インドネシアをつなげ - daily-cargogojekが渋滞都市を緑に彩る...

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昭和44年9月30日 第三種郵便物認可 禁無断転載 Ⓒ海事プレス社2019 日刊、但し土・日・祝日は休刊 Transport & Logistics News KAIJI PRESS CO.,LTD. 2019 7 31 インドネシア特集 インドネシアをつなげ

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Page 1: インドネシアをつなげ - Daily-CargoGojekが渋滞都市を緑に彩る 2019年7月31日(水)第3種郵便物認可 インドネシア特集 3 のさで輸入 貿易赤字の一には、メーカーの

昭和44年9月30日 第三種郵便物認可 禁無断転載 Ⓒ海事プレス社2019 日刊、但し土・日・祝日は休刊

Transport & Logistics NewsKAIJI PRESS CO.,LTD.

2019年7月31日インドネシア特集

インドネシアをつなげインドネシアをつなげ

Page 2: インドネシアをつなげ - Daily-CargoGojekが渋滞都市を緑に彩る 2019年7月31日(水)第3種郵便物認可 インドネシア特集 3 のさで輸入 貿易赤字の一には、メーカーの

インドネシア特集 第3種郵便物認可 2019年7月31日(水)2

走する光景は、当局の施策、渋滞都市、テクノロジーの新たな関係を浮き彫りにする。

内需主導の特異な構造 14年に就任したジョコ・ウィドド大統領は15年1月、「国家中期開発計画

(RPJMN)2015~19」を発表した。5年間でGDP(国内総生産)に対する物流コストの割合を24.2%から19.2%に低下させることを目標に掲げ、幹線道路、高速道路、鉄道、港湾、空港のインフラ開発を全国で行う計画に取り組んだ。今後の経済発展には、効率的な物流・ロジスティクスの構築が大きな課題との認識からだった。 同国の実質GDP成長率自体は16年5.0%、17年5.1%、18年5.2%と安定して推移している。一方、貿易収支(国際収支ベース、財)は、16年は153億ドル、17年は188億ドルのいずれも黒字だったが18年が4億3100万ドルの赤字となった。 同国の経済成長は内需が牽引しており、米コンサルティング会社のA.T.カーニーによると「00年から15年までの間、GDP成長の90%以上が個人消費と国内投資によるものだった。これは他のアジアの国と比較すると、特異な構造」とする。同国では人口ボーナス期が30年前後までとも40年までとも続くと言われ、市場拡大とともに輸入中心の販売物流の需要はさらに高まると見られる。

GrabとGOjekが疾走 インドネシアは1万4000以上の島があり、国土面積は191万931平方キロメートル(2017年)と日本の約5倍。人口は2億5871万人(2017年、中央統計局、推計値)と世界4位。そのうち1047万人(16年、同)が首都ジャカルタに集中する。ジャカルタがあるジャワ島の GDP

(国内総生産)は同国の60% 弱を占める。 大都市圏の定義はさまざまだが、

「 Demographia World urban Areas」が今年4月に発表した世界の大都市圏ランキングでジャカルタ都市圏の人口は3437万人と世界2位。1位は東京―横浜の3851万人、3位はインド・デリーの2813万人。いずれ東京―横浜を抜き、世界最大の都市圏になる見込みだ。 世界最悪の渋滞都市として広く知られるジャカルタ。渋滞はロジスティクスの敵と言えるが、各種施策の効果で改善に向かっているようだ。オランダのデジタル地図大手、トムトムがまとめた18年の世界の交通渋滞都市ランキング(表①参照)では前年比8ポイント改善し、前年の世界4位から世界7位となった。調査対象の世界403都市の中で、改善率は最大。 16年には自動車の車両ナンバー規制が導入されるなど、各種施策が効果を挙げているという。ただ、現地

の肌感覚は異なる。同規制は車両ナンバープレート末尾の偶数奇数により例えば、偶数日は偶数のナンバープレートの走行が可能というもの。ただ、所得増もあり富裕層に加え、中間層でも偶数奇数両方のナンバープレート車両を保有するようになり、

「乗り入れ台数自体はあまり変わらないのでは」と現地日系物流事業者は話す。 目に見えての大きな変化は、“緑あふれる都市”になったことだ。主役は、利用者が増加している配車アプリサービスのGrab(グラブ)やGojek

(ゴジェック)だ。バイク利用者は後部座席にまたがり、両社のヘルメットを被る。くしくもコーポレートカラーは両社ともグリーン。グリーンのヘルメットが今日も元気にジャカルタを疾

世界の交通渋滞都市ランキング

順位 国・都市渋滞レベル 前年比

12345678910254371

インド・ムンバイコロンビア・ボゴタペルー・リマインド・ニューデリーロシア・モスクワ地域トルコ・イスタンブールインドネシア・ジャカルタタイ・バンコクメキシコ・メキシコシティブラジル・レシフェ日本・東京日本・大阪日本・名古屋

65 ▲1 63 1 58 8 58 ▲4 56 ▲1 53 ▲6

53 ▲2 52 ±0 49 2 41 ― 36 ― 32 ―

※蘭トムトム調べ

(単位:%)表

 アセアン(東南アジア諸国連合)の大国インドネシア。1945年の独立直後から「多様性の中の統一」を国是に国造りを進め、世界最大の島嶼国のインフラ整備は日本も多く支援してきた。世界4位の人口約2億6000万人を抱える大国の人口ボーナス期はまだ続く。国内、アセアン域内、アジア、グローバルにつなぐ物流を構築し、成長につなげていけるか。「LOGISTIK」の力が鍵を握る。

インフラと経済成長とロジの関係

配車アプリサービスのGrabとGojekが渋滞都市を緑に彩る

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インドネシア特集2019年7月31日(水) 第3種郵便物認可 3

現地調達率の低さで輸入中心 貿易赤字の一因には、メーカーの現地調達率の低さもある。同国では日系自動車メーカーの販売シェアが90%以上と圧倒的だが、部材は日本やタイ中心に東南アジアから調達している。同国内で生産される部材は品質的に利用が難しいため、海外調達が多く、現地調達率は高まらない。 完成品は国内販売向けが圧倒的だ。インドネシア自動車工業会(GAIKINDO)によると18年の同国内の自動車販売台数は前年比6.6%増の115万1291台、生産台数は10.4%増の134万3714台。タイと比較すれば販売先の違いが鮮明となる。同国の生産台数は9%増の216万7694台と5年ぶりに200万台を超えた。そのうち、国内向けが19%増の102万4961台、輸出向けは1%増の114万2733台。比較対象は異なるものの、インドネシアの輸出台数( 完成車、CKD)は35万台弱の規模だ。 ただ、日系自動車関連メーカーの調達、生産方針の変更などもあり、輸出が増えつつある。ひとつは、タイ間を中心にアセアン域内のトレードが増加傾向にあるため。完成車では2輪車の輸出が増加している(表②参照)。国内販売が落ち込んだ時期に、国内生産分を輸出に振り分け、その後、車種により大型はタイ、小型はインドネシアで生産、輸出するとのすみ分けもあったようだ。

