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エクアドルのドル化政策 ― 現状と今後の課題 ― 林 康史 1 木下 直俊 2 Polı tica de dolarizacio n del Ecuador Situacio n Actual ytema para el futuro Yasushi Hayashi Naotoshi Kinoshita 【要旨】 エクアドルは2000年に自国通貨スクレを廃し,法定通貨として米ドルを導入, 自ら通貨主権を放棄した.ドル化政策の実施から10年余りが経過した現在,エ クアドル経済は,安定した通貨米ドルの恩恵を謳歌し,堅調な経済成長を示し ているが,一方で,ドル化経済による歪みやほころびがさまざまなところで表 面化しはじめている. エクアドル経済は歳入の約3割,貿易輸出額の約5割を原油に依存しており, 原油価格の動向が国内の景気に直結する.現政権は原油高による潤沢な原油収 益を背景に,「バラ撒き型」のポピュリズム的な経済政策を推し進めており, 輸入が急増し経常収支赤字も悪化している. 自国通貨を持たないエクアドルがドル化政策を維持し,経済成長を続けてい くためには,財政収支と経常収支を健全化する必要があるが,財政赤字・経常 収支赤字は改善の兆しもないまま,累積債務の問題は先送りされている.状況 次第によっては,政府は2012年以降,ますます資金調達が困難となり,財政運 145 立正大学経済学部教授 Profesor de la Facultad de Economı a dela Universidad de Rissho 在エクアドル日本大使館専門調査員 Agregado econo mico dela Embajada del Japo n en Ecuador

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Page 1: エクアドルのドル化政策 - musashi.jptoki/files/20120525.pdf2012/05/25  · エクアドルのドル化政策 ―現状と今後の課題― 林康史1 木下直俊2 Pol썝ıticadedolarizaci썝ondelEcuador

エクアドルのドル化政策―現状と今後の課題―

林 康史 1

木下 直俊 2

Polıtica de dolarizacion del Ecuador- Situacion Actual y tema para el futuro -

Yasushi Hayashi

Naotoshi Kinoshita

【要旨】

エクアドルは2000年に自国通貨スクレを廃し,法定通貨として米ドルを導入,

自ら通貨主権を放棄した.ドル化政策の実施から10年余りが経過した現在,エ

クアドル経済は,安定した通貨米ドルの恩恵を謳歌し,堅調な経済成長を示し

ているが,一方で,ドル化経済による歪みやほころびがさまざまなところで表

面化しはじめている.

エクアドル経済は歳入の約3割,貿易輸出額の約5割を原油に依存しており,

原油価格の動向が国内の景気に直結する.現政権は原油高による潤沢な原油収

益を背景に,「バラ撒き型」のポピュリズム的な経済政策を推し進めており,

輸入が急増し経常収支赤字も悪化している.

自国通貨を持たないエクアドルがドル化政策を維持し,経済成長を続けてい

くためには,財政収支と経常収支を健全化する必要があるが,財政赤字・経常

収支赤字は改善の兆しもないまま,累積債務の問題は先送りされている.状況

次第によっては,政府は2012年以降,ますます資金調達が困難となり,財政運

145

立正大学経済学部教授 Profesor de la Facultad de Economıa de la Universidad

de Rissho

在エクアドル日本大使館専門調査員 Agregado economico delaEmbajadadelJapon

en Ecuador

Page 2: エクアドルのドル化政策 - musashi.jptoki/files/20120525.pdf2012/05/25  · エクアドルのドル化政策 ―現状と今後の課題― 林康史1 木下直俊2 Pol썝ıticadedolarizaci썝ondelEcuador

営に支障を来す局面が懸念される.エクアドルは現在のドル安・原油高によっ

てドル化政策の持続が可能な状態にあるが,経済基盤の弱体化が進んでおり,

ドル化政策を揺るがしかねない不安要素が増えつつある.政府の制度維持とい

う意思とは無関係に,ドル化の前提条件ともいうべきクライテリアを満たさな

くなっているともいえ,突然,政府の意図しないドル化の終焉を迎える可能性

も否定できなくなってきている.

【Abstracto】

En el 2000, Ecuador abolio la moneda nacional, el sucre, introdujo el

dolar como de curso legal y renuncio por sımismo a la soberanıa

monetaria. Ahora, que han pasado poco mas de 10 anos desde la

ejecucion de la polıtica de dolarizacion, la economıa ecuatoriana ensal-

za el beneficio del dolar como moneda estable y registra un prospero

crecimiento economico, pero por otro lado, en algunas cosas va salien-

do a la luz la distorsion y la descosedura de la dolarizacion.

Aproximadamente el 30% del ingreso publico y el 50% del valor de

la exportacion de la economıa ecuatoriana dependen del crudo, por lo

tanto, el movimiento en el precio del crudo esta directamente

relacionado con la coyuntura interna. La actual administracion impulsa

una polıtica economica populista del “modelo de esparcimiento”, respal-

dandose en el ingreso abundante por el crudo debido al alto precio de

este, por lo tanto prolifera la importacion y se agrava el deficit de la

balanza en cuenta corriente.

Para que Ecuador, como paıs que no tiene una moneda nacional,

mantenga la polıtica de dolarizacion y continue su crecimiento

economico, hay necesidad de sanear la balanza en cuenta corriente y

la balanza fiscal. Sin embargo se ha postergado el problema de la

deuda acumulada sin presagio alguno de la mejora en el deficit fiscal

y deficit en la balanza corriente. Existe el temor de que de acuerdo

立正大学経済学季報第61巻3・4号146

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con la situacion, a partir de 2012 para el gobierno la financiacion sea

cada vez mas difıcil y hayan inconvenientes en la administracion de

las finanzas publicas. Ecuador se encuentra en una situacion de

proseguir la polıtica de dolarizacion por la actual debilidad del dolar y

el alto precio del crudo, no obstante empeora la debilitacion de la

base economica y los factores de inestabilidad que podrıan sacudir la

dolarizacion van en aumento. Independientemente de la voluntad del

gobierno por mantener la polıtica, se puede decir que no se esta satis-

faciendo el criterio, es decir las premisas de la dolarizacion, por lo

tanto no se puede negar la posibilidad del inintencionado fin repentino

de la dolarizacion por parte del gobierno.

