gh11型及び 13型エンジン - bufsiz.jpkiroku.bufsiz.jp/gijyu/h28/gat/h28g-ud2.pdfu dトフツ...
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U D トフツ
GH11型及び13型エンジン
通称名 車 両 型 式 エンジン型式 適用時期 出典資料
LDG-CK系LDG-CV系LDG-CD系 GHllTA
整備要領書2010大型トラック別冊LKG-CD系 GHll TB
クオン LDG-CW系 GHll TC 2010.7 ~ エンジン
LKG-CW系 GH13TD . GHll
LDG-CG系 GH13TE . GH13
LKG-CG系LDG-GK系
1 概要
1 ) はじめに
2010年モデル大型車クオン (Quon)は,平成21年排出ガス規制(ポスト新長期規制)適合のために開発した,
新型エンジン GHll型(馬力違いで3機種). GH13型(馬力違いで2機種)と,尿素SCRシステムに加え. PM
低減装置のUDPC(UDパティキュレート・クリーニング)を組み込んだ後処理システムを採用。以降は,そ
の新型エンジン GHll型及びGH13型について説明する。
2) 環境基準対応(図ー 1)
平成21年排出ガス規制適合のため,新開発の後処理システムを採用。
・超高圧燃料噴射(2000気圧超)を実現したユニット・インジェクタを採用。燃料噴霧を微細化し,完全燃
焼させてPMを低減し併せて燃費向上も実現。
-尿素SCR触媒一体型マフラに PM低減装置(UDPC: UDパティキュレート・クリーニング)を追加。PM
低減装置は排出ガス中のPM(粒子状物質)を削減。
-ターボ・チャージャ排気側に AHI(アフタ・トリートメント・ハイドロ・カーボン・インジェクション)
を追加。AHIは. PM低減装置の手動再生時,燃料を排気管内に噴射して PM低減装置の再生を助ける。
一-.
圃圃圃闘 AdBlue 圃圃圃園 エンジン冷却水
V凶NV ヒータ 圃圃園田 燃料
図-1 環境基準対応
-206 -
-11... 3) GE型エンジンに対する変更内容(図ー 2)
ターボ・チャージャの変更. VGT(バリアブル・ジオメトリ・ターボ)の採用
AHI(アフタ・トリー卜メン卜・ハイド口・カーボン・インジェクション)の採用
オイル・フィルタ・フル・フロー・オイル・フィルタ.バイパス・オイル・フィルタ
ベルト・レイアウトの変更. 2 Comp, 3 Compの対応は不可
ジェネレータ・ブラシレス→ブラシ付き
燃料フィルタ・1個→ 2個
ユニット・インジェクタの最高噴射圧の変更
2000気圧→ 2000気圧超
図-2 GE型エンジンに対する変更内容
(1) エンジン主要諸元比較
エ ン ジ ン 型 式 GHllTA GHllTB GHll TC
総排気量(cm3) 10,836 10,836 10,836
内径×行程(mm) 123 x 152 123 x 152 123 x 152
最両出力 kW(PS)/rpm 257 (350) 11,800 279 (380) 11,800 302 (410) 11,800
最大 トルク N. m (kg . m) Irpm 1,442 (147) 11,200 1,716 (175) 11,200 1,814 (185) 11,200
有負荷最高回転速度 rpm 2,100 2,100 2,100
エンジン型式 GH13TD GH13TE
総排気量(cm3) 12,777 12,777
内径×行手呈(mm) 131 x 158 131 x 158
最高出力 kW(PS)/rpm 331 (450) 11,800 353 (480) 11,800
最大 トルク N.m(kg ・m)Irpm 2,157 (220) 11,200 2,157 (220) 11,200
有負荷最高回転速度 rpm 2,100 2,100
-207 -
(2) エンジン性能曲線図
<GH11TA vs GE13TA)
-新GH11TA(350PS) .......... 1見行GE13TA(350PS)
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エンジン回転速度(rpm)
<GH11TB VS GE13TB)
-新GH11丁目(380PS)
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エンジン回転速度(rpm)
<GH13TO VS GE13TO) -新GH13TD(450PS)
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現行GE13TD(450PS)
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80 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 2,400
エンジン回転速度(rpm)
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<GH11TC VS GE13TC)
-新GH11TC(410PS)
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エンジン回転速度(rpm)
<GH13TE VS GE13TE)
-・・・・園田園-新GH13TE(480PS) ...... 現行GE13TE(480PS)
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エンジン回転速度(rpm)
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2 構造・機能
1 ) 概要(図-3)
-E・E・
クオンに搭載される GHll型及びGH13型エンジンは,直列6気筒直接噴射デイーゼルでEMS(エンジン・
マネージメント・システム)を搭載している。ターボ・チャージャは, VGT型-可変ジオメ トリ・ターボで
ある。エンジンは, リヤ・タイミング・ギア,一体型シ リンダ・ヘッド,オーバ・ヘッド・カムシャフ ト,
ユニッ ト・インジェクタ, VEBエンジン・ブレーキを装備している。
以降の項で, GE型エンジンに対する主な変更内容を述べる。
