの読み違え,操作順の取り違え,測定器の異常,ピペットの故障,計算間違い,etc.

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5.ELISAでの偶然誤差:バラツキの生じる要因

● ウェルプレート温度の不均一, 構造的不均一

● 試料試料の濃度不均一(凍結融解で起こる溶質の不均一分布)試料の希釈の不均一(攪拌不全による溶液中での濃度の偏り)

料 標準 結合 応● 試料・標準品添加と結合反応試料(標準品)のピペッティング(ピペット選択,使用者の手技)温度のバラツキ(エッジ現象),時間的バラツキ(測定者の手技)

● 試料添加後の 初のW hi キ リ オ バ 効果● 試料添加後の 初のWashing :キャリーオーバー効果● その後のWashing :洗浄液残りによる影響● 酵素標識抗体(ビオチン標識抗体)添加と反応

温度のバラツキ 時間的バラツキ温度のバラツキ,時間的バラツキ標識抗体の非特異的吸着-blank値増加,低濃度領域での測定感度悪化とバラツキに関連

● 発色液添加と反応● 発色液添加と反応温度のバラツキ,時間的バラツキ

● 吸光度測定Microplateのwell間の吸光度のバラツキ(ウェル底部の傷 底部の壁の厚さなど)

22

Microplateのwell間の吸光度のバラツキ(ウェル底部の傷,底部の壁の厚さなど)吸光度測定の精度(複数光度計の不均一)

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6.ICH(International Conference of Harmonization, 日,米,EU)で実施項目とされている分析能パラメータで実施項目とされている分析能パラメータ

(医薬審第338号,第14, 15改正日本薬局方参考情報)

1 分析法 (Analytical procedure)1.分析法 (Analytical procedure)2.特異性 (Specificity)

種々の共存物の存在下で分析対象物を正確に測定できるか種 共存物 存在下 分析対象物を 確 測定 きる

3.真度 (Accuracy、Trueness)真の値(認証,合意された)と実測値との一致の程度

精度 ( )4.精度 (Precision)均質な検体から多数回採取した複数の試料の測定値間の一致の程度

4 1 併行精度 (Repeatability)4.1 併行精度 (Repeatability)短時間の間に同一条件下で測定する場合の精度( = intra-assay precision)

4.2 室内再現精度 (Intermediate precision)再現精度 ( p )同一施設内で試験日,実施者,器具,機器等を変えて測定する場合の精度

4.3 室間再現精度 (Reproducibility)異なった施設間で測定する場合の精度

(次ページに続く)

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(前ペ ジに続く)(前ページに続く)

5.検出限界 (Detection Limit)5.検出限界 (Detection Limit)分析対象物の検出可能な 低の量をいう.定量出来る必要は無い

6.定量限界 (Quantitation Limit)6.定量限界 (Quantitation Limit)適切な精度と真度で定量できる分析対象物の 小の量

7.直線性 (Linearlity)直線性 ( y)一定の範囲内で試料中の分析対象物の量と直線関係にある測定値を与える能力

(イムノアッセイの場合には成立しない)

8.範囲 (Range, 測定範囲)

適切な真度,精度,直線性を与える試料等の分析対象物の上限および下限の間隔

健性9.頑健性 (Robustness)少しくらい分析法の条件が変わっても測定値が影響を受けにくい能力

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吟味 実際7. Assay system の吟味-Assay validationの実際(ICHの指定項目順序とは整理の関係上多少入れ替わりがある)

7-1:検量線について

検量線についての偶然誤差と系統誤差検量線の偶然誤差は試料の偶然誤差に上乗せされる検量線の系統誤差は試料の系統誤差に共通するものと共通しないものがある

共通するもの:試薬の要因,ピペットの要因,洗浄の要因,発色の要因など共通しないもの 標準品の純度 標準液の組成など共通しないもの:標準品の純度,標準液の組成など

(★ICHに基づく分析能パラメータ)