販売物流か生産物流か インドネシアでは、貿易赤字解消や中進国入りを目指し、輸出強化に取り組む方針も示している。 インドネシア工業省は18年4月、

「インダストリー4.0」導入に向けたロードマップ「Making Indonesia 4.0」を発表した。30年に世界の10大経済大国を目指すもので、デジタル産業時代も見据えている。GDPに対する製造業のシェアが00年代に入り縮小傾向にあるといい、世界需要が大きく輸出に貢献できるといった観点から、優先的に①食品、飲料②テキスタイル、アパレル③自動車④化学⑤電機―の5分野に取り組む。30年までの指標には、▷GDPに対する純輸出の割合を10%に引き上げる▷労働コストに対する生産性を2倍に引き上げる▷GDPの2%を研究・開発・設計・イノベーションに配分する―とする。 国家戦略として輸出増加をさせるためには、比例して、当面は輸入の調達物流が増加することが想定される。ただ、「輸入関税はべらぼうに高い。人件費も上昇傾向にある。非常に保護主義的な政策もあり、日系メーカーの新規進出や投資拡大といった動きは昨今、鈍い。現地調達率が低く、輸出拡大に向けては、輸入に頼る必要もある。どのようにバランスが取れていくのか」「昨今の日系の新規進出企業は内需を見据えたサービス業などが中心。輸出増加は産業振興として

重要であり、物流も期待されるが、やはり、当面は生産物流にからむ輸入を見ていくことになろう」との声もある。

第2チカンペック高速道路が開業 生産、販売物流、いずれを提供するにも、肝となるのが渋滞緩和だ。日系メーカーはジャカルタ東部の工業団地に集積している。ジャカルタと東部チカンペックを結ぶ高速道路を利用して、国際貨物の中心であるタンジュンプリオク港やスカルノハッタ国際空港を結ぶ。そのチカンペック高速道路(5頁の図参照)では高架式(第2チカンペック高速道)の整備も進んでおり、今年9月末にも工事は完了し、年内にも供用を開始するとの報道もある。開通後、現在の高速道路は工業団地利用、第二はバンドンなど工業団地を抜けた南部との利用で使い分けるとの方針もあるとされ、渋滞解消に大きな期待が集まっている。 インドネシアは現在も国造りの真っ最中。ジャカルタの渋滞のような速度ではあるが、着実に成長と発展に向けて動いている。「ある日気付いた時には大きな変貌を遂げている可能性もある。目の前のビジネスを獲得しながら、将来の物流需要を的確に見極めていく必要もある」と日系物流事業者は声をそろえる。

インドネシアの主要な国際空港と港湾

N

ジャカルタ

メダン

バンドン

スラバヤ

マカッサル

スマトラ

ジャワヌサ・トゥンガラ

カリマンタン スラウェシ

パプア

サマリンダ

ベラワン港

クアラナム国際空港

スカルノ・ハッタ国際空港

タンジュンプリオク港

タンジュンウマス港

タンジュンペラク港

スカルノ・ハッタ港

ジュアンダ国際空港デンパサール国際空港

ハサヌディン国際空港ボジョネガラ港

インドネシアの2輪自動車販売台数推移(工場出荷ベース、単位:台)

年 国 内 輸 出 合 計

20142015201620172018

7,867,195 41,746 7,908,941 6,480,155 228,229 6,708,384 5,931,285 284,065 6,215,350 5,886,103 434,691 6,320,794 6,383,108 627,421 7,010,529

※インドネシア2輪車協会(AISI)調べ

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の非商業港12港、全国10のフェリー港の整備もODAで支援したものだ。 ②では、ジャカルタ首都圏への一極集中で生じる 交通問題軽減に向け、首都圏の総合的な交通計画

(マスタープラン)の策定を2000年代から継続的に支援してきた。 策定された計画の一つにジャカルタ都市高速鉄道(MRT)がある。同国初の地下鉄として、13年に着工し、今年3月、開業した(南北線)。現在、円借款で南北線延伸や東西線のエンジニアリングサービス(E/S)も実施している。

パティンバンで日本企業貢献

 国際物流で注目されるのがパティンバン新港だ。パティンバンはジャカルタ首都圏東部にあり、ジャカルタ中心部から約140キロ。そこに新港

(コンテナターミナル、カーターミナルなど)を整備するもの。第一期の最終完成目標は23年。全体事業費は約2100億円。17年11月には1189億円の円借款契約(第一期)を締結した。第一期開発分での年間コンテナ処理能力は286万 TEU、完成車処理能力は60万台。

 日本とインドネシアは2018年、国交樹立60周年を迎えた。 世界最大の島嶼国であり、多民族国家であるインドネシアは1945年の独立直後から「多様性の中の統一」を国是に国造りを進めてきた。日本は政府開発援助(ODA)事業などを通じ、後押しを進める。16年度までの支援額は累計5兆5000億円。日本はインドネシアにとって最大の2国間援助国であり、また、日本にとってインドネシアはODAの最大受取国

(累計ベース)の関係にある。まさに独立以降の国造りを支援してきたと言える。ODA対象分野は電力・エネルギー、防災・災害復興、保健医療・社会保障、高等教育・高等人材育成

(延べ4万人以上の研修を実施)と多岐にわたるが、中でも運輸交通が大きな柱のひとつ。

コネクティビティ強化と渋滞解消

 物流に関わる運輸交通では道路、航空、港湾、海運分野などで技術協力や資金協力の支援が続いている。国際協力機構(JICA)の山中晋一インドネシア事務所長は、これまで運輸交通分野での支援の大きな柱は①日本の国土の5倍あるインドネシアのコネクティビティ(連結性)強化②ジャカルタ首都圏の交通混雑緩和―とする。例えば、①ではスマトラ縦貫道路(総延長約2500キロ)の約6割を日本が整備した。また、スマトラ島とジャワ島を結ぶフェリーの輸送力強化に向け、フェリーターミナルの整備を支援。ジャワ島とスマトラ島のフェリー輸送時間は従来の片道5時間から2時間弱に短縮した。 ほかにも、ジャワ幹線鉄道輸送力

強化、5空港(バリ、バリクパパン<東カリマンタン州>、スラバヤ<東ジャワ州>、パダン<西スマトラ州>、パレンバン<南スマトラ州>)の建設・拡張や33空港 の 保安設備を整備した。全国28のゲートウェイ 港 のうち8港、東部インドネシア

山中晋一インドネシア事務所長

今年3月にはインドネシア初の地下鉄としてジャカルタ都市高速鉄道(MRT)が開業。セレモニーにはジョコ・ウィドド大統領も参加した(JICA提供)

国際協力機構(JICA)

国交樹立60年で最大供与先

整備が続くパティンバン港。CDM(深層混合処理工法)作業船を使った地盤改良の様子(遠景)(JICA提供、2019年7月12日撮影)

パティンバン港第一期、23年最終完成を

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 ジャカルタ首都圏には既存港タンジュンプリオク港(年間コンテナ貨物取扱量は15年実績で約520万TEU)があるが、25年にはコンテナ需要に対応できなくなると予想されている。同港ではまた、沖合でのターミナル拡張計画(ニュープリオク港)が進められており、16年8月にはニュープリオク港(カリバル・ターミナル)」が本格的に操業を開始。第一ターミナルの年間取扱容量は約150万TEU。 パティンバン港を整備する意義について山中所長は、①と②に加え、3点目に日本企業への貢献を挙げる。ジャカルタ東部には工業団地が集積しており、自動車関連メーカーをはじめとする日系企業が600社以上進

出している。山中所長は「これら企業に対する物流アクセス改善につながることを期待。また、港湾建設は日本タイドの条件であり、主契約者は日本企業に限定している。港湾運営は、両国間で日本とインドネシアの共同運営という予定となっており、日本のプレゼンスを示すことが可能」とする。運営権者を決める入札時期は決まっておらず、まずは建設を進める。

  最新 の 建設状況 で は、人工島整備に向けた埋め 立 て 部分( 地面)の大半は今年中に整備される。カーターミナルで 一部着工し ている部分 は 来年にもおよそ 整備される見込み。工事と並行して一部先行でのオープ