(GH11 )
(GH13)
図-3 概要
-209 -
-E・E・2) 構成部品の構造・機能
(1) 潤滑及びオイル・システム(図-4)
エンジンは,エンジン後部のギヤ式のポンプで強制潤滑される。
オイル・システムのセーフテイ・バルブはバルブ・ハウジングの下側にある。オイル・フィルタ・ハウジン
グには,細孔のバイパス・フィルタと, 2個のフル・フロー・フィルタが取り付けられている。
シリンダ・ブロックには ブロックを前後に走る二つのオイル経路がある。ブロック右側の主潤滑経路がク
ランク機構のすべてのベアリングにオイルを供給する。ブロック左側のピストン冷却経路が,冷却及び潤滑
用のオイルをピストンに供給する。
シリンダ・ヘッドのすべてのベアリングは,ブロックの後方にある鋳抜き経路から,接続ハウジング又は
VCBパルフ、、(VEBが取り付けられているかどうかによる)や中空のロッカ・シャフトを経由して潤滑される。
フロント,戸市
ポンフ。 バイパス・バルブ
図-4 潤滑及びオイル・システム
(2) オイル・フィルタ・ハウジング(図-5)
ロッカ・シャフト
主;閏;骨経路
オイル・フィルタ・ハウジングは エンジン右側にボルトで固定されている。エンジンの中のオイルの流れ
は, シリンダ・ブロックとオイル・フィルタ・ハウジング内のバルブで制御される。
図-5 オイル・フィルタ・ハウジング
-210 -
-u_._ (3) 燃料系統
(イ)燃料供給システム(図-6)
燃料系統はEMSにより電気的に制御されている。燃料は,各シリンダに設けられたユニット・インジェク
タによか高圧噴射される。この高い圧力はオーバ・ヘッド・カムシャフ ト及びロ ッカ・アームにより機械
的に作り出される。燃料の噴射量と噴射タイミングは,多数のセンサからの情報を基にEECU(エンジン・
エレクトロニック・コントロール・ユニット)が電気制御する。
図は,燃料系統の主要コンポーネントと供給系統の燃料の流れである。
① :ストレーナ, 一体型タンク・ユニット
② :供給ポンプ
③ :フューエル・フィルタ・ハウジング
④ :ウォータ・セバレータ付きプレ ・フィルタ
⑤ :ブリーダ・バルブ
⑥ :燃料フィルタ
⑦ :オーバ・フロー・バルブ
③ :ユニット・インジェクタ
⑨ :シリンダ・ヘ ッド内の燃料経路
⑩:インジェクタ
⑪:圧力センサ及びシャッ トオフ・バルブ付きバルブ・ブロ ック
⑫ : EECU冷却ループ燃料フィルタ・ハウジングに手動ポンプが装備されている。
図-6 燃料供給システム
市
Ei
唱
Ei
円ノ臼
-E・E・(口) 燃料供給系統及び原理(図-7)
供給ポンプ①が吸引する燃料は,タンク・ユニットのストレーナ②を通過した後, EECU⑬を冷却する冷却
ループ⑥を通過し燃料フィルタ・ハウジング③に入る。次に燃料は,ハンド・ポンプ⑫の逆止弁。 と
ウォータ・セバレータ⑬付きプレ・フィルタ④を通る。ノンリターン・バルブの役割は,エンジンを停止し
た際,燃料がタンクに押し戻されることを防止することである。
供給ポンプ①は,燃料を燃料フィルタ・ハウジング③へ送る。燃料はさらに,メイン・フィルタ⑤を通って
シリンダ・ヘッドの燃料レール③まで送られる。このレールは, シリンダ・ヘッド内の各インジェクタを囲
むリング状の溝を通して,各ユニット・インジェクタ③に燃料を供給する。
オーバ・フロー・バルブ⑦は,インジ、エクタへの燃料供給圧力を制御する。
AHIのインジェクタ⑧が開くとき,燃料は燃料ライン⑫を通り,バルブ、⑫から,インジェクタに供給される。
インジェクタが閉じると,燃料はバルブと戻り燃料ライン⑫を通り,燃料タンクに戻る。
シリンダ・ヘッドの燃料レール⑨から戻る燃料は,オーバ・フロー・バルブゃ⑦を通り,燃料フィルタ・ハウ
ジング③に戻る。燃料フィルタ・ハウジングの経路を通過して戻っ てくる燃料は, タンクからの燃料と混合
され,供給ポンプのインレット(吸引側)に吸引される。
供給ポンプには, 二つのバルブがある。セーフテイ・バルブ⑭は,圧力が高くなり過ぎた時(例えば,燃料
フィルタが詰まったとき)に燃料を吸引側に戻す。ノンリターン・バルブ⑬は,ハンド・ポンプ⑫使用時に
聞き,燃料を送りやすくする。
燃料系統に混入したエアは,エンジン始動時に自動的に排出される。燃料フィルタ・ハウジング内には通気
バルブ⑩があり,戻り燃料パイプでタンクへ接続されている。これによりシステム内に混入したエアは,少
量の燃料と共に, 戻 り燃料パイプを通してタンクへ戻さ れる。
フィルタを交換するとき,燃料フィルタを取り外すとバルブ⑬,⑬が閉じ,ここから燃料が漏れるのを防ぐ。
フィルタ交換時のフィルタのエア抜きは,燃料フィルタ・ハウジングのバルブマ⑬,⑫で制御する。
燃料フィルタ・ハウジングには燃料圧力センサ⑫があり,燃料フィルタ後の供給圧を計測する。供給圧が故
障コード表の指定値より低くなった場合,故障コードがインストルメント・パネルに表示される。燃料フィ
ルタ・ハウジングのプラグ・アウトレット⑫は,外付けの圧力センサ又はゲージを使用して供給圧を測定す
るときに使用する。
ウォータ・セバレータ⑬内にはレベル・センサ⑫があり,あるレベル以上の水分があると信号を送る。
水分は運転席からのスイッチ操作により電気ドレン・バルブ⑧を開放し排出する。
追加アクセサリとして,ウォータ・セバレータ下部に燃料ヒータ⑫を取り付けることもできる。
ハンド・ポンプ⑫は燃料フィルタ・ハウジングにあり,燃料系統が空になったときに燃料を送り出すのに使
用する。エンジン回転中に使用しではならない。
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図-7 燃料供給系統及び原理
(ノサ 各構成部品(図-8)
③ :ユニット・インジ、エクタは新型であり, より正確に燃料を噴射するために,ソレノイド・バルブを 2個装
備している。
⑧:燃料フィルタ・ブラケットにはハンド・ポンプがある。これはシステムが空になったときに燃料を送り出
すのに使用する。エンジン停止時はノンリターン・バルブが,燃料がタンクへ逆流するのを防ぐ。
電気コネクタは,ウォータ・セバレータ 内のレベル・センサ, ドレン・バルブ及びヒータのためのコネク
タである。
プレ・フィルタは吸引側にあり,供給ポンプを通過する前の燃料をj慮、過する。メイン・フィルタは加圧側
にあり,供給ポンフ。を通った後の燃料を漉過する。
