ギターの伴奏による弾き歌いの指導- 1 -...

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ギターの伴奏による弾き歌いの指導

~簡略化したコードを使用して~

千葉県立○○高等学校 片岡 啓一 (音楽科)

1.はじめに

高等学校の授業において取り扱うことのできる器楽は、一般的には楽器の数量の点から

考えるとリコーダー・ギター・マンドリンなどに限られる。その中でも私の経験上生徒は

ギターに最も関心を寄せ、また取り組みも良いように思われる。

現在、大半の学校に備えられているのはクラシックギターであり、生徒が興味を示すコ

ードを弾いてポップスを演奏するのには不向きである。昨今の厳しい財政から考えて生徒

数のフォークギターを購入することは不可能であるため、クラシックギターを用いてコー

ドを弾けるように工夫せざるをえない。

また、楽曲を演奏するためには楽譜を読むという高いハードルも存在する。高校の授業

でも読譜を苦手にする生徒が半数以上を占める現状で、いかに効率よく授業を進行させ、

演奏やその練習に時間を費やせるかということも重要なことである。そこで読譜の苦手な

生徒でもわかる数字譜を考え、読譜指導の時間短縮を試みた。

この授業の目的はギターでコードを弾くことではなく、コードで伴奏をしながら自ら歌

うことにある。初めは二つのことが同時に出来なくて戸惑う生徒も多いが、コード数が少

なく平易で耳なじみのある曲から導入し、徐々に難易度を上げていくとあまり抵抗無く取

り組ませることができる。

弾き歌いができる喜びを生徒に味わわせ、積極的に授業に参加する態度を育成し、さら

に日常生活の中で音楽を気軽に楽しめる契機となるよう心がけて授業を実践している。

2.指導計画

本校における芸術の授業は2時間連続の時間割である。その2時間を通常、1時間づつ

歌唱と器楽を行っている。ギターの導入時は1時間だと足りず2時間目の途中まで行うこ

ともあるが、生徒が慣れてきたら1時間の中で展開するようにしている。

この弾き歌いの授業に入る前に、まずクラッシックギターの基本的奏法の授業を行い、

その上でコードを学習させ、弾き歌いの授業を展開している。

音ー1-1

h.tnk20
四角形
h.tnk20
タイプライタ
○○○立○○○○高等学校 ○○ ○○

- 2 -

第1時 コードの説明 (マイナー、セブンスまで)。

スケールの練習。Gdur完全形コードと簡略形コードについて ( ・ ・ 7)。 G C D

第2時 ・ ・ 7の復習およびコードチェンジの練習。G C D「明日があるさ」の実習。

第3時 右手のストロークの練習 (アルペッジョ)。

「明日があるさ」の復習と「大きな古時計」の実習。

第4時 m・ mの学習E A「大きな古時計」の復習と「乾杯」の実習。

第5時 既習コードの復習。

「乾杯」の復習と「カントリーロード」の実習。

第6時 「カントリーロード」の復習と「 」の実習。Let it be

第7時 mの学習 。B 。

「 」の復習と「さとうきび畑」の実習。Let it be

第8時 既習曲の復習。

第9時 実技試験。

3.指導内容

(1)数字譜について

通常ギターの楽譜は5線譜とタブ譜の2種類であるが、これまでの経験上いずれもす

ぐに読めるようにはならない。また、読譜指導を徹底すると生徒が飽きてしまい、結局

演奏できるようにならなくなってしまうことが多かった。しかし、読譜は必要不可欠で

あるため楽譜が読めるようになるための過渡的な方法として数字譜を使用している。授

業では5線譜で書いた楽譜を配り、生徒が必要に応じて数字を記入していく。数字譜の

学習は「弾き歌い」に入る前段階で学習させておく。

数字譜の仕組みはシンプルで弦の番号を分母に、フレットの位置を分子に数字で書き

表すものである。

音ー1-2

- 3 -

例 3/5 ・・・→5弦の3フレット・・・→ 音C

0/4 ・・・→4弦の解放弦 ・・・→ 音D

この分数を音符の下に記入させ、徐々に書かなくても弾けるように覚えさせていく。

(2)簡略形コードについて

Gdur Gdur 7 Gまず導入として がふさわしいと考えた。それは のⅠ・Ⅳ・Ⅴ にあたる

・ ・ コードにセーハがなく、また音域も低めで男子でも歌唱しやすい調であるとC D7思われるからである。クラシックギターは本来コードを弾くための楽器ではないので、