ンが可能かどうか、工事の進捗状況なども確認しながら判断していく。

築き上げた信頼

 山中所長は国交樹立60周年といった歴史について「これまで築いてきた信頼の遺産は非常に大きい。日本であれば間違いないという信頼があり、そこに後押しされている」と語る。JICAインドネシア事務所の陣容は、日本人スタッフが約30人、現地スタッフが約50人。加えて、日本人専門家がインドネシア政府各省庁などで約40人働いている。「JICAの海外事務所としては最大規模」と言う。 現在、ジャカルタとスラバヤ間の鉄道準高速化の調査やジャカルタ首都圏の下水道といった大型案件も手掛けている。ジョコ・ウィドド大統領は2期目の重要施策としてインフラ整備に加え人材育成を掲げており、引き続き、日本国として多分野で国造りに貢献していく。

建設中のカーターミナルの桟橋の一部(JICA提供、2019年7月12日撮影)

ジャカルタの主要インフラと東部の工業団地ジャワ海

ブカシ県

タンジュンプリオク港

パティンバン新港

スカルノ・ハッタ国際空港

ジャカルタ特別州

MM2100

リポチカランジャバベカ

スルヤチプタ

KIIC

KIM

KIKC

BIIP

KBI

EJIPBIIE

デルタシリコンデルタマス・GIIC

スラバヤ

バンドン➡➡

主要道路

N

チカンペック高速道路

MRT乗車を楽しむ姿も

サマリンダでの職業訓練(JICA提供)

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時短の短縮にもつながったようだ。

輸入通関情報の可視化と正確性を  インドネシアでは14年12月、AEOで通関上の優遇措置などを付与する制度を制定した。AEO取得者には「グリーンチャンネル」より上位の「ブルーチャンネル」の地位が付与される。日本貿易振興機構(ジェトロ)と同国最大の日系コミュニティ、ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)が17年7月27日に開催したAEOに関する説明会で、税関総局技術局AEOセンター事業者認定室長のマルタ・オラビア氏が講演。マルタ室長は、ブルーチャンネルとなれば、輸入通関所要時間 は 非 AEO の4.03日に対し、2.93日で済むと説明したとする。また、現在、複数国とAEO制度の相互認証を交渉しているとした。 輸入通関のオペレーション自体は改善が進むが、現場では正確な情報収集と当局への情報提出に苦心、奮闘している。 関税分類や運用の変更はたびたびある。輸入にはさまざまな省庁が関わるため、専門スタッフを配置し、国の動向を常にウォッチしている事業者

 インドネシアの物流・ロジスティクス能力を客観的指標で見てみよう。 世界銀行が2年ごとに発表しているロジスティクス・パフォーマンス・インデックス(LPI)の最新版、2018年報告書(表①参照)で1位はドイツ

(LPIは4.20)、日本は5位(4.03)、インドネシアは46位(3.15)だった。 LPIは世界各地の1000を超える物流事業者を対象にアンケートし、国際サプライチェーン(SC)の効率性を測定。世界160カ国・地域をランキングしたもの。各地の物流・ロジスティクスに従事するいわば専門家の生の声が反映されたものであり、各国の政策立案でも一つの指標として重視されている。アセアン上位国をキャッチアップするためにも、インフラ整備や通関の効率性が求められている。

グリーンライン増で輸入大幅改善も 新興国で散見されることが、政策の急な変更、役所の縦割り構造、担当職員による見解の相違、柔軟性の欠如とアンダーマネーの存在だろう。特に通関では世界中の事業者が苦労している。インドネシアも同様だが、

“大枠”では、輸入通関手続きの改善が進んでいる。 政府は14年からタンジュンプリオク港の輸入貨物の通関時間短縮に乗り出した。貨物保管料が高く、滞留時間も長く、また、ジャカルタの渋滞につながる同港のパフォーマンス改善は、同国の成長や競争力向上といった点でも意義を持つ。改善に着手した14年9月時点では平均5.5日に

対し、シンガポールなど他のアセアン国は平均1~3日だったという。これを17年3月時点で平均3.05日まで短縮。「タンジュンプリオク港の輸入通関は目に見えて早くなっており、時間的にはほとんどストレスは感じない」と日系物流事業者は口をそろえる。 改善の背景にはまた、輸入者のステータスで「グリーンライン」が大幅に増加したこともあるようだ。同国では「グリーンライン」「イエローライン」

「レッドライン」と3つの輸入審査区分がある。「グリーンライン」は日本の区分1(簡易審査扱い)に相当し、通関検査は不要で即時許可となる。

「イエローライン」は区分2(書類審査扱い)、「レッドライン」は区分3(検査扱い)にそれぞれ相当する。 従来、大半は「イエローライン」であり、書類審査に4~5日かかっていたという。同国進出企業のステータスが「イエローライン」から「グリーンライン」に変わるまで1~2年は必要だったとされ、新規進出企業の負担だった。これが、ジョコ・ウィドド大統領のイニシアチブも受け一気に大幅に「グリーンライン」に切り替わり、タンジュンプリオク港の輸入通関

情報収集と徹底対応が現場力にロジ指標は世界46位

インドネシアの接続性を高めるスローガンが掲げられる

主要国・ASEANのロジスティクス・パフォーマンス・インデックス(LPI)2018順位 国 スコア 通 関 インフラ 国際輸送

ロジスティクス競争力 貨物追跡 適時性

15714263239414660808298137

4.20 4.09 4.37 3.86 4.31 4.24 4.39 4.03 3.99 4.25 3.59 4.09 4.05 4.25 4.00 3.89 4.06 3.58 4.10 4.08 4.32 3.89 3.78 4.05 3.51 3.87 4.09 4.08 3.61 3.29 3.75 3.54 3.59 3.65 3.84 3.41 3.14 3.14 3.46 3.41 3.47 3.81 3.27 2.95 3.01 3.16 3.40 3.45 3.67 3.22 2.90 3.15 3.35 3.30 3.15 3.46 3.15 2.67 2.89 3.23 3.10 3.30 3.67 2.90 2.53 2.73 3.29 2.78 3.06 2.98 2.71 2.62 2.46 2.51 2.71 2.75 3.17 2.70 2.61 2.44 2.72 2.65 2.91 2.84 2.58 2.37 2.14 2.79 2.41 2.52 3.16 2.30 1.91 1.88 2.88 2.25 2.12 2.75

ド イ ツ日 本シンガポール米 国中 国タ イベ ト ナ ムマレーシアインドネシアフィリピンブ ル ネ イラ オ スカンボジアミャンマー

※世界銀行調べ。「通関」は税関・通関事業者を含めた効率性・簡潔性、「インフラ」は貿易・輸配送に関わる港湾、道路、鉄道、ITの品質、「国際輸送」は競争力ある出荷価格の調整容易性、「ロジスティクス競争力」は輸送事業者・通関事業者の競争力と品質、「貨物追跡」は追跡能力、「適時性」は貨物を配送時間内もしくは期待される時間内に目的地に届ける指標

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もある。「オペレーションが最終的にどうなるかも重要だが、まず、国の動きや今後の変更点の可能性について、

“可視化”することが重要。何も分からないでは、顧客の信頼を失う」。また、円滑な輸入通関の実現のため、顧客や日本・海外の自社に対して正確な情報提出も徹底している。

保税物流センターPLB活用を模索

 「中国・深圳の物流園区を参考に制度の導入を検討したと聞いています」―。インドネシア政府は15年、保税物流センター(Pusat Logistik Berikat=PLB)制度を導入した。従来型の保税倉庫(Gundang Berikat=GB)と異なり、輸出貨物の保税保管、非居住者在庫保管、保管期限の延長(GB型の1年が3年に)などのメリットがある(表②参照)。輸入では、非居住者在庫として自社在庫の保有ができるほか、VMI(ベンダー・マネージド・インベントリー)の運用が可能だ。 従来の保税倉庫では利用可能な取引関係が1対1であり、基本的には荷主が自社工場敷地内に保税倉庫を設置し、自社製品を保税で保管していた。日系物流事業者が保税倉庫を運用する場合も1対1だったが、PLBでは複数顧客と取引できる。PLB型の倉庫運用が盛んになれば、荷主は自社保税倉庫を外部化し、自社敷地内の資産を有効活用できる。物流事業者のビジネスチャンスにもなる。 PLBについて、日系物流事業者のスタンスは現時点で各社が抱える顧客次第という面が強い。「15年導入時点では大手から多数、問い合わせがあり、現時点でも輸出入で運用している。ただ、現在、それほど問い合わせはない」「日系メーカーからここ数カ月、相次いで問い合わせを受けている。承認取得のためには1万平方メートル以上の大型物流センターが必要と言われているため、どうすればよいか検討している」との声がある状況だ。 同国が輸出戦略を推進していくう