検量線の吟味★検出限界(Detection limit)★検出限界(Detection limit)★定量限界(Quantitation limit)プロゾーン★範囲(Range)★範囲(Range)各標準点での相対標準偏差(変動係数)再現性回帰曲線と適合性回帰曲線 適合性

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検量線の評価 (Pharm Res 20: 1885-1900, 2003)

●2重測定の吸光度の乖離が小さいことAとBの平均値に対する|A-B|の1/2つまりrangeの1/2の割合(%)が15%以下

●6濃度以上の標準点で6回の検量線を作ったとき逆回帰濃度(検量線の回帰曲線から計算した各標準点の濃度)について逆回帰濃度(検量線の回帰曲線から計算した各標準点の濃度)について各点の真度(この場合の真度は標準点の逆回帰濃度/名目濃度x100)が80~120(75~125)%であること.全ての標準点での真度(n=6)の平均値が85~115(80~120)%であること.標準点 真度( ) 平均値 ( ) ある

(カッコ内は 小定量限界での数値)

逆回帰濃度の精度(CV)が15%以下であること(n=6).名目濃度:各標準液を作成した時の標準品濃度

●選択性(Selectivity): 低濃度における限界識別能

測定試料(n=6)に 小定量限界濃度の標準品を加えたときの回収率測定試料(n=6)に 小定量限界濃度の標準品を加えたときの回収率評価基準:回収率75%以上 (高濃度試料では無理であろう)

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27

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偶然誤差 関連するパ タ7-2: 偶然誤差に関連するパラメータ

精度( )精度(Precision)

古くは下記の併行精度,つまり intra-assay variation (precision)を指していたを指していた.

○併行精度(Repeatability)

○室内再現精度(Intermediate precision)

古くはReproducibilityと言われていた.

○室間再現精度 (Reproducibility)○室間再現精度 (Reproducibility)

実験施設間の問題であるのでここでは述べない

28

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測定精度と再現性は変動係数(Coefficient of variation, CV), 別称,相対標準偏差(RSD)で表現される.

併行精度(測定精度)( )●併行精度(測定精度)(Repeatability,precision)= Within (Intra-) assay variation

この場合のCVはwithin assay CV (CVw)とか intra-assay CVとよばれる.料ご を 算す試料ごとにCVを計算する場合

1試料の測定数(ウェル数,チューブ数):N (CVの信頼性を上げるにはNを大きくする)測定値の平均値:M, i番目の測定値:Xi

No. A B

1 2466 491

2 2477 470

3 2410 457

4 2434 465

5 2433 459

6 2342 442

7 2358 459

8 2390 495

M 2417 467Mean 2417 467

SD 52.3 17.8

CVw(%) 2.2 3.8 29

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○室内再現精度(Intermediate precision)= Between (Inter-) assay variation

いつ測っても同じ試料を測ると同じ値が出るか?同一の試料を何回かのアッセイで測定した時、それぞれの測定値がどの程度バラつくか(アッセイ間変動)で示される.統計学的には測定精度と同様、変動係数CVBを計算して表現する.

Xi: 各回のアッセイの測定値Xi: 各回のアッセイの測定値M:全体を通しての測定値の平均値N:アッセイの回数毎回のアッセイのreplicate: 3 以上が望ましい毎回のアッセイのreplicate: 3 以上が望ましい.

検体

NDay

1Day

2Day

3Day

4Mean SD CV

(%)No 1 2 3 4 (%)

C 166 156 153 153 157 6.16 3.9

D 628 625 624 624 625 1.89 0.30

E 2505 2409 2427 2549 2473 65.86 2.7

30

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31

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8.系統誤差:偏りについて-なぜ偏った測定値が出るのか.

●標準品に関して純度不良,重量測定の偏り(例えば水分吸収),希釈の偏り,吸着現象,構造上の差異(リコンビナント),など.

●測定試料に関して採取方法(溶血,乳び),保存方法(変性),分解酵素の存在,結合蛋白の存在,測定対象物質の構造多様性,測定に用いる酵素の結合蛋白の存在,測定対象物質の構造多様性,測定に用いる酵素の活性を阻害する物質の添加,標準液とは別ピペットで試料を添加,など.

