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反応装置工学資料「撹拌」- 改訂版 200129 ( 新潟大学・三上貴司) 1 撹 拌 1.基本事項 ①撹拌の作用機作 撹拌とは、すなわち流体にエネルギーを与える操作であり、与えられた撹拌のエネ ルギーは、流体を循環させる吐出( はきだし) 作用と、気泡や液滴を分散させるせん断作用に消費される。 撹拌機作について、モーターで電力が回転動力に変換されて撹拌軸に伝わり、撹拌翼が回転する。撹拌 翼近傍の液が吐き出されて流動すると、流体塊の間で速度差が生じて、液の粘性に伴うせん断力が生じ る。とくにせん断力が生じる箇所で流体摩擦によるミクロな乱流渦が発生し、液体が分散されて、混合 される。撹拌の動力特性と伝熱特性は、流体の物性に加えて、槽や翼の形状に依存する。 ②撹拌翼 ( ア) プロペラ翼は、吐出作用は高いが、せん断作用は低い。撹拌軸に対して垂直な軸流を与 え、槽内に大きな循環流を形成する。( イ) 平板( ひらいた) パドル翼は、構造が単純であることから、翼 径を大きくして低い回転数で用いることが多い。吐出作用が高いため、槽内の液循環は良好だが、せん 断作用は低い。撹拌軸に対して水平な輻射流を与え、槽内の上部と下部で四つ葉様のフローパターンを 形成する。翼の部分がひねられた( ウ) 傾斜パドル翼を用いると、ひねりの部分で液を底面方向へ押し出 す為、軸流を与えることができる。( エ) 平板タービン翼は、吐出作用とせん断作用ともに高く、輻射流 型のフローパターンを形成する。スラリー撹拌や通気撹拌などで用いられる。翼がひねられた傾斜ター ビン翼は、平板翼の輻射流に加えて軸流を形成する。( オ) ファウドラー翼は、横から見てV字型の形状 になっているため、槽底近くまで撹拌翼を下げることができる。スラリー粒子の沈降抑止に効果がある。 ( カ) アンカー翼は、高粘性液体や高濃度スラリーの撹拌に用いられる。槽の壁面をかき取るような形状 をしている為、槽の壁面近傍の流速を大きくとれ、境膜厚みが薄くなり、ジャケット型での伝熱効率を 高めることができる。ただし、ほぼ水平方向のみの撹拌であることから、上下方向の撹拌が望めず、液 混合の均一性はあまり良くない。また、槽中心部の混合が悪い。( キ) リボン翼は、アンカー翼同様、高 粘性液体の撹拌に用いる。翼の高さは、槽底から液面まであり、アンカー翼にはあまり望めない、上下 流の撹拌が支配的となる。 図1 代表的な撹拌翼 (ア) (イ) θ (ウ) (オ) (キ) (エ) (カ)

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反応装置工学資料「撹拌」-改訂版 200129 (新潟大学・三上貴司)

1

撹 拌

1.基本事項

①撹拌の作用機作 撹拌とは、すなわち流体にエネルギーを与える操作であり、与えられた撹拌のエネ

ルギーは、流体を循環させる吐出(はきだし)作用と、気泡や液滴を分散させるせん断作用に消費される。

撹拌機作について、モーターで電力が回転動力に変換されて撹拌軸に伝わり、撹拌翼が回転する。撹拌

翼近傍の液が吐き出されて流動すると、流体塊の間で速度差が生じて、液の粘性に伴うせん断力が生じ

る。とくにせん断力が生じる箇所で流体摩擦によるミクロな乱流渦が発生し、液体が分散されて、混合

される。撹拌の動力特性と伝熱特性は、流体の物性に加えて、槽や翼の形状に依存する。

②撹拌翼 (ア)プロペラ翼は、吐出作用は高いが、せん断作用は低い。撹拌軸に対して垂直な軸流を与

え、槽内に大きな循環流を形成する。(イ)平板(ひらいた)パドル翼は、構造が単純であることから、翼

径を大きくして低い回転数で用いることが多い。吐出作用が高いため、槽内の液循環は良好だが、せん

断作用は低い。撹拌軸に対して水平な輻射流を与え、槽内の上部と下部で四つ葉様のフローパターンを

形成する。翼の部分がひねられた(ウ)傾斜パドル翼を用いると、ひねりの部分で液を底面方向へ押し出

す為、軸流を与えることができる。(エ)平板タービン翼は、吐出作用とせん断作用ともに高く、輻射流

型のフローパターンを形成する。スラリー撹拌や通気撹拌などで用いられる。翼がひねられた傾斜ター

ビン翼は、平板翼の輻射流に加えて軸流を形成する。(オ)ファウドラー翼は、横から見てV字型の形状

になっているため、槽底近くまで撹拌翼を下げることができる。スラリー粒子の沈降抑止に効果がある。

(カ)アンカー翼は、高粘性液体や高濃度スラリーの撹拌に用いられる。槽の壁面をかき取るような形状

をしている為、槽の壁面近傍の流速を大きくとれ、境膜厚みが薄くなり、ジャケット型での伝熱効率を

高めることができる。ただし、ほぼ水平方向のみの撹拌であることから、上下方向の撹拌が望めず、液

混合の均一性はあまり良くない。また、槽中心部の混合が悪い。(キ)リボン翼は、アンカー翼同様、高

粘性液体の撹拌に用いる。翼の高さは、槽底から液面まであり、アンカー翼にはあまり望めない、上下

流の撹拌が支配的となる。

図1 代表的な撹拌翼

(ア) (イ)

θ

(ウ) (オ)

(キ)

(エ) (カ)

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③邪魔板とフローパターン 邪魔板が挿入されないと、旋回流が生じて、液面が大きく窪む。このフロ

ーパターンだと、たんに流れに乗るだけで、混合が悪い。邪魔板を挿入することで、旋回流と液面のへ

こみが解消し、適切なフローパターンが形成されて、混合が良くなる。代表的なフローパターンには、

旋回流型、軸流型、放射流型がある。軸流型はプロペラ翼、放射流型はパドル翼が代表的だが、条件次

第で挙動は異なる。傾斜型のパドル翼を用いると、底面へ押しつける効果が得られて、軸流方向の流れ

を形成させることができる。

図2 邪魔板の効果と典型的なフローパターン

2.撹拌特性

①翼先端速度 u [m/s] 撹拌翼が 1 回転する際に描く円の長さ(周長)πd と、撹拌翼が 1 回転するのにかか

る時間(周期)1/n との比で定義される。

2 ( /2)

1/dun

…(2.1)

u nd …(2.2) ただし、d は翼径[m]、n は翼回転数[1/s]。

あるいは、たんに u=nd とする場合もよくある。

②レイノルズ数 Re 粘性力 τA に対する慣性力 ma の比で定義される。

τAmaRe …(2.3)

ただし、τ はせん断応力[N/m2]、A は流体塊の断面積[m2]、m は液質量[kg]、a は流体塊の加速度[m/s2]。

慣性力の項を撹拌翼の因子に置き換えると、式(2.2)を用いて次式のように表される。

3 3 3 2 4d ( )d / (1/ )u u uma V d d nd nd n dt d u n

…(2.4)

ただし、t は時間[s]、V は液体積[m3]、ρ は液密度[kg/m3]。

粘性力の項を撹拌翼の因子に置き換えると、次式のように表される。

2 2d ( )du uA A d ud nd d ndy d

…(2.5)

19

【軸流型】(底面に押しつける流れ)

【輻射流型】(側面に押しつける流れ)

吐出流(輻射流)

吐出流(軸流) 循環流

旋回流

【旋回流型】(混合不良)

邪魔板

邪魔板

邪魔板

邪魔板

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ただし、y は変位[m]、μ は液粘度[Pa・s]。

式(2.4)および式(2.5)を式(2.3)に代入して整理すると、撹拌レイノルズ数を得る。

2

42

nddnRe …(2.6)

2ndRe …(2.7)

③フルード数 Fr 撹拌によって生じる旋回渦流の形状を表す。重力 mg に対する慣性力(遠心力)ma の比

で定義される。

mgmaFr …(2.8)

ただし、g は重力加速度[m/s2]。 重力の項を撹拌翼の因子に置き換えると、次式のように表される。

mg=ρVg∝ρd3g …(2.9)

式(2.4)および式(2.9)を式(2.8)に代入して整理すると、撹拌フルード数を得る。

gd

dnFr 3

42 …(2.10)

gdnFr

2 …(2.11)

④循環流量数 Nqc および吐出流量数 Nqd 循環流量 Qc [m3/s]と吐出流量 Qd [m3/s]を用いてそれぞれ次式で

定義される。

Nqc=Qc/nd3 …(2.12)

Nqd=Qd/nd3 …(2.13)

流体の循環時間 Tc [s]は、循環流量 Qc [m3/s]と撹拌槽内の液体積 V [m3]を用いて次式で表される。

Tc=V/Qc …(2.14)

なお、Qc の代わりに Qdを用いる場合もある。

流体の循環回数 Nc [1/s]は、次式で表される。

Nc=Qc/V (=1/Tc) …(2.15)

なお、Qc の代わりに Qdを用いる場合もある。

乱流条件下では、Nqc と Nqd の間におおよそ次の関係式が成り立つ。

Nqc= Nqd[1+0.16{(D/d)2-1}] …(2.16)

また、Nqdと動力数 Np [-]との間におおよそ次の関係式が成り立つ。

Nqd=0.32(np0.7b/d)0.25(D/d)0.34NP

0.5 …(2.17)

⑤混合時間 θM [s] 撹拌槽に複数の異なる液体を供給した後、目的の均一度に達するまでに要する時間の

ことである。混合時間が短い程、撹拌性能は良好である。乱流条件下の場合、次式で計算される。

1/(nθM)=0.092[(d/D)3Nqd+0.21(d/D)(NP/Nqd)0.5][1-exp{-13(d/D)2}] …(2.18)

ただし、右辺第 1 項は循環流の混合作用、第 2 項は乱流による混合作用を意味する。

⑥撹拌所要動力 P [W] 翼が受ける慣性抵抗 Rf [N]と翼先端速度 u の積で定義される。

P=Rfu …(2.19)

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上式の物理的意味について考える。撹拌翼が外力 Rf [N]を受けながら、時間 t [s]で距離 x [m]移動するこ

とから、撹拌翼が液に対して行う仕事 W [J]は、外力 Rf [N]と距離 x [m]の積で表される。これを時間 t [s]

で割り算すると、単位時間当たりの仕事、すなわち撹拌所要動力に相当する仕事率 P [W]が得られる。

上式を撹拌翼の因子に置き換えると、撹拌所要動力 P は次式のように導かれる。

P=Rfu=CDA(ρu2/2)u∝ρAu3=ρd2(πnd)3∝ρd2(nd)3=ρn3d5 …(2.20)

P=NPρn3d5 …(2.21)

ただし、NP は動力数[-]。

上記の他、機械力学的な導出方法もある。撹拌所要動力 P は、翼が液に対して行う仕事 W [J]と時間 t [s]

の比で定義される。仕事 W は、液に及ぼす外力 F [N]と翼が 1 回転する際に描く周長 πd の積で表される。

2 2 ( ) 2

1/W F rP n r F nTt n

…(2.22)

ただし、T はトルク(回転力) [N・m]。

上式は、角速度 ω [rad/s]を用いて次式のように書き換えられる。

P=ωT …(2.23)

角速度は、翼 1 回転分の角度 2π と 1 回転の所要時間 1/n の比で表される。

次にトルク T を導く。翼の微小部分が受ける微小抗力 dRf [N]は次式で表される。

dRf=C1A(ρu2/2)= C1(bdr)(ρ/2)(2πrn)2 …(2.24)

ただし、C1 は定数[-]、b は翼幅[m]、r は撹拌軸中心からの距離[m]。

r=αd、b=βd (0≦α, β≦1/2)と置くと、上式は次式のように表される。

dRf=C2(ρn2d4)α2dα …(2.25)

ただし、α と β は定数[-]。

翼の微小部分に作用する微小トルク dT は次式で表される。

dT=rdRf …(2.26)

式(2.25)を上式に代入して積分すると、翼全体に作用するトルクを得る。 1/22 5 3

202 dT n d C …(2.27)

12 5 320

dT n d C …(2.28)

式(2.27)の積分項に 2 を乗じる理由は、撹拌軸を中心に左右両側の羽根にトルクが作用するためである。

上式を式(2.22)に代入すると、撹拌所要動力 P は次式のように導かれる。

12 5 3

202 dP n n d C …(2.29)

13 5 3 3 52

20d ( )

4CP n d C n d …(2.30)

P=NPρn3d5 …(2.21)

3.動力特性

3.1 次元解析

b

d

drr

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動力数 NPの性質について調べる。撹拌槽の形状を一定として、撹拌所要動力に関する次元解析を行う。

P = K nα dβ ργ μδ gε …(3.1.1)

ただし、K、α、β、γ、δ、ε は定数[-]。

上式の各項の単位を M(質量)、L(長さ)、T(時間)の次元に置き換えると、次式の通りとなる。

P [W]=[J・s-1]=[(N・m)・s-1]=[{(kg・m・s-2)・m}・s-1]=[kg・m2・s-3]=[ML2T-3] …(3.1.2)

K [-] …(3.1.3)

nα [s-1] α=[T-1] α …(3.1.4)

dβ [m] β=[L] β …(3.1.5)

ργ [kg・m-3] γ=[ML-3] γ …(3.1.6)

μδ [Pa・s] δ=[(N・m-2)・s] δ=[{(kg・m・s-2)・m-2}・s] δ=[kg・m-1・s-1] δ=[ML-1T-1] δ …(3.1.7)

gε [m・s-2] ε=[LT-2] ε …(3.1.8)

質量(M)の項について両辺を比較すると、次式を得る。

1=γ+δ …(3.1.9)

長さ(L)の項について両辺を比較すると、次式を得る。

2=β-3γ-δ+ε …(3.1.10)

時間(T)の項について両辺を比較すると、次式を得る。

-3=-α-δ-2ε …(3.1.11)

δ と ε を定数と見なす。式(3.1.9)より γ について整理する。

γ=1-δ …(3.1.12)

式(3.1.12)を式(3.1.10)に代入し、β について整理する。

2=β-3(1-δ)-δ+ε …(3.1.13)

2=β-3+3δ-δ+ε …(3.1.14)

β=-2δ-ε+5 …(3.1.15)

式(3.1.11)を α について整理する。

α=-δ-2ε+3 …(3.1.16) 式(3.1.12)と式(3.1.15)と式(3.1.16)を式(3.1.1)に代入し、δ と γ のべき乗項で整理する。

P = K n-δ-2ε+3 d-2δ-ε+5 ρ1-δμδ gε …(3.1.17)

P = K (n-δd-2δ ρ-δ μδ )( n-2εd-εgε)( ρn3d5) …(3.1.18)

gdnndK

dnP 22

53 …(3.1.19)

NP=KReDFrE …(3.1.20)

ただし、D と E は定数[-]。

動力数は、レイノルズ数(流動状態)とフルード数(渦流の規模)の関数で表される。

3.2 動力特性曲線

上式の関数形を導く。フルード数無視の条件を仮定すると、上式は、レイノルズ数のみの関数で表さ

れる。層流条件における撹拌所要動力 P は、翼が受ける粘性抵抗 τA と翼先端速度 u の積で与えられる。

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P=τAu …(3.2.1)

式(2.2)と式(2.5)を上式に代入すると、層流条件における撹拌所要動力を得る。

P=(μnd2)(πnd)∝μn2d3 …(3.2.2)

乱流条件における撹拌所要動力Pは、翼が受ける慣性抵抗Rfと翼先端速度 uの積で与えられることから、

式(2.20)と同様の式となる。

P=Rfu=CDA(ρu2/2)u∝ρAu3=ρd2(πnd)3∝ρd2(nd)3=ρn3d5 …(2.20)

一般的な撹拌所要動力は、式(3.2.2)と式(2.20)の和で表される。

P=Aμn2d3+Bρn3d5 …(3.2.3)

ただし、A と B は定数[-]。

上式を ρn3d5で割ると、フルード数無視の条件における動力特性曲線の式を得る。

3 5 2( )P A B

n d nd …(3.2.4)

PAN B

Re …(3.2.5)

層流条件の場合、動力数は次式で近似される。

NP≒A/Re …(3.2.6)

乱流条件の場合、動力数は次式で近似される。

NP≒B …(3.2.7)

図3 動力特性曲線(Rushton(ラシュトン)線図の一部)9)

Re100 101 102 103 104 105 106

Np

0.1

1

10

1001 6枚平板タービン(邪魔板あり)2 6枚平板タービン(邪魔板なし)3 パドル4 プロペラ(邪魔板あり)5 プロペラ(邪魔板なし)

45( log )/

pReN Fr

邪魔板なしの場合は、縦軸を次式に変更する。

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----------------------------------------------

