ワインの作り方 - biglobekatogi0908/doc/tukurikata.pdf1 ワインの作り方 1.はじめに...
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ワインの作り方
1.はじめに
日本酒は本妻、ワインはお妾さん。たまに夏の暑い日にビール、季節を問わず
焼酎、ウィスキーに浮気する、という訳で、アルコール類なら何でも飲む雑食なら
ぬ雑酒人間である。これら酒類の違いによる楽しみ方にはいろいろあるが、多少
なりとも生い立ちや味わい方の違いを知っているとより楽しく飲めることはうけあ
いである。
ここではワインに焦点を絞り、個人的な体験、日本酒との作り方の違い、ブドウ
の有機農法、ワインに関する法律、料理との相性、食文化の違いなどのさまざま
な話題に触れたい。とはいっても、ワインを生業とはしない身、多少は好みが出
るかもしれないが、日本ソムリエ協会の資格は取得しているので間違ったことは
話さないつもりです。
2.ワインと日本酒との個人史
○アルコールとの出会い
最初に出会ったのは日本酒である。
中学生のころ父親の晩酌の手伝いを自然にしていた。飲んでいたのは大洗町
の地酒「月の井」(あとから知ったこと)。
高校入学のとき、地元先輩方による歓迎会で日本酒を飲まされ、比較的すんな
りと飲んで感心された。この時点で多少なりにアルコール類は飲めるようになっ
ていたのかも知れない。
高校時代は年に何回か仲間同士で飲み会をしていた。夏期講習の日に二日酔
いで学校にいられず、すぐに帰った記憶がある。
生涯で一番飲んだのは20歳のころの飲み会。友人4人と家でジンギスカンパー
ティを開き、ジャイアント(ビール 3 本分の大瓶)を各人 1 本、ブランドール(安い
ブランデー)を 1 本、その後近所の飲み屋に繰り出して、飲みに飲み、倒れなが
ら徳利が数十本並んでいたのを記憶している。その後は数日間ひどい状態が
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続き、よくもまあ生きていたものである。
その後、会社に入り、「剣菱」に目覚め(このころの剣菱は美味しかった)、上司
の勧めによる「浦霞」にもほれた。
そして歳を重ねていま行き着いた先は元の地酒「月の井」であった。
○ワインとの出会い
50 代前半に会社を早期退職し、することも無く家で無聊を囲っていたが、カル
チャーセンターの「ワイン入門」講座に通い始めることで、ワインの美味しさに目
覚めた。
日本酒とワインの比較に入る前に、一般的に皆さんが持つイメージを列挙して
みると、
ワインは日本酒と比較して、
・サービス業が資格(ソムリエ)を伴う職業となっている。
(若い女性がこの資格の取得を目指す。嫁入り道具の一種になりつつある?)
・とてつもない高価格商品が存在する。
(ワインには一本数百万というとんでもないのが存在する)
・低価格商品を否定的に見る。
(フランスのテーブルワインを指してフランスの恥と自己批判する。)
・超大金持ちの生産者がいる。
(ワイナリーの持ち主にはとんでもない大金持ちがいる)
・各国に厳密な法律が存在する。
(生産地域、品種、品質が法的に整備されていて、味わいが毎年の官能検査
で一定レベルにないと認定されない)
・家に数 100 本もワインをそろえるマニアがいる。
(数千本と死ぬまで飲めない量をそろえる人もいる)
・薀蓄を傾けながら飲む。飲むワインを話題に話が盛り上がる。
(日本酒だと、月の井の蔵酒はいいね、うんそうだね、で終わり)
・世界中のいたるところに生産者(ワイナリー)と愛飲者が存在する。
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(とにかく種類が多いので、奥行きも深い)
・国家の元首級の会話に出てくる。
(共通の話題になる)
・一度美味しいものを飲むと不味いのが飲めなくなる。
(日本酒は燗をつければ安酒でもそれなりに飲める)
・女性も飲む。
(日本酒を飲む女性のほうが色気はあるが。。。)
・料理との相性が存在する。
(相乗効果がある)
・ヘミングウェイのように孫娘の名前にワインの名前をつけるなど、単一銘柄にほ
れ込む人がいる。
(今は亡き女優マーゴ(Margaux)・ヘミングウェイのマーゴはシャトーマルゴー
の英語読み)