●抗体に関して抗体が標準品と試料中の測定対象物質を等しく認識しない抗体が標準品と試料中の測定対象物質を等しく認識しない.特異性が不十分で他の物質をも測り込んでしまう.

●測定系,測定法に関して○標準曲線作成系と試料の反応系に乖離が生じている たとえば○標準曲線作成系と試料の反応系に乖離が生じている.たとえば

標準曲線系のウェルが端にあるために起こるエッジ効果(エッジ現象).試料の構成成分による抗原抗体反応の速度,反応平衡への影響,沈降 応 影響沈降反応への影響.

○吸光度測定装置の測定に偏差(例えば光検出器に偏差)がある.○呈色の時間的減衰.○標準曲線回帰式がうまくフィットしていない(真度がずれている).

など.32

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9.真度(正確度,accuracy) 測定対象物質の量が正確に測定値として得られるか?値として得られるか?9-1:特異性(Specificity).....測定対象物質だけを測れるか?

測定対象物質に構造の類似した物質は、時として抗体に認識され、測定値に入り込ん しまう事がある 特異性は使用する抗体に依存する 従 抗体 特異性込んでしまう事がある.特異性は使用する抗体に依存する.従って、抗体の特異性の吟味を充分に行うべきである.

競合反応系を用いた特異性の検討

Analog 1Analog 1完全交差

抗原の混入

A l 2Analog 2部分的交差

(交差率計算不能)(交差率計算不能)

Analog 3交差なし

33

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非競合的反応による特異性の検討

Wakabayashi, K. and Tanaka, S. (1988)

Acta Histochem. Cytochem., 21, 221-229

標識した抗原 あるいは標識した交差検討対象物質を 定量とり そ標識した抗原、あるいは標識した交差検討対象物質を一定量とり,それに濃度を変えた抗体を加える.そして抗体と結合した標識物質の量を調べる.

標識抗原の場合抗体濃度を上げて行くと結合量が増大し,ついには100%近くなる.

これに対して,標識した交差検討対象物質では、交差しない場合には抗体濃度をいくら増加させても結合は増大しない.交差性がある場合には抗体濃度が充分に高ければ結合量は大きく増大する 部分的な交差は抗体濃度が充分に高ければ結合量は大きく増大する.部分的な交差でも同様である.この区別はつかない.不純物として抗原が含まれている場合には、抗体の濃度をいくら上げても結合は不純物の含量以上には増大しないは増大しない.

●測定系での特異性は,一般的にはアッセイ系に試料として一定量の交差可能性物質を加えた際測定値がいくらになるかで表現することが多交差可能性物質を加えた際測定値がいくらになるかで表現することが多い.

34

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9-2: 希釈試験(特に血液成分の影響の有無)

血清(血漿)をアッセイバッファーで倍々希釈して測定し血清(血漿)をアッセイバッファーで倍々希釈して測定し、横軸に希釈度の逆数をとり、縦軸に測定値をとった時(希釈曲線)、原点を通る直線となること.

希釈直線性

100

80

100

60

s.(n

g/m

l)

20

40Ins

0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

DilutionDilution

35

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直線性が得られない時

上に凸の曲線となる場合

試料中の物質例えばタンパク濃度によって抑制的影響がある

ため検量線との乖離を起こしている可能性がある.

対策

フリ 血清 血漿(測定対象物質を含まない血清 血漿など)をフリー血清,血漿(測定対象物質を含まない血清,血漿など)を

用いて原試料を希釈して再検査する.

この場合標準曲線系にもフリー血清, 血漿を加える必要がある

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9-3:添加回収試験(Recovery test, Spike recovery)

測定試料にある量の標準品を加えて測定し、測定値から原試料の測定値を差し引いた時、加えた標準品の量が回収されるか否かを検討する.

