i-snow ロータリ除雪車による投雪作業の自動化...tosihiro inomata, satoshi takamoto ,...
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Tosihiro Inomata, Satoshi Takamoto , Keita Onodera
第63回(2019年度) 北海道開発技術研究発表会論文
【i-Snow】 ロータリ除雪車による投雪作業の自動化
―除雪現場の省力化による生産性・安全性の向上に関する取組―
事業振興部 機械課 ○猪股 俊宏
高本 敏志
小野寺 敬太
北海道では、近年の異常気象等による通行止め回数や時間が増加傾向にある。一方では、全国に先駆け
て人口減少および高齢化が進んでおり、除雪機械オペレータの担い手不足が危惧されている。北海道開発
局では、除雪現場における積雪寒冷地特有の地域課題の解決に向けたプラットフォーム(i-Snow)を発足した。 本発表では、i-Snowの取組みの一つとしてロータリ除雪車の投雪作業自動化による省力化について紹介
する。
キーワード:道路維持管理、除雪・防雪、 ICT、i-Construction
1. はじめに
積雪寒冷地に住む人々の生活にとって冬期の円滑な道
路交通確保は必要不可欠であり、冬期の道路維持管理
(除雪)については非常に高いニーズがある。 一方、除雪作業の現場においては、除雪機械オペレータ
の担い手が減少、かつ高齢化が進んでいる。(図-1) また、近年は異常気象による暴風雪等の冬期災害が頻
発し、長時間の通行止めが増加傾向にある。(図-2) 今後も継続的に冬期道路交通を確保するため、持続可能
な道路除雪の取り組みを構築し、除雪作業の効率化を進
める必要性が高まっている。
2. 「i-Snow」の発足
第8期北海道総合開発計画(平成28年3月29日閣
議決定)では計画の推進方策として、「プラットフォー
ム」の形成をかかげている。 持続可能な道路除雪の実現に向けた取り組みを構築す
るにあたり、平成29年3月に除雪現場の課題、研究・
2. 「i-Snow」の発足
第8期北海道総合開発計画(平成28年3月29日閣
議決定)では、計画の推進方策として「プラットフォー
ム」の形成をかかげている。 持続可能な道路除雪の実現に向けた取り組みを構築す
るにあたり、平成29年3月に除雪現場の課題、研究開
発の動向、除雪技術等に関する情報の共有を図るほか、
除雪現場の改善への取組について、産学官民が連携して
取り組むプラットフォーム「i-Snow」を発足させ
た。 i-Snowでは、近年の除雪現場における課題に対
応するための活動を展開し、生産性・安全性の向上に資
する除雪現場の省力化を進めている。(図-3) i-Snowでの具体的な取組の一つとして一般国道
334号知床峠における除雪作業省力化に向けた「除雪
装置自動化実証実験」の取組みを紹介する。
図-1 除雪機械技術講習会参加者の推移
出典:日本建設機械施工協会北海道支部資料により集計
図-2 冬期通行止め回数、時間の変化
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Tosihiro Inomata, Satoshi Takamoto , Keita Onodera
3. 「除雪装置自動化実証実験」の取組み
(1) 実証実験フィールド 実験フィールドは、冬期通行止めのため一般車両への
影響がない一般国道334号知床峠を選定した。(図-
4)
知床峠では、場所によっては積雪深が5mを超えるこ
とから、春先の啓開除雪では複数台のバックホウとロー
タリ除雪車による除雪が行われ、後方のセンターライン
を確認しながら前進して除雪作業を行うなど、熟練オペ
レータの感覚と経験が必要となっている。
図-5 除雪作業の効率化・省力化イメージ
図-4 実証実験箇所
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Tosihiro Inomata, Satoshi Takamoto , Keita Onodera
(2) 除雪作業省力化のイメージ i-Snowにおける除雪効率化の当面の目標は、現
在、2人乗車体制で行っているロータリ除雪車での作業
を、除雪車の運転以外の操作の自動化、省力化により、
熟練の技術や経験がなくても、1人乗車体制(ワンマン
化)で作業できるようにすることのほか、暴風雪時など
視界不良時においても安全で効率的な除雪を可能にする
ことである。(図-5)
効率化・省力化のイメージは、除雪作業に必要な①自