・以上のような文章を書きたくなる。
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3.造り方の違い
日本酒とワインは印象がかなり違って見えるが、同じ醸造酒である。そもそもお
酒は作り方によって次のように分類される。
(1)醸造酒、これには乾燥穀物を原料にする日本酒、ビールなどと、生鮮果実
を原料とするワイン(ぶどう)やシールド(りんご)がある。
(2)醸造酒以外には蒸留酒(ウォッカ、ウィスキー、ジン、焼酎、ブランデー)と混
成酒(ヴェルモット、リキュール類)がある。
蒸留酒は醸造酒を蒸留し香りの成分を取り出したものである。アルコールも香り
の成分である。もちろん分量はかなり少なくなる。ワインを蒸留して作るコニャック
ブランデーは5~9リットルのワインから1リットルのブランデーを作り出す。だから
一般に高いのである。
さて、同じ醸造酒である日本酒とワインは造り方に近いものがあるが、大きな違
いもある。お米は糖分を含まないので、このままでは発酵せず、まず、「お米を麹
菌の酵素によって糖分に変え、そこに酵母を加えて発酵させるという、きわめて
巧妙・複雑な仕組み」がある。つまり、糖化、発酵の 2 段階がある。
一方、ワインは極端なことをいえば、手を加えずとも「自然に発酵してアルコー
ル」になる。工程的には糖化の過程が無く、発酵だけの単純なものである。した
がって、いいかえれば原料の味わいが最も濃く反映される酒類である。
発酵は「糖分」が「アルコール」と「二酸化炭素」に分解することを意味する。
それではもう少し詳しく造り方を見てみよう。(興味がなければスキップして次へ
どうぞ。)
糖分
糖化
日本酒
でんぷん
発酵
アルコール
二酸化炭素
ワイン
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3.1 日本酒の造り方
原料の米を糖分に変える工程と発酵の工程が並行して進行するので、並行複
発酵酒と呼ばれる。
(ワインはブドウに糖分を含んでおり、酵母を加えることで発酵するので単発酵
酒という)。
以下は「日本酒造組合中央会」 http://www.japansake.or.jp より抜粋した。
「日本酒は、お米を発酵させて造られる醸造酒」。ところが、その造り方について
は、あまり知られていません。発酵とは、酵母が糖分を食べてアルコールを出す
こと。でもお米には糖分はありませんから発酵しません。従って日本酒は、まず
お米を麹菌の酵素によって糖分に変え、そこに酵母を加えて発酵させるという、
きわめて巧妙・複雑な仕組みによって造られるのです。その製法を知れば、日本
酒への興味はもっと深まるに違いありません。「一麹(いち麹) 二もと(にもと)
三造り(さんつくり)」といわれる日本酒造りを、映像を交えて、簡単にご紹介し
ましょう。
製 造 工 程
精米・蒸米(むしまい)
酒造りは、原料となる玄米を精米し、蒸すことから始
まります。蒸し米は麹造り、酒母、もろみの仕込みに
使われます。
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麹(こうじ)
蒸し米に黄麹菌を植えて麹を造ります。麹は酒母、も
ろみにいれて米のデンプンを糖化していく役割を果た
します。
酒 母(もと)
酒母は蒸し米、水、麹に酵母を加えたもので、もろみ
の発酵を促す酵母を大量に培養したもの。日本酒造り
には、良い酵母が大量に必要ですから、文字どおり「酒
の母」といえます。
段仕込み
ここで日本酒造りの特徴である三段階に分けて仕込み
をする段仕込みが行われます。一日目は初添え。翌日
は仕込みはお休み。酵母はゆっくりと増えていきます
が、これを踊りといいます。三日目に二回目の仕込み
(仲添え)をし、四日目に三回目の仕込み(留添え)
をして仕込みは完了します。段仕込みは、雑菌の繁殖
を抑えつつ酵母の増殖を促し、もろみの温度管理をや
りやすくするための独得の方法なのです。
もろみ(造り)
いよいよ、この酒母に麹、蒸し米、水を加えてもろみ
を仕込みます。このもろみがやがて原酒となります。
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新酒誕生
二十日ほどかけて発酵を終えたもろみは、圧搾機で搾
