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ETC2.0(プローブデータ)を活用した 道路を賢く使う工夫の提案について 久保 陽 1 ・堀口 淳 1 ・中村 圭弘 1 ・間 大地 2 1 金沢河川国道事務所 調査第二課 (〒9208648 石川県金沢市西念4丁目23番地5号 ) 2 金沢河川国道事務所 道路管理第二課 (〒9208648 石川県金沢市西念4丁目23番地5号 ). プローブデータを活用した道路事業の計画検討や整備効果の把握に関して提案する. キーワード ETC2.0,プローブデータ 1. はじめに 道路交通分野におけるプローブデータとは,走行する 車両に搭載された種々のセンサー(GPS ETC2.0 等)か ら取得できるデータ(交通挙動,位置等)であり,道路 行政全般への活用が期待されている. 国土交通省では,2011 年から車両に搭載されたETC2.0 から得られるETC2.0 プローブデータ収集に関する取り組 みが始まった.ETC2.0 プローブデータは,車両に搭載さ れたETC2.0 対応車載器と道路上に設置されたETC2.0 プロ ーブデータを収集可能な路側機が相互通信することによ り,車両の走行履歴や挙動履歴等を含んだ大量の情報を リアルタイムで通信できるという特徴を有している. 現在,プローブデータには様々な形態と特徴があり, 代表的なものを表-1 に示す.一例として,民間プローブ データは車両に搭載されたGPS 等からデータを取得して おり,経路情報は取得できないがデータ数が多く,特異 なデータも平準化できるという特徴がある.それらの特 徴を生かし,幅広く道路行政へ活用する方法が各所で検 討されている. 表-1 代表的なプローブデータの形態と特徴 項目 ETC2.0 民間 商用車 データ件数 2015.9 国道8 号西念 民間に比べて少な 2,934 ETC 2.0 に比べて多い 13,133 ET C2.0や民間に比べ て少ない 旅行速度 1 1 台の速度情報を 抽出可能 データ数が多く,特異 なデータは平準化され 1 1 台の速度情報を 抽出可能 経路データ 1 1 台の経路情報を 取得可能 経路情報の取得は 不可能 1 1 台の経路情報を 取得可能 車両挙動 1 1 台の挙動履歴を 取得可能 0.25G以上の減速度 データを抽出 地点別の急ブレーキ発 生回数を取得可能 本論文では,金沢河川国道事務所管内の「事故多発箇 所要因の分析」と「標識適正化の分析」において,必要 な交通動向をプローブデータを活用して把握する方法に ついて提案するものである. 2. 事故多発箇所要因の分析 国道159 号金沢東部環状道路における事故発生要因の 分析として,今町JCT~鈴見交差点間における事故発生 箇所と挙動履歴データ(急ブレーキ箇所)や道路線形, 道路構造等を重ね合わせて,当該区間における死傷事故 の現状と課題を把握する. (1) 検討の概要 当該区間における死傷事故の現状と課題を把握するた めに,以下の要素を重ね合わせて,気候条件(季節,天 候)別に死傷事故の発生状況を整理する. 本検討では,走行車両の普遍的な挙動を分析する必要 があるため,データ数が十分に得られないと思われる ETC2.0 プローブデータや商用車プローブデータではなく, データ数が多く平準化されたデータとして活用できる民 間プローブデータを使用する. a) 検討要素 ・事故発生箇所 ・急ブレーキ箇所 ・道路線形(平面・縦断) ・道路構造(橋梁,トンネル,IC ,交差点等) ・旅行速度 b) 検討条件 ・季節(通常期( 4 11 月)・冬期( 12 3 月)),天候

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Page 1: ETC2.0(プローブデータ)を活用した 道路を ... · etc2.0(プローブデータ)を活用した 道路を賢く使う工夫の提案について 餘久保 陽1・堀口

ETC2.0(プローブデータ)を活用した 道路を賢く使う工夫の提案について

餘久保 陽1・堀口 淳1・中村 圭弘1・間 大地2

1金沢河川国道事務所 調査第二課 (〒920-8648 石川県金沢市西念4丁目23番地5号 )

2 金沢河川国道事務所 道路管理第二課 (〒920-8648 石川県金沢市西念4丁目23番地5号 ).

プローブデータを活用した道路事業の計画検討や整備効果の把握に関して提案する.

