プリント基板,小型化・高密度化への テクニック...

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Design Wave Magazine 2007 February 59 ここでは,プリント配線板を小型化するための方法について解 説する.同時に,進化を続ける高密度実装の現状についても解 説する.電子回路を搭載した機器の開発に携わるエンジニアに は,常識として知っておいてほしい内容である. (編集部) 携帯電話,デジタル・カメラ,ディジタル・ビデオ・カ メラ,ノート・パソコンなどを小型化,薄型化,軽量化, 高機能化するために,高密度実装は欠かせない技術となっ ています.実装技術は,プリント配線板設計・製造技術, 回路やデバイス設計,部品搭載技術,プリント回路基板検 査技術などを包括する統合的な技術であり,さまざまな先 端技術に支えられています. 1 チップ部品の進化を利用する 1 小型化が進むチップ抵抗やチップ・コンデンサに 対応する製造技術を常に持つこと 抵抗やコンデンサの高密度実装を実現する技術として, チップ部品の小型化があります.チップ部品のサイズは, 「1608」や「1005」といった 4 桁の数字で表現します.1608 は縦 1.6mm ×横 0.8 mm,1005 は縦 1.0 mm ×横 0.5mm を 意味します. 1)10 年で面積は 1/4 以下に,進化を続けるチップ部品 図1 はチップ・コンデンサにおける 1995 年から 2015 年 までのサイズ別シェアのトレンドです.1995 年は 2012 サ 2 プリント基板,小型化・高密度化への� テクニック 7連発� ICパッケージ,チップ部品,LSI搭載技術の進化を� 自社製品の進化に生かす!� 八甫谷 明彦� 2章� [%] その 図1 (3) チップ・コンデンサのサイズ 別シェアのトレンド 1995 年は 2012 サイズ,2000 年は 1608 サイズ,2005 年は 1005 サイズが一番多く流通して いる.2010 年から 2015 年にか けて 0603 が増え,さらに小さい 0402 も少しずつ増えると予測さ れる. KeyWord 3216,2125,2012,1608,1005,0603,0402,ベア・チップ,Au バンプ圧接工法,Au 異方性導電工法,はんだバ ンプ工法,パッケージ・スタック,チップ・スタック,ウェハ・スタック,ビルドアップ,部品内蔵プリント配線板

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  • Design Wave Magazine 2007 February 59

    ここでは,プリント配線板を小型化するための方法について解

    説する.同時に,進化を続ける高密度実装の現状についても解

    説する.電子回路を搭載した機器の開発に携わるエンジニアに

    は,常識として知っておいてほしい内容である. (編集部)

    携帯電話,デジタル・カメラ,ディジタル・ビデオ・カ

    メラ,ノート・パソコンなどを小型化,薄型化,軽量化,

    高機能化するために,高密度実装は欠かせない技術となっ

    ています.実装技術は,プリント配線板設計・製造技術,

    回路やデバイス設計,部品搭載技術,プリント回路基板検

    査技術などを包括する統合的な技術であり,さまざまな先

    端技術に支えられています.

    1 チップ部品の進化を利用する

    1 小型化が進むチップ抵抗やチップ・コンデンサに対応する製造技術を常に持つこと抵抗やコンデンサの高密度実装を実現する技術として,

    チップ部品の小型化があります.チップ部品のサイズは,

    「1608」や「1005」といった4桁の数字で表現します.1608

    は縦1.6mm×横0.8 mm,1005は縦1.0 mm×横0.5mmを

    意味します.

    1)10年で面積は1/4以下に,進化を続けるチップ部品

    図1はチップ・コンデンサにおける1995年から2015年

    までのサイズ別シェアのトレンドです.1995年は2012サ

    2

    プリント基板,小型化・高密度化への�テクニック 7連発�

    ICパッケージ,チップ部品,LSI搭載技術の進化を�自社製品の進化に生かす!�

    八甫谷 明彦�

    第2章�

    チップ・コンデンサのサイズ別シェア�

    100

    90

    80

    70

    60

    50

    40

    30

    20

    10

    0

    [%]�

    1995年� 2000年� 2005年� 2010年� 2015年�

    その他�

    0402�

    0603�

    1005�

    1608�

    2012�

    3216

    図1(3)

    チップ・コンデンサのサイズ別シェアのトレンド

    1995年は2012サイズ,2000年は1608サイズ,2005年は1005サイズが一番多く流通している.2010年から2015年にかけて0603が増え,さらに小さい0402も少しずつ増えると予測される.