通気バルブは燃料フィルタ・ブラケット内にある。同バルブは燃料タンクへの戻りラインに接続されてい
る。
。 :供給ポンプはギア・タイプで,パワー・ステアリング・ポンプの上に取り付けられている。同ポンプは,
パワー・ステアリング・ポンプを通るシャフトで駆動されている。供給ポンプとパワー・ステアリング・
ポンプの聞は,パワー・ステアリング・ポンプ側のフランジの溝にはめられた 0-リングでシールされて
いる。ポンプ間の動力伝達はフローティング・フォロワを介して行う 。ポンプ・ハウジングとポンプ・エ
ンド・カバーは鋳鉄製である。 ドライブ・ギア ・シャフ トとポンプ・ホイールはニ一ドル・ベアリングに
支えられ回転する。ポンプ・セーフテイ・バルブはポンプ・ハウジング内にあり,ノンリターン・バルブ
はポンプのエンド・カバー内にある。
ポンプ・ドライブ・シャフトから漏れた燃料は,経路を通ってポンプの吸引側に戻る。
⑨:エンジン左側の冷却ループは,供給ポンプの吸引側の燃料を使いEECUを冷却する。
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-1.... ⑤ :シリンダ・ヘッドのオーバ・フロー・バルブは,低圧系統の圧力を制御し,またユニット・インジェクタ
に燃料を供給すると同時に冷却する。
② :圧力センサ及びシャットオフ・バルブ付きバルブ・ブロック
⑤ :インジェクタ
同ユニット・インジェクタ(図ー 9)
ニ一ドル・ベアリング
ノンリターン・パルプ、
ポンプ・エンド・カバー
ニ一ドル・ベアリング
図-8 各コンポーネン卜
F
D
C
GHエンジンは,より正確な噴射のために, 二つのソレノイド・バルブを有する新タイプのユニット・イン
ジ、ェクタを搭載している。これにより, より良い燃焼が確保され,微粒子排出が最小になり,よりきれいな
排気ガスとなる。
ユニット・インジェクタは,各シリンダの中心,つまり四つのバルブの聞に垂直に取り付けられており, ク
ランプでしっかり固定されている。各インジェクタの下部はクーラント・ジャケットに対し, 0-リングの
付いたステンレス・スチール製スリーブ0-リングを介して保持されている。リング状の各インジェクタ周
りの燃料供給用の空間は二つの0-リングでシールされている。
ユニット・インジェクタは主に以下の三つの部分で構成されている:
-214 -
-u・③ :ポンプ
③ :バルブ部(アクチュエータ)
。 :ノズル
バルブ部には二つのソレノイド・バルブがある排出バルブ及びソレノイド・コイルとリターン・スプリング
付きニ一ドル・バルブである。
充てんフェーズでは,ポンプのピストンが上方向に動き,シリンダ・ヘッドの燃料レールからの燃料は強制
的にユニット・インジェクタへ送り込まれる。
排出フェーズでは,ポンプのピストンが下方向に動き,燃料はシリンダ・ヘッドの燃料レールへ強制的に戻
される。この間,ソレノイド・バルブのコイルの電流は切れており,排出バルブが開いているので,燃料経
路からノズルにかけて圧力は上がらない。
圧力上昇フェーズでは,排出バルブのソレノイド・コイルに電流が流れ,排出バルブが閉じる。これにより,
燃料経路に高圧が生まれる。ニ一ドル・バルブ後方のチャンパ内の圧力も上昇し,ニ一ドル・バルブ・ピス
トンに作用して,ニ一 ドル・バルブはノズル ・ピンが聞かないようにする。
要求燃料圧に達すると,噴射フェーズが始まる。ニ一ドル・ソレノイド・バルブ・コイルに電流が流れ,
ニ一ドル・バルブを開く 。これにより,ニ一 ドル・バルブ・ピストンに加わっていた高圧が開放され,ノズ
ル・ピンが開く 。霧状の燃料は,超高圧でエンジンの燃焼室内に噴霧される。
排出バルブを再度開くことで燃料噴射は停止しピストンの圧力が下がって ノズ、ル・ピンが閉じる。
全噴射プロセスはEMSで制御される。
インジェクタの電気コネクタには, 三つのマークがある。部品番号, トリム・コード,製造番号である。
各インジェクタには個性があり,エンジンに最適な燃料を噴射し,エミッションを最小限にするため個々に
調整されている。そのため,一つ又は複数のインジェクタを交換する際は, EECUに新しいインジェクタの
トリム・コードをプログラミングする必要がある。プログラミングは,インジ、ェクタを交換する場合にのみ
実施する。
0-リング
スリーブ
図-9 ユニット・インジェクタ
FhU
1E4
nノ臼
-E・E・(4) 排気系統
(イ) AHI (アフタ・トリートメント・ハイド口・カーボン・インジェクション)(図ー 10)
このインジェクタは デイーゼル燃料を排気ガスの流れに注入して,排気温度を能動的な再生が始まるのに
必要なレベルまで上昇させるために使用する。能動的な再生モードは,受動的な再生でフィルタのススが規
定レベルを超えてしまう場合に使用する。能動的な再生は,エンジンのEECUによって自動的に(ただし
AHIは作動しない),又は手動でドライパ又はサービス技術者が適切な場所で行うことができる。
-圧力センサ及びシャットオフ・バルブ付きバルブ・ブロック
・インジェクタ
-燃料ライン
図-10 AHI
-216 -
-U D・(口) 可変ターボ・チャージャ (VGT:バリアブル・ジオメ卜リ・ターボ)(図一 11)
ターボ・チャージャは VGT型-可変ジオメトリ・ターボである。
VGTターボは,持続的に最高の性能,最小の燃費及び最小のエミッションを達成するよう EECUで制御さ
れる。
VGTターボには可変シャツタがあり,これにより給気圧が変えられる。
可変シャツタはエンジン負荷に基づいて, ターボ上のアクチュエータにより調整される。アクチュエータの
制御は EECUが行う 。加速が大きい場合,従来型のターボに比べVGTターボではより 早く給気圧が上昇す
る。
VGTターボは, EGRバルブと共に,吸気パイプ中のEGRガス量を調整する。給気圧を調整することによっ
て,エンジン速度にかかわらず最適量のEGRガスを吸気パイプに供給することができる。
もし電気的または機械的故障があり,エンジン効率が低下すると,アクチュエータはシャツタを完全に開
の位置にセットする。その為給気圧は下がる。
VGTターボの可変シャツタは,エンジン・ブレーキとして,またエンジンの温度を保持する機能としても
使われる。
ターボ・チャージャ回転速度センサ
タービン 可変シャツタ
図-11 可変ターボ・チャージャ
(5) EATS (排気ガス後処理システム)