キーワード ETC2.0,プローブデータ

1. はじめに

道路交通分野におけるプローブデータとは,走行する

車両に搭載された種々のセンサー(GPS,ETC2.0等)か

ら取得できるデータ(交通挙動,位置等)であり,道路

行政全般への活用が期待されている.

国土交通省では,2011年から車両に搭載されたETC2.0

から得られるETC2.0プローブデータ収集に関する取り組

みが始まった.ETC2.0プローブデータは,車両に搭載さ

れたETC2.0対応車載器と道路上に設置されたETC2.0プロ

ーブデータを収集可能な路側機が相互通信することによ

り,車両の走行履歴や挙動履歴等を含んだ大量の情報を

リアルタイムで通信できるという特徴を有している.

現在,プローブデータには様々な形態と特徴があり,

代表的なものを表-1に示す.一例として,民間プローブ

データは車両に搭載されたGPS等からデータを取得して

おり,経路情報は取得できないがデータ数が多く,特異

なデータも平準化できるという特徴がある.それらの特

徴を生かし,幅広く道路行政へ活用する方法が各所で検

討されている.

表-1 代表的なプローブデータの形態と特徴

項目 ETC2.0 民間 商用車

デ ター件数

2015.9

国道8号西念

民間に比べて少な

2,934件

ETC2.0に比べて多い

13,133件

ETC2.0や民間に比べ

て少ない

旅行速度 1台1台の速度情報を

抽出可能

デ ター数が多く,特異

なデ ターは平準化され

1台1台の速度情報を

抽出可能

経路デ ター 1台1台の経路情報を

取得可能

経路情報の取得は

不可能

1台1台の経路情報を

取得可能

車両挙動 1台1台の挙動履歴を

取得可能

0.25G以上の減速度

デ ターを抽出

地点別の急ブレーキ発

生回数を取得可能

本論文では,金沢河川国道事務所管内の「事故多発箇

所要因の分析」と「標識適正化の分析」において,必要

な交通動向をプローブデータを活用して把握する方法に

ついて提案するものである.

2. 事故多発箇所要因の分析

国道159号金沢東部環状道路における事故発生要因の

分析として,今町JCT~鈴見交差点間における事故発生

箇所と挙動履歴データ(急ブレーキ箇所)や道路線形,

道路構造等を重ね合わせて,当該区間における死傷事故

の現状と課題を把握する.

(1) 検討の概要

当該区間における死傷事故の現状と課題を把握するた

めに,以下の要素を重ね合わせて,気候条件(季節,天

候)別に死傷事故の発生状況を整理する.

本検討では,走行車両の普遍的な挙動を分析する必要

があるため,データ数が十分に得られないと思われる

ETC2.0プローブデータや商用車プローブデータではなく,

データ数が多く平準化されたデータとして活用できる民

間プローブデータを使用する.

a) 検討要素

・事故発生箇所

・急ブレーキ箇所

・道路線形(平面・縦断)

・道路構造(橋梁,トンネル,IC,交差点等)

・旅行速度

b) 検討条件

・季節(通常期(4~11月)・冬期(12~3月)),天候

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c) 使用するデータ

死傷事故データ:事故データ(2011年~2014年の事故

原票より)

急ブレーキデータ:民間プローブデータ(2013年度及

び2014年度の4月1日~3月31日)

旅行速度データ:民間プローブデータ(2014年度)

気象データ:気象庁HP参照

d) 検討の流れ

検討フローを図-1に示す.

(2) 事故発生箇所の要因分析

a) 減速度と死傷事故発生箇所の関連性整理

民間プローブデータでは,0.25G(0.1Gは3秒間に

10km/h減速する減速度)以上の減速度を急ブレーキとし

て記録しているが,より死傷事故と関連性が高い減速度

を用いて分析を行うために,減速度の閾値を0.1G毎に区

切って関連性を比較した(図-2).

