ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 ·...

21
世界の鉱業の趨勢 2006 251 ペルー <2005 年の注目すべきポイント> ・ペルーは、鉱物資源が豊富で多岐に及び、多くの鉱種で世界の主要生産国となっている(2005 年は、 銅 4 位、亜鉛 3 位、鉛 4 位、金 5 位、銀 1 位、モリブデン 4 位)。特に、銅及び金の鉱山生産量は この 10 年間で 2.5 倍に拡大した。 ・最近の経済情勢の安定化、非鉄市況の高騰を背景に、2005 年も引き続き鉱山開発投資が活発に行 われ、新たな鉱山として、2005 年 6 月には Lagnas Norte 金鉱山(Barrik Gold)、2006 年 3 月には Pallca 亜鉛鉱山(三井金属他)が誕生した。 ・しかしながら、最近、鉱業ロイヤルティ制度の導入、地域住民との相次ぐ衝突、民族主義勢力の台 頭など、将来の鉱業投資にブレーキをかける動きが顕在化しており、これらの問題に 7 月に発足す るガルシア政権がいかに対応、解決していくかが、ペルーの持続的な鉱業発展にとって重要な鍵と なる。 1. 非鉄金属一般概況 ペルーは、鉱物資源が豊富で多岐に及び、多 くの鉱種で世界の主要生産国(2005 年は、銅 4 位、亜鉛 3 位、鉛 4 位、金 5 位、銀 1 位、モリ ブデン 4 位)となっているのが特徴的で、特に、 経済価値の大きい銅及び金の生産量はともにこ の 10 年間で約 2.5 倍と大きく拡大しているの が特筆される。なお、最新のフレーザーレポー トによると、ペルーは、地質ポテンシャルの分 野で世界 1 位にランクされており、世界の投資 家からも高い評価が得られている。 このような地質的な側面に加え、最近の経済 情勢の安定化、非鉄市況の高騰を背景に、生産、 探鉱開発とも活況を呈している。 2005 年の鉱産物生産では、これまで増産基 調が続いていた銅は前年並の水準の 1,010 千t に留まったが、金は前年比で 20%の増産となり 初めて 200t を突破し、世界第 5 位の産金国に 躍進した。また、銅の副産物として生産される モリブデンも 20%以上の増産となった。 このような堅調な鉱産物生産と、非鉄市況の 高値推移により、2005 年の鉱産物の輸出額は 前年比 4 割増の 97.2 億ドルと大きく拡大し、 これがペルーの総輸出額を大きく押し上げ、 2005 年の総輸出額は前年比 37%増の 172.5 億 ドルに達した。 鉱山開発分野では、2005 年 6 月にペルーで 3 番目の大規模金山となる Lagnas Norte 金山 (Barrick Gold 社)が操業を開始したのをはじ め、Rio Blanco、Toromocho、Marcona 等の大 規模銅・金開発プロジェクトが数多く進展して おり、近い将来、ペルーがチリに次ぐ産銅国と して重要な銅供給国になるものと期待されてい る。なお、2005 年の鉱業投資額は 11.8 億ドル で、これは、総投資額(24.8 億ドル)の約半 分近くを占めている。 我が国企業との関係では、2004 年に住友グ ループが資本参加を決定した Cerro Verde 銅山 の拡張工事は、2006 年第 4 四半期の操業開始 に向けて順調に進展しており、本格操業移行後 には現在の産銅レベルの 3 倍となる約 30 万 t の銅生産量が見込まれている。また、2006 年 3 月には、1968 年以来本邦企業が操業している ワンサラ鉱山の近傍に新たな亜鉛鉱山としてパ ルカ鉱山が本格操業を開始し、本邦企業 100% 資本による 2 つ目の亜鉛鉱山が誕生したことも 特筆される。 一方、ペルー政府も政府保有の大型銅鉱床案 件について入札による民間譲渡を進めており、 2003 年の Toromocho、2004 年の Las Bambas に 続き、2005 年 12 月には La Granja 銅鉱床の入 札を行い、Rio Tinto 社が落札(落札額 22 百万 ドル)した。2006 年には、かつて、JICA/MMAJ による資源開発協力基礎調査によって発見され た Michiquillay 大型銅鉱床の入札が予定され ており、鉱業関係者の注目が集まっている。 このようにペルー鉱業は好調な発展を遂げて きているが、その一方で、鉱山開発投資にブレ ーキをかける動きも顕在化している。ペルーで は、最近、操業鉱山あるいは探鉱開発プロジェ クトに対する地元住民による過激な抗議行動が 頻発し、その中には、鉱山の操業停止、探鉱開