(イ)概要
JPN10のエミッション ・レベル要求を満たすため, EGR(排気再循環)と DPF(デイーゼル・パテイキュレー
ト・フィルタ)及びSCR(選択触媒還元)のシステムには, 2010年発効の排出ガス基準が適用されている。
JPN10では,窒素酸化物(NOx)を0.75g/kWhまで,微粒子排出を O.lg/kWhまで低減しなければならない。
燃焼効率の良いデイーゼル・エンジンと,排ガス後処理の組合せにより窒素酸化物と粒子状物質の排出を大
幅に減少している。
このシステムでは 排気ガスをエンジンへ再循環させた後,パティキュレート・フィルタで排気ガスを処理
し,キャタ リック ・コンバータを通過する前に AdBlue溶液を添加している。このAdBlue溶液は, JPN10
の要件を満たすために,燃料の体積に対して 3-----4%の分量が必要であり,窒素酸化物を自然界に存在する
物質である窒素と水に変化させる。EECUが現在の負荷とエンジン回転速度に適切な AdBlue溶液の注入量
を計算する。
ヴJ
11よ
円ノ山
-E・E・(口) EGR(工キゾースト・ガス・リサーキュレーション)システム (図一 12)
クールド EGRシステムは燃焼室へ排気ガスを再循環させることにより,最高燃焼温度を下げ,排気中の酸
化窒素(NOx)を減少させる。燃焼温度が高くなるにつれて, NOx含有率は増加するが, EGRは冷却した排
気ガスの再循環により 燃焼室の温度を下げ, NOxの放出レベルを下げる。
排気マニホールドに取り付けた EGRバルブは,油圧で制御され,排気ガスの再循環を調節する。EGRバル
ブから,調整された一部の排気ガスがEGRクーラに流れ,さらに EGRメータを介して,チャージ・エア・
クーラで冷やされた吸入空気と混ざり合って吸気マニホールドに流れる。VGTターボは, EMSを介し,ア
クチュエータでタービン・ジオメトリを制御することにより,エンジンのドライパビリティを向上させ,か
っ常に適切な EGR量を維持する。排気ガスの後処理はマフラで行う 。
再循環排気ガスの総量は,エンジン負荷,冷却液温度,その他要素に応じて EECUで制御される。
図-12 EGR
(/¥) DPF (ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)システム (図-13)
DPFは,デイーゼル・エンジンの排気ガスから,デイーゼル微粒子又は煤を取り除く装置である。筒型の
DPFは,通常85%以上の煤煙を除去し特に高負荷状態では 100%近くの煤煙を除去できる。DPFを装着
したデイーゼル車は,排気管から目に見えるような煤煙を排出しない。DPFは微粒子を集積するだけでなく,
クリーニングすることも必要である。フィルタのクリーニングは,触媒(受動的)を使ったり, AHIによる
燃料の噴射で煤煙が燃焼する温度までフィルタを加熱するなどの能動的技術を使用する。 これが「フィル
タ・リジェネレイション」である。燃料の硫黄分は「リジェネレイション」方式の妨げとなることが多いので,
規制に合った硫黄分レベルの燃料を使用することが重要である。
図-13 DPF
-218 -
-E・E・(ニ.)SCR(選択還元型触媒)システム (図-14)
排気ガスはマフラに組み込まれたSCR触媒コンバータへ送られる。触媒コンバータはセラミック構造で,
活性物質でコーテイングされた多数の小さな管が設けられている。霧化した AdBlue溶液がマフラ前でエキ
ゾースト・パイプへ注入され,高温の排気ガスと混じり合う 。排気ガスの熱が即座に AdBlue溶液をアンモ
ニアと 二酸化炭素に分解する。排気ガスがSCR触媒コンバータを通過すると,排気ガス内のアンモニアと
窒素酸化物の反応が加速し 最終的に無害の窒素と水が生成される。
触媒コンバータの最終段階(クリーン・ア ップ)のプラチナ・コーティングは,排ガス中のアンモニア臭を防
ぐため,非反応性のNH3を処理する。
触媒コンバータは,修理したり,個々の部品を交換することはできない。必要であれば,マフラ全体を交換
しなければならない。NOxセンサ,計量弁,温度センサなどの外部取り付けコンポーネントは単品として
交換できる。
JPNIO (PNLT)では,窒素酸化物(NOx)をO.75g/kWhまで,微粒子排出を O.lg/kWhまで低減している。
Exhaust Emissions (排気物質)(g/kWh)
PM
0.04
0.03
0.02
0.01
1.5 2 NOx
図-14 SCR (選択還元型触媒)システム
-219
-E・E・除) 原理(図-15,16)
EATS(排気ガス後処理システム)は,以下のコンポーネントで形成されている。EGR(エキゾースト・ガ
ス・リサーキュレーション), DPF (デイーゼル・パテイキュレート・フィルタ), ACM(アフタートリート
メント・コントロール・ユニット),ポンプ・ユニット, AdBlue 溶液タンク,計量ユニット, SCR(セレク
テイブ・キャタリティック・リサーキュレーション,選択還元型触媒)。
ACM
図-15 原理①
AdBlue 溶液は霧化され,触媒コンパータ前で排気ガスへ注入される。EMS(エンジン・マネージメント・
システム)が正確な注入を制御しあらゆる動作条件で、最大のエミッション低減を確保する。
エキゾースト・システムの熱により, AdBlue溶液はアンモニアと二酸化炭素に分解される。アンモニアは
活性物質であり,触媒コンパータ内で起こる化学反応の重要な要素である。ここでNOx(窒素酸化物)が無
害な窒素と水蒸気に変化する。この化学反応は2000
C以上で発生する。
AdBlueタンク
EMS
図-16 原理②
220 -
-E・E・(6) GH11エンジン・ブレーキ VEB7
VEB7エンジン・ブレーキは相互に作用するこつのシステムで構成されている。
(イ) VGTエンジン・ブレーキ
VGTターボをエンジン・ブレーキとして活用するもの。EECUが,ターボの可変シャツタを調整し,エキ
ゾースト・ブレーキ作動中の排気背圧を増加させる。これによりエンジンの抗力が増え,車両にブレーキが
掛かる。ブレーキ作動中は弱い笛吹き音がする。
(口) VCB (V・Compression・Brake)
背圧を高める VGTエンジン・ブレーキと合わせて使うことで,コンブレッション・ブレーキの効果を高め
る。