えでは、PLBが十分に活用される産業振興が重要になる。世界屈指のハブ国であるシンガポールをはじめ、周辺のマレーシアやタイに保税保管された生産部材がインドネシア到着後、そのまま工場に納品となり、生産後は国内消費に回るというトレードモデルから脱却できるか。同国のフリートレードゾーンはシンガポール近くリアム諸島のバタム島にはあるが、日系自動車メーカーなどが集積するジャカルタ近郊にはない。 昨年5月にはPLBの旧規定を改定し8種類を定めており、各種振興施策との連携が重要となる(表③参照)。

今年10月にハラル法施行予定 世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシア。イスラム教の戒律

(イスラーム法)で許されていることを「ハラル」、禁止されていることを

「ハラム」という。同国では14年に公布されたハラル製品保障法が今年10月17日、施行される予定だ。

 今年5月3日には同法実施に関する政令が公布された。同国領域内に搬入、流通および売買される製品はハラル認証を取得する必要がある。対象は物品が食品、飲料、医薬品、化学品、化学製品、生物学的製品、遺伝子組み換え製品、動物由来の成分を含む製品。サービスは食肉処理、加工、保管、包装、配送、販売、給仕。対応期間は食品と飲料は今年10月17日 から24年10月17日まで、それら以外は今年10月17日から26年10月17日まで。 現時点で、日系物流事業者の中でハラル関連ビジネス自体を大きく手掛けているケースはない。猶予期間も長いため、現地は至って冷静。「多民族という国民性でもあるのか、厳格に仕分けられているマレーシアやシンガポールに比べ、インドネアは緩やか。大半の国民はほとんど気にしていないのではないか」との声もあるほどだ。まずは新たな法制度と運用を注視していく姿勢だ。

保税物流センター(PLB)と保税倉庫(GB)の比較

外国貨物と内国貨物を蔵置可能PLB管理者と売買当事者

3年(延長可能)

PLBからの搬出時点

多数対多数(Many to Many)、1対多数、多数対1取得後期限なし

複数箇所で設置可能蔵置のほか、

多くの活動が可能

分割使用が可能

外国貨物を蔵置可能保税倉庫管理者

1年

当初の蔵置時点

1対1

3~5年または契約満了まで1カ所のみ設置可能蔵置のほか、

少数の活動のみ可能

1回の使用のみ可能

概要所有権蔵置期間関税評価

(課税価格の決定時期)

利用可能な取引関係

免許1免許で設置できる箇所施設内で可能な活動(作業)

FTA/EPAに関する原産地証明書の扱い

※日本貿易振興機構「インドネシアの保税物流センター(PLB)について」(2017年3月)を基に本紙作成

PLB GB表

2018年5月改定で定められた保税物流センター(PLB)の種類

※日本貿易振興機構のビジネス短信(2018年5月9日)「保税物流センターの制度を改定」を基に本紙作成

表③

工業会社にディストリビューションすることを主要目的として物品を蔵置するPLB

小中規模工業会社にディストリビューションすることを主要目的として物品を蔵置するPLB

輸出またはトランスシップメントを主要目的として物品を蔵置するPLB

ECプラットフォームを通じた販売用物品を蔵置するPLB

大規模工業活動支援PLB工業会社以外にディストリビューションすることを主要目的として物品を蔵置するPLB

工業会社以外にディストリビューションすることを主要目的として必需品を蔵置するPLB

水域に位置する物品を蔵置するPLB

コモディティ取引所および、あるいはコモディティ競売所で売買されることを主要目的として輸出品を蔵置するPLB

完成品PLB

必需品PLB

フローティングストレージPLB

コモディティ品輸出PLB

小中規模工業活動支援PLB

航空カーゴハブ活動支援PLB

EC活動支援PLB

工業会社にディストリビューションすること大規模工業活動支援PLB

工業会社以外にディストリビューションする完成品PLB

工業会社以外にディストリビューションす必需品PLB

水域に位置する物品を蔵置するPLBフローティングストレージPLB

コモディティ取引所および、あるいはコモコモディティ品輸出PLB

小中規模工業会社にディストリビューション小中規模工業活動支援PLB

輸出またはトランスシップメントを主要目的航空カーゴハブ活動支援PLB

ECプラットフォームを通じた販売用物品をEC活動支援PLB

情報収集と徹底対応が現場力に

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インドネシア特集 第3種郵便物認可 2019年7月31日(水)8

20年代初めに新貨物地区移転へ

 インドネシアの旅客、貨物の中心はスカルノ・ハッタ国際空港だ。同空港では第2滑走路(3600メートル×60メートル)の北側で第3滑走路(3000メートル×60メートル)の整備が進められており、今年7月中にも供用開始との報道もあった。同空港は第1滑走路(3660メートル×60メートル)と合わせて3本体制となり、1時間当たりの 発着回数は現在の81回から120回に増えるという。第3滑走路そばには第4旅客ターミナルを整備する計画だ。 第1、第2滑走路に挟まれ、第3旅客ターミナル付近にある貨物施設は空港西側地区に移転し、30万平方メートル程度の敷地に「カーゴビレッジ」を開発する予定だ。年間の貨物処理能力は150万トンとする。自動カーゴハンドリングシステムの導入も計画する。インドネシア中央統計庁によると、18年の貨物積込量は国際が前年比6.4%減の16万7934トン、国内が1.8%減の21万9393トン。取り降ろし量は明らかでない。 移転時期は現時点で未定。日系物流事業者などは現在の上屋の契約時期が20年末、また、21年末でもあり、21 年から22年にかけて段階的に移転が始まるとの見方だ。 一方、政府はジャカルタ郊外の海上に第2スカルノ・ハッタ国際空港を建設する計画も持つ。年内にもF/S(実行可能性調査)を終える予定という。

航空持ち株会社設立とドローン 航空、海上とも国家主導で戦略が進められる中、政府は今 年、金融と保険、航空のそれぞれの分野で国営企業の持ち株会社を設立するという。国営企業間の業務提携強化やコ

スト削減などの効率化が目的。航空分野では、空港運営アン カサ・プラ(AP)1とスカルノ・ハッタ国際空港を運営するA P2、GIAなどの株式を、空中写真撮影やチャーター便の運航を手掛けるスルファイ・ウダラ・ペナスが保有するという。 一方、ブルームバーグは今年6月、GIAのドローン活用計画を報じた。中国のBeihang UAS Technologyが開発する機材を利用する。航続距離は1200キロ、最大積載重量は2.2トン。魚介類を東部マカッサル(南スラウェシ州)の拠点に輸送し、香港、シンガポール向けの海上輸送につなげる。年内にもトライアルを行う。世界最大の島嶼国でもあり、ドローンを有効活用していくという。