Upload: others

Post on 12-Jun-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 251

中南米

ペルー

ペルー

<2005 年の注目すべきポイント>

・ペルーは、鉱物資源が豊富で多岐に及び、多くの鉱種で世界の主要生産国となっている(2005 年は、

銅 4 位、亜鉛 3 位、鉛 4 位、金 5 位、銀 1 位、モリブデン 4 位)。特に、銅及び金の鉱山生産量は

この 10 年間で 2.5 倍に拡大した。

・ 近の経済情勢の安定化、非鉄市況の高騰を背景に、2005 年も引き続き鉱山開発投資が活発に行

われ、新たな鉱山として、2005 年 6 月には Lagnas Norte 金鉱山(Barrik Gold)、2006 年 3 月には

Pallca 亜鉛鉱山(三井金属他)が誕生した。

・しかしながら、 近、鉱業ロイヤルティ制度の導入、地域住民との相次ぐ衝突、民族主義勢力の台

頭など、将来の鉱業投資にブレーキをかける動きが顕在化しており、これらの問題に 7 月に発足す

るガルシア政権がいかに対応、解決していくかが、ペルーの持続的な鉱業発展にとって重要な鍵と

なる。

1. 非鉄金属一般概況

ペルーは、鉱物資源が豊富で多岐に及び、多

くの鉱種で世界の主要生産国(2005 年は、銅 4

位、亜鉛 3 位、鉛 4 位、金 5 位、銀 1 位、モリ

ブデン 4 位)となっているのが特徴的で、特に、

経済価値の大きい銅及び金の生産量はともにこ

の 10 年間で約 2.5 倍と大きく拡大しているの

が特筆される。なお、 新のフレーザーレポー

トによると、ペルーは、地質ポテンシャルの分

野で世界 1 位にランクされており、世界の投資

家からも高い評価が得られている。

このような地質的な側面に加え、 近の経済

情勢の安定化、非鉄市況の高騰を背景に、生産、

探鉱開発とも活況を呈している。

2005 年の鉱産物生産では、これまで増産基

調が続いていた銅は前年並の水準の 1,010 千t

に留まったが、金は前年比で 20%の増産となり

初めて 200t を突破し、世界第 5 位の産金国に

躍進した。また、銅の副産物として生産される

モリブデンも 20%以上の増産となった。

このような堅調な鉱産物生産と、非鉄市況の

高値推移により、2005 年の鉱産物の輸出額は

前年比 4 割増の 97.2 億ドルと大きく拡大し、

これがペルーの総輸出額を大きく押し上げ、

2005 年の総輸出額は前年比 37%増の 172.5 億

ドルに達した。

鉱山開発分野では、2005 年 6 月にペルーで 3

番目の大規模金山となる Lagnas Norte 金山

(Barrick Gold 社)が操業を開始したのをはじ

め、Rio Blanco、Toromocho、Marcona 等の大

規模銅・金開発プロジェクトが数多く進展して

おり、近い将来、ペルーがチリに次ぐ産銅国と

して重要な銅供給国になるものと期待されてい

る。なお、2005 年の鉱業投資額は 11.8 億ドル

で、これは、総投資額(24.8 億ドル)の約半

分近くを占めている。

我が国企業との関係では、2004 年に住友グ

ループが資本参加を決定した Cerro Verde 銅山

の拡張工事は、2006 年第 4 四半期の操業開始

に向けて順調に進展しており、本格操業移行後

には現在の産銅レベルの 3 倍となる約 30 万 t

の銅生産量が見込まれている。また、2006 年 3

月には、1968 年以来本邦企業が操業している

ワンサラ鉱山の近傍に新たな亜鉛鉱山としてパ

ルカ鉱山が本格操業を開始し、本邦企業 100%

資本による 2 つ目の亜鉛鉱山が誕生したことも

特筆される。

一方、ペルー政府も政府保有の大型銅鉱床案

件について入札による民間譲渡を進めており、

2003 年の Toromocho、2004 年の Las Bambas に

続き、2005 年 12 月には La Granja 銅鉱床の入

札を行い、Rio Tinto 社が落札(落札額 22 百万

ドル)した。2006 年には、かつて、JICA/MMAJ

による資源開発協力基礎調査によって発見され

た Michiquillay 大型銅鉱床の入札が予定され

ており、鉱業関係者の注目が集まっている。

このようにペルー鉱業は好調な発展を遂げて

きているが、その一方で、鉱山開発投資にブレ

ーキをかける動きも顕在化している。ペルーで

は、 近、操業鉱山あるいは探鉱開発プロジェ

クトに対する地元住民による過激な抗議行動が

頻発し、その中には、鉱山の操業停止、探鉱開

Page 2: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

252 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

発活動の停止に発展するケースも散見される。

特に、2005 年の半ばには、世界的な著名鉱山

である Tintaya 銅山、大規模な銅鉱床探鉱開発

プロジェクトである Rio Blanco プロジェクト

で、鉱業活動が一次的に停止する等のトラブル

が発生した。政府は、これら問題の解決を図る

ために、2006 年 1 月に、エネルギー鉱山省内

に社会管理総局を新設し、鉱山操業、探鉱開発

活動を行なう鉱業会社と地元の地域社会との間

に立ち、紛争の予防、万一紛争が発生した場合

にはこの解決に積極的に取り組む姿勢を示して

いる。

また、政府は、これら争議の大きな背景の一

つでもある環境保全問題に対し、法整備を進め

ており、操業中の鉱山・製錬所は環境改善が進

んでいる。また、閉山後の措置についても、

2003 年 10 月に閉山法を定め、その後、同法施

行細則は未だ検討段階ながら進展が期待される。

今後の大きな課題は、鉱産国として歴史のある

同国に多々存する廃鉱による環境汚染の問題で、

今後、これらに必要な経費対応も含め、法制面

での進展が期待される。

2004 年 6 月に成立し 2005 年 2 月より徴収を

開始した鉱業ロイヤルティについては、国税庁

より 2005 年の納付状況が発表され税安定化契

約を盾に大手外国企業が納付していない実態が

明らかになったことを契機に、国会において、

すべての企業から納付を求める議論が急速に高

まっており、今後の鉱業ロイヤルティ徴収を巡

る動きが注目される。

ペルーでは、2006 年 4 月に大統領選挙が実

施され、民族主義者で、反米・資源の国家管理

強化等を訴えたオジャンタ・ウマラ候補が、ト

ップとなり、一時、鉱業界に、警戒心が高まっ

たが、6 月の決戦投票で、中道左派の元大統領

ガルシア氏が、逆転勝利をしたことで、安堵の

空気が広がっている。ガルシア次期大統領は基

本的には、外資の重要性を認めており、当面現

政権の鉱業政策を踏襲するとの見方が有力であ

るが、上記の鉱業ロイヤルティへの対応や地域

住民問題など解決すべき課題は多く、その政策

運営が注目される。

2. 鉱業政策の主な動き

(1) 大型銅鉱床の入札・民営化

政府は、鉱業振興策の一環として、政府保有

の優良鉱床の入札による民営化を進めている。

この中でも、大型銅鉱床の入札・民営化は、当

国の鉱業発展に大きく影響し、とくに 近の銅

価高騰は、これら鉱床の開発に追い風となって

いることから、政府の鉱業政策上の重点課題と

なっている。

2003 年 5 月には、Toromocho、2004 年 8 月に

は Las Bambas の国際入札が行われ、それぞれ、

Peru Copper 社(加)、Xstrata 社(スイス)が落

札した。2005 年は、12 月に La Granja の入札

が行われ、この結果、Rio Tinto 社が唯一応札

し、政府が定めた 低入札価格(22 百万ドル)

で落札した。政府は、既存調査に基づき鉱量は

12 億 t(銅 0.65%)としているが、ヒ素の含有率

が比較的高く、これが開発を検討する上での課

題と言われている。政府との契約による開発オ

プション権行使の猶予期間は 3 年(両者合意に

より 2 年の延長可)たが、Rio Tinto 社が、銅

価の先行きが明るい状況を追い風としてどの様

に対処し、開発に至ることができるか、今後の

進展が注目される。

2006 年 の 大 型 入 札 案 件 と し て は 、

Michiquillay 銅開発プロジェクトが予定され

ている。投資促進庁によると、入札公示は 7 月

下旬、入札は 10 月になる見通しであるとして

いる。但し、これは、地元住民に対する公聴会

で地元の 終合意が得られることが前提であり、

本日程は流動的である。同プロジェクトは、過

去、 Asarco 社( 1959 年~ 1965 年)及び

JICA/MMAJ 及び日本企業(1972 年~1976 年)

による探鉱(159 本のボーリング(総掘削長

41,600m)、探鉱坑道 2,500m)が実施されてお

り、その結果、鉱量は 5.44 億 t、平均銅品位

0.69%、金品位 0.1~0.5g/t という数字が得ら

れている。

Page 3: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 253

中南米

ペルー

表 1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

(単位:百万$)

月/年 プロジェクト 買い手 買収額 投資公約12/92 Hierro Peru S.A. Shougang Corporation(China) 128.3 175.9 02/93 Proyecto Quellaveco Mantos Blancos(Chile) 12.8 2.5 03/94 Mina Cerro Verde Cyprus Minerals(USA) 35.4 445.9 05/94 Proyecto La Granja Cambior-Billiton 7.0 28.0 05/94 Refineria de Ilo Southern Peru Copper Corp. 66.6 20.2 11/94 EME Tintaya S.A. BHP Billiton(Australia) 275.2 85.0 02/95 Refineria Cajamarquilla Cominco(Canada)/丸紅 154.5 20.0 09/96 Proyecto Antamina Rio Algom/Noranda/Teck(Canada) 20.0 2,520.0 04/97 Yauliyacu S.A. Yuracmayo S.A.(Peru) 8.5 110.2 09/97 Mahr Tunel S.A. Volcan CIA Minera S.A.(Peru) 127.8 60.0 10/97 MetalOroya S.A. Doe Run(USA) 121.5 120.0 08/98 Cobriza S.A. Doe Run(USA) 7.5 7.5 09/99 Paragsha S.A. Volcan CIA Minera S.A.(Peru) 61.8 70.0 03/01 Iscaycruz S.A.(25%) Glencore(Suiza) 18.6 20.0 03/02 Yauricocha Soc. Minera Corona S.A.(Peru) 4.3 3.0 12/02 Alto Chicama Barrick Gold Corp.(Canada) 38.5 370.0 05/03 Morococha Soc. Minera Corona S.A.(Peru) 1.0 3.0

出典:MEM

表 2. 開発オプション権譲渡による民営化探鉱・開発プロジェクト

月/年 プロジェクト 落札者 対象鉱物 落札額 鉱量 期限

05/03 Toromocho Peru Copper Syndicate(米)

銅 1百万ドル 364百万t(Cu 0.67%)

5年

08/04 Las Bambas Xstrata (スイス)

銅 121百万ドル 500百万t(Cu 1.00%) *期待

4年 *2年延長可

03/05 Bayovar CVRD(ブラジル) リン 1百万ドル、3年経過時点から毎年0.5百万ドル(操業終了時迄)

820百万t 5年

12/05 La Granja Rio Tinto 銅 22百万ドル 1200百万t(Cu 0.65%)

5年以内にF/S終了し、開発オプション権を行使するか決定。行使後5年以内に操業開始

出典:MEM

(2) 鉱業ロイヤルティーを巡る動き

2004 年 6 月の鉱業ロイヤルティー法成立、

同年 11 月の施行細則を受け、2005 年 2 月より

徴収を開始した(徴収対象は、本法が成立した

2004 年 6 月以降に遡及)。

課税率は一般に、精鉱の年間総売上額に応じ

1~3%が課税(~60 百万ドル/年:1%、60~

120 百万ドル/年:2%、120 百万ドル ~/年:

3%)され、大規模鉱山会社から多くを徴収す

る意図がある。また、これらの徴収金は、鉱山

の存在する地元に全額配布され、インフラ整備

等の鉱山地域の振興に充当される。

鉱業ロイヤルティ成立当初、税安定化契約下

にある企業は、その契約期間中は鉱業ロイヤル

ティの徴収は免れるとの認識が大勢であった。

しかしながら、2005 年 4 月、ペルー・憲法裁

判所長官が、鉱業ロイヤルティは、鉱物資源の

採掘に対する国への対価であり、税ではないと

して、この認識の再考を促すとともに、その適

用範囲の決定を政府(経済財務省、国税庁、エ

ネルギー鉱山省)に求める発言をしたことで、

鉱業ロイヤルティを巡り新たな騒動、混乱が発

生した。

これに対し、サンチャス・エネルギー鉱山大

臣は、税の安定化契約を締結しているプロジェ

クトの大多数が、「あらゆる新たな金銭的徴収

を免れる」という契約内容となっていることを

根拠に、本安定化契約を締結しているプロジェ

クトは契約に明記されている期間中、鉱業ロイ

ヤルティは免除されるとの見解を改めて示した。

但し、 終的に判断するのは経済財務省とし、

問題解決を経済財務省に委ねる発言をしたが、

Page 4: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

254 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

その後、政府による鉱業ロイヤルティの適用範

囲の結論が明確化しない状態のまま、現在に至

っている。

このような状況の中、2006 年 5 月に、ペル

ー国税庁(SUNAT)により、2005 年の鉱業ロイ

ヤルティの納付状況が発表され、2005 年に支

払われた鉱業ロイヤルティの総額は 2 億 2 千万

ソーレス(約 0.67 億ドル)で、大手企業 10 社

が税安定化契約を盾に支払いをしていない実態

が明らかになった。(表 3.参照)これを受け、

現在、国会内で、ロイヤルティの徴収をより確

実なものとするために、国税庁(SUNAT)に、

ロイヤルティの徴収、監督、罰則に関する権限

を与えるとともに、すべての企業からロイヤル

ティの徴収を求める法案を審議中であると言わ

れ、注目が集まっている。

表 3. ペルー鉱山会社の納税状況

鉱山会社合計 174 社のロイヤルティ納付状況

税安定化契約有り 税安定化契約無し

納付済 未納付 合計 納付済 未納付 合計

5 社 10 社 15 社 61 社 65 社

(操業鉱山なし)

33 社

(活動中)