圧縮工程で,ピストンがガスを圧縮する事で制動効果が生じる。アクセル・ペダルが解放されていると,燃
料は噴射されないので, ピストンがシリンダの上方に達しでも燃焼は起こらない。燃焼行程では,燃焼は起
こらないが,圧縮されたガスがピストンを押し下げるので,多少の駆動力が生じる。圧縮工程の制動効果と
燃焼行程で生じる駆動力はほぼ等しく,このままでは制動力は生じない。
コンブレッション・ブレーキは 燃焼行程でピストンに加わるこの力を除去することにより,圧縮工程の制
動力をエンジン・ブレーキとして利用する。
コンブレッション・ブレーキを VGTブレーキと組み合わせることで,圧縮工程の制動力はさらに大きくな
る。
コンブレッション・ブレーキを構成するのは,排気バルブ用の特殊なロッカ・アーム及びロッカ・アーム・
シャフ ト内の油圧を制御するバルブPである。エンジンのコンプレッション・ブレーキの制動効果は次のよう
にして得られる。
-吸気行程で,排気バルブを開くことにより,シリンダにより多くの空気を取り込み,圧縮行程で圧縮する
空気量を増加させる。
-排気バルブは,圧縮行程の上死点直前で聞き,圧縮圧を解除して,燃焼行程で発生する駆動力を除去する 0
・VGTブレーキは 排気コレクタ・パイプ内の背圧を高めて,吸気行程で取り込まれる空気量を高める。
背圧はコンプレッション・ブレーキの制動力を高める。
(a) VCBバルブ(図-17)
VCBバルブは,ロッカ・アーム・シャフトに接続され
ており,オイル・ギャラリからの油圧が直接加わってい
る。
VCBバルブは, EECUにより制御されており,ロッカ・
アーム・シャフトへの油圧を調整する。
通常の運転状態では, VCBバルブは,ロッカ・アーム・
シャフ トに掛かる油圧を下げているが,カムシャフ ト・
ベアリング及びバルブ機構の潤滑には十分である。
-221 -
図-17 VCBバルブ
-11_.-(b) VEB作動(図-18)
以下に VEB作動時に 排気バルブPが開く原理を示す。
③ :エンジン回転中,ロッカ・アーム・シャフトの油圧が低い場合,油圧ピストンに圧力は作用しない。排気
バルブのクリアランスは約2.0mmあり スプリング・タブがロッカ・アームをバルブ・キャリパに接触
するように保っているため,ロッカ・アームのローラと排気カムの低いローブの聞には隙聞がある。その
ため低いロープはバルブに影響せず,バルブは閉じたままである。
③ : VEBが起動すると,油圧が油圧ピストンを強制的に押しさげることによりバルブ・クリアランスがなく
なり,ロッカ・アーム・ローラが排気カムの基準円に接するようになる。
。 :充てんローブがロッカ・アーム・ローラを押すとき,バルブは一瞬,わずかに開く 。同様に減圧ローブが
ロッカ・アーム・ローラの下を通ったときにもバルブは開く 。
A
(7) GH13エンジン・ブレーキ
(イ) エンジン・ブレーキ構成
図-18 VEB作動
必要なエンジン・ブレーキ出力を得るために異なるシステムを組み合わせている 0
・VGTエンジン・ブレーキ
. VEB+エンジン・ブレーキ
(口) VGTエンジン・ブレーキ
GH13エンジンでは, VGTターボ(可変ジオメトリ・ターボ)がエンジン・ブレーキとして使われている。
EECUは,排気ブレーキ作動中にターボのシャツタを制御して排気背圧を高める。高い背圧がエンジン回
転の妨げとなり車両にブレーキを掛ける。
ヤ市 VEB+エンジン・ブレーキ
VEB +エンジン・ブレーキは二つシステムを複合した構成になっている。
VGTエンジン・ブレーキ(エキゾースト・シャツタ)
VCBブレーキ (V.コンプレッション・ブレーキ)
二つは同時に作動し, VGTターボが背圧を高めることでコンプレッション・ブレーキの効果を高める。
圧縮行程では, ピストンがガスを圧縮することにより制動効果が生じる。アクセル・ペダルが解放されてい
ると,燃料は噴射されず,ピストンがシリンダ頂点まで達しでも燃焼は起こらない。燃焼行程では,燃焼は
-222 -
-E・E・起こらないが,圧縮されたガスがピストンを下へ押し下げるので,多少の駆動力が生じる。圧縮行程におけ
る制動効果と燃焼行程における駆動力はほぼ等しく ,このままでは制動力は生じない。
コンブレッション・ブレーキは,燃焼行程で生じるピストンを押し下げる力を除去することにより,圧縮行
程の制動力のみを利用する。
コンブレッション・ブレーキにVGTブレーキを組み合わせることで 圧縮行程の制動力はさらに高まる。
コンプレッション・ブレーキを構成するのは,排気バルブP用の特殊なロッカ・アーム及びロッカ・アーム・
シャフト内の油圧を制御するバルブである。原理はGHllエンジンを参照。
(ニ.) VCBバルブ(図一 19)
VCBコントロール・バルブは シリン ダ・ヘッド上の第3気筒と第4気筒の間にあり ロッカ・アーム・
シャフ トへ供給する油圧を調整している。
ロッカ・アーム・シャフトへ供給する油圧の調整は, EECUがコントロール・バルブのソレノイドに信号を
送り制御する。
前述のようにコンプレッション・ブレーキは,吸気行程,及び、圧縮行程の上死点直前に排気バルブを開き,
圧縮行程の制動力のみを利用する。コンブレッション・ブレーキを構成するのは, 二つのカム・ローブがあ
るブレーキング・カムをもっ特殊なカムシャフト,ブレーキング・ロッカ・アーム及びロッカ・シャフトへ
の油圧を制御するコントロール・バルブである。オイルのインレットはシリンダ・ブロック内のオイル経路
に接続され,アウトレットはロッカ・アーム・シャフトに接続されている。エンジンにVEB+が装備され
ている場合,バルブ・カバー左側のエンジン識別ラベルに記されている。
通常のVEBシステムと比較して,機械的負荷を二つのロッカ・アームで負担するので,機械的応力をあま
り高めずに制動力を高めることができる。VEB+の使用でガス・フローも 高まり,増加したガス・フロー
がノズルを冷やすので,インジェクタ・ノズルの熱応力は減少する。
図-19 VCBバルブ
qJ
q''U
つム
-E・E・(ホ) カムシャフ卜及び排気口ッカ・アーム (図一 20)
VEB +付きエンジンのカムシャフトには,各シリンダごとに次の四つのカムがある。
吸気カム, インジェクタ・カム,排気カム,ブレーキ・カム
ブレーキ・カムには充てんローブと減圧ローブの二つのロープがあり,これらが排気バルブを開き,燃焼行
程での駆動力を除去し制動力のみを利用する。