①撹拌レイノルズ数 Re を求める。

②撹拌翼の種類と邪魔板の有無をもとに曲線の番号を決める。

③動力数 NP を読み取る。

④撹拌所要動力 P を求める。(P=NPρn3d5)

----------------------------------------------

4.撹拌所要動力の推算

古くは永田の式(1957 年)が有名であるが、近年は、より幅広い条件で適用可能な亀井・平岡の式(1995

年)が有用である。液体積あたり撹拌所要動力 P/V のおおよその目安として、次が参考となる。0.2 kW/m3(小

~混合不良)、0.6~1.0 kW/m3(中~適当)、2 kW/m3(大~重い粒子の分散、乳化、気体分散)、4 kW/m3(特大

~ペーストの混練、捏和)。もし推算値がこれらの値を逸脱する場合は、撹拌条件を変更して再度計算を

試みるとよい。

4.1 邪魔板無しの場合

4.1.1 永田の式 2,3)

2 枚羽根パドル翼(羽根段数 1 段)の動力数 Np0 [-]の推算式として、永田の式が有名である。

{0.35 ( / )}3 0.66

1.2P0 3 0.66

10 1.2 (sin )10 3.2

p b DA Re HN BRe DRe

…(4.1.1)

A=14+(b/D)[670{(d/D)-0.6}2+185] …(4.1.2)

B=102[1.3 4{( / ) 0.5} 1.14( / )]b D d D …(4.1.3)

p=1.1+4(b/D)-2.5[(d/D)-0.5]2-7(b/D)4 …(4.1.4)

上記以外の撹拌翼、すなわち、①羽根枚数 np≠2、②羽根段数 N≠1、③パドル以外の翼形状、を用いる場

合は、①~③の翼条件を、永田式で定義されている 2 枚羽根パドル翼(羽根段数 1 段)に置き換えて計算す

る。低~中粘度の液体の場合、羽根枚数と羽根幅と羽根段数の積(npbN)が等しくなる条件においては、パ

ドル翼とタービン翼の種類に関わらず、いずれも撹拌所要動力はほぼ等しくなることが知られており

(npbN=一定)、この経験則を用いて置き換える。

np’b’N’= npbN …(4.1.5)

ただし、np’と b’と N’は置換後の値。

永田式で定義されている羽根枚数は 2、羽根段数は 1 であることから、置換後の羽根枚数 np’は 2、羽根

段数 N’は 1 となる。このことから、置換後の相当羽根幅 b’ [m]は、次式で表される。

b’=npbN/2 …(4.1.6)

なお、プロペラ翼の場合は、上記とは別の手順にしたがう。(化学工学便覧を参照のこと。)

4.1.2 亀井・平岡の式 5,6)

幅広い条件に対応した推算式として、平板パドル翼および傾斜パドル翼に関する亀井・平岡の式が有

用である。式中に羽根枚数 np が含まれており、永田式の如き翼の置換計算は不要である。なお、傾斜角

の項 sinθ=1 と置くことで、平板タービン翼に対しても適用できる。

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NP0=[(1.2π4β2)/{8d3/(D2H)}]f …(4.1.7)

f=CL/ReG+Ct[{(Ctr/ReG)+ReG}-1+(f∞/Ct)1/m]m …(4.1.8)

ReG=[{πηln(D/d)}/(4d/βD)]Red …(4.1.9)

Red=ρnd2/μ …(4.1.10)

CL=0.215ηnp(d/H)[1-(d/D)2]+1.83(bsinθ/H)[np/(2sinθ)]1/3 …(4.1.11)

Ct=[(1.96X1.19)-7.8+(0.25)-7.8]-1/7.8 …(4.1.12)

m=[(0.71X0.373)-7.8+(0.333)-7.8]-1/7.8 …(4.1.13)

Ctr=23.8(d/D)-3.24(bsinθ/D)-1.18X-0.74 …(4.1.14)

f∞=0.0151(d/D)Ct0.308 …(4.1.15)

X=γnp0.7bsin1.6θ/H …(4.1.16)

β=2[ln(D/d)]/[(D/d)-(d/D)] …(4.1.17)

γ=[η{ln(D/d)}/(βD/d)5]1/3 …(4.1.18)

η=0.711[0.157+{npln(D/d)}0.611]/[np0.52{1-(d/D)2}] …(4.1.19)

なお、羽根段数 N が 2 以上の場合は、上式で得られた NP0 に羽根段数 N を乗じた値を採用する。

加藤らは、亀井・平岡式の乱流項 Ctと m を次式のように修正することで、プロペラ翼およびファウドラ

―翼に対しても適用できるようにした。

Ct=[(3X1.5)-7.8+(0.25)-7.8]-1/7.8 …(4.1.20)

m=[(0.8X0.373)-7.8+(0.333)-7.8]-1/7.8 …(4.1.21)

4.2 邪魔板有りの場合 5,6,9)

4.2.1 完全邪魔板条件 乱流条件において邪魔板が挿入される場合、次式を満たすような邪魔板条件(板幅 Bw、枚数 nB)が選定

されると、撹拌所要動力が最大となる。これを完全邪魔板条件という。

永田らは、完全邪魔板条件と最大動力数 NPmax [-]を次式で与えている。

(Bw/D)1.2nB=0.35 …(4.2.1)

NPmax=A/Rec+B(H/D)(0.35+(b/D)) …(4.2.2)

Rec=104(1-sinθ)[{25/(b/D)}{(d/D)-0.4}2+[(b/D)/{0.11(b/D)-0.0048}]] …(4.2.3)

定数 A と B は、前出の式を用いる。

亀井らは、撹拌翼の条件を含めた完全邪魔板条件を報告している。

(Bw/D)nB0.8=0.27(NPmax)0.2 …(4.2.4)

ただし、NPmaxは最大動力数[-]。

完全邪魔板条件における各種撹拌翼の最大動力数 NPmaxは、完全邪魔板条件における亀井・平岡の式を用

いて計算される。(邪魔板無しの条件における亀井・平岡の式とは区別される。)

(平板パドル翼・平板タービン翼) NPmax=10(np0.7b/d)1.3 ただし np

0.7b/d≤0.54 …(4.2.5)

(平板パドル翼・平板タービン翼) NPmax=8.3(np0.7b/d) ただし 0.54<np

0.7b/d≤1.6 …(4.2.6)

(平板パドル翼・平板タービン翼) NPmax=10(np0.7b/d)0.6 ただし 1.6<np

0.7b/d …(4.2.7)

(傾斜パドル翼) NPmax=8.3(2θ/π)0.9[np0.7b(sinθ)1.6/d]1.7 …(4.2.8)

(プロペラ翼・ファウドラ―翼) NPmax=6.5[np0.7b(sinθ)1.6/d]1.7 …(4.2.9)

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9

なお、実際の最大動力数 NPmaxは、上式で得られた NPmaxに羽根段数 N を乗じて求める。

4.2.2 部分邪魔板条件

完全邪魔板条件未満の邪魔板条件を部分邪魔板条件という。永田らは、次の推算式を報告している。

(NPmax-NP)/(NPmax-NP∞)=[1-1.29(Bw/D)1.2nB]2 …(4.2.10)

NPmax=A/Re+B(H/D){0.35+(b/D)} …(4.2.11)

NP∞=B(0.6/1.6)p …(4.2.12)

定数 A, B, p は、前出の式を用いる。

亀井らは、完全邪魔板条件を含む次の推算式を報告している。

NP=[(1+x-3)-1/3]NPmax …(4.2.13)

(平板パドル翼・平板タービン翼)x=4.5(Bw/D)nB0.8(H/D)/(NPmax)0.2+NP0/NPmax …(4.2.14)

(傾斜パドル翼・プロペラ翼・ファウドラ-翼)x=4.5(Bw/D)nB0.8(H/D)/{(2θ/π)0.72(NPmax)0.2}+NP0/NPmax …(4.2.15)

定数 NPmaxは、前出の式を用いる。

5.伝熱特性

伝熱形式は、ジャケットまたはコイル、あるいはその両方となる。撹拌液の単純な加熱冷却のほか、

反応操作中に発生する反応熱を除熱しながら撹拌液の温度を一定に保つ操作が行われる。

5.1 加熱および冷却時間 10,15,16)

①加熱中または冷却中に熱冷媒の温度が変化しない場合 スチームの潜熱で加熱(蒸気から液に相変化

する際の、温度変化の起こらない領域で加熱)する場合や、外気にさらして冷却する場合がこれにあたる。

加熱時の伝熱速度式は、次式で表される。

pd ( * ) *dTQ MC UA T T T Tt

   …(5.1.1)

ただし、A は伝熱面積[m2]、Cpは撹拌液の平均比熱容量[J/(kg・K)]、M は液重量[kg]、T は時間 t における

撹拌液温度[K]、T*は平衡温度(例えば、スチームの凝縮温度)[K]、U は総括伝熱係数[W/(m2・K)]。

撹拌液温度 T0から Tf (T0<Tf)までの加熱時間 τH [s]は、加熱時の伝熱速度式を用いて求めることができる。 f H

0 0p

d d*

T

T

T UA tT T MC

  …(5.1.2)

0H

f p

*ln*

T T UAT T MC

…(5.1.3)

0H

f p

*ln*

T T UAT T MC

…(5.1.4)

伝熱量 Q [W]は、次式より求められる。

p f 0

H

( )MC T TQ …(5.1.5)

あるいは、スチームの質量流量 W [kg/s]と蒸発潜熱 λV [J/kg]を用いて次式で表される。 VQ W …(5.1.6)

冷却時の伝熱速度式は、次式で表される。

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10

pd ( *) *dTQ MC UA T T T Tt

   …(5.1.7)

ただし、T*は平衡温度(例えば、外気温)[K]

撹拌液温度 T0から Tf (T0>Tf)までの冷却時間 τC [s]は、冷却時の伝熱速度式を用いて求めることができる。 f C

0

τ

0p

d dt*

T

T

T UAT T MC

  …(5.1.8)

0C

f p

*ln*

T T UAT T MC

…(5.1.9)

0C

f p

*ln*

T T UAT T MC

…(5.1.10)

②加熱中または冷却中に熱冷媒の温度が変化する場合 加熱油や冷却水を伝熱媒体に用いる場合がこれ

にあたる。伝熱速度式 Q=UA T の T を対数平均温度差 Tlmに変更する。

加熱時の伝熱速度式は、次式で表される。

p lmd ΔdTQ MC UA Tt

…(5.1.11)

ただし、 Tlmは対数平均温度差[K]であり、次式で表される。

in outlm

in

out

( ) ( )Δln

T T T TT T TT T

…(5.1.12)

ただし、Tinは熱媒の入口側温度、Tout は熱媒の出口側温度、T は時間 t における撹拌液温度[K]。

(撹拌液の加熱速度)=(熱媒の冷却速度)が成り立つことから、次式が導かれる。

in outpw in out

in

out

( ) ( ) ( )ln

T T T TUA WC T T QT TT T

  …(5.1.13)

ただし、Cpw は熱媒の平均比熱容量[J/(kg・K)]、W は熱媒の質量流量[kg/s]。

上式を Tout について解くと、次式のようになる。

pwin

out

1

lnUA WCT T

T T

  …(5.1.14)

in

out pwln T T UA

T T WC=  …(5.1.15)

in

out pwexpT T UA

T T WC= …(5.1.16)

inout

T TT TK

  pw

exp UAKWC

…(5.1.17)

上式を式(5.1.13)に代入して変数 Toutを消去した式をもとの伝熱速度式に代入すると、次式のようになる。

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11

inp pw in

dd

T TTMC WC T Tt K

…(5.1.18)

pw inin

p

( )d ( )d

WC T TT T Tt MC K

…(5.1.19)

pw

in p

d 11 dWCT t

T T MC K …(5.1.20)

T0 から Tfまでの加熱時間 τH [s]は、上式を積分して求めることができる。

f H

0

pw

0in p

d 11 dT

T

WCT tT T MC K

…(5.1.21)

pwin 0H

in f p

1ln 1WCT T

T T MC K …(5.1.22)

pwin 0H

in f p

1ln 1WCT T

T T MC K

pwexp UAK

WC …(5.1.23)

冷却時の伝熱速度式は、次式で表される。

p lmd ΔdTQ MC UA Tt

…(5.1.24)

in outlm

in

out

( ) ( )Δln

T T T TT T TT T

…(5.1.25)

ただし、Tinは冷媒の入口側温度、Tout は冷媒の出口側温度。

(撹拌液の冷却速度)=(冷却水の加熱速度) が成り立つことから、次式が導かれる。

in outpw out in

in

out

( ) ( ) ( )ln

T T T TUA wc T T QT TT T

…(5.1.26)

ただし、cpwは冷媒の平均比熱容量[J/(kg・K)]、w は冷媒の質量流量[kg/s]。

上式を Tout について解くと、次式が導かれる。

inout

T TT T pw

exp UAwc

…(5.1.27)

上式を式(5.1.26)に代入して変数 Toutを消去した式をもとの伝熱速度式に代入すると、次式のようになる。

inp pw in

dd

T TTMC wc T Tt

…(5.1.28)

pw inin

p

d ( )d

wc T TT T Tt MC

…(5.1.29)

pw

in p

d 11 dwcT t

T T MC …(5.1.30)

T0 から Tfまでの冷却時間 τC [s]は、上式を積分して求めることができる。

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12

f C

0

pw

0in p

d 11 dT

T

wcT tT T MC

…(5.1.31)

pw0 inC

f in p

1ln 1wcT T

T T MC …(5.1.32)

pwin 0C

in f p

1ln 1wcT T

T T MC

pwexp UA

wc …(5.1.33)

5.2 総括伝熱係数

ジャケットの場合は、槽壁の内側を高温の伝熱媒体が流れており、外側を低温の撹拌液が流れている

ものとする。コイルの場合は、直円管の外側を高温の撹拌液が流れており、内側を低温の伝熱媒体が流

れているものとする。ジャケットの槽壁またはコイルの管壁を通じて熱交換される。

各部位での対流伝熱速度 Q [W]は、各部位の温度差を考慮して次のように表される。

(境膜1) 1 s11 1

QT Th A

…(5.2.1)

(スケール1) s1 w1s1 s1

QT Th A

…(5.2.2)

(固体壁) w1 w2av( )

QT Tk l A

…(5.2.3)

(スケール2) w2 s2s2 s2

QT Th A

…(5.2.4)

(境膜2) s2 22 2

QT Th A

…(5.2.5)

ただし、h は境膜伝熱係数[W/(m2・K)]、hs は汚れ係数[W/(m2・K)]、k は熱伝導度[W/(m・K)]、ℓ は円管厚み

[m]、A は伝熱面積[m2]、添え字 s はスケール、添え字 w は固体壁。

上式を辺々加えると、基準 1 の総括伝熱係数 U1 [W/(m2・K)]が導かれる。

1 2

1 1 s1 s1 av s2 s2 2 2

1 1 1 1T TQ

h A h A kA h A h A

…(5.2.6)

1 21 1

1 1 1 1

1 1 s1 s1 av s2 s2 2 2

Δ1 1 1 1 1

T TQ U A TA A A A

A h h A k A h A h A

   …(5.2.7)

1 1 1 2Δ [Δ ]Q U A T T T T   …(5.2.8)

スケール面積 As1と As2 がそれぞれ伝熱面積 A1 と A2 に等置されるとき、上式は次式のようになる。

1 11 s1 1 s2

1 1 s1 av s2 2 2

1 1 1 1 1 ,A A A A A AU h h k A h h A

   …(5.2.9)

伝熱面積 A について、次式が成り立つ。

A2=2πr2=πD2 …(5.2.10)

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13

図4 撹拌槽内の対流伝熱現象

(固体壁がジャケット槽壁の場合は、低温流体側が撹拌液となる。固体壁がコイル管壁の場合は、高温

流体側が撹拌液となる。)

A1=2πr1=πD1 …(5.2.11)

Aav=2πrav=πDav …(5.2.12)

ただし、r は撹拌槽半径またはコイルを直円管と見なした場合の管半径[m]、D は撹拌槽径またはコイル

を直円管と見なした場合の管径 dco [m]。

上式を式(5.2.9)に代入すると、寸法比表示の総括伝熱係数 U1 [W/(m2・K)]を得る。

1 1 1 1 2av

1 1 s1 av s2 2 2 2

1 1 1 1 12

D D D D DDU h h k D h D h D

   …(5.2.13)

寸法比を 1 に近似する場合は、次式が導かれる。

1 s1 s2 2

1 1 1 1 1U h h k h h

1 1 av 1 2, 1, 1U U D D D D …(5.2.14)

同様にして、基準 2 の総括伝熱係数 U2 [W/(m2・K)]が導かれる。

1 2

1 1 s1 s1 av s2 s2 2 2

1 1 1 1T TQ

h A h A kA h A h A

…(5.2.15)