159 社

*税安定化契約を理由に未納付の企業は以下の 10 社。

BHB Billiton、Antamina、 Milpo、 Santa Luisa、Sipan、Doe Run、Los Quenuales、

Barrick Misquichilca、Yanachocha、Cerro Verde

(3) 最近の地元住民による鉱業関係争議

ペルーでは、 近、操業鉱山あるいは探鉱開

発プロジェクトに対する地元住民による過激な

抗議行動が頻発し、その中には鉱山の操業停止、

探鉱開発活動の停止に発展するケースも散見さ

れ、大きな問題となっている。特に、2005 年

の半ばには、世界的な著名鉱山である Tintaya

銅山、大規模な銅鉱床探鉱開発プロジェクトで

ある Rio Blanco プロジェクトで、操業あるい

は探鉱活動が一次的に停止する等、世界的な話

題ともなった。

これらの争議は、大きく、操業利益の地元へ

の直接的還元を求めるものと、環境汚染を懸念

し鉱業活動そのものの中止を求めるものとに大

別される。

前者については、操業鉱山を抱える地元は一

般に、雇用、インフラ整備等の点で鉱山の恩恵

に浴していることは十分認識されているので、

終的に操業停止に追い込む意図はない。従っ

て、適当な仲介者が立ち、地元に対しある程度

の利益還元が図られる見通しが立つと、過激な

行動は沈静化し、操業も普段の状況に回復する。

この種の争議の代表として、Tintaya 銅山

(2005 年 5 月)、Antamina 鉱山(2005 年 3 月、6

月)での争議が挙げられるが、前者は約 4 週間

の操業停止、後者はほとんど操業に影響無く、

その後設けられた鉱山側と地元との協議の場に

おいて平和的に問題を解決する方向で進んでい

る。

一方、後者については、探鉱開発プロジェク

トにおいて多く見られ、現段階においては地元

に対する裨益も少ないことから、プロジェクト

の即時中止を求める場合が多い。従って、会社

側と地元との協議の進展次第では、プロジェク

トからの撤退にも繋がりかねず、この場合、会

社側には多大な損害をもたらすことになる。こ

の種の争議の代表として、La Zanja 金鉱床

(2004 年 11 月)、Yanacocha 金山の San Cirilo

金鉱床(2005 年 5 月)、Rio Blanco 銅鉱床(2005

年 8 月)の各探鉱開発プロジェクトが挙げられ

る。この内、San Cirilo 金鉱床を除き、La

Zanja 金鉱床の場合は約半年後、Rio Blanco 銅

鉱床の場合は約半月後に活動を再開している。

地元の環境汚染に対する懸念の程度と、将来的

に鉱山操業に至った場合に期待される地元への

便益の程度との天秤の中で、個々のプロジェク

トにより争議後の動向に大きな差があると見ら

れる。

これらの争議の背後には、鉱業活動に批判的

な NGO、左翼系組織等による煽動も示唆されて

Page 5: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 255

中南米

ペルー

おり、過激抗議行動勃発の潜在的な脅威に変化

はないとの認識から、関係会社、鉱業協会、政

府等は、これを未然に防ぐべく対応策を講じて

いる。政府は、2006 年 1 月に、鉱山と地域社

会の良好な関係構築を目指し、エネルギー鉱山

省内に社会管理総局を新設するなどの対応を講

じている。本新設局では、鉱山操業、探鉱開発

活動を行なう鉱業会社と地元の地域社会との間

に立ち、紛争の予防、万一紛争が発生した場合

にはこの解決に努める。このため、鉱山業につ

いて正しい認識を得るための地元への啓蒙、環

境影響評価に対するより積極的な関与、関係の

国際協力事業の推進等を行なう計画であり、こ

のような取り組みが今後この種の問題の沈静化

に繋がるか注目される。

(4)カノン税(鉱業地域還元税)の交付問題

ペルーでは、所得税の 50%を地域振興に資

するために鉱山が存在している地方に還元する

ために設立されたカノン税(鉱業地域還元税)

というしくみがあり、 近の企業業績の向上に

より、2005 年は、鉱業地域還元税(カノン

税)は 21 億ソーレス(約 6.4 億ドル)に達し、

10 年前に比較し 10 倍以上増加していると言わ

れている。しかしながら、公共投資国家委員会

(SNIP)によると、この内、実際に地方に交付

されたのは 9 億ソーレス余りであり、本来交付

されるべき税収の半分程度しか、地域には還元

されていないという実態が明らかになっている。

カノン税が地方に交付されるプロセスとして、

まず、地方自治体が、当該地域に必要な公共事

業に関する要請書を SNIP に提出し、SNIP が、

それを審査し承認することによってカノン税が

交付されることになっている。しかし、実態は、

地方自治体側のプロジェクト企画立案能力の不

足から、SNIP に 近の急激な税収の増額に呼

応するような案件が集まっておらず、結果的に、

地域に交付がしたくてもできないという問題が

顕在化している。これに対し、企業側は、所定

の税の支払いのほかに、社会的責任(CSR)の

観点から、自発的に地域社会に対し、教育、医

療、公共工事などの分野に積極的に貢献を図っ

ているが、行政側のこのような構造的な問題が

解決されない限り、現在頻発している地域住民

との様々なトラブル、ひいては、今回の大統領

選や議会選挙における民族主義者の台頭は避け

られないとし、行政側の早急な対応・解決を強

く求めている。行政側では、地方自治体幹部へ

の研修等の人材育成や SUNIP の地方分権化を進

める動きもあるが、この問題の根本解決には時

間を要するものと見られる。

(5) 環境改善法令の進展

ペルー政府は、世界的な環境意識の高まり、

また今後の鉱業振興を図る上で鉱業に対するダ

ーティーなイメージを払拭する観点からも、鉱

業に係わる環境改善法令の整備に力を入れてい

る。とくに昨今、各地で頻発する鉱業関係の争

議が、鉱業活動による環境汚染懸念に根ざした

ものが多いだけに、これらの争議を沈静化する

意図もある。

ペルーでは既に、操業中の鉱山・製錬所につ

いては環境適正化計画(PAMA)を制度化し、本計

画書の提出(1997 年)とその後の実行により、

多くは環境改善が達成されている。これに続く

環境改善の取り組みとして、 近、政府が力点

を置いているのは、閉山後の環境対策と環境汚

染の元凶となっている廃鉱に起因する環境汚染

対策である。

この内、閉山後の環境対策については、操業

中の鉱山、今後の新規鉱山を対象に、2003 年

10 月、閉山法を定め、同施行細則を 2005 年 8

月に公布した。これにより、操業鉱山は施行細

則公布後 1 年以内に、新規の鉱山開発プロジェ

クトについては EIA(環境影響評価)承認後 1 年

以内に、閉山計画書をエネルギー鉱山省に提出

し、承認を得なければならない。本計画書には、

閉山後に必要な、鉱山周辺住民の健康保全及び

安全確保、自然環境保全、鉱山跡地回復等に係

わる対策と共に、これらに必要な経費調達を保

証する具体的な措置等を明記する必要がある。

一方、廃鉱に起因する環境汚染対策を推進す

るため、2004 年 7 月、対象鉱山の適正な閉山

処理と周辺の環境改善を求める法律を定め、同

施行細則を 2005 年 12 月に公布した。これによ

り、エネルギー鉱山省より環境汚染を生じてい

る廃鉱の環境改善義務があるとの通知を受けた

者は、通知後 1 年以内に改善計画を提出し、本

改善計画の承認後、原則 3 年以内にこれを実行

しなければならない。また、環境汚染改善の義

Page 6: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

256 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

務者が特定できない対象鉱山については、政府

が今後これに対応する。政府は、過去の国営鉱

山に伴う鉱害対策も含め、対策基金を設立して

これに対応する計画だが、 終的に必要な対策

費総額は少なくとも 2 億ドル、場合によっては

5 億ドルに達すると試算している。このため、

政府は諸機関への支援にも期待しており、既に

世銀、米州開発銀行からの資金貸与も決定して

いる。

この様に、政府は、鉱業分野に係わる環境改

善法令の整備に力を入れ、確実な進展を見てお

り、この面で政府努力に対する一定の評価は与

えられるが、今後、これらの法整備により具体

的にどの程度の環境改善が進むかが注目される。

3. 主要鉱山物の生産・輸入・消費・輸出動向

(1) 鉱石生産

2005 年の主要鉱産物の鉱山生産量(表 4.参

照)は、金が 20%増と大幅に増産し、初めて

200tを突破し、世界第 5 位の金生産国に躍進

したものの、銅、亜鉛は、それぞれ、2.5%減、

0.6%減と伸び悩んだ。

表 4. 主要鉱産物の鉱山生産実績推移

鉱種 単位 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 増加率(%)

銅 t 722,031 843,213 842,579 1,035,574 1,009,898 -2.5

鉛 t 289,535 297,704 308,874 306,211 319,345 4.3

亜鉛 t 1,056,681 1,221,830 1,372,790 1,209,006 1,201,671 -0.6

金 kg 137,828 157,013 172,619 173,219 207,822 20.0

銀 kg 2,673,495 2,686,563 2,920,922 3,059,829 3,193,146 4.4

錫 t 38,182 38,815 40,202 41,613 42,145 1.3

モリブデン t 9,499 8,616 9,561 14,246 17,325 21.6

注)鉱石中の金属量 出典:MEM

金は、ペルー 大の Yanacocha 金山の大幅増

産 (前年比 14.1%増)や 2005 年 6 月に開山し

た Lagnas Norte(Alto Chicama)の誕生に加え、

金価格の高値推移による地元の中小金山の産金

量が全体的に伸びたことから、全体の産金量は

前年比 20%増の 207.8t と世界 5 位の金生産国

となった。今後も、Mians Conga や Cerro

Corona などの鉱山開発が進んでおり、堅調な

推移が期待されている。

銅については、ペルー 大の Antamina 鉱山

は増産(前年比 3.3%増)したものの、Southern

Copper(SC)社の 2 つの銅山(Toquepala 鉱山及

び Cuajone 鉱山)が品位低下により大きく減産

(それぞれ、4.4%減。15.8%減)し、また、

ペルー第 3 位の Tintaya 鉱山も地域住民との衝

突による操業停止などの影響で前年比 10%減

となったため、全体では、前年比 2.5%減の

1,010 千tに留まった。(順位も 2004 年の世界

第 3 位から第 4 位に後退)