排気バルブ・ロッカ・アーム内部には,ポンプ・ピストン及びパワー・ピストンの2本のピストン,ノンリ
ターン・バルブ,ピストン及びスプリングがある。パワー・ピストンは,排気バルブ・キャリパの直上にあ
り,これがキャリパを押し下げて排気バルブを開く 。ポンプ・ピストンは,ブレーキ・ロッカ・アームの直
下にあり,ブレーキ・ロッカ・アームで押し下げられる。
ブレーキ・ロッカ・アームは,排気ロッカ・アームの上にあり,油圧が十分に高くなると,これら二つの
ロッカ・アーム聞のクリアランスが小さくなり,ブレーキ・ロッカ・アームがポンプ・ピストンを押し下げ
るようになる。ピストンはオイル経路によって連結されており,ポンフ0 ・ピストンが押し下げられると, ピ
ストン下のオイルはパワー・ピストンの上に押し込まれる。これと同時にノンリターン・バルブが閉じるの
で,上昇した圧力はパワー・ピストンを押し下げ,排気バルブが開く 。
スプリング
充てん口ーブ
図-20 カムシャフト及び排気口ッカ・アーム
-224 -
-E・E・(ヘ) 通常のエンジン作動(コンプレション・ブレーキ非作動状態)(図ー 21)
コン トロール・バルブによりロッカ・アーム・シャフト内の油圧は約 lバールに保たれている。スプリング
がピストンを前方に押しており,ノンリターン・バルブは開いている。オイル・チャネルはオイルで満たさ
れるが, 1バールの低い圧力ではポンプ・ピストンを上方に押し上げることができないので,ブレーキ・
ロッカ・アームは排気バルブ・ロッカ・アームと接触しない。この状態では,排気バルブはブレーキ・カム
の二つのローブの影響を受けない。
ノンリターン・バルブ
排気バルブ・ロッカ・アーム
スプリング /
ブレーキ・ロッカ・アーム
ポンプ・ピス トン
図 -21 通常のエンジン作動(コンブレション・ブレーキ非作動状態)
(ト) コンブレッション・ブレーキ作動(図一 22,23, 24)
(a) 作動①(図ー 22)
コントロール・バルブがロッカ・アーム・シャフトに潤滑システムと同じ油圧を供給するので,圧力は2
バールを上回る。油圧がスプリングの力を上回るので,ピストンは押し戻さ れるが ノンリターン・バルブ
も油圧とオイル・フローにより聞いたままとなる。オイル経路内の高い圧力はポンプ・ピストンを上方に押
し上げる。ポンプ・ピストンが上の位置まで押し上げられると,ブレーキ・ロッカ・アームと排気ロッカ・
アーム間のクリアランスは小さくなる。
ノンリターン・バルブ
排気バルブ・ロッカ ・アーム
スプ リング/
ブレーキ ・ロッカ・アーム
ポンプ・ピストン
図-22 コンプレッション・ブレーキ作動①
Fhd
つ中円,,“
-E・E・(b) 作動②(図一 23)
油圧はポンプ・ピストンを上の位置まで押し上げ, ピストン下の部屋をオイルで満たす。いったんオイルが
システムを満たしもうこれ以上流れなくなると,ノンリターン・バルブは閉じる。次に,ブレーキ・ロッ
カ・アームが二つのローブのうちの一つを通過するとき,ポンプ・ピストンは押し下げられ,ピストン下の
オイルがパワー・ピストンに圧力を掛ける。ピストンは押し下げられ,排気バルブやが開く 。ノンリターン・
バルブは,排気バルブが開いている間,パワー・ピストン上部の高い油圧により閉じたままとなる。
ノンリターン・バルブ
フ会レーキ・口ッカ・アーム
/'¥ワー・ピストン
ポンプ・ピストン
図-23 コンプレッション・ブレーキ作動②
(c) 作動③(図一 24)
排気バルブが閉じ,ブレーキ・ロッカ・アームがもはやポンプ・ピストンに圧力を掛けなくなると,パ
ワー・ピストンを押し下げていたオイルは,ポンプ・ピストンへ戻る。ノンリターン・バルブが聞いて,前
のサイクル中に漏れた分量のオイルを通過させるので, システムは再び充てんされる。
ノンリターン・ バルブ
パワー・ピストン
ポンプ・ピストン
図-24 コンプレッション・ブレーキ作動③
-226
-E・E・3 点検・整備のポイント
1 ) 油脂液類のメンテナンス
(1) エンジン・オイル
付)規格
名称
純正UDエンジン・オイル
メガマルチVDS-4/DH-2
分類 規格(SAE)
-30~40oC
: SAE 10羽T/30VDS-4
(口)容量
項目容量(リットル)
GHll GH13
オイル・サンプ要領
(オイル量はMAXレベルを示す)27.0 29.5
システム油量 33.0 35.5
川 交換時期(※フィルタ・エレメントとオイルは同時交換)
交換時期
項 目I年毎
走行キロ毎交換 備考
-千km
軽負荷使用車(燃費が3.0km/L以上) 。 70
中負荷使用車(燃費が2.5km/L以上) 。 56
重負荷使用車(燃費が2.0km/L以上) 。 40 分類 VDS-4 エンジン・ 激重負荷使用車(燃費が1.5km/L以上) 。 30 オイル及び,
超激重負荷使用車(燃費が0.8km/L以上) 。 16 フイ lレタ・
軽負荷使用車(燃費が3.0km/L以上)エレメント
。 40
注)1 中負荷使用車(燃費が2.5km/L以上) 。 30
重負荷使用車(燃費が2.0km/L以上) 。 20 分類:DH-2
激重負荷使用車(燃費が1.5km/L以上) 。 15
超激重負荷使用車(燃費が0.8km/L以上) 。 10
注)1 :エンジン・オイル及びオイル・フィルタ・エレメント交換は,管理方法及び付帯条件で交換時期が異なるため,次表の詳
細を参照。
ウ
i円
4つ山
-11... (ニ) 交換時期の詳細
エンジン ・オイルの分類
年間走行距離管理方法 使用条件
-千km付帯条件
100未満 規定な し
条件A*4及び条件B*5
共に該当 しない軽負荷使用車
条件A*4又は条件B*5(燃費が3.0km/L以上) 100以上に該当する
条件A*4かつ条件B*5
に該当する走行距離
中負荷使用車管理
(燃費が2.5km/L以上)規定な し 規定な し
重負荷使用車規定なし 規定な し
(燃費が2.0km/L以上)
激重負荷使用車規定な し 規定なし
(燃費が1.5km/L以上)
超激重負荷使用車規定な し 規定な し
(燃費が0.8km/L以上)
重負荷使用車規定なし
(燃費が2.0km/L以上)
エ ンジ ン燃料総使用量
運転時間上限あり
管理 激重負荷使用車規定な し
(燃費が1.5km/L以上)
超激重負荷使用車規定なし
(燃費が0.8km/L以上)
*4:条件A-アイドリ ング割合(車両停止状態での稼動の割合)孟 25%
