モビリティ・マネジメント の事例 - mlit...コミュニティバスの現状 •...
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モビリティ・マネジメントの事例
筑波大学大学院 都市交通研究室 谷口綾子
22nd, Jan. 2010
MMを実施する場
•居住地域
•学校
•職場
•特定路線(バス・電車・高速道路等)の利用促進
利用促進MM(1)
龍ケ崎市コミュニティバスの利用促進
龍ケ崎市の概要• 人口約8万人
• JR常磐線、関東鉄道竜ケ崎線、路線バス、コミュニティバス
JR常磐線
関鉄
竜ケ
崎線
CルートJR常磐線関東鉄道竜ケ崎線
Bルート
Aルート
循環ルート
ショッピングセンターサプラ 済生会病院
湯ったり館
市役所
竜ケ崎駅
福祉センター
JR佐貫駅
コミュニティバスの現状
• 2002年7月運行開始
• バス利用者数は年々増加しているが、増加率は低下しており、頭打ち
全路線
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
16,000
18,000
Oct. Nov. Dec. Jan. Feb. Mar. Apr. May. Jun. Jly. Aug. Sep.
バス利用者数 '02-'03
'03-'04
'04-'05
'05-'06
バス利用促進のためのTFP
• バス利用客数の増加が頭打ちになったため、MMの一プログラムであるTFPを実施した。
• プロジェクトは2005年9月ー12月に実施
• ターゲット・エリアは循環線周辺
実験手順
Step1: 事前調査
Step2: ・コミュニケーションアンケートと・行動プラン策定依頼・バスに関する意見要望の収集
Step3:意見要望への返信
Step4: 事後調査
August -April
Sep.
Oct.
Nov.
ニューズレターの配布 (2ヶ月ごと)
通常TFP群
TFP
Dec.
制御群
丁寧TFP群
利用促進キット
envelop
Gide for bus use
Bus user’s
Pamphlet to motivate behavioral change
円100運賃分34所要時間 約あなたのバス利用プラン
①⇒
②⇒
③⇒
09: 3(着)
徒歩2分
バス16分
100円
09:25(発)
徒歩11分
09:09(発)
佐貫駅自宅
※徒歩での移動は、下図の地図を参照してください。
③「佐貫駅東口バス停」→佐貫駅①自宅→「水門バス停」
09:20(着)
09: 1(着)
09: 1(発)
佐貫駅東口バス停
(Aルート)
水門バス停(Aルート)
経路
乗継地図
その他
ご自宅
佐貫駅水門バス停
佐貫駅東口バス停
Personal Journey plan
Bus craft post card
行動プラン(1)
1)龍ケ崎市の ミュ ティ バスを うことがあると思いますか? □に√を記入してください。
2)それはどのような用 ですか? 記入例を参考にお答えください。
(記入例)
用事 市役所に行く
いつ 朝10:00頃
どこ ら 自宅
どこ で 市役所前
用事
いつ
どこから
どこまで
用事
いつ
どこから
どこまで
絶対にない あるかもしれない ある
次ページの問2にお進み下さい。
このバス利用プランは、第1回アンケートの時に、あなたご自身が記入された内容をもとに、コミュニティ・バスを使った移動プランを具体的に示したものです。
これら二つをご覧になった上で、以下の質問にお答え下さい。
まず、同封のフォルダの中の
「かしこいバスの使い方」を考えるプログラムパンフレットと、
「バス利用プラン」
をご覧下さい。
行動プラン(2)
行動プランの策定を要請することで
公共交通を使うイメージトレーニングをしてもらう
→ 公共交通を使うハードルが下がる
ニューズレター
意見要望への返信例(2)意見要望:昨日,竜ケ崎駅に行くため循環ルート外回りで緑町12:43発に乗る
ため12:41頃に停留所に行ったが,10分待ってもこなかったので私の勘違い
でおくれて停留所に行ったのか,又は時刻より早めにバスが通過したのか分かりません.バスが予定より早めに通過することは有るのでしょうか.
回答_冒頭:コミュニティバスを利用しようとされた際に,バスが来なかったとの
こと,申し訳ございませんでした.
回答_本文:日時の特定ができませんので,正確にお答えすることはできません
が,これまでにも何度かこのようなお問合せをいただきました.しかしながら,その多くは,
・ 車両故障や事故渋滞などで,バスが大幅に遅れた
・ 点検や故障などの理由で,その日は黄色い車両ではなく代車で運行して
いたため,利用者が気づかなかった
など,車両の遅れや車両に気がつかなかったことが理由でございました.