1 22 2

2 2 2 2

2 2 s2 s2 av s1 s1 o 1

Δ1 1 1 1 1

T TQ U A TA A A A

A h h A k A h A h A

   …(5.2.16)

2 2 1 2Δ [Δ ]Q U A T T T T   …(5.2.17)

T1

境膜1

境膜2

kAav

Ts1Tw1

T2

h1A1

(高温流体)

(低温流体)

Tw2Ts2

h2A2

スケ|ル1

hs1As1

スケ|ル2

hs2As2

固体壁

r2

r1

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14

2 2 2 2

2 2 s2 s2 av s1 s1 o 1

1 1 1 1 1A A A AU h h A k A h A h A

…(5.2.18)

2 2 22 s2 2 s1

2 2 s2 av s1 1 1 1

1 1 1 1 1 ,A A A A A A AU h h k A h A h A

   …(5.2.19)

面積比を寸法比に置き換えると、次式となる。

2 2 2 1 2av

2 2 s2 av s1 1 1 1

1 1 1 1 12

D D D D DDU h h k D h D h D

   …(5.2.20)

寸法比を 1 に近似する場合は、基準 1 と同様の式を得る。

1 s1 s2 2

1 1 1 1 1U h h k h h

2 2 av 2 1, 1, 1U U D D D D …(5.2.21)

5.3 境膜伝熱係数

5.3.1 撹拌液側

撹拌槽伝熱に関する一般的な推算式は、次式で表される。

2p

w

ChD ndK fk k

…(5.3.1)

ただし、h は撹拌液側の境膜伝熱係数[W/(m2・s)](ジャケットの場合は h=hj、コイルの場合は h=hc)、d は翼

径[m]、D は槽径[m]、n は撹拌回転数[1/s]、Cpは撹拌液の比熱容量[J/(kg・K)]、k は撹拌液の熱伝導度[W/(m・

K)]、ρ は撹拌液密度[kg/m3]、μ は撹拌液粘度[Pa・s]、μw は槽壁温度における撹拌液粘度[Pa・s]、f は装置形

状に関する因子。なお、左辺のヌッセルト項について、コイルの場合は、槽径 D の代わりにコイル管外

径 dcoを用いて報告されている推算式もあるので、注意を要する。 上式の定数項について、諸家の報告例を下表に整理する。

表1 撹拌槽伝熱に関する一般式の定数項 2,7,8)

研究者 撹拌翼 伝熱方式 K α β γ f Re 備考

Chilton ら パドル ジャケット 0.36 2/3 1/3 0.14 300~3×106

コイル 0.87 0.62 1/3 0.14

Brooks & Su 平板タービン ジャケット 0.54 2/3 1/3 0.14 40~3×105 邪魔板なし 0.74 2/3 1/3 0.14 300~3×105 邪魔板あり

Oldshue & Gretton 平板タービン コイル 0.17 2/3 0.37 (d/D)0.1(dco/D)0.5 400~2×105 Nu項(左辺)の Dを

dcoに変更

Uhl 傾斜タービン ジャケット 0.44 2/3 1/3 0.24 80~200 翼は下部に設置 0.53 2/3 1/3 0.24 20~120 翼は中間に設置

Cummings & West 湾曲タービン ジャケット 0.60 2/3 1/3 0.14 200~8×105

コイル 1.01 0.62 1/3 0.14 200~7×105 Broun ら プロペラ ジャケット 0.55 2/3 1/4 0.14 5000~4×104 Skelland & Dabrowski プロペラ コイル 0.345 0.62 (D/C)0.27 3×105~106 Nu項(左辺)の Dを

dcoに変更 ※定数項の空欄部は、その項自体が推算式から省かれていることを表す。

永田らは、種々の撹拌槽形状を含む推算式を次式で整理している 2,3)。

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15

3 411 3 0.14 2 72p 5 6

pw

( ) (sin )N NC bChD nd d Hnk k D NH D D

…(5.3.2)

ただし、h は撹拌液側の境膜伝熱係数[W/(m2・s)](ジャケットの場合は h=hj、コイルの場合は h=hc)、N は

翼段数[-](原報では記号 i)、ΣbN は撹拌翼 N 段分の翼幅の総和[m] (原報では記号 Σbi)、ΣCNは撹拌翼 N 段

分の取付け高さの総和[m] (原報では記号 ΣCi)、npは羽根枚数[-]、d は翼径[m]、D は槽径[m]、H は液深

[m]、n は撹拌回転数[1/s]、Cpは撹拌液の比熱容量[J/(kg・K)]、k は撹拌液の熱伝導度[W/(m・K)]、ρ は撹拌

液密度[kg/m3]、μ は撹拌液粘度[Pa・s]、μwは槽壁温度における撹拌液粘度[Pa・s]、θ は撹拌羽根の傾斜角[rad]、

α および β1~7 は定数[-]。

右辺第1~3項が流体に関する因子、第4項(d/D)以降が撹拌槽形状に関する因子である。上式の定数項

を下表に整理する。

表2 撹拌槽伝熱に関する永田式の定数項 2,3,7,8)

撹拌翼 伝熱方式 邪魔板 コイル類 α β1 β2 β3 β4 β5 β6 β7 備考

パドル 傾斜パドル タービン

ジャケット なし あり 0.54 2/3 -0.25 0.15 0.15 0.15 0.5 0

Re>100 なし 0.51 2/3 -0.25 0.15 0.15 0.15 0.5 0

あり あり、なし 共通

1.40 2/3 -0.3 0.2 0.45 0.2 0.5 -0.6 Re>100

コイル なし

翼はコイル

内側に設置 0.825 0.56 -0.25 0 0.15 0.15 0 -0.3

①H/D 項を

dco/D に変更 ②Re>100

翼はコイル

下側に設置 1.05 0.62 -0.25 0.15 0.15 0 1.0 ①H/D 項を

Dc/D に変更 ②Re>100

あり 翼の設置箇

所関係なし 2.68 0.56 -0.3 0.15 0.3 0.2 0.5 -0.5 Re>100

プロペラ ジャケット - - 0.33 2/3 -0.25 0.15 ΣCi/iH 項 を

C/Z に変更 コイル - - 1.31 0.56 -0.25 0.15 ※定数項の空欄部は、その項自体が推算式から省かれていることを表す。

図5 撹拌槽の形状因子

5.3.2 伝熱媒体側

①相変化が起こらない場合 ジャケットの場合は自然対流伝熱の式、コイルの場合は直円管対流伝熱の

D

d

H

nb

np

Bw

ρ, μn

C

H

C1C2

b1

b2

Dc

dco

D

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16

補正式をそれぞれ用いる。

(ジャケット)

1/33 2pV lm

2Δ CD g ThD K

k k 2 1

lm 2 12 1

Δ ΔΔ , Δ >Δln (Δ Δ )

T TT T TT T

…(5.3.3)

上昇流で加熱する場合 K=0.15、上昇流で冷却する場合 K=0.128。(ジャケット内に伝熱媒体を流す場合は、

装置の下部から上部へ向かって流すのが基本となる。)

(コイル)

0.33 0.140.8pci ci ci

w c0.023 1 3.5

Chd d u dk k D

…(5.3.4)

ただし、dciはコイル管内径[m]、Dc はコイル中心径[m]、g は重力加速度[m/s2]、hciはコイル内側(伝熱媒体

側)の境膜伝熱係数[W/(m2・K)]、hji はジャケット内側(伝熱媒体側)の境膜伝熱係数[W/(m2・s)]、k は伝熱媒

体の熱伝導度[W/(m・K)]、 Tlm は対数平均温度差[K]、u はコイル管内の平均流速[m/s]、βV は体積膨張係

数[-]、μw は壁面温度における流体粘度[Pa・s]。

②相変化が起こる場合 伝熱媒体から撹拌液への伝熱機構が膜状凝縮伝熱(スチームの凝縮水が壁面を膜

状に濡らして熱を伝える)にしたがうものとし、凝縮液膜が壁面上を層流(Re=4Γ/η<2100)で流れることを

仮定すると、円管内凝縮伝熱と同様の推算式を用いることができる 10)。

(ジャケット) 1/32

fl

0.925 g Wh kD

   …(5.3.5)

(コイル) 1/32

fl

0.762

g Wh kL

   …(5.3.6)

Tfl=Tv-0.75(Tv-Tw) …(5.3.7)

ただし、Γ(ガンマ)は単位浸辺長あたりの凝縮液の質量流量[kg/(m・s)]、L はコイル長[m]、Tvは飽和温度[K]、

Tw は槽壁温度[K]、W は凝縮液の質量流量[kg/s]。流体の密度 ρ と粘度 μ は、液膜温度 Tflのときの値を用

いる。

5.4 伝熱面積

①ジャケットの場合 10) 撹拌槽形状に依存する。代表的な鏡板(かがみいた)槽の槽容積 V、槽面積 A、鏡

板の高さ hV は、槽径 D と胴長 lVを用いてそれぞれ次式で与えられる。

(10%皿型鏡板槽)

3 V 0.0634lV DD

…(5.4.1)

2 V 0.630lA DD

…(5.4.2)

V 0.194h D …(5.4.3)

(2:1 半楕円型鏡板槽)

Dc

dci

lV

hV

hV

D

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17

3 V 14 12lV DD

…(5.4.4)

2 V 0.690lA DD

…(5.4.5)

V 0.25h D …(5.4.6)

撹拌液を液深 H まで仕込む場合、胴長 lVを液深の変数と見なして次式が成り立つ。 V Vh l H …(5.4.7)

上式を槽容積の式(5.4.1)または式(5.4.4)に代入すると、仕込みの液体積 V は、次式のようになる。

(10%皿型鏡板槽)

3 V 0.0634

H hV DD

…(5.4.8)

3 0.194 0.0634

H DV DD

…(5.4.9)

3 0.194 0.0634

D DV D H DD

   …(5.4.10)

3 (0.2015 0.063)V D …(5.4.11) 30.2645V D …(5.4.12)

(2:1 半楕円型鏡板槽)

3 V 14 12

H hV DD

…(5.4.13)

3 0.25 14 12

H DV DD

…(5.4.14)

3 0.25 14 12

D DV D H DD

   …(5.4.15)

3 3 116 12

V D …(5.4.16)

30.2708V D …(5.4.17) 式(5.4.7)を槽面積の式(5.4.2)または式(5.4.5)に代入すると、液仕込み分のジャケットの伝熱面積 Aj は、次

式のようになる。

(10%皿型鏡板槽)

2 Vj 0.630H hA D

D …(5.4.18)

2j

0.194 0.630H DA DD

…(5.4.19)

2j

0.194 0.630D DA D H DD

   …(5.4.20)

2j (0.806 0.630)A D …(5.4.21)

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18

2j 1.436A D …(5.4.22)

(2:1 半楕円型鏡板槽)

2 Vj 0.690H hA D

D …(5.4.23)

2j

0.25 0.690H DA DD

…(5.4.24)

2j

0.25 0.690D DA D H DD

   …(5.4.25)

2j (0.75 0.690)A D …(5.4.26)

2j 1.44A D …(5.4.27)

実際には、邪魔板やコイルなどが撹拌液中に挿入されることから、余裕を見込んで設計する必要がある。

簡便には、撹拌槽をたんに円筒状の容器と見なして、液深 H を槽径 D と同じに取ると、ジャケットの近

似的な伝熱面積 Aj [m2]が導かれる。

2

j 4DA DH …(5.4.28)

2

j54

A D H D   …(5.4.29)

上式右辺の第 1 項は円筒容器の底面積、第 2 項は側面積に相当する。

②コイルの場合 伝熱速度を求めた後、総括伝熱係数の式に代入して、所要伝熱面積を求める。加熱ま

たは冷却時におけるコイルよりの伝熱速度 Qc [W]は、次式で表される。

c pw in out| |Q wc T T …(5.4.30)

コイル管内を流れる伝熱媒体の質量流量 w [kg/s]は、次式で表される。

w cw uS …(5.4.31)

ただし、u は管内を流れる熱冷媒の平均流速[m/s]、Scはコイル管断面積[m2]、ρw は熱冷媒の密度[kg/m3]。

上式を式(5.4.30)に代入すると、次式を得る。

c c pw in out| |Q uS c T T …(5.4.32)

2 2

ci cic pw in out c| |

4 4ud dQ c T T S   …(5.4.33)

ただし、dciはコイル管内径[m]。

上式を総括伝熱係数の式に代入すると、コイルの所要伝熱面積 Ac [m2]が導かれる。

cc

lmΔQA

U T …(5.4.34)

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19

2pw in outci

clm

| |4 Δ

c T TudAU T

…(5.4.35)

(加熱時) in outlm

in

out

( ) ( )Δln

T T T TT T TT T

…(5.1.12)

(冷却時) in outlm

in

out

( ) ( )Δln

T T T TT T TT T

…(5.1.25)

上式の T には、スチームの凝縮温度や外気温、撹拌液の保持温度などの一定値を代入する。

コイル伝熱面積 Ac は、コイルの巻き数 Nc [-]を用いて次式で表される 9)。 c co c c( )( )A d D N …(5.4.36)

ただし、dco はコイル管外径[m]、Dc はコイル径[m]。

上式より、コイルの巻き数 Nc [-]を得る。

cc 2

co c

ANd D

…(5.4.37)

6.スケールアップ

6.1 基本的な考え方

小型の円筒撹拌槽で最適な成果が得られたとする。たとえば、混合完了までの所要時間を短縮できた、

析出した固体粒子の寸法を揃えることができたなど。これを大型の撹拌槽にスケールアップする際、小

型槽で得られる現象や成果を大型槽でも実現したいと思うであろう。そうすると、大型槽は小型槽と相

似の装置形状を選定するであろうし、小型槽での操作条件を参考に適切な撹拌条件を採用するであろう。

しかし、「相似の装置形状」や「適切な撹拌条件」だけでは、具体的にいくらにすればよいのかの数字の

部分が分からない。そこで、この数字の部分を工学の視点で考えてみる。

はじめに、大型槽の装置形状について考える。たとえば、小型槽を 10 倍にスケールアップするとして、

小型槽のどの部分の寸法を 10 倍するかは複数考えられる。ここでは、槽径 D をスケールアップの基準に

取り、それを 10 倍する。すなわち、大型槽の槽径は 10D と決まる。D の値は、小型槽の槽径を測れば求

まる。次に、大型槽の液深(えきしん)はいくらにすればよいだろうか。小型槽の液深 H の 10 倍となるで

あろうことは、想像がつく。答えは 10H でよいが、なぜそうなるのかの工学的根拠を与える必要がある。

ところでいま、小型槽と相似の装置形状を大型槽で実現することを考えているが、具体的にどのような

ことをすれば、それを実現したことになるだろうか。それは、装置の寸法比を一定に保ってスケールア

ップすることである。なぜ寸法比を一定に保つと相似の形状が保たれるのか。その直感的なイメージに

ついて、たとえばテレビ画面の大きさは、何インチ~とか何型~で定義されるが、画面の縦と横の寸法

比は、インチ数に関わらずほぼすべて同じになっている。それでいて、画面の形状は、インチ数が変わ

ってもみな同じ長方形を保っている。正方形に近づくことはない。話を撹拌槽に戻す。どことどこの寸

法の比を取るかは複数考えられるが、ここでは、すでに分かっている槽径 D と現在検討中の液深 H の寸

法比 H/D をスケールアップの基準に取る。なぜ D が分母なのかは、D がおおもとのスケールアップ基準

(D→10D)になっているからと考えてよい。このことから、小型槽の寸法比 H/D 一定の条件下で大型槽の

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槽径を 10D に取ると、大型槽の液深は 10H と決まる。工学的根拠は、「小型槽の相似形状を大型槽で実