*5:条件B
以下条件がひとつでも該当する場合
. 3%以上の勾配が全走行区間の20%から 35%以内
. 6%以上の勾配が全走行区間の 1%から10%以内
. 9%以上の勾配が全走行区間の 1%以内
-最大勾配20%を走行する。
純正 UDエ ンジン ・ 純正 UDエ ンジン ・
オイル ・メ ガマルチ オイル・エ クス トラ
VDS-4級 マルチDH-2級
走行毎千km 走行毎千km
56走行毎又はl年毎 30走行毎又はl年毎
70走行毎又はI年毎 40走行毎又はl年毎
56走行毎又はl年毎 30走行毎又はl年毎
40走行毎又は1年毎 20走行毎又はl年毎
56走行毎又はI年毎 30走行毎又は1年毎
40定行毎又はl年毎 20走行毎又はl年毎
30走行毎又はl年毎 15走行毎又はI年毎
16走行毎又はl年毎 10走行毎又はl年毎
500時間運転毎 また
は1年毎
ただし燃料消費量
が 12,000Lに達 した200時間運転毎また
とき,期限内でも交換はl年毎
400時間運転毎 またただし 燃料消費量
はl年毎が8,000Lに達 したと
ただし 燃料消費量き,期限内でも交換
が 12,000Lに達 した
とき,期限内でも交換
1 5:ì~ I 燃費が 2 .0km/L 以下~0 .8km/L 以上の分類の中で,上記条件B で使用する建設用車両及び走行距離に比べて
エン ジン運転時間が相対的に長い車両 (塵芥車,空港作業車,構内専用車等)は, 走行距離以上にオイルが早
く劣化するので, 運転時間管理によ るオイル交換を推奨する。
(2) 冷却水
父換イ ンタ ーバル 500,000km又は4年間
不凍液名称 純正UDメガ ・クーラン ト(LLC)
不凍液の色 黄色
濃度 最低外気温度
希釈濃度 40% 250
C以上
50% -350
C以上
容量(リットル) GHll・49.5 GH13・50.0
※希釈濃度が低下した場合は,上記交換インタ ーパルの要件は満たされません。
-228 -
(3) 燃料フィルタ・工レメント
交換インターパル
2) バルブ・クリアランスの調整
(1) GH11エンジンの調整要領
-E・E・エンジン・オイル2回交換毎又は2年毎
手!II員① :フライホイール・ケーシングの裏面にある検査
ハッチを外し,クランキング・ツールを取り付け
る。(図-25)
特殊工具:9996956
9996956
手!II員② :バルブ及びユニット・インジェクタ調整用のカム
シャフトの刻印について。(図-26)
・マーキング 1~6 はインレット・バルブ及びユ
ニット・インジ、ェクタの調整に適用する。
・マーキング Vl~V6 は排気バルブの調整に適
用する。
※図は, NO.5シリンダのインレット・バルブとユニツ
ト・インジェクタが調整可能な位置を示している。
図-25 手順①
図-26 手順②
手)11貢③ :カムシャフトの次の吸気バルブ調節用の印(l~6) まで,エンジンを順方向にクランキングさせる 。
手)11貢④ :仕様に従って,適切なバルブ・クリアランスを調整する。(図-27)
エンジン冷機時のバルブ・ク リアランスの調整値:インレッ ト…0.2mm
規定されたトルクでロック・ナットを締め付ける。
ロック・ナット・バルブ調整スクリュ:角度締め付け…..接触後60:t50
バルブのクリアランスを,再度点検測定する。
直重口 クリアランスの調整が終わったロッカ・アームにはマーカ ペンなどで印を付ける。
図-27 手順④
-229 -
-11... 手)11貢⑤ :ユニット・インジェクタのロッカ・アームをゼ
ロ・クリアランスに調整する 。 さらに 3~4面分
調整ネジを締め付ける。(図-28)
調整ネジのナットを指定のトルクで締める。
ユニット・インジェクタ調節ボルトのロック・
ナット:(角度締め付け)…接触後45:t 50
手)11員⑥ :排気バルブの調整の際には,カムシャフトの次の
印(V1~ V6)の位置までエンジンをクランキン
グさせる。※図は, NO.5シリンダの排気バルブ
が調整可能な位置を示している。(図-29)
図-28 手順⑤
図-29 手順⑥
手)11貢⑦ :図のようにロッカ・アームを押し下げる。ロッカ・アームが「押し下がらない」場合は, ロッカ・アー
ムのピストン・スプリングを外側に引き出す必要があり,同時にロッカ・アームをバルブ・キャリパ
と接触させるために押し下げると,ピストンの内部に油圧が残っている場合は解放される。油圧を開
放するには強力な針金やフレキシブル・ドライパなどを使用して,スプリングを引き出す。(図-
30)
直重己針金又はドライバは,事前によく汚陥落としてから使用する。
ロッカ・アームのピス トン及びロ ッカ・アームの間の混入物質に より ,ピス トンが停止し,そのシ リンダの
ブレーキ機能が稼動しなくなるおそれがある。
ロッカ・アームのピス トンのスライド面が破損していないことを確認する。
図-30 手順⑦
手)11貢③:フィーラ・ゲージを使ってロッカ・アームのピス
トンとバルブ-キャリパの聞のクリアランス部分
を測定する。仕様に記載されている値と測定値を
比較する。(図 -31)
エンジン冷機時のバルブ・クリアランスの調整
値:VEBエキゾースト…2.0+ 0.05/ -0.05mm
-230 -
図-31 手順③
-11..-手)11買⑨ :確認の結果,バルブ・クリアランスの調整が必要
な場合は,ロック・スクリュを取り外す。(図-
32)
重重口 ロック・スク リュを緩めるか又は締め付ける際に,
バルブ及びバルブ・ガイドを損傷しないように注意
する。該当する場合は, レンチを使用してバルブ・
ブリッジを動かさないようにする。
測定値に基づき,新しい調整スペーサの厚さを計算する。
調整スペーサを 2枚重ねて使用する場合は,スペーサがほぼ同じ厚 さとなるように調整スベーサを選
ぶ。(二つの調整スペーサの最大値を使用する)
図-32 手順⑨
ヨE スペーサは厚さO.05mm間隔で使用可能である。厚さはスペーサに記載されている。
手!II員⑩:スペーサ及びバルブ・ヨークの汚れが適切に落と
されていることを確認する。スペーサを配置し
ロック・スク リュを仕様に従って トルク締めする。
(図-33)
ロック・スク リュ:角度締め付け…..300 + 15/ -0。
バルブのクリアランスを 再度点検測定する。
直言己 クリアランスの調整が終わったロッカ アームには
マーカ・ペンなどで印を付ける。