【キーワード】

エクアドル,ドル化,コレア(Rafael Correa)政権

目次

はじめに

1.ドル化政策導入の経緯

2.エクアドル経済の現状

3.深刻化する双子の赤字

(1)膨らむ財政赤字

(2)累増する対中国債務

(3)悪化する経常収支

(4)孤立の道を進むエクアドル

(5)遠退く民間投資

4.財政赤字に対する処方箋

5.脱ドル化の可能性

おわりに

参考文献

エクアドルのドル化政策 147

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はじめに

エクアドルは,2000年に自国通貨スクレを廃し,法定通貨として米ドルを導

入,自ら通貨主権を放棄した.当時,金融システムの破綻,自国通貨スクレの

信用不安,長期に亘る失政といった国内情勢に加え,国際原油価格の暴落,自

然災害,通貨危機などの外的要因も重なり,国内経済は危機に瀕していた.ド

ル化政策に否定的な見方も強いなか,活発な議論が行われることなく,ドル化

政策を採用する以外にエクアドルが生き延びる術はないという二人の大統領の

意志で導入された.

この政策の実施から10年余りが経過した現在,スクレ時代のハイパーインフ

レによる混迷は過去のものとなった.国民は安定した通貨米ドルの恩恵を謳歌

しているようにも見受けられる.しかし,堅調な経済成長を示す一方で,ドル

化経済による歪みやほころびがさまざまなところで表面化しはじめている.現

政権のラファエル・コレア大統領(Rafael Vicente Correa Delgado:在位

2007年1月~現在)が志向する保護主義的な経済体制,場当たり的な経済政策,

法的安定性の欠如は,直接投資や輸出の減少を招き,財政赤字・経常収支赤字

が急速に悪化している.ドル化経済は行き詰まりの様相を見せ,脱ドル化も意

識されはじめている.

エクアドルの通貨制度は壮大な金融実験とも言え,極めて示唆に富むもので

ある.本稿では,このエクアドルにおけるドル化政策の持続可能性,また,脱

ドル化政策の可能性について論じる.

なお,現在,欧州での債務危機に端を発したユーロ加盟国の脱ユーロ問題が

注目されている.その分析・比較研究に際して,エクアドルのドル化問題が重

要性を増しつつある.エクアドルの財政問題と実体経済悪化の過程,また,脱

ドル化の議論を調査・分析しておくことは,筆者らの予想していた以上に,脱

ユーロ問題の考察に裨益するところが大きいようである.

148 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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1.ドル化政策導入の経緯

エクアドルのドル化政策導入の経緯について振り返っておく.

1970年代,エクアドルは他のラテンアメリカ諸国と同様に輸入代替工業化政

策を実施していた.石油ショックによる資源価格高騰を背景に,政府は対外債

務を重ね,政府主導で過剰な投資が行われた.1980年代初頭の資源価格急落と

ともに財政は破綻,債務償還が困難な状況に陥り累積債務危機が表面化した.

国際通貨基金(IMF)・世界銀行が進めるブレディ・プラン(Brady Plan債

務削減案)に合意するとともに,ワシントン・コンセンサス(Washington

Consensus)と呼ばれる新自由主義政策を採用した.新自由主義政策では,新

古典派経済学の競争均衡モデルに基づき,政府は市場への積極的な介入を行わ

ず,自由放任の立場を維持すれば,市場メカニズムが機能し,最適な富の配分

と秩序の均衡がもたらされると考える.この市場メカニズムの考えに則り,規

制緩和・貿易自由化・財政赤字の削減・インフレ抑制が進められ経済の立て直

しが図られた.

1998年8月に政権に就いたジャミル・マワ大統領(Jamil Mahuad Witt:

1998年8月~00年1月)も過去の政権と同様に新自由主義政策を継承した.

IMFのコンディショナリティーに従い,財政健全化に向けガス・ガソリン・

電気などの補助金を廃止したことで,インフレ率は52.2%(1999年),96.1%

(2000年)と急激に上昇(図表1参照),失業率は14.4%(1999年),貧困率3

は52.1%(1999年)に悪化した.国民は困窮の度合いを深め,社会不安が増大

し,それとともに治安は急激に悪化した.

自国通貨スクレの外国為替相場は下落基調を示し,政府は外貨準備を取り崩

してスクレを買い支える介入を実施するものの,それも限界に達し,1999年3

月にクローリング・ペッグ制から完全変動為替相場制に移行するに至った4.

だが,預金者の預金保護を目的とする銀行救済法(Ley de Salvataje Ban-

一人が基本的生活を満たすのに必要なすべての財とサービスを得るために必要な支出を

示す貧困ライン(49ドル/月)未満の人口比率(国家統計調査局).

149エクアドルのドル化政策

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cario)に基づきエクアドル中央銀行(BCE)が大量に資金を投入したことで,

スクレは大暴落,資金流出は加速した5.最終的に計17行もの民間銀行が経営

難に陥りドミノ倒しに破綻した6.経済的混沌状態に耐え切れなくなった政権

は,2000年1月9日,25000スクレを1ドルに外国為替レートを固定し,米ド

ルを法定通貨とする法案を国会に提出したと発表した.この措置は,国民には

エクアドルは1988年8月に固定相場制からクローリング・ペッグ制に移行.ドゥラン政

権期の93年に1年間ほど変動相場制が試みられた時期もあったが,再びクローリング・

ペッグ制に戻り,98年3月まで続けられた.

コレア大統領は,「中央銀行は流動性を高めるためこれまでの3倍もの通貨を発行した.

1999年の経済危機を引き起こした責任は中央銀行によるところが大きい」と指摘してい

る(2010年1月14日付大統領府プレスリリース).

1994年に金融機関制度法(Ley General de Instituciones del Sector Financiero)が

制定され,金融自由化が推し進められた.1994年当時,銀行数は24行であったが99年に

は96行に増加.銀行監督庁をはじめとする金融当局のチェック機能は甘く,放漫経営が

恒常化し,国内金融システムの信用不安が高まり,99年の金融危機の一因となった.

図表1 消費者物価指数の推移

出所:エクアドル中央銀行より筆者作成.

エクアドル中央銀行ホームページ Informacion Estadistica Mensual(http://www.bce.fin.ec/docs.php?

path=/homel/estadisticas/bolmensual/IEMensual.jsp)(2012年1月10日現在).