図-2より,0.25G以上0.3G未満及び0.3G以上0.4G未満で

は,急ブレーキは出入口付近で広範囲に多数発生してい

る.これはオフランプに進入する際や合流車両にゆずる

際の減速が急ブレーキとして記録されていると推察でき

るため,死傷事故との関連性は不明瞭である.0.4G以上

でも,急ブレーキは出入口付近で発生しているが,0.4G

未満と比較して事故発生箇所付近に集中しているため,

図-1 検討フロー(事故多発箇所要因の分析)

こちらは関連性が高いと考えられる.従って, 0.4G以

上を検討に用いる減速度の閾値として急ブレーキデータ

を抽出し,分析を行う.

b) 金沢東部環状道路における事故件数と事故類型

金沢東部環状道路における事故の特徴について検討す

る.図-3は,金沢東部環状道路における死傷事故件数の

集計である.今町~梅田間,梅田~森本間及び森本~神

谷内間における死傷事故件数は年度別であまり変化は見

られないが,神谷内~東長江間及び東長江~鈴見間では

2011年度から2012年度で大きな違いが見られる.これは

2013年1月に東長江~鈴見間で2期線が開通され4車線し

たことによる道路構造の変化が影響しているのではない

図-2 急ブレーキ箇所と事故発生箇所の重ね合わせ

図-3 死傷事故件数の集計

死傷事故件数

(件

59 8

175

713

11

1

6

4

5

11

1

64

6

11

0

10

20

30

40

50

60

今町~梅田 梅田~森本 森本~神谷内 神谷内~東長江 東長江~鈴見

2011年度 2012年度

2013年度 2014年度

【民間プローブデータ】

直轄区間における急ブレーキ箇所

の緯度経度情報 急ブレーキ箇所

をGISに展開

金沢東部環状道路上での急ブレーキ

箇所の抽出

急ブレーキ箇所と事故発生箇所を減

速度別に重ね合わせ

死傷事故データ

急ブレーキ発生箇所と事故発生箇所

の関連性が高い減速度を抽出

・抽出された減速度の急ブレーキに

ついて,線形や構造等の要素と重ね

合わせ

・条件別に事故及び急ブレーキの発

生状況を整理 【要素】

・事故発生箇所

・道路線形

・道路構造

・旅行速度

【条件】

・季節

・天候

金沢東部環状道路における死傷事故

の現状と課題を整理

0.25G以上0.3G未満

0.4G以上

0.3G以上0.4G未満

神谷内出入口

神谷内出入口

↑今町方面

↓鈴見方面

↑今町方面

↑今町方面

↓鈴見方面

↓鈴見方面

神谷内出入口 △:死傷事故発生箇所

●:急ブレーキ発生箇所

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10時9時8時7時

18時17時16時15時14時13時12時11時

10時9時8時7時

18時17時16時15時14時13時12時11時

かと考えられる.また,東長江~鈴見間は依然として死

傷事故件数は最も多いため,その要因を検討する必要が

ある.図-4は,金沢東部環状道路における事故類型であ

る.図-4より,最も多い類型は追突,次いで正面衝突で

ある.

c) 死傷事故と急ブレーキ箇所の整理

各種要素を重ね合わせて,要素間の相関関係を検討す

る.図-5は,(1)a)で示した要素(事故発生箇所,急ブレ

ーキ発生箇所,道路線形(平面・縦断),道路構造,平

均旅行速度)を重ね合わせたものである.道路線形はそ

れぞれ折れ線の模式図,旅行速度は下部のモザイク図,

急ブレーキ発生箇所(件数)は棒グラフ,死傷事故発生

(件数)は×印の散布図で示している.

図-5より,次の3つの結果が得られた.①速度に着目

すると,鈴見交差点付近では,死傷事故及び急ブレーキ

の発生が多くなっている.旅行速度も時間帯を問わず大

図-4 金沢東部環状道路における事故類型

幅に低下していることから,走行性の高い区間から交差

点への流入が発生要因と考えられる.②道路構造に着目

すると,出入口やICを中心に前後のトンネル坑口付近に

おいて連続的に急ブレーキと事故が発生している.短い

区間にトンネル坑口,出入口やIC,4車線から2車線への

絞り込みが連続していることが要因と考えられる.③道

路線形の縦断形状に着目すると月浦トンネル~神谷内出

入口~神谷内トンネル区間及び御所トンネル~東長江出

入口区間では,サグ部で急ブレーキと事故がいずれも多

数発生している.この区間では旅行速度の変化も大きく,

分合流もあるため死傷事故や急ブレーキが多発している

と考えられる.一方,平面形状ではR=180という急カー

ブでも死傷事故及び急ブレーキは少ないためこの要素の

影響は小さいと考えられる.

d) 季節及び天候条件別の整理

急ブレーキ発生箇所と死傷事故発生箇所を条件別に整

理したものを図-6に示す.死傷事故発生箇所を散布図,

急ブレーキ発生件数を棒グラフで示している.