これまでも,運行事業者にはバスが時刻表よりも早く通過することはないよう,注意をしてきましたが,再度,改めて厳重に注意をいたします.
回答 結語:市,バス事業者,運転手とも十分に気をつけて参りますので,今後とも,当市の都市交通の改善に向けて,ご理解とご協力をお願いいたします.
配布回収率
◆ニューズレター :
龍ケ崎市内の全世帯に配布
◆TFP
循環線沿線の世帯対象
- 制御群 = 100 HHs- 丁寧TFP群 = 143 HHs- 通常TFP群 = 157 HHs
(実験の評価は、事後調査に回答した計280世帯のデータで行った)
実験結果
1.0
1.0
1.1
1.2
1.2
1.3
1.3
事前 事後
of c
hang
e in
cun
ity b
us u
se /w
eek
丁寧TFP群
通常TFP群
制御群
•丁寧なTFPはコミュニティバスの利用回数増加に貢献
制御群で正規化したコミュニティバス利用回数/週の変化率
通常 TFP群では有意差なし
循環ル 推移
集計的効果 (1)
0
2,00
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
Oct. Nov. Dec. Jan. Feb. Mar. Apr. May. Jun. Jly. Aug. Sep.
NO
. of bu
s pa
ssenge
rs
'03
''04
''05
‘ 06
バス利用者数の増加率は頭打ち
...TFP実施後、
利用者数が増加
集計的効果 (2) バス利用者数の前年度増加数
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
'05-'04 '06-'05
ase o
f bu
s use
rs c
om
paring
with
previ
ous
year
Line A
Line B
Line C
loop line
※年度は10月-翌年9月とした
MMの効果
TFP によってバス利用者
数の増加率が回復
龍ケ崎市におけるMMの効果
• MMによるバス利用者数の増加は、実験レベル
でも、集計レベルでも見られた。
• TFPの効果は、特にバスシステムに意見要望
を寄せた人に対して見られた。
事例2
筑波大学の取り組み
■学内バス利用促進MM■公共交通配慮型居住地選択MM
旧学内バス廃止に至るまで
運転手の高齢化
車両の老朽化
法人化に伴う予算の縮小
旧学内バスの運行が困難に
2004年都市計画実習交通班、
プロジェクトチームによる代替案検討
筑波大学の学内交通状況
本数(平日)
本数(休日)
運行時間
料金
運行経費
旧 新
2本/時 6本/時
- 3本/時
8時~18時 6時~23時
無 料 有料(160円~260円)
7千万円/年 5千万円/年( 大)
新旧学内バスの比較
(石田教授推計)
旧 新
つくばセンターつくばセンターまでまで延長延長図情止まり
バス定期券利用証
しかしながら...バス定期利用証の累計売上枚数
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
8、
9月
10月
11月
12月
1月 2月 3月
月
発行枚数 (平成17年度)
3055枚(3月)に
2212枚(9月)が・・・
需要予測は6,000枚
なぜバスに乗らない?
•時刻表が無い
•路線図が無い
•申し込み方法がわからない
•例えばどういう使い方があるかわからない
•何より、筑波はクルマ社会!
筑波大学構成員の自動車・普通自動車免許保有状況
85.9%
41.5%
19.5%
8.1%
19.0%
9.2%
9.7%
11.7%
38.0%
43.8%
33.1%
32.0%
7.1%
13.6%
27.9%
2.3
20.5%
36.7%
58.9%
48.9%
83.7%
76.8%
30.3%41.8%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
学群1年生(n=1252)
学群2年生(n=1437)
学群3年生(n=626)
学群4年生(n=124)
大学院1年生(n=856)
職員(n=98)
教員(n=435)
合計(n=4828)
免許無 免許有 自動車無 免許有 自動車有
非常に便利なバスシステムがある( = 構造的方略は万全)
にもかかわらず、利用者が伸び悩む
心理的方略
モビリティ・マネジメントの出番では?