150 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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唐突なことに受け取られ7,反発や不満は極限に達し,同月19日,軍部を率い

るグティエレス陸軍大佐(Lucio Gutierrez Borbua),2万5千人を超える先

住民を率いるバルガス(Antonio Vargas)エクアドル先住民同盟

(CONAIE)代表,及びソロルサノ(Carlos Solorzano)元最高裁長官は,大

統領府,国会議事堂,最高裁判所を占拠し,「救国評議会(Junta de Gobier-

no de Salvacion Nacional)」の樹立を宣言した.同月21日,マワ大統領は退

陣に追い込まれ,米国に亡命した8.軍事クーデターにより権力を奪取した救

国評議会に対する,米国をはじめとする国際社会の非難は強く,同月22日に救

国評議会は副大統領の任にあったグスタボ・ノボア(Gustavo Noboa Bejar-

ano:2000年1月~03年1月)を暫定大統領に指名し解散した.その後,権力

を移譲されたノボア大統領はマワ政権のドル化計画を白紙撤回せず,同年3月

13日にドル化を合法化するエクアドル経済改革法(Ley de Transformacion

Economica de Ecuador)を国会の承認を経て制定,6ヵ月以内にスクレを

ドルに交換するというスケジュールでドル化政策を進め,通貨の切り替えに際

して,便乗値上げもあったが,おおむね数ヶ月で混乱は収束した9.ノボア政

権は新自由主義政策の下,IMFとの協調路線をとり,スタンドバイ取極

(SBA)を結ぶことで経済立て直しを図った.海外出稼ぎ労働者による家族送

金が増え,国際原油価格も回復するなど好条件も相俟って,国民の消費需要が

高まり,2000-02年期の平均実質成長率は年率4.1%の伸びを示した.

2003年1月に発足したルシオ・グティエレス大統領(Lucio Gutierrez Bor-

bua:2003年1月~05年4月)も国際原油価格の高騰を背景に順調な経済成長

を示すが,財政赤字削減を目的とした各種補助金の廃止,消費税・所得税など

マルコ・ナランホ(Marco Naranjo Chiriboga)ラテンアメリカ社会高等科学研究所

(FLACSO)経済学部教授は,「エクアドルではドル化以前に,すでに国民は米ドルで運

用しており,2000年の公式ドル化は単に公式に追認しただけで,非公式のドル化は広ま

っていた」と指摘している(Naranjo, 2004年 p.66).エクアドル中央銀行は,ドル化

直前のドル建て預金率を53.7%,ドル建てポートフィリオ率を66.5%であったと報告し

ている(Banco Central del Ecuador, 2001年 p.9).

現在も,米国ボストンに亡命中で,ハーバード大学経済学部教授として教鞭を執っている.

クレイグ・カーミン 2009年 pp.176-179.

151エクアドルのドル化政策

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の引上,公共料金の引上などを断行したことから国民の反発を招き,ホラヒド

スの反乱(Rebelion de los Forajidos)と呼ばれる民衆蜂起10により政権は

崩壊に至った.2005年4月に大統領の任を引き継いだパラシオ暫定政権(Al-

fredo Palacio Gonzalez:2005年4月~07年1月)は歳出削減策に踏み込む

ことなく穏健路線を貫いた.原油価格高騰による余剰歳入に助けられ安定的な

経済成長を示した.

グティエレス大統領は反政府活動を行う者を侮蔑の意味も込めて「ホラヒド(無法者の

意)」と非難したが,国民は逆手にとって「私もホラヒドだ」のスローガンを掲げ,反政

府活動を展開した.詳細については新木(2005年)を参照.

図表2 歴代大統領一覧(1979年-現在)

大統領 任期 在位期間 主要背景

ロルドス(Jaime Roldos) 1979/8-81/5 1年9ヶ月 ヘリコプター事故により死亡

ウルタド(OzwardoHurtado) 1981/5-84/8 3年3ヶ月 事故死により副大統領が昇格

コルデロ(Febres Cordero) 1984/8-88/8 4年

ボルハ(Rodrogo Borja) 1988/8-92/8 4年

ドゥラン(Sixto Duran) 1992/8-96/8 4年

ブカラン(AbdalaBucaram) 1996/8-97/2 6ヶ月 クーデターにより退陣

パナマに亡命

アルテアガ (RosarıaArteaga) 1997/2/9-2/11 2日 暫定大統領:非公式(元副大統領)

アラルコン(FabianAlarcon) 1997/2-98/8 1年6ヶ月 暫定大統領(元国会議長)

汚職逮捕

マワ(Jamil Mahuad) 1998/8-00/1 1年5ヶ月 クーデターにより退陣

米国に亡命

ノボア(Gustavo Noboa) 2000/1-03/1 3年 暫定大統領(元副大統領)

ドミニカ共和国に亡命

グティエレス(LucioGutierrez) 2003/1-05/4 2年3ヶ月 クーデターにより退陣

ブラジルに亡命

パラシオ(Alfred Palacio) 2005/4-07/1 1年9ヶ月 暫定大統領(元副大統領)

コレア(Rafael Correa) 2007/1-現在 5年

出所:筆者作成.

152 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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以上のように,ドル化政策導入以後も不安定な政情が続いたが(図表2参

照),ドル化によりインフレは収束,利子率は低下,失業率もドル化以前との

比較では安定的に推移するようになり,国内経済は安定を取り戻した.国際原

油価格の高騰といった外的要因にも助けられ,2000-06年期の平均実質成長率

は5.0%と順調な伸びを示した.

2.エクアドル経済の現状

次に,近時のエクアドルの経済情勢,とりわけコレア政権が志向する経済体

制について概観する.エクアドル経済は歳入の約3割,貿易輸出額の約5割を

原油に依存しており,国際原油価格の動向が国内の景気に直結する.現在,原

油高による潤沢な原油収益を背景に政府支出が拡大している.それは,現政権

が市場メカニズムを重視した新自由主義路線から,政府の役割を重視する社会

主義的路線へと経済体制を転換し,「大きな政府」を志向していることに起因

する.政府省庁は18機関(2006年)から38機関(2010年)に11,地方を含める

公務員数は35.9万人(2006年)から47.0万人(2011年)に増やされ12,公務員

給与も大幅に引上げられている.さらには,石油・鉱山・電力・通信・製薬・

セメントなどの基幹産業の国営化も積極的に進められ13,公的機関の肥大化が

顕著となっている.