図-6より,季節に着目すると通常期に比べて,冬期の

急ブレーキの発生は少ないが,鈴見交差点付近では通常

期と同数程度に死傷事故が発生している.

天候に着目すると,雨・雪の時に事故が多数発生して

いる.一方で,急ブレーキ件数は比較的少ないことから,

雨や雪で視界不良や路面状態が悪くなっている時に追突

等の事故が発生していると考えられる.また,事故が多

数発生している箇所は,晴・曇時には事故には至らない

が急ブレーキが発生している箇所でもあるので,注意喚

起表示等が検討される.

正面衝突

4%

追突

71%出合い頭

1%

その他

24%

図-5 各種要素の重ね合わせ

:~10km/h:~20km/h:~30km/h:~40km/h:~50km/h:~60km/h:60km/h~

上り

下り

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

56kp+500

57kp+0

57kp+500

58kp+0

58kp+500

59kp+0

59kp+500

60kp+0

60kp+500

61kp+0

61kp+500

62kp+0

62kp+500

63kp+0

63kp+500

64kp+0

64kp+500

65kp+0

65kp+500

急ブレーキ件数 縦断形状 平面形状(曲率図) 事故件数

縦断形状模式図

平面形状模式図(曲率図)

今町高架橋

梅田出入口

梅田跨線橋

梅田

連絡橋

森本トンネル

堅田高架橋

金沢森本IC

月浦トンネル

神谷内出入口

神谷内IC橋

神谷内トンネル 御所トンネル

東長江出入口

御所高架橋

卯辰トンネル

鈴見交差点

件数 R=3500

R=2000

R=180

R=∞R=1000

R=2200

R=700R=∞ R=1740

R=700 R=675

R=∞R=500

R=∞R=900

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3. 標識適正化の分析

標識適正化の分析として,小松空港への経路情報を把

握し,既存標識による経路案内との整合性を確認する.

(1) 検討の概要

小松空港への経路情報を把握するために,走行車両の

経路情報を取得できるETC2.0プローブデータと商用車プ

ローブデータデータより国道8号から小松空港へ至る経

路情報を抽出し,既存標識の案内による経路と比較する.

また,実際に利用頻度が高い路線と既存標識の案内に

よる経路との旅行時間を比較する.

a) 使用するデータ

経路データ:ETC2.0プローブデータ・商用車プローブ

データ(2014.12~2015.11)

旅行速度データ:民間プローブデータ(2014.12~

2015.11)

b) 検討の流れ

検討フローを図-7に示す.

(2) 小松空港への経路比較

a) プローブデータからの経路情報の抽出

ETC2.0プローブデータと商用車プローブデータより小

松空港への経路情報を抽出した結果,小松空港へ至る車

両データのうち,国道8号からアクセスした車両データ

は105件であった.このうち,主な走行経路86件を図-8

に示す.

このうち,金沢方面からは97件であり,国道8号小松

バイパスの大長野IC,小杉IC及び佐々木ICからのアクセ

スが多く見られる.特に大長野ICからの流入が多く,小

松IC経由のルートと国道305号経由のルートで合わせて

47件のアクセスがあった.

加賀方面からは8件のアクセスがあり,松山交差点より,

図-7 検討フロー(標識適正化の分析)

図-8 プローブデータによる国道8号から小松空港への走行経

路抽出結果

図-6 条件別の整理

【ETC2.0プローブデータ】

【商用車プローブデータ】 小松空港へ流入

するDRMリンク

DRMリンクより小松空港に流入す

る車のデータを抽出

該当する車両の経路情報を抽出

経路情報より,リンク毎の走行件

数を集計

実際の走行経路と標識案内による

走行経路の利用頻度及び旅行時間

を比較

既存標識による小

松空港への経路

旅行速度データ

通常期

冬期

晴・曇

雨・雪

0123456789

56kp+500

57kp+0

57kp+500

58kp+0

58kp+500

59kp+0

59kp+500

60kp+0

60kp+500

61kp+0

61kp+500

62kp+0

62kp+500

63kp+0

63kp+500

64kp+0

64kp+500

65kp+0

65kp+500

急ブレーキ件数(通常期)

事故件数(通常期)

0

1

2

3

4

5

急ブレーキ件数(冬期)

事故件数(冬期)