手の小さい生徒が一度に多くのフレットを押さえることはかなりの困難が伴う。そこで

左手の負担を極力少なくし、その分右手の弾き方を工夫して和音を成立させようと試み

た。それが簡略形コードである。誰でも弾けることを第一の目的にしたので、響きに多

少の難はあるが最低限の響きは確保出来ていると考える。完全形コードが弾ける生徒に

はそのまま本来の形で演奏させている。

コード・・・本来ならば左手は3/1、2/5、3/6の3カ所を押さえなければなGらない。しかし、手が小さい生徒には困難を伴うので、3/6のみ押さ

えさせる。右手は和音外の音である5弦と1弦は弾かず、6・4・3・

2弦のみを弾く。

6弦には (親指)4弦には (ひとさし指)3弦には (中指)2弦P I Mには (薬指)を置き、アルアイレ奏法で弾く。A

コード・・・1/2、2/4、3/5を押さえなければならないが、ここでは4弦をC、 。 、 、 、省略して 2カ所のみ押さえる 右手は5弦は 3弦は 2弦はP I M

1弦は で弾く。A

コード・・このコードは無理なく3箇所とも押さえられるので、完全形と同じD72/1、1/2、2/3を押さえる。右手は4弦は 、3弦は 、2弦P Iは 、1弦は で弾く。M A

以上の3つのコードを素早くコードチェンジが出来るように練習させる。そして徐々

に以下のコードを増やしていく。

音ー1ー3

- 4 -

コード・・左手はすべて開放にし、右手は6弦を 、3弦を 、2弦を 、1弦Em P I Mを で弾く。2/4と2/5は省略する。A

コード・・1/2、2/3を押さえ、右手は5弦を 、3弦を 、2弦を 、1弦Am P I Mを で押さえる。2/4は省略する。A

コード・・このコードはセーハを用い、難易度が高いので で代用する。Bm Bm72/1、2/3、2/5を押さえ、5弦を 、3弦を 、2弦を 、1P I M弦を で弾く。A

授業で使用するコードは以上の6つである。

慣れない時は1つずつのコードは弾けても次のコードに移ることがなかなかできな

G Cい。そのような時はまず、片手の練習に多くの時間を取っている。左手は① →

② → ③ → の3パターンを右手を添えずに無音で指をどこに移動させればC G G D7良いのかを徹底的に練習させる。

①は3/6を3(薬指)で押さえ、チェンジするときに3を1本下の5弦にスライド

させ、同時に1(ひとさし指)を1/2に置く。その時目は1の指を見させ、3の指は

感覚でスライドさせるように指導する。

②は1/2が共通音なので1の指をそのまま残し、3の指を3/5から2/1へ移動

させ、新たに2の指を2/3に置かせる。1/2を動かさないことがポイントになる。

③は共通音が無いので全ての指を弦から離し、改めて3の指を3/6に置かせる。

片手のみの練習なので、あまり困難を伴わずにできる。

次に右手の練習である。

上に揚げた6つのコードは全部 ・ ・ ・ で弾かせる。P I M A同時に4本の指を指示された弦上に置くことは、初めは難しい。まず、目で見ながら

正確に置く練習をさせる。その時右手の形を意識して覚えさせる。それができるように

なったら、手元を見ずに顔を正面に向けて感覚だけで手を弦の上に置かせる。次にチェ

ンジの練習に入る。これも初めは目で確認させながら、そしてできたら感覚だけで出来

るようにさせる。

片手ずつできたらいよいよ両手の練習に入る。

まず、1つずつコードを弾かせ響きを覚えさせる。次にコードチェンジであるが、初

めは全員が弾けるゆっくりしたテンポで練習を行う。いきなり3つ以上のコードチェン

ジは難しいので、 → のように2つのパターンを練習する。ここですぐにできる生G C徒とそうでない生徒等、進度がまちまちになる。

音ー1-4

- 5 -

そのような場合は下のようなパターンで自分の進度に合ったリズムで練習させる。

慣れてきたらコードの数を増やし、2小節ごとにチェンジを行う。

以上がコード練習の手順であるが、第1時で全員ができるようには当然ならない。焦

らず毎週反復練習をする事によって必ず上達していく。 ・ ・ の3つだけをいつまG C D7でもやるのではなく、完全にできるようになっていなくても次の曲に移り、新しいコー

