アナリシス 石油上流企業従事者のための iwpp基礎知識...ksa 24.50% kuwait 9.22%...

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9 石油・天然ガスレビュー アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識 ―上流から下流までの総合ガス開発 ・ 利用技術が利権獲得のカギに― じめに 日本にいるとその関連が見えてこないエネルギーと生活用水ではあるが、中東湾岸地域で両者は、 密接な関係を持っている。気象条件から自然淡水(雨水、河川・湖沼水、地下水など)に恵まれない湾 岸地域では、天然ガス資源を利用してガス火力発電、余熱を利用して海水淡水化を行う複合施設(IWPP) 写1)が、インフラ整備の主要な部分となっている。 筆者は既に湾岸協力会議(GCC)諸国の天然ガス供給不足の現状と域内ガス・パイプライン整備の必 要性について、いくつかの報告を行った *1 。カタールを除く GCC 諸国 *2 は、もともと開発・生産が比 較的容易な構造性ガス田に賦 ぞん する天然ガス埋蔵量が 潤沢とは言えず、近年の高油価を背景とした経済発展 と人口増は、天然ガスをエネルギー源とする発電・海 水淡水化に頼るこれらの国々の生活基盤を脅かすまで になっている。本稿では、石油上流企業従事者を対象 に、IWPPについて技術的に解説し、GCC諸国の現況、 各国の IWPP 事業の民営化を背景とした国際ユーティ リティ企業の参入などについて述べることにしたい。 また、上流から下流までの総合的な天然ガスの探鉱・ 開発利用が日系企業にとって新たなビジネスチャンス になり得るとともに、今後、湾岸地域の石油 ・ 天然ガス 資源開発においては、これらの総合的なガス開発 ・ 利用 計画が上流権益獲得の一助となり得る可能性もある。 (1)湾岸諸国の水の現況 かつて筆者は、クウェート市の北部ドーハの IWPP を 訪れたことがある。クウェート人の友人は「この『泉』か ら流れ出る川は、いくら日照りが続いても絶対に涸 ることはない」と自慢げに話していた。なるほど、無尽 蔵にある海水を「原料」とするのであるから、涸れるこ とはない。しかし、転換のエネルギーとして天然ガス が使われていることに、その問題が隠されている。 1. IWPP -「涸れない泉」 JOGMEC 中東事務所 石田 聖 *1:JOGMEC 石油・天然ガス資源情報ホームページリポート内「GCC:エネルギー危機に直面する湾岸諸国 ―ガス開発と域内ガス・パイプライン整 備が回避のカギに―」「カタール・UAE:ドルフィン・ガス・パイプラインが完成 ―GCCのガス利用は新たな段階へ―」。 *2:GCC:Gulf Cooperation Council (湾岸協力会議)は通称。正式にはCooperation Council for the Arab States of the Gulf。1 9 8 1 年5 月、外交、軍事、 経済全般のあらゆる分野でのメンバー国間の調整を促進することを目的として、アラビア湾岸の6カ国(サウジアラビア、クウェート、バハレーン、 カタール、アラブ首長国連邦、オマーン)によって設立された地域協力機構。当初は、イランのアラビア湾全域に対する影響力をけん制する目的 もあった。しかしイラク戦争以降、対米関係等への意見の相違もあり、足並みの乱れも指摘されている。2 0 1 0 年を目指して域内の通貨統合を計 画している。 バハレーン Hidd の IWPP 写1 出所:2007 年 1 月筆者撮影

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Page 1: アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識...KSA 24.50% KUWAIT 9.22% OTHERS 15.60% OMAN 1.45% BAHRAIN 2.10% SPAIN 6.93% USA 14.35% UAE 22.35% QATAR 3.50%

9 石油・天然ガスレビュー

アナリシス

石油上流企業従事者のためのIWPP基礎知識―上流から下流までの総合ガス開発・利用技術が利権獲得のカギに―

はじめに

 日本にいるとその関連が見えてこないエネルギーと生活用水ではあるが、中東湾岸地域で両者は、密接な関係を持っている。気象条件から自然淡水(雨水、河川・湖沼水、地下水など)に恵まれない湾岸地域では、天然ガス資源を利用してガス火力発電、余熱を利用して海水淡水化を行う複合施設(IWPP)

(写1)が、インフラ整備の主要な部分となっている。 筆者は既に湾岸協力会議(GCC)諸国の天然ガス供給不足の現状と域内ガス・パイプライン整備の必要性について、いくつかの報告を行った*1。カタールを除くGCC諸国*2は、もともと開発・生産が比較的容易な構造性ガス田に賦

存ぞん

する天然ガス埋蔵量が潤沢とは言えず、近年の高油価を背景とした経済発展と人口増は、天然ガスをエネルギー源とする発電・海水淡水化に頼るこれらの国々の生活基盤を脅かすまでになっている。本稿では、石油上流企業従事者を対象に、IWPPについて技術的に解説し、GCC諸国の現況、各国のIWPP事業の民営化を背景とした国際ユーティリティ企業の参入などについて述べることにしたい。また、上流から下流までの総合的な天然ガスの探鉱・開発利用が日系企業にとって新たなビジネスチャンスになり得るとともに、今後、湾岸地域の石油・天然ガス資源開発においては、これらの総合的なガス開発・利用計画が上流権益獲得の一助となり得る可能性もある。

(1)湾岸諸国の水の現況

 かつて筆者は、クウェート市の北部ドーハのIWPPを訪れたことがある。クウェート人の友人は「この『泉』から流れ出る川は、いくら日照りが続いても絶対に涸

ることはない」と自慢げに話していた。なるほど、無尽蔵にある海水を「原料」とするのであるから、涸れることはない。しかし、転換のエネルギーとして天然ガスが使われていることに、その問題が隠されている。