亜鉛については、ペルー 大の Antamina 鉱

山は減産(前年比 2.8%減)したものの、ペルー

大亜鉛生産企業 Volcan 社(4 鉱山操業)及び

Iscaycruz 鉱山を保有している Quenuales 社が

それぞれ、前年比 0.9%増、2.2%増と堅調だ

ったため、全体としては、ほぼ前年並み(前年

比 0.6%減)の 1,202 千t(世界第 3 位)であっ

た。

鉛は、Volcan 社他主要鉱山で伸び、生産量

は前年比 4.3%増の 319 千 t(世界第 4 位)であっ

た。

銀は、主要鉱山で前年実績を上回る鉱山が多

く、全体として前年比 4.4%増の 3,193t と世界

第 1 位を維持した。

錫は、Minsur 社の San Rafael 鉱山が唯一の

鉱山であるが、前年比 1.3%増の 42.1 千 t(世界

第 3 位)であった。

モリブデンは、Southern Copper 社の 2 鉱山

( Toquepala 鉱 山 及 び Cuajone 鉱 山 ) と

Antamina 鉱山で生産されているが、両鉱山共

に大幅に生産を伸ばし、全体で前年比 21.6%増

の 17.3 千 t(世界第 4 位)と大きく拡大した。

(2) 地金生産

2005 年の地金生産量(表 5.参照)は、亜鉛が

Page 7: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 257

中南米

ペルー

大きく落ち込んだ他は大きな変動はなかった。

銅は、Ilo 製錬所(SC 社)と Oroya 製錬所(Doe

Run 社)の 2 製錬所からの生産により、全体で

ほぼ前年並(前年比 1.9%増)の 345 千 t であっ

た。一方、SX-EW 法により生産された銅

(Cerro Verde 鉱山、Toquepala 鉱山)も、ほ

ぼ前年並(前年比 0.9%減)の 166 千 t であった。

亜 鉛 は 、 Cajamarquilla 製 錬 所 (Teck

Cominco 社、Votorantim 社)と Oroya 製錬所

(Doe Run 社)の 2 製錬所からの生産のうち、

Oroya 製錬所が 4 割近く落ち込んだため、全体

としては前年比 16.4%減の 164 千tになった。

鉛は、Oroya 製錬所より生産され、前年比

2.6%増の 122 千 t であった。

錫は、Funsur 製錬所(Minsur 社)より生産さ

れ、前年比 9.6%減の 36.7 千 t であった。

表 5. 製錬所(銅・亜鉛・鉛・錫)地金生産量 単位:t

製錬所 操業企業 2004年 2005年 増加率(%)

Ilo SOUTHERN COPPER CORP. 280,676 285,190 1.6

Oroya Doe Run Peru 57,632 59,663 3.5

計 338,308 344,853 1.9

亜鉛

Cajamarquilla Teck Cominco, Votorantim 127,739 122,424 -4.2

Oroya Doe Run Peru 67,954 41,179 -39.4

計 195,693 163,603 -16.4

Oroya Doe Run Peru 118,970 122,079 2.6

計 118,970 122,079 2.6

Funsur Minsur 40,624 36,733 -9.6

計 40,624 36,733 -9.6

出典:MEM

(3) 輸出動向

ペルーの鉱産物(鉱石・地金)は、国内製錬所

向けの鉱石を除き、その多くが輸出に向けられ、

同国の輸出産品の柱となっている。

2005 年の鉱産物輸出額(表 6.参照)は、非鉄

市況の高値推移が 大の要因となり、前年比

39.9%増の 97.24 億ドルと大幅に増加した。内

訳は、銅 33.60 億ドル(同 37.4%増)、金

31.40 億ドル(同 31.7%増)、モリブデン

11.50 億ドル(同 182.6%増)、亜鉛 8.05 億ド

ル(同 39.6%増)などとなっている。特に、

特にモリブデンは、生産増と価格の高騰で 3 倍

近い増加となり、銅、金に次ぐ鉱産物輸出品目

になった。

表 6. 主要鉱産物の輸出額内訳(FOB) (単位:百万 US$) 2004年 2005年 増加率(%)

総輸出額 12,726.5 17,114.3 34.5

鉱産物輸出額 7,123.8 9,605.3 34.8

鉱産物比率(%) 56.0 56.1

鉱産物別内訳

銅 2,480.6 3,360.3 35.5

鉛 389.1 491.4 26.3

亜鉛 576.8 805.1 39.6

金 2,424.3 3,072.8 26.7

銀 260.2 280.6 7.8

錫 345.7 208.3 -39.7

鉄鉱石 129.1 216.1 67.4

その他 518.1 1,170.6 125.9

出典:国税庁

Page 8: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

258 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

なお、ペルーの輸出総額も鉱産物輸出額の大

幅な増加が牽引し、前年比 37%増の 172.5 億

ドルに達し、また、全輸出額に占める鉱産物の

輸出額比率も 56.3%となり、さらに占有率を高

めた。

我が国にとって関心の高い銅・亜鉛の国別輸

出状況を表 7.及び表 8.に示す。

(銅)

地金は、米国が 大の輸出国で圧倒的なシェ

アーを占めている。他は、欧州諸国、一部は台

湾・中国にも輸出されている。

精鉱は、約 6 割がアジア諸国(中国、日本、

韓国)に輸出されており、とくに中国への輸出

量の増加が目立つ。他は、欧州諸国への輸出が

多い。

なお、2005 年の銅地金の国内消費量は、5.5

万 t/年程度である。

(亜鉛)

地金は、絶対量自体が少ないが、銅と同様に

米国が 大の輸出国であり、その他周辺の南米

諸国や日本に、各 1~2 万 t/年程度が輸出され

ている。

精鉱は、欧州(ベルギー、スペイン)、アジア

(韓国、日本)、北米(米国、カナダ)、ブラジル

に各 20 万 t/年(精鉱量)前後が輸出されている。

なお、2005 年の亜鉛地金の国内消費量は、

8.8 万 t/年程度である。

表 7. 国別銅輸出量

国 名 2004 年

輸出量(千 t) 2005 年

輸出量(千 t) 増加率(%)

銅(地金)

米国 147.6 175.2 18.7

イタリア 61.7 61.4 -0.5

台湾 57.8 58.5 1.2

オランダ 35.9 17.3 -51.8

英国 31.5 18.8 -40.3

ブラジル 28.1 43.1 53.4

中国 27.6 34.5 25.0

その他 55.2 59.4 7.6

計 445.4 468.2 5.1

銅精鉱(精鉱量)

中国 585.1 583.0 -0.4

日本 272.9 240.7 -11.8

ドイツ 198.2 150.0 -24.3

フィンランド 96.9 115.2 18.9

韓国 95.1 85.5 -10.1

チリ 57.7 73.2 26.9

カナダ 33.1 109.5 230.8

その他 268.5 251.5 -6.3

計 1,607.5 1,608.6 0.1

出典:税関

Page 9: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 259

中南米

ペルー

表 8. 国別亜鉛輸出量

2004年 2005年 国 名

輸出量(千t) 輸出量(千t) 増加率(%)

亜鉛(地金)

米国 24.2 0.6 (97.5)

コロンビア 22.5 22.9 1.8

ブラジル 19.0 8.5 (55.3)

日本 12.1 17.9 47.9

チリ 11.8 9.9 (16.1)

ベネズエラ 7.9 9.8 24.1

エクアドル 4.7 4.5 (4.3)

その他 10.8 28.9 167.6

計 113.0 103.0 (8.8)

亜鉛精鉱(精鉱量)

ベルギー 256.8 217.8 (15.2)

スペイン 246.4 459.5 86.5

韓国 235.4 185.4 (21.2)

ブラジル 234.7 225.6 (3.9)

米国 174.8 169.9 (2.8)

カナダ 135.8 104.6 (23.0)

日本 117.1 170.7 45.8

その他 356.7 331.9 (7.0)

計 1,757.7 1,865.4 6.1

出典:税関

わが国との関係で見ると、2005 年、銅は精

鉱として 24.1 万 t(精鉱量)、地金は 1.8 万 t

を輸入している。一方、亜鉛は、精鉱として

17.1 万 t(精鉱量)、地金は 1.8 万 t を輸入して

いる。

表 9. 日本向け銅精鉱輸出量

鉱山名 2004 年

輸出量(千 t) 2005 年

輸出量(千 t) 増加率(%) Tintaya 43,574 93,859 115.4

Antamina 229,299 136,712 -40.4

その他 0 10,109

計 272,873 240,680 -11.8

表 10. 日本向け銅地金輸出量

製錬所名 2004 年

輸出量(千 t) 2005 年

輸出量(千 t) 増加率(%) Tintaya(SX-EW) 100 0 -100.0

Oroya 3,997 0 -100.0

Ilo 7,490 17,984 140.1

計 11,587 17,984 55.2

Page 10: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

260 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

表 11. 日本向け亜鉛精鉱輸出量

鉱山名 2004年輸出量(千t) 2005年輸出量(千t) 増加率(%)

Antamina 50,143 79,418 58.4

Huanzala 39,880 35,480 (11.0)

Volcan 18,086 20,961 15.9

その他 9,002 34,824 286.8

計 117,111 170,683 45.7

表 12. 日本向け亜鉛地金輸出量

製錬所名 2004年輸出量(千t) 2005年輸出量(千t) 増加率(%)

Cajamarquilla 10,397 17,056 64.0

Oroya 1,751 882 (49.6)

計 12,148 17,938 47.7

4. 鉱山会社活動状況

(1) SC 社(Southern Copper Corp.)