ドを学習させる。すると苦手な生徒も前に学習したコードが弾けるようになっているこ

とが多い。

4.評価

(1)題材の評価規準

観点1 関心・意欲・態 観点2 芸術的感受や 観点3 創造的な表現

度 表現の工夫 の技能

題材の評価 弾き歌いという音楽の形 ギターコードの響きを 各々の楽曲の雰囲気に

規準 態に関心を持ち、意欲的 認識し、楽曲に適した 合ったストロークを自

に練習に取り組み演奏し 歌唱表現を工夫してい ら考え表現している。

ようとしている。 る。

学習活動に ①コード練習等の基礎練 ①マイナーやセブンス ①アルペッジョや様々

おける具体 習を意欲的に行ってい の響きを体得している なリズムを身に付けて。

の評価規準 る。 いる。

②自ら伴奏し歌唱するこ ②歌唱パートは歌詞の ②楽譜に記したコード

とに関心を抱き、実現さ 内容を理解し表情豊か 以外に適合するコード

せるために前向きな態度 に表現しようとしてい はないかを考え試行し

で取り組んでいる。 る。 ている。

③新しい曲に関心を持ち ③ギター伴奏とのバラ ③歌詞の内容をイメー

弾き歌いが出来るように ンスのとれた歌唱方法 ジし、自分の声の音色

積極的な態度で臨んでい を工夫している。 や特徴を生かした表現

る。 を工夫している。

音ー1-5

- 6 -

(2)指導と評価の計画

時間 学 習 活 動 題材の評価規準との関連 評価方法

1 コードを楽典的に理解する 観点1-① 観察

コードの種類を感覚的に理解する 観点2-①

・ ・ を演奏する 観点1-③G C D7

2 3コードのチェンジを行う 観点1-① 観察

3 楽譜どおりにコードを演奏する 観点1-②

コードを弾きながら歌唱する 観点1-②、2-②

4 新しいコードの響きを覚え、演奏する 観点1-①、2-①

5 いくつかのストロークに挑戦する 観点3-①

6 歌詞の内容に適した歌唱をする 観点1-③、2-②

7 自分の力に合った表現方法を工夫する 観点3-②、3-③

8 完成度の高い演奏を目指し練習する 観点1-①、2-② 観察および実

9 歌唱とギターのバランスに注意し、楽 観点2-③、3-③ 技試験

曲に合った演奏をする

5.実践例

第2時の実践例を掲げる。

教材 「明日があるさ」

本時 第2時(全9時間扱い)

