fasbの新リース基準に関するよくある質 - deloitte united states · 2020-02-10 · 2...

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20174252412目次 はじめに 範囲 リースの定義 借手のモデル 貸手のモデル リースの分類 リースモデルの構成 要素 表示と開示 移行 他の重要規定 付録 A:基準、その 他文書の一覧 付録 B:略語 FASBの新リース基準に関するよくある質 デロイト&トウシュLLP ナショナルオフィス、アカウンティング・サービシズ はじめに FASB がリースの会計処理に関する新基準、ASU 2016-02 1 ASC 842 に編纂されている)を発行してから 1 年以 上が経過する 2 。同基準は 2019 年まで発効にならないが 3 、事業体から既に、導入に伴う課題が提起され始めてい 4 。また、リースの定義、リース料、表示及び開示を含む同基準の基本概念について多くの疑問が提起されている。 Heads Up では、そうした話題に関する我々の見解を紹介するほか、同基準に関するよくある質問をとりあげる。 さらに、本稿の発行日時点で未解決のものもある、新指針に関する主な課題をいくつか浮き彫りにする Driving Discussions(議論の発展)も掲載している。 ASU 2016-02 の全体像については、デロイトの 2016 3 1 日付 Heads Up をご覧いただきたい。 1 基準、規制及びその他文献の正式名称については付録Aをご覧いただきたい。略語の定義については付録Bをご覧いただきたい。 2 ASU 2016-022016225日に発行された。IASBの新リース基準であるIFRS16号は2016113日に発行された。 3 公開企業、特定の非営利事業体、特定の従業員給付制度については、ASU 2016-0220181215日より後に開始する年度及びその中間期 間から発効する。その他の事業体はすべて、同ASU20191215日より後に開始する年度及び20201215日より後に開始する年度内の 中間期間から適用しなければならない。早期適用も認められている。 4 20161130日、FASBASU 2016-02発行以来初めて、新リース基準の導入上の問題について協議した。同審議会は、利害関係者が提起し た導入上の課題については、収益認識や信用損失の新指針に関する移行上の課題に対処するために創設された移行リソース・グループ(TRGTransition Resource Group)のような組織を設置するのではなく、今後のFASBの会合で取り上げると言及した。 注:本資料はDeloitte & Touch LLPが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。 この日本語版についは有限責任監査法人トーマツにお問合せください。 この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版ニュースレターの 補助的なものです。あくまで英語版が(正)となります旨、ご了承下さい。

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Page 1: FASBの新リース基準に関するよくある質 - Deloitte United States · 2020-02-10 · 2 FASB の新リース基準に 関するよくある質問につ いて、5 月8 日の午後2

2017年4月25日

第24巻 第12号

目次

• はじめに

• 範囲

• リースの定義

• 借手のモデル

• 貸手のモデル

• リースの分類

• リースモデルの構成

要素

• 表示と開示

• 移行

• 他の重要規定

• 付録 A:基準、その

他文書の一覧

• 付録 B:略語

FASBの新リース基準に関するよくある質問 デロイト&トウシュLLP ナショナルオフィス、アカウンティング・サービシズ

はじめに

FASBがリースの会計処理に関する新基準、ASU 2016-021(ASC 842 に編纂されている)を発行してから 1 年以

上が経過する2。同基準は 2019 年まで発効にならないが3、事業体から既に、導入に伴う課題が提起され始めてい

る4。また、リースの定義、リース料、表示及び開示を含む同基準の基本概念について多くの疑問が提起されている。

本 Heads Upでは、そうした話題に関する我々の見解を紹介するほか、同基準に関するよくある質問をとりあげる。

さらに、本稿の発行日時点で未解決のものもある、新指針に関する主な課題をいくつか浮き彫りにする Driving

Discussions(議論の発展)も掲載している。

ASU 2016-02の全体像については、デロイトの 2016年 3月 1日付 Heads Upをご覧いただきたい。

1 基準、規制及びその他文献の正式名称については付録Aをご覧いただきたい。略語の定義については付録Bをご覧いただきたい。 2 ASU 2016-02は2016年2月25日に発行された。IASBの新リース基準であるIFRS第16号は2016年1月13日に発行された。 3 公開企業、特定の非営利事業体、特定の従業員給付制度については、ASU 2016-02は2018年12月15日より後に開始する年度及びその中間期

間から発効する。その他の事業体はすべて、同ASUは2019年12月15日より後に開始する年度及び2020年12月15日より後に開始する年度内の

中間期間から適用しなければならない。早期適用も認められている。 4 2016年11月30日、FASBはASU 2016-02発行以来初めて、新リース基準の導入上の問題について協議した。同審議会は、利害関係者が提起し

た導入上の課題については、収益認識や信用損失の新指針に関する移行上の課題に対処するために創設された移行リソース・グループ(TRG:

Transition Resource Group)のような組織を設置するのではなく、今後のFASBの会合で取り上げると言及した。

注:本資料はDeloitte & Touch LLPが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。

この日本語版についは有限責任監査法人トーマツにお問合せください。

この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版ニュースレターの

補助的なものです。あくまで英語版が(正)となります旨、ご了承下さい。

やむむたたたう言葉の意味、規則

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2

FASBの新リース基準に

関するよくある質問につ

いて、5月 8日の午後 2

時(東部夏時間)から

Dbriefs webcastを配

信するので是非ご覧い

ただきたい。

範囲

Q&A 1資産計上に関する会計方針

多くの事業体が会計方針において、固定資産(すなわち、有形固定資産)の資産計上を判断するために用いる重

要性の基準値を定めている。そうした方針のもとでは、当該所定の基準値を下回る支出については、貸借対照表

に資産計上して当該資産の耐用年数にわたり減価償却するのではなく、その支出がなされた期間に費用として計

上することになる。

ASC 842は(短期リース以外の)すべてのリースについて使用権資産とリース負債を認識するよう事業体に求めて

おり、IFRS 第 16 号にあるような「small-ticket item(少額項目)」の例外措置が盛り込まれていないため5、ASU

2016-02 のもと、リース資産及びリース負債について同じような資産計上の基準値を定めることができるか否かに

ついて多くの事業体から疑問の声があがっている。

質問

借手は、通常であれば同 ASU のもと貸借対照表に認識しなければならないリースについて、認識する必要がある

かを判断する適当な資産計上の基準値を使用できるか?

回答

できる。ASU 2016-02第 BC122項の一部を以下に抜粋する:

事業体は、所定の基準を下回ったときはリース資産とリース負債を認識しないという、資産計上に関する適正な基準値を

採用できる見込みであり、これにより、本指針の適用に伴うコストを軽減できると考えられる。この点に関する事業体の実

務は、GAAP の他の領域(例えば、有形固定資産の購入の資産計上)において多くの事業体の会計方針と一貫したもの

となる可能性がある。

新リース基準は具体的な例外を定めてないが、各事業体は、重要ではない項目に対しては米国 GAAP を適用す

ることが求められない。したがって重要性は常に、財務諸表の作成における考慮事項になる。但し、次の理由から、

有形固定資産に関する既存の資産計上の基準値をそのまま適用すべきではない:

有形固定資産に関する既存の資産計上の基準値においては、本 ASUによって導入される新たな資産の

基礎の影響が考慮されている可能性が低い。つまり、貸借対照表に認識しない資産の種類を追加すると

きは、合算した額が重要な額にならないように、当該事業体の資産計上の基準値を改めて分析する必要

が生じる場合がある。

有形固定資産に関する既存の資産計上の基準値は、貸借対照表の負債側には影響を及ぼさない。新基

準のもとでは、使用権資産とリース負債を貸借対照表に認識することを避けるために用いる所定の基準

値を定めたいと考える場合、当該事業体は、そうした基準値を採用する結果除外される使用権資産と対

応するリース負債すべてを合算し、その額の重要性を検討しなければならない。

次のうちいずれか少ない額を用いるというのも、リースの資産計上の基準値を定めるうえでは一つの適正な手法

になる:

使用権資産を含む有形固定資産の資産計上の基準値(すなわち、ASU 2016-02 に従って算定するリー

ス資産の影響を考慮に入れた基準値)

同 ASUに従って算定するリース負債の影響を考慮に入れた負債の認識基準値

他にも、すべてのリース負債を計上するが、対応する使用権資産についてはそうした基準値に基づいて判断すると

いうのも、リースの資産計上の基準値を定めるうえでは適正な手法になる。この手法のもとでは、使用権資産が所

定の資産計上の基準値を下回るときは、当該使用権資産は直ちに費用として認識することになる。それ以降の期

間については、実効金利法を用いてリース負債を償却する。つまり、期間中のリース料の一部だけリース負債が減

少し、残りの額は利息費用として認識することになる。

5 IFRS第16号のもとでは、対象資産が少額であるリースは、使用権資産及びリース負債から除外できる。特定の資産が少額であるか否かの判定

については、IFRS第16号のB3項からB8項をご覧いただきたい。

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また、本 ASUに従って定めた、リースの資産計上の基準値を評価及び適用するときは、次の点を考慮に入れる必

要がある:

リースの仕訳に伴い借方と貸方それぞれに生じる総額での残高:重要性を評価する際に、リースの仕訳に伴い貸借対照表に生じる純額での影響(多くの場合ゼロになる)のみを考慮に入れるというのは不適切

であろう。

開示規定:上で説明した資産計上の基準値の使用に基づき、貸借対照表への認識が不要であると判断したリースについては、事業体は多くの場合、開示を省略したいと考えるだろうと我々は予想する。かかる

開示を省略しても適切である場合があるが、当該基準値を定めるために重要性の評価をする時は、省略

される開示の影響を考慮に入れる必要があろう。

財務報告に係る内部統制(ICFR)上の意味合い:事業体が財務報告に関係して資産計上の基準値を見直し変更する(又は新たな基準値を定める)ときは、それに伴う ICFR 上の意味合いを認識する必要があ

る。また、ICFR の重要な変更に関する SEC 規則 S-K 第 308(c)項に基づくフォーム 10-K 及びフォーム

10-Qの開示規定も考慮に入れる必要がある。

SAB トピック 1.M(SAB 99):リースに関する適当な資産計上の基準値を特定するにあたっては、SAB ト

ピック 1.Mにある重要性に関する指針が役立つかもしれない。

ある借手が、事業上使用する機械について 5年間のリースを締結した。同借手は、リース開始時の使用権資

産及びリース負債の額を測定したところ、3,260 ドルであると算定した。

自己の使用権資産及びリース負債に関する適当な資産計上の基準値を特定するために、借手は次の要素を

考慮に入れた:

使用権資産とリース負債の総額での残高(正味残高ではない)

一定の使用権資産とリース負債を認識しなかったときに省略されるであろう開示

借手が資産計上の基準値を適用及び監視するために必要とされる適切な内部統制

SAB トピック 1.Mに定められている全体的な重要性に関する検討事項

これらの要素を検討したうえで、借手は、(1)使用権資産を含む有形固定資産の適当な資産計上の基準値は

3,500 ドルである、(2)リース負債の適当な認識基準値は 3,000 ドルである、と判定した。借手は、リースを貸

借対照表に計上するか否かを判定する時、これら 2つのうちいずれか少ない額の基準値を適用する必要があ

る。借手の使用権資産及びリース負債の当初測定値は、リース負債について定めた基準値の 3,000 ドル(す

なわち、2つの基準値のうち少ない方)を超過するため、借手はリース開始時に、貸借対照表に当該使用権資

産とリース負債を認識する必要がある。

又は、借手は 3,260 ドルのリース負債は認識するが、使用権資産を含む有形固定資産に関して定めた 3,500

ドルの基準値に照らし合わせて、使用権資産は認識しないという選択もできる(すなわち借手は、リース開始時

に使用権資産の原価を費用計上することを選択できる)。

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リースの定義

Q&A 2重大なサービス部分を含む資産

背景

事業体は、契約の履行義務を果たすために必要な有形固定資産を含むサービスの取り決めを締結する場合があ

る。サービスの提供全体にとっての当該有形固定資産の重要性は、取り決めの種類によって異なる可能性がある。

例えば、ある荷物をミュンヘンからミルウォーキーへ配送するという輸送サービスを契約する顧客は、当該サービス

の履行に用いる有形固定資産についてはあまり気にも留めないだろう。対照的に、自己が指定する場所と日時に

物品を輸送するために一定期間にわたり船舶と乗組員を提供してもらう契約をする顧客は、当該取り決めにおい

て使用する有形固定資産について、先の顧客より関心がある可能性が高い。しかしながら、いずれの取り決めにも、

輸送義務を果たすのに使用する有形固定資産を稼働させるサプライヤーによって提供される重要なサービス部分

が組み込まれている。

多くの場合、ある契約がリースに該当するか否か、又は契約にリースが含まれているか否かの判定は分かりやす

いものになるだろう。しかしながら、サービスの取り決めに特定の実物資産が組み込まれているときや、顧客とサプ

ライヤーの両方が対象資産の使用について意思決定を行う場合は、その評価はより複雑になるであろう。そのよう

に線引きがはっきりしない複雑な取り決めの例としては、クラウド・コンピューティング・サービスが組み込まれた取

り決めや(すなわち、メーンフレームやサーバーなどの付属機器のリースを伴うとき)、ケーブル・テレビのサービス

(顧客に支給されるケーブル・テレビ用チューナーがリース資産であるとき)などが挙げられる。

質問

特定の取り決めにリースが含まれているか否かを判定するのに、有形固定資産の使用を伴うサービスの取り決め

も評価する必要があるか?

回答

必要である。ASC 842-10-15-2に従い、事業体は、契約にリースが含まれているか否かを契約締結時に特定する

必要がある。すべてのリースがリースと分かるように名称がつけられているわけではなく、大きな取り決めにリース

が組み込まれている場合もある。例えば、供給の取り決め、電力購入の取り決め、並びに石油及びガスの掘削契

約にリースが含まれている場合がある(すなわち、それぞれに製造設備、発電資産、又は掘削装置のリースが組

み込まれている場合がある)。ある取り決めにおいて有形固定資産が(明示的、又は黙示的を問わず)特定された

ときは、顧客とサプライヤーはいずれも、顧客が使用期間にわたり当該有形固定資産の使用を支配するか否かを

判定しなければならない。

ASC 842 のもとでは、ある取り決めがリースに該当するか否か、又はある取り決めにリースが含まれているか否

かの判定は極めて重要である。短期リースを除きすべてのリースを貸借対照表に反映させなければならないという

ASC 842 の規定を踏まえると、サービスの取り決めに組み込まれているリースを含めリースの特定を借手が怠っ

た場合、財務諸表の誤謬に繋がる可能性が高い。他方、ある契約はサービスの取り決めであり、リースは組み込

まれていないと顧客が結論付けたときは、当該顧客は、当該契約を貸借対照表に反映させる必要はない(但し、他

の米国 GAAP によって求められているときはこの限りではない)。ASC 840 のもとでは、貸借対照表及び損益計

算書上でのオペレーティング・リースの処理は、多くの場合、サービスの取り決めと同一であるため、取り決めの判

定は、リースに関する現行の指針よりも ASC 842のもとの方が重要になる可能性がある。

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Q&A 3経済的便益と租税属性

背景

ASC 842-10-15-3 には、「契約が、特定された有形固定資産(特定された資産)の使用を支配する権利を一定期

間にわたり対価と交換に移転する場合は、当該契約はリースであるか又はリースを含んでいる」と明記されている。

ASC 842-10-15-4 には、特定された資産の使用を支配する権利が顧客にあるか否かを判定する際は、当該顧客

が次のいずれも有するか否かを評価する必要があると定められている:

「特定された資産の使用による経済的便益の実質すべてを享受する権利」(強調追加)

「特定された資産の使用を指図する権利」

経済的便益は、当該資産の使用(例えば、資産を使用し、保有し、又は転貸すること)による直接的又は間接的便

益で構成され、当該資産の主要生成物及び副生成物が含まれる。それらは、有形のときもあれば、無形のときもあ

る(再生可能エネルギー・クレジットなど)。

対象資産が所定の種類に該当するときに、所有者が特別な税務上の便益又は租税属性を利用できる場合がある。

多くの場合、そうした税務上の便益や租税属性が認められるのは、政府が当該資産の開発への投資を奨励すると

決めたときである。そうした便益や属性が、購入者による投資判断を大きく左右する場合があり、本来であれば非

経済的である資産又はテクノロジーへの投資を経済的に正当化することが往々にしてある。

質問

顧客が資産の使用による経済的便益の実質すべてを享受する権利を有するか否かを判定する時に、事業体は対

象資産の所有に伴う租税属性を考慮に入れるべきか?

回答

考慮に入れるべきではない。顧客が資産の使用による経済的便益の実質すべてを享受する権利を有するか否か

を判定する時に、対象資産の所有に伴う租税属性を考慮に入れるべきではない。

ASC 842-10-15-17 には、経済的便益は第三者との商取引によって実現できると記載されている。租税属性は、

資産の所有に伴うものなので、その性質上、商取引において売却できない。

このアプローチは、ASC 840 のもと生成物を算定する手法と変わらないため、ASU 2016-02 の採用に伴い実務

が変わることは見込まれない。

例 1

電気自動車の所有者に、所定の額か購入価格の一定割合に相当する投資減税が認められる場合もある。し

かしながら、報告事業体は、顧客が資産の使用による経済的便益の実質すべてを享受する権利を有するか否

かを判定する時に、同電気自動車に関係する投資減税を考慮に入れてはならない。

リースによって移転するのは(対象資産の所有権ではなく)対象資産を使用する権利のみであるため、資産の

所有に関係する便益は、ある取り決めにリースが含まれるか否かの判定に含めるべきではない。むしろ、この

判定は、契約期間中に資産を使用する結果生じる、第三者との商取引により実現できる経済的便益に限定す

べきである。投資減税は資産の所有に伴うもので、当該減税に関係する便益は第三者へ売却できない。

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例 2

風力発電所や太陽光発電所などの再生可能エネルギーの生成施設の所有者に、当該施設が生産する単

位電力当たり一定額の生産減税が認められる場合がある。しかしながら、報告事業体は、顧客が資産の使

用による経済的便益の実質すべてを享受する権利を有するか否かを判定する時に、同再生可能エネル

ギー生成施設に関係する生産減税を考慮に入れてはならない6。

生産減税の額は、対象資産が生産する生産量から導き出されるが(例えば、再生可能エネルギー生成施

設が生産する電力 1キロワット時当たり 0.023 ドルの減税額など)、減税による便益は、対象資産の所有

者しか享受できない可能性がある。投資減税同様、生産減税は資産の所有に伴うもので、当該減税に関係

する便益は第三者へ売却できない。

Driving Discussions:リースの定義

より大きな資産の一部を使用する権利が組み込まれている取り決めにリースが存在

するか否かの判定

顧客がより大きな資産の一部を特定期間にわたり共用するといういわゆる「二次使用」につい

ていくつか質問が寄せられている。そうした取り決めの例としては、固定資産の表面に貼る広

告や非公益事業体の顧客による電柱への配線(ケーブルワイヤなど)の架線などが挙げられ

る。(1)二人の当事者が同じ資産を同時に使用するときの経済的便益の評価方法や、(2)支

配の評価にどの会計単位を使用するか(より大きな資産か共用部分か)――について多くの

質問が寄せられている。

ASC 842-10-15-16は、資産の一部分が「特定された資産」とみなされ、ASC 842の対象にな

り得るか否かの評価について指針を示している。同指針のもとでは、「資産の稼働能力又は他

の部分のうち物理的に別個ではないものは、(中略)特定された資産ではない。ただし、資産の

稼働能力のほとんどすべてを表していて、それにより資産の使用による経済的便益のほとん

んどすべてを得る権利を顧客に与えている場合は除く」(強調追加)。

物理的区別について疑問が生じることが時折ある。とりわけ、より大きな資産についてで、その

特定部分を一人以上の当事者が異なる使用目的のために所定の期間にわたり共用している

場合である。例えば、建物の外壁について、ある当事者には広告に使用する独占権が付与さ

れる一方、建物の占有者は、住居を支えるものや雨風から守るものとして当該外壁を使用し

続けるといった場合がそうした状況に該当する。機能的に独立し且つ固有の存在である、高層

建物の特定の階をリースするといった場合と異なり、上記の例は、より大きな資産の一部を同

時に、しかし異なる目的のために使用するといった状況を伴う。他にも、屋上の特定部分への

太陽光パネルの設置や、電柱の特定部分へのケーブル・ワイヤの架線も例として挙げられる

(いずれの場合も、所有者は当該資産全体の使用を続けながら、他の当事者に資産の一部を

特定期間にわたり他の目的のために使用することを認めている)。こうした取り決めに、実質的

な入替えの権利が組み込まれているときは、リースは原則存在しない。もっとも、実際に存在

する状況の多くが、入替えを認めていないと我々は理解している。

我々は他の専門家と協力し、こうした取り決めの分析に使用できる指針の策定を続けている。

これまでに我々が議論を交わした考慮事項のうち、リースが存在するか否かの判定に有用に

なるであろうものを一部以下に示す:

取り決めにおいて指定された特定部分など、より大きな資産の共用が取り決めに組

み込まれているか?

顧客が使用する部分は機能的に独立しており、当該より大きな資産から分離できる

か?

顧客が使用する部分は、その設計上、資産の所有者にとって商業的に重要か?