 ガルーダ・インドネシア航空(GIA)は 国際22、国内68路線を展開するインドネシア最大の民間航空会社( 政府出資比率60%)だ。1万7000以上もの島々を抱える島嶼国で、航空物流が担う役割は大きい。フィクダネル・タウフ ィック日本・韓国・アメリカ地区総代表は「人口規模は世界4位、平均年齢27歳で成長可能性が非常に大きい。プロデューサーとしての日本、コンシューマーの当国という関係はさらに深まり、物量は増加していくだろう」と期待する。 3月には中部―ジャカルタ線に就航。日本は羽田、成田、 関西、中部とジャカルタ、デンパサール間の5路線週28便 体制に。週間貨物供給量は約386トンに拡大した。「ジャカルタ直行便をプレミアム商品、デンパサール経由をエコノミー商品と位置づける。また、日本発の生鮮品や医薬品、ジャカルタ以遠の潜在需要開拓にも力を入れる」と販売戦略を語る。貨物事業全体では、自社保有のA330-300型を貨物型に改造する計画がある。まずは1機で、チャーターベースのオペレーションが展開される見通し。

成長確実市場のフラッグキャリア■ガルーダ・インドネシア航空

タウフィック日本・韓国・米国地区総代表

スカルノ・ハッタ国際空港の貨物地区の出入口

空港・航空編

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 上組は2013年、現地法人「上組インドネシア」を設立した。通関代理業、フォワーディング、梱包、据え付け、倉庫保管、重量物輸送を行う。昨年、中部ジャワ州スマランに支店を開設した。同国ではまた、海外初の自社倉庫の開設にも踏み切った。 倉庫保管業などを手掛ける「上組ロジスティクスインドネシア」は14年の設立。昨年12月、ハラル認証を取得した。本社はグリーンランド工業団地

(GIIC、西ジャワ州)内倉庫に構える。倉庫のうち、第一期棟は自動車関連部品を中心に手掛けており、開設直後から満床。第二期棟の1階は消費財関連と家電関連で活用中。2階は保税物流センター(PLB)の利用も含めて検討中だ。これら自社倉庫に加え今年、MM2100工業団地内(西ジャワ州)に借庫で倉庫を開設。自動車部品関連を取り扱い、ミルクラン対応も行っている。 梶川将史社長は「海外で初の自社倉庫開設に投資をしたことも含め、インドネシアが良い意味でのモデルケースになる責任がある」と語る。

 ケイラインロジスティックス(KLL)のインドネシア現地法人はスカルノ・ハッタ国際空港の貨物地区近くに本社兼倉庫を構える。陣容は83人。そのうち日本人駐在員は小柳宏和社長を含め3人。外部協力会社からのスタッフを含めると総勢約100人。スラバヤ

(東ジャワ州)に支店を置く。陣容は5人。同社の主な事業内容は航空、海上のフォワーディングと通関。事業拡大に向け増員も検討中。トラック輸送や倉庫利用では川崎汽船グループの現地会社とも連携する。 売上高構成は航空6割、海上4割。航空の輸出貨物では2輪・4輪自動車部品関連と日本向け繊維製品関連がメイン。海上の輸出は2輪の自動車部品関連と完成車がメイン。小柳社長は「2輪自動車の国内販売台数が15年以降落ちてきた段階で、メーカーはインドネシアを輸出拠点としても運用していく方針に切り替えた。アジア域内向けを中心に伸びている」と語る。海上の輸入はタイ中心に自動車部品関連が伸びている。業績は過去3年堅調であり、今後も航空、海上と2輪、4輪自動車関連を強化していく。

海外初の自社倉庫を開設■上組インドネシア

2輪・4輪自動車と海上強化■ケイラインロジスティックス

インドネシア現地法人の梶川将史社長

インドネシア現地法人の小柳宏和社長

物流企業の紹介

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原点回帰で営業量倍増海外最大級新倉庫も生かす

日本通運グループ

 日本通運は創立100周年を迎える2037年に向けた長期ビジョンで「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」を掲げる。東南アジアおよびインドなど南アジアを管轄する南アジア・オセアニア日本通運は今年度、営業量倍増を打ち出した。インドネシアでは今年3月、日通グループとして海外最大級の倉庫が竣工した。原点回帰の姿勢で、フォワーディング、倉庫、重機建設の需要を獲得していく。

を訪問していく」(松田社長)と力強く語る。 日通グループでは日通インドネシア物流 の 海外引越事務所がジャカルタ中心部スデルマン地区にあり、NEXグローバルエンジニアリングの駐在員事務所が同居する。松田社長は「中心地には大手日系企業の事務所も多い。渋滞で時間がかかる空港、港湾や工業団地の事務所に通うことなく、この拠点を活用し、日通グループとして“ダウンタウンセールス”を推進していく」と語る。以下、取り組みを紹介する。

5社で総合物流を展開

 インドネシアで日本通運グループは同国における外資規制などの事情から、日通商事インドネシアを含め4社の現地法人があり、1社の駐在員事務所とともに事業を展開している。 「NEXロジスティクスインドネシア」

(NEX LOGISTICS INDONESIA、今野伸一社長)は倉庫業、コンサルティング、「インドネシア日本通運」(NIPPON EXPRESS INDONESIA、村野光彦社長)は航空輸送、「日通インドネシア物流」(NITTSU LEMO INDONESIA LOGISTIK、松田邦敬社

長)は海上輸送、引越し、国内ロジスティクスを主に手掛ける。また、18年9月には重機建設を手掛けるNEXグローバルエンジニアリング(NEX GLOBAL ENGINEERING、本社=シンガポール、鷲山正二社長)が駐在員事務所を開設した。 南アジア・オセアニア日本通運は今年度の営業施策の一つとして、営業量倍増を打ち出す。「インドネシア政府の政策や市場動向もあるが、顧客を軸として考えることが重要。顧客を増やすため、営業量を倍増する」

(村野社長)、「情報収集力を高めるため、原点回帰でとにかく多くの顧客

左からNEXグローバルエンジニアリングの鷲山正二社長、NEXロジスティクスインドネシアの今野伸一社長、インドネシア日本通運の村野光彦社長、日通インドネシア物流の松田邦敬社長

 NEXロジスティクスインドネシアは2014年11月の設立。本社はジャカルタ東部グリーンランド工業団地(GIIC、西ジャワ州)にある。陣容は111人(19年5月時点)。日通グループが同国で運用する倉庫面積は、13年時点で1万9700平方メートルだったが、19年には14万2300平方メートルと約7倍に拡大した。 同社による運営倉庫は増加しており、15年10月には最初の拠点「デルタマスロジスティクスセンター」(GIIC内、倉庫面積約1万5000平方メートル)が稼働し、18年2月にはスマラン(中部ジャワ州)で倉庫「スマランロジスティクスセンター」(同3108平方メートル)が開業した。そして今年3月、ゴーベル工業団地(西ジャワ州)で「ブカシロジスティクスセンター」の開業に至る。日通グループが海外で運営する倉庫規模としては最大級の規模を誇る。 新倉庫は平屋建て(一部2階建て)。敷地面積は7万9143平方メートル。延べ床面積は5万1409平方メートル。同面積のうち、倉庫面積は4万5800平方メートル。そのうち、温度管理部分は、冷凍200平方メートル(設定温度は

マイナス25度~マイナス18度)、冷蔵700平方メートル(同2度~8度)、定温1847平方メートル(同8度~25度)。トラックバースは51カ所あり、そのうち、21カ所は海上コンテナの接車が可能だ。高床ホーム、両面接車バース、24時間警備、CCTV・セキュリティーセンターを完備する。 同社は航空・海運フォワーディング、国内販売物流、製造物流(ジャスト・イン・タイム納品)、冷凍・冷蔵保管や定温輸送など物流全般の顧客ニーズに応えるため、新倉庫の開設を決めた。今野社長は「日通グループのインドネシアの中核倉庫として需要を獲得していく」とする。拡大するジャカルタ首都圏全域の消費市場もにらみ、新たな自社倉庫や借庫も検討する。また、一部は手掛けているが、ジャワ島以外への倉庫展開も進めていく。