0

2

4

6

8

10

12

56kp+500

57kp+0

57kp+500

58kp+0

58kp+500

59kp+0

59kp+500

60kp+0

60kp+500

61kp+0

61kp+500

62kp+0

62kp+500

63kp+0

63kp+500

64kp+0

64kp+500

65kp+0

65kp+500

急ブレーキ件数(晴・曇)

事故件数(晴・曇)

0

1

2

3

4

急ブレーキ件数(雨) 事故件数(雨)

事故件数(雪)

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片山津ICを経由するルートと南加賀道路を利用するルー

トがみられる.

b) 既存標識による小松空港への案内経路

現在,国道8号に設置されている小松空港への案内標識の

位置と案内経路を図-9に示す.案内標識は,金沢方面から

は佐々木ICに1箇所,加賀方面からは加茂交差点,松山交差

点,佐々木ICの3箇所に設置されており,それらによる案内

経路が金沢方面からは1ルート,加賀方面からは3ルートと

なっている.

(3) プローブデータ及び既存標識による経路比較

経路データにおいて複数の利用が確認された経路や,

既存標識による案内ルートについて,データ数の多い民

間プローブデータによる旅行時間を比較する.

比較ルートは図-10に示した8ルートを対象とする.各

ルートの分岐と分類は表-2に示した.金沢方面からのア

クセスについては,抽出されたルート4件,既存標識に

て案内されているルート1件を北ルート1~4として設定

した.加賀方面からのアクセスについては,抽出された

ルート2件,既存標識にて案内されているルート3件を南

ルート1~4として設定した.

設定した8ルートの平休日別における旅行時間を表-3

に示す.ここから各ルートの特徴とより適正なアクセス

を検討する.

a) 北ルートについて

経路データより,標識による案内のない大長野ICや小

杉ICでの分岐交通が確認されており,平日日中の旅行時

間も1日を通じてバラつきが少ないことから,実際の道

路利用においても一定の利用があると考えられる.

既存標識で案内されている北ルート3(佐々木IC経由)

では,小松空港に至るまでに交差点数が最も多く,主要

渋滞箇所も7箇所通過する必要があり,抽出件数も比較

対象ルート中3番目となっている.一方で,旅行時間が

最も短い北ルート4についてはプローブデータでは15件

と割合から見て少なくない利用が見られた.旅行時間は

案内経路よりも1分以上短く,交差点数や主要渋滞箇所

も少ないことから道路利用者から選択されているのでは

ないかと考えられる.しかしながら,こちらに案内した

場合,新たに流入する交通量にこのルートの交通容量が

耐えられるかどうかの検討が別途必要になる.これは旅

行時間が2番目に短い北ルート2についても同様である.

以上より,金沢方面からについては,既存標識で案内

されていない経路の方がより多く利用されており,いず

れも案内経路よりも旅行時間が短いという現状を確認す

ることができた.

案内標識を新設・変更を検討する場合は,経路変更に

伴う交通転換の影響を分析し,新たな交通混雑の誘発や

案内標識の複雑化等に留意した検討を行い,それが適正

かどうかを評価する必要がある.本検討ではその際に活

用できる有用なデータを得ることができた.

b) 南ルートについて

プローブデータで利用経路として確認された南ルート

2(松山交差点,片山津IC経由)と南ルート3(南加賀道

路経由)のうち,南ルート2では,所要時間の面で既存

標識により案内されている南ルート1(片山津IC経由)

や南ルート3に劣っていることが確認された.また南ル

ート1~3は主要渋滞箇所がほとんどないため,平日17時

図-9 既存標識による小松空港への案内経路

図-10 比較対象ルート

表-2 比較対象ルート一覧

名 称 分 岐 点 ※ 分 類 交差点数 プローブ

抽出件数

平均

旅行時間

北ルート1 大長野分岐→園町交差点

→小松空港 抽出経路 23箇所 28件 15.8分

北ルート2 大長野分岐→長田南交差

点→小松空港 抽出経路 19箇所 19件 15.6分

北ルート3 大長野分岐→佐々木 IC→

小松空港

抽出経路

案内経路 23箇所 17件 16.2分

北ルート4 大長野分岐→小杉 IC→小

松空港 抽出経路 20箇所 15件 14.6分

南ルート1 加茂交差点→片山津 IC 前

→小松空港 案内経路 17箇所 0件 21.1分

南ルート2 加茂交差点→松山交差点

→片山津IC前→小松空港 抽出経路 18箇所 4件 24.6分

南ルート3 加茂交差点→松山交差点

→南加賀道路→小松空港

抽出経路

案内経路 19箇所 3件 23.1分

南ルート4 加茂交差点→松山交差点

→佐々木IC→小松空港 案内経路 29箇所 0件 32.9分

※ルートの起点終点は太字で示している.