6 再生可能エネルギー生産減税などの租税属性は、再生可能エネルギー・クレジットとは異なる。ASC 842-10-15-17によると、再生可能エネル

ギー・クレジットは、再生可能エネルギー生成施設の使用による副産物で、第三者との商取引により実現できる便益に該当する。ASC 842-10-

55-108から55-111にある例9の事例Aに、リースを含むエネルギー/電力の契約が例示されている。ASC 842-10-55-111(a)においてFASBは、

例にある再生可能エネルギー・クレジットは、再生可能エネルギー生成施設の使用による経済的便益であると結論付けている。

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共用

共用の取り決めは通常、同じ資産(又はより大きな資産の同一部分)を異なる目的のために同

時に使用することを伴う。例えば、パイプラインを地中に埋める権利を地役権の所有者に付与

する一方で、土地の所有者が農業その他の目的のために当該土地を使用する重要な権利を

留保するといった地役権がそれに該当する。同様に、多くの広告契約に、共用が重要な要素と

してある(例えば、野球場のダグアウトの上やバスの側面、食料品店の床に表示される広告な

ど)。他方、資産の所有者が資産を同時に使用していないときは(又は資産を使用することが

契約上認められていないとき)、共用は存在しない可能性がある。例えば、携帯電話の基地局

の運営者で、当該基地局の特定のホスティング・サイトを特定期間にわたり使用することを顧

客に認めている場合がそれに該当する。共用の取り決めはリースが含まれている可能性は低

く、独占使用の取り決め(すなわち、顧客がより大きな資産の一部を独占的に使用する取り決

め)はリースが含まれている可能性が高い可能性がある。特定の取り決めが、より大きな資産

の一部の共用又は独占使用を特徴づけるか否かの判定に当たり、判断を伴う可能性がある。

機能的独立

取り決めの対象である資産の機能別の用途及び設計を含め、顧客が使用する部分の機能的

独立性を評価することは有用である可能性がある。顧客が使用する部分に機能的に分離され

た用途がある場合(例えば、建物の特定の階など)、使用される部分は物理的に区別でき、特

定された資産である可能性が高くなりうる。他方、使用される部分が、より大きな資産から機能

的に区別できないときは(電柱の特定部分など)、より大きな資産を、取り決めにおける特定さ

れた資産とみなす合理的根拠があると考えられる。

設計上の商業的重要性

設計上の商業的重要性、つまり、資産の所有者が当該資産を建設又は購入したときの商業上

の目的を検討することも有用である可能性がある。特定部分(例えば、携帯電話の基地局に

ある特定のホスティング・ロケーション)を他者に賃貸するという商業的目的を持って資産を建

設又は購入したときは、当該目的のために使用される部分は物理的に区別でき、特定された

資産に該当する可能性が高い。反対に、そうした商業上の目的を持たずに建設又は購入した

資産(電柱など)は、より大きな資産を、取り決めにおける特定された資産とみなす合理的根拠

がある可能性がある。

リースが存在するか否かの判定

資産の特定部分の使用が、当該資産の同部分の二次使用又は付随的使用とみなす合理的

根拠が存在し、所有者が当該部分の使用による実質的な経済的便益を留保している可能性

がある状況の評価にあたり、上に示した指標が、事業体にとって参考となる可能性がある。場

合によっては、より大きな資産を取り決めにおける特定された資産とみなし、それに基づき(経

済的便益を含む)支配を評価した方が合理的なときもある。一般的にそのようなアプローチで

は、顧客はより大きな資産の使用による経済的便益の実質すべてを享受しないため(顧客の

経済的便益は、自己が使用する特定部分に限定される)、当該取り決めにはリースが含まれ

ていないという結論が導き出される可能性が高くなる。

次のステップ

この問題はまだ議論の途中であり、関係する導入指針を確定する前に、FASB と SECはそれ

ぞれの見解を共有したいと考えるだろう可能性がある。こうした種類の取り決めの当事者であ

る会社は、会計アドバイザーに意見を聞くべきであるのに加え、この話題の動向を注視すべき

である。

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ネットワーク・サービスに関する契約(ASC 842-10-55-124から55-126にある例10の

事例A)

ASC 842-10-55-124 から 55-126 にある例 10 の事例 A の結論についていくつか質問が寄

せられている。同事例は、電気通信会社(サプライヤー)が複数のサーバーを顧客の敷地に設

置及び設定し、顧客のネットワーク・ニーズ(主にデータの保管と送信)をサポートするという

ネットワーク・サービスの契約に関するものである。同取り決めの期間中、サプライヤーが、顧

客の要望に応えるために、保有するサーバーをどう投入するかを決定する。この取り決めでは

専用の機器を使用し、そのうち一部は顧客の敷地で保管するものの、同事例で導き出された

結論として、顧客が個別のサーバーを支配しないため、当該取り決めにはリースは含まれてな

い、とされている。

一部の者は、取り決めの期間中サーバーは専ら当該顧客のために使用されるため、この結論

は直感に反すると考える可能性がある。しかしながら同結論は、リースに関する現行の指針か

らの重要な変更点を浮き彫りにしている。具体的に言うと、ASC 842 のもとでは、リースが存

在すると判定するには、取り決めにおいて顧客が資産の支配を取得しなければならず、支配

は、資産の全生産物に対する権利を有すること(ASC 840 における現行の指針のもと、ある

取り決めがリースに該当すると結論付けることができる状況の一つ)に限定されていない。むし

ろ、ASC 842 のもとでは、(1)経済的便益と、(2)特定された資産の使用を指図する権利、に

焦点を当てた 2 段階の支配の判定を行う。上記例では、2 つ目の条件が満たされないため、

当該取り決めにはリースが含まれていない。

この例の顧客にサーバーの使用を指図する権利がないという結論を導く主要な要素につい

て、いくつかの利害関係者から疑問の声が出ている。例えば、発電装置を運用する(すなわ

ち、所有者兼運転者にいつ電力を生産するかを指示する)権利が当該装置の使用を指図する

権利を顧客に移転させるなら(ASC 842-10-55-117から 55-123にある例 9の事例 Cが示す

ように)、ネットワークを用いて、いつ、どのデータを保管し又は送信するかを決定する権利が、

なぜ同じように、対象のサーバーに対する支配を顧客へ移転させないのかという疑問である。

Page 9: FASBの新リース基準に関するよくある質 - Deloitte United States · 2020-02-10 · 2 FASB の新リース基準に 関するよくある質問につ いて、5 月8 日の午後2

9

例 10 の事例 A における結論の背景にある、主要な要素については、我々は次のように理解

している:

分析の焦点は、ネットワーク全体ではなく、各個別サーバーがリースであるか否かで

ある。この例では、サプライヤーは専用の資産を用いてサービス(所定の能力及び品

質のネットワーク)を提供している。よって、支配に関する分析は、資産レベルで(すな

わち、個々のサーバーレベルで)なされるべきである。

資産を「どのように、そして何の目的のために」使用するかの検討もまた、ASC842-

10-15-25 にあるように、各個別サーバーに関する決定に焦点が当てられる。つまり、

ネットワーク全体が生み出すアウトプットに焦点が当てられるのではない。

この事例は複数の資産(複数の個々のサーバー)が関係し、サプライヤーは、ネット

ワーク・サービス全体の履行に最適だと自らが判断する方法で、各個別サーバーを

配置する裁量権を保持する。

各サーバーは個々に、異なる機能(データの保管やデータの送信など)を担いうるた

め、顧客の具体的要望を満たすためにどのサーバーを使用すべきかについては、サ

プライヤーが有意な決定を行う権利を有する。

顧客は、各個別サーバーをどのように、そして何の目的のために使用するかを決定

できないうえ、サプライヤーがそうした決定をするのを妨げることもできない。

顧客の決定権は、顧客がどのようにネットワークを使用するかに限定され、個別の

サーバーには及ばない。

このような主要な要素が、例 10 の事例 A における結論と、例 10 の事例 B における結論

(ASC 842-10-55-127 から 55-130)の違いを把握するのに役立つと考える。事例 Bでは、取

り決めは単一のサーバーに関するものであり、顧客が、その単一のサーバーを用いてどの

データを保管し又は送信するかについて、並びに、その単一のサーバーをより広範なオペレー

ションに組み込むか方法(又は組み込むか否か)について、重要な決定を下す。したがって、

発電装置(これも単一の資産)の運用権に関する例 9の事例 Cには、事例 Aよりも事例 Bの

方が似ている。

上述の例における主要な峻別要素の理解は、財務諸表の作成者が ASC 842 に基づいて

リースを識別する際に役立つであろう。しかしながら、設例はあくまで例である。これらの各例

は、枠組みの適用の一つを示しているに過ぎず、個別の事実関係及び状況の細かい分析を

必要とする。自社の取り決めについて不明な点がある場合、又は例 10 の事例 A における分

析と同じように自社の取り決めを分析すべきか不明な場合は、自社の監査人又は会計アドバ

イザーに相談することを推奨する。

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10

地役権

地役権とは、特定の目的のために他人の土地を通行し又は他の方法で使用する権利をいう。

ほとんどの地役権が、土地を通行する権利や土地に特定の装置を建設し維持する権利など、

限られた権利を地役権保有者へ与えるものである。例えば、電気事業者は、第三者が所有す

る土地に送電設備を建設し維持することを可能にする、連続した地役権を多くの場合取得する

であろう。地役権は、永続的な権利の場合もあれば期間が定められている場合もある。また、

支払いを前もって行うものもあれば、定期的に行うものもある。

従来から、会社によっては、地役権は ASC 350に基づく無形資産であるとみなされてきた。事

実、ASC 350 には、ガス・パイプラインの開発を支援するために取得した地役権の設例が記

載されている。反対に、地役権をリースや未履行契約とみなしてきた会社もある。有形固定資

産が、それらを支援する地役権と深い関連性があるため、財務諸表を作成する際に多くの会

社が、地役権に関する前払い金額を貸借対照表の有形固定資産の区分に表示している。

FERC の報告規定もまた、同機関の規制対象である会社の貸借対照表上の区分に影響を及

ぼした可能性があると我々は理解している。

地役権又は通行権が新リース基準の対象であるか否かについて疑問が提起されている。これ

らの取り決めは ASC 350 に基づく無形資産であり、したがって、無形資産のリースに関する

ASC 842の適用除外規定が認められると主張する見解が多い。しかしながら、地役権は一般

的に土地の使用に関する権利に関係するため、まずは ASC 842 のもと分析し、その地役権

がリースに該当するか否か又はリースを含むか否かを判定すべきである。地役権を無形資産

として処理するという方針をこれまで採用してきた事業体を含め、すべての事業体がこの判定

を実施する必要がある(ASC 842への移行時に、ASC 842-10-65-1(f)に定められている実務

上の負担軽減措置の適用を選択する会社に関する特別な検討については後述を参照)。

地役権が永続的なものであるときは、期限が定められていないため、その取り決めはリースの

定義を満たさないと我々は推測する。期限が定められている地役権(100 年など長期のものも

含む)については、その分析はもっと複雑になることは必至であり、対象の土地の支配につい

て検討することになるだろう。移転する権利が限られていること、及び所有者が引き続き享受

する経済的便益を前提とすると、地役権の取り決めの多くは、当地の支配を地役権保有者に

移転しない可能性がある(すなわち、地役権保有者は、土地の経済的便益の実質すべてを享

受しない可能性がある)。例えば、ある会社に、ある農家の農場に送電用資産を設置すること

を認める取り決めにおいては、その資産が架設され又は敷設された土地を当該農家が引き続

き使用できるか否かの把握が重要になろう。もし使用できるなら、農家は(1)使用権(農作物を

育てる能力など)、(2)当該土地に関係する、重要ではないもの以外の経済的便益、又は(3)

これら(1)及び(2)の両方――のいずれかを保持するため、地役権保有者は、当該土地を支

配しないと結論付ける可能性がある。反対に、移転される権利、又は土地の所有者に課され

る使用上の制約を通じて、土地の支配が地役権保有者へ実質移転される地役権の取り決め

もある。求められる会計処理は、各取り決めの事実関係と状況次第になる。

地役権を多量使用者に対しては、次の対策を推奨する:(1)地役権の取り決めを、類似する条

件ごとに区別する、(2)期限が定められている取り決めを隔離する、及び(3)分析の手がかり

として、土地の所有者が保持する権利を調べる。多くの地役権が似通った又は同じ条件を有

すると考えられ、よって、同じような会計処理になることが見込まれるため、上記対策を講じる

ことでプロセスの合理化が図られる可能性がある。

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11

移行に関しては、ASC 842-10-65-1(f)に定められている実務上の負担軽減措置により会社

は、期間満了を迎えた又は既存の契約に ASC 842 に基づくリースの新定義によるリースが

含まれているか否かの再判定の省略が容認されている。この措置を選択する場合、その会社

による、地役権の会計処理に関するそれまでの結論にも原則適用されるであろうと我々は考

えている。但し、その結論が従来の GAAP のもと適切であったことを前提とする。すなわち、

ASC 842-10-65-1(f)は、間違っていた従前の会計処理は容認しない。よって、当該取り決め

が ASC 840 のもとこれまでリースとして処理すべきだったにも関わらずそうしてこなかった場

合は、この移行措置によって救済されない。

地役権の会計処理について、一部の業界関係者と FASB との間で協議が続けられていること

を我々は認識している。上記考察は、そうした対話について把握している内容に基づく現時点

の我々の見解に相当する。(ASC 842 又はその他のもと)地役権の会計処理についてさらな

る基準設定の動きがあれば、それに応じて我々の見解を更新する予定である。

共同支配事業契約

業界によっては、複数の会社が共通の商業目的を達成するために共同支配の取り決めを締

結する場合がある。そして、これらの取り決めに、所定の期間にわたる特定の有形固定資産

の使用が盛り込まれる場合がある。例えば、石油及びガス業界の事業体は、複数の当事者

(すなわち、現場担当事業者とそれ以外)が、各当事者の経験と資源を用いて石油又は天然

ガスの資産を共同で探査し開発するという共同支配事業契約(JOA)を締結することがよくあ

る。こうした取り決めには往々にして、リース機器の使用が必要になる。そうした共同支配の取

り決めの当事者に関する、新リース基準に基づくリース評価規定について疑問が提起されて

いる。共同支配の取り決めの分析は基本的に事実関係と状況に基づいて行うことになると予

想するが、次に示す例と分析が、それらの取り決めを検討するときに参考になると考えられ

る。

A社、B社、C社の 3社が海洋掘削プログラムを実行するために共同支配事業契約(JOA)を

結んだ。これらの会社が JOAの目的を実現するには、ある特定の資産(掘削装置など)が必要

になる。A社が、特定の掘削装置を所有者(貸手 X)から賃借する期間 5年の契約を含め、

JOA上の主な契約の当事者になる。

質問 1:掘削装置をリースしている当事者がいるとしたら、どの当事者になるか?

掘削装置のリースにおける主たる債務者という A社の役割に鑑みると(掘削装置の所有者は

JOAの存在や JOAを構成する当事者を認識していない可能性がある)、A社が基本的に当該

取り決めにおける借手とみなされる。したがって A社が、自己の貸借対照表にリースのすべて

を計上する。他の当事者も掘削装置による経済的便益を享受するが、それらの便益は JOAか

ら生じるものであり、A社と掘削装置の所有者 Xとの間の契約に関する経済的便益の分析7に

影響を及ぼさない。

7 ASC 842のもと、特定された資産の使用を支配するには、顧客は、当該資産の使用による経済的便益の実質すべてを使用期間にわたり享受す

る権利を有している必要がある。

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例(続き)

質問 2:JOAの影響は?

JOAの条項が、A社から JOAへの掘削装置のサブリースに該当する可能性がある。つまり、

新リース基準により JOAの当事者は当該条項を検証し、JOAが掘削装置の「実質的な」借手

か否かを判定する必要がある。JOAは通常、財務諸表を作成する法的主体ではないが、JOA

が掘削装置の借手であるという結論が導き出されたときは、次の意味合いを持つことになるだろ

う:

A社は(掘削装置の所有者 Xとの原リースとは別に)別途、JOAへのサブリースを転

貸人として処理する

JOA の各当事者は、当該リースに関する自己の比例部分を(借手として)計上するよ

う求める可能性がある他の GAAP(比例連結の指針など)を検討する必要がある。

なお、上述の例の質問 2 にある「他の GAAP」は業界によって異なる可能性がある(例えば、

比例連結の指針は業界によっては関係ない場合がある)ことに留意のこと。また、この分析は

適切なレベルで実施する必要があり、必ずしも JOA のレベルで実施すべきというわけではな

いことにも留意のこと。ASC 842 は、「共同支配事業又は共同支配の取り決め」に関係する取

り決めに言及しており、特定された資産を複数の当事者が所定の期間にわたり共同で使用す

ることに合意しているときは、そうした取り決めが JOA の一部分を構成する場合もある。例え

ば、5 者が関係する期間 5 年の JOA において、そのうち 3 者が当初 2 年間にわたり特定の

掘削装置を使用して資産を共同開発することに合意する場合、その 2 年の契約を検証し、当

該契約にリースが含まれているか否かを判定する必要があるだろう。

最後に、上述の例は決して、ほとんどの JOA にリースが含まれているということを示唆するこ

とを意味していない。むしろ、特定の有形固定資産の使用が重要要素を占める共同支配の取

り決めが存在する状況において、ASC 842 が求めている分析に焦点を当て、それを説明する

ことが意図されている。

共同支配の取り決めの会計処理は、会社と監査人との間でいまだに議論の的になっている。

この問題により影響を受ける事業体においては、自己の監査人及び会計アドバイザーに確認

し、各取り決めの会計処理について助言を得ることを推奨する。

借手のモデル

Q&A 4 使用権資産の減損に関する検討事項

借手は、使用権資産について、他の長期性資産の処理に則した方法で(すなわち、ASC 360 に従って)、減損テス

トを実施しなければならない。オペレーティング・リースに関する使用権資産に減損が生じているときは、借手は、

ファイナンス・リースに適用される事後測定の指針に従って、残余使用権資産を償却することになる。通常は、残存

リース期間にわたり定額法で償却することになる。したがってオペレーティング・リースに、リース費用合計を定額ず

つ計上するという処理を適用できなくなる。但し、減損後の期間に、借手は使用権資産の償却と利息費用を引き続

き単一表示項目として表示することになる。

質問

ある資産グループについて ASC 360 に従って減損テストを実施する際に、その資産グループの一部を構成する

リースによる影響を借手はどのように反映させるべきか?

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回答

新リース基準のもとでは、オペレーティング・リースもファイナンス・リースもいずれも財務取引として貸借対照表に

計上するため、いずれの種類のリースによる影響も原則、ASC 840 に基づくキャピタル・リースの会計処理と同じ

ように減損の計算に含める。つまり借手は:

使用権資産とリース負債の両方を当該資産グループの簿価に含めるべきである、

当該資産グループの割引前キャッシュ・フローに、リース料の元本部分のみをキャッシュ・アウトフローとし

て含めるべきである。オペレーティング・リースのリース費用合計は、損益計算書に単一表示項目として

表示されるが、リース料には利息部分と元本部分の両方が含まれている。ASC 360-10-35-2 に整合した

方法で借手は、当該資産グループの割引前キャッシュ・フローからリース料の利息部分を除外する必要

がある。

編集者注

2016 年 11 月 30 日の FASB 会合にて同審議会は、借手は、資産グループについて ASC

360 に従って減損の評価を実施する時は、割引前キャッシュ・フローの計算から利息費用を除

外すべきであるという点で概ね一致した。ただし審議会のメンバーの中には、利息を減損分析

に含めると事業体が判断しても、それは会計方針の選択としてみなすことができると指摘する

声もあった。オペレーティング・リースの利息を含めた場合、資産グループに係る減損の可能

性は上昇するため、事業体がかかる会計方針を選択するとは我々は予想していない。

貸手のモデル

Q&A 5 販売型リース又は直接金融リースの重要な変動支払に起因する開始時の損失

FASBの狙いは、貸手の会計処理を ASC 606の新収益指針と整合させることだったが、両者の重要な相違が、さ

まざまな業界の貸手に影響を及ぼす可能性がある。ASC 606 のもとでは、変動支払を見積もり、条件付きで取引

価格に含める。対照的に ASC 842 のもとでは、特定の指数又は率に連動しない変動リース料は原則、貸手の

リース債権の算定から除外する。

したがって、変動リース料の部分が重要性のある販売型リース(sales-type leases)又は直接金融リース(direct

financing leases)は、リース債権に無保証残存資産を加算した金額が、対象資産の正味簿価を下回るため、リー

ス開始時に損失を認識することになる場合がある。例えば、リース料が、リース資産による生産高に応じて全額決

まる(すなわち、リース料が 100%変動である)ときや、リースによる期待キャッシュ・フローの一定割合が変動であ

る(例えば、期待キャッシュ・フロー合計額の 50%が変動である)ときは、そうした損失が生じ得る。但し、これらの

取引は通常、貸手の経済的損失に該当しない。

質問

販売型リース又は直接金融リースへの正味投資額の当初測定が対象資産の簿価を下回るときは、貸手はリース

開始時に損失を認識すべきか?