倉庫面積7倍・14万平方メートル超NEXロジスティクスインドネシア

今年3月開業した「ブカシロジスティクスセンター」は日通グループが海外で運営する倉庫規模としては最大級

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スカルノ・ハッタ国際空港近くの自社上屋と自社トラック

 日通インドネシア物流は1997年の設立。本社は東ジャカルタのチャクンにある。陣容は444人。海上輸出貨物取扱量は2014年から18年の5年間で倍増した。仕向け地の割合はアジア8割、残りを欧州と北米が半々。営業面では、仕向け地別では欧州、北米、産業別ではアパレル、食品関連などの顧客を開拓する。営業量倍増について、「日系メーカーにおける輸出の取り扱いをさらに増やしていく必要がある」と松田社長は語る。 同社は各種認証を取得している。例えば、ジャカルタ近郊のチカラン保税物流センター(西ジャワ州)では保税物流セ

 インドネシア日通は2001年の設立。本社はスカルノ・ハッタ国際空港に置く。陣容は238人。輸出航空貨物取扱量は同国では欧米系メガフォワーダーを抑え、地場フォワーダーと1位、2位を争う。仕向け地の割合は重量ベースでTC1は15%、TC2は15%、TC3は70%。海上と同様、TC1、2を伸ばしていく。 同空港では上屋スペース1200平方メートルがあり、そのうち600平方メートルは保税蔵置場。輸入貨物到着後、航空会社上屋から自社上屋に持ち込み、内容点検などが可能。そのため、顧客の納期に合わせて保税蔵置場から出荷できる点が強みだ。同上屋ではTAPA認証のクラスAを取得済み。また、17年10月には同国税関総局からAEO認証を取得している。 同空港貨物地区内事務所には、約50人が常駐し、24時間体制を構築済み。また、スラバヤ(東ジャワ州)でも深夜

 南アジア・オセアニア日本通運は2016年、海外の重量品輸送・各種プラント事業を総括する「NEXグローバルエンジニアリング」を設立した。東南アジアでインフラ整備や工場建設が進み、風力発電設備・工場設備や機器の据え付け・組立工事の需要が高まることを見据えた。本社があるシンガポールでは石油化学産業の一大集積地であるジュロン島でメンテナンス業務を手掛けている。タイではタイ日通エンジニアリング、ベトナムではベトナム日通エンジニアリングがそれぞれ設備搬入、据え付け業務などを展開している。 インドネシアではかつて、大型プラント関連の据え付け工事などを手掛けていた。昨年9月、ジャカルタに駐在員事務所を開設し、需要調査を進めている。従来の大型プラン

ンター(PLB)の認証を取得している。対象分野 は 17 年3月 に 食品関連、 同年 7 月に 電機・ 電子関連で取得した。食品関連の認証取得は日系物流企業で初。松田社長は「実際に輸出入で活用されているケースはある」といい、顧客への営業展開も進める。

帯に輸出オペレーションが可能な体制を構築済みだ。ジャカルタからの国内接続では、例えば、カリマンタン島東部バリクパパン(東カリマンタン州)向けにジャカルタから現地の貨物航空会社で転送するなど、強みを持つ。 認証面では18年4月、ハラル認証を取得した。同年6月には日通インドネシア物流、同年7月にはNEXロジが取得。3社で航空・海上フォワーディング、倉庫保管、配送までの包括的なハラル製品の一貫輸送体制が確立している。

ト 関連 にこだわらない方針で、鷲山社長は

「われわれは、フォワーディングの先にある設備・重量物の運搬、据え付けなどをターゲットに据える。南アジア・オセアニア地域全体で物流強化を進める中でのオプションでもある」という。 インドネシアで総合物流体制を整え、日通グループの長期ビジョン実現に貢献していく。

海上貨物取扱量5年間で倍増

ジャカルタ・スラバヤ体制が強み

フォワーディングと一体で

日通インドネシア物流

インドネシア日本通運

NEXグローバルエンジニアリング

引越し作業の様子

日本での製造設備の工場搬入の様子

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港に、日本人を常駐させ、日本品質のサービスを強化している点にある。航空、海上とも自社通関ライセンスを持つ。同空港事務所には自社保税倉庫があり、通関前の一時保管対応が可能。配送サービスは24時間提供する。今年、新たに「オート・ゲート・サービス」の許可を税関から得た。航空輸入貨物は、税関から輸入許可が下りた後、24時間以内の搬出が可能となった。対象貨物は緊急品で混載は不可。通常は夕方に許可が下りた場合、翌日の出荷となる。

 近鉄エクスプレス(KWE)は、新中期経営計画(2019~21年度)の 営業戦略で、アジア域内およびアジア発着物量の拡大を掲げる。その中で、重点強化国にインドネシア、ベトナム、ネットワークの拡充でバングラデシュ、スリランカを挙げている。 インドネシア現地法人の楢崎達哉社長は重点強化国での取り組み姿勢として、「輸入は経営基盤強化のため、輸出は物量を伸ばすため。フォーカスは海上輸出だ。NVOCCとしての特徴を全面的に出して伸ばしていく」と語る。海上輸出貨物取扱量は毎年8%伸ばす目標だ。 KWEグループのインドネシアの体制では、近鉄ワールドエクスプレス・インドネシアが航空、海上フォワーディング、通関業などを手掛ける。ジャカル

タ、スマラン(中部ジャワ州)、スラバヤ(東ジャワ州)の自社拠点でジャワ島全域をカバーする。 16年1月には同国に進出する日系・外資フォワーダーの中で初めてAEO認証を取得した。 近鉄ロジスティクス・インドネシアは倉庫業を行い、国内配送、離島配送、設備搬入、据え付け作業も手掛ける。APLロジスティクス・インドネシア

(APLLI)はジャワ島内や離島配送など国内ディストリビューション、輸送進捗管理、バイヤーズコンソリデーション、地方ディーラー向けにはコンテナを利用した完成車輸送のオートダイレクトサービスを提供している。 近鉄ワールドエクスプレスインドネシアの強みのひとつは、スカルノ・ハッタ国際空港とタンジュンプリオク

重点強化国で海上輸出徹底強化■近鉄エクスプレス

インドネシア現地法人の楢崎達哉社長

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が、効率的に顧客を訪問できる体制とする。営業強化と平行してナショナルスタッフを含めた営業人材の育成も進める。オペレーション面では航空輸入貨物を効率的に配送するため、自社混載トラックを仕立てている。 高橋社長は「東南アジアでインドネシアは、ベトナム、タイに続いて成長が期待される国だ。ロジスティクスのチャンスもある。可及的速やかに、より積極的に、かつ、広範囲に営業出来る体制を整備し、ビジネスを大きくしていくことがミッション」とする。

 商船三井ロジスティクスのインドネシア現地法人は、フォワーディングを手掛けるMOLロジスティクス・インドネシアと倉庫運営を行うMOLロジスティクス・ウェアハウスの2社がある。MOLロジスティクス・インドネシアは2013年の設立。陣容は22人。日本人駐在員はそのうち、今年6月着任の高橋覚社長を含め2人。ジャカルタ本社のほか、スカルノ・ハッタ国際空港に事務所を置く。MOLロジステ ィクス・ウェアハウスは14年の設立。ジャカルタ北東部マルンダ地区に本社拠点と倉庫を構える。賃借倉庫の延べ床面積は約4000平方メートル。 フォワーディング事業の18年の売 上高構成は、航空の輸出40%、輸入 28%、海上の輸出10%、輸入22 %。航空、海上とも輸出入通関は自

