ミラー閉じ込めの現状 - university of electro-communicationsjasosx.ils.uec.ac.jp › jspf...
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難ミラー閉じ込めの現状 三好昭一,北條仁士
(筑波大学プラズマ研究センター)
(1989年8月26日受理)
Present Status of Mirror Fusion Research
Syoichi Miyoshi and Hitoshi Hojo
(Recei▼ed August26,1989)
Abstract
We review present status of mirror fusion research.GAMMA10results about ther・
mal barrier/plug potential formation,axial con伽ement,radial transport and stability
are mainly presented.Scaling laws obtained experimentally are compared with existing
theories.The prospect for a tandem mirror reactor is discussed.:Experimental results
in other tandem mirrors are also briefiy reported.
Keywords:
tandem mirror,GAMMA10,potential con丘nement,Pastukhov scaling,thermal ba皿ier,
radial transport,neoelassical di鐸usion,M皿)stability,reactor,
1.はじめに
核融合研究を原理的に大きく分類すると,磁場閉じ込め方式のトーラス系,開放端(直線)系と慣性
閉じ込め方式の3種類に表現できる。各々に利点と欠点があり,また研究の手法も異なる.ここでは開
放端系,特にミラー系閉じ込めの最近の進歩を解説する.
ミラー型閉じ込めは磁力線に捕捉された荷電粒子のもつ断熱不変性を閉じ込めに利用して考え出され
た方式であるが,粒子のミラー端からの損失が閉じ込めに対する最大の欠点であった.しかし,この10
年間に発展してきたタンデムミラーにより,この端損失の問題は解決され,今後の発展が有望と期待さ
れるに到った.
タンデムミラー方式はミラー磁場とプラズマ中に形成される電位を効果的に組合わせることにより,
プラズマの閉じ込めに対して大きな進展を見せた.日本のガンマ6,ガンマ10,RFC-XX-M,HIEl,米
国のTMX-U,Tara,Phaedrus,ソ連のAMBAL(現在タンデムミラーとして建設中)等多くの装置が
Plαs耀R6s6αz6hC傭67,U吻6纏yoゾT3%肋δα,T5祝肋δα305。
227
核融合研究 第62巻第4号 1989年10月
互いに競争し興味ある成果を発表してきたが,予算の問題等で,現在米国ではPhaedrus,ソ連では
AMBALだけが研究を継続している.
日本のガンマ10の実験では,単一ミラーの場合の閉じ込めより3桁以上もの長時間閉じ込めに成功
し,旧来のミラー型閉じ込めの考え方を全く変えるに到ったと言える.また閉じ込めに関するスケーリ
ング則も着実な伸展と確立を示しており,1988年の二一スのIAEA国際会議における報告は,サマリー
において世界的に高い評価を得た.その後実験でも更に高いプラズマパラメータを得ており,世界最高
の成果を挙げている.従って以下ではガンマ10実験の成果を中心にして,ミラー型閉じ込めの現状と
将来の方向について解説したい.
また,ミラー閉じ込めに関するいくつかの解説や総合報告として参考文献1-5を紹介しておく.