添加量 実測値 回収量 回収率%

0 5120 512426 925 413 96.9559 1070 561 100559 1070 561 100662 1177 665 101745 1270 758 102

単位:pg/mlpg

37

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添加回収試験における標準品添加量(Spike)

測定試料(測定対象物質含量 A)↓←標準品添加量 B↓←標準品添加量 B

Spiked測定試料(含量 A+B)↓

測定(測定値 C)判定 C – A = B ?

ここで標準品添加量 B に関してB << A, B >> A は好ましくないB << A, B >> A は好ましくない

B << A :BがAのバラツキの範囲に呑み込まれてしまう.B >> A :AがBのバラツキの範囲に呑み込まれ,回収率が不当に高くなってしまう.

判別濃度限界(例えばA±3SD)を考慮すること判別濃度限界(例えばA±3SD)を考慮すること.或いはB≒A,B = A/2 を目安とする.

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9-4: 他のアッセイ系との相関性試験

すでに確立されている測定法が他にあるとき、同一試料をその測定系と検討中の測定系で測り,横軸に確立されている測定系の測定値、縦軸に検討中の測定系での測定値をとって二つの測定系の相関図を作り検討する中の測定系での測定値をとって二つの測定系の相関図を作り検討する.

相関図

14

y = 1.1982x + 0.5576

R2 = 0 9739

12

14濃

度(n

g/m

l)

R = 0.9739

8

10

によ

るイ

ンス

リン

4

6

リン

マウ

スTに

0

2

レビ

ス イ

ンス

0

0 2 4 6 8 10

レビス インスリン マウス(S-type)によるインスリン濃度(ng/ml) 39

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10.測定試料の安定性検討

室温安定性 2時間後の測定値

冷蔵庫内安定性 24時間後の測定値冷蔵庫内安定性 24時間後の測定値

凍結融解安定性 3回行った後の測定値

長期安定性 –20℃ または-80℃

LQC(低濃度管理血清) HQC(高濃度管理血清)をLQC(低濃度管理血清), HQC(高濃度管理血清)を用いる n=3

安定性の基準 真度 80 120%の範囲安定性の基準:真度 80-120%の範囲

精度 <20%

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管11.精度管理...管理図による毎回のアッセイの評価

検量線の管理検量線 管検量線の再現性:各標準点の吸光度ED50,検出限界,測定範囲

管理血清(QC)によるアッセイ評価管理血清の種類: 2~3段階 LQC (MQC) HQC管理血清の種類: 2~3段階 LQC, (MQC), HQC管理血清の作製: ① 通常の血清+標準品

② 生理状態による高(中)低血清②

管理図:過去の,全平均と全SDの1SD, 2SDをライン表示しし,

それに 新の検討すべきアッセイの測定平均値をプロットし その位置を検討するし,その位置を検討する.

42

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43

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改善Performance の改善

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内 容内 容1.試料の繰り返しの数 (Replicate) と

測定平均値の信頼性について

2.エッジ現象(効果)(Edge effect) とその対策g )

3.試料中の血液成分の影響と対策

4 ピペットとピペッティングで注意すること4.ピペットとピペッティングで注意すること

5.試料とキットの相性テストについて

6.Blankの非特異的吸着による吸光度の増大を

洗浄法の改善で低下させる洗浄法 改善 低

7.ELISA施行上の留意事項のまとめ

8 技能検定で腕を磨く

45

8.技能検定で腕を磨く

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1.試料の繰り返しの数 (Replicate) と測定平均値の信頼性について測定平均値の信頼性について

アッセイは通常2重測定で行われることが多いのですが,

果たし 根拠があるの し うか果たして根拠があるのでしょうか?

(勿論シングルアッセイは論外ですが)

これからちょっと検討してみましょう.

結果に驚かないで下さい結果に驚かないで下さい.