現するには、装置の寸法比を一定に取る必要があるから」である。

次に、大型槽の撹拌条件について考える。翼径は、上と同じ考え方で決める。すなわち、寸法比 d/D

をスケールアップの基準に取ると、大型槽の翼径は 10d に決まる。撹拌速度については、また別の考え

方になる。10 倍にスケールアップすると、撹拌速度も 10 倍必要と思うかもしれないが、逆である。スケ

ールアップすると、翼径が大きくなるので、ひとかきするだけでかなりの量の液が動く。したがって、

大型槽の撹拌速度は、小型槽よりも小さくて済む。なお、撹拌速度をあえて一定にしてスケールアップ

する場合もある。撹拌速度 n [1/s]と翼径 D [m]は、反比例の関係(n=k/D)にある。両者を乗じた nD (=k)は、

速度の単位[m/s]であり、撹拌翼の先端速度を表している(正確には、πnD)。これをスケールアップの基準

に取る。すなわち、翼先端速度 nD 一定の条件下で大型槽の槽径を 10D に取ると、大型槽の撹拌速度は

(1/10)n と決まる。工学的根拠は、「小型槽の撹拌条件を大型槽で実現するには、翼先端速度を一定に取る

必要があるから」となる。翼先端速度のほか、液体積あたりの撹拌所要動力も基準となる。

最後に、大型槽の装置容積あたり伝熱面積[m2/m3]について考える。工業反応装置における伝熱の重要

性は、加熱よりも除熱にある。たとえば、重合反応の場合、反応が進むにつれ粘度が増大し、熱が槽内

でこもりやすくなるので、除熱速度 Q を大きく取る必要がある。そうするには、対流伝熱の式 Q=UA T

からも分かるように、伝熱面積 A をなるべく大きく取ることが肝要となる。いまスケールアップするの

だから、伝熱面積も必然的に大きくなり、とくに差支えがないように思われるかもしれない。たしかに

伝熱面積自体は大きくなるが、装置容積あたりでは減少する。たとえば、槽径 D の小型槽の伝熱面積は、

D2に比例する。一方、10 倍にスケールアップした大型槽の伝熱面積は、(10D)2=100D2 に比例する。10D2

ではない。装置容積も同様にして、小型槽では D3 に、大型槽では(10D)3=1000D3 にそれぞれ比例する。

あくまで「比例する」とした理由は、種々の装置形状が考えられるからである。たとえ容器自体が単純

な円筒形であっても、邪魔板やコイルなど付属品が挿入されると、正確には円筒形でなくなる。以上を

踏まえ、単位装置容積あたりの伝熱面積は、小型槽ではD2/D3=1/Dに、大型槽では100D2/1000D3=(1/10)(1/D)

に比例する。いま、装置由来の形状係数、すなわち比例定数の部分が同じであるとして、大型槽の装置

容積あたり伝熱面積は、小型槽の 10 分の 1 に減少する。以上のことから、反応や晶析など、伝熱操作が

重要となる工程では、伝熱面形状をいかに工夫して伝熱面積を稼ぐかが課題となる。

図6 撹拌槽のスケールアップ

D

Hd

n

10D

□H□d

□n

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21

表3 撹拌槽のスケールアップ

装置または操作条件 単位 小型槽 大型槽 根拠 槽径 [m] D 10D 定義(10 倍にスケールアップ) 液深 [m] H 10H 液深-槽径比 H/D 一定

撹拌翼径 [m] d 10d 翼径-槽径比 d/D 一定 撹拌速度 [1/s] n (1/10)n 翼先端速度 nD 一定 伝熱面積 [m2] ∝D2 ∝100D2 槽径の 2 乗 装置容積 [m3] ∝D3 ∝1000D3 槽径の 3 乗

装置容積あたり伝熱面積 [m2/m3] ∝1/D ∝(1/10)(1/D) (伝熱面積)/(装置容積)

6.2 スケールアップの基準

乱流条件下で撹拌が行われるものとする。このとき、レイノルズ数は十分に大きいことから、動力数

Np は、Re によらず一定となる。このことは、一般式または動力特性線図より理解される。

P1 P2N N (小型槽=1、大型槽=2) …(6.2.1)

1 23 5 3 5

1 1 1 2 2 2

P Pn d n d

…(6.2.2)

撹拌所要動力と撹拌速度の比を取ると、各条件に関するスケールアップ基準の式が導かれる。

3 5

2 2 2 23 5

1 1 1 1

P n dP n d

…(6.2.3)

1/3 5/3 1/3

2 1 1 21/3 5/3 1/3

1 2 2 1

n d Pn d P

…(6.2.4)

以下、装置寸法比一定の基準①が基本条件となる。その上で下記のスケールアップ基準②~⑦から一つ

を採用する。下記以外にも基準は存在する。また、条件次第では、複数の基準を採用できることもある。

①装置寸法比一定(幾何学的相似) 装置形状を相似にする考え方である。最優先で採用する。

d2/d1=b2/b1=D2/D1=H2/H1=…=α …(6.2.5)

ただし、α はスケールアップの倍数(スケールアップファクター)であり、自由に設定することができる。

②レイノルズ数一定(力学的相似) 流動状態を相似にする考え方であるが、スケールアップすると液体

積あたりの撹拌所要動力 P/V が大幅に低下するため、液に十分なエネルギーを与えることが難しくなる。

スケールアップの基準としては、あまり用いられない。

1 2Re Re …(6.2.6) 2 2

1 1 1 2 2 2

1 2

n d n d …(6.2.7)

2 21 1 2 2n d n d [ρ1=ρ2, μ1=μ2] …(6.2.8)

上式を変形すると、撹拌速度に関するスケールアップ基準の式を得る。

22 1

1 2

n dn d

…(6.2.9)

上式を式(5.2.3)に用いると、撹拌所要動力に関するスケールアップ基準の式を得る。

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22

33 5 2 5 (6 5)3 52 2 2 2 2 2 1 1 1 1

3 51 1 1 2 2 2 21 1 1

P n d n d d d d dP n d d d d dn d

[ρ1=ρ2] …(6.2.10)

2 1

1 2

P dP d

…(6.2.11)

③フルード数一定(力学的相似) 渦流の寸法や形状を相似にする考え方である。邪魔板を用いない場合

に相当するが、実際的ではないため、スケールアップの基準としては、あまり用いられない。

1 2Fr Fr …(6.2.12) 2 2

1 1 2 2n d n dg g

…(6.2.13)

2 21 1 2 2n d n d …(6.2.14)

上式を変形すると、撹拌速度に関するスケールアップ基準の式を得る。

1/22 1

1 2

n dn d

…(6.2.15)

上式を式(6.2.3)に用いると、撹拌所要動力に関するスケールアップ基準の式を得る。

33 5 1/2 5 {(3/2) 5} 7/23 52 2 2 2 2 2 1 1 1 1

3 51 1 1 2 2 2 21 1 1

P n d n d d d d dP n d d d d dn d

[ρ1=ρ2] …(6.2.16)

7/22 1

1 2

P dP d

…(6.2.17)

液の種類(ρ と μ)が変更されない限り、Re と Fr の両方を基準に用いることはできない。

④液体積あたり撹拌所要動力一定(運動学的相似) スケールアップの一般的な基準としてよく用いられ

る。ただし、撹拌がもたらす吐出作用(循環させる)とせん断作用(分散させる)の比率に差が生じること

が問題である。

1 2

P PV V

…(6.2.18)

1 22 21 1 2 2( /4) ( /4)

P PD H D H

…(6.2.19)

動力比を取り、装置寸法比一定の条件(D2/D1=d2/d1および H2/H1=d2/d1)を用いると、撹拌所要動力に関する

スケールアップ基準の式を得る。 2 2

2 2 2 1

1 1 1 1

3

1

2 2

2

P dHdH

D d dP D d d

…(6.2.20)

32 1

1 2

P dP d

…(6.2.21)

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上式を式(6.2.4)に用いると、撹拌速度に関するスケールアップ基準の式を得る。

1/35/3 3 5/3 1 {(5/3) 1} 2/31/3 5/3 1/32 1 1 2 1 2 1 1 1 1

1/3 5/3 1/31 2 1 2 2 2 22 2 1

n d P d d d d d dn d d d d d dd P

[ρ1=ρ2] …(6.2.22)

2/32 1

1 2

n dn d

…(6.2.23)

⑤翼先端速度一定(運動学的相似) 液体積あたり撹拌所要動力 P/V 一定に次いでよく用いられる。とく

に、気泡・液滴・微粒子の分散等、高いせん断力を要する場合に用いられる。

1 2u u …(6.2.24)

1 1 2 2πn d πn d …(6.2.25)

1 1 2 2n d n d …(6.2.26)

上式を変形すると、撹拌速度に関するスケールアップ基準の式を得る。

2 1

1 2

n dn d

…(6.2.27)

上式を式(6.2.3)に用いると、撹拌所要動力に関するスケールアップ基準の式を得る。

33 5 1 5 (3 5) 23 52 2 2 2 2 2 1 1 1 1

3 51 1 1 2 2 2 21 1 1

P n d n d d d d dP n d d d d dn d

[ρ1=ρ2] …(6.2.28)

22 1

1 2

P dP d

…(6.2.29)

⑥撹拌速度一定(運動学的相似) 混合時間をほぼ一定にすることができるが、スケールアップに伴い液

体積あたりの撹拌所要動力 P/V が大幅に増大するため、かなり激しい撹拌が必要となる。経済面の問題

から、あまり用いられない。

1 2n n …(6.2.30)

上式を変形すると、撹拌速度に関するスケールアップ基準の式を得る。

02 1

1 2

n dn d

…(6.2.31)

上式を式(6.2.3)に用いると、撹拌所要動力に関するスケールアップ基準の式を得る。

33 5 0 5 (0 5) 53 52 2 2 2 2 2 1 1 1 1

3 51 1 1 2 2 2 21 1 1

P n d n d d d d dP n d d d d dn d

[ρ1=ρ2] …(6.2.32)

52 1

1 2

P dP d

…(6.2.33)

⑦液体積あたり伝熱量一定(運動学的相似) ジャケット内の伝熱媒体側から撹拌液側へ与えられる液体

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24

積あたりの伝熱量 Q/V をスケールアップの基準にする。スケールアップすると、液体積あたりの撹拌所

要動力 P/V が大幅に増大するため、現実的ではない。

1 2

Q QV V

…(6.2.34)

対流伝熱式 Q=hA T を用いると、次式となる。

1 1 1 2 2 22 21 1 2 2

Δ Δ( /4) ( /4)

h A T h A TD H D H

…(6.2.35)

ただし、h は境膜伝熱係数[W/(m・K)]、A は伝熱面積[m2]、 T は温度差[K]。 境膜伝熱係数 h は、次の無次元式で表される。

2

p

w

C μhD ρndKk μ k

…(6.2.36)

ただし、Cp は比熱容量[J/(kg・K)]、k は流体の熱伝導度[W/(m・K)]、μw は槽壁温度における粘度[Pa・s]。

上式を式(6.2.35)に代入すると、次式のようになる。 2

1 1 1 1 1 1 p1 1 1 w 1 1 121 1

22 2 2 2 2 2 p2 2 2 w 2 2 2

22 2

[ ( / )( / ) ( / ) ( / ) ]( )Δ

[ ( / )( / ) ( / ) ( / ) ]( )Δ

K k D n d C k D H TD H

K k D n d C k D H TD H

…(6.2.37)

スケールアップ前後で同じ流体を用いる場合は、流体の物性値(Cp, k, ρ, μ)が等しくなることから、上式は

次式のようになる。 2 2

1 1 1 1 2 2 2 2

1 2

[(1/ )( ) ]Δ [(1/ )( ) ]ΔD n d T D n d TD D

…(6.2.38)

スケールアップ前後で同じ温度差 T とする場合は、次式のようになる。 2 2

1 1 2 22 2

1 2

( ) ( )n d n dD D

…(6.2.39)

装置寸法比一定の条件(D2/D1=d2/d1)を用いると、撹拌速度に関するスケールアップ基準の式を得る。 2 2

1 1 2 22 2

1 2

( ) ( )n d n dd d

…(6.2.40)

2 2 2 21 1 2 2n d n d …(6.2.41)

2 22 1

1 2

n dn d

…(6.2.42)

2 (2/ )2 1

1 2

n dn d

…(6.2.43)

12 1

1 2

n dn d

[α=2/3] …(6.2.44)

上式を式(6.2.3)に用いると、撹拌所要動力に関するスケールアップ基準の式を得る。

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25

33 5 1 5 3 5 83 52 2 2 2 2 2 1 1 1 1

3 51 1 1 2 2 2 21 1 1

P n d n d d d d dP n d d d d dn d

[ρ1=ρ2] …(6.2.45)

82 1

1 2

P dP d

…(6.2.46)

6.3 スケールアップ基準式の使い方

はじめに、スケールアップの倍数 α を決める。たとえば、小型槽の槽径 D1を 8 倍にスケールアップし

て(α=8)、大型槽の槽径を D2 にすることを考える。D1 と α は既知なので、装置寸法比一定の条件式

(d2/d1=b2/b1=D2/D1=H2/H1=…=α)より、ただちに D2(=8D1)が決まる。槽径 D のかわりに、翼径 d や翼幅 b

を倍数の基準に取ってもよい。次に、どの基準を一定に保つのかを決める。たとえば、液体積あたり撹

拌所要動力一定の条件を採用するものとする。スケールアップ前後で用いる流体の種類は同じであると

して、撹拌速度の比(n2/n1)と翼径比(d1/d2)の間には、(n2/n1)=(d1/d2)2/3 の関係式が成り立つ。このうち、n1

と d1については、自分の小型槽に関する情報なので、既知である。たとえば、n1=300 rpm、d1=5 cm であ

ったとしよう。もう一つ、大型槽の n2または d2のいずれかが既知でなければならないが、いま D2 =8D1

の関係式があるので、装置寸法比一定の条件より d2=8d1 となって、d2 は消去できる。(n2/n1)=(d1/d2)2/3 の

関係式は、(n2/n1)=(1/8)2/3 → (n2/n1)=(2-3)2/3 → (n2/n1)=1/4 → n2=(1/4)n1=(1/4)(300)=75 rpm となり、スケ

ールアップ後の撹拌速度 n2 は、もとの 1/4 倍の 75 rpm に設定すればよいことが分かる。とくに回分式装

置の場合、ある製品の生産終了後、別製品の生産で同じ装置を使い回すことがよくある。この場合、翼

径や翼の種類は、余程の事情が無い限り変更できない。変更できるのは、原則として撹拌速度のみであ

る。したがって、スケールアップ時に n2 を如何ほどに設定すればよいのかが、往々にして知りたい情報

となる。動力比(P2/P1)も同様の考え方で用いる。たとえば今、スケールアップは行わないが、同一の撹拌

装置で、所要動力をもとの半分に落としたいとする。翼径は変更できないから、撹拌速度をいくらに変

更すればよいか、ということになる。この場合は、動力数 NP(=P/ρn3d5)一定の下で検討すればよい。すな

わち、P1/ρn13d1

5=P2/ρn23d2

5 において、P2=(1/2)P1 かつ d2=d1 とおけば、n2=(1/2)1/3n1 となる。変更前の撹拌

速度 n1=300 rpm であれば、n2=(1/2)1/3(300)=238 rpm に変更すればよい。

6.4 スケールアップの条件とスケール比の影響

各スケールアップ基準における、撹拌速度 n あるいは撹拌動力 P と撹拌翼径 d の間には、それぞれ次

のスケールアップ条件式が成り立つ。

2 1

1 2

n dn d

nd const …(6.4.1)

2 1

1 2

P dP d

Pd const …(6.4.2)

ただし、スケールアップの前後で装置寸法比一定の条件を満たしていること、流体の種類は同じである

ものとする。

液体積当たりの動力比(P/V)2/(P/V)1 に対するスケール比 V2/V1 の影響は、次式のように導かれる。

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26

2 1

1 2

P dP d

…(6.4.3)

2 2 1 1

1 1 2 2

//

P V d VP V d V

…(6.4.4)

/3 12 1 2

1 2 1

( / )( / )P V V VP V V V

…(6.4.5)

1 ( /3)2 2

1 1

( / )( / )P V VP V V

…(6.4.6)

表4 スケールアップ条件式の定数項

基準 Q/V n Fr P/V u Re β -1 0 1/2 2/3 1 2 γ -8 -5 -7/2 -3 -2 1

V2/V1

1 10 100

(P/V

) 2/(P

/V) 1

0.001

0.01

0.1

1

10

100

1000

10000

Q/V=const

n=const

Fr=constP/V=const

u=const

Re=const

図7 スケール比の影響

上の関係式を図に整理する。スケール比 V2/V1 に対する動力比(P/V)2/(P/V)1 の変動が小さいのは、液体積

あたり動力 P/V や翼先端速度 u であり、これらがスケールアップ基準の候補になりやすい。フルード数

Fr も比較的変動が小さいが、邪魔板無しの条件における旋回渦流の相似条件であることから、実際的で

ないためあまり用いられない。P/V を除くいずれの基準においても、スケール比 V2/V1 の増大に伴い、

(P/V)2/(P/V)1=1 からのずれが大きくなる。このことは、スケールアップの倍数が大きくなるほどスケール

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27

アップの難度が高くなることを意味している。反対に、数倍程度以内のスケールアップであれば、いず

れの基準も 1 からのずれが小さく、比較的実現しやすいと言える。

7.気液系の撹拌 17-21)

撹拌槽におけるガス吸収操作に相当する。酸化反応や微生物反応では、スパージャーから空気を供給

して気泡とし、酸素を液中に撹拌溶解させている。これを通気撹拌という。

①物質移動 ガス側と液側の両方に境膜を仮定する二重境膜モデルに基づき物質移動速度の解析を行う。

気液界面においてガスと液は溶解平衡の状態にあると考える。このとき、ガス側と液側における物質移

動速度 NAG [mol/s]と NAL [mol/s]は、それぞれ次式のように表される。

ガス側(G) : NAG=kGS(pA-pAi) …(7.1)