1. IWPP-「涸れない泉」

JOGMEC 中東事務所 石田 聖

*1:JOGMEC 石油・天然ガス資源情報ホームページリポート内「GCC:エネルギー危機に直面する湾岸諸国 ―ガス開発と域内ガス・パイプライン整備が回避のカギに―」「カタール・UAE:ドルフィン・ガス・パイプラインが完成 ― GCCのガス利用は新たな段階へ―」。

*2:GCC:Gulf Cooperation Council(湾岸協力会議)は通称。正式にはCooperation Council for the Arab States of the Gulf。1981年5月、外交、軍事、経済全般のあらゆる分野でのメンバー国間の調整を促進することを目的として、アラビア湾岸の6カ国(サウジアラビア、クウェート、バハレーン、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン)によって設立された地域協力機構。当初は、イランのアラビア湾全域に対する影響力をけん制する目的もあった。しかしイラク戦争以降、対米関係等への意見の相違もあり、足並みの乱れも指摘されている。2010年を目指して域内の通貨統合を計画している。

バハレーン Hidd の IWPP写1

出所:2007 年 1 月筆者撮影

Page 2: アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識...KSA 24.50% KUWAIT 9.22% OTHERS 15.60% OMAN 1.45% BAHRAIN 2.10% SPAIN 6.93% USA 14.35% UAE 22.35% QATAR 3.50%

102008.9 Vol.42 No.5

アナリシス

 図1に示すように、UNESCOによれば、GCC諸国の1人・年あたりの淡水供給量は10 ~ 388m3 で、日本の3,383m3 の約10分の1以下である。世界182カ国・地域のうちで、オマーン(165位)、バハレーン(169位)、サウジアラビア(173位)、カタール(176位)、UAE(178位)、クウェート(180位)と、いずれも極めて低い位置にある。

(2)海水淡水化とは?

 急拡大する淡水需要を補うものとして、海水淡水化装置があるが、GCC諸国は、現在、生活用水の 80 %程度を淡水化装置に頼っている。GCC諸国の海水淡水化設備容量は、現在世界の約60%を占めているが、今後もその比率は高まると予想されている(図2)。 海水淡水化とは、海水を処理して淡水を作り出すことをいう。現在実用化されている淡水化方式は、図3に示すように大きくは蒸発法と膜法に2分され、さらに細分されている。 多段フラッシュ方式(Multi Stage Flash Distillation)が、GCC諸国における海水淡水化方式の主流となっている。これは何らかの手段で海水を熱し、水蒸気を発生(フラッシュ)させ、冷却して淡水にする方式である。淡水の回収効率を上げ、熱エネルギー効率を良くするため、多数の減圧蒸留室を組み合わせていることから、

「多段」と呼ばれている(図4、写2)。この方式は、大

GCC 諸国と日本の需要予測と水資源図1

出所:UNESCO : A Look at the World's Freshwater Resources より筆者作成

世界の淡水化設備容量図2

淡水造水の各種方式図3

(注)KSA(Kingdom of Saudi Arabia)サウジアラビア王国出所: サウジアラビア SWCC Walid Saleh Basoudan 氏の講演資料

(Saudi Trade Mission 2005)より筆者作成

出所: 各種資料より筆者作成

205

141

141

5656

199

199

114

114

340

340

225

3737

7272

255

255

982

982 59

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8

0

200

400

600

800

1,000

1,200m /人・年

3

1人あたり農業用水需要

1人あたり生活・産業用水需要

237

237 30

830

8

5454

258

258

140

140

340

340

199

199 6464

467

467

341

341

978

978

573

573

バハレーン クウェート オマーン カタール サウジアラビア UAE 日本

279

279

302

302

7676

296

296

137

137

352

352

215

215

6060

417

417

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349

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880

638

638

388

388

94

181

181 58

3,38

33,

383

コラムは左側から1990年、2000年、2010年(予測)

自然供給淡水資源量

10

118

KSA24.50%

KUWAIT9.22%

OTHERS15.60%

OMAN1.45%

BAHRAIN2.10%

SPAIN6.93%

USA14.35%

UAE22.35%

QATAR3.50%

相変化あり 蒸発法

多段フラッシュ法

相変化なし 膜 法

淡水化方式

多重効用法

蒸気圧縮法

逆浸透法

電気透析法

Page 3: アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識...KSA 24.50% KUWAIT 9.22% OTHERS 15.60% OMAN 1.45% BAHRAIN 2.10% SPAIN 6.93% USA 14.35% UAE 22.35% QATAR 3.50%

11 石油・天然ガスレビュー

石油上流企業従事者のためのIWPP基礎知識 ―上流から下流までの総合ガス開発・利用技術が利権獲得のカギに―

量の淡水を作り出すことができ、新鋭のガス火力発電所と組み合わせた場合、エネルギーロスが比較的少なくてすむ。GCC諸国の場合、海水淡水化装置は、多くの場合、発電設備に併設されており、燃料は天然ガスが主体である。 もう一つの主要な方式として、海水に圧力をかけて、ろ過膜の一種である逆浸透膜を通し、海水の塩分を濃縮し、淡水を得る逆浸透膜(RO膜、Reverse Osmosis Membrane)方式がある。蒸発法よりエネルギー効率に優れている反面、微細な孔こうげき

隙を持つRO膜が目詰まりしないよう海水を前処理する必要があることなどから、常に海水油濁の可能性があるGCC諸国沿岸での採用には若干の難点がある。この方式は、1990年代までは比較的小規模のものが多かったが、最近は日量1万トンを超える大型プラントも建設されている。図5に示したとおり、RO法は年々そのコストが低下してきており、二つの主要な方法を比較した場合、Suez社の算定によれば、図6に示したとおり、百万(MM)Btuあたりガス価格が1ドル前後までの場合はMSF法が有利となる*3。 こうしたことを背景に、図7に示すようにアブダビADWEA*4 の関連発電事業は、単体発電所での発電(能力)量は急激に減少し、IWPPがその主体となっている。