この他に,「良き生(Buen Vivir)」,「市民革命(Revolucion Ciudadana)」,

「21世紀の社会主義(Socialismo de Siglo 21)」といった国家目標の下で,経

済の底上げを目的とした低所得者層偏重の政策が歳出拡大に拍車をかけている.

低所得者層に支給される生活補助金(BDH:Bono de Desarrollo Humano)

グティエレス前政権期の省庁数は大統領府3局・15省の計18省庁であったが,コレア政

権は大統領府3局・8調整省・20省・7庁の計38省庁に再編した.

一例を挙げると,大統領府は911人(2006年)であったが,6418人(2010年)となってい

る.

国営化を推進したことから多くの外資系石油企業は撤退し,一方で,技術水準の低さか

ら,国営化後の経営効率は落ちるという現象が起こっている.

153エクアドルのドル化政策

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は月額15ドル(2006年)から35ドル(2010年)に引上げられ,受給者数も118

万人(2006年)から179万人(2011年)に増やされた.また,政府は幹線道路

網の整備や空港・水力発電所・橋架などの建設といった大規模な公共事業にも

着手しており,公共投資への政府支出は膨らみ,総額74億8657万ドル(2011

年・対 GDP比12%)に達している14.

3.深刻化する双子の赤字

(1)膨らむ財政赤字

このように現政権は社会政策・公共投資・公務員人件費を大幅に増やす「バ

ラ撒き型」の経済政策を推し進めたことで,内需は伸長し,2007-11年におけ

る平均実質成長率は年率4.9%と好調な経済成長を遂げた15.しかし,中央政

府の予算規模は201億5250万ドル(2012年),対 GDP比は30%を超え,公的部

門を含めた予算では対 GDP比46%に達している.基礎的財政収支(プライマ

リーバランス)は総額42億3360万ドル(対 GDP比6.7%)の赤字が見込まれ,

財政状況は近年急激に悪化している(図表3参照).ドル化政策の下では自国

で紙幣を刷れないことから,過度な財政赤字は持続が困難となるため,財政は

自律的に健全化すると一般的に考えられている.しかしながら,エクアドルの

財政状況は異なり,放漫な財政が繰り返され財政規律は機能しているとはいえ

ない.

(2)累増する対中国債務

不必要な対外債務は行わないとの大統領公約は形骸化し,政府はこの財政赤

字を穴埋めすべく,中国に接近していると見られる.ベネズエラやボリビアと

公共投資は12億5200万ドル(2005年),13億1700万ドル(2006年),20億1000万ドル

(2007年),34億5000万ドル(2008年),50億6600万ドル(2009年),53億3100万ドル

(2010年)と年々膨張している.

国連ラテンアメリカ経済委員会(ECLAC)は,エクアドルの実質成長率見通しを8.0%

(2011年)と試算(2011年12月22日付現地報道).

154 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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同様に,現政権は国民世論を意識した反米路線をとり16,世界銀行や IMFを

敵視していることから,現状,米国をはじめ世界銀行や IMFがエクアドルに

融資を行うことはない.政府は資金調達国の多様化を図るべく,ロシア・イン

ド・韓国などの新興国との関係を強化しようとしているが,現実的には,カン

トリーリスクの高い17エクアドルに融資するのは中国のみである.中国は資金

供与と引き換えに原油や銅鉱床の権益を獲得しつつ18,供与した資金で水力発

電所・道路・橋架などインフラ事業を中国企業に紐付きの形で進めている.

エクアドル中央銀行発表による2011年11月時点での公的債務残高は,総額145

億7450万ドル(国内43億7280万ドル/対外102億170万ドル).対 GDP比は22.1

図表3 中央政府基礎的財政収支(単位:百万ドル)

2006年 2007年2008年(p)

2009年(p)

2010年(p)

2011年(s)

2012年(y)

歳入(国債費関連除く) 6,895 8,490 13,800 11,583 14,063 15,592 15,918

石油収入 1,719 1,764 4,642 2,298 4,410 4,458 3,915

非石油収入 5,176 6,726 9,158 9,285 9,653 11,134 12,003

歳出(国債費関連除く) 7,011 8,627 14,389 14,218 15,750 20,460 20,152

経常支出 5,342 6,000 8,460 8,934 9,541 10,733 12,212

人件費 2,581 2,914 3,929 4,708 5,049 6,572 7,546

資本支出 1,699 2,628 5,929 5,284 6,209 9,727 7,940

基礎的財政収支 -116 -137 -589 -2,635-1,687-4,868-4,233

(p)暫定値 (s)修正予算値 (y)予算値

出所:エクアドル中央銀行/エクアドル財務省より筆者作成.

エクアドル中央銀行ホームページ Informacion Estadistica Mensual(http://www.bce.fin.ec/docs.php?

path=/homel/estadisticas/bolmensual/IEMensual.jsp)(2012年1月10日現在),及びエクアドル財務省

資料 Proforma Presupuesto General del Estado 2012.

後述するように,2011年4月のウィキリークス問題以来,大使の交換は停止されている.

エクアドルのカントリーリスク指標(EMBI指数)は891(2011年11月1日現在),ラテ

ンアメリカ諸国のなかでベネズエラの1297に次いで高い.

詳細は詳らかではないが,原油を担保,あるいは,中国への輸出を条件に融資を行って

いると推定される.図表4を参照.

155エクアドルのドル化政策

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%と低い水準にあるが,総額72億5374万ドルに及ぶ中国からの借入れは,政府

の主張によれば原油取引であり公的債務ではない19ため,債務残高に計上され

ていない.中国からの借入れを含めて計算すると債務法定上限20とされる対

GDP比40%近くに達する(図表4参照).さらに,中国は債務の保証に年間の

原油総生産量の50%以上をすでに押さえており21,原油収益を先食いするハイ

リスクで高利の債務が問題視されている.2011年末現在,現政権は中国と17億

ドルの新たな融資につき交渉を進めており22,エクアドルにとって将来的に問

題のある資金調達を続けている.

当然ながら,実質的には公的債務に他ならない.

公的金融計画組織法(COPFP:Codigo Organico de Planificacion y Finanzas Pub-

licas・2010年10月22日発効)第124条に基づく.