2.タンデムミラーの物理と実験の現状
ミラー磁場によるプラズマ閉じ込め原理では荷電粒子のエネルギーと磁気モーメントの保存性から,
磁力線に対して大きなピッチ角を持っ粒子はミラー磁場に沿って運動するとき磁力線方向の運動エネル
ギーが垂直方向のエネルギーに変換されるため,磁力線方向の運動エネルギーが丁度ゼロになる点で反
射されて閉じ込められる.いまミラー比Rの単一ミラーを考えると粒子の閉じ込め条件は,中央面で
の磁力線に垂直および並行方向の速度成分をそれぞれ”⊥,列とすると,遭≧”㌔/(R-1)で与えら
れる.この閉じ込め領域内にあるプラズマ粒子も粒子間衝突に伴うピッチ角散乱によって非閉じ込め領
域(ロスコーンと呼ぶ)に落ち込んでゆき,結果ミラー端から損失していく.これから単一ミラーでの
粒子閉じ込め時間は大体粒子の衝突時間程度と評価できる.イオンーイオンの衝突時間をτii・として,
粒子閉じ込め時間6)
τP罵1.8τiilo910R (1)
が理論的に得られている.詳しくは電子一電子の衝突時間が一般にイオンーイオンの衝突時間より短く,
従って電子が先に逃げようとするためミラー内に正の両極性電位が形成されるので,その効果を取り入
れた解析が必要である.単一ミラーの一つの欠点は,閉じ込め時間が磁場形状を規定するミラー比に強
く依存せずイオンーイオン衝突時間τiiの大きさで決まるため(プラズマが高密度になると)比較的高
温でも閉じ込め時間がそれほど長くならないことである.更に大きな問題点は,速度空間にロスコーン
が存在するため粒子の分布関数が反転型分布となり,結果DCLC等の強い速度空間不安定性が生じる
点であった.そしてこの不安定性は粒子の端損失を増大させ,閉じ込め時間の大きな劣化を導いた.後
には(ロスコーンを埋めるための)外からの冷たいプラズマの注入によって,この不安定性の抑制には
成功した.
2.1タンデムミラーと電位閉じ込め
磁場による閉じ込め効果に加えて更に電位(の障壁)による閉じ込めを用いて端損失の抑制,即ち軸
228
解 説 ・ミラー閉じ込めの現状 三好,北條
方向の閉じ込めの改善を目的としたのがタンンデムミラーである7’8).電位によるプラズマの閉じ込め
比例則は,理論的にはフォッカー・プランク方程式を解析的に解いて求め,られたパスツコフの式9’ゆで
与えられる.即ち,電位壁の大きさをφとすると粒子閉じ込め時間は
τ・一τ・9(・R)讐exp(讐)が(舞),
⑳)一晋(・+・な)㌦[器客1著]・κ蝦
1+ツ/2 T 1(ツ)=・+ノ/4・、ツ竺π ・ ・「 (2)
で与えられる.ここでτ0はイオン(τii)または電子(τ,。)の衝突時間で,Rはミラー比であり,また之
=1(電子),0.5(イオン)である.(2)式はフォッカー・プランクシミ五レーション結果ξの比較で
その正しさが確認されている。また粒子の端損失に伴うエネルギー閉じ込め時間τEはτpを用いて
τE -1 3 1 一= =一’ (3) τP 1+(2/3)(eφ/T)r1(T/θφ) 2 θφ/T+1
で与えられる、これからεφ/T=3-4に対して,τE/τp~1/3を得る。この電位による閉じ込めの原理
は世界で最初のタンデムミラーガンマ6で実証された11).その後多くのタンデムミラーでも証明されて
1
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8eam N81Probe
▲ qGunBeam NBl NBIProbe
!Φ31.5kV C 「
%1φb竃t2kV ΦC=1・6kV
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一IO -5 Oz l耐
5 lO
/・
α5需
ぎ 評0
図1。ガンマ10の概要図とプラズマ諸量の軸方向
分布(白丸,黒丸は測定値)
いる.ガンマ10では現在,τiiの1000倍以上の
粒子閉じ込めの改善に成功している12).このよう
な閉じ込めの改善は閉じ込め電位をより効率良く
形成する働きを持つサーマルバリア玉3)の形成の
成功に依っている.
タンデムミラーにおける電位形成をガンマ10
を例にとって簡単に説明する.図1にガンマ10
の概略図を示す.ガンマ10はセントラル部とそ
の両端にあるプラズマのMHD安定性を確保す
るためのアンカー部,更にその外側のサーマルバ
リアと閉じ込め電位を形成するプラグ・バリア部
から成っている.セントラル部は約5m,全長は
27mである.ガンマ10磁場配位の特徴の一っは
磁場の軸対称化で,アンカー部周辺の磁場の非軸
対称成分による粒子の半径方向へのドリフトが,
従ってこれに起因する新古典拡散が極力小さくな
るように設計されている1禽15),また電位形成にあ
,229
核融合研究 第62巻第4号 1989年10月
たるプラグ・バリア部は完全軸対称なミラー磁場配位になっている.