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を除いて一定の旅行時間で走行できている.しかしなが

ら,最も旅行時間の短い南ルート1の利用が経路データ

で抽出されなかった原因については,単にデータ件数が

少なかったからなのか,別の要素があるのかは判明しな

かった.南ルート4については,本検討で条件設定では,

旅行時間が最も長くプローブデータでも抽出されなかっ

たが,松山交差点より金沢側から国道8号に流入する利

用者に対する案内がなくなってしまうため,適正な標識

でないとは判断できない.

表-3 平休日別の旅行時間(分)

以上より,加賀方面からについては小松空港へ円滑な

交通アクセスを提供する目的で,既存の標識による経路

案内を継続することが有効と考えられる.

4. おわりに

事故発生箇所の要因分析では,データ数の多い民間

プローブを活用して,各種要因を重ね合わせることで金

沢東部環状道路が有する潜在的事故危険箇所を抽出する

ことができた.

標識適正化の分析では,既存案内標識により想定され

ている走行経路と,ETC2.0プローブデータと商用車プロ

ーブデータで得られる道路利用者が実際に利用している

走行経路が整合しているかどうかが確認することができ

た.

いずれの結果も今後の道路計画及び維持管理に有効に

活用できると考えられる.

プローブデータは,その特徴を生かし,他の各種デー

タと重ね合わせ検討することで従来の分析では確認でき

なかった事実が多数得られる.今後も道路行政における

プローブデータの有効な活用方法について検討して参り

たい.

謝辞:本論文のとりまとめに際し,関係各位には多大な

ご協力とご意見を賜りました.ここに感謝申し上げます.

北ルート1 北ルート2 北ルート3 北ルート47 15.5 16.1 18.3 17.08 15.7 15.3 17.1 14.99 14.5 14.5 16.1 14.310 15.0 14.8 16.7 14.311 15.4 15.3 16.5 14.512 15.1 14.9 16.0 14.013 15.9 15.3 16.6 14.114 16.0 15.7 16.1 14.015 15.9 15.4 16.2 14.116 15.6 15.5 16.0 14.217 16.9 16.5 16.7 15.318 16.7 16.0 16.1 14.3平均 15.7 15.5 16.5 14.6

平日

時間帯 南ルート1 南ルート2 南ルート3 南ルート47 20.8 25.3 24.8 35.48 22.6 24.5 24.1 33.29 20.9 23.9 22.7 32.510 22.5 24.5 23.0 33.411 22.5 24.1 22.5 33.412 21.5 23.8 22.5 32.813 22.2 24.1 22.9 34.114 21.9 24.1 23.3 34.115 21.5 24.3 23.2 34.216 22.5 25.2 23.5 33.917 30.2 34.6 25.3 34.318 22.8 25.5 23.3 33.3平均 22.7 25.3 23.4 33.7

平日

時間帯 南ルート1 南ルート2 南ルート3 南ルート47 19.3 22.4 21.7 30.08 20.5 23.4 22.1 30.09 20.5 23.5 22.8 31.310 21.7 24.0 23.1 32.011 22.3 24.0 22.7 32.112 21.6 23.8 22.6 32.113 21.8 24.0 22.6 32.514 21.8 24.0 23.1 33.015 22.2 25.0 23.3 33.316 22.4 24.8 23.1 32.717 23.1 24.9 23.3 32.818 21.3 23.1 22.5 32.4平均 21.5 23.9 22.8 32.0

休日

北ルート1 北ルート2 北ルート3 北ルート47 13.2 14.3 15.0 14.38 13.4 14.8 15.1 14.39 14.4 15.9 15.7 15.210 15.0 15.2 16.4 14.711 15.9 15.7 16.4 14.712 16.0 15.3 16.2 14.113 16.3 15.5 16.2 14.414 17.5 15.9 16.5 14.315 17.8 16.2 16.3 14.516 17.4 16.1 16.1 14.617 17.3 16.4 16.0 14.918 16.1 15.7 15.3 14.3平均 15.9 15.6 15.9 14.5

休日