スプリング...bopビジネスはこの層を...

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使S T E P 3 次世代パワー半導体 SiC を搭載した回路ブロック。 インド・ラジャスタン州エネルギー大臣と星野さん。 リスクは地元パートナーとともにコントロールする姿勢で。 「リスクは回避するのではなく、コントロールするもの」 製造業の経験を活かし、グローバルな オープンイノベーション企業ヘッドスプリ ング株式会社を設立。インドビジネス 商工会日本支部代表として、新エネル ギー関連と中小企業の橋渡しも行う。 ヘッド スプリング 株式会社 代表取締役 社長 CEO 星野修さん Point of note BOP ビジネスとは BOP とは「Base Of the Pyramid」の 略で、世界の人口ピラミッドの基礎部分 に位置する所得階層。一般的には 1 人 あたり年間 3000ドル以下の所得で生活 する人々を指す。 世界の約 70% 以上が この水準にあり、人口は 40 億人以上と 言われている。BOP ビジネスはこの層を 対象に商品やサービスを提供する持続可 能なビジネスで、これによって BOP 層の 生活も改善されるという、Win-Win 関係 が成り立つことが特徴。 2050 年 中間所得層 BOP層 1.75 億人 現在 14億人 1人あたり年間所得 20000ドル 1人あたり年間所得 3000ドル BOP層 40億人 世界人口の約 72% 家計所得約 5 兆ドル 日本の実質国内 総生産に相当 ネクスト ボリュームゾーン 独立行政法人日本貿易振興機構ホームページより。 図案出所:「THE NEXT 4 BILLION(2007 World Resource Institute, International Finance Corporation)」より作成。 Profile 35 起こす!50 ー 地域を起こす創業企業 S T E P 1 退A V 退所 在 地:東京都品川区東品川 2-2-25 サンウッド品川天王洲タワー 3 階 業  種:電力変換装置製造業/新興国向け コンサルティング・新エネルギー事業 資 本 金 :9574 万円 設  立:2014 年 7 月 従業者数:8 会社概要 S T E P 2 http://headspring.co.jp/ 国内外で地産地消のエネルギーシステムが 注目されている。 ヘッドスプリング株式会社は その鍵を握る高性能電力変換装置で 新興国のライフスタイル向上に 貢献するビジネスに挑む。 東京Tokyo 品川区 Shinagawa ヘッド スプリング 株式会社 34 起こす!50 ー 地域を起こす創業企業

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Page 1: スプリング...BOPビジネスはこの層を 対象に商品やサービスを提供する持続可 能なビジネスで、これによってBOP層の 生活も改善されるという、Win-Win関係

ロニクスのビジネスのボトルネックに

もなっている。

「汎用的な変換装置があれば、新エネ

ルギーの普及も進むはず。その開発が

当社のゴールです。現時点でも、次世

代パワー半導体SiCを使えば小型高

効率の変換装置が実現できる。しかし

その活用には専門知識とスキルが求め

られます。当社ではまず、その回路ブ

ロックの商品化を手掛け、特別なノウ

ハウがなくても、これを既存の装置に

搭載するだけで高性能化が実現できる

製品を開発しました」

日本市場では研究開発型を中心とす

る一方、インドでは電化、省エネ化な

ど同社のソリューション型ビジネスが

スタートしている。新興国をはじめと

する国際ビジネス環境では、地元パー

トナーとの協力体制を築くうえで、パ

イを奪い合うのではなく、協働の価値

を共有し、パイ自体を大きくする考え

方や手法が重要だと星野さんは言う。

「日本の優れた省エネ技術の導入と同

時に、当社のパワーエレクトロニクス

の技術で、インドの無電化地域に規模

に応じたマイクログリッド型の電力供

給を提案していきたい。当社の強みは、

高効率かつ汎用的となる電力変換技術

があることです。この技術で、BOP

層のライフスタイルの持続的な発展に

貢献できればと考えています」

ストラ演奏ではなくジャズセッショ

ン。そこでは細かなルールは足かせに

なる。会社でのストレスは働き過ぎよ

り、ルールに縛られ、自分の意に介さ

ない仕事を強いられることのほうが大

きいと思いますから」

決められた枠組みで効率を競うな

ら、経験やキャリアは大切だが、新し

い価値、未来をつくるベンチャー企業

では、経験も年齢も関係はない。

「しかし、一般の金融機関には、そこ

をなかなか理解していただけません。

会社が持つポテンシャルよりも過去の

実績で評価されますから。日本政策金

融公庫からは、創業間もない当社に対

しても、担当者からの熱心なアドバイ

スがあり、積極的な事業展開が可能な

資本性ローンを提案いただき、融資を

実行していただいた。これは会社の力

になりました」今

後の展望

STEP3

日本では研究開発型、

新興国ではソリューション型で

電気自動車や蓄電システム、電力地

産地消など、来たるべきパワーエレク

トロニクスの時代で鍵を握るのは電力

変換装置だ。現在の変換装置は汎用性

がなく、製品に応じて個別の装置の開

発が求められ、それがパワーエレクト

次世代パワー半導体SiCを搭載した回路ブロック。 インド・ラジャスタン州エネルギー大臣と星野さん。 リスクは地元パートナーとともにコントロールする姿勢で。

「リスクは回避するのではなく、コントロールするもの」

製造業の経験を活かし、グローバルなオープンイノベーション企業ヘッドスプリング株式会社を設立。インドビジネス商工会日本支部代表として、新エネルギー関連と中小企業の橋渡しも行う。