46

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繰り返しの数が少ないと得られた標準偏差の信頼度は非常に低い

標準偏差の95%信頼区間

95%CL上限 s: 標本n個から得られた

標準偏差σ: 真の標準偏差5

6

7

限界

95%CL上限

95%CL下限

真 標準偏差

X2:カイ自乗表より

自由度n-1で

0 025 (H)3

4

の時

の信

頼限

p=0.025 (H)p=0.975 (L)

に対する価0

1

2

σ=1の

に対する価0

0 2 4 6 8 10 12 14 16

自由度 (n-1)

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繰り返し数と平均測定値の信頼区間との関係(1)

標準偏差=0.05の時のreplicateと平均測定値(=1.00と仮定)の95%信頼限界

Mean±t (0 05)xSE(標準誤差)Mean±tn-1 (0.05)xSE(標準誤差)

1 3

1.5

1.1

1.3

0.7

0.9平均測定値(=1.00)

95%CL上限

0.5

2 3 4 5 6 7 8 9 10

95%CL下限

標準偏差の信頼度の低下はアッセイ平均値の信頼度に影響する.

Replicates(ウェルやチューブの数)

48

標準偏差の信頼度の低下はアッセイ平均値の信頼度に影響する

通常2重測定が多いが,2重と3重とでは信頼度は大きく異なる.3重測定を推奨したい.

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繰り返し数と平均測定値の信頼限界との関係(2)

1 5

CVと繰り返し数(replicate)と

平均値(=1)の95%信頼限界5

1.3

1.4

1.5限

界543

1.1

1.2

%信

頼限

321

0.9

1

均値

と9

0 6

0.7

0.8

平均

CV=1~5%内側から外側へ

0.5

0.6

2 3 4 5

内側から外側

繰り返し数(replicate)

49

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2.Edge 現象 (Edge効果)とその対策

ウェルプレートの外周部にあるウェルが周囲の温度の影響を受けて他のウェルより反応が進行(あるいは遅延) してしまう現象

原 因

●ウェルプレートや試薬類が充分室温化

されていない(冷蔵庫から出してすぐ使用)されていない(冷蔵庫から出してすぐ使用)

●室温になっていても外部熱源(人体も含む)

からの輻射、伝導で熱が伝わる

●エアコンの冷風/温風があたる

●陽の当たる窓際で測定

●冬季の朝測定室が冷え切っていると室温化に

時間がかかることに気付かない

H1,H2をBlankにするのは考えもの.Blankの吸光度が最低標準品濃度の吸光度より高くなることがよくある.標準液をどのウェルにおけば良いのか試してみる.標準液を加える順番も考えてみよう. 朱塗の部分に起きやすい

50

(試料の中間に入れる手もある)部分 起 す

X印のところは最も要注意

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初心者のエッジ現象 Blank absorbance obtained by 2operators

0 14

0.16

m

0.08

0.1

0.12

0.14

0(⊿

620)nm

0.02

0.04

0.06

0.08

Abs. 450

0

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9Well  pos ition A‐1 to H1初心者と熟練者が同じ測定キットを使用してブラ

ンクと標準曲線を比べたものである.初心者に

S tandard curves  obtained by  2 operators10

nm

はエッジ現象が現れ標準曲線は使用に耐えない.

初心者では上の写真のようにプレートを指で

1

50(⊿

620)しっかりホールドしてしまうことが多く,体

温が指の近くのウェルに伝わって反応を進行させてしまう(特に発色試薬添加中). 初心者は試薬添加に時間が掛かるので尚更影響が

0 01

0.1Abs

 45者は試薬添加に時間が掛かるので尚更影響が

大きくなる.

このことが唯一の原因とは言えないにしてもピペッティングの際プレートに手を触れないことが望まし

0.01

10 100 1000 10000Insulin concentration, pg/ml

ティングの際プ トに手を触れないことが望ましい.

標準品系列のウェルには発色試薬を最後に加えるようにするのも一案. 51

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対策対策

百円ショップで売っているような玄関マットの滑り止めシートをカットしてその上にウェルプレートを載せると,手で抑えなくてもピペッティング中にプレートが動くことはない.

反応中プラスチックの弁当箱のようなものをウェルプレートにかぶせて置くのて置くのも周りの熱源の影響を防ぐ方法である.