中国は日量24万6千バレルのエクアドル産原油を確保している(2011年7月8日付 El

Comercio紙6面).

2011年11月27日付現地報道.

図表4 中国からの借款債務

契約日 融資額 条 件 /目 的 年利猶予

期間

償還

期間融資元

2009年7月 10億ドル原油担保(総量6912

万バレル)7.30% なし 2年

中国石油天然気集

団公司

2010年6月 16.82億ドルコカ・コード水力発

電所建設のため6.90% 5年 15年 中国輸出入銀行

同年8月 10億ドル 原油担保(総量不明) 6.00% 半年 4年 中国開発銀行

2011年2月 10億ドル原油担保(総量6912

万バレル)7.00% なし 2年

中国石油天然気集

団公司

同年6月 20億ドル原油担保(総量1億

3000万バレル)6.90%

2~

3年8年 中国開発銀行

同年7月 5.71億ドルソプラドラ水力発電

所建設のため6.35% 4年 15年 中国輸出入銀行

2012年7月(予定)

17億ドル 交 渉 中 中国開発銀行

出所:現地報道を基に筆者作成.

2011年7月18日付 Expreso紙2面,及び2011年12月31日付Hoy紙12面.

156 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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政府には国債を発行する手段も残されているが,国際信用力は低く,国際市

場での新規国債の取引は事実上不可能な状況にある23.

2011年末現在,スタンダード&プアーズは B-(Bマイナス),ムーディー

ズは Caa2,フィッチ・レーティングは B-と,格付会社3社ともエクアドル

をラテンアメリカ諸国のなかで最低ランクの投資不適格国としている.政府は

国内向けに総額35億ドル余りを起債し,社会保障庁銀行(BIESS)やエクア

ドル中央銀行が購入しているが,2012年以降の財政状況は苦しい資金繰りがさ

らに厳しくなる可能性が高い.借金による内需消費型の経済成長モデルは限界

を迎えつつある.

(3)悪化する経常収支

政府主導による「バラ撒き型」の経済体制は,需要の拡大を国内産業だけで

は賄えなくなり,輸入依存型の体質に陥ると一般的に考えられている.エクア

ドルにもその傾向が顕著に表れ,2005-10年期の平均輸入増加率は年率20.7%

となり,平均輸出増加率12.7%を上回るスピードで上昇している.2008年まで,

超過する輸入は原油輸出で相殺できたが,2009年から貿易収支は赤字に転じ,

貿易収支赤字は19億7873万ドル(2010年),石油関連を除く貿易収支赤字は76

億913万ドル(同年)となっている(図表5参照).結果的に,貿易収支赤字に

引きずられる形で,経常収支も19億1730万ドル(同年)の赤字に転じている.

政府は対応策として,タイヤ・液晶テレビ・白物家電・携帯電話・自動車(大

型トラックやバスを除くすべての完成車)・CKD(自動車組立用部品)など総

計51品目の輸入につき,事実上の輸入制限措置といえる輸入ライセンス制度を

導入した24.政府は膨らむ輸入を輸入制限措置や関税引上などを講じることで

2008年12月にグローバル債2012(2012は西暦を表し,その年に償還を迎える国債を意味

する),2009年2月にグローバル債2030を償還能力があるにもかかわらず,現政権が一方

的に不当な債務と位置づけ債務不履行(デフォルト)にし,額面の35%程で買い戻した

ことが尾を引いている.

2011年8月26日付官報第521号(貿易審議会(COMEXI)決議第17号),同年9月16日付

官報第536号(貿易審議会(COMEXI)決議第24号).

157エクアドルのドル化政策

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抑えようとしているが収まる気配はない.問題は輸入急増に留まらない.一見,

貿易輸出が増えているように見えるが,それはドル安・原油高の恩恵に依ると

ころが大きい.貿易輸出量は年平均2.2%(2008-11年期)の割合で減少して

いる.それは,政府による保護主義的な経済体制,輸出産業への締付けが制約

となっている.現在,ドル安・原油高により輸出産業への影響がさほど表面化

していないが,確実に輸出産業は衰退している.さらには,月額292ドル

(2012年)と高い法定最低賃金が重くのしかかる.賃金上昇率は年10%と生産

性の伸びを上回る勢いで引上げられており,社会保障費の加入が徹底されたこ

とで,法定最低賃金実額は月額370ドルに達する(図表6参照).

通常,国際競争力が弱くなった国は自国通貨を減価することで競争力を回復

できるが,通貨主権を持たないエクアドルはそのような通貨政策を行えないう

え,高い労働コストが重くのしかかり,輸出産業はジリ貧の状態にある.もし

仮にドル高に反転すれば,近隣競合国の競争力が高まり,エクアドルの輸出産

図表5 貿易収支の推移

出所:エクアドル中央銀行より筆者作成.

エクアドル中央銀行ホームページ Informacion Estadistica Mensual(http://www.bce.fin.ec/docs.php?

path=/homel/estadisticas/bolmensual/IEMensual.jsp)(2012年1月10日現在).

158 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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業への打撃は計り知れない.政府は原油輸出という外貨収入源に甘え,根本的

な対策を打ってこなかったことから,それ以外の産品の輸出競争力はますます

失われつつある.

(4)孤立の道を進むエクアドル

さらに,エクアドルの輸出産業にとって不利な状況が重なる.近隣競合国の

ペルーやコロンビアが米国・EU・ラテンアメリカ諸国と自由貿易協定

(FTA)を柱とする貿易促進,外資受入れを積極的に進めていることである.

現政権は,自由貿易は先進諸国に恩恵があっても,途上国にはなく,国際競争

力を持たない国内産業は外資企業に駆逐され壊滅する恐れがあるとの見解から,

FTA固辞の姿勢を崩そうとしない.

2011年2月,米国との特恵関税を定めたアンデス貿易促進・麻薬根絶法

(ATPDEA)25が失効した時も,政府は米国との協議を進めなかった.さらに

図表6 法定最低賃金の推移

出所:エクアドル中央銀行より筆者作成.

エクアドル中央銀行ホームページ Informacion Estadistica Mensual(http://www.bce.fin.ec/docs.php?

path=/homel/estadisticas/bolmensual/IEMensual.jsp)(2012年1月10日現在).