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回答

認識すべきである。2016 年 11 月 30 日付の FASB の会合で同審議会は、変動リース料の部分が重要性のある

販売型リース又は直接金融リースの当初測定を貸手がするときで、リース債権に無保証残存資産を加算して得た

値が、リース対象資産の正味簿価を下回る場合は、リース開始時に損失が生じ得ると認めた。同審議会は、こうし

た状況において開始時に損失を認識することが適切か否か、又は考えられる他のアプローチを容認できるか否か

を協議した。他のアプローチとしては次のものがある:(1)(ASC 606 を参照して)変動リース料を条件付きで組み

込む、(2)マイナスの割引率を用いて、開始時の損失を回避する。利害関係者は開始時に損失を認識するという

結論に納得しないかもしれないが、新リース基準は、当初測定指針を販売型リース及び直接金融リースへどのよう

に適用すべきかについて明確な指針を示しているとの見解を同審議会は示している。

FASBのスタッフとの協議において我々は、後述の例 1 及び例 2 に概説している状況と同じような状況では、ASC

842-30-20に定められている定義による「リースの計算利子率(rate implicit in the lease)」の計算結果は、マイナ

スの割引率が得られる場合があることを見出した。しかしながら 2016年 11月 30日の FASBの会合にて同審議

会は、マイナスの割引率を用いて(ASC 842-10-20の定義による)リースの計算利子率を算定することは不適切で

あると認めた。同会合で FASB がその会合でこの問題を協議した後、FASB のスタッフは、リースの計算利子率が

負の値であるときは、リースへの正味投資額を測定する際にゼロ%の割引率を用いるよう貸手に求めるとの見解

を我々に示した。

例 1

借手と製造会社の貸手は、貸手のR2シリーズ装置について期間5年の販売型リースを締結した。リー

ス開始前に貸手は、R2シリーズ装置を借手向けの特別仕様にカスタマイズした8。資産の簿価は100ド

ル、リース開始時の公正価値は120ドル、そしてリース期間終了時の見積無保証残存価額は50ドルで

ある。支払いは全て、借手によるR2シリーズ装置の使用を基礎とする。貸手は、借手が向こう5年間こ

の装置をどの程度必要としているかについて熟知しているため、支払いは100%変動であるものの、貸

手は、毎年20ドルの支払いを受け取るという前提のもと当該リースの価格を決定した。つまり貸手は、

6.4%の率を借手から徴収する9。

下表に、当該販売型リースの条項とASC 842のもとでの貸手のリースに関する会計処理をまとめた。

条項

リース期間 5年

公正価値 $ 120

簿価 $ 100

年間固定リース料 —

要求割引率* 0.0%

リース期間終了時の見積残存価値 $ 50

8 したがって、当該リースは、販売型リースの分類に関する、ASC 842-10-25-2(e)が定める基準を満たしている。 9 貸手は、見積年間キャッシュ・フローの20ドルと当該資産の見積残存価額である50ドルの最終キャッシュ・フローを、当該資産の公正価値である

120ドルに割り引いてリースの価格を決定する利子率を算定した。

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例 1(続き)

販売型リース‐100%変動

リースへの正

味投資額 利息収入

変動リース

収益 損益

0 $ 50.00** — — $ (50.00)

1 50.00 — $ 20.00 20.00

2 50.00 — 20.00 20.00

3 50.00 — 20.00 20.00

4 50.00 — 20.00 20.00

5 50.00 — 20.00 20.00

小計 $ 100.00

リースの損益合計 $ 50.00 * この例では、リースへの正味投資額を測定する時に、リースの価格を決定するのに使用し

た利子率(すなわち、6.4%の真利率(true rate))を割引率として使用するのではなく、

FASBのスタッフが説明した通り、貸手はゼロ%の割引率を使用している。

** リースへの正味投資額は次の合計を求めて当初測定をしている:(1)ゼロ%で割り引いた

リース料、(2)貸手がリース期間終了後に得ると見積もっている額(50ドル)を、ゼロ%で割

り引いた額。100 ドルの期待キャッシュ・フローは変動であるため、リースへの正味投資額

の測定に含めていない。

例 2

例 1 と同じ事実関係を前提とする。貸手はやはり、見積年間キャッシュ・フローを 20 ドルとし、6.4%の率で

借手から利子を徴収する10。但し貸手は、キャッシュ・フローの 50%を固定し、残りの 50%を借手による R2

シリーズ装置の使用に基づく変動にして、リースの価格を決定する。

下表に、当該販売型リースの条件と ASC 842のもとでの貸手のリースに関する会計処理をまとめた。

条件

リース期間 5年

公正価値 $ 120

簿価 $ 100

年間固定リース料 10

要求割引率* 0.0%

リース期間終了時の見積残存価値 $ 50

10 脚注9を参照。

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例 2(続き)

販売型リース‐50%変動

リースへの正

味投資額 利息収入

変動リース

収益 損益

0 $ 100.00** — — —

1 90.00 — $ 10.00 $ 10.00

2 80.00 — 10.00 10.00

3 70.00 — 10.00 10.00

4 60.00 — 10.00 10.00

5 50.00 — 10.00 10.00

小計 $ 50.00

リースの損益合計 $ 50.00 * この例では、リースへの正味投資額を測定する時に、リースの価格を決定するのに使用し

た利子率(すなわち、6.4%の真利率)を割引率として使用するのではなく、FASBのスタッ

フが説明した通り、貸手はゼロ%の割引率を使用している。

** リースへの正味投資額は次の合計を求めて当初測定をしている:(1)ゼロ%で割り引いた

リース料、(2)貸手がリース期間終了後に得ると見積もっている額(50ドル)を、ゼロ%で割

り引いた額。50 ドルの期待キャッシュ・フローは変動であるため、リースへの正味投資額の

測定に含めていない。

編集者注

業界によっては、リースの取り決めにおいてリース料の重要部分又は全額を変動とすることは

一般的である。そうした取り決めが販売型リース又は直接金融リースに分類されることは珍しく

ない。

エネルギー・セクターにおける取り決めは、一連の支払いが全額変動であるリースとして処理

されることが多い。例えば、再生可能エネルギーに関する買電契約(すなわち、太陽光発電又

は風力発電所からの買電)は、(1)期間が長期であり、当該発電設備の経済的耐用年数の大

部分に及ぶことが一般的である、(2)1発電量当たりの支払いを定額に定める(例えば、1 メガ

ワット時(MWh)当たり 50 ドル)、及び(3)当該設備が生産するすべての電力を購入するよう

借手に求めるが、最低発電量を指定しない(すなわち、発電量は完全に変動である)。アウト

プット量は天候次第だが、貸手は、過去の天候のデータに基づき当該取り決めから利益を上

げられると予想する。

また、石油及びガス業界においても、ある会社が集積及び加工施設を建設し、変動リース料で

単独のユーザーに賃貸するといった取り決めがあると我々は認識している。例えば、所定の地

域にある複数の油田の権益を有する探査会社が、それら油田から採掘した石油を集積し加工

するのに必要な施設をある中流事業会社に建設させ、賃貸させる契約を結ぶ場合がある。こ

の取り決めは長期で、当該施設の経済的耐用年数の大部分に及び、施設の使用に対する支

払いは 100%変動で(例えば、1単位当たりの定額に、集積又は加工した単位数を乗じて求め

る)、所要最低ボリュームを定めないとする場合がある。当該中流事業会社は、当該油田の埋

蔵量に関するデータから、十分な量の石油が契約期間にわたり採掘され、この取り決めは収

益性があると予想できるときは、この取り決めにおいて前向きに変動対価を受け入れるだろ

う。

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不動産セクターでも、商業不動産リースの取り決め(小売りスペースのリースなど)の価格を、

期待支払額の大部分が借手の売り上げ次第になる(例えば、その店舗による 1 ヵ月当たりの

売上高の一定割合とする支払い)形で決定する場合がある。リースが、次の(1)又は(2)のい

ずれかに該当するときは、貸手は当該取り決めを販売型リースとして会計処理する:(1)リー

ス期間がその小売拠点の経済的耐用年数の大部分に及ぶ、(2)借手が行使することが相当

確実な購入オプションが組み込まれている。この種の取り決めにおいては、資産の所有者は、

小売店の事業が好調であればその恩恵にあずかることができ、利益を上げることが期待でき

る。

最後に、ヘルスケア業界でも、病院が、所定の医療機器を、当該機器の経済的耐用年数の大

部分にわたり使用する契約を医療機器の所有者と締結するというのは珍しくない。この種の取

り決めでは、当該機器が仕様通り機能することを可能にする病院による「消耗品」の継続購入

に対価が完全に左右されるという形で価格が決定されることが多く、最低数量規定を有しない

場合がある。療機器の所有者が当該取り決めにおいて前向きに変動対価を受け入れるのは、

関係する医療サービスに対する需要から、病院が十分な量の消耗品を契約期間にわたり購

入し、取り決めから利益を上げられると予想できるからである。

Q&A 6 オペレーティング・リースの損益計算書における表示

ASC 842-30-25-11 は貸手に対し、オペレーティング・リースにおけるリース料を、リース期間にわたり定額法で損

益区分の収益として認識するよう求めているが、「他の体系的で合理的な基礎の方が、対象資産の使用により便

益を享受することができるだろう予想パターンを表している場合はこの限りではない」としている。

予想される市場の賃貸料や市況を反映し、又はそれらに応じて補填するためにリース料を一定額にしないときは、

貸手は「他の体系的で合理的な基礎」を用いてオペレーティング・リースの収益を認識すべきか否かについて、一

部の利害関係者から疑問の声が寄せられている。この疑問は ASU 2016-02 の BC327 項に由来する。同項によ

ると、「市場の賃貸料や市況を反映し又はそれらに応じて補填するため以外の理由で支払いが一定額ではないと

きは(例えば、重要な額の支払いが期間の前半若しくは後半に偏っている、又は、賃貸料無料期間がリースに盛り

込まれている)、貸手は、一定額ではない固定リース料を定額法で認識することが求められる」(強調追加)。

質問

予想される市場の賃貸料又は市況を反映するためにリース料が一定額ではない又は段階型になっているときは、

オペレーティング・リースの収益認識について貸手は、定額法以外の方法を採用できるか?

回答

できない。貸手はやはり、ASC 840 のもと原則求められている方法、すなわち定額法でリース料を収益として認識

すべきである。

FASB スタッフとの協議に基づく我々の理解によると、予想される市況を反映するために一定額になっていない賃

貸料が設定されたか否かを問わず、ASU 2016-02 の BC327 項は、貸手に定額法の認識から逸脱することを求

め又は認めることを意図していない。

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A社(借手)は、商業ビルのあるフロアを賃借してオフィス用に使用するという期間 10年のリースを B社(貸

手)と締結した。A社は、各年度末に次の年間リース料を支払うことに同意した:

1年目と 2年目 — $100,000.

3年目と 4年目 — $120,000.

5年目と 6年目 — $140,000.

7年目と 8年目— $160,000.

9年目と 10年目— $180,000.

リース料が段階的に増加しているのは、リース期間にわたる市場の賃貸料について予想される変動に応じ

て、B社に補填するためである。

このリースはオペレーティング・リースであると B社は結論付けたと想定する。一定額ではないリース料は、

将来の期間における市場の賃貸料を反映することを意図しているが、B社はリース料を収益として定額法

で認識すべきである。したがって B社は、リースの全期間である 10年とも、140,000 ドルの年間リース収

益を認識する。

Q&A 7 リースへの正味投資額の減損の算定

ASC 842-30-35-3は、リースへの正味投資額に関する減損を貸手がどのように算定すべきかについて指針を示し

ている。貸手が同算定を実施するときに考慮に入れる必要がある担保の説明において同指針は、当該担保)から

は、リース期間終了後に対象資産から貸手が得られると期待するキャッシュ・フローを除外すると示している。具体

的には、ASC 842-30-35-3には次のように記載されている:

貸手は(中略)、債権に関して減損があれば、トピック 310に従って(トピック 310の 10-35-16項から 35-30項の説明に

沿って)認識しなければならない。リースへの正味投資額に関する損失引当金を算定するとき、貸手は、リースへの正味

投資額に関する担保を考慮に入れるものとする。リースへの正味投資額に関する担保とは、貸手が、(例えば、当該資

産を売却し、又は残りのリース期間について再リースすることで)残りのリース期間中に対象資産から得ることが期待で

きるキャッシュ・フローに相当する。但し、リース期間終了後に対象資産から貸手が得られると期待できるキャッシュ・フ

ローは除外する(例えば、リース期間終了後に当該資産をリースすることで得られるキャッシュ・フロー)。(強調追加)

この指針は明瞭だが、FASB が貸手に対して残存資産に関するキャッシュ・フローを除外するよう求めているか否

か、又はそうした額を含めた方が適切か否かについて疑問の声がいくつか寄せられている。そうしたキャッシュ・フ

ローを除外すると、リースへの正味投資額に関する減損損失を早期に認識することになる可能性があるためであ

質問

リースへの正味投資額の減損を評価する際、リース期間終了時に対象資産から貸手が得られると期待される

キャッシュ・フローを貸手は含めるべきか?

回答

含めるべきである。専門的問い合わせに対し FASB のスタッフは、減損モデルを貸手の立場で適用する時に使用

する会計単位は、残存資産を含む、リースへの正味投資額全体に関する額を含むことを意図していることを確認し

た。よって、販売型リース又は直接金融リースへの正味投資額について減損を評価する時は、貸手は、残りのリー

ス期間中に対象資産から貸手が得られると期待されるキャッシュ・フローに加え、リース期間終了時に対象資産か

ら貸手が得られると期待されるキャッシュ・フロー(すなわち、残存資産から得られると期待されるキャッシュ・フロー)

を使用する必要がある。残存資産から得られるキャッシュ・フローを算定する際は、貸手は、対象資産を第三者へ

再リースし又は売却することで得られる額を考慮に入れる必要があるが、対象資産の潜在的借手又は潜在的買手

の予想信用リスクを考慮に入れるべきではない(すなわち、貸手は、理論上の買手の身元を知らないため、貸手が

信用リスクの仮定をこの分析に含めるのは不適切である)。

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リースの分類

Q&A 8 ASC 842に基づくリースの分類にASC 840の明確な基準(Bright-Line Thresholds)

を使用すること

ASC 840 は、リースの分類を、とりわけ、所定の明確な定量的基準による判定に基づいて行うよう事業体に求め

ている。つまりリースは、ASC 840のもとでは、リース期間が対象資産の経済的残存耐用年数の 75%以上である

か、又はリース料の現在価値と残存価値保証額の現在価値の合計が対象資産の公正価値の 90%以上あるとき

は、キャピタル・リースに分類される。しかしながら、ASC 842-10-25-2 におけるリースの分類指針を策定する時に

FASBは、明確な基準の使用を求めないことを決定した。

質問

リースを分類する際に事業体は所定の明確な数値基準を評価することが求められなくなったが、ASC 842 のもと

リースを分類するに数値基準を用いることが認められるか?

回答

認められる。ASC 842-10-55 の実施指針には、ASC 842 におけるリースの分類規準を適用する際の合理的なア

プローチは、ASC 840にあるのと同じ明確な基準を使用することであると記載されている。ASC 842-10-55-2には

次のように記載されている:

リースの分類を判定する際、842-10-25-2(c)項から(d)項、及び 842-10-25-3(b)(1)項における規準を評価するにあたっ

ての合理的なアプローチの一つとして、次のような結論を導き出せる:

a. 対象資産の経済的残存耐用年数の 75%以上は、その対象資産の経済的残存耐用年数の大部分である。

b. 対象資産の経済的残存耐用年数の終了時に又は終了近くに該当する開始日とは、対象資産の経済的耐

用年数合計の残り 25%以内に該当する開始日をいう。

c. 対象資産の公正価値の 90%以上は、対象資産の実質すべての公正価値に相当する。

この実施指針に鑑み、新リース基準のもとリースを分類する際に事業体が ASC 840 の明確な基準を適用しても

我々は異論を唱えない。こうした手法のもと事業体は、数値で測られる判定結果に従ってリースを分類するだろうと

我々は予想する。つまり、ASC 840の明確な基準を適用し、リース期間が資産の耐用年数の 76%と同等であると

判定するときは、当該リースをファイナンス・リースに分類すべきである。これに反する定性的証拠によってこの評

価を覆そうとすべきではない。同様に、同事業体が、リース期間が資産の耐用年数の 74%と同等であると判定し

たときは、当該事業体はリースをオペレーティング・リースに分類すべきである。リースを分類する際に ASC 840

の明確な基準を適用すると決めた場合は、その事業体については当該基準をすべてのリースへ一様に適用すると

予想する。

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リースモデルの構成要素

Q&A 9 非現金対価をリース料へ含めること

リースによっては、リース料の一部又はすべてを借手が非現金対価で支払わなければならないものある。例えば、

実物資産、借手若しくは他の者の株式、又は貸手の所定の債務に対する保証といった形で対価を支払うよう借手

が求められる場合もある。支払い時における対価の最終価値が、リース開始時点の見積もりと違ってくる可能性も

ある。

質問

事業体(借手又は貸手)は、リース料の算定に非現金対価も含めるべきか?

回答

原則含めるべきである。非現金対価は原則、リース料の算定に含めるべきであり、リース開始時の公正価値で測

定する必要がある。つまり、非現金対価の公正価値は基本的に特定の指数又は率と同等であると我々は考えてお

り、特定の指数又は率はリース開始時のリース料に含まれる11。使用権資産及び負債の当初測定と他の米国

GAAP に従って算定される最終測定の間の、提供すべき非現金対価の公正価値に係る変動は、変動リース料とし

て認識すべきである。保証という形での非現金対価(後でも説明するが、貸手の債務に対する保証以外)について

は、当該保証のもと計上し最終的に支払った額は、変動リース料とみなされない。むしろ、保証の提供が最終的な

リース料になる。これは借手が、保証に基づく待機債務(stand-ready obligation)を履行しているからである。

但し、貸手の債務に対する保証は、リース料の範囲から明確に除外されている点に注意が必要である12。

例 1

A社は B社に対し、バーを建設するのに必要な資材と労働力を供給する。A社は、建設期間終了時に、B

社から当該バーをリースすることに同意している。A社は、建設中の資産を支配しない13。B社に提供され

る資材及び労働力の公正価値を、前払リース料として認識し、リース開始時に使用権資産の測定に含めな

ければならない。

例 2

X社(借手)は、Y社(貸手)からエアゾール缶工場を期間 3年でリースする契約を締結した。エアゾール缶

工場の使用権に対する対価として、X社は Y社に対して、各年にそれぞれ Z社の株式 50株、60株、及び

70株を後払いで譲渡することに同意した。リース開始時点で、Z社の株式に係る一株当たりの公正価値は

20 ドルである。X社は、リースの計算利子率が不明であるため、リース料の割り引きに 9%の追加借入利

子率を使用した。

11 ASC 842-10-30-5(b)を参照。 12 ASC 842-10-30-6(b)を参照。 13 ASC 842-40-55-3から55-6を参照。

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例 2(続き)

ASC 842-10-25-2(d)に基づく(借手及び貸手による)リースの分類判定に従い、リース料に、Z社の株式に

対する持分という形でなされる 3回分の支払いの現在価値に相当する 3,009 ドルを含める必要がある。

リースはオペレーティング・リースであると想定する。借手のリース負債は 3,009 ドルと測定すべきである。

さらに、リース 1年目中の当該株式の公正価値は、50株の最終測定日時点で一株当たり 25 ドルだと想定

する。借手は、リース負債に含まれていない公正価値の増加分を、変動リース費用として認識する必要が

ある(すなわち、50株に、リース開始以降の株価の増加額を乗じて得られる 250 ドル)。但し、株式の公正

価値は、認識するまでリース開始後に調整しない特定の指数又は率に該当するため、2年目及び 3年目

に交付する株式は、それらの日に公正価値に調整すべきではない。

Q&A 10 返還不要及び返還必要預け金

リースの取り決めによっては、リース開始時点又はリース開始前にリース資産の所有者に支払う必要がある保証

金が盛り込まれている場合がある。保証金は基本的に、対象資産を賃借するという借手の意思及び確約を補完す

るために提供される(すなわち、保証金の受領をもって貸手は通常、当該資産をリースするためのマーケティングを

止める)。契約条項によって保証金は返還不要の場合もあれば返還必要の場合もある。

ASC 842-10 は、リースの分類、当初測定、及び事後測定を判定する際に、事業体が考慮に入れるべき支払いの

種類を特定するために、リース料を定義している。具体的に、ASC 842-10-30-5の一部を抜粋する:

リース開始日時点で、リース料は、リース期間中の対象資産の使用に関する次の支払いで構成されなければな

らない:

a. 実質的な固定支払を含む固定支払から、借手に支払われた又は支払われるべきリース・インセンティブを

控除した額(842-10-55-30項から 55-31項を参照)

b. 特定の指数又は率(消費者物価指数や市場金利など)によって決まる変動リース料。当初は、リース開始

日時点の当該指数又は率を用いて測定する。

質問1

ASC 842のもと返還不要預け金はリース料に該当するか?

回答

該当する。返還不要預け金は ASC 842のもとリース料になる。

返還不要預け金は、両当事者に契約条項を確保させるために借手が貸手に支払う金額である。この支払いは、契

約期間中に移転される対価の一部に相当し、貸手は返還しない。貸手へのこの支払いは返還不要であるため、

ASC 842-10-30-5のもと固定支払とみなされる。

質問2

ASC 842のもと返還必要預け金はリース料に該当するか?

回答

該当しない。返還必要預け金は ASC 842のもとリース料にならない。

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返還必要保証金は、当該契約及び財産に対する貸手の利益を保護するために借手が貸手に差し出す必要がある

金額である。契約上の規定を満たすために貸手が預け金の一部又は全部を使用すること(例えば、借手による支

払いの不足分を補填するため、又はリース資産に対する損傷を修復するために預け金を使用する)を容認する事

由が生じるまで、貸手はこの金額を保持する。そうした必要性が生じなければ、契約に従って貸手はリース終了時

に、未使用の残余保証金を借手に返却する必要がある。この支払いは返還が必要であるため、ASC 842-10-35-5

に基づくリース料の定義を満たさない。

なお、返還必要保証金のうち、リース料の支払不足を補填するために貸手の手元に残る部分は、リース負債のうち、

不払いに関係する部分を実質清算することに留意のこと。反対に、他の理由(対象資産の過剰な損耗など)で貸手

の手元に残る返還必要保証金があるときは、それは原則、変動リース料とみなされる14。また、貸手の手元に残る

返還必要保証金について稼得した利息があれば、それを稼得した期の変動リース料として利用可能になる。他の

変動リース料の規定と同じように、借手が所定の目標水準に到達する前に変動払いによる費用を認識すべきか否

かを判定する際は、借手は ASC 842-20-55-1 及び 55-2 に定められている実施指針を検討する必要がある

(Q&A 14参照)。

Q&A 11 特定の指数又は率に基づく変動支払

背景

貸手に支払うべき額がリース期間にわたり改定、又はリセットされる条項がリースに盛り込まれていることがよくあ

る。そうした貸手に支払うべき額の調整は、ASC 842では変動リース料と説明されている。一般的に、ASC 842は

リース料の変動を二つの分類に区分している:

特定の指数又は率に基づく変動性(例えば、CPI に基づいて調整される、又は LIBOR を参照する若しく

はそれを基に増加する賃料など)。

その他の変動。典型的には、資産のパフォーマンス又は使用に基づいて定められる変動を含む(例えば、

店舗の売上高の一定割合、又はリース対象車両の使用による走行距離に基づいて決まる賃料)。

新リース基準は、リースの分類及び測定に影響を与える限定的な変動支払についてのみ、リース料に含めるべき

ことを要求している。具体的には、ASC 842-10-30-5 には、「開始日時点、リース料は、リース期間中の対象資産

の使用に関係する次の支払いで(一部)構成されなければならない」と定められている:

a. 実質的な固定支払を含む固定支払から、借手に支払われた又は支払われるべきリース・インセンティブを控除した

額(842-10-55-30項から 55-31項)

b. 特定の指数又は率(消費者物価指数又は市場金利など)に基づく変動リース料。当初特定には、開始日時点の当

該指数又は率を用いる。

また、ASC 842-10-30-6には、「リース料には、(ASC)842-10-30-5(b)にあるもの以外の変動リース料は含まれな

い」と明記されている。

14 ASC 842は変動リース料を、「対象資産を使用する権利に対して借手が貸手に行う支払いのうち、開始日後に発生する事実又は状況の変化(時

の経過を除く)により変動する部分」と定義している。

したがって、リース開始日後における事実関係及び状況の変化が原因で貸手の手元に残る返還必要保証金は、変動リース料に該当し、借手の

場合は費用として、貸手の場合は損益区分の収益として、負担した(借手)又は稼得した(貸手)期に認識する必要がある。

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質問

特定の指数又は率に基づく変動支払があるとき、借手15は、リース開始時にリース負債と使用権資産の当初測定

をどのようにすべきか?