2005 年 9 月 、 社 名 を 、 Southern Peru

Copper Corp.から Southern Copper Corp.に変

更した。これは、同社が 2005 年 3 月末に、同

じ Grupo Mexico の傘下にある Minera Mexico

社を吸収合併し、同社の操業鉱山がペルー、メ

キシコの両国となり、さらにチリに事務所を開

き探査活動を行なっている等、同社の活動が国

際的に広がりつつあることを考慮したものと言

われている。

① 生産

2005 年の銅鉱山生産量は、前年比 10.0%減

の 357,612t であった。主な減産理由は 2 鉱山

(Toquepala 鉱山及び Cuajone 鉱山)の鉱石品

位の低下による。また、2005 年の銅地金生産

量は、285,199t で前年比 1.6%増であった。各

鉱山、製錬所の生産内訳は、以下のとおり。

・Toquepala 鉱山

銅 193,953t(157,455t( 精 鉱 中 ) 、

36,498t(SX-EW))

モリブデン 5,324t(精鉱中)

銀 69.4t(精鉱中)

・Cuajone 鉱山

銅 163,659t(精鉱中)

モリブデン 5,279t(精鉱中)

銀 70.3t(精鉱中)

・Ilo 製錬所

銅 285,199t

銀 109.9t

② 探鉱開発

2006 年下半期より Los Chancas(Apurimac

県)及び Tia Maria(Arequipa 県)銅鉱山開発

プロジェクトの開発工事を開始する予定(投資

額 10 億ドル)である。この2つの鉱山は 2009

年に操業を開始する予定で、当初は両者で 12

万t/年の銅生産が見込まれ、2016 年には 21

万 t/年に拡大する計画である。また、メキシ

コ、チリにも銅探鉱プロジェクトを推進行く予

定で、2006 年の探鉱予算は 33 百万ドル。

③ 売上・収益額

主力の銅は減産したものの、金属価格の高値

推移が寄与し、2005 年の総売上高は前年比

32.8%増の 41.1 億ドル、純利益は前年比

42.5%増の 14.0 億ドルであった。

④ その他

・2005 年 3 月、Group Mexico 傘下の Minera

Mexico 社を吸収合併し、この結果、Group

Mexico の資本比率は、従来の 54.2%から 75%

に高まった。また、Minera Mexico 社がメキ

シコに保有していた 2 銅山(La Caridad、

Nananea)他の産銅量を加えると、SC 社は

CODELCO 社に次いで世界第 2 位の産銅会社と

なった。

・硫黄酸化物の放出量削減を目的とした、Ilo

製錬所の設備近代化計画は順調に進んでおり、

2006 年末に終了の予定である。

Page 11: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 261

中南米

ペルー

(2) Buenaventura 社

① 生産

Buenaventura 社の 2005 年の鉱山生産量は、

金が前年比 9%増の 359,968oz、銀が同 5%増

の 13,482,293oz、亜鉛が同 3%減の 24,993t、

鉛が同 2%増の 16,446tであった。主要鉱山の

生産量は以下のとおり。

・Yanacocha 鉱山(出資比率(43.65%)相当分)

金 45.0 t 銀 56.6 t

・Cerro Verde 鉱山(出資比率(18.2%)相当分)

銅 17,025 t(SX-EW)

・Orcopampa 鉱山

金 6.96 t

・Antapite 鉱山(出資比率(78.04%)相当分)

金 2,40 t

・Uchucchacua 鉱山

銀 317.7 t(精鉱中)

② 探鉱開発

Newmont 社と共に、Minas Conga 金・銅鉱床

の探鉱開発プロジェクト、及びカハマルカ県の

チャンカイ川周辺に位置する 3 つの金鉱山プロ

ジ ェ ク ト (La Zanja 、 Tantahustay 、 Los

Pircos:今後 3 年間で約 1 億ドルを投じて、

2008 年にはこれら 3 鉱山から合計 50 万 oz/年

の金を生産する計画)に取り組んでいる他、貴

金属のみならず銅や亜鉛鉱床を対象とした初期

段階の探査も積極化している。

③ 売上・収益額

金価格の高値推移と堅調な生産により、2005

年の総売上高は前年比 2%増の 3.44 億ドル、純

利益は前年比 31%増の 2.74 億ドルであった。

④ その他

・現在の全鉱山の出資比率相当分の保有金量は

15 百万 oz、保有銀量は 81.8 百万 oz である。

・Cerro Verde 鉱山の拡張開発に伴い、出資比

率を現在の 9.17%から 18.2%に引き上げた。

5. 鉱山・製練所状況

(1) 鉱山

主要鉱種について、2005 年企業別及びの鉱

山別の生産量を表 13.~18.に示す。

表 13. 企業別鉱山生産量(銅)

単位:t 順位 企業名 2004年 2005年 増加率(%)

1 CIA. MRA.ANTAMINA 370,957 383,039 3.3 2 SOUTHERN COPPER CORP. 397,366 357,612 -10.0 3 BHP BILLITON TINTAYA 118,527 109,421 -7.7 4 SOC. MINERA CERRO VERDE 88,493 93,542 5.7 5 CIA. MRA. CONDESTABLE 12,484 16,086 28.9 6 DOE RUN PERU 14,679 15,161 3.3 7 EMPRESA MINERA LOS QUENUALES 4,692 5,153 9.8 8 CIA. MRA. ATACOCHA 3,331 3,203 -3.8 9 CIA. MRA. RAURA 3,478 2,737 -21.3

10 CIA. MRA. MILPO 2,291 2,685 17.2 その他 19,276 21,259 10.3 合 計 1,035,574 1,009,898 -2.5

注)鉱山生産(精鉱+SX/EW) 出典:MEM

Page 12: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

262 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

表 14. 鉱山別生産量(銅)

生産量(t) 順位 鉱山名 操業企業

2004年 2005年 精鉱 SX-EW 増加率(%)

1 ANTAMINA CIA.MRA.ANTAMINA 370,957 383,039 383,039 3.3

2 TOQUEPALA SOUTHERN COPPER CORP. 202,976 193,953 157,455 36,498 -4.4

3 CUAJONE SOUTHERN COPPER CORP. 194,389 163,659 163,659 -15.8

4 TINTAYA BHP BILLITON TINTAYA 118,527 109,420 73,930 35,490 -7.7

5 CERRO VERDE SOC.MINERA CERRO VERDE 88,493 93,542 93,542 5.7

6 COBRIZA DOE RUN PERUS 14,679 15,161 15,161 3.3

7 CONDESTABLE CIA.MRA.CONDESTABLE 9,027 11,985 11,985 32.8

8 RAURA CIA.MRA.RAURA 3,478 2,737 2,737 -21.3

9 RAUL CIA.MRA.CONDESTABLE 3,457 4,101 4,101 18.6

10 ATACOCHA CIA.MRA.ATACOCHA 3,331 3,203 3,203 -3.8

計 1,009,314 980,800 815,270 165,530 -2.8

その他 26,260 29,098 29,098 0 10.8

総 計 1,035,574 1,009,898 844,368 165,530 -2.5

出典:MEM

表 15. 企業別鉱山生産量(金)

単位:kg

順位 企業名 2004年 2005年 増加率(%)

1 MRA. YANACOCHA 90,446 103,168 14.1

2 MRA.BARRICK MISQUICHILCA 20,085 36,616 82.3

3 CIA. MRA. ARES 7,042 7,254 3.0

4 CIA. DE MINAS BUENAVENTURA 6,327 6,958 10.0

5 ARUNTANI 3,964 6,449 62.7

6 MRA. AURIF. RETAMAS 5,242 5,275 0.6

7 CIA. MRA. AURIF. SANTA ROSA 4,083 4,728 15.8

8 CONS. MRO. HORIZONTE 4,025 4,350 8.1

9 INVERSIONES MRAS. DEL SUR 3,352 3,750 11.9

10 CIA. MRA. PODEROSA 3,065 2,646 -13.7

その他 25,588 26,628 4.1

合 計 173,219 207,822 20.0

出典:MEM

表 16. 鉱山別生産量(金)

生産量(t) 順位 鉱山名 操業企業

2004年 2005年 増加率(%)

1 YANACOCHA MRA.YANACOCHA 90,446 103,168 14.1

2 PIERINA MRA.BARRICK MISQUICHILCA 20,085 19,513 -2.8

3 ORCOPAMPA CIA.DE MINAS BUENAVENTURA 6,327 6,958 10.0

4 ARES CIA.MRA.ARES 6,006 6,176 2.8

5 RETAMAS MRA.AURIF.RETAMAS 5,242 5,275 0.6

6 SANTA ROSA-COMARSA CIA.MRA.AURIF.SANTA ROSA 4,083 4,728 15.8

7 PARCOY DE TRUJILLO CONS.MRO.HORIZONTE 3,992 4,203 5.3

8 ANTAPITE CIA.DE MINAS BUENAVENTURA 2,588 3,069 18.6

9 SANTA ROSA ARUNTANI 2,419 2,032 -16.0

10 LA PODEROSA DE TRUJILLO CIA.MRA.PODEROSA 2,182 1,785 -18.2

計 143,370 156,907 9.4

その他 29,854 50,915 70.5

総 計 173,224 207,822 20.0

出典:MEM

Page 13: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 263

中南米

ペルー

表 17. 企業別鉱山生産量(亜鉛)

単位:t

順位 企業名 2004年 2005年 増加率(%)