→ バス定期利用証の販売促進MM
というわけで、
■動機づけ■具体的なバス利用例■定期券の買い方■定期券の申込書■主要なバス停の時刻表
をまとめたチラシを学生・教職員に配布する
モビリティ・マネジメントを実施
筑波大学内バス 利用促進プロジェクト
入学手続き書類における購入依頼
コミュニケーション・アンケート(学内オリエンテーションにて配布)
バス定期申込書 兼 動機付け・時刻表を配布
実験群
制御群
効果計測アンケート (6ヶ月後、12ヶ月後)(授業時または掲示板呼び出しにて配布)
販促MMツール
•動機付け冊子 兼 申込書
販促MMツール 動機付け冊子 兼 申込書 (中身)
販促MMツール
10.4%
16.1%
76.2%
67.6%
12.0%
5.3%
2.3%
11.6%
13.0%
75.5%
58.4%
6.6%
7.8%
17.9%
3.8%
3.4%
4.9%2.4%
0.2%
2.6%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
2004年
2006年
2004年
2006年教職員
学生
徒歩 自転車 バス自動車
2輪・原付
通勤通学の交通機関分担率
利用証 販売枚数の推移
枚
3,055
5,674
10,000
約7,000
約6,000
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
7,000
8,000
9,000
10,000
2005 年 2006年 2007年 2008年 200X年
増加傾向
目標は1万枚!
次の一手は?■モビリティ・マネジメントは一定の効果があった。
しかし、まだまだ需要はあるはず。
非常に便利で安価な定期券
であるにも関わらず、多くの学生が所持していない
なぜか?バス停から遠いところに住んでいるから!
• このままでは、効率の悪い都市構造が加速化
• コンパクトシティは夢のまた夢
...バス停近くのアパートを自発的に選択してもらう
コミュニケーションは出来ないか?→ 公共交通配慮型 居住地選択MM
理論的枠組み• 居住地選択は
– 家賃、築年数、間取り、広さ、安全性、地域特性などを吟味して行う
– 「公共交通の利便性」も吟味項目に入れてもらいたい
= 焦点を当ててもらいたい
■竹村(1994) 藤井、竹村(2001)
–状況依存焦点モデルを理論的枠組みとして用いる
仮説
■居住地選択時に
「公共交通の利便性」に焦点を当てたコミュニケーションを行えば
「公共交通の利便性」が焦点化され,
公共交通の利便性の高い地域に居住地を選択するということが理論的に予想される
居住地選択時に「公共交通の利便性」を強調し,
焦点化した説得的コミュニケーションを行うことで
公共交通に便利な地域に居住地を
選択する傾向が強まる
仮説
実験
方法と結果
実験の方法• 対象
つくば市内のアパートへの引越しを予定している
– 学部1年生:大学敷地内の学生宿舎からアパートへ転居
– 入学予定の高校生:入学に伴いつくば市内に転居
住宅情報提供群
住宅情報のみ提供
バスフォーカス群
バス情報を追加した
住宅情報提供
動機付け冊子群
バス情報を追加した
住宅情報提供
動機付け情報
制御群
何も提供しない
効果計測アンケート
各実験群の配布物住宅情報提供群 バス情報追加群 動機付け追加群
バス便利マークを住宅一覧に追加
動機付け冊子を追加
動機付け冊子バスを便利にのるライフスタイルを提案
配布回収状況
55
55
-
制御群
253522分析対象者数
253522回答者数 ※2008年4月
9597116アパートマップ配布数
2007年11月~
2008年3月
動機付け冊子群
バスフォーカス群
住宅情報群実施時期
※2008年4月に実施した効果計測アンケート回答者で
つくば市内のアパートに引越しをした回答者数
結果:現居住地のバス利便性評価
Q.現在の住居は,バスに乗るときに便利な場所にあると思いますか?
全く思わない どちらともいえない 非常にそう思う
4.00
3.03
3.0
0 1 2 3
動機付け冊子群(N=25)
バスフォーカス群(N=34)
住宅情報群(N=22)
制御群(N=55)
バスに便利な場所に住んでいると
思っていない!
40.0%
31.4%
15.0%
60.0%
68.6%
8
0% 20% 4 %
動機付け冊子群(N=25)
バスフォーカス群(N=35)
住宅情報群(N=20)
制御群(N=55)
バス停まで徒歩3分圏内
16.4%
2倍
2.7倍 仮説検証
結果:バス停まで徒歩3分圏の居住
「バス停の近くに住もう」
と論理的に考えなくても
バスの便利さに
焦点化させるだけで行動が変容した
0.74
1.10
0.74
0.96
0.42
0.48
1.36
1.49
0.08
0.24
0.24
0.95
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6
制御群(N=43)
住宅情報提供群(N=21)
バスフォーカス群(N=34)
動機付け冊子群(N=24)
制御群(N=21)
住宅情報提供群(N=29)
バスフォーカス群(N=24)
動機付け冊子群(N=16)
制御群(N=21)
住宅情報提供群(N=29)
バスフォーカス群(N=24)
動機付け冊子群(N=16)
バス利用回数(週)平均値
回/週
2008年
4月
t検定
p<0.05
0.05≦p<0.10
2008年
12月自宅から
2008年
12月大学から
まとめ• バス停までのアクセスに焦点化した
説得的コミュニケーションを実施
• バス利用回数にも差が見られた← 3月に引っ越し、アンケートが4月上旬
であったため、4月時点では差なし
← 12月調査では、以降に追加調査を実施予定
バスフォーカス群:自宅からのバス利用多い
動機づけ冊子群:自宅・大学からのバス利用多い
バス停近くのアパートを
選択する傾向が有意に高い 仮説検証
今後の展開(案1)• よくあるご質問:
「この場所で、この対象者にしかできない施策では?」
• まずは、実施が比較的容易な大学生を対象に拡張①筑波大での継続実施:平成20年度
← JAMJAMという雑誌(住宅情報含む)にバス便利マークをつける
②仙台(東北運輸局)で同様の取り組み:
大都市での大規模実施の効果計測
東北大、宮城教育大、東北工業大学
今後の展開(案2)一般市民(学生以外)の引っ越しの機会?