回答

リース負債と使用権資産の当初測定は、リース料を基に算定すべきであり、そのリース料には、ASC 842-10-30-

5(b)に記載されているように、「特定の指数又は率(消費者物価指数や市場金利など)に基づく変動リース料」も含

まれる。特定の指数又は率に基づく変動支払の当初測定は、リース開始時点の当該指数又は率(すなわち、基本

賃料に適用されるスポット又はグロス・ベースの指数又は率)を用いて行う。リース開始時点のスポットの率を使用

するという規定は基本的に、FASB の次の見解に基づいている:(1)将来の率の予測に伴うコストは、得られる便

益を上回らない、(2)予測される率又は指数の使用は、財務諸表の作成者の間で一貫性が確保されないほか、不

正確であることが多い。

反対に、特定の指数又は率の変動に基づく支払いは、リース料の算定において考慮に入れるべきではない。予測

技法の使用に関するコスト便益の検討に鑑み、ASC 842は、リース料を算定するのに、特定の指数又は率の変動

を予測することを認めていない。その代わりに、特定の指数又は率の変動に基づくリース料の調整は変動リース料

として処理し、その支払義務が生じた期に認識する。

例えば、リース料の支払いは後払いであり、年度末時点の CPI によって毎年調整される固定金額(例えば

100,000 ドルの基本料)を基礎とすると想定する。仮に、リース開始時点の CPI が 2.7%だったとすると、リース負

債の測定に用いるリース料合計は、リース 1 年当たり 102,700 ドルになり、リース開始時点の特定の指数又は率

に基づく変動リース料である 2,700 ドルも含まれる。対照的に、基本料が、リース期間中の各年における CPIの変

動に応じて事後的に調整される一定額(100,000 ドル)であるときは、リース負債と使用権資産の当初測定では、

予想される将来の CPI の変動を考慮に入れない。よって、リース負債と使用権資産の当初測定は、リース期間中

の固定支払のみを基礎とする(次の例を参照)。

ある小売店が、期間 5年の小売りスペースのリースを次の条件で締結した:

リース期間 5年(更新オプション無し)

借手の追加借入利子率* 7%

リースの分類 オペレーティング・リース

年間リース料 基本料を 100,000 ドルとし、CPIの対前年比の変動に応

じて調整される

15 このQ&Aは、借手がリース負債と使用権資産の当初測定をする時の特定の指数又は率に基づく変動支払の取り扱いに焦点を当てているが、こ

の概念は、貸手が販売型リース又は直接金融リースへの正味投資の当初測定を行う時にも同様に当てはまる。

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例(続き)

最初のリース料の支払いが 1月 1日になされた。その後の各支払いは 12月 31日になされる。当初直接

費用やリース・インセンティブはない。借手によるリース費用合計の認識及びリース負債と使用権資産の測

定を下表に示す。

<A> <B> <C> <B> – <A>

= <D> <A> + <C>

+ <D>

日付 年 CPI 支払い 負債** 利息

固定リース

費用

変動リース

費用 償却費用 認識費用合計*** 使用権資産†

1/1/20X1 0 172 $ 100,000 $ 338,721 $ 438,721

12/31/20X1 1 174 101,163 262,432 $ 23,710 $ 100,000 — $ 76,290 $ 100,000 362,432

12/31/20X2 2 175 101,744 180,802 18,370 100,000 $ 1,163 81,630 101,163 280,802

12/31/20X3 3 177 102,907 93,458 12,656 100,000 1,744 87,344 101,744 193,458

12/31/20X4 4 178 103,488 — 6,543 100,000 2,907 93,457 102,907 100,000

12/31/20X5 5 180 — — — 100,000 3,488 100,000 103,488 —

合計 $ 509,302 $ 500,000 $ 9,302 $ 438,721 $ 509,302

* 貸手が借手に課している利子率が分からないため、追加借入利子率を使用している。

** 最初の支払いが 1月 1日(リース開始時点)になされているため、借手は負債を、残り 4回の将来のリース料に係る

現在価値で測定する(リース開始時点の基本賃料を用いて)。変動支払が、リース開始日時点の特定の指数や率で

はなく CPIの変動に応じて決まるため、負債の当初測定には CPIの影響が含まれていない。リース負債及び使用

権資産は、CPIの変動に応じた再測定をしない。

*** 認識したリース費用合計には、リース契約(lease inception)時点の固定リース費用と、その年の CPIの変動に基づ

く変動リース費用の両方が含まれている。

† 使用権資産は、リース開始時点は、リース料の現在価値(100,000 ドルの 4回の支払い(後に支払われるリース料)

に係る現在価値に、前払いで支払った賃料の 100,000 ドルを加算して得た値)を求めて測定している。その後の年

は、オペレーティング・リースについて既に説明したモデルに従って、使用権資産を償却している。償却費用は、固定

リース費用から利息を控除して計算していることに留意のこと。

Q&A 12 指数又は率に基づく支払いの調整による影響

リースの事後再測定は、変動が指数若しくは率に関係するか、又は他の理由により生じるかによって決まる。具体

的には、ASC 842-10-35-4及び 35-5は一部次のように求めている:

35-4 次のいずれかが生じたときは、借手はリース料を再測定しなければならない:

a. リースが修正され、その修正を、842-10-25-8項に従って別の契約として処理していない

b. 残りのリース期間にわたり支払われる予定の変動リース料の一部又は全部の基礎となっている不確定条件

が解消され、その支払いがリース料の定義を満たすようになった。例えば、ある事象が生じた結果、対象資

産のパフォーマンス又は使用に連動していた変動リース料が、残りのリース期間については固定支払となる。

c. 次のいずれかについて変更があった:

1. リース期間(842-10-35-1 項で規定されている)。借手は、変更後のリース期間に基づく変更後リース料を

算定しなければならない。

2. 対象資産の購入オプションを行使する又はしないかについて借手が相当確実であるか否かについての

評価(842-10- 35-1 項で規定されている)。借手は、変更後のリース料を算定し、購入オプションの判定

における変化を反映させなければならない。

3. 残存価値保証のもと借手が支払義務を負う可能性が高い金額。借手は、変更後のリース料を算定し、残

存価値保証のもと借手が支払義務を負う可能性が高い金額の変動を反映させなければならない。

35-5 借手が 842-10-35-4項に従ってリース料を再測定するときは、特定の指数又は率に基づいて決まる変動リー

ス料は、再測定日時点の当該指数又は率を用いて測定しなければならない。

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質問

リースにおける指数又は率に基づく支払いの調整時に借手はリースを再測定しなければならないか?

回答

再測定する必要はない。特定の指数又は率の変動単独では、リースを再測定する義務は生じない。FASB のス

タッフとの協議に基づく我々の理解によると、指数に基づく調整の結果次回リース料に関して新たな下限が設定さ

れるとしても、不確定条件が解消した後のリース負債の再測定に関する指針は、かかる調整へ適用することを想

定していない。したがって、当該指数又は率により新たな下限が設定されたとしても(例えば、CPI が上昇し、将来

のリース料の増加を算定するときに基準として用いる新たな率が設定されたなど)、そうした調整が原因で、リース

負債と使用権資産を再測定することはない。よって、CPI の上昇に伴うリース料の増加は、その増加が生じた期に

認識することになる。

但し、ASC 842-10-35-5 に明記されている通り、借手が ASC 842-10-35-4 に記載されているその他の理由のい

ずれかによりリース料を再測定するときは、借手は、再測定日において効力を有する指数又は率を用いて、指数

又は率に応じて決まる変動リース料を再測定することが要求される。

編集者注

FASB と IASB の互いの新リース基準は、変動リース料の認識及び測定に関して概ねコン

バージェンスが達成されているが、大きな違いが一つある。IFRS 第 16 号のもとでは、指数又

は率に基づくリース料については、リース負債及び使用権資産を各期に再測定し、当該指数

又は率の変動を反映させる。よって、米国 GAAP と IFRS の両方のもと決算報告をしなけれ

ばならない事業体(例えば、米国 GAAP を適用する親会社のうち、法規制で定められている

決算報告上 IFRS を適用する海外子会社がある会社など)は、二つの異なる再測定モデルの

もとリースの会計処理をすることが求められる。

Q&A 13 公正価値に基づく賃料

リース契約によっては(典型的には不動産リース)、所定の期間が経過した後の将来のリース料を、その時点での

公正価値レートに見直さなければならないと規定する賃料再設定条項という形の変動性が盛り込まれているもの

もある。例えば、シカゴにある不動産の期間 10年のリースは、1年目から 5年目までの年間賃料は 100,000 ドル

だが、リースの 6 年目から 10 年目の賃料は、シカゴについて公表レートに参照される最新の公正価値賃料に見

直さなければならないといった規定を含んでいる。

質問

上で説明した公正市場賃料に基づく見直し特性は、指数又は率に基づく変動支払に関する指針に従って処理する

必要があるか?

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回答

必要がある。ASU 2016-02 の BC211 項に、指数又は率に基づく所定の変動リース料をリース負債と使用権資産

の測定に含める FASBの根拠が記載されている:

実質的な固定支払をリース資産とリース負債の測定に含める理由と同様の理由から、FASB は、指数又は率に基づく変

動リース料もリース資産とリース負債の測定に含めることを決定した。これらの支払いは回避不能である(すなわち、借

手にはそれらのリース料を支払わなければならない現在の義務があり、貸手にはそれらの支払いを受け取る現在の権

利がある)ため、(貸手にとっては)資産及び(借手にとっては)負債の定義を満たす。したがって、不確実性があるとして

も、それらの支払いが原因で生じる資産又は負債の測定に関係するものであり、資産又は負債の存在に関するもので

はない。

ASC 842は「指数」又は「率」の定義を定めていないが、指数又は率は、基礎になる経済的パフォーマンスに基づく

と我々は考える(例えば、CPI は、特定の財及びサービスに対して家計が払っている価格の変動を測定するもので

ある)。同様に、公正市場賃料は特定の地理的地域の経済的パフォーマンスを示すものであり、公式に公表される

指数又は率に類似する。さらに、FASB と IASB は、市場のレートに基づいて見直される賃料を、特定の指数又は

率に基づいて変わるリース料として処理するという規定を含め、リースに関する新たな指針の特定の側面をコン

バージェンスさせている。IFRS第 16号第 28項には、指数又は率に基づく変動支払には、とりわけ、「公正市場賃

料の変動を反映させるために変わる支払い」も含まれると明記されている。

公正市場賃料に基づく変動賃料が、指数又は率に基づく変動賃料に類似すると判定されているため、指数又は率

に基づく変動賃料に関する具体的指針(Q&As 11 及び 12 を参照)を、公正市場賃料に基づく変動賃料に適用す

べきであると我々は考える。よって借手は、リース開始時点で有効な賃料を基にリース負債と使用権資産を測定す

べきである。その後、公正市場賃料に変動があった場合も、リース負債と使用権資産の再測定は必要ないが(但し、

他の理由で再測定が必要になる場合がある)、公正市場賃料の変動に応じて、適切な期に変動リース収益又は変

動リース費用として計上することになる。

公正市場賃料に基づく変動賃料の会計処理を、例を用いて以下に説明する。

ある小売業者が、小売りスペースについて期間 10年のリースを次の条件で締結した:

リース期間 10年(更新オプション無し)

借手の追加借入利子率* 6%

リースの分類 オペレーティング・リース

年間リース料 1年目から 5年目は 100,000 ドルとし、6年目から 10年

目については公正市場賃料に応じて調整される

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例(続き)

最初のリース料の支払いが 1月 1日になされた。その後の各支払いは 12月 31日になされる。借手によ

るリース費用合計の認識及びリース負債と使用権資産の測定を下表に示す。なお、(公正市場賃料を含

む)指数又は率に基づく変動リース料はリース料とみなされ、リース開始時点で有効な当該指数又は率を

基に当初測定を行う。よって、リース開始時点では、6年目から 10年目までの予想公正市場賃料は、

100,000 ドルがリース開始時点の公正市場賃料であるため、100,000 ドルになる。

<A> <B> <C> <B> – <A>

= <D> <A> + <C>

+ <D>

日付 年 支払い 負債** 利息*

固定リース費

変動リース

費用 償却費用 認識費用合計*** 使用権資産†

1/1/20X1 0 $ 100,000 $ 680,169 $ 780,169

12/31/20X1 1 100,000 620,979 $ 40,810 $ 100,000 — $ 59,190 $ 100,000 720,979

12/31/20X2 2 100,000 558,238 37,259 100,000 — 62,741 100,000 658,238

12/31/20X3 3 100,000 491,732 33,494 100,000 — 66,506 100,000 591,732

12/31/20X4 4 100,000 421,236 29,504 100,000 — 70,496 100,000 521,236

12/31/20X5 5 150,000 346,511 25,274 100,000 — 74,726 100,000 446,511

12/31/20X6 6 150,000 267,301 20,791 100,000 $ 50,000 79,209 150,000 367,301

12/31/20X7 7 150,000 183,339 16,038 100,000 50,000 83,962 150,000 283,339

12/31/20X8 8 150,000 94,340 11,000 100,000 50,000 89,000 150,000 194,340

12/31/20X9 9 150,000 — 5,660 100,000 50,000 94,340 150,000 100,000

12/31/20X0 10 — — — 100,000 50,000 100,000 150,000 —

合計 $ 1,250,000 $ 1,000,000 $ 250,000 $ 780,170 $ 1,250,000

* 貸手が借手に課している利子率が分からないため、追加借入利子率を使用している。

** 最初の支払いが 1月 1日になされているため、借手は負債を、残り 9回にわたり支払う将来の予想リース料に係る

現在価値を(リース開始時点の基本賃料を用いて)求めて測定する。6年目になっても、リース負債及び使用権資産

は、公正市場価値の変動に応じた再測定をしない。

*** 認識したリース費用合計には、リース契約(lease inception)時点の固定リース費用と、6年目からの公正市場賃料

の変動に応じた変動リース費用の両方が含まれている。

† 使用権資産は、リース開始時点は、見積リース料の現在価値(100,000ドルの 9回の支払い(後に支払われるリー

ス料)に係る現在価値に、前払いで支払った賃料の 100,000 ドルを加算して得た値)を求めて測定している。その後

の年は、オペレーティング・リースに係るモデルに従って、使用権資産は償却している。なお、償却費用は、固定リー

ス費用から利息を控除して計算している。

この例では、実際の公正市場賃料が 6年目に 150,000 ドルに上昇すると想定している。この上昇を反映す

るためにリース料が更新される時でも、リース負債と使用権資産について、1年目から 5年目の 100,000

ドルから 6年目から 10年目の 150,000 ドルへの公正市場賃料の変動に応じた再測定を行わない。その

代わりに、この新たな 50,000 ドルは変動リース費用として、負担した各年に計上する。

次は、同じ事実関係を想定するが、但し 1つだけ、公正市場賃料が 1年目から 5年目の 100,000 ドルか

ら、6年目から 10年目は 90,000 ドルに下落すると想定する。この場合も、借手は 6年目から 10年目の

各年にリース費用について 10,000 ドルの減少を記録し、リース負債と使用権資産の再測定は行わない。

Q&A 14 借手による変動支払の認識時期

背景

リースの取り決めに、対象資産の使用又はパフォーマンスに基づく変動支払が盛り込まれている場合が多くある。

例としては次のものが挙げられる:(1)借手が各月の売上高の一定割合を支払う必要がある小売店舗のリース、

(2)運転手が走行距離に応じて支払う必要がある車両のリース、(3)風力発電所など気象条件に左右される発電

所が生産した全電力を購入することを借手(電力の買手)に義務付ける買電契約。

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ASC 842のもとでは、指数又は率に左右されない変動支払は、リース負債と使用権資産の当初測定から除外され

る。

(ファイナンス・リースに関しては)ASC 842-20-25-5(b)と(オペレーティング・リースに関しては)ASC 842-20-25-

6(b)のいずれにも、リースの当初測定に含まれない変動リース料は、「それら支払義務が生じた期に」損益に認識す

べきであると記載されている(強調追加)。また、ASC 842-20-55-1の実施指針には、「変動リース料の支払いを生じ

させる所定の目標水準が達成される可能性が高い(probable)ときは、借手は、その水準が達成される前に、(年次

期間並びに中間期間に)変動リース料による費用を認識すべきである」と記載されている(強調追加)。

質問

借手が、使用又はパフォーマンスに基づく変動額を支払うリースの取り決めにおいて、借手は、リース期間にわた

る将来のパフォーマンスに係る可能性を判定し、可能性が高いと評価された変動リース料の額について費用(及び

対応する負債)を計上する必要があるか?16

回答

状況による。変動リース料の可能性が高い目標水準達成に関する ASC 842-20-55-1 の指針は、時間の経過とと

もに達成される独立したパフォーマンスの目標水準又はマイルストーン(例えば、店舗の累積売上高に関する所定

の水準)を含むシナリオに、限定的に適用することを意図しており、そうした限定的なシナリオにおいて、予想される

リース費用合計の適当な配分を反映した額を、リース期間にわたり各期に認識するよう求めることを意味している

と我々は考える。この指針により、リース費用が、変動支払要件の充足に寄与した使用期間と、変動支払要件が

既に充足されている使用期間の両方に適当に配分されることが確保されている。パフォーマンスの目標水準が累

積的で、且つ、複数の報告期間をまたぐ可能性があるときは、こうした配分が必要になる。

変動リース料の可能性が高い目標水準達成に関する指針は、一報告期間内に変動が生じ確定されるときも、リー

ス期間にわたる可能性が高いパフォーマンスの水準を評価し、実際のパフォーマンスに対し事前に費用を認識す

るよう求めているわけではないと我々は考える。例えば、車両のリースにおいて、走行距離 1 マイル当たりの変動

費用のうち、1 マイルから加算されリース期間にわたり加算される変動費用は、独立して測定でき、当該費用が生

じた報告期間に費用計上できる。つまり、変動費用の適当な期間配分を確保するために将来の走行距離の可能

性を評価する必要がない。こうした種類の変動支払体系に可能性モデルを適用すると、将来の使用に帰属する変

動費用が不適当に加速的に認識されてしまう事態を招きかねない。

以下に、独立した累積的目標水準が存在するときの変動の扱いと、報告期間内に変動が確定されるときの扱いと

の相違を例を用いて示す。

例 1

小売業者 Xは、期間 5年のリース期間にわたり、毎月 500 ドルと、店舗の売上高の 3%を Xが支払うとい

う規定が定められた取り決めにおける借手である。小売業者 Xはリース期間にわたる売上高を予測し、達

成する可能性が高いと考えられる売上水準に応じて計上する必要はない。その代わりに Xは、売上高の

3%に相当する変動リース費用を毎月認識することになる。

16 「可能性が高い(Probable)」は、「発生する公算が大きい将来の事象」と定義されており、ASC 450「偶発事象」における定義と整合性が図られて

いる。

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例 2

公益事業者 Yは買電契約における借手で、同契約に従い Yは、独立系発電事業者(IPP)が所有する風

力発電所が生産するすべての電力を、1 MWh当たり一定額で購入する。風力発電所は 100%気象条件

に左右されるため、Yのリース料は 100%変動である(Yは、生産された電力に対してのみ支払う)。風力

発電所が建設される前に実施された調査からは、95%の確率で 1 ヵ月当たりの発電量が 25,000 MWh以

上になることがうかがえる。最低パフォーマンス水準が達成される確率が極めて高いものの(95%は「可能

性が高い」の基準を遥かに超える水準である)、Yは、それに対応する額のリース料(すなわち、将来の生

産量に基づく変動リース料の予想)を計上する必要はない。その代わりに Yは、IPPによる送電量と請求に

応じ、変動リース費用を毎月認識することになる。

例 3

小売業者 Zは、期間 5年のオペレーティング・リースにおける借手であり、Zは、1 ヵ月当たり 500 ドルの基

本賃料を支払う必要があるほか、店舗の累積売上高が 100,000 ドルを超えた月からさらに 100 ドルを支

払う必要がある。小売業者 Zは、2年目の終わりまでにこの売上高目標に到達する可能性が高いと考えて

いる(すなわち、この目標水準に到達した後は、1 ヵ月当たりの賃料が 600 ドルになる)。

小売業者 Zは、目標水準の達成に基づき負担することになる可能性が高い額を算定する必要があり

(3,600 ドル、つまり 1 ヵ月 100 ドルが 36 ヵ月)、その額を、リース開始時点からの各期に配分すべきであ

る。つまり、累積売上高に係る目標水準の最終的達成の可能性がリース開始時点で高いと考えられるた

め、まだ目標水準に到達していなくても、3,600 ドルを 5年にわたり均等に認識すべきである(すなわち、

1 ヵ月当たり 500 ドルが 24 ヵ月あり、1 ヵ月当たり 600 ドルが 36 ヵ月あるため、1 ヵ月当たりの費用は 560

ドルになる)。1年目と 2年目の売上高は目標水準達成に寄与することから、1年目と 2年目も適当な額の

追加的リース費用を負担すべきであるため、これが適切な会計処理になる。

上述の事実関係に基づき Zは、リース開始時点から 1 ヵ月当たり 60 ドルの追加的リース費用を認識し(す

なわち、3,600 ドルをリース期間の 60 ヵ月で除して得た値)、売上高目標の達成予測に関係する予想追加

賃料を反映させることになる。

また、目標水準に実際に到達次第 Zは、「残りのリース期間にわたり支払われる予定の変動リース料の一

部又は全部の基になっている不確定条件が解消され、その支払いがリース料の定義を満たすようになっ

た」と結論付けられるため、ASC 842-10-35-4(b)に従って使用権資産と対応する負債を再測定することに

なる。

Zが計画通り 2年目末に売上高目標に到達したと想定すると(且つ、便宜上割引率を 0%と想定すると)、

Zは次の額を財務諸表に認識することになる:

20Y1年 1月 1日(開始時)

使用権資産と対応するリース負債の当初認識(5年間にわたり 1 ヵ月当たり 500 ドルとして計算する)

使用権資産 30,000

リース負債 30,000

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例 3(続き)

20Y1年 12月 31日

毎年行う作業(使用権資産/リース負債の減額とリース費用の認識)

リース負債 6,000

リース費用 6,000

使用権資産 6,000

現金 6,000

変動リース費用の認識と未払計上(($3,600 ÷ 期間 60 ヵ月) × 1年当たり 12 ヵ月)

変動リース費用 720

リース負債(変動リース料) 720

20Y2年 12月 31日

毎年行う作業(使用権資産/リース負債の減額とリース費用の認識)

リース負債 6,000

リース費用 6,000

使用権資産 6,000

現金 6,000

変動リース費用の認識と未払計上(($3,600 ÷ 期間 60 ヵ月) × 1年当たり 12 ヵ月)

変動リース費用 720

リース負債(変動リース料) 720

使用権資産と対応する負債の調整(未確定条件の解消)

使用権資産 2,160

リース負債(変動リース料) 1,440

リース負債 3,600

20Y3年 12月 31日

毎年行う作業(使用権資産/リース負債の減額と、変動リース料支払事由発生後のリース費用の認識)

リース負債 7,200

リース費用(($500 + $60) × 12) 6,720

使用権資産 6,720

現金 7,200

20Y4年 12月 31日

毎年行う作業(使用権資産/リース負債の減額と、変動リース料支払事由発生後のリース費用の認識)

リース負債 7,200

リース費用(($500 + $60) × 12) 6,720

使用権資産 6,720

現金 7,200

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例 3(続き)

20Y5年 12月 31日

毎年行う作業(使用権資産/リース負債の減額と、変動リース料支払事由発生後のリース費用の認識)

リース負債 7,200

リース費用(($500 + $60) × 12) 6,720

使用権資産 6,720

現金 7,200

Q&A 15 リースの条件が親会社又はグループの信用による影響を受けるときの子会社の追加

借入利子率の算定

リース負債の当初測定を行う際、借手は、容易に算定できない場合を除き、リースの計算利子率を用いる必要が

ある。当該利子率を容易に算定できないときは(基本的にそうなるのだが)、借手はリース負債の当初測定にあた

り追加借入利子率を使用する必要がある。当初測定に加え、所定の独立した再評価事象(例えば、リース期間の

変更や、別の契約が生じないリースの条件変更など)が生じたときは、借手は最新の割引率を用いてリース負債を

再測定する必要がある。

場合によっては、子会社が親会社の高い信用力の恩恵を受けられるよう、子会社に代わって親会社がリースの交

渉をするというケースがある。また同じ理由から、連結グループによっては財務機能を一つの組織に集約し、当該

組織が全子会社の代わりに交渉を行うというケースもある。こうした交渉では、保証のような、支払いについて当該

子会社以外にも貸手が頼ることができる支払いの仕組みが盛り込まれることがよくある。その場合、子会社レベル

でリースの会計処理をする際に、当該子会社の追加借入利子率以外の利子率を使用した方が適切か否かという

疑問が生じる(計算利子率が容易に算定できないと想定した場合)。

質問

計算利子率を容易に算定できないときのリース負債の測定に自己のものではない追加借入利子率を子会社が使

用することは適切か?

回答

状況による。リース負債の測定に用いる適当な追加借入利子率は原則、借手と貸手の間で交渉される条件に基づ

く。通常、リースの価格は専ら、当該子会社自身(すなわち、当該取り決めの借手)の信用力に応じて決まる。しか

しながら、保証のような、支払いについて当該子会社以外にも貸手が頼ることができる支払いの仕組みに基づき、

組織内の他のレベル(親会社や連結グループなど)で評価される信用リスクが価格決定に著しい影響を及ぼす場

合がある。リースの価格決定が、リースの交渉がなされた時の借手の信用力のみに依存するときは、リース負債

の測定には借手の追加借入利子率を使用すべきである。しかし、リースの価格決定が、リースの交渉がなされた

時の借手以外の事業体(借手の親会社や連結グループなど)の信用リスクに依存するときは、基本的に、かかる

他の事業体の追加借入利子率を使用した方が適切になる。

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組織内で財務機能が集約化されていない場合は、概ね、報告事業体はリース負債を測定するにあたり当該子会

社(すなわち、当該取り決めにおける借手)の追加借入利子率を使用した方が適切であることの指標となる可能性

がある。但し、この事実単独では決定要因にならず、当該子会社(借手)の信用力がリース契約の交渉において使

用されたか否かの判定と併せて検討する必要がある。この見解は、ASU 2016-02 の BC201 項と一致する。同項

の一部を以下に抜粋する:

当審議会は(中略)、場合によっては子会社が割引率に親会社又はグループの追加借入利子率を使用した方が妥当で

ある場合があると考えた。計算利子率を容易に算定できないと想定した場合、リースの条項及び状況並びにその交渉に

よっては、契約における利子率を反映させる実用的手段として、親会社の追加借入利子率を使用した方が、最も適当な

利子率であるときもある。例えば、当該子会社に自前の財務機能がなく(グループの資金調達はすべて親会社が集約し

て管理している)、よって、貸手と交渉するときに親会社がリースの支払いについて貸手に保証するときは、リースの価格

決定は、子会社よりも親会社の信用力による影響を著しく受けるため、親会社の追加借入利子率を使用した方が適切に

なる。

実際によく見られる状況を以下に例を用いて示す。いずれの例も、親会社又はグループの信用の方が子会社/借

手の信用よりも優れていると想定している。

例 1

グループ Aは 20X1年 1月 15日、グループ Aの連結子会社である子会社 Aの代わりに交渉を行い、

リースを締結した。財務機能はグループ Aのレベルで運用されており(すなわち、子会社 Aには独自の財

務機能がない)、リースの価格決定は、グループ Aの信用度を基になされた。グループ Aと子会社 Aはい

ずれもリース契約における記名当事者だが、子会社 Aが、リース財産を占有する当事者として特定されて

いる。

財務の運営(リース契約の交渉を含む)がグループ Aのレベルに集約されて行われているため、子会社 A

のリース負債を測定するにあたっては原則、(子会社 Aの利子率ではなく)グループ Aの追加借入利子率

を使用した方が適切である。これは、貸手との交渉とその結果であるリースの価格決定が、子会社 Aでは

なくグループ Aの信用度に基づいてなされたからである。

例 2

借手 Aは 201X年 4月 15日、貸手 Bと建物のリースについて交渉を行った。借手 Aには自前の財務機

能があり、同組織が、リースを含む重要な契約すべてについて交渉を行っている。但し、当該リースの条項

として、Aの親会社である ParentCoが、リース料の支払いについて Bへ保証を提供した。

Aには自前の財務機能があり、リースの条項については Aが交渉したものの、(貸手に対する ParentCo

の保証に証拠付けられている通り)リースの価格決定には ParentCoの信用度が著しく影響したと結論付

けるのが妥当である。したがって、Aが報告事業体としてリース負債を測定するときは原則、ParentCoの

追加借入利子率を使用した方が適切である。

表示と開示

Q&A 16 区分表示貸借対照表を表示している事業体は、使用権資産とリース負債を流動区分

と固定区分に分類する必要があるか否か

ASC 842-20-45-1には次のように記載されている:

借手は、次の全項目を、財政状態計算書に表示するか、注記に開示しなければならない:

a. ファイナンス・リースの使用権資産とオペレーティング・リースの使用権資産を互いに別々に且つ他の資産からも分

離する

b. ファイナンス・リース負債とオペレーティング・リース負債を互いに別々に且つ他の負債からも分離する

使用権資産とリース負債については、他の非金融資産及び金融負債を区分表示型の財政状態計算書において流動部

分と固定部分に分類するときと同じ検討の対象とされなければならない。

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質問1

区分表示貸借対照表を表示している事業体は、使用権資産を流動区分と固定区分に分類する必要があるか?

回答

必要ない。事業体は通常、ASC 210-10-45-4(f)に従って減価償却又は償却される資産(それぞれ有形固定資産

や無形資産など)を流動資産から除外する。ASC 842 のもとでは、使用権資産は償却する必要があるため、他の

償却資産と同類である。

質問2

区分表示貸借対照表を表示している事業体は、リース負債を流動区分と固定区分に分類する必要があるか?

回答

必要ある。ASC 210-10-45-6の一部を以下に抜粋する:

流動負債の概念には、既知の義務に関して当該年度内に支出することが求められると予想される見積額又は未払額が

含まれる。

各事業体は、リース負債のうち、当該年度内に支払う必要があると予想される部分を、流動負債に分類すべきであ

る。

借手である A社は 202X年 12月 31日、期間 3年、年間リース料 4,660 ドルのリースを開始した。リース

料を 8%の割引率で割り引いたうえで Aは、(1)リース負債は 12,009 ドルである、(2)同負債のうち 3,699

ドルは貸借対照表日から 1年以内に支払うことになる、と判定する。202X年 12月 31日時点で Aは、区

分表示貸借対照表において、3,699 ドルを流動負債に、残りの 8,310 ドルを固定負債に分類すべきであ

る。

Q&A 17 短期リース費用の開示から期間1ヵ月以下のリースを除外する

短期リースとは、リース開始日において、リース期間が 12 ヵ月以下であり、且つ、借手が行使することが相当確実

な対象資産の購入オプションが組み込まれていないリースをいう。借手は、(リース負債と使用権資産を貸借対照

表に反映させなければならないという)ASC 842 における認識規定を短期リースには適用しないことを選択できる。

その代わりに借手は、リース期間にわたりリース料を定額法で損益区分に認識することができる。短期リースに関

するこの会計方針の選択は、対象資産の種類ごとに首尾一貫して行い、適用しなければならない。

短期リースにおける借手は、貸借対照表へのリース負債と使用権資産の認識と測定に関する新リース基準の規定

が免除される一方、かかる借手は短期リースの費用を開示することが求められている。但し、同開示規定には、短

期リース費用には、期間が 1 ヵ月以下のリースに関する費用は含まれないと示されている17。大半の事業体にとっ

て「1 ヵ月以下」のリース除外は負担軽減になると我々は予想するが、期間が 1 ヵ月以下のリースを抽出することを

負担に感じ、すべての短期リースに関する費用を開示する方を選好する事業体もあるだろう。

17 ASC 842-20-50-4(c)を参照。

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質問

借手が、期間が 1 ヵ月以下のリースに関する費用を短期リース費用の開示に含めても容認されるか?

回答

容認される。事業体は、期間が 1 ヵ月以下のリースに関する全費用(又は対象資産の種類ごとに分けたすべての

短期リース費用)を(除外すると明示されているものの)短期リース費用の開示に含めることを選択できると我々は

考える。1 ヵ月以下のリースの除外は負担軽減が目的であるというのが我々の理解であるため、(期間が 1 ヵ月以

下のリースに関する費用も含む)短期リース費用のすべてを開示する方が負担が少ないのであれば、開示の原則

に矛盾しないと我々は考える。期間が 1 ヵ月以下のリースも短期リース費用の開示に含めるときは、事業体はその

方針の開示を検討すべきである。

Driving Discussions :表示及び開示

SABトピック11.M:開示規定

SECスタッフはこのところ、ASU 2016-02 を含む新会計基準の適用までの期間においてはベ

スト・プラクティスに従うよう SEC 登録会社に注意喚起している。SEC スタッフの発言は、

ICFR、監査人の独立性、及び導入活動に関する開示に集中している。SAB トピック 11.M に

は、まだ適用されていない会計基準に関する開示規定が定められている。具体的には、ある

会計基準が公表されたが、将来の所定の日まで適用する必要がないときは、SEC 登録会社

は、その公表されて間もない会計基準を将来の期に適用したときに当該基準が当該 SEC 登

録会社の財政状態と経営成績に及ぼすだろう影響を開示する必要がある。

2016年 9月 22日の発生問題専門委員会(EITF)の会合にて SECスタッフは、SAB トピック

11.M に関するある発表を行った。新リース基準の適用に伴う影響を合理的に見積もることを

SEC 登録会社ができない場合があると SEC スタッフは認めた一方で、SEC 登録会社は、財

務諸表への影響の重要性について定性的な開示をして補足することを検討すべきであるとし

た。具体的には、SECスタッフはそうした開示に次の説明を含めることを期待すると言及した:

当該 ASU適用時に SEC登録会社が選択すると予想する会計方針による影響

そうした方針と、当該 SEC 登録会社による現行の会計方針が、どのように相違する

可能性があるか

当該 SEC 登録会社による導入プロセスの進捗と、まだ対処していない導入上の重

要な問題の性質

こうした最近の発言を踏まえると、新リース基準の発効日が近づくにつれて、SAB トピック

11.M の開示規定はさらに改良され、より充実した内容になると我々は予想する。その他の情

報については、デロイトの 2016年 9月 22日付 Financial Reporting Alertをご覧いただきた

い。

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最初の四半期報告で必要な年次開示

新リース基準が規定している開示の中には、期中財務諸表に表示することを求めていないも

のもあるが、SEC 登録会社は、SEC 規則及び SEC スタッフの解釈のもと、新会計基準の初

度適用後最初の期中期間及び初度適用年度のその後の各四半期においては、年次開示事

項と期中開示事項の両方を表示する必要がある。具体的には、SECの FRMセクション 1500

に次のように記載されている:

(レギュレーション)S-X アーティクル 10 は、直近の年次財務諸表に開示されていない重要事項

について開示するよう求めている。よって、登録会社が期中に新たな会計基準を初度適用すると

きは、当該登録会社は、当該新会計基準が定める年次財務諸表の開示事項と期中財務諸表の

開示事項の両方を、重複しない範囲で表示することが求められる。こうした開示は、初度適用年

の各四半期報告に含める必要がある。

したがって、12 月決算の SEC 登録会社は、2019 年 3 月 31 日に終了する同登録会社の最

初の四半期から毎四半期、重要で情報が重複しない範囲で、新リース基準の全開示規定を遵

守する必要がある。

移行

Q&A 18 使用権資産の減損に関する移行の検討事項

背景

ASC 360は、保有し使用している長期性資産又は資産グループ18に係る減損の特定、認識、及び測定について指

針を示している。ASC 360の減損テスト・モデルのもとでは、借手は長期性資産(資産グループ)について、減損の

兆候が存在するときは減損テストを実施する必要がある。こうしたテスト・アプローチのもとでは、借手は、資産(資

産グループ)の回収可能性をテストし、必要に応じて、当該資産(資産グループ)の簿価と公正価値の差異を求め

て計算される減損損失を認識することが求められる。

借手は、他の長期性資産のときと同じように(すなわち、ASC 360 に従って)使用権資産について減損テストを実

施しなければならない。また、移行時点で、関連した減損損失があれば借手は、使用権資産の当初測定に含める

必要がある。

オペレーティング・リースに関係する使用権資産が減損しているときは、借手は、ファイナンス・リースに適用される

事後測定の指針に従い、残余使用権資産を償却することになる。つまり通常は、残存リース期間にわたり定額法

で償却することになる。したがってその後は、オペレーティング・リースは、リース費用合計を定額法で計上するとい

う処理を適用できなくなる。但し、減損後の期間は、借手は引き続き、使用権資産の償却と利息費用を単一表示科

目として表示する。

質問

ASC 842 への移行のもとで借手は、特定の資産グループに係る過去の減損損失を使用権資産に再配分する必

要があるか?

18 ASCのマスター用語集は資産グループを、「保有し使用する長期性資産の会計単位で、識別可能なキャッシュ・フローが、他の資産及び負債の

集合に係るキャッシュ・フローから概ね独立している最小単位を表す」と定義している。

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回答

必要ない。使用権資産は基本的に、ASC 360 に基づく既存の資産グループに追加される。しかし、特定の資産グ

ループに係る過去の減損損失の配分への、使用権資産の認識による影響は、会計方針の変更による間接的な影

響に該当する。ASC 250-10-45-3 及び ASC 250-10-45-8 に従い、会計方針の変更による間接的な影響は認識

すべきではない。

2016年 11月 30日の FASB会合にて FASBは、新リース基準の発効日時点、及び表示する全比較対象期間に

ついて、借手は資産グループ内の過去の減損損失の配分を見直すべきではないとの見解を示した。これに加え

FASB は、資産グループ内で認識済みの過去の減損損失の配分を、移行時の使用権資産の当初測定に借手は

含めるべきではないとの見解を示した。したがって借手は、減損損失が比較対象期間に認識されているか否かに

かかわらず、本基準の発効日前に当該資産グループに配分された減損損失があったとしても、見直すべきではな

い。さらに FASBは、使用権資産に影響を及ぼし得る ASC 842発効日前の減損関連の状況は、次のものに限定

されると強調した:(1)ASC 840 の指針が適用されるサブリースの減損に関係する額、(2)ASC 420 における撤

退及び処分の指針が適用されるオペレーティング・リースに係る債務の認識。

編集者注

減損損失が比較対象期間に認識されたか否かにかかわらず、本基準の発効日前に資産グ

ループに配分された減損損失を借手は見直すべきではないという FASB による説明は、使用

権資産の測定に減損を含めることを事業体に求める移行指針を運用不能にさせると思われ

る。つまり、2016 年 11 月 30 日の会合で FASB が導き出した結論は、移行時点で使用権資

産に減損が生じているという状況はあり得ないことを意味すると解釈される可能性がある。そう

した解釈により事業体は、過去の減損を再計算及び再配分しなければならないという規定から

逃れられるが、移行時点で又は最も古い比較対象期間時点で、使用権資産に減損が生じてい

たと合理的に結論付けることができることもあると我々は考える。例えば、ある小売会社が各

店舗を一つの資産グループとして扱い、特定のグループ内の全資産(主に建物付属設備)が、

過去のある期間にゼロまで減損したとそれまでに判断している場合がある。さらに、当該資産

グループ内に、認識している他の資産が存在していれば、減損の認識がさらに必要になって

いただろうと想定する。この場合、この小売会社は、使用権資産も一部又は全部減損してお

り、よって、当該使用権資産は、当該資産グループに関する以前の減損日時点で調整すべき

であると判断できる。こうした問題がおそらく、FASB のスタッフに提起されるだろう。影響を受

ける会社は、動向を注視し、監査人や会計アドバイザーに相談することを検討すべきである。

Q&A 19 「3点セット(Package of Three)」を選択しないときの分類日

ASU 2016-02 はさまざまな実務上の負担軽減措置を定めているが、ASC 842-10-65-1(f)(2)もその一つで、同項

には次のように記載されている:

事業体は、期間満了を迎えた又は既存のリースに係る分類を再判定する必要はない(つまり、トピック 840 に従ってオペ

レーティング・リースに分類された既存のリースはすべて今後もオペレーティング・リースに分類され、トピック 840 に従っ

てキャピタル・リースに分類された既存のリースはすべて、ファイナンス・リースに分類される)。

よって、この実務上の負担軽減措置を適用する場合は、事業体はリースの分類を再判定しない。代わりに、現行の

米国 GAAP(ASC 840)のもと判定したリースの分類を維持する。この実務上の負担軽減措置は、移行時における

実務上の負担軽減措置である「3 点セット」の一部である。このセットは、セットの一部のみを選択するということは

できない。セット全体を選択しなければ、このセットに含まれている移行時の実務上の負担軽減措置は一つも適用

できない。

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質問

ASC 842 への移行時点で、表示する比較対象期間の中で最も古い期より前に開始したリースで、事業体が ASC

842-10-65-1(f)にある実務上の負担軽減措置一式を選択しなかったときは、表示する比較対象期間の中で最も古

い期時点のリースの分類を判定するのにどの日付を使用すべきか?

回答

リースの分類は、ASC 842におけるリースの分類規準と次のうちいずれか遅い日時点の事実関係と状況に従って

行うべきである:(1)リース開始日、(2)ASC 840 の条件変更指針に従って、リースが最後に条件変更されたとみ

なされる日19。表示する期間の中で最も古い期より前にリースが更新又は延長されているときは、この分類判定上、

更新又は延長日がリース開始日とみなされる。但し、最初のリース開始日時点で更新されることが相当確実である

と想定されていた場合はこの限りではない。

12月決算の公開事業体 Aは 2013年 6月 1日、リース契約を締結しオフィス・ビルを使用する権利を取得

した。2016年 6月 1日、Aと貸手はリースの条件変更をし、リース対象スペースを縮小したほか、残存ス

ペースに対するリース料を、その時の相場を反映させるために引き上げた。この条件変更は、ASC 840-

10-35-4による条件変更に該当する。12月決算の公開事業体である Aは、表示する比較対象期間の中で

最も古い期の期首に相当する 2017年 1月 1日現在の適切なリースの分類を判定しなければならない。当

該リースはリース開始後に条件変更されているため、ASC 842のもとリースの分類判定は 2016年 6月 1

日(ASC 840に基づく条件変更日)を基点として実施する。

編集者注

上の Q&A では、リースの分類を判定する際の基点となる日と、当該判定日時点のどのイン

プットを使用すべきかという点を取り上げている。分類日時点で使用するインプット(リース料や

割引率など)は、リース測定に関するものとは同一ではない。例えば、表示する比較対象期間

の中で最も古い期より前に開始されたオペレーティング・リースについては、表示する比較対

象期間の中で最も古い期の期首時点における残りのリース料と割引率を用いてリース負債と

使用権資産を測定する必要がある。

Q&A 20 事後的判断の使用に関する実務上の負担軽減措置の適用

ASC 842-10-65-1(g)には、ASC 842への移行時に事業体は実務上の負担軽減措置として、リース期間の判定及

び使用権資産の減損評価において事後的判断を使用することを選択できると記載されている。

具体的には、ASC 842-10-65-1(g)には次にように記載されている:

事業体はまた、リース期間の判定において(すなわち、リースを延長又は解約する借手のオプション、及び対象資産を購

入する借手のオプションを検討する時)、及び事業体の使用権資産の減損評価において、実務上の負担軽減措置を選

択し、事後的判断を使用することができる。この負担軽減措置を選択する時は、当該事業体はすべてのリース(当該事

業体が借手又は貸手であるリースを含む)に一様に適用しなければならない。この実務上の負担軽減措置は、[ASC

842-10-65-1(f)]に定められている実務上の負担軽減措置と別に選択することも、又は併せて選択することもできる。

質問1

ASC 842-10-65-1(g)における事後的判断の使用に関する実務上の負担軽減措置を適用するとき、当初のリース

開始日から適用日までに生じた個別事象(借手によるリースの更新など)のみを事業体は考慮に入れるべきか?