2.2 電位形成と軸方向閉じ込め
次に電位形成について話をする.プラグ・バリア部における電位形成はスロッシングNBIとω。。と
2ω。。のECRHを用いて成される.スロッシングNBIの外側の回帰点近くに共鳴層をもつω,。ECRH
でセントラル部から流出してくる低温電子を加熱して高温のプラグ電子を作る1この時プラグ・バリア
叩Sl。shlngNBl 部の中心はスロッシングイオンの谷間1こなってお
にRF り,従って低温電子とプラグ電子がこのスロッシ Barrier ECH =〉_ Plug ECH ングィオンと荷電中性化しようとするように分布 嶋」N8緕lE・つ
ごトし亜呂食芒Φ一yΦ ζ り
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図2.
鋳匪ヨ r 、、
倉δ㌔一 q
0 10 20 30 UmsIセントラル部線密度,バリア電位,
閉じ込め電位,端損失流束の時間変化.
恥 B
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nc
電位捕捉イオンnit
磁場捕捉
高温電子
\ nbh!’、プラグ電子 ! 価㌧/ n 一、/ ・ Pノ \ 、
図3.電位とイオン及び電子密度の軸方向分布.
しているとすると,電位分布はプラグ・バリア部
中心面で極小に(電子に対しては極大に)なり,
またプラグ部(のNBIの回帰点かω。,ECRHの
共鳴層)では極大になる.プラグ・バリア部中心
面で極小となったこの電位分布はセントラル部の
低温電子とプラグ部の加熱された高温電子の接触
によるエネルギーのやりとりを阻止する働き(サー
マルバリア)をもつので,,プラグ部の電子をセン
トラル部の電子に比して高温に保持することがで
き,結果プラグ電位の形成をより効果的にする働
きを持つ.プラグ・バリア部中心面における2ω。,
ECRHによる超高温電子の生成はバリア部の電
位をより深くする,従ってプラグ電位より大きく
する働きをもつ.図2に典型的なショットの例12)
を示す.各加熱系の重畳により閉じ込め(プラグ)
及びバリア電位が形成され,それに伴い(閉じ込
めの結果と考えられる)粒子の端損失流束の減少
とセントラル部密度の上昇が観測されていること
が分かる.
電位形成の理論としては,現在二つの解析があ
る.先に図3で電位と磁場の各値を定義しておく。
一つはECHの電場が弱い場合の解析(Weak ECH:
理論16))で,この場合ECH(波動による)拡散
は粒子間衝突によるピッチ角拡散に比して十分小
230
解 説 ミラー閉じ込めの現状 三好,北條
さいと仮定でき,従ってプラグ部の電子はロスコーン境界近傍を除いて大体Maxwelhanで近似でき
る.フォッカー・プランク方程式の解析解から定常状態を仮定し,またプラグ部での電子の電離生成率
がセントラル部からの流入率に比して小さいとすると,プラグ電位φ,とバリア電位φbに対して次の
修正ボルツマン則が成り立つ.
・(㈱鴫㎞[(舞磯] (4)
1.4
np//呵ii;
死3αη・ φぎ1.2
! /ぜ 1 ● / / ,∠α7-1.0
も≦
メト
岳α8 ん● ● ノ /さ !●ヴ 0.45鼠α6 / 92 ● /… Q_α4しi…i
! / 一一Strong ECH?02 / 一.Weak ECH / / ●ELA乙 。z〃 ・EuS¢r。mししNし)’“0 0 Q2 Q4 Q6 α8 1.0
τHERMAしBARRIER DEPマH¢b lkV⊃
図4.閉じ込め電位のバリア電位依存性.
(実線と破線は理論曲線)
一〇.5’〉
Φ
ぎ
評 α4忠
2廻0。3
a……
トーα2
8#りの一〇.1田
ムSX Absorption
撚臨十十謝き?Fせ,
謀イ・●・●
●
● 0
・ポ螂爵・
●
十〇
Centraこ
0 0.2 0.4 0.6 0.8
Barrier Oep吐h φb lkV量
図5.セントラル部及びプラグ部の電子温度
のバリア電位依存性.