    KeyWord 3216,2125,2012,1608,1005,0603,0402,ベア・チップ,Auバンプ圧接工法,Au異方性導電工法,はんだバンプ工法,パッケージ・スタック,チップ・スタック,ウェハ・スタック,ビルドアップ,部品内蔵プリント配線板

  • 60 Design Wave Magazine 2007 February

    イズ,2000年は1608サイズ,2005年は1005サイズが一番

    多く流通しており,年々小型化が進んできました.

    チップ・コンデンサは誘電体の薄層化,多層化,高誘電

    率化および高精度加工により,小型サイズにおいても容量

    の拡大が進んできています.従来,1μF以上の大容量は

    1608以上のサイズでしたが,現在1005サイズで1μFを実

    現でき,比較的大容量が要求される電源ラインのデカップ

    リング用途などにおいても,1005サイズの使用が可能と

    なっています.また,現在一番コストが安く,実装面でも

    難易度がそれほど高くないことから,携帯電話やパソコン,

    ディジタルAV機器などで採用が拡大しています.

    2)0603サイズで0.1μF,高周波機器から民生機器まで

    応用できる

    一方,2010年から2015年にかけて,0603サイズが増え,

    さらに小さい0402サイズも少しずつ増えると予測されてい

    ます.0603サイズのチップ・コンデンサは,0.1μFの容量

    を実現でき,携帯電話などの小型携帯機器で使われるコン

    デンサ容量をほぼカバーすることができます.これにより

    0603サイズは,比較的低容量のコンデンサが使われる高周

    波モジュール部品から携帯電話,ビデオ・カメラ,デジタ

    ル・カメラなど小型携帯機器へと用途が拡大しています.

    0603サイズの次なる小型化対応として,0402サイズが

    2005年ごろから商品化され,無線LANやワンセグ・チュー

    ナのような高周波モジュールで採用され始めています.

    0402サイズは0603サイズに比べて縦方向の寸法が約30%

    短いため,コンデンサ中のインダクタンス成分が減ってい

    ます.これらのことから,サイズの小型化だけでなく,よ

    り高周波での使用が可能となります.

    図2は,1608,1005,0603,0402サイズについて,面

    積と体積を比較したものです.サイズが一つ小さいだけで

    も大幅に小型化されており,0603や0402は高密度実装に

    大きく貢献します.

    3)部品同士の間隔も狭くする,搭載技術がますます重要に

    図3に示すように,チップ部品のサイズが小さいという

    特徴を生かすには,部品間のギャップ(間隔)やプリント配

    線板のフット・プリントを考慮した設計,それに対応でき

    るだけの製造技術が必要です.

    部品間のギャップを狭く設計する狭間隔実装は,チップ

    部品の部品間ギャップを例にとると,0.4 mmから0.3 mm,

    0.2 mm,0.1 mmへと変遷してきました.最近では0.06

    mmの技術発表も見受けられます.また,一般的なチップ

    部品のフット・プリント設計においては,チップ部品の外

    形よりも大きなはんだ付け部を確保したいところです.し

    かし,高密度実装を実現するには,フット・プリントのサ

    イズをチップ部品のサイズと同じ程度にまで縮小する必要

    があります.

    小型チップ部品の実装については,1005サイズまでは一

    般的な設計や製造技術で対応できました.しかし,0603,

    0402サイズについては,設計や製造でのマージンが大幅に

    小さくなり,温度プロファイルが最適な条件でなかったり,

    位置のマージンが小さかったりした場合は,不良が発生す

    る場合があります.余裕のある最適な条件で製造するため

    (a)従来実装� (b)高密度実装�

    部品�間隔�

    部品�間隔�

    部品間隔� 部品間隔�

    上面図�

    断面図�

    面 積�

    [mm2]�

    1608 �1.44(100)�1.15(100)�

    面積(mm2)�体積(mm3)�

    1005 �0.50(35)�0.25(22)�

    0603 �0.18(13)�0.05(5)�

    0402 �0.08(6)�0.02(1)�

    注:カッコ内は面積比および体積比.1608を100とする�

    体 積�

    [mm3]

    1.60�

    1.40�

    1.20�

    1.00�

    0.80�

    0.60�

    0.40�

    0.20�

    0.00

    1.40�

    1.20�

    1.00�

    0.80�

    0.60�

    0.40�

    0.20�

    0.00

    図3 チップ部品の実装

    「小さい」という特徴を生かすには,部品間のギャップ(間隔)やプリント配線板のフット・プリントを考慮した設計や製造も必要.

    図2 チップ部品の面積,体積の比較

    1608,1005,0603,0402サイズの4種類について面積と体積を比較した.