19 ASC 840-10-35-4を参照。

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回答

そうではない。事後的判断の使用に関する実務上の負担軽減措置を適用するときに事業体が考慮に入れるべき

事項は、発生した又は発生していない既知の事象のみに限定されない。むしろ、それよりも広い視点が必要である

ため、リース期間の判定及び使用権資産の減損評価においては、個別の事象に加え、リースの開始から ASC

842 の発効日までの事実関係及び状況の変化も、事業体は考慮に入れる必要がある。例えば、借手が行使した

更新オプションなど既知の事象に加え、ASC 842-10-55-26 に説明されている各種要素の変化や他の事象(例え

ば、事業における戦略の転換、市場賃料の変化、業界全体の進化など)のうち、借手が残りの更新オプションを行

使する(又は行使しない)ことが相当確実であるか否かに影響を及ぼし得る変化や事象も考慮に入れる必要があ

る。

この質問に対する回答を FASBスタッフと非公式に議論したところ、FASB スタッフは、この結論の全体像に同意し

た。

質問2

ASC 842-10-65-1(g)における事後的判断の使用に関する実務上の負担軽減措置を適用するときに、どの日まで

の事後的判断を使用するか?

回答

事後的判断をする時、事業体は新リース基準の発効日までに生じた事象及び状況を考慮に入れるべきである。

2004年、A社はある店舗について、5年間の更新オプションが 3つ盛り込まれた期間 15年のリースを締

結した。2019年 1月 1日、Aが新リース基準を初度適用し同基準へ移行する時、Aは ASC 842-10-65-

1(g)における事後的判断の使用に関する実務上の負担軽減措置を適用することを選択した。リースの実行

以来、次の事象が発生していた:

2017年 11月 9日、Aは 3つある期間 5年の更新オプションの最初のオプションを行使した。

2018年中、Aの賃料が著しく割安な水準になるまで当該エリアにおける市場賃料が上昇した。

2019 年 1 月 15 日、A の CEO は事業戦略の転換を決定し、同社は実店舗での販売から撤退

し、オンライン店舗に集中することになった。

リース期間の判定に事後的判断を適用する時に Aは、新リース基準の発効日までに生じた事象を考慮に

入れる必要がある。よって、Aは新基準を 2019年 1月 1日から適用したため、Aは次の 2点を考慮に入

れる必要がある:(1)2017年に最初の更新オプションを行使したこと、(2)Aが更新オプションをさらに行使

するか否かの判定に対する、2018年の市場賃料の著しい上昇による影響。実店舗販売から撤退するとい

う決定は新リース基準の発効日後に生じたため、A社はリース期間の判定においてこの決定を考慮に入れ

るべきではない。

Q&A 21 直接金融リース又は販売型リースからオペレーティング・リースへ移行させるときのそ

の他のリース関連の残高に関する会計処理

移行時に ASC 842-10-65-1(f)における実務上の負担軽減措置を選択しない場合、ASU 2016-02のもとリースの

分類を判定することが求められる(「3 点セット」を選択しないときの移行時のリースの分類判定に関する他の情報

については Q&A 19を参照)。ASC 842のもとでのリースの分類は ASC 840のもとでのリースの分類と概ね変わ

らないが、この新基準の初度適用時にリースの分類が変わるというケースがある。

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2010年 10月 1日、A社は様々なリースの対象になっているオフィス・ビルを取得した。その結果 A社は、

オフィス・スペースの貸手になった。既存のテナントとのリース契約の中には、契約期間にわたりリース料が

エスカレートする(段階的に上昇する)ものもあった。ASC 840におけるリースの分類規準に基づき A社

は、既存のリースは直接金融リース(DFL)に分類すべきであると判断した。よって A社は取得日に、ASC

840に従ってリースへの正味投資額を認識し会計処理した。

2019年 1月 1日に、A社は、新リース基準を適用したが、ASC 842-10-65-10-65-1(f)における実務上の

負担軽減措置を選択しなかった。したがって A社は、ASU 2016-02における分類規準を評価し、既存の

DFLは新基準のもとオペレーティング・リースに分類すべきであると結論付けた。事後的判断の使用を選択

したためリース期間の前提が変わったなど、こうした判定結果は様々な理由により生じ得る。

リースを ASC 840のもとオペレーティング・リースに分類していた場合、A社は、リース契約に賃料のエス

カレーション条項が組み込まれていることを反映して、表示する期間の中で最も古い期時点で 25,000 ドル

の「定額法による未収賃料」20を認識していたと想定する。同様に、リース開始時点で A社は、償却額控除

後で 55,000 ドルの既存リース無形資産(in-place lease intangible)21を認識していたとする。なお既存リー

ス無形資産は、テナントが当該不動産を 100%占有していることに伴う取得日時点の本来的価値を表す。

質問

ASC 840に基づく DFLから ASU 2016-02に基づくオペレーティング・リースへ移行させる時に A社は定額法によ

る未収賃料又は既存リース無形資産を認識すべきか?

回答

認識すべきである。定額法による未収賃料及び既存リース無形資産は、あたかもオペレーティング・リースに関連

してこれらを初めから計上していたかのように、移行時に認識する必要がある。

ASC 842-10-65-1(y)にある移行指針が、これまで ASC 840のもと DFLに分類していたリースを ASC 842のもと

オペレーティング・リースに分類する際の移行方法を取り上げている。具体的には、ASC 842-10-65-1(y)には次の

ように記載されている:

本トピックに従ってオペレーティング・リースに分類される各リースについては、財務諸表に表示する比較対象期間の中

で最も古い期の期首とリース開始日のうちいずれか遅い日から、あたかも当該リースを初めから本トピックに従ってオペ

レーティング・リースとして処理してきたかのように処理するというのが狙いである。したがって貸手は、次のすべての処

理を行うものとする:

1. トピック 840 のもと当該リースがオペレーティング・リースに分類されていたと仮定した場合の簿価で対象資産を

認識する22

2. リースへの正味投資の簿価を認識中止する

3. (y)(1)と(y)(2)の額に差異があれば、資本調整額として計上する

4. その後は、オペレーティング・リースについては本トピックに従って、対象資産については他のトピックに従って処

理する。(強調追加)

ASC 842 にあるこの移行手法は完全遡及アプローチではない。但し、ASC 842-10-65-1(y)の狙いは、FASB ス

タッフが認めているように、あたかも当該リースを ASC 842 に従って初めからオペレーティング・リースとして処理

していたかのように処理することにある。

よって、上記移行指針は特定の残高しか説明していないものの(リースを ASC 840のもとオペレーティング・リース

に分類していたと仮定した場合の簿価で対象資産を認識するなど)、我々の見立てでは、この指針はすべてを網羅

することを意図しているわけではなく、当審議会の狙いは、当該リースが初めからオペレーティング・リースとして処

理されていたと仮定した場合に認識していたであろうすべての残高に適用することにある、とみている。

20 定額法による未収賃料は、契約開始以降に当該事業体の顧客から受け取ったリース料合計と認識した定額法による受取賃料の差異を表す繰

延残高に該当する。 21 既存リースは、リースを組成するのに必要な現金支出(マーケティングや販売手数料、法律周りの費用、リース・インセンティブなど)を回避できる

という点で取得主体に価値を提供する。また既存リースの場合、本来であれば必要になる最低テナント数獲得期間中の逸失キャッシュ・フローを

取得主体は回避できる。 22 ASC 842-10-20は対象資産を、「その資産を使用する権利を借手に移転させたリースの対象資産。特定の単一資産を構成する部分のうち、物理

的に区分できる部分も対象資産になり得る」と定義している。

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定額法による未収賃料

上の分析に基づくと、A 社は ASC 842 へ移行する時に、表示する期間の中で最も古い期の期首(すなわち 2017

年 1月 1日)時点で、次の処理を行う必要がある:

リースへの正味投資の認識を中止する

ASC 840 のもと当該リースが初めからオペレーティング・リースとして処理されていたと仮定したときの簿

価で対象資産を認識する

当該リースを ASC 842 のもと初めからオペレーティング・リースとして処理していた場合に計上していた

であろう額で(すなわち、A社が ASC 842へ移行する時の、リース開始から、表示する期間の中で最も古

い期までの定額法による未収賃料の蓄積に相当する 25,000 ドル)、定額法による未収賃料残高を認識

する

また A社は、上記処理の結果としての差額があれば期首資本調整額として認識し、その後は、ASC 842に従って

オペレーティング・リースに関する会計処理をする必要がある。

既存リース無形資産

A 社は、ASC 805-20-25-10A にある指針を適用し、2017 年 1 月 1 日(すなわち、表示する年度の中で最も古い

年度の期首)時点の既存無形資産を認識する必要がある。つまり A社は、2010年 10 月 1 日(当初の取得日)時

点の既存無形資産の額を算定し、表示する年度の中で最も古い年度の期首である 2017 年 1 月 1 日までの当該

無形資産の償却を計算に入れる必要がある。この計算から得られる額が、当該リースを初めからオペレーティン

グ・リースとして処理していた場合に認識していたであろう既存リース無形資産の額になる。A 社は、55,000 ドルの

既存リース無形資産を認識し、残りのリース期間にわたり当該額を償却する必要がある。

編集者注

上の事実関係は、移行時の多くの事業体に共通しない特別な事実関係に限定されるものであ

ると思えるが、上で概説した原則、つまり、あたかも初めからオペレーティング・リースとして処

理してきたかのように移行時にオペレーティング・リースとして処理することが、重要な論点で

ある、と我々は考えている。具体的に言うと、ASC 842-10-65-1の関連する各項における移行

指針の狙いを、明示的で時に細かく規定された機械的な適用指針に照らし合わせて検討する

ことが大切であると我々は考える。

例えば、ASC 842-10-65-1(h)は「企業結合の一環として取得したオペレーティング・リースの

有利又は不利な条件に関連する資産又は負債を、企業結合に関する[ASC]805 に従ってこ

れまで認識してきた」か否かに応じて指針を適用すると明示的に説明しているものの、既存

リース無形資産のように、認識していたであろうリースに関する他の残高を検討し繰越すという

のも同様に適切であると我々は考える。

Q&A 22 オーダーメード建設(Build-to-Suit)の移行

背景

オーダーメード建設の取り決めとは、大まかに言うと、最終的にリースする資産の建設に借手が関与する状況をい

い、ゼロから実施するプロジェクトも、既存の資産に係る大規模な構造上の改良を目的とする建設も含まれる。

ASC 840のもと事業体は、自己が建設リスクの実質すべてを負担し、会計処理の観点から見て、建設中のみなし

所有者としてみなさなければならないか否かを検討する。みなし所有者について定められている会計処理によると、

借手は、当該資産の原価全額と、建設期間中に自ら資金を拠出していない額については対応する金融債務として、

貸借対照表に計上する必要がある。さらに借手は、建設完了時には、セール・リースバックの会計処理を適用し、

当該プロジェクトの認識中止をできるか否かを判定しなければならない。売却扱いを妨げる様々な形態での関与の

継続が理由で、建設が完了しても多くの事業体が当該プロジェクトの認識を中止できない。不動産が関係するオー

ダーメード建設の取り決めについては特に、こうした帰結が支配的になってきた。総合すると、ASC 840のオー

ダーメード建設ルールは適用が過度に複雑で、過度に厳しい会計結果になると広く考えられている。

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ASU 2016-02 は、みなし所有者の判定を規定するリスク原則を廃止し、自己が「支配」23を有する場合に限り借手

は建設中に資産を所有するとみなすというモデルに置き換えられる。建設期間中に借手が資産を支配するか否か

の判定方法に関する我々の解釈を示す指針については Q&A 27 を参照されたい。

オーダーメード建設の取り決めに関する ASC 842-10-65-1(u)の移行指針には、次のように記載されている:

借手は、財務諸表に表示する比較対象期間の中で最も古い期の期首時点で存在する、又はそれ以降に締結された、ト

ピック 840 のもとオーダーメード建設の取り決めとして処理しているリースについては、次に従い修正遡及移行方式を適

用しなければならない:

1. 事業体が、取引をトピック 840 に従ってオーダーメード建設に指定していたことを唯一の理由として資産及び負債

を認識していた場合、当該事業体はそれらの資産及び負債の認識を、財務諸表に表示する比較対象期間の中で

最も古い期の期首と、借手がトピック 840 に従って当該資産の会計処理上の所有者であると判定された日のい

ずれか遅い日に中止する必要がある。その日の時点で差異がある場合は、資本調整額として計上する必要があ

る。借手は、(k)から(t)にある借手の移行規定を当該リースに適用しなければならない。

2. 財務諸表に表示する比較対象期間の中で最も古い期の期首より前にオーダーメード建設リースの建設期間が完

了し、且つ、当該取引が適用開始日前にサブトピック 840-40 のもとセール・アンド・リースバック取引の要件を満

たしていたときは、当該事業体は、リースに関して借手に求められている基本的な移行規定に従わなければなら

ない。

上記移行指針には、ASC 840のもとオーダーメード建設の資産及び負債を認識している場合は、移行時に認識中

止すべきであると明記されている。しかしながら同移行指針は、新基準における建設中の資産の支配に関する原

則を比較対象期間にも適用すべきか否かを明示的に取り上げておらず、適用する場合は、それらの資産及び負債

を直ちに改めて認識する可能性がある。

質問1

本 ASU の発効日前に建設が完了しリースが開始されたときに、新基準における建設中の資産の支配に関する原

則を比較対象期間に適用しなければならないか24?

回答

適用しなくてよい。建設が本 ASU の発効日より前に完了しリースが開始されている限り、本 ASU における支配の

原則を、(ASC 840 のもと借手がみなし所有者であったか否かにかかわらず)比較対象期間中について判定する

必要はない。FASBスタッフも、オーダーメード建設の取り決めに関するこうした移行措置の適用を認めている。

したがって、ASC 842-10-65-1(u)における移行時の認識中止に関する指針を適用すべきである。よって借手は次

の処理をする必要がある:(1)比較対象期間において、借手がみなし所有者だったオーダーメード建設の取り決め

による影響の認識を中止する、(2)差異を資本の部に認識する。

23 ASC 842-40-55-5が、借手が建設中の対象資産を支配しているか否かを判定する際に借手が検討すべき指標を示している。 24 この規定上の「発効日」とは、事業体がASC 842を初度適用する必要がある日をいう。例えば、12月決算の公開事業体については、ASC 842は

2018年12月15日より後に開始する期間から発効するため、当該日は2019年1月1日になる。

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42

質問2

発効日時点で建設が完了してなく、リースが開始されていないときは、借手はオーダーメード建設の取り決めをど

のように移行させるべきか?

回答

こうした状況における移行アプローチを下表にまとめる。

ASC 840のもとでの判定 ASC 842のもとでの判定25 移行アプローチ

借手はみなし所有者であった 借手は建設中支配を有する 会計処理は変わらない。つまり、資産及

び金融債務は、比較対象期間中及び発

効日時点もバランスシートに残る。

借手はみなし所有者であった 借手は建設中支配を有してい

ない

資産及び金融債務の認識を中止し、財

務諸表に表示する比較対象期間の中で

最も古い期の期首と、ASC 840に従っ

て借手が会計処理上の資産の所有者に

なると判定された日のうちいずれか遅い

日に資本の部に差異を反映させる。

借手はみなし所有者ではな

かった

借手は建設中支配を有する 資産及び金融債務を、財務諸表に表示

する比較対象期間の中で最も古い期の

期首と、ASC 842に従って借手が会計

処理上の資産の所有者になると判定さ

れた日のうちいずれか遅い日に認識す

る。次の例を参照。

12月決算の公開事業体である A社は、新たに建設するテレビスタジオをリースするという契約を B社と締

結した。B社は、テレビスタジオの建設を 2017年 6月 8日に開始した。そして同建設は 2019年 11月 5

日に完了することが見込まれている。リースは、建設が完了次第開始する予定である。建設期間中、A社

は建設途中のテレビスタジオを取得できるため、ASC 842のもと建設プロジェクトを支配するとみなされる。

A社は、ASC 840に従ってみなし所有者であるとはみなされなかったと想定する。A社が ASC 842を初度

適用する時、A社は、比較対象期間中の仕掛資産の原価(及びそれを相殺する金融債務)を 2017年 6月

8日から認識しなければならない。

25 借手が建設中の資産を支配するか否かの判定は、表示する比較対象期間中におけるすべて時点について実施する必要がある。

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Q&A 23 SECレギュレーションS-Kアイテム301に基づく要約財務データ表に関する規定

SECレギュレーション S-Kアイテム 301は SEC登録会社に対して、「登録会社の過去 5年度の各年度」と「誤解

を招く情報にならないために必要なその他の年度」に関して特定の財務データを開示するよう求めている。SEC ス

タッフは原則、監査済財務諸表に含まれている年度より前に表示する最も古い 2 年度(「4 年前と 5 年前」)を含む

全期間を、年次財務諸表と同じ基礎に沿って表示するよう要求している。

質問

SEC 登録会社は、SEC レギュレーション S-K アイテム 301 に規定されている要約財務データ表に表示する全 5

年度において、ASU 2016-02の会計処理規定を反映させることが求められるか?

回答

求められない。2016年 3月 21日に行われた CAQの SEC規制委員会と SECスタッフとの合同会議に関するハ

イライトで指摘されている通り、SEC スタッフは、SEC 登録会社が当該 ASU を適用する際に、新リース基準の規

定を要約財務データ表の全 5期間に反映させることを要求しないと述べている。その代わりに SECスタッフは、新

指針の移行規定に則した要約財務データ表を期待すると考えられる。それによれば、借手は新基準を、当該基準

適用開始日(すなわち、財務諸表に表示する比較対象期間の中で最も古い期の期首)以降に存在するキャピタル・

リース及びオペレーティング・リースに適用することが要求されている。よって当該表には、表示する期間の直近 3

年についてのみ、当該 ASUの適用を反映した財務情報を含める必要がある(すなわち、4年前及び 5年前は、年

次財務諸表と同じ基礎に基づいて表示されない)。

より最近の期間には新リース基準の規定が反映される一方、古い期間には反映されないため、SEC 登録会社は、

要約財務データ表における古い期間について表示するデータは比較可能性に欠けることを(それが該当し、重大で

あるときは)開示する必要がある。

Q&A 24 修正財務諸表に関する規定-新登録届出書又は修正登録届出書

特定の後発事象の結果、過去に発行した財務諸表を SEC 登録会社が遡及的に調整しなければならなくなること

がある。例えば、特定の SEC 登録届出書における項目(フォーム S-3 のアイテム 11(b)(ii)など)26により SEC 登

録会社は、会計処理の方針に重大な遡及的変更があったときは新登録届出書又は修正登録届出書において修正

財務諸表を示さなければならない場合がある。SEC 登録会社が新リース基準を初度適用し、その後、新リース基

準の初度適用による影響が反映されている期中財務諸表を参照することにより組み込んでいる登録届出書を提出

する場合、当該 SEC 登録会社が、同登録届出書に参照することで組み込まれている年次財務諸表(すなわち、

フォーム 10-K における年次財務諸表)をどのように遡及修正すべきかという疑問が生じている。当該年次財務諸

表には、SEC 登録会社が登録届出書を提出しなければ求められなかっただろう年度が 1 年余分(「4 年前」)に含

まれていることになる。

質問

SEC登録会社が、ASC 2016-02を初度適用する年度の期中に新たな登録届出書又は修正登録届出書を提出す

る場合、当該届出に参照することで含まれる又は組み込まれる財務諸表を(「4年前」を含む)全 3年度について遡

及修正する必要があるか?

26 フォームS-4など他の登録届出書にも同様な規定が含まれている。

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回答

必要ない。ASU 2016-02 の移行規定は、「4 年前」を遡及修正することを求めていない。新たな登録届出書におい

て財務諸表を再発行する場合、財務諸表を遡及修正再表示する義務が前倒しで訪れるが、適用開始日が変わる

わけではない。

例えば、2019 年 1 月 1 日に ASU 2016-02 を初度適用する 12 月決算の会社の場合、2017年 1 月 1 日が、初

度適用年度の 2019 年 12 月 31 日の財務諸表に表示する 3 年の比較対象期間に係る初日になるため、通常は

2017年 1月 1日が適用開始日になる。SECの FRMにあるパラグラフ 11210.1の説明によると、こうした初度適

用パターンにおいて、会社が初度適用年最初の四半期より後で且つ 2019年 12月 31日のフォーム 10-Kの提出

より前に新たな登録届出書を提出するときでも、適用開始日はやはり 2017年 1月 1日になる。この事例では、新

たな登録届出書は、2016 年、2017 年、及び 2018 年の各 12月 31 日に終了する会計年度に関する財務諸表が、

必要に応じて 2019年の期中財務諸表と共に必要になると想定されている。同 FRMはまた、新たな登録届出書に

おいて財務諸表を再発行することで、2017年及び 2018年の各 12月 31日に終了する年度に係る財務諸表を遡

及修正再表示する義務が前倒しで訪れるが、適用開始日は変わらないと説明している。よって、当該新登録届出

書に参照することで含まれる又は組み込まれる 2016 年 12 月 31 日終了年度に係る財務諸表は、遡及修正再表

示しない。表示する年度の中で最も古い年度に相当する 2016 年 12 月 31 日終了年度に係る財務諸表には、

ASC 840に基づく従来の会計処理規定が反映されることになる。

その他の指針については SECの FRMセクション 11210を参照されたい。

その他の主な規定

Q&A 25 契約の構成要素の特定と、それら構成要素への対価の配分

ASC 842 は、契約の構成要素(すなわち、リース部分と非リース部分)の特定に関する指針を示している。具体的

には、ASC 842-10-15-30に次のように記載されている:

契約における対価は、契約を構成する個別のリース部分と非リース部分にそれぞれ配分しなければならない(借手向け

の配分指針については 842-10-15-33 項から 15-37 項を、貸手向けの配分指針については 842-10-15-38 項から 15-

42項を参照)。契約の構成要素に含まれるのは、財又は役務を借手に移転する項目又は行為のみである。よって、次に

挙げるものは契約の構成要素ではなく、契約における対価の配分を受けない:

a. 契約を締結し又はリースを開始するための管理業務で、借手に財又は役務を移転しないもの

b. 貸手の費用の補填又は支払い。例えば貸手は、貸手として又は対象資産の所有者として様々な費用を負担する。

そうした費用を借手が支払わなければならないという規定は、それを第三者に直接支払うか貸手に補填するかを

問わず、対象資産を使用する権利から独立して借手に財又は役務を移転させない。

質問

貸手が負担した費用の補填として徴収される費用は、リースにおいてどのように処理するか?