159エクアドルのドル化政策

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は,ウィキリークスによる米公電漏洩情報問題から,2011年4月にホッジス

(Heather Hodges)駐エクアドル米国大使に“ペルソナ・ノン・グラタ

(persona non grata:好ましくない人物の意)”を宣告し国外退去を命じたこ

とで,米国との外交関係は急速に冷えこんだ.2011年10月に米国議会がコロン

ビア・パナマ・韓国との FTA実施法案を可決したのにあわせ,アンデス貿易

促進・麻薬根絶法を2013年7月まで延長したことで,米国との特恵関税が再び

適用されることとなり問題は解消されたが,米国との間の溝が埋められたわけ

ではない.最近では2012年1月に,アフマディネジャード(Mahmoud Ah-

madinejad)イラン大統領のエクアドル訪問を受け容れており,米国との関係

改善は当面ないと見られる.

また,EUとの協議では“新植民地主義(ネオインペリアリスモ)”と揶揄

し本腰をいれようとはしない.また,エクアドルの名目 GDPが一人あたり

4000ドルを超えたことから,2013年末には,EUが低所得国及び低位中所得国

に適用している一般特恵関税(SGP plus:Sistema Generalizado de

Preferencias Arancelarias)の適用を打ち切る可能性が高い26.

ジェフリー・サックス(Jeffrey Sachs)ハーバード大学経済学部教授は,

ドル化政策の条件として,①米国経済と強い結びつきがあり,②経済規模が非

常に小さく,③非常に弾力的な労働市場を持ち,④中央銀行の通貨管理能力が

ない――国においてのみ成り立つと説く27.しかし,エクアドルはコレア政権

の下で反米姿勢を強め,原油を主とする一次産品への依存度が強く,財政赤字

をともなう内需消費型の経済成長モデルを進めることで経済規模が大きくなっ

ている.耐性の低いエクアドルがドル化政策を維持できるかは原油高とドル安

次第といえよう.

アンデス貿易促進・麻薬根絶法はアンデス諸国(エクアドル・コロンビア・ペルー・ボ

リビア)の経済発展を目的に,米国が特恵関税を適用することを条件に,アンデス諸国

に麻薬撲滅への取組みを要求するもの.1991年に適用が開始され,2008年からボリビア

は除外された.

2011年12月15~16日付現地報道.

Sachs, 1999年.

160 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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(5)遠退く民間投資

ドル化経済では,外国為替取引にともなうリスクがなくなり,通貨交換時の

スリッページなどの非効率も低減されることから直接投資の盛り上がりが起こ

るといわれているが,法的安定性の欠如が制約となり,エクアドルへの海外直

接投資(FDI)は1億6400万ドル(対前年比49%減)と低迷している(図表7

参照).コレア政権の不透明な経済政策,通貨政策の喪失,労働コストの上昇

による競争力低下なども相俟って,外資系企業の拠点はエクアドルから先行き

の明るいコロンビア・ペルーに移されている.日系企業も邦人駐在員を置く企

業が2007年には10社近くあったが,2011年末現在では5社28に減っている.

図表7 海外直接投資の推移

出所:経済誌OJOより筆者作成.

Boletın OJO OPF 94(http://www.observatoriofiscal.org/seccion-exclusiva/boletin-ojo.html)(2011

年5月17日現在).

トヨタ,日野,豊田通商,伊藤忠商事,前川製作所.

161エクアドルのドル化政策

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4.財政赤字に対する処方箋

通常であれば,このような深刻化する財政赤字の改善は喫緊の課題のはずで

ある.ドル化経済を維持するには財政収支を均衡に保たなければならない.ド

ル化経済では自国で通貨を発行できず,通貨発行権益(シニョレッジ)を活用

することができないので,政府が行える財政政策は歳入を増やすか,歳出を抑

える他はない.政府は補助金カットによる歳出削減策と,増税及び新税導入に

よる歳入拡大策を進めている.

補助金制度には,図表8の通り,主に石油燃料補助金,電力補助金,生活補

助金(BDH),住宅補助金がある.特に,石油燃料補助金は財政を圧迫する原

因の一つとなっている.レギュラーガソリン国内価格は約1.5ドル/ガロンと,

日本(約6.5ドル/ガロン)に比べると破格に安いが,エクアドルは産油国なが

図表8 政府補助金の推移

出所:経済誌OJOより筆者作成.

Boletın de Transparencia Fiscal(http://www.observatoriofiscal.org/seccion-exclusiva/boletin-de-

transparencia-fiscal.html)(2011年6月30日現在).

162 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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ら精製能力は限られており,石油燃料の多くをベネズエラやウルグアイからの

輸入に頼っている.政府は高値で輸入した石油燃料を,補助金をつけて市場価

格を統制し安く国民に提供している.その補助金への政府支出は年間44億ドル

(2010年)に達する.過去の政権は財政再建の一環として石油燃料への補助金

廃止を試みたが,国民の反発を招き政権交代へとつながっている.政府は石油

燃料への補助金を何とか削減したいところである29が,過去の経緯からも政治

的に触れてはならないタブーとなっている.

2011年12月には,キト・グアヤキル・クエンカなど主要都市空港でのジェッ

ト燃料への補助金を,2012年1月1日からカットすると決定した30.政府はこ

れまでジェット燃料費の6割を補助金として負担していたが,1月以降は全額

が航空会社の負担となる.

これらの他にも,現政権は補助金の削減を進めている.これまで中低所得者

層を対象に6万ドル以下の家屋を購入する者に対し,政府は5000ドルの住宅補

助金を支給してきた.現政権は助成対象上限額を6万ドルから2万ドルに引下

げている31.2011年7月には,これまで電力料金は一律6.8~9.3セント/Kw

であったのを,500Kw/月以上の電力を使用する世帯に対する補助金を累進的

に削減した32.

政府はこのように貧困層に,より裨益するよう補助金政策を見直す歳出抑制

策をとっている.また以下の通り,増税及び新税導入による歳入拡大策も進め

ている.2011年11月に,現政権発足後9度目となる税制改革を実施し,新税制

を定めた環境保護・国家歳入調整法(Ley de Fomento Ambiental y Optim-

現政権は膨らみ続ける石油燃料への補助金を抑えるべく努めている.具体的には,2011

年10月,政府は4万ドル以上の高級車もしくは排気量2000cc以上の中大型車に対する石

油燃料の市場価格を,ディーゼル:2.7ドル/ガロン,レギュラーガソリン:3.0ドル/ガ

ロン,ハイオクガソリン:3.9ドル/ガロンに2012年から段階的に引上げ,その他の自動

車については現行のままとする石油燃料補助金削減プランを発表した.ただし,計画段

階であり確定事項ではない(2011年10月28日付現地報道).