52

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3.試料中の血清成分の影響と対策

通常アッセイでは標準曲線の系ではタンパク濃度が低い状態で反応が行

われる一方 試料としての血清や血漿には高濃度のタンパク質が含まれてわれる 方,試料としての血清や血漿には高濃度のタンパク質が含まれています.高濃度のタンパク溶液は,

●固相化抗体への結合反応を妨害する可能性がある●固相化抗体への結合反応を妨害する可能性がある.

既製のキットでは一応その影響を検討してありますが,自分で確かめる場合には,

検討●希釈直線性を検討する(標準曲線との並行性を検討する)

つまりどのような希釈を行っても測定値が変わらないことを証明します.この場合の希釈はアッセイバッファーで行います.希釈して行くと直線性が失われる,つまり測定値に希釈率を掛けたものが一定にならない場合,血失われる,つまり測定値に希釈率を掛けたものが 定にならない場合,血液成分の影響が予想されます.

対策対策●血清成分を加えた標準液で血清(血漿)検体との乖離を防ぐ

53

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血清,血漿の時間によるpH変化血清は放置すると急速に炭酸ガスを失いアルカリ性に移行する血清は放置すると急速に炭酸ガスを失いアルカリ性に移行する血漿は抗凝固剤に依存して変化の様子が変わる下図は2-8℃で時間と共にpHの変わる様子を示したものである

H 以上では抗原 抗体反応が阻害される可能性があるpH8以上では抗原-抗体反応が阻害される可能性がある

Changes of mouse serum pH after sampling Changes of mouse plasma pH after sampling

8.268.31

8.19

8

8.2

8.4

7.8

8

7.89

7.66

7.45 7.67

7.85 7.897.92

7 4

7.6

7.8

8

pH

7.327.317.257.09

7.177.26

7.35 7.35

7.2

7.4

7.6

pH

7.24

7.05

7.16

7.45

6 8

7

7.2

7.4 7.257.15

7.07

6.916.84

6.82

6.947.09

6 6

6.8

7

6.8

0 30 60 90 120 150 180 210 240

Time after sampling, min

6.6

0 30 60 90 120 150 180 210 240

Time after sampling, min

血清 血漿血清何れも2匹のマウスで観察した結果

血漿EDTA-2Na使用

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4.ピペットとピペッティングで注意することバラツキを少なくするためにエア ク シ ンタイプ ピペ ト使用上の注意点バラツキを少なくするためにエアークッションタイプ ピペット使用上の注意点

1.使用液量にマッチしたピペットの選択2 使用するピペ トのメ カ が推奨するチ プを使用する2.使用するピペットのメーカーが推奨するチップを使用する3.液温を完全に室温に戻す4 液体の粘度と密度 揮発性に注意4.液体の粘度と密度,揮発性に注意

粘度の高い液体は共洗い法

5.使用法をサンプルや状況に応じて選び混用しない

プレウェッティング法, 共洗い法

6.ピペッティングは一定のペースで行うピペット操作のむらをなくすよう習熟ピペット操作のむらをなくすよう習熟

7.チップを入れる深さと角度のコントロール

深さが変わるとチップ外部に付着する量が変わる深さ 変わる チッ 外部 付着する量 変わる角度が変わるとチップに入る量が変わる

8.タッチ&ゴー(touch and go) を実行する(後出)9 定期的にピペッティングのテストとピペットのメンテナンス

55

9.定期的にピペッティングのテストとピペットのメンテナンス

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ピペットのエラーリミット (許容される 大誤差)ISO 8655ッ ラ リ ッ (許容 大誤 )

例えば使用範囲10-100μlの可変シングルチャンネルピストンピペットではMaximum systematic error (系統誤差): ±0.8µlMaximum systematic error (系統誤差): ±0.8µlMaximum random error (確率誤差): ±0.3µl

註)系統誤差:10回測定の平均値確率誤差:10測定の標準偏差確率誤差:10測定の標準偏差

設定容量 µl 1 2 5 10 20 50 100

系統誤差±µl 0 05 0 08 0 125 0 12 0 2 0 5 0 8系統誤差±µl 0.05 0.08 0.125 0.12 0.2 0.5 0.8相対値 % 5.0 4.0 2.5 1.2 1.0 1.0 0.8確率誤差±µl 0.05 0.04 0.075 0.08 0.1 0.2 0.3µ

CV % 5.0 2.0 1.5 0.8 0.5 0.4 0.3

ここでいう設定容量とはそのピペットで測れる 大液量を指すここでいう設定容量とはそのピペットで測れる 大液量を指す.従って仮に10-100μlの可変シングルチャンネルピペットで10μlを測定すると3%の確率誤差が許容されることになる.少量の液量は少量用のピペットを使うこと!

