非局在化電子を持つカルボカチオン 非局在化電子と pka 共役...
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非局在化電子を持つ化合物:反応性
非局在化電子を持つカルボカチオン
非局在化電子と pKa
共役ジエンの反応
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非局在化電子を持つカルボカチオン
アリル型カルボカチオン・ベンジル型カルボカチオン
ローンペアを持つ原子に隣接するカルボカチオン
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アリル型カチオンとベンジル型カチオン
CC
C
C
二重結合の「隣」にあるカルボカチオン
ベンゼン環の「隣」にあるカルボカチオン
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アリル型カチオン・ベンジル型カチオンの共鳴
CC
C CC
C
C C C C C
π電子の非局在化によって安定化する
CC
C
HH
H H
H CH
HCCH3
H3C CH3≈ ≈
t-
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アリル型・ベンジル型でも超共役の効果はある
CC
C
HH
H H
HC
CC
HH
H H
CH3< CC
C
HH
H CH3
CH3<
CH
HCH
CH3< C
CH3
CH3<
π電子の非局在化のみ π電子の非局在化+超共役1箇所π電子の非局在化+超共役2箇所
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【練習問題】下の化合物への HBr の付加反応の機構を巻き矢印で書き、位置選択性の理由を説明しなさい。
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【練習問題】下の化合物(スチレン)に水中で Br2 を反応させた。反応機構を巻き矢印で書き、主生成物を示しなさい。
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ローンペアを持つ原子に隣接するカルボカチオン
Br C Br C Cl C Cl C
ハロゲンに隣接するカルボカチオン=ローンペアの非局在化によって安定化される
O, N に隣接するカルボカチオンも同様に安定化される
O C O C N C N C
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【練習問題】下の化合物に酸触媒でメタノールを付加させた。反応機構を巻き矢印で書き、位置選択性の理由を説明しなさい。
O
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非局在化電子が物質の pKa に及ぼす影響
カルボン酸はなぜ「酸」なのか
フェノールはなぜ「酸」なのか
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pKa とは何か(復習)
平衡状態では、両辺の物質の濃度の間に以下の関係が成り立つ
HA + H2O A– + H3O+
[H3O+][A–]Ka = [HA] 酸解離定数
HA をブレンステッド酸(=H+ を与える物質)とする
普通は pKa を用いるpKa = –log10 Ka
pKa が小さいほど強い酸である
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酸の強さは何で決まるのか(復習)
1.共役塩基が安定なほど、強い酸である。
H–A + B A– + H–B+
A‒ が安定なほど、平衡は右に偏る。
2.共役塩基は「ローンペア電子のエネルギーが低い」ほど安定。
H A A–H+ +ローンペア
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酸の強さを決める要因(復習)1.「同じ周期の原子」の場合、ローンペア電子は 「電気陰性度が高い」ほど安定
2.「同じ原子で混成状態が違う」場合、ローンペア電子は 「混成軌道の s 性が高い」ほど安定
3.「違う周期の原子」の場合、ローンペア電子は 「原子軌道が大きい」ほど安定
HFH2ONH3CH4>pKa 3.215.73660 > >
CH3CH3 H2C CH2 HC CH
pKa 60 44 25> >
HI>
HBr>
HCl>
HFpKa –10–9–73.2
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非局在化電子がある場合は?
H3C CO
OHOH CH2OHCH3
pKa 4.8 10 16
酢酸 フェノール エタノール
なぜ酢酸、フェノールは普通のアルコールよりも強い酸なのか?
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酢酸とその共役塩基
H3C CO
O HH3C C
O
O H
H3C CO
OH3C C
O
O
酢酸
酢酸の共役塩基
どちらもローンペア電子・π電子の非局在化がある
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共鳴寄与体の寄与の度合いが違う
H3C CO
O HH3C C
O
O H
電荷が分離した「不自然」な構造=非局在化の効果が小さい
H3C CO
OH3C C
O
O
どちらも同じように「自然な」構造=非局在化の効果が大きい
酢酸よりも、酢酸の共役塩基の方が非局在化の効果が大きい
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普通のアルコール:非局在化の効果なし
CH2OHH3C
CH2OH3C
エタノール
エタノールの共役塩基
どちらもローンペア電子の非局在化は起こさない
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酢酸がエタノールと比べて酸性である理由
H3C CO
O HH3C C
O
O
– H+
CH2OHH3C CH2OH3C– H+
酢酸→共役塩基
エタノール→共役塩基
共役塩基になると安定化する→酸性が強い
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フェノールとその共役塩基
OH OH OH OH OH
O O O O O
フェノール
フェノールの共役塩基
電荷が分離した「不自然」な構造=非局在化の効果が小さい
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フェノールがエタノールと比べて酸性である理由
CH2OHH3C CH2OH3C– H+エタノール
→共役塩基
OH – H+ Oフェノール→共役塩基
共役塩基になると安定化する→酸性が強い
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なぜフェノールは酢酸よりも弱い酸?
O O O O O
フェノールの共役塩基
H3C CO
OH3C C
O
O
酢酸の共役塩基
芳香族性を失っているので寄与が小さい=安定化の度合いが小さい
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【練習問題】アニリンはシクロヘキシルアミンよりも弱い塩基である。理由を説明しなさい。
NH2 NH2
アニリン シクロヘキシルアミン
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共役ジエンの反応
1,2-付加と1,4-付加
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ジエンの分類ジエン:C=C 二重結合を二つ持つ化合物
C C C CC
CC
CC
CC
C
集積ジエン二つの二重結合が炭素原子1個を共有
共役ジエン二つの二重結合が
単結合一つを隔てて隣接
孤立ジエン二つの二重結合が
1個以上の sp3 炭素を隔てて隣接
π電子の非局在化が起きる
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共役系
共役ジエンで、π電子が非局在化している部分=「共役系」
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孤立ジエンと共役ジエンの反応の違い
孤立ジエン:それぞれの二重結合は単独のアルケンと同様に反応CH3 CH3
BrH BrCH3
H+ Br
H
共役ジエン:1,2-付加と1,4-付加が起きる
CC
CC
H
H
H
HH
H+ HBr
,
CC
CC
H
H
H
HHH
+H
Br
CC
CC
H
H
HHH
H
HBr
(直接付加)(共役付加)
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共役ジエンへの HBr の付加:反応機構
CC
CC
H
H
H
HH
H
H Br CCC
CH
H
H
H HH
H
CC
CC
H
H
H
HH
HH
+ Br
CC
CC
H
H
H
H HH
H
アリル型なので下のものより安定
(「二級だから」じゃない!)
非局在化による安定化
共役系への求電子剤の付加は末端で起きるH+
H
H
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共役ジエンへの HBr の付加
CC
CC
H
H
H
H HH
H + BrC
CC
CH
H
H
H HH
HBr
CC
CC
H
H
H
H HH
H + BrC
CC
CH
H
HH H
H
HBr
CC
CC
H
H
H
H HH
H + BrC
CC
CH
H
HH H
H
HBr
1,2-付加体の生成
1,4-付加体の生成
こう書いてもよい
※ 共鳴寄与体は「書き方が違うだけで同じもの」なので、どちらを使っても反応機構は書けるし、どちらで書いてもよい
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【練習問題】2-メチル-1,3-ブタジエンに1当量の HBr を反応させた。反応機構を巻き矢印で書き、生成物の位置選択性について説明しなさい。
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