*3:油価高騰に準じて資機材価格が高騰している。現状では、短期のコスト予測も困難な状況になっている。本リポートは、おおむね2007年時点での算定を根拠としていることをあらかじめお断りしておく。

*4:Abu Dhabi Water and Electricity Authority(アブダビ水・電力庁)。

1950 20101970 2000199019801960

3.00

2.00

1.00 Cos

t-US

$/m

3

Seawater RO desalination

Seawater RO desalinationSeawater

Distillation

Seawater

DistillationBrackish water

desalination (RO,ED)

Brackish waterdesalination (RO,ED)

Cost of treated water from conventional sourcesCost of treated water from conventional sources

バハレーン Hidd IWPPにおける MSF の例写2

出所:2007 年 1 月筆者撮影

複合型発電淡水造水施設(IWPP)の概念図4

各淡水化方式の造水コストの変遷図5

(注) 本図の淡水造水部の減圧室は模式的に 3 段で描いているが、通常は十数段の減圧室を組み合わせる。

出所: 各種資料より筆者作成

(注)RO:逆浸透膜法、ED:電気透析法出所: Buros (1989), Revised by Fukuhara(2004)

G ガス/石油

空気

熱回収水蒸気発生器(HRSGs)

ガスタービン

G

蒸気タービン

発電部

淡水造水部

天然ガス

温度:110℃

温められた海水の再循環

温度:90℃ 温度:65℃ 温度:40℃

水蒸気

減圧空気

海水 温度:30℃

鹹水水蒸気と塩水の飛沫

淡水化水

(かんすい)

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122008.9 Vol.42 No.5

アナリシス

2. 一般的なIWPPの仕組み

 前述したとおり、GCC諸国のIWPPにおける発電部は、最も効率の良いコンバインドサイクル(CCGT)発電方式が一般的には使われている。この方式は、ガス・タービン(図8)を天然ガスを燃料として駆動させ、その回転エネルギーで発電機を回して電力を得る*5。さらに、廃熱を回収して水蒸気を生成し、これによって蒸気タービンを駆動し、同様に発電を行う(図9)。したがって、ガスや石油を熱源として、水蒸気を発生させ、蒸気タービンを駆動して発電を行う一般的な火力発電所より、熱効率は格段に優れたものとなっている。日本の新鋭火力発電所のほとんどは1軸方式を採用しているが、GCC諸国のIWPPのほとんどは、ガスタービンと蒸気タービンのそれぞれに発電機を備える2軸方式である

(図4、P.1 1 参照)。1軸方式は、発電量を変動させる場合は有利、2軸方式はGCC諸国の

*5:発電用ガスタービンの原理は、旅客機の一般的な原動機であるターボファンジェットエンジンと基本的には同一のものである。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

RO

Water cost vs Fuelprices (cents/m3)

設備コスト 添加剤等コスト 人材更新費用

操業・メンテ人件費 電力料 燃料代

MSF $0.8/MMBtu

MSF $2.0/MMBtu

MSF $3.0/MMBtu

MSF $4.0/MMBtu

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

Gross MW

IWPP

Non - IWPP

逆浸透膜法・蒸発法のコスト図6 アブダビの IWPP と造水設備を持たない発電設備の能力推移図7

発電用ガスタービンの構造図8

出所: :Suez 社資料より筆者作成 出所: ADWEA 資料より筆者作成

出所: (財)電力中央研究所 森塚秀人氏作成図を引用

燃焼器内筒 尾筒

入り口案内翼

タービン第1段動翼

タービン第1段静翼 タービン第2段動翼タービン第2段静翼

タービン第3段静翼

タービン第3段動翼

圧縮機動静翼

ガスタービンからの排ガス

空気

空気

空気圧縮機軸 タービン軸

燃料ノズル

軸受け

回転軸

軸受け

圧縮機ケーシング

タービンケーシング

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13 石油・天然ガスレビュー

石油上流企業従事者のためのIWPP基礎知識 ―上流から下流までの総合ガス開発・利用技術が利権獲得のカギに―

ように電力ベースロードを賄うために、定常運転をする場合にはより高効率が期待できるため有利と言われる。 IWPPは、熱をさらに有効利用するために、蒸気タービンの排熱で海水温度を上昇させ、減圧室で気化させ、この水蒸気を淡水の形で回収する。Suez社の算定によ

れば、図10に示すように ① 独立型のCCGTとMSFの組み合わせの場合と、② CCGTの排熱をMSFに利用した場合では、100GWhの電力と約1万トンの淡水を得る場合には、6.5%の燃料ガスの消費節約になるといわれる。

脱硝装置

発電機

変圧器

排熱回収ボイラー(HRSB)

送電網へ

高圧蒸気

再熱蒸気

低圧蒸気

高圧蒸気タービン

ガスタービン

空気圧縮機

復水機中圧蒸気タービン

低圧蒸気タービン

排気塔開閉器

天然ガス冷却水

空気

ガスコンバインドサイクル発電所の概念図9

独立型造水装置と IWPP ほかとのエネルギー消費比較図10

(注)赤点線部を拡大したものは図8に示した。出所: 東京電力 HP、九州電力パンフレット等より筆者作成

出所:Suez 社資料より筆者作成

独立型:CCGT(湾岸地域の条件)

独立型多段フラッシュ(MSF)

2.22 Gwh gas

1.00 GwhElectricity

1.22 GWhlosses

10,249 m3 Water

合計 2.67GWh/日のガス使用

0.45 GWhgas

合計 2.5GWh/日のガス使用(独立型に比べて 6.5% のエネルギー消費節約)

1.5 GWhlosses

10,249 m3

Water

1.00 GWhElectricity

2目的型:CCGT と MSF の組み合わせ

合計 2.3GWh/日のガス使用(独立型に比べて 12% のエネルギー消費節約)