回答

まず、契約の各構成要素を特定する必要がある。ASC 842-10-15-30 は、「契約の構成要素に含まれるのは、財

又は役務を借手に移転する項目又は行為のみである」としている。例えば契約に、個別のリース部分(契約の主題

である対象資産を使用する権利など)と、借手に移転されるその他の財又は役務(保守管理サービスなど)が含ま

れている場合がある。

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契約には、借手に個別の財又は役務を提供しない他の費用又は報酬が含まれていることがよくある。例えば、(1)

契約を締結し又はリースを開始するために行う管理業務の費用、(2)貸手の費用(例えば財産税やリース資産に

関係する保険)の補填又は支払い――などの借手が支払う費用である。これらの種類の費用は、借手に財又は役

務を移転しないため、個別の構成要素にみなされない。

事業体は、契約における対価の合計(管理業務の開始、財産税、及び一定の保険27に関して請求されるすべての

額を含む)を、特定された個別のリース部分28と非リース部分に配分する必要がある。対価を配分する方法は、そ

の取り決めにおいてその事業体が借手であるか又は貸手であるかによって決まる。

借手

ASC 842-10-15-37 における実務上の負担軽減措置に従ってリース部分及び非リース部分を単一のリース部分と

して処理することを選択しない借手は、契約における対価を、観察可能な単独価格を入手できるときはそれを用い、

相対的単独価格に応じて個別のリース部分と非リース部分に配分することになる。観察可能な単独価格を入手で

きないときは、借手は観察可能な情報を最大限に活用することで単独価格を見積もることができる。契約における

行為のうち、個別の財又は役務を借手に移転しない行為は個別の構成要素にみなされないため、契約における対

価の配分を受けない(例えば、財産税や一部の保険は個別の構成要素に該当せず、これらの行為に関係して契約

に明記されている額があれば、特定されたリース部分と非リース部分へそれぞれ配分することになる)。

貸手

貸手は、新収益基準の ASC 606-10-32-28 から 32-41 までに定められている指針(同指針は基本的に、各構成

要素の相対的単独販売価格に応じて配分することを求めている)を適用することで、個別のリース部分と非リース

部分へ契約における対価を配分する。また、ASC 842-10-15-38 に記載されている通り貸手は、「資産計上した費

用(例えば[ASC]340-40 に従って資産計上した当初直接費用や契約費用)を、それらの費用が関係する個別の

リース部分と非リース部分に配分する」ことになる。借手による配分方法同様、契約における行為のうち、個別の財

又は役務を借手に移転しない行為は個別の構成要素にみなされないため、契約における対価の配分を受けない

(例えば、財産税や一部の保険は個別の構成要素に該当せず、これらの行為に関係して契約に明記されている額

があれば、特定されたリース部分と非リース部分へそれぞれ配分することになる)。

27 資産に対する貸手の利益を保護する保険の費用は、基本的に契約対価の一部であり、配分が必要になる。他方、借手を保護する保険(借家人

保険など)の費用は、貸手の費用の補填に当たらないため、かかる保険がリースの条件のもと義務付けられているか否かにかかわらず、契約対

価の一部にはならない。 28 契約に組み込まれているリース部分は一つのときもあれば、独立したリース部分が複数あるときもある。

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借手 X は、ある建物を貸手 Y から賃借する期間 5 年のリース契約(グロス・リース)を締結した。同契約

のもと Xは、35,000 ドルの固定年間リース料を支払う必要がある(期間 5年で合計 175,000 ドルの支払

い)。契約条件によると、35,000 ドルの年間リース料の内訳は、20,000 ドルが建物の賃貸借、7,000 ドル

が共用部分の保守管理費、5,000 ドルが財産税、3,000 ドルが建物の保険という構成になっている。借手

の立場から見ると、建物の賃貸借に係る見積単独価格29(税金と保険を除く)は 22,000 ドル、保守管理

サービスの見積単独価格は 8,000 ドルである。貸手の立場から見ると、建物の賃貸借に係る単独販売価

格30(税金と保険を除く)は 21,500 ドル、保守管理サービスの単独販売価格は 7,650 ドルである。

契約における個別の構成要素を評価する際、借手と貸手の両者は、同契約においてどのような財及び

サービスが提供されるかを判定する必要があるが、それらはリース部分と非リース部分の両方で構成さ

れる場合がある。この契約では、主たる財又はサービスは対象資産を使用する権利であり、これはリース

部分とみなされる。これに加え、当該契約は Y に保守管理サービスの提供を義務付けており、これは非

リース部分に該当する(すなわち、ASC 606に従って処理されるサービス)。

当該契約はまた、財産税と保険に起因する対価も貸手へ支払うよう借手に義務付けている。しかしながら

ASC 842-10-15-30 によると、これらの各追加報酬は貸手が負担する費用の補填に当たるため、いずれ

も個別の構成要素とみなされない(リース部分と非リース部分のいずれにもみなされない)。よって、契約

には個別に定められている報酬の支払いが 4 種類あるが、この取り決めには 2 つの構成要素しかない。

合計 35,000 ドルの手数料を、リース部分と非リース部分に当たる 2つの特定された財及びサービスの間

で配分する必要がある。

したがって、借手は当該取り決めにおける対価を次のように配分する:

単独価格

単独価格合計に占める

割合 相対的単独価格*

建物の賃貸借(税金と保険を除く) $ 22,000 73.3% $ 25,655

保守管理サービス 8,000 26.7% 9,345

$ 30,000 100.0% $ 35,000

* リース部分と非リース部分の間で配分する対価の合計には、個別構成要素にみなされない額(例えばこの例では、

5,000 ドルの財産税と 3,000 ドルの保険料)も含まれる。

他方、貸手は当該取り決めにおける対価を次のように配分する:

単独販売価格

単独販売価格合計に

占める割合 配分取引価格*

建物の賃貸借(税金と保険を除く) $ 21,500 73.8% $ 25,830

保守管理サービス 7,000 26.2% 9,170

$ 29,150 100.0% $ 35,000

* リース部分と非リース部分の間で配分する対価は借手と貸手で変わらない一方、配分割合と、配分割合に応じて

決まる相対的単独価格(借手)及び配分取引価格(貸手)は、借手と貸手がこれらのバランスを計算する際にそれ

ぞれ独自の前提を設定するため、借手と貸手で一致しない場合がある。

29 ASCのマスター用語集は「単独価格」を、「顧客が契約の構成要素を独立して購入するだろう価格」と定義している。 30 ASCのマスター用語集は「単独販売価格」を、「事業体が約束した財又はサービスを独立して顧客へ販売するだろう価格」と定義している。

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編集者注

リース部分から非リース部分を分離しないという借手の選択

念のため付言すると、ASC 842-10-15-37 は借手に、対象資産の種類ごとに認められる会計

方針の選択肢として、リース部分から非リース部分を分離しないという選択を認めている。この

実務上の負担軽減措置を選択した場合、借手は、各個別のリース部分と31、そのリース部分

に関係する非リース部分を、単一のリース部分として処理することが認められる。この選択をし

た場合、リース負債及び対応する使用権資産の計算結果は、非リース部分を区分処理したと

きに得られる額より高くなる点に注意する必要がある。貸借対照表上の額を押し上げるほか、

リース部分と非リース部分を分離しない場合、リースの分類に影響を及ぼすときがある(すな

わち、非リース部分を含むリース料と借手が保証する残存価値を合算して得られる額の現在

価値が、対象資産の公正価値の実質すべてと同額以上になる場合がある)。

貸手に関係する費用の借手の支払い

貸手に関係する費用(何らかの種類の保険や固定資産税など)について、借手が支払責任を

負うことがよくある。契約条件に応じ、貸手が負担した費用を補填するために貸手にこれらの

費用を支払う場合と、第三者(保険会社や税務当局など)へ直接支払う場合とがある。これら

の費用は変動制の場合が多く、実際の費用に基づき支払われ、契約における対価の一部だと

みなされない。保険や不動産税の支払いは契約における個別の構成要素とはみなされること

はなく、よって、以下の内容にかかわらず、当該契約におけるリース部分と非リース部分の間

で配分することになる:

支払いは固定で対価の一部にみなされる、又は変動で契約における対価の一部で

はない

借手は保険会社や税務当局に直接支払っている、又は貸手に補填している。

Q&A 26 原リースの期間へのサブリースの更新による影響

背景

事業体は、リースの分類及び測定を行うのにリース期間を算定しなければならない。ASC 842-10-30-1 は、次の

ようにリース期間を算定するよう求めている:

事業体は、リースの解約不能期間に、次のすべてを加算してリース期間を算定しなければならない:

a. 借手が行使することが相当確実なリース延長オプションの対象期間

b. 借手が行使しないことが相当確実なリース解約オプションの対象期間

c. オプションの行使を貸手が支配するリースの場合は、そのリースを延長する(又は解約しない)オプションの対象

期間(強調追加)

ASC 842-10-55-26 は、更新オプションを行使することが相当確実であるか否かを判定する際はすべての経済的

要素を考慮に入れる必要があると定めている。さらに、原リースのリース期間を算定する際はサブリースも考慮に

入れなければならない。

31 脚注28を参照。

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質問

サブリースの借手に、リース資産の更新オプションが契約上付与されているときは、それを行使した場合原リース

も更新せざるを得なくなるが、サブリースの更新は原リースの借手の支配が及ばないため、原リースにそうした更

新オプションの全対象期間を自動的に含めるか?

回答

必ずしもそうではない。2016 年 11 月 30 日の FASB 会合で同審議会が示した見解によると、原リースの借手は

原リースのリース期間を算定しなければならないため、原リースの借手はサブリースの借手が更新オプションを行

使することが相当確実か否かを判定しなければならない。サブリースの更新オプションが行使されることが相当確

実であるなら、原リースが更新されることも相当確実である。しかしながら、サブリースの借手が更新オプションを行

使することは相当確実ではないと原リースの借手が判断したときは、原リースの借手は、他の経済的要素が無け

れば、サブリースの借手の解約不能期間後もリースを継続するという更新オプションを含めるべきではない。つまり

サブリースは、原リースのリース期間を算定する際に事業体が考慮に入れなければならない諸要素の一つである。

なお、原リースの借手は ASC 842-10-55-28 に従って、「オプション行使日後の一定期間にわたる対象資産のサ

ブリース」など所定の事象が発生したときはリース期間を再評価することになる。したがって、サブリースの借手か

らサブリースを更新又は延長する旨の通知があり次第、原リースの借手は、残りの更新オプションが行使されるこ

とが相当確実であるか否かを含め、原リースのリース期間を再評価しなければならない。

あるリース契約(「原リース」)のもと、A社は B社から設備をリースしている。他のリース契約(「サブリー

ス」)のもと、A社は当該設備をそのまま C社にリースしている。原リースの解約不能リース期間は 10年

で、所定のリース料で 5年間延長できる更新オプションが A社に 2回分付与されている。同様にサブリー

スも、解約不能期間は 10年で、5年間の更新オプションが C社に 2回分付与されている。C社がサブリー

スに係る更新オプションを行使した場合、A社は原リースを更新せざるを得なくなる。

C社が更新オプションを行使することが相当確実でないときは、A社は、資産や市場に基づく他の要素が無

ければ、原リースのリース期間は 10年(すなわち解約不能期間)に限定されると判定しうる。仮に C社が

サブリースを更新したときは、A社は 1回目の 5年の更新をリース期間に含め、且つ、C社が 2回目の 5

年更新オプションを行使することが相当確実か否かを判定し、リース期間を再評価しなければならない。

Q&A 27 建設中の資産に係る借手の支配

背景

ASC 840のもとでは、建設中における資産の支配はリスクと経済価値を基に決められる。反対に ASC 842では、

支配に基づく規定が定められている。こうした変更の影響に関する詳細は、Q&A 22を参照されたい。

ASC 842-40-55-5 は次の具体的規準を示し、これら基準のいずれか一つが満たされるときは、借手がリース開始

前の建設中に対象資産を支配していることを示唆するとしている:

a. 借手に、建設期間のいずれかの時点で(例えば、貸手に所定の支払いをすることで)建設途中の対象資産を取得する

権利がある。

b. 貸手に、それまでの義務の履行について支払いを受ける強制可能な権利があり、且つ、所有者兼貸手が当該資産を

他の用途に用いることができない(842-10-55-7 項を参照)。所有者兼貸手が当該資産を他の用途に用いることができ

るか否かを判定する際は、最終的にリースされる資産の特徴を考慮に入れる必要がある。

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c. 借手が次のいずれかの法的所有者である:

1. 土地と建設途中にある付属設備(建物など)の両方

2. 建設途中にある不動産以外の資産(船舶や航空機など)

d. 借手が、付属設備が建設される予定の土地を支配し(借手が土地を貸手に移転する取引を行うが、当該移転が、842-

40-25-1 項から 25-3 項による売却条件を満たさない場合も含む)、且つ、当該土地のリースのうち、更新オプションと

併せれば貸手又は関係のない他の第三者が当該付属設備の経済的耐用年数の実質全期間にわたり当該土地をリー

スすることが可能になるリースを建設開始前に締結していない。

e. 借手が、付属設備が建設される予定の土地を賃借しており、その賃借期間が、借手の更新オプションを併せれば付属

設備の経済的耐用年数の実質全期間に及び、且つ、当該土地のサブリースのうち、更新オプションと併せれば貸手又

は関係のない他の第三者が当該付属設備の経済的耐用年数の実質全期間にわたり当該土地をサブリースすることが

可能になるサブリースを建設開始前に締結していない。

但し、ASC 842-40-55-5に、次のように記載されている部分がある:

借手が建設途中の対象資産をリース開始日前に支配していることを示す[ASC 842-40-55-5 にある]状況のリストは、

すべてを網羅しているわけではない。借手が建設途中の対象資産をリース開始日前に支配していることを単独で示す又

は他の状況と相まって示す状況は他にもあるだろう。

質問

ASC 842-40-55-5にある具体的規準のいずれも満たさない場合、借手は、自己が建設中に「対象資産を支配する」

か否かをどのように判定すべきか?

回答

原則、この判定は ASC 606 にある支配の概念に基づいて行うべきである32。ASC 842-40-55-5 にある最初の 3

つの規準は、ASC 606 の原則を根拠としており、同原則は、次のいずれかが満たされるときは借手は建設中に資

産を支配していると示している:(1)借手にコール・オプションを有している、(2)貸手に、それまでの義務の履行に

ついて支払いを受ける強制可能な権利があり、且つ、当該資産を他の用途に用いることができない、(3)借手が、

建設途中にある資産に対する所有権を有する。残りの二つの規準における概念は ASC 606 にはないが、貸手が、

当該土地に建設されている付属設備の経済的耐用年数の実質全期間にわたり対象の土地を合法的に使用できる

はずである(当該財産の明け渡しを強制できないなど)という前提に基づいていると我々は考える(Q&A 30 を参

照)。

建設途中にある資産の支配に係る概念は、契約が、特定された資産の使用を支配する権利を移転させるか否か

に関する指針が盛り込まれている ASC 842 におけるリースの定義に基づくべきである、とは我々は考えていない。

これらの概念は同じように聞こえるが、FASB は、建設途中にある資産のリースを ASC 842 の適用範囲から明示

的に除外している。これには部分的には、資産が使用に供される前でのリースの定義の適用の困難性の結果であ

る(例えば、まだ運用されていない資産に関する経済的便益を評価することが難しい)。

上述の原則を適用すると、資産の設計に関与しているから、又は建設プロジェクトにおける総合建設請負業者だか

らという理由だけで、借手が建設途中にある資産を支配していると結論付けることは適切ではない。こうした関与は、

「オーダーメード建設」の取り決めにおいてはよくあることである。そのような場合、借手は(1)資産に対する所有権

を有していない、(2)支払いを受ける強制可能な権利を貸手に付与していない、又は(3)付属設備の経済的耐用

年数の実質全期間にわたり対象の土地を貸手が使用することを妨げない、といった理由から、借手は典型的には、

建設中の資産を支配していない。

32 ASU 2016-02のBC400(b)項に記載されている通り、FASBは「ある事業体が建設途中にある資産を支配しているか否かの[ASC]842-40に基づ

く評価は、時間の経過と共に履行義務が充足されるか否かを判定するための[ASC]606-10-25-27に基づく収益認識指針に従ってなされる評価

と概念上は似ていると認めた。」

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借手は、新たな本社ビルを建てるために、貸手と建設及びリース契約を締結した。貸手は、建設期間を通じ

て建物の所有権を保持する予定で、建設に対して最高 5,000万ドルを支払うことに同意している。借手は、

借手の仕様に沿ったビルを設計し、貸手から建設プロジェクト中の総合建設請負業者に指名されている。

ASC 842-40-55-5にある具体的規準のいずれも存在しないと想定する。

借手の総合建設請負業者や資産の設計者としての役割は、ASC 842-40-55-5にある具体的規準や ASC

606における支配の原則に基づくと、支配を有していることを示す指標に当たらないため、借手は建設中、

資産を支配していないことになる。同様に、(貸手は建設費用の 5,000万ドルまでしか支払わないため)予

算超過リスクに借手がさらされていることも、ASC 842の適用前であれば、借手は建設リスクにさらされて

いるため会計上の所有者にみなされるという決定要因になるところだが、(ASC 842のもとでは)支配の分

析に影響を及ぼさない。

Q&A 28 建設中に建設途中の資産を取得する権利

借手がリース開始前の建設中に対象資産を支配していることを示す具体的規準の一つが示されている ASC 842-

40-55-5(a)には、次のように記載されている:

借手に、建設期間のいずれかの時点で(例えば、貸手に所定の支払いをすることで)建設途中の対象資産を取得する権

利がある。

質問

いずれかの時点で行使できるコール・オプションを有していると借手は全建設期間にわたり資産を支配していること

になるか?

回答

状況による。借手が建設中のいずれかの時点でコール・オプションを行使できるときは、借手は対象資産を支配し

ており、建設仮勘定を認識する必要がある。「いずれかの時点で」は、どんな時点でもと同じ意味ではない点に注

意が必要である。したがって、オプションの発生が時間の経過に基づくか又は独立した存在の偶発事象に基づくか

にかかわらず、建設期間中に生じる(又は行使可能になる)オプションも考慮に入れなければならない。独立した存

在の偶発事象の場合、オプションを行使する現在の能力を得た時点で、その事業体は建設途中にある資産を支配

しているとみなされることになる。他方、行使を妨げる制約が時間の経過に限定されるときは、その事業体は建設

期間の初めから建設途中にある資産を支配しているとみなされることになると我々は考える。

特定の偶発事象の発生をもって行使可能になるコール・オプションについては慎重に分析し、借手が一方的にコー

ル・オプションを行使可能にできるか否かを判定する必要がある。例えば、建設及びリース契約の中には、借手が

契約に基づいて履行すべき義務を履行しなかったときは、借手は未成工事を購入することが義務付けられ得ると

定められているものもある。この規定のもとでは、借手は契約に基づく義務を一方的に不履行にし、よって対象資

産を取得できるようになれるため、借手は対象資産を支配していることになる。反対に、未成工事を購入する義務

又はオプションに借手の支配が及ばないときは(例えば破産又は第三者に関する事象)、その偶発事象が発生す

るまでは、借手は未成工事に対して支配を有していないことになる。借手が未成工事を支配しているとみなされる

ようになったときは、借手はセール・リースバックに関する会計処理の規則を適用し、当該プロジェクトの認識を中

止できるか否かを判定しなければならない。借手がセール・リースバックに関する会計処理の規則を適用してかか

る判定をしなければならない状況としては、借手が建設完了まで支配を保持する場合や、支配を移転させたオプ

ションが建設期間中に行使されずに満了を迎えたときなどが挙げられる。

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借手は、新たな本社ビルを建てるために、貸手と建設及びリース契約を締結した。貸手は、建設期間を通じ

て建物の所有権を保持する予定で、建設に対して最高 5,000万ドルを支払うことに同意している。建設は

18 ヵ月後に完了すると見込まれている。借手は、建設期間中のいずれかの時点で貸手の原価に利幅を加

算した額で未成工事を購入する権利(但し義務ではない)を有している。このコール・オプションが行使され

ないまま建設が完了したときは、借手は、リース期間終了時に所定の価格で当該ビルを購入できるオプショ

ン付きで、貸手から当該資産を 15年間リースする予定である。

借手は建設中に当該資産を支配していることになり、建設仮勘定を認識することになる。建設完了時には、

借手は ASC 842-40-25-1から 25-3にあるセール・リースバックの指針を検討しなければならない。この例

については、リース期間中に存在するコール・オプションが原因で、借手には売却の処理が認められない

(Q&A 31を参照)。

編集者注

リース対象資産の建設を伴う状況においては、貸手のプット・オプションも考慮に入れる必要

がある。ASC 606におけるプット・オプションに関する指針に則した方法で、貸手が保有する

プット・オプションを評価し、貸手に当該オプションを行使する重大な経済的インセンティブがあ

るか否かを判定する必要がある。そうしたインセンティブが存在するときは、借手は未成工事

を支配していると推測される。

Q&A 29 建設中に支払いを受ける強制可能な権利

借手がリース開始前の建設中に対象資産を支配していることを示す具体的規準の一つが示されている ASC 842-

40-55-5(b)には、次のように記載されている:

貸手に、それまでの義務の履行について支払いを受ける強制可能な権利があり、且つ、所有者兼貸手が当該資産を他

の用途に用いることができない(842-10-55-7項を参照)。所有者兼貸手が当該資産を他の用途に用いることができるか

否かを判定する際は、最終的にリースされる資産の特徴を考慮に入れる必要がある。

質問

ASC 842-40-55-5(b)の規準が満たされるときは、どのような状況か?