図-33 手順⑩
(2) GH13エンジンの調整要領
手iII員① :フライホイール・ケーシングの裏面にあるプラグ
を取り外し,クランキング・ツールを取り付ける。
(図-34)
特殊工具:88800014
図-34 手順①
手)11貢② :ブレーキ・ロッカ・アーム 6本すべてのリーフ・
スプリングのネジを全数緩める。 リーフ・スプリ
ングは所定の位置にそのままにしておく 。(図-
35)
図-35 手順②
14ム
qtu
っ“
-E・E・手!II貢③ :バルブ,ユニット・インジェクタ及びエンジン・
ブレーキ・ロッカ・アームの調整のため,次のカ
ムシャフトのマーキング(例えば5/E6)まで,エ
ンジンを順方向にクランキングさせる。 (図-
36)
・マーキング 1~6 はインレット・バルブ及びユ
ニット・インジ、エクタの調整に適用する。
・マー キング El ~E6 は排気バルブ及びエンジ
ン・ブレーキ・ロッカ・アームの調整に適用す
る。
図-36 手jI頂③
※図は, NO.5シリンダのインレット・バルブとユニット・インジェクタ及び, NO.6シリンダの排気バルブ
とブレーキ・ロッカ・アームが調整可能な位置を示している。
手)11貢④ :インレット・バルブ・クリアランスの調整(図-37)
インレット・バルブのキャリパとロッカ・アーム・スラスト・スリーブの間のバルブ・クリアランス
が適合しているか点検する。必要に応じて,バルブ・クリアランスを次のように調整する。
インレット・バルブのバルブ・クリアランスが正しくなるように調整する。工具を使って調整ねじを
動かない状態で保持し,オープン・スパナを使ってロック・ナットを締め付ける。
エンジン冷機時のバルブ・クリアランスの調整値:インレット…0.2mm
ロック・ナッ ト,バルブ調整スク リュ:(角度締め)…接触後60:t50
バルブのクリアランスを再度測定する。
直量日 クリアラ ンスの調整が終わったロッカ アームにはマーカ・ペンなどで印を付ける。
図-37 手順④
手)11員⑤ :ユニッ ト・インジ、エクタの調整(図-38)
ユニット・インジェクタ・ロッカ・アームのロッ
ク・ナットを緩めて,ゼロ・クリアランスになる
までスクリュを締め,さらに 3~4 ピッチ (0.75
::t O.lmm)回す。(図を参照)
工具を使って調整ね じを静止させて保持し,オー
プン・スパナを使ってロック・ナットを締め付け
る。
調整スクリュ用ロック・ナット,ユニット・イン
ジェクタ:締め付け トルク….52:t 4Nm
円,ru
qJ
円ノU
図-38 手順⑤
-1.... 手)11買⑥:排気バルブ・クリアランスの点検(図-39)
排気バルブのバルブ・ブリッジとロッカ・アー
ム・スラスト・スリーブの問のバルブ・クリアラ
ンスが基準に適合しているか点検する。
エンジン冷機時のバルブ・クリアランスの確認
値:排気側 .....0.8+ 0.05/ -0.05mm
直量日 スリーブを回転させ,傾かないようにして測定する。
手)11貢⑦ :排気バルブ・クリアランスの調整(図-40)
図-39 手順⑥
バルブ・クリアランスの調整が必要な場合は,ロック・スクリュ及びシムを取り外す。測定値に基づ
き,新しいシムの厚さを計算する。
直E ロック・スク リュを締め付ける /緩めるときは,バルブ・キャ リパを固定し,バルブ・ステムが曲がらない
ようにする。
新しいシムを取り付けて, ロック・スクリュを規定されたトルクで締め付ける。
ロック・スクリュ,バルブ ・ブリッジ:(角度締め)….接触後30+ 15/ -0。
直童日 バルブ・クリアランスをチェックし,フィーラ・ゲージをそのままの位置に残す。
(挿入したままにしておく)
図-40 手)1頂⑦
手)11貢③:ブレーキ・ロッカ・アームの点検(図-41)
フイラ・ゲージが挿入されている状態では,排気
バルブのクリアランスはゼロになるはずである。
その状態で特殊工具 (88800232)を使用して,ブ
レーキ・ロッカ・アーム・ローラとカムシャフ ト
とのクリアランスを調べる。クリアランスが適正
であるかを確認する。
ブレーキ・ロッカ・アームのクリアランスを設定
または点検するときは,ローラ部で測定する。
図-41 手順③
エンジン冷機時のバルブ・クリアランスの調整値:ブレーキ・ロッカ・アーム .....2.5mm
直言口 ・ブレーキ ロッカ・アームのクリアランスの点検は,バルブ・システムがスムースに摺動する,十分にな
らし運転されたエンジンでのみ実施できる。
-点検された値が基準の値と異なる場合,手}II貢①の方法にて調整する。基準値に適合している場合は手}II貢⑪
-233 -
-1.... に進む。
手iII貢⑨ :ブレーキ・ロッカ・アームの調整(図-42)
直望日 排気バルブ・クリアランスに挿入したフイラ・ゲー
ジは,そのままにしておく 。
ブレーキ・ロッカ・アームのロック・ナットを緩
め,調整ネジを反時計回りに 0.5~ 1回転回す。
カムシャフトとブレーキ・ロッカ・アーム・ロー
ラの聞に特殊工具(88800232)の2.5mm厚を入れ
る。
調整ネジを締め付けて接触させ,さらに半回転締
図-42 手順⑨
め付けてバルブ・ブリッジが押し下げられて排気バルブがわず、かに開いている状態になれば,エンジ
ン・ブレーキ機構のすべてのパーツは適正な位置に配置されていることになる。
その状態で,調整ネジを緩め,特殊工具がほんのわずかな力でを出し入れできるようにする。
ロック・ナットを以下のトルクで締め付けて調整ネジを正しい位置でロックする。
ロック・ナット,ブレーキ・ロッカ調整スクリュ:(角度締め)…..接触後45:t+ 50
手)'1買⑩:ロック・ナットを規定のトルクで締め付けた後,カムシャフトとブレーキ・ロッカ・アーム・ローラ
のクリアランスを再度点検する。フイラ・ゲージを取り外す。
手)'1貢⑪:カムシャフトの次のマーキングまでエンジンを順方向にクランキングし,該当するバルブ,ユニッ
ト・インジェクタ及びエンジン・ブレーキ・ロッカ・アームを点検/調整する。
順次,そのほかのバルブ及びユニット・インジェクタ,エンジン・ブレーキ・ロッカ・アームについ
て同じ方法で実施する。
手)'1貢⑫:次に従ってブレーキ・ロッカ・アームのリーフ ・
スプリングのネジを全数 トルク締めする。(図
-43)
スプリング・タブ, リーフ・スプリング:締め付-
けトルク….25:t 3Nm
-234 -
図-43 手順⑫