ここで,Tp,%はそれぞれプラグ電子の温度と
密度,またTb。,ηb,はそれぞれプラグ部との接
触面,即ちバリア中心面での低温電子の温度と
密度である.一方ECH電場が十分に大きい場合
には(Strong ECH理論17)),プラグ電子の分布
関数はECH拡散がピッチ角散乱より勝るため,
マクスウェル分布より大きくずれて加熱特性線に
沿ってフラットな分布になる.この場合(4)式
に代わって,
醐)一塩(3携侮1藷
[塩(Bl転一1)]罫(5)
が得られる.Strong ECHの場合の特徴は密度と
電位の関係がWeak ECHの場合の10g-expの関
係とは違ってベキの形になっていることである.
図4にガンマ10におけるφ,とφbの関係の実験
結果を示す18).黒印はELA(end-10ss analyzer)
で計測した値であり,一方白印は日米協力事業を
通じてLLNLから持ってきたELIS(end-lossion
spectrometer)で測ったデータである.両者の測
定値は良く一致している.また図4において,実
線と破線はそれぞれ(4)式と(5)式にセントラ
ル部からの低温電子に対してボルッマン則
%一鱗exp(一舞) (6)
を仮定して得られるStrong ECHとWeak ECH
231
核融合研究 第62巻第4号 ig89年10月
の理論曲線(Tb。はセントラル部の電子温度に等しいと考えると,温度Tp,Tb,はそれぞれ次の図5の
データからφbの関数として求められる;Tp=0.6φb+0.15,Tb。=0.23φb+0.03)である.φbが小さい
場合両理論の間に定量的差はあまりないが,φbが大きくなるとStrong ECH理論の方がより大きいプ
ラグ電位を形成できる。実験と理論との一致は良く,実験データ嬬φbが大きくなるに従ってWeak
ECHからStrong ECHへと移行する傾向を示しているように見える.また図5に,サイクロトロン放
射,トムソン散乱,Soft X-ray等で計測されたプラグ部とセントラル部の電子温度とバリア電位との
関係を示す19).バリア電位の増大と共に両方の電子温度の上昇が見られるが,プラグ部の電子温度の方
が勾配がきつい.セントラル部ではECRHを行っていないことから,これはECRHで加熱された高
温のプラグ電子の損失が一部はセントラル部へ往来し,結果セントラル部の電子を加熱していると解釈
される. 一ECRH AbsorゆtionProfi荘e O Electron Flow 電位形成における重要な因子はECH拡散によ ● Plug Potentiaこ るプラグ電子のロスコーンヘの吐き出し効果20)
1.O
o●ξ
⊃
≧歪0.5
嵩ρ く)
o o
!\
//\.
o \
o o -5 0 5 X(cm) qt pこug Region
図6.プラグ部でのECRH吸収電力,電子端損失流束,
電位の径方向分布.
今後の課題としては,プラグ電子の分布関数の形を実験的に明らかにすることが重要である.
にはフォッカー・プランク方程式にECH拡散の効果を取り入れたWeak ECHとStrong ECHの両理
論を補間するような解析が必要である.最近Cohen等22)は衝突によるピッチ角散乱とECH拡散の両
方の効果を取り入れたフォッカー・プランク方程式を解析しているが,電位と密度の関係に関する詳細
な報告はまだ無い.バリア電位に関しても,(6)式のボルッマン則に代わるいくつかの新しいモデルが
検討されている2亀24).