液側(L) : NAL=kLS(CAi-CA) …(7.2)

ただし、CAは溶質濃度[mol/m3]、pAは溶質の分圧[Pa]、kG および kLはガス側および液側の境膜物質移動

係数、S は気泡表面積[m2]、添え字 i は気液界面における値。

希薄溶液の場合は、溶解平衡下において Henry の法則が成り立つ。

ガス側(G) : pA=HCA* …(7.3)

界 面(i) : pAi=HCAi …(7.4)

液 側(L) : CA=(1/H)pA* …(7.5)

ただし、CA*は分圧 pAと平衡状態にある液相中の溶質濃度

[mol/m3]、pA*は濃度 CAと平衡状態にある気相中の溶質分圧[Pa]、

H は Henry 定数。

溶解平衡の場合、溶質の移動速度は、ガス側と液側とで等しいこ

とから、次式が成り立つ。

NAG=NAL=NA …(7.6)

式(7.1)、式(7.2)、式(7.6)より次式が成り立つ。

NA=kGS(pA-pAi)= kLS(CAi-CA) …(7.7)

上式の第 2 項と第 3 項を変形すると、次式が導かれる。

A A Ai

G

( )N S p pHk H

…(7.8)

AAi A

L( )N S C C

k …(7.9)

辺々加えると、次式のようになる。

A A A AiAi A

G L

( ) ( )N N S p p S C CHk k H

…(7.10)

Ai A A AiA

G

( ) [ ( ) ]1 1L

S C C S p p HNk Hk

…(7.11)

式(7.3)および式(7.5)をそれぞれ代入すると、液側総括吸収速度式を得る。 *

Ai A A AiA

G

( ) [ ( ) ]1 1L

S C C S HC HC HNk Hk

…(7.12)

界面(i)ガス(G) 液(L)

pA, yA

CA, xA

pAi, yAi

CAi, xAi

kG

kL

kx

ky

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*A A

AG

( )1 1L

S C CNk Hk

…(7.13)

*A L A A( )N K S C C …(7.14)

L L G

1 1 1K k Hk

…(7.15)

ただし、KLは液側総括物質移動係数[m/s]。

液体積あたりの物質移動速度 NV [mol/(m3・s)]は、次式で表される。

V L ( * )N K a C C SaV

…(7.16)

ただし、a は気液接触界面積[m2/m3]、C は液中の溶質濃度[mol/m3]、C*は液中の飽和溶質濃度[mol/m3]。

液側総括容量係数 KLa [1/s]に関するタービン翼の推算式として、次式が報告されている。

0.62g 0.42

L g0.435P

K a UV

…(7.17)

ただし、Ugはガス空塔速度[m/s](=ガス流量/装置断面積)。

少量の油や固体粒子の存在下では、KLa が低下することに留意する必要がある。

気液接触界面積 a [m2/m3]の推算式について、空気-水系における Calderbank の式がある。

5.0g

4.0g55.0 U

VP

a …(7.18)

②ガス分散状態 通気撹拌槽内におけるガス分散状態は、気泡の上昇力が気泡の分散を支配する状態(通

気支配、望ましくない状態)と、撹拌が気泡の分散を支配する状態(撹拌支配、望ましい状態)がある。分

散状態の程度は、通気数 NA [-]を用いて表される。

3g

A ndQ

N …(7.19)

ただし、Qgは通気量[m3/s]。

通気数 NAは、吐出流量に対する通気量の比を表している。NAが大きいほど通気支配に近づき、小さいほ

ど撹拌支配に近づく。上式より、気泡の分散を良好にするには、通気量を抑えるか、あるいは撹拌速度

を大きく取ることが推奨される。

③完全分散撹拌速度 気泡の均一分散が良好となる撹拌支配状態とするのに最低限必要な完全分散撹拌

速度 nCD [1/s]は、次の実験式で与えられる。

(単一孔スパージャー) 0.5 0.25

gCD 2

4Q Dn

d …(7.20)

(リングスパージャー) 0.5 0.25

gCD 2

3Q Dn

d …(7.21)

無次元で整理された式については、たとえば Nienow(ニーナウ)の式がある。

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29

0.50.5 2g CD

3CD

0.2Q n dD

d gn d …(7.22)

④撹拌所要動力 通気撹拌操作の場合、撹拌翼背面に微細気泡(キャビティー)が生じることから撹拌作用

が低下する。さらには、液が気泡に置換されることで液の見かけの密度が小さくなる。このことから、

通気時の撹拌所要動力 Pg [W]は、無通気時における撹拌所要動力 P0 [W]よりも小さくなる。実用上は、

Pg/P0 を 0.6 以上に設定する。

通気時の撹拌所要動力 Pgの推算式について、平板タービン翼における Calderbank(カルダーバンク)の式

が簡便である。

gA

01 12.6

PN

P )035.0( AN …(7.23)

gA

00.62 1.85

PN

P )035.0( AN …(7.24)

永田らは、平板タービン翼において、装置形状や流動状態を考慮した次式を報告している。

0.115 1.96( / )4.38 2 2g g

30

log 192d DP Qd nd n d

P D g nd …(7.25)

右辺第2項が装置形状、第3項および第4項が流動状態(Re, Fr)、第5項が分散状態(NA)を表している。

Michel and Miller は、平板タービン翼において、次の有次元式を報告している。

0.4452 3

0g 0.56

g

P ndP CQ

…(7.26)

ただし、定数 C は装置形状(d/D など)によって変化する。

⑤ガスホールドアップおよび気泡径 液相中のガス滞留量割合をガスホールドアップという。ガス吸収

操作では液相とガスの体積比で定義されるが、通気撹拌操作では通気時と無通気時における液自由表面

高さ(Hgおよび H0 [m])の比で定義される。

g 0

gg

H HH

…(7.27)

ただし、εgはガスホールドアップ[-]、Hgは通気時の液表面高さ[m]、H0 は無通気時の液表面高さ[m]。

ガスホールドアップが大きい程、液相中に滞留する気泡量が多いことから、気泡中の溶質成分をより多

く液相中に吸収させることができ、したがって物質移動速度を増大させることができる。また、気泡径

を小さくすることによって単位体積当たりの気液接触面積が大きくなり、物質移動速度を増大させるこ

とができる。

ガスホールドアップ εg の推算式について、平板タービン翼および湾曲タービン翼における次式が報告

されている。

1/3g 0.68

g g96P

UV

[%] …(7.28)

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30

ただし、Ugはガス空塔速度[m/s]、V は液体積[m3]

表面積基準の平均気泡径 dB [m]については、次式が報告されている。

(高橋らの式) 0.34 0.11B gd n Q …(7.29)

(Calderbank の式) 0.250.6

g0.5B g0.4 0.2

g4.15 0.0009

( / )d

P V …(7.30)

ただし、σ は気液間の界面張力[N・m]、ρ は液密度[kg/m3]、μ は液粘度[Pa・s]、μgは気体粘度[Pa・s]。

8.液液系の撹拌 22-30)

ミキサ-セトラ型装置における液液抽出操作に相当する。

①物質移動 ガス吸収と同様に二重境膜モデルを用いることができる。抽残相(R)と抽出相(E)の液液界面

において、抽残相側の抽質が抽出相側へ物質移動しており、両相は溶解平衡状態にあるものとする。こ

のときの液液抽出流束 nA [mol/(m2・h)]は、次式で表される。 抽残相側(R): A R R Ri( )n k C C …(8.1)

抽出相側(E): A E Ei E( )n k C C …(8.2)

ただし、C は抽質濃度[mol/m3]、k は境膜物質移動係数[m/h]、添え字 E は抽出相、R は抽残相、i は界面。

抽質の分配係数 m [-]を次式で定義する。

Ri R R

Ei E E

**

C C CmC C C

…(8.3)

ただし、C*は平衡時の抽質濃度[mol/m3]

式(8.1)と式(8.2)を変形すると、次式のようになる。

AR Ri

R

n C Ck

…(8.4)

AEi E

E( )mn m C C

k …(8.5)

上式を辺々加えると、次式のようになる。

A AR Ri Ei E

R E( ) ( )n mn C C m C C

k k …(8.6)

R Ri Ei EA

R E

( ) ( )1

C C m C Cnk m k

…(8.7)

式(8.3)を用いると、次式のようになる。

R Ei Ei E R E R RA

R E R E R E

( ) ( ) *1 1 1

C mC m C C C mC C Cnk m k k m k k m k

…(8.8)

A OR R R( *)n K C C …(8.9)

OR R E

1 1 mK k k

…(8.10)

ただし、KOR は抽残相側総括物質移動係数[m/h]。

界面(i)抽残相(R)

抽出相(E)

CR

CRi

kR kE

CEi

CE

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31

抽出相側吸収速度式の導出について、式(8.1)と式(8.2)を次式のように変形する。

A R Ri

R

n C Cmk m

…(8.11)

AEi E

E

n C Ck

…(8.12)

上式を辺々加えると、次式のようになる。

A A R RiEi E

R E( )n n C C C C

mk k m …(8.13)

R Ri Ei EA

R E

( )/ ( )1 1

C C m C Cnmk k

…(8.14)

式(8.3)を用いると、次式のようになる。

E Ei Ei E E EA

R E R E

( * )/ ( ) *1 1 1 1

mC mC m C C C Cnmk k mk k

…(8.15)

A OE E E( * )n K C C …(8.16)

OE R E

1 1 1K mk k

…(8.17)

ただし、KOEは抽出相側総括物質移動係数[m/h]。

いま、抽質を含む分散相溶液(入口側分散相抽質濃度 CD,in [mol/m3])と純粋な抽剤からなる連続相溶液が

それぞれ流量 QD, QC [m3/s]で撹拌槽に連続的に供給される。完全混合条件下、抽質が連続相側へ物質移動

することで抽質が消費される。一定の滞留時間を経て、抽質を含む分散相溶液(出口側分散相抽質濃度

CD,out [mol/m3])と連続相溶液(出口側連続相抽質濃度 CC,out [mol/m3])がそれぞれ流量 QD, QC [m3/h]で連続的

に排出される。定常状態における物質収支式は、次式で表される。 D D,in D D,out C C,outQ C Q C Q C …(8.18)

二重境膜モデルと同様に考えると、分散相(D)が抽残相(R)に相当し、連続相(C)が抽出相(E)に相当する。

また、ガス吸収操作と同様に考えると、分散相中の抽質が連続相側へ移動するため、各相における入口

側と出口側の流量は等しくならない。しかし、ここでは抽質濃度が希薄であるものとし、物質移動に伴

う流量変化は無視できるものとした。

式(3.24)の出入口モル速度の差分が液液抽出速度 NA [mol/h]に相当する。

A D D,in D,out C C,out( ) [ ]N Q C C Q C   …(8.19)

装置内の平均抽質濃度が出口側分散相抽質濃度 CD,out に等しいものと仮定すると、装置内における液液抽

出速度 NA [mol/h]は、式(8.9)を用いて次式で表される。

A A OD D,out D,out( *)N n aV K a C C V …(8.20)

OD D C

1 1 mK k k

…(8.21)

ただし、KODa は分散相側総括容量係数[1/h]、V は液体積[m3]。

分散相側境膜物質移動係数 kD [m/h]の推算には、次式を用いる。

(滴内流動の影響を無視する場合) p 2 2D D pln 1 1 1 exp( 4 )

6d

k = t dt

D …(8.22)

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32

(滴内流動の影響を考慮する場合) p 2 2D e pln 1 1 1 exp( 4 )

6d

k = t dt

D …(8.23)

有効拡散係数 De は、分散相側拡散係数 DDの 2.25 倍にとる。時間 t には、平均滞留時間 τ を用いる。

連続相側境膜物質移動係数 kC [m/h]の推算には、次式を用いる。

(Calderbank の式) 1/4 1/34 2

C p p C C3

C C CC0.13

k d Pd=

VD D …(8.24)

(Barker & Treybal の式) 0.833 0.52

C C C

C C C C0.052k D nd=

D D …(8.25)

分散相側総括物質移動係数 KOD [m/h]の推算には、式(1.10)を用いる。分散相(液滴)側から連続相側へ抽質

が物質移動することを考慮すると、抽残相 R が分散相 D に、抽出相 E が連続相 C に置き換わる。

OD D C

1 1 mK k k

…(8.26)

連続相側総括物質移動係数 KOC [m/h]の推算には、式(8.17)を用いる。

OC D C

1 1 1K mk k

…(8.17)

②混合溶液の平均物性値 平均密度 ρM [kg/m3]は、次式で与えられる。 M C C D D C D[ 1] …(8.18)

ただし、 はホールドアップ(体積分率)[-]、添字 C は連続相、D は分散相。

平均粘度 μM [kg/(m・h)]は、邪魔板の有無で場合分けされる。邪魔板有りの場合は、次式で与えられる。

C D DM

C C D

1.51 [baffled] …(8.19)

邪魔板無しの場合は、次式で与えられる。

C 0.4 のとき C D DM

C C D

61 [unbaffled] …(8.20)

C 0.4 のとき C CDM

D C D

1.51 [unbaffled] …(8.21)

③分散相のホールドアップ 混合溶液の全体積(連続相と分散相の和)に対する分散相の体積分率を表す。

液滴が均一に分散されているものと仮定すると、分散相のホールドアップ D [-]は、次式で表される。

DD

C D

QQ Q

…(8.22)

次式が成り立てば液滴の分散状態は均一であり、上の仮定は正しい。

2

C D1000 kg/m

( )P

g Q Q …(8.23)

ただし、g は重力加速度[m/h2]、P は撹拌所要動力[W]。

④撹拌所要動力 撹拌所要動力 P [W]は、次式で与えられる。

3 5

p MP N n d …(8.24)

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33

ただし、d は撹拌翼径[m]、n は撹拌速度[1/s]、Npは動力数[-]。

動力数 Npは、撹拌レイノルズ数 Re を求めて、動力特性曲線より読み取る。 2

M

M

ndRe …(8.25)

⑤相分散限界撹拌速度 液滴を均一に分散させるのに最低限必要な撹拌速度に相当する。

邪魔板有りの場合は、6 枚平板タービン翼に関する Skelland & Ramsay の式がある。

0.08422 22 0.106C M M

D 5 2 2M ( )

n d DCg d d g

(baffled) [SI 単位系] …(8.26)

表5 Skelland & Ramsay 式の定数 27)

撹拌翼 羽根枚数 液深/槽径 翼取付位置 C α

プロペラ 3 1 (1/4)H 4.38 0.67 3 1 (1/2)H 4.33 0.79 3 1 (3/4)H 2.76 0.95

傾斜タービン 6 1 (1/4)H 1.95 1.44 6 1 (1/2)H 0.84 1.97 6 1 (3/4)H 1.96 1.17

平板タービン

6 1 (1/4)H 0.91 2.02 6 1 (1/2)H 0.95 1.38 6 1/2 (1/2)H 0.70 1.24 6 3/2 (1/2)H 1.10 1.70

円盤タービン 6 1 (1/2)H 0.53 1.70

邪魔板無しの場合は、4 枚平板タービン翼に関する永田の式がある。

1/9 0.262/3 C

CC C

6.0n D (unbaffled) [SI 単位系] …(8.27)

⑥平均滞留時間 液滴が均一に分散している場合の平均滞留時間 τ [h]は、次式で表される。

T

C D

VQ Q

…(8.28)

⑦液滴接触界面積 液滴接触界面積 a [m2/m3]は、下表の推算式で与えられる。ウェーバー数 We は、気泡

や液滴の形状や挙動に関わる無次元数であり、慣性力と界面張力の比で定義される。

3 2 2 3

C C( )( )d n d n dWe =d

…(8.29)

ただし、σ は界面張力[N/m]。

⑧平均液滴径 表面積基準の平均液滴径 dp [m]は、液滴を球と仮定すると、次式で与えられる。

2

p D D3

pp

(4 )( /2) 6(4 /3)( /2)

N da

dN d …(8.35)

Dp

6da

…(8.36)

ただし、N は液滴数[-]。

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34

表6 液滴接触界面積(邪魔板有)の推算式 22,24,25)

撹拌翼 液ホ D [-] 槽径 DT [m] 液滴接触界面積 a [m2/m3]

4 枚平板パドル 0.2~0.4 0.253~0.506

0.5 0.6D25.4 Wead

(d=0.17~0.33 m) …(8.30)

0~0.2 0.177~0.381 0.6

D

D

100(1 3.75 )

Wead

( T 2 3d D ) …(8.31)

6 枚平板タービン 0~0.2 0.177~0.381 0.6

D

D

100(1 9 )

Wead

( T 1 3d D ) …(8.32)

各種の撹拌翼 0.05~0.35 0.198~0.396 0.5 0.1 0.84

i DC We Read

(Ci=13.65~25.9) …(8.33)