られ、酒と酒粕に分けられます。搾りたての新酒は、
ろ過、加熱(火入れ)され、そして貯蔵されます。ま
た製成後、一切加熱処理をしないお酒を生酒といい、
製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、出荷の際に加熱
処理するお酒を生貯蔵酒といいます。精米から、並行
複発酵、段仕込みというとても複雑な工程を経て、約
六十日間をかけて、日本酒は誕生するのです。
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3.2 ワインの造り方
以下は、日本ワイナリー協会 http://www.winery.or.jp/ から抜粋した。
「良いワインは、良いぶどうから」
1、収穫
ぶどう作りはワインの命です。
良い自然条件のもと、品質の良い
ぶどうを育てます。そして、9月
から11月にかけて収穫します。
2、破砕収穫したぶどうは、破砕機にかけ
てつぶし、果梗を取り除きます。
3、発酵
赤ワインは、つぶしてできた果汁
を果皮や種子といっしょに発酵
タンクへ入れます。
白ワインは、つぶしたぶどうを、
さらに圧搾機でしぼり、果汁だけ
を発酵タンクへいれます。
ロゼワインは、赤ワインと同じ手
順で発酵させ、液体の色がバラ色
になった時、果皮と種子を取り除
いて発酵を進めます。
ぶどうの果汁は酵母の働きで発
酵し、糖分がアルコールと炭酸ガ
スに分解されます。発酵期間はお
よそ10~20日間です。
4、熟成
発酵の終った若いワインを、樽や
タンクで熟成させます。 この間
に香り高い熟成香が生まれ、味わ
いにも深みが出ます。 また貯蔵
中に余分な味がつかないよう、
時々下に沈んだオリを除きます。
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4.いろいろなワインの造り方
■ワインには辛口と甘口、そしてものすごく甘い極甘口があるが、作り方
が違うの?
まず、辛口と甘口の作り方の違い。
■辛口と甘口
発酵はワイン酵母により、「糖分」が「アルコール」と「二酸化炭素」
に分解することを意味する。したがって、発酵が完全に行われると、糖分
の大部分がアルコールに変換されるため、すべてアルコール度が高く辛口
のワインになる(糖分が無くなるため)。
甘口ワインを造るには、発酵途中で発酵を止めれば(冷却などで)よい。
こうすると糖分がまだ残っているので甘口のワインとなる。
つまり、辛口・甘口は作り方でいろいろな段階のものが作れることになる。
5、びん
熟成
樽で熟成させたワインをびんに
詰めて暗く涼しい静かな貯蔵庫
で寝かせます。 ワインはびんの
中でも熟成を続け、寝かせておく
間に味も少しずつ変化します。
ワイン生成
糖分
発酵
アルコール
二酸化炭素
ワイン酵母
甘口ワイン 辛口ワイン
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■極甘口
この流れで行くと、デザートなどに出されるものすごく甘い、極甘口ワ
インを作るには、発酵を止めるだけでなく元になるブドウの糖分が多けれ
ば多いほど甘くなるのがわかる。
ではどうすれば、ブドウを甘くできるかだが、これにはいろいろな方法が
ある。
(A)かびによる濃縮
完熟したブドウに「ボトリティス・シレネア」というかびがつくとブド
ウの果実の水分が蒸発(かびがブドウの果皮に栄養をとるために微細な穴
をあけるため)し、糖分の高いブドウになる。ただ、品種は限られてくる。
品種によってはかびの作用で灰色かび病になるので注意が必要である。
(B)凍結したものが融けるときの濃縮
ブドウが 7 度 C以下で 1 週間続くと凍結する。これをそのまま破砕、搾
汁すると、徐々に果汁が融けるが、前半にとける果汁のほうが凝固点の関
係で糖分を多く含む。この部分をワインの原料とする。
(C)遅摘み
収穫時期を1~3 週間遅らせて、ブドウをより熟させ、糖分増量を行う。
いつ収穫するかは勝手にワイナリーが判断するのではなくその国の統制
機関が決定する。あまり勝手にはできない。
遅摘みの発見は、その昔ドイツで決定機関から収穫の許可を認可する伝
令が遅れ、1 週間遅れて摘んだところ、糖度が増したという話が残ってい
る。
2005年の猛暑の年はワイナリーが判断して早めに収穫したため、成功、
失敗があった。