2011年12月16日付大統領令第968号(同月28日付官報第606号).

2011年7月14日付大統領令第821号(同月28日付官報第501号).

2011年6月9日付国家電気審議会(CONELEC)決議第034/11号.

163エクアドルのドル化政策

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izacion de los Ingresos del Estado)33を制定している.国内の自動車すべ

てを対象に市場価格・排気量・年数に合わせて累進課税にしたほか,炭酸飲

料・アルコール飲料・たばこなどの嗜好品の税率が引上げられた.また,対外

送金税も2%から5%に引上げられている34.

このように政府は財源確保に躍起になっているが,これら歳出抑制策・歳入

拡大策で浮く資金は8億ドル程度にすぎないと見られ,必要財源には大きく届

かず,現政権は大胆な歳出削減や増税に踏み込まない限り,財政赤字は積み上

がる状況にある.最近では,政府が資金繰りに苦慮している兆候が散見されは

じめている.

2011年7月,エクアドル中央銀行は“決議No.20-201135”を以て,中央銀

行に預ける預金準備の1%以上を政府金融機関発行の固定利付証券(国公債)

で保有するよう義務化した.

2011年9月には,財務省債務資金審議会(Comite de Deuda y Finan-

ciamiento)が決議第16号を採択し,公共事業の支払いの80%相当を国債払い,

残り20%相当を現金払いとすべく,総額3億ドルの国内向け国債の発行を認め

ている.これらの政策は政府資金の欠乏を示す兆候であり,政府の流動性不足

が指摘されている36.

5.脱ドル化の可能性

このようなエクアドルの経済情勢や政策動向を見ると,状況如何によっては

ドル化経済が限界に達し,自国通貨回帰政策がとられる可能性も考えられる37.

2011年11月24日付官報第583号.

正確な数字は手元にないが,法律発効前に,多くの外資系民間企業は対外送金税引上を

恐れ,他国に資産を移す措置をとった.

Resolucion No.20-2011(2011年7月7日付官報第486号).報道によるとこれで政府に

は総額2億ドル程度が入るという.

ファウスト・オルティス(Fausto Ortiz)元金融大臣(2007年7月~08年7月).

クエンカの地域通貨を政府が禁止したりしているが,地域通貨は政府が実験的に行わせ

ているという穿った見方があり,その噂を否定するための禁止だといわれる.

164 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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ドル化政策の命運を握るコレア大統領は,「エクアドルが米ドルを導入した

ことは大きな過ちであったが,経済学的にドル化政策は非常に簡単に行えても,

脱ドル化政策は社会的・経済的に甚大な影響を与えかねず,ほぼ不可能に近い.

現時点では,政府はドル化維持に向けた政策をとる」38旨の発言を行い,「エク

アドルのドル化経済を分析するにあたり,アルゼンチンの通貨制度39は重要で

ある.アルゼンチンが歩んだ実体経済悪化の過程を,エクアドルも同じように

歩んでいる.しかし,固定相場制は競争力に左右されない底堅い外貨収入源が

ある限り,永遠に存続することができる.エクアドルには原油と家族送金とい

った外貨収入源があり,原油は対 GDP比の21.6%(2004年),家族送金は対

GDP比9.4%(2004年)である.パナマには運河があり,エルサルバドルにも

家族送金がある.惜しむらくは,アルゼンチンには何もなかった」40と述べ,

ドル化政策を当面維持すべきとの見解を示している.

しかし,“Dolarizacion a medias”の著者,ベルナルド・アコスタ(Ber-

nardo Acosta)キト・サンフランシスコ大学経済学部講師は,「ドル化経済は

いずれ行き詰まり失敗する.エクアドルは原油への経済依存度を年々強めてい

ることもあり,ドル化経済を維持できるかどうかは原油価格次第である.たと

え財政赤字が累積したとしても,原油が現在の価格水準以上で推移するならば,

原油を元手に借入れを行い,景気を浮揚させられるのでドル化経済を維持でき

る.しかし,2008年末のように原油価格が急落すれば,政府に講じる手段は残

されておらず,輸入をストップさせ,歳出を削る他ない.歳出を切り詰めれば,

失業率の悪化は免れず,経済は一気に後退し,ドル化経済は終焉しよう」41と

2011年10月22日付現地報道(http://gestion.pe/noticia/360726/correa-dolarizacion-

ecuador-fue-error).

アルゼンチンは1991年からドルとペソを1対1でペッグし,通貨供給量は外貨準備高の

3倍以内とするカレンシーボード制を採用していた.当初,経済は順調に伸びたが,95

年のメキシコ危機,97年のアジア危機,99年のブラジル危機で,近隣競合国のブラジル

はいち早く自国通貨レアルと米ドルのペッグを切り離し,減価することで輸出競争力を

引上げ,経済危機を乗り切った.しかし,アルゼンチンは頑なにペッグを維持したこと

が仇となり,経済は悪化し,カレンシーボード制も崩壊した.

Correa, 2009年 pp.81-82.

165エクアドルのドル化政策

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警鐘を鳴らす.また同様に,マルセロ・バスケス(Marcelo Vasquez)クエ

ンカ大学経済学部教授は,「エクアドルのドル化経済は,原油価格の高騰と米

国・欧州に住む移民からの多額の家族送金,この二つの要因に支えられている.

2008年の世界的危機のように,原油価格が急落し,家族送金が減少すれば,ド

ル化制度は危険な状態に陥ろう」42と述べる.