1 VOLCAN CIA. MINERA 235,254 237,288 0.9

2 CIA. MRA. ANTAMINA 224,483 218,265 -2.8

3 EMPRESA MINERA LOS QUENUALES 187,189 191,291 2.2

4 CIA. MRA. MILPO 95,423 89,346 -6.4

6 SOC. MRA. EL BROCAL 61,083 60,230 -1.4

5 CIA. MRA. ATACOCHA 61,794 59,174 -4.2

7 EMP. ADMINISTRADORA CHUNGAR 53,112 55,576 4.6

8 MINERA COLQUISIRI 42,244 39,338 -6.9

9 CIA. MRA. SANTA LUISA 38,803 38,100 -1.8

10 CIA. MRA. SAN IGNACIO DE MOROCOCHA 37,673 28,762 -23.7

その他 171,948 184,301 7.2

合 計 1,209,006 1,201,671 -0.6

出典:MEM

表 18. 鉱山別生産量(亜鉛)

生産量(t) 順位 鉱山名 操業企業

2004年 2005年 増加率(%)

1 ANTAMINA CIA.MRA.ANTAMINA 224,483 218,265 -2.8

2 ISCAYCRUZ EMP.MRA.LOS QUENUALES 152,686 158,567 3.9

3 CERRO DE PASCO VOLCAN CIA.MINERA 131,057 126,607 -3.4

4 MILPO CIA.MRA.MILPO 95,423 89,346 -6.4

5 ATACOCHA CIA.MRA.ATACOCHA 61,794 59,174 -4.2

6 COLQUIJIRCA SOC.MRA.EL BROCAL 61,083 60,230 -1.4

7 ANIMON EMP.ADMINISTRADORA CHUNGAR 53,112 55,576 4.6

8 SAN CRISTOBAL VOLCAN CIA.MINERA 45,007 57,114 26.9

9 MARIA TERESA CIA.MRA.COLQUISIRI 42,244 39,338 -6.9

10 HUANZALA CIA.MRA.SANTA LUISA 38,803 38,100 -1.8

計 905,692 902,317 -0.4

その他 303,314 299,354 -1.3

総 計 1,209,006 1,201,671 -0.6

出典:MEM

以下、主要鉱山について生産動向を述べる。

① Antamina 鉱山( CIA.MRA.ANTAMINA: BHP

Billiton 33.75%、 Falconbridge 33.75%、

Teck Cominco22.5%、三菱商事 10%)

年間を通じ順調に操業し、銅 383.0 千 t(前

年比 3.3%増)、亜鉛 218.3 千 t(前年比 2.8%減)、

銀 333.7t(前年比 16.4%増)、モリブデン 6.7 千

t(前年比 87.5%増)を生産した。2006 年も亜鉛

の減産傾向は続く見通し(約 10%減)である

が、中長期的には、採掘対象が亜鉛リッチの鉱

体へと移行することから、亜鉛は増産、銅は減

産していく見込みである。

② Toquepala 、 Cuajone 鉱 山 ( Southern

Copper 社)

SC 社が所有する Toquepala 鉱山、Cuajone 鉱

山の生産量は、それぞれ、194.0 千t(前年比

4.4%減)、163.7 千t(前年比 15.8%減)と大

きく減産した。また、モリブデンの生産量は、

それぞれ、5.3t(前年比 11.3%減)、5.3t(同

5.3%増)であった。銅の減産は、粗鉱品位の低

下によるものであるが、これに対処するため、

現在、両鉱山とも粗鉱処理量を 5 割程度増やす

拡張計画が検討されている。

Page 14: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

264 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

③ Tintaya 鉱山(BHP Billiton Tintaya)

2005 年の銅生産量は、地元への利益還元を

求める住民デモの過激化から 5 月 25 日より約

4 週間、操業停止になったことが響き、109.4

千 t(前年比 7.7%減)と大きく落ち込んだ。ま

た、2006 年 2 月、本鉱山を所有している BHP

Billiton 社は、本鉱山が同社の経営規模に合

致しなくなったとの理由から売却を決定し、5

月、Xstrata 社が 7.5 億ドルで買収することが

決定した。Xstrata 社は、操業規模の大きな変

更はないと表明している。

④ Cerro Verde 鉱山(Phelps Dodge53.6%、

Buenaventura18.2%、住友金属鉱山 16.8%、

住友商事 4.2%、一般株主 7.2%)

2005 年の銅生産量(SX-EW)は、前年比 5.7%増

銅 93.5 千 t であった。

本鉱山は、2004 年 10 月、一次硫化鉱開発の

拡張工事(開発投資額 850 百万ドル)を正式決定

し、2005 年早々より鉱山工事に着手した。

2006 年第 4 四半期には操業開始と発表されて

いるが、本格操業後は、これまでの SX-EW プラ

ントによる生産分も合わせ、トータルで年産銅

量が 30 万 t 級の銅山となる。

また、本開発の決定に合わせて、日本企業

(住友金属鉱山、住友商事)が資本参加すること

が決定(出資比率はそれぞれ、16.8%、4.2%)

し、住友金属鉱山は、生産される銅精鉱の

50%を 10 年間にわたって買い取る権利を保有

した。

⑤ Yanacocha 鉱 山 (Newmont:51.35 % 、

Buenaventura:43.65%、IFC:5%)

世界 大級の金山として、年間を通じ順調に

操業し、金 103.2t(前年比 14.1%増 )、銀

129.6t(前年比 28.2%増)を生産した。

本金山は、年間 2 億ドル程度の開発投資、20

百万ドル程度の探鉱投資を継続しており、現在

の保有金量は 1000t 程度である。但し、今後の

同金山の産金量は、2005 年をピークに減産し

ていくものと見られており、周辺部の Cerro

Quilish 鉱床や San Cirilo 鉱床等の開発(一

部に地元の開発反対運動があり)が長期的には

重要な課題となっている。

⑥ Pierina 鉱山(Barrik Gold100%)

Barrick Gold 社 100%所有の金鉱山。2005 年

は粗鉱金品位の低下(現在 1.7g/t)により、生

産量は金 19.5t(前年比 2.9%減) と減産した

(銀は前年比 12.1%増の 55.2t)。鉱量枯渇によ

り 2009 年で閉山予定。閉山費用は、周辺地域

の再緑地化も含めて 7,000 万 US$にのぼる予定。

なお、現在のキャッシュコストは、139 ドル

/oz。

⑦ Lagnas Norte(Alto Chicama)金鉱山(Barrik

Gold100%)

Barrick Gold 社所有のペルーで 2 つ目の金

鉱山(埋蔵量 2.456 億t、金品位 1.2g/t)で、

2005 年 6 月より生産開始した。開発費用は 3.4

億ドル。2005 年の生産量は 55 万 oz、2006 年

以降は 75 万 oz/年を計画している。操業コス

トは 130 ドル/oz。

⑧ Iscaycruz 鉱山(Los Quenuales)

ペルー第 2 の亜鉛鉱山として、年間を通じ順

調に操業し、亜鉛 158.6 千 t(前年比 3.9%増)、

鉛 10.4 千 t(同 13.0%増)、銀 20.8t(同 6.7%増)

を生産した。

なお、本鉱床の発見に、MMAJ(現 JOGMEC)が

JICA と共に実施した資源開発協力基礎調査が

大きく寄与したことは特筆される。

⑨ Huanzala 鉱山、Pallca 鉱山

本鉱山は、わが国企業(三井金属鉱業(70%)/

三井物産(30%))が操業する著名鉱山であるが、

2005 年は、亜鉛 38.1 千 t(前年比 1.8%減)、鉛

17.3 千 t(前年比 10.4%増)、銀 45.6t(前年比

14.1%増)を生産した。

また、2006 年 3 月、本鉱山南方に位置する

Pallca 鉱山が本格操業を開始した。権益は三

井金属鉱業株式会社 100%であるが、同鉱山の

操業は、サンタルイサ鉱業が三井金属鉱業から

租鉱権を得て実施している。現在の鉱量 は約

300 万t(亜鉛品位約 12%、鉛品位約 1%)で、生

産量は約 500t/日(ワンサラ鉱山のスタート時

と同様の量)。年間亜鉛精鉱 31,400t(地金換算

約 16,000t/年)の生産を予定。鉱石はワンサラ

鉱山に運搬し、同鉱山の選鉱場など既存整備を

活用し処理している。

Page 15: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 265

中南米

ペルー

(2) 探鉱開発

非鉄市況の高値推移、経済の安定化、治安情

勢の回復等により、探鉱開発は全般的に活発化

している。対象鉱種としては、銅、金が中心だ

が、とくに、2003 年後半から急激に価格が上

昇し、世界的な需要増加が長期的に見込まれて

いる銅について、探鉱開発案件が目白押しで、

かつ大型の有望案件が多く、今後の動向が注目

される。なお、Metals Economics Group によ

る 2005 年のペルーにおける探鉱開発投資額

(予算ベース)は、前年比 23.6%増の 241.9

百万ドルで世界第 5 位(南米では第 1 位)とな

っている。

主な探鉱開発プロジェクトの概要を表 19.及

び表 20.に、図 1 及び 2.に位置を示す。

以下、主要プロジェクトについて探鉱開発動

向を述べる。

①La Zanja(金:Newmont:51.65%、Buenaventura:43.65%、

IFC:5%)

2004 年 3 月に開発を決定し、周辺のインフ

ラ整備等の開発準備に入ったが、同年 11 月、

鉱山開発反対派の暴力行為で現地事務所が損傷

し、一時工事が中断したが、2005 年 5 月に地

元との合意が成立し、再開した。開発投資額は

35 百万ドル、鉱量は 17.2 百万t(金 1.02g/t、

銀 6.92g/t)。計画産金量は、10 万 oz/年。操

業開始は 2006 年以降を見込んでいる。

② Cerro Lindo(亜鉛、鉛、銅:Milpo)