本時の目標 ① ・ ・ のコードチェンジの学習G C D7②弾き歌いの実習

時間配分 指導内容 学習活動 指導上の留意点

導 10分 出欠確認

ギターの準備 チューニング コードを弾くので和音がきれ

入 いに響くように正しくチュー

ニングができているか、確認

する。

音ー1-6

- 7 -

・ ・ の 3つのコードを各々正 まず全体に再度、押さえるポG C D7復習 確に演奏する。 ションと弾く弦を説明し、机

導 間巡視をして個別指導を行

う。

展 35分 コードチェンジ 各々のパターンの範奏 コードの変化を耳で理解出来

の学習 を聞く。 るように集中して聞かせる。

① → 左手の練習 指使いが正しくなるようにG Cフレット見ながら正確に移動

② → させる。C D7右手の練習 初めは目で見て移動させる。

③ → 移動先が理解できたら、顔をD7 G開 正面に向かせ手の感覚のみで

移動させる。

両手の練習 ①②③のパターンごとにゆっ

くり練習させる。個別指導の

時間を多くとる。観点1-①

弾き歌いの範奏を聞く ストロークを工夫して軽快に

楽しく演奏する。

明日があるさ 歌唱練習 平易な楽曲なので歌唱パート「 」

の実習 を暗譜させる。

指導者がギターで伴奏する。

ギターの練習 テンポを遅くして楽譜どおり

に練習させる。

弾き歌いの練習 4小節づつ練習させる。

チェンジがスムーズに出来な

い生徒は コードだけでもG弾きながら歌わせる。

弾き歌いは今回が初めてなの

で出来なくても焦らないよ

うに指導する。

最後に通して演奏する。

経験者にはストロークを工夫

して演奏させる。

音ー1-7

- 8 -

ま 5分 講評 本時の評価を行う。 生徒が前向きに取り組めるよ

と うな評価をする。

め 次回予告 「大きな古時計」の範 アルペッジョに注目させて聞

奏を聞く。 かせる。

ギターの片付け

6.生徒の感想

弾き歌いの授業は2年の1学期に行った。1クラスの人数は約32人で、男女の比率

は半々である。コードを弾くことについては男子がより興味深く取り組んでいるように

見受けられた。女子は相対的に手が小さくコードが押さえにくいため、初めのうちは積

極的に取り組まない生徒もみられた。しかし、色々な楽曲を実習していくにつれてスム

ーズに授業の流れにのってくるようになった。今年は上記の6曲の他に時間のあるクラ

スでは岡本真夜作曲「 」も教材に加えた。生徒には「乾杯」や「カントリーTomorrowロード (英語で歌唱)が人気が高く、試験でもこの2曲を選択する者が多い。」

実技試験前の最後の授業で弾き歌いの授業について感想を書かせた。楽しかったなど

の肯定的な意見は84%、つらかったなどの否定的な意見は16%であった。総合的に

みると慣れないうちは消極的な態度の生徒もいるが、回数を重ねて色々な楽曲を実習し

ていくうちに楽しくなっていくという傾向がみられた。以下に感想の一部を載せる。

(1)肯定的な感想

・かなり難しくて困ったけれど、できるようになると楽しかった (男子)。

・最初は難しかったけども、ふりかえるとできるようになっててビックリした (男。

子)

・最初はとても難しかったです。まったく指も動かないし・・・。覚えられないし・

・・。でも練習していくうちに少しづつできて、とってもうれしかったです。その

おかげでおばあちゃんの家にあったギターもふっかつして活用されてます。授業だ

けでなく、これからも色々な曲でやっていきたいと思いました。うたも弾くのも頑

張りたいです。とっても楽しかったです。ありがとうございました (女子)。

・初めは コードも コードも何も弾けなくて分からなかったのに、この3カ月?G Cでこんなに弾ける様になったのが自分でもびっくりです!!弾き語りは「弾く」

のと「語る」のと両方で大変な時もあったけど、最終的には出来て良かったです。

いい経験が出来たのでよかったです!!(女子)

音ー1-8

- 9 -

(2)否定的な感想

・正直できないからこの時間はつらかったです。だから発表(試験のことか?)もで

きるか不安です。弾き語りはできたらかっこいいし、みんながぼくのことをリスペ

クトしてくれると思います だからはやくコードをおぼえてがんばりたいです 男。 。(

子)

。 。・やっぱりあんまり好きくない でもコードは覚えたよ!! とか とか とかG C Em(女子)

・少しはひけるようになったのがうれしい。けれど発表できるほど間違いなくひける

曲はないので悲しい。楽器は苦手だから嫌な思い出になっていまうのが嫌だ。評価

が楽器だと下がる一方なのでしばらく自分では正直やりたくない。聞くのは好きだ

が (男子)。

7.おわりに

弾き歌いの授業は前任校から始め、今年で9年が経過した。コードをピックで弾きた

いという要望があったのがきっかけであった。なるべく手に負担をかけずにコードを弾

く方法はないか、また誰でもすぐ理解できる読譜の方法はないかという問題に直面し、

それらの解決に時間を要した。

また主要3和音のみで、あるいはそれに数少ない副3和音を加えるだけで演奏できる

曲を捜すことにも力を注いだ。年月を経るうちに少しづつ教材も増えてきたが、生徒が

歌いたいと思っている最近流行しているような曲などは平易なコードに置き換えること

が難しく、なかなか採用することができない。様々な楽曲を調べてレパートリー 化し

ていき、より多くの楽曲を生徒に提供することが、今後の課題であると考える。

最後にこの研究を行うにあたって指導、助言をくださった先生方に感謝の意を申し上

げる。

音ー1-9

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音ー1-11

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音ー1-12