2目的型:CCGT と逆浸透膜(RO)の組み合わせ

1.35 GWhlosses

10,249 m3

Water

1.00 GWhElectricity

2.3 GWh gas2.5 GWh gas

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142008.9 Vol.42 No.5

アナリシス

3. GCC各国の発電・造水事業

 GCC諸国では、1980年代まで電力事業や淡水化を含めてすべての水事業は政府の直轄で、公営事業として行われてきた。90年代に入るとまず、オマーン、アブダビでIWPP事業の民営化がその他のGCC諸国に先行して開始されてきた。

(1)サウジアラビア

 サウジアラビアは世界最大の人工淡水生産国で、沿岸の都市ばかりでなく内陸部居住地の多くも、その淡水需要を海水淡水化水に依存している。 サウジアラビアにおける発電・造水事業者間の事業形態を図11に示す。 サウジアラビア政府は水・電力事業の効率化と民間企業の参入を促進する目的で、水・電力事業の民営化に乗り出した。2000年2月、政府と既存の地域電力会社10 社(中・東・西・南の各1社と北部の6社)との間で会社統合協定が調印され、2000年4月にこれら電力会社が統合され、新株式会社として政府50%出資の「サウジ電力

会社(Saudi Electric Company:SEC)」が設立された。 一方、淡水化事業の責任機関は「海水淡水化公団

(SWCC:Saline Water Conversion Corporation)」である。また、2003 年には、「水 ・電力会社(Water and Electricity Company : WEC)」がSECとSWCCとの折半出資によって設立された。同社の主要業務は、水・電力の売買と、IWPP事業者との調整など、サウジアラビア側の運営主体を担うことにある。これらの設立によって、IWPPがBOO(建設・所有・操業)方式またはBOT(建設・操業・移転)方式などにより、事業参画する道が開けた。 SWCCは現在、ジェッダ、ヤンブー、アル・シュワイバなどの紅海沿岸の12地区において23の海水淡水化プラント、そしてアル・ホバル、ジュベール、カフジのアラビア湾岸3地区において6プラント、合計29のプラントを操業している。 WECによってアル・シュワイバで232MIGPD*6(約105万トン/日)700MWの大規模なIWPP(Shoaiba 3)計画が進められている。ジュベールでも、出力1,100MW

*6:本リポートでの使用単位は、IWPP関連の記事によく使われるもので、発電能力は「MW」、造水能力は「MIGPD」を使用した。MW:メガ・ワット1,000MW=100万kW=1GW。なお、GWについては、慣用的に1,000倍してMWと記することとした。MIGPD:Million Imperial Gallon per Day(百万英ガロン/日)のこと。1英ガロン≒4.54リットルであるので、1MIGPDは約4.5万トン/日の生産量に相当する。

サウジアラビアの電力・造水事業の契約形態図11

出所:SWCC 資料

GovernmentMOF

PIF32%

SEC8%

Developer60%

SWCC Project Company

Credit SupportSWCC

SEC

LLA

EP

C C

ontra

ct

O&

M C

ontra

ct

EPCContractors

O&MContract

PWPA

Fuel (ECA)

OSA : On-sale Agreement

ECA : Energy Conversion Agreement

FSA

OSA

OSA

Water & ElectricityL.L.C.

Shareholders Agreement

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15 石油・天然ガスレビュー

石油上流企業従事者のためのIWPP基礎知識 ―上流から下流までの総合ガス開発・利用技術が利権獲得のカギに―

アブダビ TAQA の IWPP 事業会社への出資形態図13

出所:TAQA 資料より筆者作成

Government of Abu Dhabi

Abu Dhabi Water& Electricity AuthorityPublic shareholders

24.1%51%

100%

100%

Fund for Support of Farm Ownersin the Emirate of Abu Dhabi

24.9%

100%

54% 54% 54%74%

100%

100% 100%100%100%100%100%

54% 54%54%

EmiratesSembCorp Water

and PowerCompany

(ESWPC)

Union Power Holding

Company

EmiratesPower

Company

Gulf Power Company

Arabian UnitedPower

Company

Al ShuweihatPower

Company

Al TaweelahUnited Power

Company

Emirates CMSPower

Company

(ECPC)

Gulf TotalTractebel Power

Company

(GTTPC)

Arabian PowerCompany

(APC)

Shuweihat CMSInt’l PowerCompany

(SCIPCO)

Taweelah AsiaPower Company

(TAPCO)

IWPP 施設

ホールディングカンパニー

プロジェクトカンパニー

Fujairah AsiaPower

Company

(FAPC)

Taweelah A2 Taweelah A1 Shuweihat Umm Al Nar Taweelah B Fujairah Fujairah 2

アブダビ ADWEA 傘下の事業会社の形態図12

出所:2006 年 11 月 JBIC ドバイ事務所開所記念シンポジウム Johannes Hubert(ADWEA)氏講演資料を引用

ADWEA

51%49%

Public GenCo.

AMPC(Mirfa)

ADSSC Indep. STProject Co.