2004 年 2 月に開発を決定し、周辺のインフ

ラ整備等の開発準備に入った。2007 年 6 月に

操業開始の予定である。開発投資額は 65 百万

ドル。

操業規模は粗鉱量 5 千 t/日(坑内掘)で、亜

鉛 11 万 t/年、鉛 1.25 万 t/年、銅 0.85 万 t/

年を見込んでいる。

③ Cerro Corona(金、銅:Gold Fields)

南ア Gold Fields 社が 100%所有している

金・銅開発プロジェクト(埋蔵量 65.2 百万t、

金品位 1.14g/t、銅品位 0.61%)で、同社の所有

鉱山の中では小規模であるが、同社南米進出の

足がかりとなる戦略的なプロジェクトという位

置付けとなっている。2005 年 5 月より開発工

事がスタートし、2007 年 9 月に操業開始予定。

開発費用は、2.77 億 US$(17,000t/日の銅選鉱

プラントを建設予定) 生産量は、金 30 万 oz/

年、銅 5 万t/年、マインライフ 15 年を予定し

ている。

④ Rio Blanco(銅:Monterrico Metals)

英国のジュニア企業 Monterrico Metals 社が

所有する銅・モリブデン鉱床開発プロジェクト

で、鉱物資源量(Indicated)は 6.7 億 t(Cu 品位

0.56%、Mo 品位 0.023%)で、産銅規模は 25 万

t/年、マインライフは約 30 年の見込みである。

開発投資額は 800 百万ドルにのぼると見られ、

で、現在、開発に必要なパートナー探しを鋭意

行っており、ポーランドの KGHM が関心を示し

ていると伝えられている。本プロジェクトは、

2005 年 7 月末、地域住民による開発反対運動

が起こり、一時、プロジェクトの進展が不安視

されたが、その後の話し合いで現在は沈静化し

ていると伝えられている。

⑤ Minas Conga(金、銅:Newmont:51.65%、

Buenaventura:43.65%、IFC:5%)

現在、F/S 調査を実施中(埋蔵量 5.56 億t、

銅品位 0.26%、金品位 0.66g/t)で、2007 年末

に F/S 終了予定し、2008 年後半に開発工事開

始(開発費 10.09 億ドル、85,000t/日の選鉱プ

ラントを建設予定)、2011 年前半に操業開始を

予定している。 生産量は、金 18t/年、銅 7 万

t/年、マインライフ 14 年を見込んでいる。

⑥ Los Chancas(銅:Southern Copper)

2001 年のプレ F/S 終了以後、凍結状態にあ

ったが、2006 年下半期に鉱山工事着手、2009

年の操業開始を目標としている。産銅規模は、

8~10 万 t/年程度を計画している。

⑦ Toromocho(銅:Peru Copper)

2003 年、政府入札により Peru Copper が落

札し、獲得したプロジェクトで、現在プレ F/S

実施中で、2006 年内の F/S 終了、2008~2009

年頃の操業開始を目指している。予想開発投資

額は 1,000 百万ドルで、産銅規模は 27 万 t/年

級を想定している。現在、メジャー企業との

JV 開発を模索中の模様であり、SC 社が参入の

Page 16: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

266 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

申し出を行っている。

⑧ Marcona(銅:Chariot Resources、KORES、

LS Nikko)

2004 年 10 月、権益を保有する Chariot

Resources 社(加)と新たに参入した韓国系企業

グループ(KORES 及び LS Nikko Copper)が、JV

で開発を目指すことに合意し、2005 年 2 月、

2006 年末の F/S 調査終了を目指してボーリン

グ調査を開始した。現在のところ、鉱量約 4 億

t、銅 0.6%、2007 年内の開発工事着手、2009

年末の操業開始を目標としている。産銅規模は、

10 万 t/年規模(SX-EW、精鉱生産併用)を計画

している。

⑨ Magistral(銅:Inca Pacific、Quadra)

2005 年 1 月、権益を保有する Inca Pacific

社(加)と新たに参入した Quadra Mining 社(加)

が、JV で開発を目指すことに合意し、プレ F/S

調査を開始した。2005 年 11 月に鉱量計算結果

を発表し、鉱量 1.89 億t、銅 0.51%、モリブ

デン 0.052%が明らかになった。産銅規模は、4

~5 万 t/年程度を計画している。

⑩ Las Bambas(銅:Xstrata)

2004 年の政府入札により Xstrata が獲得し

たプロジェクトで、2005 年に実施した約 5.6

万 m のボーリング調査(237 本)と既存ボーリン

グ(約 5.2 千 m:40 本)を加え算定した鉱量

(indicated & inferred)は、3 億 t(銅品位

1.1%、若干量の金とモリブデン含有)と計算さ

れている。2006 年度は 10 万 m のボーリングを

計画しており、2005 年度把握した鉱体以外に

鉱床ポテンシャルが高い新地区でもボーリング

を行い、新鉱体の把握、鉱量の増加を狙うとし

ている。

(3) 製錬所

鉱種別に各製錬所の生産量を表 5.に示す。

以下、主要製錬所について生産動向等を述べる。

① Oroya(Doe Run)

2005 年の生産量は、銅 59.7 千 t(前年比

3.5%増)、亜鉛 41.2 千 t(前年比 39.4%減)、鉛

122.1 千 t(前年比 2.6%増であった。

本製錬所は、政府と取り決めた環境改善計画

(PAMA)に取り組んでいるが、多額の経費を要す

る硫酸プラントの建設が期限(2006 年末)に間

に合わないと理由で、2005 年 12 月にエネルギ

ー鉱山省に期限延長の正式申請書を提出した。

エネルギー鉱山省は、2006 年 5 月に、Oroya 製

錬所の環境改善計画(PAMA)の 延長を 2009 年

10 月まで認める決定を下した。

Doe Run 社は、今後、2 億 3,600 万ドルを投

じて、硫酸プラントを各工程(亜鉛製錬工程:

2006 年 12 月 31 日まで、鉛製錬工程:2008 年

12 月まで、銅製錬工程:2009 年まで)に設置

するとともに、これら硫酸プラント建設の監査

を 3 ヵ月後ごとに受けることになっている。ま

た、同社がこれらを履行しない場合罰則を課す

内容となっている。

地元自治体はこの決定に歓迎の意向を示して

いる一方、早期の改善を求めていた環境団体か

らは、批判の声が高まっている。

② Ilo(Southern Copper)

年間を通じて順調に操業し、銅 285.2 千

t(前年比 1.6%増)を生産した。

今後も、2004 年並の生産水準が継続すると

考えられる。

本製錬所は、PAMA の一環として設備の近代

化(投資額 306 百万ドル)に取り組んでおり、

2006 年末に終了の予定である。これにより、

二酸化硫黄の回収率が 95%(以前は 33%)に大幅

に改善されるとともに、銅鉱石の処理能力が、

現在の年間 1.1 百万 t から 1.4 百万 t に約 3 割

アップする見込である。

③ Cajamarquilla(Teck Cominco、Votorantim)

2005 年の生産量は、亜鉛 122.4 千 t(前年比

4.2%減)であった。

本製錬所は、これまで日本企業(丸紅)が資本

参加していたが、2004 年 12 月、Votorantim 社

(ブラジル)が買収(買収額 210 百万ドル)した。

関係者によると、この買収は、売却側にとって

は比較的好条件であり、Votorantim 社の亜鉛

製錬事業への積極戦略の一環と考えられる。

なお、同製錬所では、亜鉛の生産量を倍増す

る施設拡張を検討中であるとされる。

Page 17: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 267

中南米

ペルー

表 19. 主な探鉱開発プロジェクト プロジェクト

(所在県) 鉱種

(鉱床タイプ) 企業名 プ ロ ジ ェ ク ト 概 要

Cerro Verde (Arequipa) * Expansion

Cu (PC)

Phelps Dodge Sumitomo GroupBuenaventura

2004年5月、一次硫化鉱開発の拡張を決定。同年10月、住友グループ(住友金属鉱山、住友商事)が資本参入。2005年初より拡張工事に着手。鉱量 420Mt(Cu 0.61)。2006年第4四半期に操業開始の予定。開発投資額850M$。計画生産量 Cu 20万t/y。

La Zanja (Cajamarca)

Au (HSE)

Buenaventura Newmont

2003年第4四半期F/S終了。2004年3月開発を決定し、開発準備に着手。2004年11月、鉱山反対派の暴力行為で現地事務所が損傷。2005年5月地元との合意が成立し、再開。鉱量 17.2Mt(Au 1.02g/t, Ag 6.9g/t)。操業開始は2006年以降の見込み。初期開発投資額35M$。計画生産量 Au 10万oz/y。山命5年以上。

Cerro Lindo (Ica)

Zn, Cu (MS)

Milpo 2002年3月F/S終了。2004年2月、開発を決定。 鉱量 41.6Mt(Zn 5.1%, Cu 0.8%, Pb 0.5%, Ag 35g/t)。 初期開発投資額65M$。操業開始は2007年6月を予定。 推定計画生産量 Zn 11万t/y, Cu 0.85万t/y。山命15年。

Cerro Corona (Cajamarca)

Au, Cu (PC)

Gold Fields 2004年1月、Gold Fields社が権益取得。2005年5月開発工事開始。 鉱量 65.2Mt(Au1.14g/t, Cu0.61%)。 初期開発投資額130~150M$。2007年9月に操業開始予定。 推定計画生産量 Au 30万oz/y, Cu 5万t/y 。山命15年。

Rio Blanco (Piura)

Cu (PC)

