妄想 1症状論 - utokyo opencourseware...妄想 1症状論 どんな症状か?2原因論...
TRANSCRIPT
妄想
1 症状論どんな症状か?
2 原因論どんなメカニズムで?
3 治療論どのように治療するか?
微小妄想(自分はダメになった) うつ病
誇大妄想(自分には優れた力がある) 躁病
被害妄想(誰かから脅かさ
れる) 統合失調症
形式的にきれいでない妄想主題をもっと論理的に整理できないか?
妄想の三大主題と精神疾患妄想の三大主題と精神疾患
DSM-Ⅳの定義妄想:外的現実に対する間違った推論に基づく誤った確信(内容の不可能性)。矛盾に対して反論の余地のない明らかな証明や証拠があるにもかかわらず(訂正不可能性),強固に維持されるもの(確信性)
妄想的観念:妄想ほどの強さはないが、自分が苦しめられている、迫害されている、不当に扱われているという疑念*妄想と妄想的観念の連続性の仮定
統合失調症の症状別アプローチ症状症状 アナログ研究
陽性 妄想---妄想的観念症状 幻覚---幻覚様体験
自我障害-自我漏洩感
陰性 自閉---引きこもり症状 対人不安
感情鈍麻-アパシー連合弛緩
自己他者操作観念 人を思い通りに操ったりできる
被好意観念多くの異性から愛されている
庇護観念 神様とか守護霊が私を守ってくれる
自己肯定観念私は有能でどんなことでもできる
他者
妄想観念チェックリスト 正の感情価
←誇大妄想の構造化
自己加害観念知らない間に人に迷惑をかけている
被害観念誰かが私をワナにかけようとしている
疎外観念周りの人から疎まれている
微小観念私は容姿(顔や体型)が劣っている
他者
妄想観念チェックリスト 負の感情価
←主題の論理的整理
1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
健常群
統合失調症群
★
★
★
★
疎外
微小
被害
加害
庇護
自己肯定
被好意
他者操作
妄想観念チェックリスト ★有意差あり
一般人におけるPDIスコアの分布(N=470) Peters et al, 2004より
多くの人々は何かしらの妄想体験をしています。妄想は一般の人々にあっても普通の体験だといえます。(妄想体験はその継続性によって分類)
PDIにおける妄想の件数(21 items)
0
10
20
30
40
50
60
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
Frequencies
引き金となる刺激①ライフイベント
②異常知覚 スキーマ
(妄想の素因)
妄想的観念
2)メカニズム研究 妄想的観念の認知モデル
A 出来事 B 認知 C 感情 D 行動
行動感情苦痛高揚
推論障害
妄想の推論障害の理論①投影的帰属バイアス②自己標的バイアス③性急な結論バイアス④「心の理論」障害
2)メカニズム研究
外的帰属他人のせい責任の投影
被害妄想
ネガティブな出来事
内的帰属自分のせい自
責抑うつ
2)メカニズム研究 妄想の推論障害①投影的帰属バイアス
A 出来事 B 認知 C 感情・症状
2)メカニズム研究 妄想の推論障害①投影的帰属バイアス
2)メカニズム研究 妄想の推論障害②自己標的バイアス自分を他者からの標的として認知する傾向学生に試験を返却する際,「このクラスでとくに成績の良い学生がいる(good条件)」か「このクラスでとくに成績の悪い学生がいる(bad条件)」と話し,「その学生が自分である可能性」と,「その学生が他者(自分の隣りに座っている学生)である可能性」を,0~100%で推定させた。その結果、自分である可能性のほうが,他者である可能性よりも高かった。これはbad条件で顕著。⇒悪いことについて,自分が話題のターゲットになっていると認知しやすい
パラノイア認知何でも自分と関係があるのではと疑う被害的思考傾向
自己標的バイアス自分を他者からの標的として認知する傾向