100%100%

100%

100%

100%

100%

60%100%

BPC(Bainounah)

ADDC(Abu Dhabi)

IWPPs 100% Sewage Treatment Plants (STPs)

AW

CC

S

ESWPC

TAPCO

SCIPCO

GTTPC

APC

ECPC

AADC(Al Ain)

TR

AN

SC

O

AD

WEC

Network(Abu Dhabi& Al Ain)

Zakher Wathba100% 100%

100%

Existing New54%

54%

54%

54%

54%

54%

TA

QA

Mafraq Saad100%

Production Distribution

Licensed Activities

Water and Electricity Sewage

Regulation & Supervison Bureau

Procurement Transmission Collection; Disposal Sewage Treatment (ST)

6%

6%

6%

6%

6%

6%

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162008.9 Vol.42 No.5

アナリシス

の発電プラントと能力89.8MIGPD(約41万トン/日)のIWPP(Jubail 3)が2009年上期の操業開始を目

め ど

処に建設が進められている。 さらに、シュカイク(Shuqaiq 2)で、700MW、56MIGPD

(約25万トン/日)、ラスアズール(Ras Azzour)で、2,500MW、211MIGPD(約96万トン/日)が、それぞれ建設中である。

(2)UAE

 アブダビ首長国では、電気・水事業の再編・民営化が、他のGCC諸国に先んじて1997年から開始されている。1998年に創設されたADWEA(既出)が発電・造水、送電・送水、販売の各部門を担当するグループ会社を図12に示すように設立している。また、長期民営化計画の一環として、アブダビ政府は機関投資家の資金を導入して、総合エネルギーホールディングカンパニー:TAQAを設立している*7。TAQAのIWPP事業への投資概要を図13に示す。 アブダビにおいては、既に報告したように、電力需要に対する供給余力が懸念されていたが、TRANSCO

(Abu Dhabi Transmission & Despatch Company)の最

近の報告によれば、図14のように詳細な増設計画が策定されており、天然ガスの供給に不安がなければ、図15に示すように2012年までは電力の供給に問題はないことになった。 ドバイでは、1992年に設立された「ドバイ電気・水庁(DEWA)」が急激な電力・水需要の増大に対応するため、発電・造水施設の新規建設や既存施設の能力増強を図っている。シャルジャにおいては、「シャルジャ電気・水庁(SEWA)」が、その他の北部首長国では、「連邦電気・水庁(FEWA)」が電力・水関係事業を行っている。

(3)クウェート

 クウェートでは2003年7月、水・電気省と石油省が統合され、「エネルギー省(Ministry of Energy)」が新設された。この結果、電気事業は現在、エネルギー省の管轄下にある。 現在、シュウエイクとシュアイバ北の発電施設が操業を休止しているため、稼働しているのは、シュアイバ、ドーハ東、ドーハ西、アッゾール南およびスッビーヤの5施設である。発電設備能力は年々増強され、2003年

*7:JOGMEC 石油・天然ガス資源情報ホームページ 海外事務所リポート内「アラブ首長国連邦(UAE):総合エネルギー企業として躍進するTAQA」をご参照ください。

アブダビの発電能力予想図14

出所:TRANSCO 資料より筆者作成

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012

Umm Al Nar

West 1-8 発電機の

運用停止

Taweelah B 新規の

運転開始

Bainunah Power Co.

の発電設備廃棄  

Shuweihat Phase 2運転開始

Arabian Power Company

Bainunah Power Company

Taweelah Asia Power Company

Al Mirfa Power Company

Emirates CMS Power Company

Gulf Total Tractebel Power Company

Shuweihat Phase 2

Shuweihat Power Company

発電

能力

:M

W

Page 9: アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識...KSA 24.50% KUWAIT 9.22% OTHERS 15.60% OMAN 1.45% BAHRAIN 2.10% SPAIN 6.93% USA 14.35% UAE 22.35% QATAR 3.50%

17 石油・天然ガスレビュー

石油上流企業従事者のためのIWPP基礎知識 ―上流から下流までの総合ガス開発・利用技術が利権獲得のカギに―

末現在で9,273MWに達している。 海水淡水化施設はシュウエイク、シュアイバ南、ドーハ東、ドーハ西、アッゾール南の5カ所にあり、2007年からは381MIGPDに増強された。 さらに、2009年には、総計2,500MWが完成予定である。これらの事業費は、20億ドルが予定されている。 今後の需要増に対処するため、クウェート政府は発電能力のさらなる増強を計画している。アッゾール北とアッゾール南(第2期)にそれぞれの発電能力が2,400MWと1,000MWの施設を新設するため、40億ドルが投資される予定である。

(4)カタール

 1990年、「カタール電気・水会社(Qatar Electricity and Water Company : QEWC)」 が 政 府( 出 資 比 率42.74%)と官民の企業・個人(同57.26%)によって設立された。QEWCはカタール電気・水庁が所有・操業していたIWPPプラントのほとんどを引き継ぎ、発電・造水、およびそれらの販売事業をほぼ独占的に行っている。 カタール政府が進めている電力・水部門の民営化の一環として 2001 年に「ラス・ラファン電力会社(Ras Laffan Power Company Limited)」が設立された。株主は、米国のAESコーポレーション(出資比率55%)、カ

タール電気・水会社(同25%)、QP(同10%)、クウェートを拠点としているガルフ・インベストメント・コーポレーション(同10%)である。 2006 年 に は、Ras Laffan B IWPP 第 1 期( 電 力:600MW、15MIGPD:約6万8,000トン/日)、2008年には、同プラントが全面完成(第1期分を含み1,025MW、同60MIGPD<約27万トン/日>、総事業費:9億ドル)した。なお、同IWPP事業会社には、カタール産LNGの主要輸出先の一つであるわが国の中部電力が事業参加

(5%)している。 電力消費の伸びは、GCC諸国最大の8~9%/年であり、電力需要は2012年までに9,000MW近くに達すると予測されている。しかし、GCC諸国のなかにあってはカタールのみノースフィールド・ガス田の潤沢なガス資源から、図16(電力)と図17(造水)の増設計画・プラント建設が順調に進めば、電力、水とも供給に不安はない。

(5)オマーン

 オマーンは中東諸国で最も早く淡水化事業の民営化を行 っ て お り ,水 電 力 省(Ministry of Electricity and Water)がバルカで発電・淡水化民営事業(IWPP)を実施した。

アブダビの発電能力予想図15

(注)棒グラフは能力増強計画。2013 年以降については具体的な計画がないため 2012 年と同一としてある。線グラフは、需要実績(予測)。出所:ADWEA 資料に図14の TRANSCO 資料等を加え筆者作成