一方,ファビアン・コラル(Fabian Corral)カトリカ大学経済学部教授は,

「現状では脱ドル化は難しい.脱ドル化政策をとるには事前に影響分析を詳細

に行っていなければならず,短期間でそう簡単にできるものではない.脱ドル

化政策をとった場合,富裕層だけではなく,中間層,貧困層を含め国内全体に

影響が及ぶ.通貨当局に新通貨の価値を維持するだけの能力はない.新通貨を

導入しても日々減価し,労働者の給与の価値は目減りし,価値のまったくない

紙幣をただ印刷するだけになる」43と脱ドル化の可能性は低いと指摘する.同

様に,ハイメ・カレラ(Jaime Carrera)キト商工会議所特別顧問も,「経済

ファンダメンタルズが軒並み悪化しているなかで,脱ドル化政策をとれば悪影

響しか与えない.脱ドル化はドル化制度維持よりも困難であり,さらなる経済

混乱を来すだけである」44旨述べている.また,国際通貨研究所の松井謙一郎

上席研究員は,「ドル化政策は一旦政策を実施した場合に逆戻りすることが難

しく,政策の不可逆性・ロックイン効果が強い」45と指摘しつつ,「エクアドル

は原油・郷里送金という底堅い外貨収入源があるので脱ドル化政策をとる可能

性は低い.また,脱ドル化をしたところで通貨当局に外国為替操作の能力はな

く,経済的な混沌のみならず,政権崩壊といった政治的混沌をもたらしかねな

い」46との見解を示す.また一方で,マルコ・ナランホ(Marco Naranjo

2011年10月29日 意見聴取.

2010年1月9日付 El Comercio紙.

2009年4月1日 セミナー「エクアドルの政治経済の現状」(エクアドル工科大学主催)

にて聴取.

2009年4月15日 セミナー「エクアドル経済の展望」(エクアドル工科大学主催)にて聴

取.

松井謙一郎,2010年 p.93.

2011年11月21日 意見聴取.

166 立正大学経済学季報第61巻3・4号

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Chiriboga)ラテンアメリカ社会科学高等研究所(FLACSO)経済学部教授は,

導入後のインフレ率・失業率・利子率・経済成長率など経済指標からドル化を

評価しつつ,「エクアドルが自国通貨回帰の政策をとった場合には大惨事に匹

敵するコストをともなう.再び財政・インフレ率・失業率・利子率等の悪化に

苛まれ,預金引出し・資金流出といった“信用危機”を乗り越えなければなら

ない」旨述べている47.

脱ドル化の過程は,単にドルから自国通貨に回帰するという通貨の変更・切

り替えという意味と,それに続く一連の経済運営がある.前者については未経

験の事柄であるというばかりでなく,後者についてのノウハウの欠如も懸念さ

れる.エクアドル中央銀行は,ドル化したことによって,自国通貨の対外的価

値を安定化させるという通貨政策を放棄したばかりでなく,ドル化以前よりも

政策推進能力が劣化し,金融政策の実施能力を喪失したと言われることも多

い48.

このように,政治家をはじめ,実務者,研究者も多くはドル化経済を続ける

ほうが得策であり,脱ドル化政策を実施しても経済が好転する可能性は極めて

低いと考えている.さらには,脱ドル化政策は政権崩壊につながりかねない政

治的リスクを孕んでおり,2013年の大統領選挙49で再選を目指すコレア大統領

が脱ドル化政策の選択肢を選ぶ可能性は低いとする見方が大宗を占めている.

Naranjo, 2004年.

1998年憲法第261条では「中央銀行は公益法人として国家の金融政策(通貨・クレジッ

ト・為替)に関する実務運営の独立性を有する」ことが明記されていたが,2008年10月

の憲法改正で,「金融政策は中央銀行を介し実施され,行政府(大統領府)が専有的機能

を有する.中央銀行は公益法人であり,法律により組織運営を別途定める」(第303条)

と改められ,法律面でも中央銀行の独立性は廃されるに至っている.また現実的にも,

実務的にもドル化によって,エクアドル中央銀行は金融政策を行わなくなっており,政

策実行能力が失われたとの見方は多い.ただし,エクアドル中央銀行は,中央銀行によ

る伝統的な金融政策とは異なる金融政策を実施してきており,金融政策を行っていない

かどうかは検討を要する.それらについては稿を改めることにしたい.

2012年10月18日に総選挙が公示され,2013年2月17日に大統領選第1回投票,並びに国

会議員・県知事・市長・アンデス議会議員選挙,同年4月7日に大統領選決選投票が実

施される.次期大統領の就任式は2013年5月24日に執り行われる.

167エクアドルのドル化政策

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確かに,政治情勢を加味すれば脱ドル化政策をとる可能性は極めて低いが,現

在の堅調な経済成長は,多額の財政赤字をともなう政府主導の「バラ撒き型」

経済モデルに起因するところが大きく,経常収支赤字も深刻化しつつある.ド

ル化経済において双子の赤字を続けて行くことは困難といえ,ドル化政策を揺

るがしかねない不安要素が増えつつあるのも事実といえよう.

おわりに

米ドルを法定通貨に導入してから10年余りが経過した.一見,経済不安は過

去のものとなり,堅調な経済成長を示している.しかし一方で,現政権による

不透明な経済政策が制約となり,世界経済から取残され,国内の実体経済・社

会情勢は厳しさを増している.さらに,自国通貨を持たないエクアドルがドル

化政策を維持し,経済成長を続けていくためには,経常収支と財政収支を健全

化する必要がある.双子の赤字は是が非でも避けなければならない喫緊の課題

であるが,コレア政権は目先の政局に注意を払うばかりで,財政赤字・経常収

支赤字は垂れ流され,累積債務の問題を先送りにしている.状況次第によって

は,政府は2012年以降,ますます資金調達が困難となり,財政運営に支障を来

す局面が懸念される.

エクアドルはドル安・原油高によってドル化政策の持続が可能な状態にある

が,経済基盤の弱体化が進んでおり,ドル化政策を揺るがしかねない不安要素

が増えつつある.政府の制度維持という意思とは無関係に,エクアドル経済は

刻一刻とドル化の前提条件ともいうべきクライテリアを満たさなくなっている

ともいえ,突然,政府の意図しないドル化の終焉を迎える可能性も否定できな

くなっている.

ドル化政策を「ドル化」ではなく,「ドル化維持」政策として安定的な制度

とするためには,借金による内需消費型の経済成長モデルから脱却し,財政を

立て直し,投資環境を整え,競争力を高め,輸出主導型の成長モデルに切り替

えなければならないだろう.

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(文中,意見にわたる部分は個人的見解であり,所属とは無関係であることを

お断りしておく)

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171エクアドルのドル化政策