公的自己意識他者からみられる自分へ注意を向けやすい傾向
2)メカニズム研究 妄想の推論障害②自己標的バイアス
R = .41**(丹野ら)
R = .40**(Fenigstein)
R = .42**(Fenigstein)
Huq, Garety & Hemsley(1988)確率推定課題 2つの集合からサンプルを抽出し,どちらの集合に属するかを推測させる対象 妄想のある統合失調症患者,
妄想をない精神科患者,健常対照者結果 妄想群は他の2群より①結論にいたるサンプル抽出数が少ない
⇒少ない情報量から性急に結論へと飛躍②仮説の確信度が高い。
⇒自分の仮説に対して過剰な確信を持つアナログ研究でも同じような結果
2)メカニズム研究 妄想の推論障害③性急な結論バイアス(jumping to conclusion)
結論への性急な飛躍 (Jumping to Conclusion)ビーズ 課題 (ガレティら 1991 )結論への性急な飛躍 (Jumping to Conclusion)ビーズ 課題 (ガレティら 1991 )
p<0.01
0
2
4
6
8
10
12
決定するまでの取り出し回数
人数
1 2 3 4 5 6
妄想群
非妄想群
3)発生予測と予防の研究どんな認知要因が被害妄想観念と関連するか
(森本・丹野 2000)
相関関係にすぎず、どちらが原因なのか因果関係は不明
妄想の素因とされてきた5つの認知要因
被害妄想観念
自己標的バイアス
怒りと衝動性
恨みと過酷さの知覚
不信感
対人的猜疑心
0.35**
0.40**
0.34**
0.22
0.47**
横断調査
** p<.01
3)発生予測と予防の研究どんな認知要因が妄想的観念を予測するか
(森本・丹野 2000)
第1時点 第2時点
被害妄想観念1回目
被害妄想観念2回目
妄想の素因とされてきた5つの認知要因
第1時点と第2時点の間に体験したストレスの評価
縦断調査
⇒相関関係を越えて、因果関係に踏みこんだ分析⇒被害妄想観念の発生は予測可能
3)発生予測と予防の研究縦断研究では「怒りと衝動性」と「恨みと過酷さの知覚」のみが有意に被害妄想の増加を予測
怒りと衝動性が強い
怒りと衝動性が弱い
被害妄想観念の変化量
(森本・丹野2000)
3)発生予測と予防の研究被害妄想観念の発生が予測可能なら、
発生を予防できないか?
「怒りと衝動性」か「恨みと過酷さの知覚」を持つ人をスクリーニングし、前もって、①高ストレス時に被害妄想を持ちやすいことを知らせる。②ストレス対処訓練をおこなう。それによって被害妄想観念の発生を予防できないか?今後の検討課題(倫理的制約など)
対人ストレス
妄想の素因怒りと衝動性恨み対人回避と苦痛
健常者の妄想的観念の認知モデル まとめ
A 出来事 B 認知 C 感情 D 行動
行動感情苦痛高揚
推論障害性急な結論バイアスなど
素因ストレスモデルが成り
立つ
健常者にも珍しくない
統合失調症の妄想との違いは、苦痛度と心的
占有度
妄想的観念
妄想の認知モデル(ガレティとヘムスレイ)
A 出来事 B 認知 C 感情・行動
無視 証拠探し
認知状態
出来事
妄想的信念
判断スタイル
感情面の強化
幻聴の認知行動モデル(チャドウィックとバーチウッド)
A:幻聴の B:幻聴への C:幻聴による D:幻聴への
内容 認知 感情 行動
協調行動
抵抗行動ネガティブ
ポジティブ
悪意的
善意的 ポジティブ
ネガティブ
精神病の陽性症状の認知モデル精神病の陽性症状の認知モデル((ガレティらガレティら2001)2001)
陽性症状
妄想・幻聴
生理的-心理的-社会的-脆弱性
ストレス
基礎的な認知障害
異常体験
感情の
変化
陽性症状を維持する要因•推論バイアス•信念、感情、行動•精神病の解釈•敵対的な環境
体験の
解釈
解釈を左右する要因• 推論バイアス• 自己と世界に対する
信念• 孤立、敵対的な環境