マルチチャンネルピストンピペット(8連 12連)での許容される誤差は

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マルチチャンネルピストンピペット(8連,12連)での許容される誤差はシングルチャンネルで規定された値の2倍となっていることに注意!

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5.試料とキットの相性テストについて

使用者による簡易添加回収試験使用者による簡易添加回収試験

まず標準溶液の系列を作る.適当に選んだ代表的試料,たとえば対象群の

試料の一つ,から90l を小試験管に採り分ける.

(採った試料の番号を記録しておくこと.仮にNo. Cとする.)

次に標準曲線の最高濃度の液を10l 採って小試験管内の試料に加え,

よく攪拌する.この標準品入りの試料を他の試料と共に測定する.

この測定値を試料 No. C の

測定結果と比較する.

次ページに続く.次 ジに続く.

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仮にNo. Cの測定値がAng/mlであったとすれば,

標準品 試料 測定値 測定精度 範囲内標準品入り試料の測定値は,測定精度の範囲内で,

A x 0.9+(最高標準溶液濃度 x 0.1)ng/mlA x 0.9+(最高標準溶液濃度 x 0.1)ng/ml

になっている筈である.

要するに簡単な添加回収試験である.

あなたの測定試料でこの計算値に近い値が得られればあなたの測定試料でこの計算値に近い値が得られれば,

キットの測定系が試料に対して満足に機能していることがッ 測定系 試料 対 満足 機能

証明される.

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6.Blankの非特異的吸着による吸光度の増大を

洗浄法の改善で低下させる洗浄法の改善で低下させる

洗浄回数を増やすことである洗浄回数を増やすことである.

強く洗浄するのは固相化抗体をはがしてしまう

恐れがあり好ましくない恐れがあり好ましくない.

優しく,繰り返しを増やすことが大切である.

次ペ ジにその実例を示す次ページにその実例を示す.

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Washing repetition and blank absorbance(Mean & SD)(Mean & SD)

0.1180.140

0.160

0.180

0) n

m

0.097

0.100

0.120

0.140

⊿45

0(62

0

0.040

0.060

0.080

oban

ce ⊿

0.000

0.020Absr

1Washing 4 times Washing 8 times

Assay kit: Mouse insulin ELISA KIT (U-type)Assay kit: Mouse insulin ELISA KIT (U type)Difference of mean absorbance: p<0.065 Difference of variance:p<0.1

洗浄回数を緩やかな洗浄液の添加と共に回数を倍にした時,ブランクの吸光度は確実に低下する

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ブランクの吸光度は確実に低下する.更にバラツキが有効に小さくなることが期待される.

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技能検定 腕を磨く8.技能検定(proficiency test , PT)で腕を磨く

*均一な材料から取り出した試料を多くの測定者に配り,分析してもらい 結果を計画実施統括者に報告してもらう分析してもらい,結果を計画実施統括者に報告してもらう.

全て測定者のデータはすべての測定者にフィードバックされる.これによって反省が行われ,次の分析にどう反映されるかが試される.

ZZ scoreZ = (x-xa)/σ

x:一つの測定者で得られた測定値x: つの測定者で得られた測定値

xa:いくつかのエキスパート測定者での測定値の平均値

σ:実験結果の標準偏差の目標値

判定:|Z|<2………...満足できる結果を出した2<|Z|<3……信頼性が低い|Z|>3………...容認できない|Z|>3………...容認できない

定期的に行うことでアッセイ技能の向上を期する.

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以上で終わります

2010/03/24

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