回答

ASC 842-40-55-5(b)の規準が満たされるときは、次の両条件が揃っている状況に限られる:(1)貸手に、それまで

の義務の履行すべて(すなわち、資産の開発又は建設全部)について支払いを受ける強制可能な権利がある、(2)

所有者兼貸手が当該資産を他の用途に用いることができない。この規準は、時間の経過に伴い支配が顧客に移

転されるとき(例えば、支配が移転する結果、資産の開発又は建設中に顧客が完成前の資産の所有者になるとき)

の収益認識に関する ASC 606における指針に由来する33。

建設期間を通してそれまでの義務の履行すべてについて借手が支払いを求められることは基本的にないため、建

設途中の資産に関して挙げた上の状況が現実になることはほとんどないと我々は予想する。むしろ、建設が終了し

た後に、リース料の支払いを通してリース期間にわたり少なくとも一部の支払いが貸手になされる。重要な額の賃

料の前払いが必要であっても、ASC 842-40-55-5(b)の規準は満たされない。但し当該リースに、貸手が負担した

全費用に相応の利幅を加算して得た額について返金不要な支払いを受ける権利が定められているときは、この限

りではない。つまり、資産の建設期間を通して、必要な支払いが、デベロッパーが行ったすべての建設作業に見

合った対価に該当しなければ、将来の借手が建設中に資産を支配し、資産のみなし所有者になることはない。

33 ASC 606-10-25-27を参照。

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また、おそらく多くのオーダーメード建設の取り決めが、貸手の支配が及ばない所定の偶発事象(借手の債務不履

行ど)が発生次第、借手は貸手へ支払いをしなければならないと定めている。リース契約に基づく義務の不履行が

なければ貸手は借手に対して支払いを強制できないため、この規定単独では、ASC 842-40-55-5(b)の基準は満

たされない。

さらに、この規準における最初の部分が満たされることは滅多にないものの、仮に満たされる場合は、ASC 842-

10-55-7のもと貸手は当該資産を他の用途に用いることができると認められるだろう。

Q&A 30 不完全なセール・リースバックにおいて土地が売却されたときの建設中における資産

の支配

借手がリース開始前の建設中に対象資産を支配していることを示す具体的規準の一つが示されている ASC 842-

40-55-5(d)には、次のように記載されている:

借手が、付属設備が建設される予定の土地を支配し(借手が土地を貸手に移転する取引を行うが、当該移転が、842-

40-25-1 項から 25-3 項による売却条件を満たさない場合も含む)、且つ、当該土地のリースのうち、更新オプションと併

せれば貸手又は関係のない他の第三者が当該付属設備の経済的耐用年数の実質全期間にわたり当該土地をリースす

ることが可能になるリースを建設開始前に締結していない。(強調追加)

土地の移転が売却条件を満たさない状況の例としては、売手/借手が土地に関するコール・オプションを保持する

場合や、リースバックがファイナンス・リースであると判断される場合が挙げられる。

質問

土地が貸手に売却されたが、売却ではなく金融取引として会計上処理されるときは、ASC 842-40-55-5(d)の規準

はどのように評価すべきか?

回答

我々の見解では、この規準における概念は、当該土地に建設中の付属設備に係る経済的耐用年数の実質全期間

にわたり付属設備の貸手は対象の土地を使用できるはずであるという前提に基づいている。貸手に当該土地につ

いて適切な権利を有していないときは、次の条件が満たされる場合借手は建設中に付属設備を支配していること

になるだろう:

付属設備の借手が土地を支配している:この条件は、次のいずれかを証明できるときに満たされる:

◦ 借手が土地の所有権を有している。

◦ 借手が既に土地を売却しているが、会計上売却処理が認められなかった。

◦ 付属設備の貸手が土地の所有権を有しているが、借手が不完全なセール・リースバックにおいて貸手

へ土地を売却した。

借手が建設資産を支配している:一つ目の条件が満たされている(すなわち、借手が土地を支配している)としても、借手が、建設予定の資産の経済的耐用年数の実質全期間にわたり土地を貸手へリースしてい

るときは、借手は建設資産を支配していない。

借手が既に貸手へ法的に売却した土地を借手が賃貸することはできないため、文字通り読むと、二つ目の条件が、

過去の不完全な売却又はセール・リースバックによる土地のファイナンスにおいて満たされることはあり得ない。し

かしながら、ASC 842-40-55-5(d)における規準の根底にある原則を考慮に入れる必要があると我々は考える。つ

まり、付属設備の経済的耐用年数の実質全期間にわたり土地を合法的に使用する権利が貸手にあるかという点

である。この原則が満たされるか否かを判定する際は、すべての事実関係と状況を考慮に入れなければならない。

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例 1

A社は B社へ土地を売却し、それと同時に、A社の新たな本社ビルを B社が建設するという建設及びリー

ス契約を締結した。新たな本社ビルの建設が完了次第、B社は当該土地及びビルを期間 40年で A社に

リースする予定である。40年経過時点で、A社は所定の価格で土地と本社ビルを購入する権利を取得す

る。本社ビルの見積経済的耐用年数は 40年である。建設予定の付属設備に関する取り決めには、ASC

842-40-55-5における他の規準を満たす状況はいずれも存在しないと想定する。

ASC 842-40-25-3に従って A社は、コール・オプションがあるため土地の移転を売却として処理することは

できないと判断した。但し、A社が建設中に本社ビルを支配するか否かの判定においては、B社が建設予

定資産の経済的耐用年数である 40年にわたり土地を使用する法的権利を有することが認められた。つま

り、付属設備の経済的残存耐用年数が無くなるまで、コール・オプションは行使できない。したがって、以上

の事実関係と状況に鑑み、A社は、建設中に本社ビルを支配しないと結論付けた。

例 2

例 1 と同じ事実関係を想定する。但し、A社は土地の購入オプションを有していないとする。しかしながら、

リース料の現在価値が、移転される土地に係る公正価値の実質全額と同額以上であるため、土地のリース

バックは ASC 842のもとファイナンス・リースであると判定された。

ASC 842-40-25-2に従って A社は、リースバックはファイナンス・リースであるため B社は土地の支配を取

得したとはみなされないと判定した。但し、A社が建設中に本社ビルを支配するか否かの判定においては、

B社が建設予定資産の経済的耐用年数である 40年にわたり土地を使用する法的権利を有することが認

められた。つまり、会計上 A社は土地の認識を中止しなかったが、貸手は付属設備の建設及びリースにお

いて、経済的耐用年数にわたり土地を使用する。したがって、以上の事実関係と状況に鑑み、A社は、建設

途中の本社ビルを支配しないと結論付けた。

Q&A 31 買戻しオプション付きの不動産のセール・アンド・リースバック

背景

ASC 842 のもとでは、セール・リースバック取引における売手兼借手は、対象資産の移転(売却)を ASC 606 に

従って評価し、当該移転が売却の条件を満たしているか否か(すなわち、支配が買手に移転されているか否か)を

判定しなければならない。

リースバックがファイナンス・リースに分類されない限り、リースバックが存在するだけでは、支配が移転されていな

いとの証左にはならない(すなわち、取引が売却の条件を満たす可能性は排除されない)。また、取り決めに売手

兼借手が資産を買い戻せるオプションが盛り込まれているときは、取引は売却としての条件を満たさないが、次の

両条件を満たすときはこの限りではない:(1)オプションの行使価格が、行使日の資産の公正価値に設定されてい

る、(2)移転される資産と実質同一の代替資産があり、その代替資産を市場において容易に入手できる。

取引が売却としての条件を満たさないときは、売手兼借手と買手兼貸手は、それを金融取引として処理することに

なる(すなわち、売手兼借手は金融負債を計上し、買手兼貸手は債権を計上する)。

質問

不動産のセール・アンド・リースバックに売手兼借手による買戻しオプションが組み込まれている場合、ASC 606

のもと当該移転が売却の条件を満たす可能性は排除されるか?

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回答

可能性は排除される。買戻しオプションが組み込まれている不動産のセール・リースバック取引は、当該買戻しオ

プションの行使価格が公正価値であるか否かにかかわらず、ASC 606に基づく売却規準を満たさない。

ASC 842-40-25-3 によると、セール・アンド・リースバック取引における買戻しオプションの対象である資産の移転

が売却の条件を満たすには、二つの規準が満たされなければならない:(1)オプションの行使価格が、行使日の資

産の公正価値に設定されている、(2)移転される資産と実質同一の代替資産があり、その代替資産を市場におい

て容易に入手できる。FASBによる ASU 2016-02の再審議において同審議会は、買戻しオプションが組み込まれ

ている不動産のセール・リースバック取引は、ASC 842-40-25-3 における二つ目の規準を満たさないと指摘してい

る。ASU 2016-02の BC352(d)項を一部抜粋する:

当審議会が[ASC 842-40-25-3]について協議をしたとき、当審議会のメンバーは概ね、不動産は規準(2)を満たさない

との見解で一致した。不動産は元来、それぞれ「唯一無二」の存在であり(つまり、2 件の土地が地球上にある同一空間

を占有することは決してない)、類似する他の不動産が「実質同一」であることはないというのがその理由である。

したがって、買戻しオプションの行使価格が公正価値に設定されているか否かにかかわらず、不動産はそれぞれ

唯一無二の存在であるというこうした性質が原因で、リース対象資産と実質同一の代替資産など存在しないため、

買戻しオプションが組み込まれている不動産のセール・リースバック取引が、ASC 842-40-25-3における二つ目の

規準を満たすことはない。よって、現行の米国 GAAP と同等の形で、新リース基準のもとでは、不動産の買戻しオ

プションが組み込まれている取引をセール・リースバックとして処理することは認められない。

Driving Discussions:他の重要規定

財務制限条項や銀行の所要自己資本に対するASC 842の影響

ASC 842 は借手に対し、すべてのリース(オペレーティング・リースを含む)についてリース負

債及び対応する使用権資産を認識するよう規定しているため、財務諸表の作成者及び利用者

から、新たなオペレーティング・リース負債と使用権資産による、事業体の各種指標(財務制限

条項(debt covenants)及び銀行の所要自己資本など)への影響について疑問の声があがっ

ている。

財務制限条項への影響

FASBによる再審議において同審議会は、ASC 842の適用に起因して生じる新たな負債によ

る潜在的影響を巡る懸念を検討した。とりわけ、ASU 2016-02 の BC14 項には、次のように

記載されている:

当審議会はさらに、トピック 842 を適用する結果認識する新たなリース負債が原因で、財務制限

条項の違反が生じてしまう事業体がでてくる、又は、GAAP に基づく事業体の資産及び負債に対

する潜在的影響が原因で与信へのアクセスに影響が生じる事業体がでてくるかもしれないという

懸念も検討した。与信へのアクセスに関しては、非公開会社の利用者を含め利用者の圧倒的多

数が、現行の GAAP のもとでは財政状態計算書に認識されないオペレーティング・リース債務に

ついて事業体の財務諸表を現在でも調整し、その際に、トピック 842 のもと認識されるようになる

額よりも基本的に大幅に多い額を見積もっていることが利害関係者との対話により分かった。当

審議会はまた、財務制限条項に関する潜在的問題も検討し、以下の要素がそうした潜在的問題

をかなり解消するという認識に至った:

a. 大半のローン契約に、GAAP に基づく会計基準の変更を唯一の理由とする借手の財務上の

各種比率における変動は以下のような扱いになるという、「frozen GAAP」又は「semifrozen

GAAP」条項が盛り込まれている:

1. 債務不履行に該当しない

2. 新たな GAAP が原因でテクニカル・デフォルト(ローンの契約条項の違反)が生じたとき

は、両当事者は誠実に協議する必要がある。

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b. 対話を行った銀行は、ローン契約に frozen GAAPや semifrozen GAAP条項が盛り込まれ

ていなくても、GAAP に基づく会計基準の変更のみに起因するテクニカル・デフォルトを理由

に「ローンの償還を請求する」ことで顧客との良好な関係を解消する可能性は薄いと述べて

いる。

c. トピック 842 はオペレーティング・リース負債を、借入ではなく営業負債と記述している。した

がってこの額によって、財務制限条項によく用いられる所定の財務上の各種比率が影響を

受けることはないと考えられる。

d. トピック 842 は、発効日までかなりの時間的猶予を設けており、多くの事業体が有する既存

のローン契約が、トピック 842 のもと報告するようになる前に期間満了を迎えると考えられ

る。期間満了を迎えないうえ、frozen GAAP又は semifrozen GAAP条項が盛り込まれてな

く、且つ、新たな営業負債による影響を受ける契約条項があるローン契約については、そうし

た発効日までの時間的猶予によって、条件変更をする十分な時間が確保されている。

FASB は、ASC 842 に基づくオペレーティング・リースに起因するリース負債は、借入の範疇

に無い営業負債とみなされることを意図しているとの見解を明確に説明しているものの、

FASB には、銀行やその他の金融機関がそうした額をどのようにとらえるかについて指図する

権限はないことに注意が必要である。

銀行その他の金融機関が財務制限条項を検討する際にリース負債を一様に評価するかは不

透明である。したがって、財務諸表の作成者及びその他の利害関係者においては、既存の貸

出契約及び将来の貸出契約に対する新指針の影響について理解を深めるためにそれらの機

関と協議を開始することを推奨する。これまでの我々の経験を踏まえると、銀行その他の金融

機関は理解を示しており、この新ルールによる影響を受ける企業への協力に前向きである。

銀行の所要自己資本に対する影響

(リスク加重資産又は平均資産に対する自己資本の比率として表される)銀行の規制上の所

要自己資本とは、銀行又は銀行持株会社が保有しなければならないと銀行の監督当局(米国

における連邦預金保険公社や連邦準備制度理事会、通貨監督庁など)が義務付けている自

己資本の額をいう。大半の無形資産が規制対象の自己資本から除外されているが、有形資産

は除外されていない。ASC 842 は、特定の使用権資産が有形資産に該当するか又は無形資

産に該当するかについて明確な指針を示していないため、利害関係者から、銀行の監督当局

が所要自己資本を算定するときに使用権資産をどのように扱うかという点について疑問の声

があがっている。

2017 年 4 月 6 日、(米国もメンバーである)バーゼル銀行監督委員会は、規制上の自己資本

における使用権資産の扱いについて FAQ を公表した。具体的に言うと、同 FAQ の記載によ

ると使用権資産は:

リースの対象資産は有形資産であるため、規制上の自己資本から除外すべきではない

リスクベースの自己資本比率とレバレッジ比率の分母に含めるべきである

100%でリスク加重すべきである。これは、自己所有有形資産及び ASC 840 における

現行の指針のもとキャピタル・リースとして処理される借手のリース対象資産に従来から

適用されてきたリスク加重と一致する。

上述の FAQ における回答について疑問がある事業体は、自身の会計アドバイザーや主な連

邦監督当局に問い合わせていただきたい。

Page 56: FASBの新リース基準に関するよくある質 - Deloitte United States · 2020-02-10 · 2 FASB の新リース基準に 関するよくある質問につ いて、5 月8 日の午後2

56

さらに知るためには

以下のデロイトによる出版物及びリソースに、FASB及び IASBの新リース基準に関するその他の情報が

記載されている:

Heads Up, “FASB’s New Standard Brings Most Leases Onto the Balance Sheet”

IFRS in Focus, “IASB Issues IFRS 16 — Leases”

“Operationalizing the New Lease Standard — Lease Accounting”

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57

付録A:基準、その他文書の一覧

本文書で言及している基準その他文書の名称を以下に示す。

FASB会計基準編纂書(ASC)のトピック

ASC 210, Balance Sheet(貸借対照表)

ASC 250, Accounting Changes and Error Corrections(会計方針の変更と誤謬の修正)

ASC 310, Receivables(債権)

ASC 340, Other Assets and Deferred Costs(その他の資産と繰延費用)

ASC 350, Intangibles — Goodwill and Other (無形資産:のれんその他)

ASC 360, Property, Plant, and Equipment(有形固定資産)

ASC 450, Contingencies(偶発事象)

ASC 606, Revenue From Contracts With Customers(顧客との契約から生じる収益)

ASC 805, Business Combinations(企業結合)

ASC 840, Leases(リース)

ASC 842, Leases(リース)

FASB会計基準アップデート(ASU)

ASU 2016-02, Leases (Topic 842)(リース(トピック 842))

SECスタッフ会計公報(SAB)

Topic 1.M, “Materiality” (SAB 99)(重要性)

Topic 11.M, “Disclosure of the Impact That Recently Issued Accounting Standards Will Have on the Financial Statements of the

Registrant When Adopted in a Future Period”( 最近公布された会計基準が、将来の期に適用したときに登録企業の財務諸表に及ぼすであろう

影響の開示)

SEC企業財務局財務報告マニュアル

Topic 1, “Registrant’s Financial Statements”(登録会社の財務諸表); Section 1500, “Interim Period Reporting Considerations (All Filings)”

(期中報告に関する検討事項(すべての提出物))

Topic 11, “Reporting Issues Related to Adoption of New Accounting Standards”(新会計基準の適用に関する報告上の問題); Section

11200, “New Leasing Standard (FASB ASC Topic 842)”(新リース基準(FASB ASC トピック 842))

SECレギュレーションS-K

Item 301, “Selected Financial Data”(主要財務データ)

Item 308(c), “Internal Control Over Financial Reporting; Changes in Internal Control Over Financial Reporting”(財務報告に係る内部統制:

財務報告に係る内部統制の変更)

SECレギュレーションS-X

Article 10, “Interim Financial Statements”(期中財務諸表)

国際基準

IFRS 16, Leases(リース)

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付録B:略語

略語 用語

AICPA 米国公認会計士協会(American Institute of Certified Public Accountants)

ASC FASB会計基準編纂書(FASB Accounting Standards Codification)

ASU FASBの会計基準アップデート (FASB Accounting Standards Update)

CAQ 監査品質センター(Center for Audit Quality)

CEO 最高経営責任者(chief executive officer)

CPI 消費者物価指数(consumer price index)

DFL 直接金融リース(direct financing lease)

EITF 発生問題専門委員会(Emerging Issues Task Force)

FAQ よくある質問(frequently asked question)

FASB 米国財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board)

FERC 米国連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission)

FRM SEC財務報告マニュアル(SEC Financial Reporting Manual)

GAAP 一般に公正妥当と認められる会計原則(generally accepted accounting principles)

IASB 国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board)

ICFR 財務報告に係る内部統制(internal control over financial reporting)

IFRS 国際財務報告基準(International Financial Reporting Standard)

IPP 独立系発電事業者(independent power producer)

JOA 共同支配事業契約(joint operating agreement)

LIBOR ロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate)

MWh メガワット時(megawatt hour)

P&L 損益(profit and loss)

PCAOB 米国公開会社会計監視委員会(Public Company Accounting Oversight Board)

PP&E 有形固定資産(property, plant, and equipment)

Q&A 質疑応答(question and answer)

ROU 使用権(right of use)

SAB SECスタッフ会計公報(SEC Staff Accounting Bulletin)

SEC 米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)

TRG 移行リソース・グループ(transition resource group)

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け取りいただくには、以下のウェブサイトにて、Dbriefsにご登録ください(http://www.deloitte.com/us/dbriefs)。

Technical LibraryとUS GAAP Plus

デロイトはご登録いただいた方々を対象に、会計や財務開示に関する資料のオンライン・ライブラリーへのアクセスを提供しています。

Technical Library: The Deloitte Accounting Research Toolと呼ばれるこのライブラリーには、弊社の会計およびSECマニュアルならびにそ

の他の会計およびSECの解釈指針のみならず、FASB、EITF、AICPA、PCAOB、IASB、SECの資料などが含まれています。

営業日ごとに更新されるTechnical Libraryは使いやすくデザインされており、ナビゲーションシステムは強力な検索機能を備えているため、い

つでも、どのコンピューターからでも瞬時に情報を入手することを可能にします。Technical Library登録者には、ライブラリーへの最新の情報を

ハイライトした週報Technically Speakingもお送りします。登録やオンライン上のデモンストレーションなどの詳細については、デロイトのウェブ

サイトwww.deloitte.com/us/techlibraryをご覧ください。

さらに、US GAAP Plusにも忘れずにアクセスしてください。これは、米国GAAPに重点を置いた、会計に関するニュース、情報や出版物を取り上

げるデロイトの新しい無料ウェブサイトです。このウェブサイトには、FASBの活動やFASB Accounting Standards Codification™のアップデート、

そして、PCAOB、AICPA、SEC、IASB、IFRS解釈指針委員会などのその他の米国と国際会計基準の設定主体や規制当局の進展に関する記

事が掲載されています。今すぐチェックしてください!

デロイト トーマツ グループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよ

びそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザ

リー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人およびDT弁護士法人を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプ

ロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイ

ザリー等を提供しています。また、国内約40都市に約9,400名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業

や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp/about)をご覧ください。

Deloitte(デロイト)は、監査、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、リスクアドバイザリー、税務およびこれらに関連する

サービスを、さまざまな業種にわたる上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界150を超える国・地域のメンバーファームのネットワー

クを通じ、デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質な

サービスをFortune Global 500® の8割の企業に提供しています。“Making an impact that matters”を自らの使命とするデロイトの約245,000

名の専門家については、Facebook、LinkedIn、Twitterもご覧ください。

Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組

織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します。DTTLおよび各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した

別個の組織体です。DTTL(または“Deloitte Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。Deloitteのメンバーファームによるグローバ

ルネットワークの詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。

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