車位置の把握、②作業装置の操作、③安全確認(障害物
等)、④車両運転(操舵・加減速)を最新技術でフォロ
ーすることによる①②③の自動化である。
(3) 3Dマップ(道路データ)の作成 自動化にあたり、知床峠頂上を含む約24kmの区間
を対象にMMS(モービルマッピングシステム)測量し、
このうち啓開除雪の際に人力で見出しポールを設置して
いる5kmの区間について高精度3Dマップを作成した。
(図-6)
ロータリ除雪車の運転支援用に点群データから、道路
形状を表す中央線、外側線、導水縁石(内側)を抽出す
ることで3D道路データを作成している。(図-7)
(4) i-Snow仕様ロータリ除雪車の概要 i-Snow仕様ロータリ除雪車は【2.6m級(M
Sシュート)】をベースとした。これに視界不良時やセ
ンターラインが見えない啓開除雪などでも運転手が道路
線形を把握できる様に、準天頂衛星「みちびき」と「高
精度3Dマップデータ」を活用した運転支援ガイダンス
と通常は助手が操作する投雪方向自動制御機能を合わせ
たシステムを搭載した。(図-8)
また、オペレータの負担をより軽減させるため、運転
席の操作レバーの集約(11本→3本)や除雪速度制御装置(除雪負荷に応じた除雪速度自動コントロール)な
ど、操作の省力化を図る装置を搭載している。
外観は、北海道開発局の除雪機械で採用している塗装
色の「フレッシュグリーン」と宇宙をイメージした「ミ
ッドナイトブルー」のツートン色で、i-Snowのロ
ゴを強調したスタイリッシュなロータリ除雪車とした。
図-8 i-Snow仕様ロータリ除雪車の概要
4. 実証実験結果 i-Snow仕様ロータリ除雪車を使用し、平成31
年3月19日に報道関係者を対象とした実証実験公開デ
モを実施した。
運転支援ガイダンスシステムとブロワ投雪の自動化、
みちびきの受信状況調査、各種センサによる作業装置の
状態把握等を行った。
主要な実験結果として、運転支援ガイダンスシステム
については、視界を遮蔽してガイダンス機能のみでの走
行試験を実施したが、システム上にリアルタイムの舵角
が表示されず、必要以上にステアリング操作を行い、蛇
行する結果となったため、さらなる改良が必要であるこ
とが確認された。
図-7 3D道路データ
図-6 高精度3Dマップ
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ブロワ投雪の自動化においては、予め設定された投雪
方向の変化点において、ブロワ装置の旋回を自動制御し
投雪方向を変更できることを確認した。(図-9)
みちびき受信状況調査は、平成30年11月から本格
運用を開始した「みちびき」だが、一部不安定な状況が
あり、受信機のアップデートが複数回あったため、今後
も継続調査を実施する。
図-9 ブロワ装置の投雪方向自動制
5. 今後の展開 令和元年12月12日に開催された第6回i-Sno
wプラットフォームにて、今春の実証実験で出た課題の
解決策と今冬の試験計画を示した。(図-10)
実証実験の課題の一つであるリアルタイムな舵角が表
示されない件については、GNSSアンテナを1基増設し、
進行方向を瞬時に把握することで、ガイダンスシステム
のリアルタイム性の向上を図る事とした。
また、今冬の大きな取り組みとして、「シュート制御
の自動化」に向けた自動制御機能の改良を実施し、3D
道路データに「左・右・前方」の投雪方向を登録するこ
とで、投雪装置(シュート)の自動化を図り実証実験に
備えている。
この投雪装置(シュート)の自動化は、雪堤の高さや
形状により、投雪装置をコントロールしなければならな
いことから、雪堤高さ、形状を把握する方法として「3
D-LiDAR」を2基搭載して、除雪作業時にデータを取得
し、自動制御機能に追加するセンサーになり得るか検証
すると共に、周辺探知技術による安全対策等の実証実験
を行う。
併せて、視界不良が頻発する札幌市近郊の一般道にお
いて、試験車両による吹雪時の映像鮮明化技術の処理の
タイムラグ等を検証する。(図-11)
また、次年度以降に予定するi-Snow仕様ロータ
リ除雪車の一般道での実証実験に向け、北海道内の複数
の峠を対象とした3D道路データを作成中である。
今後も、維持除雪の効率化に向け、様々な最新技術動
向を調査し、各種自動化のセンサー類が苦手としている
使用条件の厳しい積雪寒冷地での実証を行ったうえで、
必要な仕様を見極め、プラットフォーム「i-Sno
w」にてさらなる発展を目指していく所存である。
図-11 吹雪時の映像鮮明化運用イメージ
図-10 知床峠の実験内容