社化している。航空では昨年、国際航空運送協会(IATA)ライセンスを取得。代理店起用費の削減にもつなが った。 航空、海上とも取扱量自体は堅調であり、主力は自動車部品関連と電機電子関連。シンガポール法人と連携し、航空機関連も取り扱う。高橋社長はさらなる成長に向け、「核となる顧客を増やしていかなければならない。まずはビジネスを何でも取り込んでいこうという姿勢だ」と述べる。 その一環として、新たな営業拠点を日系メーカーなどが集積するジャカルタ東部の工業団地地域に開設する計画を持つ。現在はジャカルタ本社から各団地の顧客を訪問している

営業・人材育成の体制整備を■商船三井ロジスティクス

インドネシア現地法人の高橋覚社長

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 南海エクスプレスのインドネシア 現地法人「NANKAI.AGL」(南海A GL)は2012年の設立。出資比率は 現地大手物流会社、ATT(ANUGE RAH TANGKAS TRANSPOR TINDO)グループ51%、南海エクス プレス39%、エージーエル(AGL)10%。 南海AGLの本社はスカルノ・ハッタ国際空港の近接地にある。陣容は綱目圭アシスタントゼネラルマネジャーを含め11人。売上高の構成で航空輸出が7~8割を占める中、海上輸出の拡大にも注力している。また、「貨物はガーメント系が中心で底堅い需要があるが、機械部品やプロジェクトカーゴなどを受注し、取扱品目を増やすことが課題」(綱目アシスタントゼネラルマネジャー)とする。 同社はATTとは同国内の物流ネットワークの活用で連携している。ATTは中国のeコマース(EC)大手企業とグローバルパートナー関係にある。そのため今後、EC分野やロジスティクス事業で連携の可能性を検討していくとする。

 西日本鉄道国際物流事業本部(にしてつ)のインドネシア現地法人は2004年8月設立。15年に現地パートナーが同国大手物流企業RPX(本社=ジャカルタ)に変更となった。本社はジャカルタにあり、そのほか、スカルノ・ハッタ国際空港近郊のチェンカレン空港支店とスラバヤ支店(東ジャワ州)がある。今年度中にはジャワ島内にもう1拠点を開設する予定だ。 売上高の構成は、航空60%、海上40%。航空では17年末にスカルノ・ハッタ国際空港に保税倉庫兼事務所を構え、自社オペレーションに切り替えることで質の高いサービスを提供している。海上でも今年度後半にジャカルタ事務所で自社オペレーションに切り替えた上でカスタマーサービスと輸出入通関を提供していく。 一方、保税物流センター(PLB)制度について松尾隆一 社長は「港や空港に近い所に在庫を持ち、国内に流通させるような保税倉庫需要は大きい」とし、倉庫と国内輸送専任 の営業を1人採用するなどして市場調査を開始している。

現地物流大手ATTと連携を強化■南海エクスプレスインドネシア

拠点拡大、オペレーション自社化■にしてつ・インドネシア

綱目圭アシスタントゼネラルマネジャー

松尾隆一社長

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 日新はインドネシア国営鉄道の貨車部門関連会社(KERETA API LOGISTICS=KALOG)と協業し、ジャカルタ~スラバヤを回送する海上コンテナを利用した鉄道輸送サービスを提供している。1日2便程度、800キロのJIT納入が実現しており月間輸送量は2000トン。日系物流事業者での定期的な鉄道輸送の利用はまれ。同国では昨年8月から過積載トラック取り締まりが強化され、荷主から中距離の鉄道輸送に引き合いもある。 日新グループ(現地出資パートナーを含む)の保有車両は現在の42台から100台まで増やす計画だ。昨年9月にはタンジュンプリオク港近接地にトラックプール用地を開設した。自社車両を中心に東ジャワ州、スマトラ島、スラウェシ島にも輸送ネットワークを拡充していく予定。 一部ライセンスを荷主に代わり取得する代行サービスも提供中で、現地法人の高橋勲社長は「(本格展開できれば)他社との差別化になる」。新たにeコマース物流、また、ハラル認証とPLB(保税物流センター)の認証取得へ準備も進める。

 アジアの経済ニュース・ビジネス情報を発信するNNAによると、インドネシア運輸省は7月7日、タンジュンプリオク港の営業日を週7日24時間に拡大する方針を明らかにした。現在の営業日は週4~5日。関税局や出入国管理局、港湾運営会社、銀行などが、今後毎日24時間体制で対応することになる。実施時期は明らかではないが、ジャカルタの渋滞緩和が期待される。NNAによると、また、ブディ運輸相が現在導入している通関の申請・届け出手続きを電子化した「インドネシア・ナショナル・シングル・ウィンドー

(INSW)」システムや、港湾関連の手続きを電子化した業務管理システム「イナポートネット」などを統合するなどして、港湾施設の利便性や効率を強化していく方針を示した。

首都移転は実現するか

 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は今年4月29日の閣僚会議で、首都をジャカルタからジャワ島の外に移転する方針を決定した。1945年の独立後、首都移転はたびたび議論されてきたが実現していない。同国の長期的発展に向け、首都移転が実現した場合、新たなロジスティクス網も求められる。現地の日系物流事業者は状況を静観している。

国内配送体制を強化■日新・インドネシア

高橋勲社長

T O P I C

タンジュンプリオク港を24時間化

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 日立物流グループは同国に3社の現地法人がある。BMLは1996年設立。拠点はジャカルタ本社のほか、カラワン(西ジャワ州)、スラバヤ、タンジ ュンプリオク港、スカルノ・ハッタ国際空港、スマラン(中部ジャワ州)にある。TSIDは2013年6月設立。ジャカ ルタ本社のほか、拠点はスラバヤとチカランにある。バンテック・インドモービル・ロジスティクスは自動車関連物流専門で11年12月の設立。本社はプルワカルタ(西ジャワ州)に構える。

 日立物流は今年9月にもインドネ シアの自社倉庫「チカラン物流セン ター」(西ジャワ州、デルタシリコン工 業団地内)で保税物流センター(PL B)の認証を取得する予定だ。PLBは昨年5月、先行してスラバヤ(東ジャワ州)の「東ジャワ物流センター」で取得済み。同州での許可取得は日系物流企業では初という。 現地法人で主にフォワーディング事業を手掛けるブルディリ・マタハリ・ロジスティック(BML)の大宮智社長は「荷主が保税保管を外部化することで、自社用地を増産対応で活用できるほか、キャッシュフローの改善にもつながる。われわれは複数社の貨物を保税保管することが可能となり、ビジネスにもなる」とする。 チカラン物流センターでは「総合ロジスティクスパーク構想」を検討していく。同センターは2016年4月、

本格稼働した。敷地面積約9万平方メートルのうち、現在、約2 万5000平方メートルを利用中。施設は2階建て。延べ床面積は約4万平方メートル。PLBの機能を付加やジャカルタに近い立地も生かす。 主に3PL、倉庫、国内業務を手掛ける日立トランスポートシステム・インドネシア(TSID)の坂本勝重社長は、「PLB以外にインドネシア全土に向けて日当り200台超を配車する配送ネットワークや教材の全土宅配サービスなど、現在ある3PLのサービスメニューを充実させながら、他社との差別化を図っていく」と語る。機能面でTSIDは今年度上半期中にも、グループ会社2社で既に取得済みの品質マネジメントシステムの国際規格「IS9001」を取得する予定。