TMX-Uの実験に関する最近の報告宅は,電位形成においてスロッシングNBIを必ずしも必要とし
ていない24).ただし閉じ込め電位は100V程度で小さい.これに関しても電位形成機構の解明が今後
の課題として残る.一方TaraやPhaedrusではECHやNBIを用いずにICRFだけで(値は小さい
が)閉じ込め電位の形成に成功している25”27).これはICRFもプラグ部電子の吐き出し効果を持っと
考えられ,Taraでは電子のBounce共鳴加熱25〉,PhaedrusではICRF電場のE、成分による電子加
と考えられる.即ちECH拡散でプラグ電子が系
外に吐き出され,取り残されるイオンとの両極性
条件から正の閉じ込め電位が形成される.ガンマ
10では,図6に示すようにプラグ部の電位の径
方向分布,電子の端損失流束の径方向分布が
ECHパワーの放射分布と良く一致している21).
これはECH拡散により駆動されるプラグ部の電
子の端損失が電位形成に効いていることを支持す
るデータである.
理論的
232
解 説 ミラー閉じ込めの現状 三好,北條
速26)がそのメカニズムであると考えられている.
核融合炉に右いて定常運転を行うには,プラグ電位形成に寄与するバリア電位を定常的に維持する必
要がある。セントラル部からプラグ・バリア部へ往来してくるイオンの衝突による捕捉,バリア部での
低温イオンの電離生成等でバリア電位は段々埋まって消滅していく.いまバリア電位の維持時間をτbd
とし,これとセントラル部密度との関係を示すと図712)のようになる.実験的にはセントラル部密度の
10
(lo
へ
9×10ンlrコ
お
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0。1
●
● ウ ウ Oo 鴛
ノ夢
11 1210 10 Nc(cm’3)
図7.サーマルバリア維持時間のセントラル部
密度依存性.
増大と共にバリア電位維持時間は短くなって行き,
このバリア電位の消滅をセントラル部からの捕捉
イオンの蓄積によると考えることができる,デー
タは次の実験式
τ[1一(3.5-5)×10-18π,(m}3)瑠2(keV) (7)
で近似される.この(7)式はフォッカー・プラ
ンクシミュレーション解析から得られたイオンの
捕捉率に関するFutch-L・Destr・の式2亀29)と数
値的に良く合っている.
従ってバリア電位を定常的に維持するには,こ
の捕捉イオンを何らかの方法で吐き出してやらね
1018
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図8.軸方向閉じ込め時問の閉じ込め
電位依存性(実線はパスツコフ比例則).
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図9』
0 4 8 12 1620 rc(cm)
セントラル部密度,電位,端損失
流束,閉じ込め電位の径方向分布,
233
核融合研究 第62巻第4号 1989年10月
ばならない.NBlの荷電交換を利用したポンピングの他にRFを利用したポンピングも考えられ,い
くつかの理論的モデルが出されて来ている30).今後この辺の実験が待たれる.
電位閉じ込めによる軸方向の粒子閉じ込め時問のスケーリング則を図81乳18)に示す.、認丸が軸上の
ELAで計測された実験データで,実線はビームプローブ等で計測された電位を用いてパスツコフ則か
ら計算した理論曲線(TiIIとη,は,Till=70eV,π,=1.1×1018m}3で一定)である.両者の一致は非
常に良い.元来パスツコフの比例則は1本の磁力線に沿っての粒子閉じ込めに関する比例則を記述して
いるから,実験値と理論曲線の一致は半径方向の閉じ込めもまた良いことを暗に示唆している.また図
91乳18)において上三つほそれぞれセントラル部密度,セントラル,バリア,プラグ部での電位,端損失
流束の半径方向分布を示している.そして4番目の図における白丸は2番目の図から得られる電位の実
測値であり,また実線は1番目と3番目のデータから得られる粒子閉じ込め時間にパスツコフ則を仮定
して逆算される電位の大きさである.この両者の良い一致も各磁力線に沿って粒子閉じ込めに関してパ
スッコフ則が成り立っていることを示唆するものである.
この様な軸方向閉じ込めに関するパスツコフ比例則の実験的検証は,TMX-Uでも行われている.
TMX-Uではτpllが約40msまでの範囲では実測値とパスッコフ則による計算値とは良く一致してい
る24).しかしながら電位形成に関しては,バリア電位φbが750Vに対してプラグ電位φ,は100~200V
程度で非常に小さい31).これはガンマ10におけるφb一φ,スケーリング則とは全く異なるデータである.