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

発電能力:MW

12,000

11,000

10,000

9,000

8,000

7,000

6,000

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

0

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182008.9 Vol.42 No.5

アナリシス

*8:JOGMEC 石油・天然ガス資源情報ホームページ 海外事務所リポート内「バハレーン:鉱区公開(続報)―湾岸の小国の新たな動き―」をご参照ください。

 1996年、ベルギー企業3社とオマーン企業4社からなる民間のコンソーシアムがアラビア湾岸地域で初めてBOOT(建設・所有・操業・移転)方式を採用し、同国初の民間資本による発電所がマナーに建設された。2003年には、カーミル、バルカ、サラーラの3発電所プロジェクトが国際企業とオマーン企業によって遂行され、稼働を開始した。また、2004年には米AESがドファールで、また、インド企業がカルン・アラムにおいて、それぞれ発電所を建設・完成させている。 オマーンにおけるIWPP事業の概要を図18に示す。 現在、ソハールの30MIGPD(13万6,000トン/日)、500MW のIWPP計画が経済省(Ministry of National Economy)によって進められている。 2003 年 に 稼 働 を 開 始 し た Barka IWPP( 電 力:427MW、水:20MIGPD)に、新規プラント(450MW、20MMIGPD)が増設される予定である。

(6)バハレーン

 バハレーンの電力・水の需給の概要については既に述べた*8。急増する需要に対応するため、ヒッド工業地区の開発計画に付随した新発電・造水プラントの建設プロジェクトは、バハレーンにとって最も重要なプロジェ

クトの一つである。発電所建設の第1期工事と第2期工事はそれぞれ1999年と2004年に完了し、Al-Ezzal IPP

(950MW)が操業を開始している。さらに、同地区には、Hidd IWPP(910MW、90MIGPD<約41万トン/日>)が2008年に完成した。 バハレーンは水の供給を地下水と海水淡水化水に依存している。人口増や生活水準の向上、工業開発などにより、水の消費量が急増している。地下水の使用量が増加していることから、地下水の塩分濃度が高くなっているという問題もある。バハレーンは現在、水供給量の約70%を淡水化水に頼っている。 バハレーンの電力需要は、マナーマ、ムハッラク、ヒッド、リーファならびにシトラの5カ所にある政府管轄の発電所により賄われているが、電力需要がピークを迎える夏季は、能力1,504MWの発電施設を所有しているアルミニウム精錬会社、「アルミニウム・バハレーン

(Alba)」から電力の供給を受けている。発電用燃料は、Awali油田深部のKhuff層からの国内生産の天然ガスが大部分を占めている。

カタールの発電能力増強計画図16 カタールの造水能力増強計画図17

出所:QWEC 資料より筆者作成 出所:QWEC 資料より筆者作成

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

発電能力:

MW

Facility C Messaieed A RAF B2 RL B RL A

Rafasat & RAF B & B1 Demand+(N-1)margin Base Case Demand

0年

0

50

100

150

200

250

300

350

400

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

造水能力:

MIG

D

Facility C RAF B2RAF A1 RL B RL A

Rafasat & B Demand+(N-1)margin Base Case Demand

Page 11: アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識...KSA 24.50% KUWAIT 9.22% OTHERS 15.60% OMAN 1.45% BAHRAIN 2.10% SPAIN 6.93% USA 14.35% UAE 22.35% QATAR 3.50%

19 石油・天然ガスレビュー

石油上流企業従事者のためのIWPP基礎知識 ―上流から下流までの総合ガス開発・利用技術が利権獲得のカギに―

 こうしたGCC諸国の電力・水事業の民営化に歩調を合わせ、国際ユーティリティ企業の参入が相次いでいる。油価高騰のあおりを受け資源ナショナリズムの高まる産油国にあって、産油国政府がノウハウを持たないIWPP事業は比較的外資の参入しやすい分野となっている。

(1)IPR

 英国に本拠を置くIPR(International Power Plc)は、全世界の20カ国で発電事業に参画している。参画している発電能力は3万MWを超える。中東地域では、アブダビのShuweihat IWPP(1,500MW)の事業会社であるSCIPCO(Shuweihat CMS Internat ional Power Company)に20%、Umm Al Nar IWPP(2,400MW)の事業会社であるAPC(Arabian Power Company)に20%出資している。さらに、フジャイラにおいてFujairah 2

(2,000MW:建設中)の事業会社FAPC(Fujairah Asia Power Company)に20%、カタールRas Laffan B IWPP

(1,025MW)に60 %、バハレーンHidd IWPP(既設分910MW)に40%出資している。そのほか、造水設備を伴わないサウジアラビアTihama IPP(出資60%)およびオマーンAl Kamil IPP(同65%)に出資している。 同社のポートフォリオの概要を図19に示す。

(2)Suez

 図20にSuezの中東における事業拠点を、表に参画プロジェクトを示す。 同社の出資するアブダビのIWPP事業会社Gulf Total Tractebel Power Companyの施設は、UAEタウィーラに位置しており、Taweelah A1と呼ばれる。2003年4月の運転開始時には、発電能力 221MW、造水能力28MIGD(約13万トン/日)であったが、現在同1,350MW、

4. 外資の活躍

オマーンの発電・造水事業組織図18

出所:Ministry of Electricity and Water(Oman)資料等より筆者作成

CUSTOMERS

Generation & Desalinat ion Distribut ion Su ppl y

Rura l Areas Electricity Company SAOC

Sector Law (RD 78/2004)

Authority for Electricity Regul ation, OmanThe Authorit y establish ed purs uant to Article (19)