3 枚プロペラ 0.075~0.4 0.198~0.299

0.56 0.25 0.27 1.2120.32C C

DC C D T

212 Δ da Red d D

…(8.34)

液滴接触界面積 a [m2/m3]が不明の場合は、次式より求める。

Dp 40.60.052d

We ed

ただし 10, 000We …(8.37)

p 0.60.39

dWe

d ただし 10,000We …(8.38)

⑨段効率 分離塔や撹拌槽など段接触型の拡散分離装置における平衡到達度を表す。撹拌槽の場合、一

槽分を分離段一段と見なす。以下、棚段式の分離塔を例に述べる。理論段数を決定する際、すべての分

離段が平衡状態にあるものと仮定する。しかし、流体間の接触時間が往々にして短く、平衡に達する前

にその段を去り次の段へ移動してしまうため、設計上、理論段数以上の段数を見積もる必要がある。た

とえば、塔全体の段効率が 0.5 であれば、一段あたりの平衡到達度は 50%ということになり、100%相当

の仕様とするには、理論段数の2倍の段数を見積もる必要がある(実際段数)。したがって、段効率が高い

ほど、より少ない段数で平衡状態相当の仕様を実現できるから、そのような分離塔ほど性能が高いと言

える。なお、実際には、有限時間内での操作であること、飛沫同伴(段上の液の飛沫が蒸気によって上の

段に運ばれる現象)が避けられないことから、平衡到達度 100%は実現不可能である。液液抽出操作の場

合、分離塔よりも撹拌槽の方が段効率は高い。たしかに、棚板によって完全に仕切られている訳ではな

く、逆混合が起こりやすい空間で段を矢継ぎ早に移動する分離塔よりも、物理的に閉じられた空間でし

っかりと混ぜる撹拌槽の方が、一段あたりの平衡到達度は高そうである。だからと言って、分離塔の代

わりに必要段数分の撹拌槽を導入するかと言えば、敷地面積やコストの面で難がありそうである。故に、

段効率が悪くて棚板が多めに必要であったとしても、分離塔を選ぶ場合が多いように思われる。

抽質を含む分散相溶液(入口側分散相抽質濃度 CD,in [mol/m3])と純粋な抽剤からなる連続相溶液がそれ

ぞれ流量 QD, QC [m3/s]で撹拌槽に連続的に供給される。完全混合条件下、抽質が連続相側へ物質移動する

ことで抽質が消費される。一定の滞留時間を経て、抽質を含む分散相溶液(出口側分散相抽質濃度 CD,out

[mol/m3])と連続相溶液(出口側連続相抽質濃度 CC,out [mol/m3])がそれぞれ流量 QD, QC [m3/h]で連続的に排

出される。

分散相側の Murphree(マーフリー)段効率 EMD は、入口側分散相と出口側分散相における抽質濃度差の

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35

比をとることで表される。

D,in D,out

MDD,in D,out( )*C C

EC C

…(8.39)

上式の分母が分散相側に含まれる抽質の最大濃度差、すなわち最大推進力に相当する。

D,in D,out

MDD,in D,out D,out D,out( ) [ ( )*]

C CE

C C C C …(8.40)

D,in D,out D,out D,outMD

D,in D,out D,out D,out

( ) [ ( )*]1 ( ) [ ( )*]

C C C CE

C C C C …(8.41)

式(8.20)と式(8.39)より、次式が導かれる。

D,in D,out OD

D,out D,out D( ) *C C K aV

C C Q …(8.42)

上式を式(8.41)に代入すると、容量係数を含む段効率 EMD を得る。

OD DMD

OD D1K aV QE

K aV Q …(8.43)

総括基準移動単位数 NODは、物質移動に関わる段接触性能に相当し、次式で定義される。

D,in

D,out

DOD

D,out D,out

d( ) *

C

C

CNC C

…(8.44)

撹拌槽型は、塔型とは異なり、接触段数1段かつ完全混合を仮定することから、上式の分母の第一項は

槽内濃度の平均値を取ればよく、第二項はその平衡濃度となる。したがって、この場合の分母は、定数

と見なせる。

D,in D,outOD

D,out D,out( ) *C C

NC C

…(8.45)

式(8.42)と比較すると、次式が導かれる。

ODOD

D

K aVNQ

…(8.46)

上式を式(8.43)に代入すると、移動単位数(NTU)を含む段効率 EMD を得る。

ODMD

OD1NE

N …(8.47)

9.固液系の撹拌 31-36)

晶析、溶解、吸着等の各単位操作に相当する。撹拌操作は、固体粒子の浮遊化や結晶成長速度に関わ

る。溶解操作に関する報文や成書が多いが、ここでは晶析操作を例に取り上げる。

①固体粒子の沈降性 静止流体中での終末沈降速度 ut が 0.0025 m/s 以上の場合は固液混合操作に、それ

以下の場合は均相系での液体混合操作に分類される。

粒子径 dp [m]、密度 ρp [kg/m3]の球形単一粒子が粘度 μ [Pa・s]、密度 ρ [kg/m3]の液相中を沈降速度 v [m/s]

で自由沈降するとき、沈降粒子の運動方程式は次式で表される。

2 2p3 3 3

p p p p p Dd

6 d 6 6 4 2du ud d g d g C

t     …(9.1)

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ただし、t は沈降時間[s]、CD は抵抗係数[-]、g は重力加速度[m/s2]。

抵抗係数 CD [-]は粒子レイノルズ数 Rep [-]の関数であり、次式で与えられる。

Stokes 域(Rep<2)のとき p

D24Re

C …(9.2)

Allen 域(2<Rep<500)のとき p

D10Re

C …(9.3)

Newton 域(500<Rep)のとき 440D .C …(9.4)

ここで、粒子レイノルズ数 Rep [-]は、次式で定義される。

pp

d uRe …(9.5)

沈降粒子が等速度運動する場合の終末速度について、式(9.1)の加速度項を 0 とおき、沈降速度 u を終

末速度 ut に置き換える。さらに、抵抗係数の式(9.2)~(9.5)を用いて式(9.1)の ut について整理すると、そ

れぞれの沈降領域における終末速度が導かれる。

沈降領域が Stokes 域の場合は、次式のように導かれる。

2 2p3 3 t

p p pp

2406 6 4 2

d ud g d gRe

     …(9.6)

3 2 2p p p t

p t

( ) 2406 4 2

g d d ud u

   …(9.7)

3p p

p t( )

0 36

g dd u

   …(9.8)

2p p

t( )

18gd

u  (Stokes) …(9.9)

沈降領域が Allen 域の場合は、次式のように導かれる。

2 2p3 3 t

p p pp

1006 6 4 2

d ud g d gRe

     …(9.10)

3 2 2p p p t

p( )

106 4 2

d g d uRe …(9.11)

223 2 2p p p t

p( )

106 4 2

d g d uRe …(9.12)

2 6 2 2 2 4 2 4p p p t p t( )

10036 16 4

d g d u d u …(9.13)

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37

3 2 2 3p p t( ) 1 1100

36 16 4d g u

…(9.14)

3 2 2p p 3

t( )16 4

36 100d g

u …(9.15)

3 2 2p p3

t( )4

225d g

u …(9.16)

1 32 2p

p4( )

225g

u d (Allen) …(9.17)

沈降領域が Newton 域の場合は、次式のように導かれる。

2 2p3 3 t

p p p0 0.446 6 4 2

d ud g d g     …(9.18)

3p p 2 2

p t( ) 0.44 ( )( )

6 8d g

d u …(9.19)

p p 2t

( )6 0.055

d gu …(9.20)

p p2t

( )0.33

d gu …(9.21)

p pt

3( )gdu (Newton) …(9.22)

②物質移動 工学的な結晶成長過程は、溶質の物質移動

過程と表面集積過程の直列モデルで表される。

溶質の物質移動速度は、次式で表される。

)( idm CCkR …(9.23)

dk D …(9.24)

ただし、C は液本体の溶質濃度[kg/m3]、Ciは固液界面の

溶質濃度[kg/m3]、D は拡散係数[m2/s]、kd は物質移動係

数[m/s]、Rmは質量成長速度[kg/(m2・s)]、δ は境膜厚み[m]。

溶質の表面集積速度は、次式で表される。

m r i( *)rR k C C …(9.25)

r r0 exp Ek kRT

…(9.26)

C (溶液本体)

Ci (固液界面)

C*(溶解度)

溶質濃度

物質移動過程

表面集積過程

境膜(層流域)

距離

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ただし、C*は溶解度[kg/m3]、kr は表面集積速度係数[m/s]、kr0 は定数[m/s]、 E は表面集積過程の活性化

エネルギー[J/mol]、r は表面集積速度式の次数[-]、R は気体定数[J/(K・mol)]、T は温度[K]。

上式のいずれを用いても質量成長速度 Rmを計算することができるが、いずれも計測困難な固液界面濃

度 Ciが含まれているため、不便である。そこで、固液界面濃度 Ciを含まない総括成長速度式を以下に導

く。式(9.25)において r=1 の場合を考える。式(9.23)と式(9.25)はそれぞれ次式のように変形される。

id

m CCkR

…(9.27)

*ir

m CCkR

…(9.28)

上式を辺々加えると、r=1 の場合の総括成長速度式を得る。

*11

rdm CC

kkR …(9.29)

m

d r

1 ( *)1 1R C C

k k

…(9.30)

m G ( *)R K C C (r=1) …(9.31)

G d r

1 1 1K k k

…(9.32)

ただし、KG は総括成長速度係数[m/s]。

上式は、結晶成長過程の全抵抗 1/KGが物質移動抵抗 1/kd と表面集積抵抗 1/kr の和で表されることを意

味する。上の導出例は、表面集積速度の次数 r が整数となる特別な場合においてである。実際の総括成長

速度式は、次の実験式で整理される。

m G ( *)gR K C C …(9.33)

ただし、g は定数であり、1 から 2 の間の値をとることが経験的に知られている。

物質移動係数 kd は、撹拌槽内における固体粒子の溶解速度係数、あるいはイオン交換速度係数に置き

換えて用いることができる。これら固液間物質移動係数 kL の測定にイオン交換樹脂を用いる理由は、測

定中に粒径変化が起こらず、取り扱いが容易だからである。粒径変化が起こる結晶成長過程に対応させ

るには、樹脂の粒径を複数点変更して測定すればよい。

完全浮遊している単一球形粒子が沈降している場合の固液間物質移動係数 kLは、次式で整理される。

Sh = 2 + mRepαSc1/3 L p p t

p, , k d d u

Sh = Re ScD D

…(9.34)

ただし、D は拡散係数[m2/s]、dp は固体粒子径[m]、ut は終末沈降速度[m/s]。

乱流理論に基づいてレイノルズ数項を修正する。最小の乱流渦に対する長さスケール η、速度スケール 、

時間スケール τ は、それぞれ次式で表される。

1/4

…(9.35)

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39

1/4( ) …(9.36)

1/2

…(9.37)

ただし、ν は動粘度(=μ/ρ)、ε は単位質量あたりのエネルギー散逸率[W/kg](あるいは[m2/s3])。

これらを Kolmogoroff(コルモゴロフ)のマイクロスケールという。この寸法より小さい乱流渦は、流体の

粘性(摩擦)作用により熱に変換されて消滅するため、存在できない。

Kolmogoroff の仮定によれば、距離 x 離れた 2 点間の速度スケール差 dと の比は、x と η の比に比例する。

dp

xm …(9.38)

乱流理論に基づくレイノルズ数は、式(9.35)~式(9.37)を用いて次式のように導かれる。

dxRe …(9.39)

( / ) pm x xRe …(9.40)

3 1/4 1/4[ /( / ) ] ( )pm x xRe …(9.41)

3 /4 1/4 1( / ) ( )p pm xRe …(9.42)

( /4) (1/4) 1

1 (3 /4) (1/4)

p p

pm xRe …(9.43)

( 1)/4 4( 1)/4

3( 1)/4

p p

pm xRe …(9.44)

( 1)/44

3

pxRe m …(9.45)

代表寸法 x に固体粒子径 dp をとると、粒子レイノルズ数 Repを得る。

4p

p 3 ( 1)/4d

Re m p  …(9.46)

上式をもとの式(9.34)に代入すると、乱流理論に基づく固液間物質移動式を得る。

4p 1/332

dSh m Sc …(9.47)

単位質量あたりのエネルギー散逸率 ε [W/kg]は、撹拌所要動力 P [W]を用いて次式で表される。

PV

…(9.48)

上式を用いると、撹拌所要動力 P を含む固液間物質移動式を得る。

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40

4p 1/3

3

( / )2

( / )P V d

Sh m Sc …(9.49)

4 2p 1/3

32Pd

Sh m ScV

…(9.50)

Levins & Galstonbury(グラストンベリー)は、撹拌槽での固液間物質移動に Kolmogoroff 理論を適用した次

式を報告している。

1/3 4/3 0.62 1/3

p2 0.5( )Sh d Sc …(9.51)

佐野らは、固体粒子の形状因子を考慮した次式を報告している。

1/3 4/3 4/3 1/3

p c[2 0.4( ) ]Sh d Sc …(9.52)

ただし、 c はカルマンの形状係数[-]。

菊地らは、高粒子濃度に対応した次式を報告している。

1/3 4/3 0.63 1/3

p2 0.47( )Sh d Sc …(9.53)

浅井らは、シングルミクロン寸法の微粒子に対応した次式を報告している。

5.8 1/3 4/3 8.58 1/3 5.8 1/5.8

p[2 {0.61( ) } ]Sh d Sc …(9.54)

表面集積速度係数 krは、アレニウス型の温度依存式であり、一部の報告例に限られる。

(硫酸銅一水和物、谷本ら) 3

7r

12.3 104.87 10 expkRT

…(9.55)

(過塩素酸ナトリウム、城塚・豊倉) 3

11r

16.9 104.6 10 expkRT

…(9.56)

(硫酸カリウム、石井・藤田) 3

11r

17.2 101.24 10 expkRT

…(9.57)

③完全浮遊撹拌速度 撹拌槽内のすべての固体粒子が槽底から離れて流動している状態を完全浮遊状態

という。なお、完全混合状態とは異なる。実験的には、Zwietering(ツビータリング、ツヴァイタリング)

の定義「固体粒子が 1 個も槽底に 1~2 秒以上留まっていない状態」を目視により判断し、そのときの撹

拌回転数 NJS [1/s]を測定する。

Zwietering によれば、完全浮遊条件を満たす撹拌回転数 NJS [1/s]は、次式で与えられる。

0.450.10 0.20 0.13p L

JS 0.85

( Δ )S d g XN

d …(9.58)

ただし、dは撹拌翼径[m](原報の記号は翼径D、槽径Tであるので注意)、Sは装置形状の幾何学的因子[-]、

X は懸濁率(=粒子重量/液重量)[-]、 ρ は固体と液体の密度差(=ρS-ρL)[kg/m3]。

上式のパラメータ S は、下図より読み取る。

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41

図8 装置形状因子 S と槽径-翼径比(D/d)の関係 31,36)

参考文献

1)新潟大学工学部化学システム工学科編(山際和明著); 機械的分離工学, 第 3 部撹拌と混合

2)S. Nagata; Mixing, John Wiley & Sons Inc. (1975), Chapter1-3, 6-8

3)山本一夫; 攪拌装置(化学装置設計・操作シリーズ), 化学工業社(1984), 3 章攪拌所要動力と攪拌槽の伝熱

4)寺尾昭二; 撹拌技術の基礎と実際(月刊・化学装置 2008 年 4 月号), 工業調査会(2008), pp.17-59

5)化学工学会監修; 最新ミキシング技術の基礎と応用(化学工学の進歩 42), 三恵社(2008), 1.基礎編

6)加藤禎人; 撹拌槽の操作・設計のための計算法と実験法 改訂増補版, 情報機構(2015), 5 章動力特性

7)藤田重文, 田原浩一, 吉田五一編; 化学装置・機械ハンドブック, 朝倉書店(1967), 9 章撹拌装置

8)化学工学会編; 実用化学装置設計ガイド, 工業調査会(1991), 11.攪拌装置

9)化学工学協会編; 化学工学便覧 改訂四版, 丸善(1978), 18 章撹拌および混合

10)大野光之; 初歩から学ぶ化学装置設計, 工業調査会(2009), 9 章撹拌装置

11)山本一夫, 西野宏; 撹拌技術, 佐竹化学機械工業(1992), 6 章撹拌機の選定手法

12)化学工学会編; 化学工学-解説と演習- 第 3 版, 槇書店(2006), 10 章撹拌・混合

13)加藤禎人; 撹拌槽の操作・設計のための計算法と実験法 改訂増補版, 情報機構(2015), 7 章伝熱特性

14)遠藤一夫; 食品工業の混合と攪拌(食品工学シリーズ 5), 光琳書院(1963), 1.3.3 章攪拌槽内の熱移動

15)D.Q. Kern; Process heat transfer, McGraw-Hill (1950), pp.626-628

16)J.M. Coulson, J.F. Richardson; Chemical Engineering Vol.1, 6ed., Butter-worth Heinemann(2002), Chapter9.8