またRFC-XX-Mではセントラル部の電位の実測値とパスッコフ比例則を仮定して両極性条件から計算
した理論値との一致が示され32),これもパスッコフ比例則の正しさを指示するものである.
2.3径方向閉じ込め
タンデムミラーにおける電位閉じ込めによる軸方向の閉じ込めの飛躍的改善はミラー核融合への可能
性をつなぐ大きな要素である.次のステップとして,半径方向の閉じ込めが明らかにされるべき課題で
ある.開放端系においては,軸方向,半径方向と損失チャンネルが二つあるので,半径方向の輸送とし
て,電子とイオンが同時に損失する両極性輸送と電子とイオンが独立に損失できる非両極性輸送の二つ
の過程が考えられる.
非両極性輸送としては,アンカー部周辺の非軸対称な磁場に起因するイオンの新古典拡散33-35)が考
End Ptates
立L、.,
1且需1”i
Machlne WaU
ト_segmented仁 5in r 4in e
⇒5R↑1>et
図10.非両極性輸送計測の概要図。
234
解 説 ミラー閉じ込め㊨現状 三好,北條
10z§轟,邑1川,P陰し15, 1,昌1川甲5糊 ,,1“明。=
F - ・・1鯵∫雛・∫顎 1.1・
コr 「 一 10 …ぎ . 1 u》 = ● 讐
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ヒ 1 THEORY 苺 1。。zと 壬、 三 ■ コ [ ■ 。3 H l耐 u 響 , 量1 , 一 蓼 聖“1 一響 u 脚1 10 0 ! z - 3 邑 5 6 1 8 10 10 10 10 10 10 10 10 10
END PしATε RESl$TANC三lohml
図1著.非両極性輸送による径方向閉じ込め時間のエンドプレート
抵抗依存性(実線は新古典共鳴拡散による理論曲線).
えられる.パラメータ的には,共鳴プラトー領域の拡散になる.この非両極性輸送は,系全体としては
プラズマの損失が両極性条件に従うことから・,エンドプレートに流れ込む電流を計測することによって
評価できる.図10に示すように,系の全粒子数をN,エンドプレートと壁との問につないだ抵抗をR
とし,そこを流れる全電流を婿ETとすると,非両極性輸送による閉じ鰹!6時間はτ聖一N/堺ETで求
められる.ガンマ10における非両極性輸送に関する実験データと共鳴プラトー拡散に基づく理論計算
値との比較を図11に示す36)。理論では電子の非両極性拡散は無いとして,電子の軸方向損失流束rll,
と共鳴拡散によるイオンの径方向損失流束丁墨とを両極性条件乃1,一丁当で釣り合わせて計算され
る。実験データは理論曲線と概ね合っていると言える.これから半径方向の非両極性輸送はイオンの新
古典拡散であると考えられる.’
新古典拡散の理論計算はセントラル部で等電位面が円である仮定に基づいているが,ビームプローブ
による計測では,等電位面は円ではなく少し楕円形になっていることがガンマ10で観測されてい
る1乳37).このような等電位の円形からのずれはECRHマイクロ波の放射方法に依存していると考えら
れる.この等電位面の円形からのずれによる新古典拡散の増幅率も理論的に解析されており,ガンマ
10で観測されている程度の等電位面の円形からのずれではこの増幅率は円形の場合の2~4倍程度であ
り37),従って抵抗Rを十分大きくしたフローティング状態では,非両極性輸送による半径方向の損失
は依然無視できる程十分小さい.ガンマ10におけるこの非両極性輸送に関する閉じ込めの良さは,磁
場の軸対称化が十分に行われている結果によると言える.
一方TMX-Uにおいては,非両極性輸送はセントラル部における新古典共鳴拡散の他に,エンド部
におけるECRHとスロッシングNBIによってもたらされている38).ECRHによる損失は電子の非軸
対称な加熱によりAzimutha1な電場が生成され,それによるE×Bドリフトでプラズマが損失すると
解釈される.しかしスロッシングNBIに伴う半径方向の異常損失についてはまだその物理は良く分かっ
235
核融合研究 第62巻第4号 1989年10月
ていない様である.