チカラン倉庫でPLB取得へ■日立物流・インドネシア

ブルディリ・マタハリ・ロジスティックの大宮智社長(写真左)と日立トランスポートシステム・インドネシアの坂本勝重社長

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ス・インドネシアが17年8月にジャカルタ港・空港発着の海上・航空フォワーディングで日系物流企業として初めて認証を取得。同年11月には倉庫業を手掛ける郵船ロジスティクス・ソリューションズ・インドネシアがMM2100工業団地(西ジャワ州)内の倉庫で認証を取得。日系物流企業で倉庫業務の認証取得は初。 今後の投資面では、まずは、ジャカルタ東部に集積する工業団地への展開を検討していく。

 郵船ロジスティクスグループはインドネシアで日系競合他社に先駆けて認証取得を進めている。2016年にはGDP(医薬品の適正流通基準)を同国内物流企業として初めてスカルノ・ハッタ国際空港で取得した。 同グループはグローバルで医療・医薬品物流の強化を進めており、GD P認証のほか国際航空運送協会(IA TA)の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」の認証も各地で取得している。東南アジアではインドネシアでの認証取得が先行しており、GDP認証は同空港に続き、18年3月にはタンジュンペラク港発着のFCL海上貨物輸送とジュアンダ国際空港発着の航空貨物輸送で取得した。スラバヤ近郊の物流企業で初の認証という。競合日系企業で認証に向けた目立っ

た動きはない。 同国現地法人3社のコミッショナーである川田和男氏は「成長が期待される産業としてケミカル関連や医薬品関連・医療機器関連にグローバルで注力している。従来の日系顧客に加え、外資系大手顧客の案件も獲得するなど顧客数は増加しており、需要も増えている。GDP認証取得で顧客の期待に応えていく」。現在、GDP認証範囲を医療機器へ広げる対応も進めている。 ハラル認証は今年10月17日施行予定のハラル製品保証法への対応も見据え、他社に先駆けてノウハウを蓄積する狙いもある。フォワーディング事業を行う郵船ロジスティク

GDP・ハラル認証で先行■郵船ロジスティクス

現地法人3社のコミッショナーを務める川田和男氏(写真左から2人目)と幹部

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「プラント建設の山九」―。1974年6月、山九運輸機工とインドネシア国営石油公社プルタミナは合弁で山九インドネシア国際を設立した。石油・石油化学・アルミなどのプラント建設プロジェクトを中心に手掛けてきたその歴史は、インドネシアの国造りと発展とともにある。2014年3月には同国初の自社倉庫「チカランロジスティクスセンター」を開設。倉庫拠点も拡大していく。

ア国際の2018年の売上高は、プロジェクト案件が実績を大きく押し上げた。昨年がプロジェクトのピークで今年いっぱい手掛ける「セントラルジャワ石炭火力IPPプロジェクト」、また、昨年開始し、今年がピークとなる「タンジュンジャティB石炭火力発電所拡張プロジェクト」を手掛けている。

地域密着と多様な機材

 「プラント建設の山九」の名前で通るように、同社は同国発展に深く貢献してきた。設立時にプルタミナと合弁して以降、ビマンタラグループや国営製鉄クラカタウ・スチールの関係会社(現株主)が株式を保有した時期もあった。 大型のプロジェクト輸送を一貫して手掛けるためには、数年間にわたる現地調査、綿密なプロジェクトのプランニング、地域との連携が重要という。以前に手掛けた「タングーLNGプロジェクトの第1期」ではバンテン州チレゴンにロジスティクス拠点を構えた。世界から調達する資材を1カ所に集め、工場の建設スケジュールに合わせてニューギニア島の西パプア州の現場に送り出した。同プロジェクトではまた、現場作業員に地元の人々を雇用した。原田幸一社長は「ヘルメットを被ることを教えるだけでも大変。ただし、地域に受け入れられなければ大型プロジェクトは絶対に円滑

総勢3200人体制

 山九は2018年10月、創業100周年を迎えた。プラント・エンジニアリング(PE事業)、オペレーション・ビジネスサポート(BS事業)、ロジスティクス(LS事業)を有機的に結びつけた「ユニーク」なビジネスモデルを展開している。PE事業はプラント建設の企画段階から、設計・調達・プラント輸送・建設・試運転、また、建設

後の設備メンテナンスまでをトータルでサポートする。BS事業は工場構内の操業・物流、LS事業は調達から販売までのサプライチェーンと物流を総合的に提供する。 インドネシア現地法人の山九インドネシア国際は、地域統括会社である山九東南アジアホールディングスの傘下にある。設立は1974年。陣容は総勢約3200人。そのうち日本人は44人(出向者28人)、ナショ

ナ ル ス タッフ 約1400人、契約スタッフ約400人、協力会社スタッフ約1400人。別会社としてフォワーディング事業を手掛ける山九ロジスティクスインドネシアがある。 山九インドネシ

大型プロジェクトで貢献倉庫拠点をさらに拡大を

山九インドネシア

山九インドネシア国際の原田幸一社長

プラント建設で国造りに貢献してきた

ジャワ島西部バンテン港での作業の様子

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に進まない。そういう意味でも地域、国家の発展に少しは貢献できているのでは」と語る。 あらゆるプロジェクトに対応してきた歴史があり、自社保有機材は充実している。プラントや風力発電など大型構造物の輸送で利用するクレーンは、クローラークレーンの吊り上げ能力550トンと250トンをそれぞれ1台保有する。トラッククレーンは25トン~250トンまで数十台ある。超重量物を輸送する多軸トレーラー車両は、1軸当たり最大で45トンの荷重に対応する。同社は総軸数88軸の車両を保有しており、対応荷重は約2700トンだ。これら保有機材に加え、プロジェクト輸送の前線基地をチレゴンに構え、クレーン、ドーリーな

ど機材を備える点を強みとする。

チカラン大型倉庫でPLB

 同国で初の自社物流センター「チカランロジスティクスセンター」は14年3月、KITIC(西ジャワ州)に開設した。 これまでエネルギー関連や石油・石油化学などのプラント輸送・建設など、プラント・エンジニアリング事業を中心に事業展開してきたが、自動車部品の保管・配送などの物流需要の高まりを受け、サードパーティー・ロジスティクス(3PL)業務提供のため開設に踏み出した。16年1月には2期倉庫が稼働した。 同センター全体の敷地面積は6 万3792平方メートル。そのうち1期

倉庫は平屋建て。倉庫面積は9322平方 メートル。2期倉庫は2階建て。倉庫面積は1階が1万3464平方メートル、2階が 1万5165平方メー トル、合計2万8629 平方メートル。同敷地内には危険品倉庫も併設している。倉庫面積は1985平方

メートル。 倉庫内には同社が独自開発したワイヤレスハンディシステムを標準導入している。作業員はタブレット端末を使用しながら、高精度な在庫管理・作業進捗管理を行っている。顧客要望に応じてEDI対応も可能だ。第1期倉庫は稼働後、自動車部品関連ですぐに埋まり、第2期倉庫も満床だ。第2期倉庫では、主に日系の大手小売業の日本向け輸出貨物を取り扱っている。 同センターでは昨年4月20日付で、繊維製品の輸出分野で保税物流センター(PLB)の認可を取得した。同分野の認可取得は日系企業初という。PLBの専用エリアは1万平方メートル。 物流分野では今後も倉庫基点で、ロジスティクスの強みを生かしながらフォワーディングや国内輸送ニーズを取り込んでいく。現在、自社倉庫はチカランとチレゴンにもある。倉庫はほかに、スラバヤ(東ジャワ州)、メダン(北スマトラ州)、プカンバル(スマトラ島中部リアウ州)に展開中。今後はパレンバン(南スマトラ州)、マカッサル(南スラウェシ州)などに展開する計画だ。原田社長は「倉庫、輸送、国際物流それぞれの強みを生かしながら、事業を強化していく」と語る。

チカランロジスティクスセンター内には独自開発したワイヤレスハンディシステムを標準導入している

チカランロジスティクスセンターの外観

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