17)新潟大学工学部化学システム工学科編(山際和明著); 拡散操作Ⅱ ガス吸収,1-3-6 章

18)化学工学会編; 攪拌・混合(化学工学の進歩 24), 槇書店(1990), 3 章気液分散と物質移動

19)川瀬義矩; 生物反応工学の基礎, 化学工業社(1993), 3.バイオリアクターの設計

20)加藤禎人; 撹拌槽の操作・設計のための計算法と実験法 改訂増補版, 情報機構(2015), 8 章異相系の撹

21)高橋幸司; 液体混合の最適設計と操作; テクノシステム(2012), 3 章気液混合

22)藤田重文, 田原浩一, 吉田五一編; 化学装置・機械ハンドブック, 朝倉書店(1967), 7 章抽出装置

23)城塚 正, 平田 彰, 村上 昭彦; 化学技術者のための移動速度論, オーム社(1966), 10.3.2 章

24)平田光穂, 城塚 正; 抽出工学, 日刊工業新聞社(1964), pp.147-158

25)化学工学協会編; 化学工学便覧 改訂五版, 丸善(1988), 11 章抽出

T/D1 10

S

1

10

100

D/C=2D/C=4D/C=7

D/d

S

flat paddle

T/D1 10

S

1

10

100

D/C=3D/C=5D/C=7

D/dS

disc turbine

T/D1 10

S

1

10

100

S

D/d

propeller

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26)吉田文武, 森 芳郎編; 詳論 化学工学Ⅱ「単位操作Ⅱ」, 朝倉書店(1967), 18・17 章液体抽出速度

27)Skelland,A.H.P. & G.G. Ramsay; Ind. Eng. Chem. Res., 26 (1987) 77-81

28)J.D Seader, E.J. Henley, D.K. Roper; Separation Process Principles (3rd Ed.), Wiley (2010), Chapter 8.5.1

29)R.E. Treybal; Mass transfer operations 3rd Ed., McGraw Hill Inc. (1980), Chapter 10

30)G.S. Laddha & T.E. Degaleesan; Transport phenomena in liquid extraction, McGraw Hill Inc. (1976), Chap.11

31)高橋幸司; 液体混合の最適設計と操作; テクノシステム(2012), 5 章固液混合

32)V.W.Uhl, J.B. Gray; Mixing Vol.Ⅲ, Academic press Inc.(1986), Chapter12

33)化学工学協会編; 化学工学便覧 改訂四版, 丸善(1978), 5 章晶析

34)化学工学会編; 攪拌・混合(化学工学の進歩 24), 槇書店(1990), 5 章固液・気固液攪拌と物質移動

35) T. N. Zwietering; “Suspending of solid particles in liquid by agitators”, Chem. Eng. Sci., 8, 244-253 (1958)

36)A. W. Nienow, M. F. Edwards, N. Harnby; Mixing in the Process Industries 2nd Ed., Butterworth-Heinemann

(1997), Chapter16

37)三角隆太; 固液異相系における移動現象とその設計, 第 68 回粉体技術専門講座「基礎から学ぶ実用・

晶析技術」テキスト(2019), 5 章

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問題1

反応槽に液体を仕込み、ジャケットで所定温度まで加熱撹拌した後、回分反応を開始する。反応中は、

コイルで反応熱を除熱して槽内温度を一定に保持する。下記条件で回分反応器の設計計算を行え。

■槽条件および液物性

反応槽 10%皿型鏡板槽

槽径 D 3.0 m

液深 H 4.0 m

撹拌液の密度 ρ 900 kg/m3

撹拌液の粘度 μ 0.10 Pa・s

撹拌液の比熱容量 Cp 1600 J/(kg・K)

撹拌液の熱伝導度 k 0.16 W/(m・K)

■撹拌条件

撹拌翼 6 枚平板タービン翼

翼径 d 1.0 m

翼幅 b 0.25 m

翼角度 θ 90°

翼枚数 np 6

翼段数 N 2

翼取付位置 CN 槽底より 1 m と 2 m

撹拌速度 n 60 rpm (=1/min)

邪魔板 有りまたは無し

邪魔板枚数 nB 4

邪魔板幅Bw 槽径の 10分の 1 (部分邪魔板条件時)

■伝熱条件(ジャケット)

伝熱媒体 スチーム

スチーム凝縮水の密度 ρ 934 kg/m3

スチーム凝縮水の粘度 μ 0.215 mPa・s

スチーム凝縮水の比熱容量 Cpw 4260 J/(kg・K)

スチーム凝縮水の熱伝導度 k 0.58 W/(m・K)

スチーム凝縮水の流量 W 0.5 kg/s

スチームの凝縮温度 T* 130℃

液膜温度 Tfl 130℃

撹拌液の初期温度 T0 25℃

撹拌液の最終温度 Tf 50℃

重力加速度 g 9.81 m/s2

槽壁厚み ℓ 10 mm

槽壁の熱伝導度 kj 20 W/(m・K)

伝熱媒体側の汚れ係数 hs1 10000 W/(m2・K)

撹拌液側の汚れ係数 hs2 5000 W/(m2・K)

粘度補正項 μ/μw 0.5 (撹拌液側・伝熱媒体側)

邪魔板 無し

コイル類 有り

■伝熱条件(コイル)

コイル外径 dco 34 mm

コイル内径 dci 30 mm

コイル径 Dc 1.4 m

撹拌液の保持温度 T 50℃

コイル入口温度 Tin 5℃

コイル出口温度 Tout 20℃

コイル側伝熱媒体の密度 ρ 1000 kg/m3

コイル側伝熱媒体の粘度 μ 0.001 Pa・s

コイル側伝熱媒体の比熱容量 cpw 4200 J/(kg・K)

コイル側伝熱媒体の熱伝導度 k 0.60 W/(m・K)

コイル側伝熱媒体の流速 u 1.0 m/s

コイル管壁の熱伝導度 kc 100 W/(m・K)

撹拌液側の汚れ係数 hs1 5000 W/(m2・K)

伝熱媒体側の汚れ係数 hs2 10000 W/(m2・K)

粘度補正項 μ/μw 0.5 (撹拌液側・伝熱媒体側)

邪魔板 無し

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44

翼取付位置 コイルの内側

(1-1)完全邪魔板条件における撹拌所要動力 P [kW]を動力特性曲線の読みより求めよ。

(1-2)邪魔板無しの場合の撹拌所要動力 P0 [kW]を永田の式より求めよ。

(1-3)邪魔板無しの場合の撹拌所要動力 P0 [kW]を亀井・平岡の式より求め、永田式の結果と比較せよ。

(1-4)邪魔板有りの場合の最大撹拌所要動力 Pmax [kW]を永田の式より求めよ。

(1-5)邪魔板有りの場合の最大撹拌所要動力 Pmax [kW]を亀井・平岡の式より求め、永田式の結果と比較せ

よ。

(1-6)(1-4)と(1-5)の結果の内、より安全側にある値を採用し、原動機(モーター)の規格を決定せよ。ただし、

原動機の所要動力は、その他の機械的損失分を含めて撹拌所要動力の 1.3 倍を見積もる。なお、市販原動

機の規格は、次の通りである。0.2, 0.4, 0.75, 1.5, 2.2, 3.7, 5.5, 7.5, 11, 15, 18.5, 22, 30, 37, 45, 55, 75, 90, 110,

132, 160 kW

(1-7)完全邪魔板条件における邪魔板幅 Bw [m]を永田の式より求めよ。

(1-8)完全邪魔板条件における邪魔板幅 Bw [m]を亀井・平岡の式より求め、永田式の結果と比較せよ。

(1-9)部分邪魔板条件における撹拌所要動力 P [kW]を永田の式より求めよ。

(1-10)部分邪魔板条件における撹拌所要動力 P [kW]を亀井・平岡の式より求め、永田式の結果と比較せよ。

(1-11)邪魔板無しの場合の混合時間 θM0 [s]を求めよ。撹拌所要動力は、永田式の値を用いること。

(1-12)完全邪魔板条件における混合時間 θM [s]を求め、邪魔板無しの結果と比較せよ。

(1-13)ジャケット側の総括伝熱係数 Uj [W/(m2・K)]を一般式より求めよ。槽径比は 1 に近似する。

(1-14)ジャケット側の総括伝熱係数 Uj [W/(m2・K)]を永田の式より求め、一般式の結果と比較せよ。

(1-15)ジャケットよりの加熱時間 τH [h]を求めよ。伝熱面積は、槽形状を考慮して求めること。

(1-16)ジャケットよりの伝熱量 Qj [kW]を求めよ。

(1-17)コイル側の総括伝熱係数 Uc [W/(m2・K)]を一般式より求めよ。管径比は 1 に近似する。

(1-18)コイル側の総括伝熱係数 Uc [W/(m2・K)]を永田の式より求め、一般式の結果と比較せよ。

(1-19)コイルの所要伝熱面積 Ac [m2]を求めよ。総括伝熱係数は、一般式の値を用いること。

(1-20)コイルの巻き数 Nc [-]を整数値で求めよ。小数点以下を切り上げること。

答(1-1)10.8 kW, (1-2)3.10 kW, (1-3)3.68 kW, +18.9%, (1-4)21.1 kW, (1-5)13.1 kW, -37.9%, (1-6)30 kW, (1-7)0.39

m, (1-8)0.46 m, +16%, (1-9)11.8 kW, (1-10)13.1 kW, +11.2%, (1-11)44.5 s, (1-12)17.0 s, -61.7%, (1-13)101

W/(m2・K), (1-14)114 W/(m2・K), +12.1%, (1-15)38.0 min, (1-16)466 kW, (1-17)336 W/(m2・K), (1-18)309 W/(m2・

K), -7.98%, (1-19)3.90 m2, (1-20)9

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問題2

(2-1)翼回転数一定の条件で撹拌所要動力を半分に減らしたい。現在使用中の翼径が 60 cm であるとき、

翼径を何 cm に変更すればよいか。整数値で答えよ。動力数と液密度は一定であるものとする。

(2-2)小型試験機の撹拌翼径を液量あたりの撹拌所要動力(P/V)一定の条件で 8 倍にスケールアップすると

き、実機の撹拌回転数は小型試験機の何倍になるか。小数第 2 位まで答えよ。レイノルズ数は十分に大

きく、完全邪魔板条件が成り立つものとする。

(2-3)槽径 D1=1.25 m の円筒容器に液深 H1=1.30 m まで水を仕込み、翼径 d1=0.500 m、翼幅 b1=8.00 cm の 2

枚羽根パドル翼を用いて回転数 n1=120 rpm (120 min-1)で撹拌を行う試験機がある。この試験機を槽径

D2=2.50 mの実機にスケールアップする。ただし、水の密度 ρ=1000 kg/m3と粘度 μ=0.001 Pa・sは一定とし、

完全邪魔板条件を仮定する。実機の翼径 d2 [m]、翼幅 b2 [m]、液深 H2 [m]、液量 V2 [m3]をそれぞれ求めよ。

(2-4)前問において、液量あたりの撹拌所要動力(P/V)1 を一定としてスケールアップした場合の実機の撹拌

所要動力 P2 [kW]、撹拌回転数 n2 [rpm]、翼先端速度 u2 [m/s]をそれぞれ求めよ。試験機の撹拌所要動力

P1 は 0.434 kW とする。

答(2-1)52 cm, (2-2)0.25 倍, (2-3)d2 =1.00 m, b2 =0.160 m, H2=2.60 m, V2 =12.8 m3, (2-4)P2 =3.47 kW, n2 =75.6

rpm, u2=3.96 m/s

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問題3

下記条件で通気撹拌装置の設計計算を行え。

撹拌槽 2:1 半楕円型鏡板槽

邪魔板 有り

槽径 D 2.0 m

液深 H 槽径に同じ

撹拌翼 6 枚平板タービン翼

翼径 d 0.66 m

撹拌速度 n 完全分散撹拌速度に同じ

通気速度 Qg/V 0.5 vvm

ガス供給器 リングスパージャー

水の密度 ρ 1000 kg/m3

水の粘度 μ 0.001 Pa・s

空気の粘度 μg 1.82×10-5 Pa・s

水-空気間の界面張力 σ 72 mN・m

空気の酸素分圧 pO2 0.21×105 Pa

水の分子量 18

水に対する酸素のヘンリー定数 H’ 4.44×109 Pa/

モル分率

※通気速度[vvm] (gas volume per liquid volume per minute)=(1 分間あたりの空気量 Qg [m3/min])÷(液体積 V

[m3])。1 分間に液体積の何倍の空気が吹き込まれるかを表す。

(3-1)完全分散撹拌速度 nCD [rpm]を求めよ。

(3-2)通気時の撹拌所要動力 Pg [kW]を Calderbank の式より求めよ。

(3-3)ガスホールドアップ εg [-]を求めよ。

(3-4)気泡径 dB [mm]を Calderbank の式より求めよ。

(3-5)液側総括物質移動係数 KL [m/s]を求めよ。

(3-6)酸素の液体積あたり吸収速度 NV [mol/(m3・s)]を求めよ。ただし、酸素は水に難溶であり、操作前に酸

素は溶存していないものとする。

答(3-1)117 rpm, (3-2)2.41 kW, (3-3)44.3%, (3-4)5.9 mm, (3-5)3.97 m/s, (3-6)0.806 mol/(m3・s)

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問題4

水に含まれるジエチルアミンを純トルエンで連続抽出する。下記条件でミキサ-セトラ抽出装置の設計

計算を行え。(MKH 単位系で計算せよ。) 連続相(C):水相

分散相(D):トルエン相

水相密度 ρC 997 kg/m3

水相粘度 μC 3.2 kg/(m・h)

トルエン相密度 ρD 875 kg/m3

トルエン相粘度 μD 1.91 kg/(m・h)

界面張力 σ 3.24×105 kg/h2

重力加速度 g 1.27×108 m/h2

水相側拡散係数 D C 4.82×10-6 m2/h

トルエン相側拡散係数 D D 10.69×10-6 m2/h

水相側質量流量 WC 20 t/h

トルエン相側質量流量 WD 24 t/h

水相側ジエチルアミンの初期濃度 xF 35 wt%

水相側ジエチルアミンの最終濃度 xRN 5 wt%

ミキサ容器 2:1 半楕円型鏡板槽

ミキサ槽径 D 0.60 m

液深 H ミキサ槽径に同じ

液体積 V ミキサ容積に同じ

邪魔板の有無 有

撹拌翼形状 平板タービン翼

羽根枚数 np 6

撹拌翼径 d 0.15 m

撹拌速度 n 相分散限界撹拌速度に同じ

翼取付位置 液深の半分

分配係数 m 0.715

m≡(水相中のジエチルアミン濃度)/(トルエン相中

のジエチルアミン濃度)

(4-1)ミキサ容積 VT [m3]を求めよ。

(4-2)分散相側ホールドアップ D [-]を求めよ。

(4-3)平均密度 ρM [kg/m3]と平均粘度 μM [kg/(m・h)]を求めよ。

(4-4)相分散限界撹拌速度 nC [rpm]を求めよ。

(4-5)液体積あたりの撹拌所要動力 PV [kW/m3]を求めよ。

(4-6)平均滞留時間 τ [s]を求めよ。

(4-7)液滴接触界面積 a [m2/m3]を求めよ。表中の適用範囲は無視してよい。

(4-8)平均液滴径 dp [mm]を求めよ。

(4-9)分散相側総括容量係数 KODa [1/h]を求めよ。ただし、滴内流動は無視できるものとする。連続相側境

膜物質移動係数 kC [m/h]の推算には、Barker & Treybal の式を用いること。

(4-10)段効率 EMD [-]を求めよ。

答(4-1)0.184 m3, (4-2)0.578, (4-3)926 kg/m3, 10.0 kg/(m・h), (4-4)354 rpm, (4-5)0.473 kW/m3, (4-6)13.9 s,

(4-7)9912 m2/m3, (4-8)0.350 mm, (4-9)1241 h-1, (4-10)0.893

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解答1

(1-1)Re=ρnd2/μ=(900)(60/60)(1.0)2/0.10=9000

動力特性曲線1の読みより Np≒6 羽根段数 2 段分の動力数 NP=(6)(2)=12

P= Npρn3d5=(12)(900)(60/60)3(1.0)5=10800=10.8 kW

(1-2)相当羽根幅 b’=npbN/2=(6)(0.25)(2)/2=1.5 m

Re=ρnd2/μ=(900)(60/60)(1.0)2/0.10=9000

A=14+(b/D)[670{(d/D)-0.6}2+185]=14+(1.5/3.0)[(670){(1.0/3.0)-0.6}2+185]=130.3

B=10 2[1.3 4{( / ) 0.5} 1.14( / )]b D d D =10 2[1.3 (4){(1.5 /3.0) 0.5} 1.14(1.0 /3.0)] =8.317 p=1.1+4(b/D)-2.5[(d/D)-0.5]2-7(b/D)4=1.1+(4)(1.5/3.0)-(2.5){(1.0/3.0)-0.5}2-(7)(1.5/3.0)4=2.593