United PowerCompany SAOG

Al Rus ailPowerCompany SAO C

Wadi Jizzi PowerCompany SAO C

Al Kamil PowerCompany SAOG

AES Barka SAOG

Al Gh ubrahPowerCompany SAO C

Om an Power & W aterProcureme nt Compa ny

SAOC

Oman ElectricityTransmission

Company SAO C

Muscat ElectricityDistribution Company

SAOC

Majan ElectricityCompany SAO C

Mazoon ElectricityCompany SAO CSoha rIWP P

New IWPP

Generation & Desalination Distribution Supply

Rural Areas Electricity Company SAOC

Sector Law (RD 78/2004)Licenses granted byAuthority to authorize

Regulated Activity

Authority for Electricity Regulation, OmanThe Authority established pursuant to Article (19)Al Rusil Power

Company SAOC

Wadi Jizzi PowerCompany SAOC

Al Kamil PowerCompany SAOG

AES Barka SAOG

Al Ghubrah PowerCompany SAOC

Oman Power & WaterProcurement Company

SAOC

Oman ElectricityTransmission

Company SAOC

Muscat ElectricityDistribution Company

SAOC

Majan Electricity

Company SAOC

Mazoon Electricity

Company SAOCSohar IWPP

New IWPP

United PowerCompany SAOG

C

U

S

T

O

M

E

R

S

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202008.9 Vol.42 No.5

アナリシス

IPR 社のポートフォリオ展開図19

Suez 社の中東における事業展開図20

Suez 社の中東における事業詳細表

(注)PBIT:Profit before Income Tax出所:IPR 資料より

出所:Suez 投資家向け説明資料

出所:Suez 投資家向け説明資料

409

/

150

/

380

/

x 1 000 m³/d (indicative)MIGD

30%

45%

50%

95%

20%

33%

SEI Share%

Total FundingRaised

US$ million

Total WaterProductionTotal Power

Capacity MWFacility

310/2901994 UPC Manah, Oman

1,340841,3602000 Taweelah A1, UAE

1,170909102006 Al Hidd, Bahrain

490/9502004 Al Ezzel, Bahrain

561335852004 Sohar, Oman

489/7702004 Baymina, Turkey

//

SEI Share%

Total FundingRaised

US$ million

Total WaterProductionTotal Power

Capacity MWFacilityx 1 000 m³/d MIGD

800

/

120

20%

20%

47.5%81026.46782006 Barka II, Oman

Rusail, Oman 665

3,3001762,7502006 Marafiq, KSA

92/2332006 Taweelah A10extension, UAE

SEI – Assets Under Management

SEI – Recently Awarded Projects

Overall Total (*) 8,2 GW, 409 MIGD, 1,859 x1000m3, 7.8 bn(*) excl. UPC and Baymina

(indicative)

Europe &Middle East

2002 PBIT = £109m

Europe &Middle East

2002 PBIT = £109m

North America2002 PBIT = £99mNorth America2002 PBIT = £99m

Australia2002 PBIT = £101m

Australia2002 PBIT = £101m

Rest of World2002 PBIT = £108mRest of World2002 PBIT = £108m

State Name Net MW FuelTexasTexasTexasMassachusettsMassachusettsMassachusettsGeorgia

2101,6501,100

160570570155

GasGasGasGasGasGas Gas

Oyster CreekMidlothianHaysMilfordBlackstoneBellinghamHartwell

Pluak Daeng saG011dnaliahTMalakoff saG523aisyalaMHub Power liO033natsikaPKot Addu saG757natsikaP

1,470360485

Net MWLigniteVariousCCGT

Hazelwood SynergenPelican Point

FuelNameVictoriaS AustraliaS Australia

State

EOPDeesideRugeleyPegoMarmara

ShuweihatAl Kamil

Umm Al Nar

Czech RepublicUKUKPortugalTurkey

Abu DhabiOman

Abu Dhabi

580500

1,000270160

300280

170

LigniteGasCoalCoalGas

GasGas

Gas

Country Name Net MW Fuel

Country Name Net MW Fuel

SaudiArabia

Oman

United ArabEmirates

Bahrain

Arabian Sea

RedSea

Gulf ofOman

1 34

25

76

8

PersianGulf

1. Al Manah2. Sohar3. Al Rusail4. Barka II

5. Al Taweelah6. Al Ezzel7. Al Hidd8. Marafiq

Power station in operation

Power station under construction

Office

Page 13: アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識...KSA 24.50% KUWAIT 9.22% OTHERS 15.60% OMAN 1.45% BAHRAIN 2.10% SPAIN 6.93% USA 14.35% UAE 22.35% QATAR 3.50%

21 石油・天然ガスレビュー

石油上流企業従事者のためのIWPP基礎知識 ―上流から下流までの総合ガス開発・利用技術が利権獲得のカギに―

54MIGD(約25万トン/日)への拡張工事が進んでいる。アブダビでは、Total社とSuez-Tractebel社が50%ずつの出資によって、ホールディングカンパニー Total Tractebel Emirates Power Companyを設立していた。同社は同プロジェクトカンパニーに40%を出資している。現在、当初出資社であったTractebel社はSuez社の傘下に入り、発電への出資事業は、Suez Energy Internationalが引き継いでいる。 そのほか、オマーンにおいてSohar IWPP(585MW、33MIGPD< 15 万トン /日>)に 50 %、バハレーンAl Ezzal IPP(950MW) に 45 %、 同 Hidd IWPP

(910MW、90MIGPD<約41万トン/日>)に30%出資している。

(3)日系企業

 現在までのところ、GCC諸国のIWPP事業に参加している日本企業は、丸紅、三井物産、住友商事、東京電力、中部電力の5社である。 最大の電力イクイティを持つのは丸紅で、同社は、現在全世界で5,000MW以上の発電能力イクイティを所有している上、さらに1,000MW以上を建設中である(図21)。丸紅は、2007年8月にFujairah 2 IWPP

(2,0 00MW:建設中)へ20%出資しており、UAE国内で同社の出資する事業で、総発電能力4,710MW、総造水能力310MIGPD(約155万トン/日)を持つことになり日系企業としては最大となった。