次に両極性半径方向輸送について考える.両極性輸送では電子とイオンが同時に逃げるため,その損
失を電流という形で捕えることはできないので測定は非常に難しい.ここでは系の粒子バランスの式か
ら両極性輸送を解析してみる.粒子バランスの式は
e誓・s一・lr・攣一・生 (8)
で与えられる。ここでNは系の全粒子数,1sは電離によるプラズマの生成率(の電流),111は軸方向
の損失電流,1聖,1iは半径方向の非両極性輸送または両極性輸送による半径方向の損失電流である。
1生以外は計測が可能である.ここでは1sはH、の計測から評価される。図1212)にガンマ10における
10
●ISハ dN≦5 0e- dt仲櫓㌧芒.建
舛1ヨ ウSTRONGPしUGGI四GQ 1
5 10 15 Time(ms) 図12.電位閉じ込め時の電離生成率(黒丸)と
密度の成長率(白丸)の時間変化.
♂よE
や2㌔モ
O Q4 雨、廊?、uqeCい_0。3
壼ぎ0.2
堕暁9u9εc月.ミ
ト(》1
’ 『●憩●・●●ひ●軸、
ノ ■ 0
3さ1。0
0憲 Q5
0 0 10 20 30 40
董 1臼nsl
図13.セントラル部線密度,イオン温度丁副
(白丸が対応),閉じ込め電位の時間変化.
プラッギング中における1sとd.〈r/dεの時間変
化の一例を示す.プラッギングのある時間帯で両
者は良い一致を示している.図から評価すると,
(1/N)d1V/dε~133s-1,1s/d〉~137±13s-1,ま
た計測結果から1il/εN~3s-1,1聖/εN~0.5s}1
であるから,以上を(8)式に入れて,1i/e1V~
0.5s-1を得る.これから両極性輸送による半径
方向の閉じ込め時間も軸方向の閉じ込め時間と同
程度以上であるとみなされる.これらの解析から
ガンマ10では十分長い粒子閉じ込め時間を達成
していると考えられる.
故にこれからはエネルギー閉じ込め時間の解析
がガンマ10の課題となってくる.ガンマ10の
最近の実験では,図1339)に示すようにELAで
計測される磁力線方向のイオン温度丁翔がプラッ
ギング中で上昇することが観測されている.一方
プラッギングのない場合には,図から明らかなよ
うにTillはむしろその時間帯で減少している.
これはプラッギングによってエネルギー閉じ込め
時間が長くなったことを示しており,従ってプラ
グ電位により粒子閉じ込めだけでなくエネルギー
閉じ込めも改善されることが確認された.今後は
より詳細な解析を進めていく必要がある.
236
解 説 ミラー閉じ込めの現状 三好,北條
2.4安定性
最後にガンマ10プラズマの安定性について述べてみる.マイクロ波やレーザー散乱等によるプラズ
マ中のゆらぎの計測から,ドリフト波と考えられる比較的短波長の小さなゆらぎが場合によって観測さ
れているが,MHD不安定性によるプラズ々め崩壊を導くような大きなゆらぎは観測されていない.従っ
て,ガンマ10は巨視的には安定であると言える.フルート交換モードに対する安定性解析から,βA,
βB,βcをそれぞれアンカー部,プラグ・バリア部,セントラル部の中心ベータ値とし,アンカー部の
高温プラズマに対し例として理想分布を仮定すると,安定化の条件は13)
βA≧2.92βc+0.94βB (9)
で与えられる.ここで重要な点は各係数が仮定したアンカー部の高温プラズマの軸方向分布に強く依存
していることで,分布がより局在化する程係数は小さくなり,従ってより小さいβAで安定化が可能に
なる.つまりタンデムミラーの特徴はアンカー部のプラズマのベータ値や分布の制御により,セントラ
ル部の高ベータ化が容易であることである.
