シェール ガス と シェール オイル gas and shale oil.pdf2 シェールガス とは •...
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シェールガスと シェールオイル
米国の比較的小さな独立系石油会社が、今世紀に入り、地下深くに存在する頁岩(シェール)中に内包する天然ガスと石油を採り出す3つの技術革新に成功した。これにより、米国は2020年頃までに世界最大のガスと石油の産出国に、30年頃までに、エネルギー独立国になり、更には輸出国になると予想される。シェールガスの産出は21世紀最大のイノヴェーション(シェール革命)であり、世界のエネルギー需給構造を劇的に変え、米国への製造業回帰も促している。これにより、米国は中東に石油を求める必要がなくなり、利害関係の変
化により国防外交方針も徐々に変わる可能性があるかも。
(神奈川銀杏会三土会 村田 禅 平成25年1月19日)
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シェールガス とは
• 頁岩層から生産される天然ガス(メタン主成分、原油も随伴して採掘可能)。シェールガスは、隙間の少ない頁岩に天然ガスが貯留されているので、先ず頁岩層に水平堀(水平抗井)で穴をあけ、高い水圧で頁岩層に人工的に割れ目を作り(水圧破砕法、ハイドロフラクチヤリング)、さらにプロパントと呼ばれる砂粒やセラミック粒をそこに流し込んで隙間を確保しておいて、その隙間から天然ガスを回収する。従来技術では開発できなかった資源であることから非在来型天然ガスといわれている。
• 頁岩(シェール)は、地下1,000-3,000m に存在する固く薄片状にはがれやすい泥岩の一種。地下深く、圧蜜作用を受け、石油や天然ガスの根源物質が熱分解を起こし微細な割れ目に閉じ込められている。今世紀に入り、水平掘削工法、水圧破砕工法、マイクロサイズミック技術の発達により、多量の水の使用と共にガスの商業生産が可能となった。
• 一方で、一つの坑井に多量の水(2,000-10,000立方米)を使用するので、水の確保や排水処理が、環境問題や多発する弱震問題との関連を指摘されてもいる。
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ジョージ ミッチェル(ダニエル ヤーギン著の探求(The Quest)の一節より抜粋)
ヒューストンで石油と天然ガスを生産しているミッチェルは、1982年に読んだ地質学報告書より強力な直感を得ていた。頁岩(シェール)という根源岩の中に天然ガスが閉じ込められている。テキサス州の地下には、バーネット頁岩層、イーグルフォード頁岩層などがある。1998年の末に水圧破砕の適用でブレイクスルーを達成した。シェールロックからガスを取り出すことに成功した。これは、ほぼ同時期に開発された水平坑井掘削技術の進歩のおかげである。それは、一定の深さまで彫ってから、次に斜めに、あるいは真横に堀り進むことが出来る掘削技術である。間もなく、シェールガスは商業生産が可能になり、大量に流通し始めた。2000年の天然ガスの供給に占める割合は、僅か1%だったが、2011年には25%になった。現在の消費レベルで100年以上供給できる。途方もない潜在力である。
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シェール ガス開発の北米へのイムパックト
1.ガス、石油の大増産、世界最大の産出国、エネルギー独立国(2030年代)
2.エチレン増産 ガス価格の下落で石化原料のコスト競争力が高まり、メイジャーは世界最大級の石化工場を建設(国内回帰)
エクソンモービル社 ベイタウン(TX)150万t ダウ ケミカル社 フリーポート(TX)150万t シェヴロン・フィリップス社 (TX)150万t シェル社 (PA)150万t
3.GTL の生産 安い原料を使い、サソール社、シェル社らが液体燃料(灯油、軽油)の生産(Gas to Liquid)を計画
4.LNGの輸出 液化のコスト、船賃(計5-6$)を考慮しても日本への輸出可能、日本は原油価格に連動した現状の高値を下げる効果を期待
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シェールガス開発の日本へのインパックト
• 各商社、国際石油開発帝石、石油資源開発、東京ガス、大阪ガスらが、米国の開発会社らと、個別に、LNGとして日本への輸出計画を合州国政府及びカナダ政府に申請中
• 2016年頃より、輸入開始可能の見通し
• 米国産のコストの安いLNGが、ASEAN,豪州、ロシアなどからの原油価格に連動した高価格のLNGに、価格交渉の効果期待
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シェールガスの価格の動向
日本のLNGの輸入価格:原油価格に連動して、次式のような式できまる、 係数xJCC+定数
JCC (Japan Crude Cocktail=全日本輸入原油平均CIF価格)、定数=フレート、環境プレーミアム要素等を考慮加味したもの
動き:電力会社は地域独占で、安く調達する動機ずけがひく
かった。しかし輸入量が急激に増え、高騰する原油価格
に引きずられる値決め方式は合理性が薄れ、国際的に
見て割高感が増すにつれ、低価格化への努力が見え始
めた。
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日経:12月22日
(2012)
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各社懸命の価格引下げへの努力
• 官:東工取の中にLNGの先物市場をつくる(需給で値決めするオー プンなアジア市場を創設するため、2014年)。経産省
が積極的に国際的提言をする。
• 民:1.新規の契約では、米国のヘンリーハブ価格を参考に 決める方式を採用(BPと関西電力の新契約など)
2.開発計画に直接参画し、株主として権利行使
3.他地域よりの輸入に依頼し、供給ソースの多様化分
散化(東アフリカのモザンビーク、ロシアのシベリアから
ナホトカ近郊のコジミノ港)
4.東アジアのLNG輸入国が協力して値下げの努力をする
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ガスと石油の割合は、各地域のシエールで異なる
• ドライガス(メタン主体のガス)
• ウェットガス(プロパンやブタンなどの割合が比較的高く地表に採り出した時点で液体として回収できるNGLを多く含むガス)
• オイル(頁岩中で液体として存在しシェール層に含まれるものは、シェールオイルと呼ばれ、通常の原油と同じ)
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シエールガス成分(例 バッケン)
• メタン 51.246
• 窒素 4.626
• 炭酸ガス 0.858
• エタン 20.374
• プロパン 13.407
• イソブタン 1.443
• nブタン 5.335
• イソペンタン 0.909
• nペンタン 1.403
• NGL 0.399
• TOTAL 100.0 出所:OGJ,NOV.2012
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シェール層開発に関する環境対策
1.水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)が地下水(飲料用)を汚染するのではないか、と言う懸念。超高圧の水を坑内に押し込むことによって地層に割れ目を作る手法には、事前にさまざまな薬剤が添加される。割れ目を保持するための砂(プロパント)のほかに、酸(酸で地層を溶かす効果)、Friction Reducer(パイプと流体との摩擦を少なくする効果)、Surfactant(流体を流れやすくする界面活性効果)、Gelting Agent(割れ目の開度を維持するための増粘効果)、Scale Inhibitor(パイプ内での残渣を防ぐ効果)などの薬剤(液体全体の0.5%程度)が圧入水に添加される。一井戸当たり300万ガロン(1万1,000m3)の水が圧入されると、約1万5,000ガロン(57m3)の化学薬品を圧入したのに相当する。州政府と連邦政府での法整備が、2011年以来加速している。 飲料用の地下水(100m-300m)と、シェール層(1,000m-3,000m)とでは、だいぶ差があるといわれている。
2.微弱な地震が増えた、との指摘がある。上記使用した水を、別の坑井から、地下に戻していたものをやめる、と収まったとも言われている。