丸紅の IWPP・IPP 事業の世界展開図21

出所:Power Gen Middle East 2008 における丸紅の説明資料

IPP Generation Portfolio Map

Overseas Power Project Dept.II invests in 19 countries with a gross capacity of 18,000 MW and net capacity approx. 6,000 MW

YOSU Korea (Steam only)

ICHON Korea (250MW)

. SMARTESTENERGYUK(1,083MW)

CEDAR BAYUSA(250MW) RADES

Tunisia (471MW)

MARMARA EREGLISITurkey (480 MW)

TAPALPakistan (126MW)GBPC

Korea (Steam only)

SUAL Philippines (1,218MW)

PPNIndia (347MW)

BANG BOThailand (350MW)RABIGH

Saudi Arabia (600MW)

MIRAVALLESCosta Rica (27MW)

MESAIEEDQatar (2,000 MW)

Bahamas (151MW)JPSJamaica (621MW)CUCCura ao(167MW)

SAN ROQUE

ILIJANPhilippines (1,251MW)

MINDANAO I

PAGBILAOPhilippines (735MW)

TAWEELAH A2 + B UAE(700 MW + 2,000 MW)

MILLMERRAN

( , )POWER GENTrinidad and Tobago(1,365MW)

SAN ROQUEPhilippines (345MW)

MINDANAO IIPhilippines (48MW)

MINDANAO IPhilippines (47MW)

CIREBONIndonesia (660MW)FUJAIRAH II

UAE (2,000 MW)

SMITHFIELDAustralia (162MW)

MILLMERRANAustralia (840MW)

Australia (162MW)SMARTESTENERGY is a company that operates mainly in the consolidation business; by buying excess electricity from middle to small size companies and selling it to the market.The MW noted is the mid to long term contract based capacity.

Ç

Page 14: アナリシス 石油上流企業従事者のための IWPP基礎知識...KSA 24.50% KUWAIT 9.22% OTHERS 15.60% OMAN 1.45% BAHRAIN 2.10% SPAIN 6.93% USA 14.35% UAE 22.35% QATAR 3.50%

222008.9 Vol.42 No.5

アナリシス

 これまで述べてきたとおり、GCC諸国では、IWPP建設計画が目白押しの状況にある。現在、油価高騰による豊富な資金を背景として、建設が急ピッチで進められている。しかし、GCC諸国でカタールを除くその他の5カ国はIWPP燃料となる天然ガスの供給に不安を抱えている。民営化の進むIWPP事業には、既述のように国際ユーティリティ企業や日系商社も参入し、低いリスクで着実に収益を上げつつある。最大のリスクとして残されるのは、天然ガスの供給確保であることは言うまでもない。

石油・天然ガス上流事業者にとっては、これまで門戸が固く閉ざされたGCC諸国の上流事業に対し、天然ガス探鉱・開発プロジェクト志向が一つの門戸開放の梃

て こ

子になる可能性が大きい。 事実、オマーンでは新規のガス探鉱・開発がIOC(国営石油会社)にとってのブームともなっており、その可能性は大きい。中東における天然ガスの一貫した事業提案が奏功する可能性もある。

5. まとめ

【参考文献】 順不同1. Power Gen Middle East 2007における講演資料  POWER & WATER DEMAND AND FUTURE FORECAST IN QATAR:Khalid M. Jolo, Qatar Electricity &

Water Company(QEWC)ほか2. Power Gen Middle East 2008における講演資料  Key parameters for the development of I(W)PPs in the Middle East Dr. Michael Brandauer Marubeni

Europower Ltd. ほか3. Miller K. et al.(2005)The Prospects for Electricity Trade Between the GCC Countries:http://www.adwec.

ae/maps_graphs/files/Prospect_for_Electricity_Trade_between_GCC_Countries_Presentation.pdf4. MEED(2005):Special Report : Power, New Generation, 4-10 March 20055 . U.S. - Saudi Arabian Business Council(2004):Power Generation Transmission and Distribution in the

Kingdom of Saudi Arabia:http://www.us-saudi-business.org/Sector % 20Reports/Power % 20Report % 202004.pdf

6. UNESCO:A Look at the World's Freshwater Resources:Water Desalination, The Integration of Water and Energy Resources in The Gulf Cooperation Council Countries:

7. JOGMECホームページ 石油・天然ガス資源情報:http://oilgas-info.jogmec.go.jp/8. 国際開発センター(2002)いっそうの水不足が予想されるGCC諸国:http://www.idcj.or.jp/1DS/1 1ee_

josei021126_2.htm9. 中東協力センター アラブ首長国連邦の産業基盤:http://www.jccme.or.jp/japanese/08/pdf/08-07-02.pdf10. 中東協力センター オマーンの産業基盤:http://www.jccme.or.jp/japanese/08/pdf/08-07-09.pdf11. 中東協力センター カタールの産業基盤:http://www.jccme.or.jp/japanese/08/pdf/08-07-10.pdf12. 中東協力センター クウェイトの産業基盤:http://www.jccme.or.jp/japanese/08/pdf/08-07-11.pdf13. 中東協力センター サウジアラビアの産業基盤:http://www.jccme.or.jp/japanese/08/pdf/08-07-12.pdf14. 中東協力センター バーレーンの産業基盤:http://www.jccme.or.jp/japanese/08/pdf/08-07-17.pdf

執筆者紹介

石田 聖(いしだ ひさし)専門は構造地質、石油地質。1978 年石油公団入団。中国、インドネシア、オーストラリアほかの探鉱作業等、石油探査技術の研究・開発に参画。2006 年 8 月より、JOGMEC 中東事務所(在アブダビ)に勤務。海外駐在は、4 回目(前 3 回は中国<天津・北京>と中東<バハレーン>)。最近、ガスパイプライン網を地図に仕上げることに凝っている。天然ガスのダイナミックな流れを考えながら ・・・