就職、転勤、家族構成の変化(結婚・子ども誕生)...
転勤の機会を把握できるのは
.....企業!■事業所MMの一環として、
転勤予定者に
バス便利情報、アパートのバス便利情報
を企業として提供するMM を模索したい
広報の重要性
~ デザインと遊びごころ ~
車は
人の心を動かすためにある
これまでも。これからも。
NISSAN SKYLINE
クルマのある生活は、楽しい!
かっこいい! 快適! 便利!
■クルマはかっこいい! ・・・クルマ会社のイメージ戦略
でも、過度にクルマに依存したライフスタイルはかっこ悪い(?)
■公共交通もかっこいい!
公共交通を日常で使う「ライフスタイル」はおしゃれ。
・・・・・・・・・というイメージ戦略も必要では?
エモーショナル・キャンペーンとは?
非日常の「旅」「出張」の足というよりも、
日常の「足」としての公共交通のイメージを向上させたい
ポスター、チラシ、キットウィーン市交通局の公共交通利用促進エモーショナル・キャンペーン
Our tour bus. ぼくらの(コンサート)ツアーバスだ.
日常の足としての
イメージ戦略例
TOKYO HEART by 東京メトロ
茨城県高校生の通学時の公共交通利用促進
動機づけ冊子の例
<交通事業者Firstが提供したキット>
Oldhamプロジェクトでのキット例
この封筒の中に...
■緊急対応用 チケット
■バス初心者のためのフレーズ集
仙台市: P&RのPRポスター案1
仙台市: P&RのPRポスター案2
• 鹿島鉄道:茨城県 平成18年3月に廃線
• 代替バスの運行 → 利用者は廃線直前の5~6割
• 鉄道跡地をバス専用道化できないか?BRT (Bus Rapid Transit)化筑波大学石田東生教授を中心に、検討委員会設置
• 茨城県、石岡市、小美玉市など関係各位の尽力で2010年3月運
行開始予定
• より利便性の高いシステム + 適切な情報提供
+ 利用促進(イメージ戦略、ブランディング)を検討中
その一環として、トータルデザイン検討チーム設置。
現在、「バス車両」「バス停」「ターミナル」「住民参加の仕組み」
「モビリティ・マネジメント」等、トータルでデザイン・検討を進めている。
かし鉄バス coming soon…
クルマはかっこいい!便利!と言う凝り固まった固定観念を持つ中高年
は もちろん、
次代を担う若人!にも積極的にアピールしたい。
公共交通を使うライフスタイルはかっこいい!
・学校モビリティ・マネジメント・ブランディング、イメージ戦略
日本のMMブランド戦略
• 共通ロゴ • 関連イラスト
• プロジェクト
のロゴ • JCOMMロゴ
デザイン = 奇抜な意匠?
否!
機能的かつ美的に優れたツールこそが
人々の態度や行動を変容させるはず。
MMのツール・デザイン
■エモーショナル・キャンペーン&ツール・デザイン
モビリティ・マネジメントには、
真剣にクルマ抑制を訴える姿勢
と
ほんの少し、遊びごころ
があると
楽しくなる
広報活動の重要性
参考文献<入門>
■モビリティ・マネジメント入門 (学芸出版社)藤井聡・谷口綾子著 2008年3月10日発売
<実践>■モビリティ・マネジメントの手引き (土木学会)
土木計画学研究委員会 態度行動変容研究小委員会編
<理論>■社会的ジレンマの処方箋 (ナカニシ出版)
藤井聡著