ヘッドスプリング株式会社代表取締役社長CEO星野修さん

Point of note

■ BOPビジネスとはBOPとは「Base Of the Pyramid」の略で、世界の人口ピラミッドの基礎部分に位置する所得階層。一般的には1人あたり年間 3000ドル以下の所得で生活する人 を々指す。世界の約 70%以上がこの水準にあり、人口は40 億人以上と言われている。BOPビジネスはこの層を対象に商品やサービスを提供する持続可能なビジネスで、これによってBOP層の生活も改善されるという、Win-Win 関係が成り立つことが特徴。

2050年

中間所得層

BOP層

1.75億人

現在

14億人

1人あたり年間所得20000ドル

1人あたり年間所得3000ドル

BOP層約40億人

世界人口の約72%家計所得約5兆ドル

日本の実質国内総生産に相当

ネクストボリュームゾーン

独立行政法人日本貿易振興機構ホームページより。図案出所:「THE NEXT 4 BILLION(2007 World Resource Institute, International Finance Corporation)」より作成。

Profile

35 起こす! 50ー 地域を起こす創業企業

創業のきっかけ

STEP1

インドの知人から日本の技術力で

発展に協力してほしいと依頼が

「大学卒業後、企業の海外法人で働き

たいという漠然とした希望を抱き、大

手AV機器メーカーに就職、海外向け

商品企画とマーケティングに携わりま

した。ちょうど北米でリストラを手

伝っていたとき、近親者の死に直面し、

それが人生を考え直す契機になった。

帰国後、早期退職プログラムで、新し

いことにチャレンジしようと考えたの

が、最初の一歩でした」

そう語るのはヘッドスプリング株式

会社代表取締役の星野修さん。AV

機器メーカー退職後は、蓄電池メー

カーの新規事業プロジェクトを経て、

その後、2つのベンチャー企業では経

営にも携わった。

「厳しい局面に立たされたとき、経営

者としてリスクをとることができる

か。起業家はビジネスプランを描くだ

けでなく、どこかでリスクに向き合わ

なければならない。それまでの仕事で

は、リスク管理は万全でも、そこから

先に行けない歯がゆさは否めませんで

した。例えば、リスクが避けられない

新興国で、リスク回避だけに奔走して

は、地元企業と同じ立脚点には立てな

いし、共感も得られません。そこにあ

るリスクをどうコントロールし、いか

所 在 地 : 東京都品川区東品川 2-2-25 サンウッド品川天王洲タワー3 階

業  種 : 電力変換装置製造業/新興国向けコンサルティング・新エネルギー事業

資 本 金 :9574万円 設  立 : 2014 年 7月従業者数: 8 名

会社概要

に一緒に前に進んでいくか。これがベ

ンチャー企業の進む道でもあります」

ヘッドスプリング創業のきっかけと

なったのは、発展が目覚ましいインド

の友人からの依頼だ。

「彼から日本の技術でインド発展に協

力してほしいという話をいただいた。

それまでも私は開発途上国に行く機会

が多く、都市部から離れた地域では、

インフラが不十分で、貧困ゆえの不利

益を被っていた。そうした状況を目の

当たりにして、自分たちにできること

が、もっとあるのではないかと考えて

いました。私たちのコアテクノロジー

であるパワーエレクトロニクスの技術

と、日本で洗練された多様な省エネ技

術で、インドでのBOPビジネスの展

開に踏み出したのです」

事業スタート

STEP2

オーケストラ演奏ではなく

ジャズセッションのような会社を

星野さんが起業に際して重視したこ

とは「永続的に成長できる会社」だ。

「起業と、その会社を存続させられる

かは別の話。経営者が、会社を公のも

のと捉えられるかがポイントだと思い

ます。職場づくりでは、モチベーショ

ンを維持しながら仕事をする場を、ど

れだけ提供できるかを重視していま

す。音楽に例えるなら、当社はオーケ

http://headspring.co.jp/国内外で地産地消のエネルギーシステムが注目されている。ヘッドスプリング株式会社はその鍵を握る高性能電力変換装置で新興国のライフスタイル向上に貢献するビジネスに挑む。

東京都Tokyo

品川区 Shinagawa

ヘッドスプリング株式会社

34起こす! 50ー 地域を起こす創業企業