Monterrico Metals

2003年10月、Pre-F/S終了、直ちにF/S開始。2005年7月に地域住民による 開発反対運動が起こり、中断。現在は沈静化し、BFSを2006年内に終了見込み。 鉱量 670Mt(Cu 0.56%, Mo 0.023%)。 予想初期開発投資額800M$。計画生産量 Cu 25万t/y。山命30年。

Minas Conga (Cajamarca)

Au, Cu (PC)

Newmont Buenaventura

2003年末Pre-F/S終了。現在、F/S実施中。 鉱量 556Mt(Au 0.66g/t, Cu 0.26%)。 初期開発投資額10.1億ドル。2008年後半に鉱山工事着手、2011年の操業開始を目標。計画生産量 Au 18t/y, Cu 7万t/y。山命14年。

Los Chancas (Apurimac)

Cu (PC)

Southern Peru 2001年8月Pre-F/S終了。2004年4月、近くF/S開始と発表。 2006年下半期に鉱山工事着手。 鉱量 200Mt(Cu 1.0%, Mo 0.08%, Au 0.12g/t)。2009年の操業開始を目標。 計画生産量 Cu 8~10万t/y。

Toromocho (Junin)

Cu, Mo (PC,SK)

Peru copper 2003年5月の入札で獲得。現在、Pre-F/S実施中。2006年内のF/S終了を目標。 鉱量 655Mt(Cu 0.61%)。 予想初期開発投資額1,000M$。2008~2009年の操業開始を目標。 想定生産量 Cu 27万t/y。

Marcona (Ica)

Cu (IOCG)

Chariot Resources Korean ResourcesLS Nikko Copper

2004年8月、Chariot Resources社が権益取得。同年10月、韓国系グループ参入。 2005年2月、ボーリング調査を開始。2007年内に開発工事着手予定。 鉱量 218Mt(Cu 0.8%, Au 0.1~0.15g/t)。2009年末の操業開始を目標。 予想初期開発投資額300M$。想定生産量 Cu 10万t/y。

Magistral (Ancash)

Cu, Mo (PC/SK)

Inca Pacific Quadra

2004年3月、Inca Pacific社が100%権益取得。2005年1月、Quadra社参入。 2005年末までにPre-F/S終了、2006年9月のF/S終了を目標。 鉱量 189Mt(Cu 0.51%, Mo 0.052%)。 想定生産量 Cu 4~5万t/y。

Las Bambas (Apurimac)

Cu (SK)

Xstrata 2004年8月の入札で獲得。2005年3月、ボーリング調査開始。 鉱量 300Mt(Cu 1.1%)。 予想初期開発投資額1000M$。操業開始は2010年以降の見込み。 想定生産量 Cu 20万t/y。

Quellaveco (Moquegua)

Cu, Mo (PC)

Anglo AmericanWorld Bank

2000年下期にF/S終了し、同年末にEIA認可。しかし、地元農民との間に水利 権問題が発生し、以後、凍結状態。 鉱量 947Mt(Cu 0.65%, Mo 0.019%)。内,富化帯 213Mt(Cu 0.94%)。 予想初期開発投資額1,000M$。計画生産量 Cu 20万t/y。

San Gregorio (Pasco)

Zn, Pb (HSE)

El Brocal 鉱山用地問題で地元と紛争中。解決後、F/S実施。 鉱量 70Mt(Zn 7.3%, Cu 0.8%, Pb 2.2%, Ag 18g/t)。 初期開発投資額270M$。計画生産量 Zn 24.2万t/y, Pb 7.2万t/y。

La Granja (Cajamarca)

Cu, Au (PC)

Centromin BHP Billiton社が開発オプション権を放棄(2002年末)後、 2005年12月の国際入札の結果、Rio Tintoが22百万ドルで落札 鉱量 1,200Mt(Cu 0.65%)。 予想初期開発投資額3,000M$。予想生産量 Cu 30万t/y, Au 12.5万oz/y。

Michiquillay (Cajamarca)

Cu, Au (PC)

Centromin 2006年10月の入札実施を計画。現在、入札実施に向け地元と交渉中。 鉱量544百万t(Cu 0.69%, Au 0.1~0.5g/t)。 予想初期開発投資額300~500M$。

Tambo Grande (Piura)

Au, Cu, Zn (VMS)

Centromin 開発域の住民の移転問題、農作物への汚染懸念から地元に強い開発反対運動。2003年12月、政府はManhattan社との開発オプション契約を一方的に破棄。 鉱量 176Mt(Au 0.76g/t, Ag 22.8g/t, Cu 0.93%, Zn 0.92%)。 プロジェクトは凍結状態となり、今後の開発見通しは不透明。

(注) M$:百万ドル、Mt:百万 mt (鉱床タイプ) SK:Skarn, HSE:High Sulphidation Epithermal, PC:Porphyry Cu, MS:Massive Sulphide

MVT:Mississippi Valley, VMS:Volcanogenic MS, IOCG:Iron Oxide Copper Gold (MEM 等各種鉱業資料、報道記事等により作成)

Page 18: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

268 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

表 20. 主要県別鉱業権設定状況

県名 鉱業権設定件数 面積(千ha) Arequipa 2,699 1,372

La Libertad 2,483 960 Junin 2,341 417 Lima 2,322 644

Ancash 2,185 703 Huancavelica 1,786 516 Cajamarca 1,723 838

Madre de Dios 1,581 333 Puno 1,517 706

Ayacucho 1,270 687 Cusco 1,223 726 Pasco 1,039 268

Apurimac 763 534 Ica 706 326

Tacna 426 210 その他(10県) 1,889 1,162

計 25,953 10,402 * 2006 年 1 月時点 出典:鉱業権・鉱区台帳管理局

Page 19: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 269

中南米

ペルー

図1 主要銅鉱山 (プロジェクト)位置図

Page 20: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

270 世界の鉱業の趨勢 2006

中南米

ペルー

図2 主要亜鉛鉱山位置図

6. 我が国との関係

(1) 鉱山・製錬所操業

① Antamina 鉱山

既述のとおり。2001 年に生産を開始したペ

ルー 大の銅・亜鉛鉱山で、三菱商事が、開発

段階(1999 年)から 10%の資本参加をしている。

② Huanzala 鉱山

三井グループ(三井金属鉱業、三井物産)が、

1968 年の開山以来 40 年近く操業を行っており、

当地でも著名な亜鉛鉱山となっている。

③ Pallca 鉱山

2006 年 3 月、三井グループによって本格操

業が開催された亜鉛鉱山。なお、本鉱山の発見

Page 21: ペルーmric.jogmec.go.jp/public/report/2006-04/peru_06.pdf · 2015-07-28 · 世界の鉱業の趨勢 2006 253 Syndicate(米) 中南米 ペルー 表1. 過去の鉱業部門民営化プロジェクト

世界の鉱業の趨勢 2006 271

中南米

ペルー

は JOGMEC(当時の金属鉱業事業団)が実施し

た海外地質構造調査による探鉱結果が大きく寄

与しており、JOGMEC の大きな成果の一つであ

ると評価される。

(2) 探鉱開発

非鉄市況の高値推移、経済の安定化、治安情

勢の回復等により、日本企業も探鉱開発への取

り組みを積極化させている。

① Cerro Verde 鉱山(拡張開発)

既述の様に、一次硫化鉱開発の拡張に伴い、

住友グループ(住友金属鉱山、住友商事)が資本

参加している。出資比率は、住友金属鉱山

16.8%、住友商事 4.2%で、2006 年内の生産開始

を予定している。

② Marcona 鉱床(探鉱開発)

既述の様に、2004 年 10 月、韓国系企業グル

ープ(2 社)が参入(権益 30%)したが、この内の

1 社は LS Nikko Copper 社(権益 15%)であり、

当該社には日鉱金属が資本参加していることか

ら、間接的に日本企業が参入している。

③ JOGMEC 探鉱活動

(海外地質構造調査)

JOGMEC は、Huanzala 鉱山北方に位置するチ

ャビン南部地域において、2004 年度より本調

査を開始した。本調査により、Huanzala 鉱山

と同タイプの鉱床の発見に繋がる成果が期待さ

れるものの、有望な鉱徴が発見できず、2005

年度で終了。

(共同資源開発基礎調査)

<パシュパップ(Pashpap)探鉱プロジェクト>

1) 調査地域

アンカッシュ州北部、首都リマの北約 450km

に位置する山岳地帯で標高 2,800~4,700m。

2) 調査内容

調査地域内には斑岩型銅鉱床に特有な変質帯

の存在や銅の鉱徴が確認されており、新たな斑

岩型銅鉱床発見を目指して平成 17 年度に地質

調査及びボーリング調査を実施した。

ボーリング調査(6 孔、総掘進長 1,997m)

の結果、6 孔すべてで斑岩型銅鉱化帯を捕捉し

た。中でも MPP-01 孔は、掘進深度 240m から

439.5m までの 199.5m 間で 0.32% Cu, 0.03%

Mo (換算銅品位※:0.50%)を示した。調査第

2年次にあたる平成 18 年度において調査範囲

を拡大してボーリング調査を実施し、引き続き

銅鉱床存在の可能性を評価する予定。

3) 基 本 合 意 書 ( Letter of Intent and

Preliminary Agreement)

平成 17 年 6 月 17 日付けにて、カナダのノー

ザンペルーカッパー社(Northern Peru Copper

Corp.)との間で締結。内容は、JOGMEC が 4 年

間で 5.0 百万米ドルの探査費用を負担して

25,000m のボーリングを実施することにより、

プロジェクトの 51%の権益獲得の権利を得る

ことが可能というもの。JOGMEC が本プロジェ

クトの運営者(オペレータ)である。

<その他> JOGMEC は、銅案件を主対象に、案件発掘に

向けた活動を活発化している。

(2006.7.8/リマ事務所 西川 信康)