今後は各ミラー部のプラズマパラメータとその軸方向分布をきちんと押さえて,安定性がMHDア
ンカーによるものであることを検証する必要があると同時に,アンカー部のプラズマの分布制御等によ
りセントラル部の臨界ベータ値をより高いものにする工夫をし,10%以上のセントラ1ル部ベータ値の
達成を目標にする.
3.タンデムミラーの炉としての展望
ガンマ10によるミラー閉じ込め研究は図14
に示す通り,年々プラズマパラメータの記録更新
を行いながら,ブレイク・イーブンに向かって伸
展している.現在,同時達成値として,φ,=1.5kV,
φb=1・2kV》η。τpll:=3・3×1018m-3・s,Ti■ヂ1・1keV
を記録している.またη。=1019m-3近くの高密度
プラズマの電位閉じ込めにも成功している(ELA
でプラッギングを観測).今後加熱系の強化によ
り,これらのプラズマパラメータは更に伸びると
考えられる.またプラズマパラメータの記録更新
には,新しく設置したヘリウムクライオ排気系に
よる真空条件の改善の効果も大きい.今後の課題
は開放端系の特徴である定常運転,即ちサーマル
バリアの定常的維持とプラズマの高べ一タ化であ
1021
1020
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藻騨
轟難繊鴫
図14.
α01 α1 1 10 100
10N TEMPERATURE Ti lkeVl
ガンマ10の伸展(Q講1の境界はNBl駆動型核融合での臨界条件,実線の丸は達成値,確線
の丸は目標値,また斜線の装置は目標達成以前
にシャットダウン〉,
237
核融合研究 第62巻第4号 1989年10月
る.もしこれらの課題をガンマ10がクリアすることができれば,タンデムミラーは制御核融合に対し
て非常に魅力ある装置となり得る.
更に開放端系としてのタンデムミラーは,直線的形状の故に炉工学的側面においても多くの利点を有
している.先の定常運転が可能であること,高ベータ化が容易であることに加えて,炉心構造のモジュー
ル化,保守の容易性,直接発電が利用できること,高ベータ化に伴うadvanced fuelsによる核融合の
可能性等である.
旧来の単一ミラーの炉では(1)式に基づく閉じ込め時問の短さから,Q値(一核融合出力エネルギー/
入力エネルギー)が1程度にしかならない.従って経済性のある炉は極めて難しい.しかしタンデムミ
ラー炉では電位閉じ込めによる閉じ込め時間の改善を基に大きなQ値の向上が得られ,経済炉が容易
になっている.そしてガンマ10がこのミラーの閉じ込め改善を実証したことは,ミラー型融合研究に
おける大きな進歩である.
タンデムミラーDT炉(ηD=πT=50彩)では,Q値は2)
Qo Q=1一α2Q。+PS (10)
で与えられる.ここでQoはセントラル部における核融合出力とエネルギー損失の比,またPsはMHD
安定性の確保や閉じ込め電位の形成に利用されるアンカー及びプラグ・バリア部のエネルギー損失とセ
ントラル部のエネルギー損失の比を表す.ただし(10)式は100%のα粒子加熱を仮定している.Ps
の大きさを評価するには具体的な炉設計を行う必要があるが,セントラル部を十分長くしてPs<<1
にできたとすると,Qo=5がミラーの場合の自己点火条件と実質的に考えてよい.
パスッコフの閉じ込め則を仮定しφ。/Ti=3~4とすると,自己点火条件のパラメータは,現状では
π、τE~2×1020m-3・s,Ti=10~20keV程度と考えられる.
今後プラズマの閉じ込めを最適化して先のPsをより小さくする工夫をすることが物理的研究課題で
あり,また内外で進められている直接発電等の工学的研究も更に進展することが望まれる.
最後に,ここに紹介したガンマ10の実験結果及び理論解析はガンマ10グループ各人の寄与による
成果であることを明記しておく共に,貴重なデータの提供や日頃の有益な討論等に対して感謝の意を表
したい.
参 考 文 献
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238
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