Np0=A/Re+B[(103+1.2Re0.66)/(103+3.2Re0.66)]p(H/D){0.35+(b/D)}(sinθ)1.2

Np0=(130.3/9000)+(8.317)[(103+(1.2)(9000)0.66)/(103+(3.2)(9000)0.66)]2.593(4.0/3.0){0.35+(1.5/3.0)}(sin90°)1.2=3.440

P0= Npρn3d5=(3.440)(900)(60/60)3(1.0)5=3096≒3.10 kW

(1-3)β=2[ln(D/d)]/[(D/d)-(d/D)]=2ln(3.0/1.0)/[(3.0/1.0)-(1.0/3.0)]=0.8239

η=0.711[0.157+{npln(D/d)}0.611]/[np0.52{1-(d/D)2}]=0.711[0.157+{6ln(3.0/1.0)}0.611]/[60.52{1-(1.0/3.0)2}]=1.046

CL=0.215ηnp(d/H)[1-(d/D)2]+1.83(bsinθ/H)[np/(2sinθ)]1/3

CL=(0.215)(1.046)(6)(1.0/4.0)[1-(1.0/3.0)2]+(1.83)(0.25sin90°/4.0)[6/(2sin90°)]1/3=0.4648

Red=ρnd2/μ=(900)(60/60)(1.0)2/0.10=9000

ReG=[{πηln(D/d)}/(4d/βD)]Red=[{π(1.046)ln(3.0/1.0)}/[(4)(1.0)/{(0.8239)(3.0)}]](9000)=20077

γ=[η{ln(D/d)}/(βD/d)5]1/3=[(1.046){ln(3.0/1.0)}/{(0.8239)(3.0)/(1.0)}5]1/3=0.2318

X=γnp0.7bsin1.6θ/H=(0.2318)(60.7)(0.25)(sin90°)1.6/4.0=0.05078

Ct=[(1.96X1.19)-7.8+(0.25)-7.8]-1/7.8=[{(1.96)(0.05078)1.19}-7.8+(0.25)-7.8]-1/7.8=0.05649

Ctr=23.8(d/D)-3.24(bsinθ/D)-1.18X-0.74=(23.8)(1.0/3.0)-3.24(0.25sin90°/3.0)-1.18(0.05078)-0.74=142452=1.424×105

f∞=0.0151(d/D)Ct0.308=(0.0151)(1.0/3.0)(0.05649)0.308=0.002077

m=[(0.71X0.373)-7.8+(0.333)-7.8]-1/7.8=[{(0.71)(0.05078)0.373}-7.8+(0.333)-7.8]-1/7.8=0.2317

f=CL/ReG+Ct[{(Ctr/ReG)+ReG}-1+(f∞/Ct)1/m]m

f=(0.4648/20077)+(0.05649)[{(142452/20077)+20077}-1+(0.002077/0.05649)1/0.2317]0.2317=0.005728

NP0=[(1.2π4β2)/{8d3/(D2H)}]f=[{(1.2)(π4)(0.8239)2}/{(8)(1.0)3/{(3.0)2(4.0)}}](0.005728)=2.045

羽根段数 2 段分の動力数 NP0=(2.045)(2)=4.090

P0= Npρn3d5=(4.090)(900)(60/60)3(1.0)5=3681≒3.68 kW

永田式の結果と比較すると、{(3681-3096)/3096}(100)=18.89≒+18.9%

(1-4)Rec=104(1-sinθ)[{25/(b/D)}{(d/D)-0.4}2+(b/D)/{0.11(b/D)-0.0048}] ※b=相当羽根幅 b’

Rec=104(1-sin90°)[{25/(1.5/3.0)}{(1.0/3.0)-0.4}2+(1.5/3.0)/{0.11(1.5/3.0)-0.0048}]=10.18

NPmax=A/Rec+B(H/D)(0.35+(b/D))=(130.3/10.18)+(8.317)(4.0/3.0){0.35+(1.5/3.0)}=23.42

Pmax= NPmaxρn3d5=(23.42)(900)(60/60)3(1.0)5=21078≒21.1 kW

(1-5)np0.7b/d=(60.7)(0.25/1.0)=0.8762 ※b は、換算前の値を用いる(永田式ではないため)。

NPmax=8.3(np0.7b/d)=(8.3)(0.8762)=7.272

羽根段数 2 段分の動力数 NPmax=(7.272)(2)=14.54

Pmax= NPmaxρn3d5=(14.54)(900)(60/60)3(1.0)5=13086≒13.1 kW

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永田式の結果と比較すると、{(13086-21078)/21078}(100)=-37.91≒-37.9%

(1-6)安全を見込んで永田式の推算値 21.1 kW を採用する。原動機の所要動力は、(21.1)(1.3)=27.4 kW。原

動機の規格は、30 kW。

(1-7)(Bw/D)1.2nB=0.35

Bw=D(0.35/nB)1/1.2=(3.0)(0.35/4)1/1.2=0.393≒0.39 m

(1-8)(Bw/D)nB0.8=0.27(NPmax)0.2

Bw=0.27D(nB)-0.8(NPmax)0.2=(0.27)(3.0)(4)-0.8(14.54)0.2=0.456≒0.46 m

永田式の結果と比較すると、{(0.456-0.393)/0.393}(100)=16.03≒+16%

(1-9)(Bw/D)1.2nB=[4/{(3.0)(1/10)}]1.2(4)=89.5≠0.35 より、部分邪魔板条件。

NP∞=B(0.6/1.6)p=(8.317)(0.6/1.6)2.593=0.6537

(NPmax-NP)/(NPmax-NP∞)=[1-1.29(Bw/D)1.2nB]2

NP=NPmax-(NPmax-NP∞)[1-1.29(Bw/D)1.2nB]2

NP=(23.42)-(23.42-0.6537)[1-1.29{(3.0)(1/10)/3.0}1.2(4)]2=13.06

P= NPρn3d5=(13.06)(900)(60/60)3(1.0)5=11754≒11.8 kW

(1-10)(Bw/D)nB0.8=[4/{(3.0)(1/10)}](4)0.8=40.41

0.27(NPmax)0.2=(0.27)(14.54)0.2=0.4611≠40.41 より、部分邪魔板条件。

x=4.5(Bw/D)nB0.8(H/D)/(NPmax)0.2+NP0/NPmax=(4.5)[4/{(3.0)(1/10)}](4)0.8(4.0/3.0)/(14.54)0.2+(4.090/14.54)=142.2

NP=[(1+x-3)-1/3]NPmax={1+(142.2)-3}-1/3(14.54)=14.53

P= NPρn3d5=(14.53)(900)(60/60)3(1.0)5=13077≒13.1 kW

永田式の結果と比較すると、{(13.07-11.75)/11.75}(100)=11.23≒+11.2%

(1-11)Nqd=0.32(np0.7b/d)0.25(D/d)0.34NP

0.5=(0.32){(6)0.7(0.25/1.0)}0.25(3.0/1.0)0.34(3.440)0.5=0.8342

1/(nθM0)=0.092[(d/D)3Nqd+0.21(d/D)(NP/Nqd)0.5][1-exp{-13(d/D)2}]

1/(nθM0)=(0.092)[(1.0/3.0)3(0.8342)+(0.21)(1.0/3.0)(3.440/0.8342)][1-exp{-13(1.0/3.0)2}]=0.02246

θM0=1/{(60/60)(0.02246)}=44.52≒44.5 s

(1-12)Nqd=0.32(np0.7b/d)0.25(D/d)0.34NPmax

0.5=(0.32){(6)0.7(0.25/1.0)}0.25(3.0/1.0)0.34(23.42)0.5=2.176

1/(nθM)=0.092[(d/D)3Nqd+0.21(d/D)(NPmax/Nqd)0.5][1-exp{-13(d/D)2}]

1/(nθM)=(0.092)[(1.0/3.0)3(2.176)+(0.21)(1.0/3.0)(23.42/2.176)][1-exp{-13(1.0/3.0)2}]=0.05862

θM=1/{(60/60)(0.05862)}=17.05≒17.0 s

邪魔板無しの結果と比較すると、{(17.05-44.52)/44.52}(100)=-61.70≒-61.7%

(1-13)(撹拌液側)hjD/k=K(ρnd2/μ)α(Cpμ/k)β(μ/μw)γf

hjD/k=0.54(ρnd2/μ)2/3(Cpμ/k)1/3(μ/μw)0.14(1)

hjD/k=(0.54){(900)(60/60)(1.0)2/0.10}2/3{(1600)(0.10)/0.16}1/3(0.5)0.14=2120

hj=(2120)(0.16)/(3.0)=113.0

(伝熱媒体側)h=0.925k(ρ2g/μΓ)1/3=0.925k(πρ2gD/μW)1/3

h=(0.925)(0.58)[π(934)2(9.81)(3.0)/{(0.000215)(0.5)}]1/3=4875

(総括)1/Uj=1/hj+1/hs1+ℓ/kj+1/hs2+1/h=(1/113.0)+(1/10000)+(0.010)/(20)+(1/5000)+(1/4875)=0.009854

Uj=1/0.009854=101.4≒101 W/(m2・K)

(1-14)(撹拌液側)hjD/k=α(Cpμ/k)1/3(μ/μw)0.14(ρnd2/μ)β1(d/D)β2(ΣCN/NH)β3(ΣbN/D)β4(np)β5(sinθ)β6(H/D)β7

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反応装置工学資料「撹拌」-改訂版 200129 (新潟大学・三上貴司)

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hjD/k=0.54(Cpμ/k)1/3(μ/μw)0.14(ρnd2/μ)2/3(d/D)-0.25(ΣCN/NH)0.15(ΣbN/D)0.15(np)0.15(sinθ)0.5(H/D)0

hjD/k=(0.54){(1600)(0.10)/0.16}1/3(0.5)0.14{(900)(60/60)(1.0)2/0.10}2/3(1.0/3.0)-0.25[(1.0+2.0)/{(2)(4.0)}]0.15{(0.25+

0.25)/3.0}0.15(6)0.15(sin90°)0.5(1)=2408

hj=(2408)(0.16)/(3.0)=128.4

(伝熱媒体側)h=4875

(総括)1/Uj=1/hj+1/hs1+ℓ/kj+1/hs2+1/h=(1/128.4)+(1/10000)+(0.010)/(20)+(1/5000)+(1/4875)=0.008793

Uj=1/0.008793=113.7≒114 W/(m2・K)

一般式の結果と比較すると、{(113.7-101.4)/101.4}(100)=+12.13≒+12.1%

(1-15)Aj=πD2[(H-0.194D)/D+0.630]=(π)(3.0)2[{4.0-(0.194)(3.0)}/3.0]+0.630]=50.02

M=ρV=πρD3[{(H-0.194D)/(4D)}+0.063]= (π)(900)(3.0)3[[{4.0-(0.194)(3.0)}/{(4)(3.0)}]+0.063]=26553

τH=ln[(T*-T0)/(T*-Tf)]/[(UjAj)/(MCp)]

τH=ln[(403-298)/(403-323)]/[(101.4)(50.02)/{(26553)(1600)}]=2277 s=37.95 min≑38.0 min

(1-16)Qj=MCp(Tf-T0)/τH=(26553)(1600)(323-298)/2277=466455=466 kW

(1-17)(撹拌液側)hcdco/k=K(ρnd2/μ)α(Cpμ/k)β(μ/μw)γf

hcdco/k=0.17(ρnd2/μ)2/3(Cpμ/k)0.37(d/D)0.1(dco/D)0.5

hcdco/k=(0.17){(900)(60/60)(1.0)2/0.10}2/3{(1600)(0.10)/0.16}0.37(1)(1.0/3.0)0.1(0.034/3.0)0.5=90.38

hc=(90.38)(0.16)/(0.034)=425.3

(伝熱媒体側)hdci/k=0.023(dciuρ/μ)0.8(Cpμ/k)0.33(μ/μw)0.14(1+3.5dci/Dc)

hdci/k=(0.023){(0.030)(1.0)(1000)/0.001}0.8{(4200)(0.001)/0.60)}0.33(0.5)0.14{1+(3.5)(0.030)/1.4}=162.7

h=(162.7)(0.60)/(0.030)=3254

(総括)1/Uc=1/hc+1/hs1+ℓ/kc+1/hs2+1/h=(1/425.3)+(1/5000)+(0.002)/(100)+(1/10000)+(1/3254)=0.002978

Uc=1/0.002978=335.7≒336 W/(m2・K)

(1-18)(撹拌液側)hcD/k=α(Cpμ/k)1/3(μ/μw)0.14(ρnd2/μ)β1(d/D)β2(ΣCN/NH)β3(ΣbN/D)β4(np)β5(sinθ)β6(H/D)β7

hcD/k=0.825(Cpμ/k)1/3(μ/μw)0.14(ρnd2/μ)0.56(d/D)-0.25(ΣCN/NH)0(ΣbN/D)0.15(np)0.15(sinθ)0(dco/D)-0.3

hcD/k=(0.825){(1600)(0.10)/0.16}1/3(0.5)0.14{(900)(60/60)(1.0)2/0.10}0.56(1.0/3.0)-0.25{(0.25+0.25)/D}0.15(6)0.15(0.03

4/3.0)-0.3=7186

hc=(7186)(0.16)/(3.0)=383.2

(伝熱媒体側)h=3254

(総括)1/Uc=1/hc+1/hs1+ℓ/kc+1/hs2+1/h=(1/383.2)+(1/5000)+(0.002)/(100)+(1/10000)+(1/3254)=0.003236

Uc=1/0.003236=308.9≒309 W/(m2・K)

一般式の結果と比較すると、{(308.9-335.7)/335.7}(100)=-7.983≒-7.98% (1-19)Qc=wcpw(Tout-Tin)=ρwuScCpw(Tout-Tin)=(πρwudci

2/4)Cpw(Tout-Tin)

Qc=(π)(1000)(1.0)(0.030)2(1/4)(4200)(293-278)=44532

Tlm=[(T-Tin)-(T-Tout)]/ln[(T-Tin)/(T-Tout)]=[(323-278)-(323-293)]/ln[(323-278)/(323-293)]=36.99

Ac=Qc/(Uc Tlm)=44532/[(308.9)(36.99)]=3.897≒3.90 m2

(1-20)Nc= Ac/(π2dcoDc)=3.897/{(π2)(0.034)(1.4)}=8.2≑9

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解答2

(2-1)P2=(1/2)P1, n2=n1, d1=0.6 m

P2/P1= Npρn13d1

5/ Npρn23d2

5=n23d2

5/n13d1

5= n13d2

5/n13(0.6)5

(1/2)P1/P1 =d25/0.65

d2=(0.6)(1/2)1/5=0.522 m≒52 cm

(2-2)d2=8d1

P/V 一定の条件:n2/n1=(d1/d2)2/3=(d1/8d1)2/3=(2-3)2/3=2-2=0.25 倍

(2-3)形状比一定の条件:d2/d1=D2/D1、b2/b1=D2/D1、H2/H1=D2/D1

d2=d1(D2/D1)=(0.500)(2.50/1.25)=1.00 m

b2=b1(D2/D1)=(0.0800)(2.50/1.25)=0.160 m

H2=H1(D2/D1)=(1.30)(2.50/1.25)=2.60 m

V2=π(D2/2)2H2=π(2.50/2)2(2.60)=12.76≒12.8 m3

(2-4)P/V 一定の条件:P2=P1(d2/d1)3=(434)(1.00/0.500)3=3472≒3.47 kW

(d2/d1)3=(n23d2

5)/(n13d1

5)

(n2/n1)3=(d1/d2)2

n2=n1 (d1/d2)2/3=(120)(0.500/1.00)2/3=75.59≒75.6 rpm

(2-5)u2= πn2d2= π(75.6/60)(1.00)=3.958≒3.96 m/s

解答3

(3-1)V=0.2708πD3=(0.2708)(23)π=2.166π

Qg=(vvm)V=(0.5)( 2.166π)=1.083πm3/min=(1.083/60)π=0.01805π

nCD=3Qg0.5D0.25/d2=(3)(0.01805π)0.5(2.0)0.25/(0.66)2=1.950=117.0 rpm≒117 rpm

(3-2)Re=ρnd2/μ=(1000)(1.950)(0.66)2/0.001=8.494×105(乱流)。動力特性曲線 6 を読み取ると Np≒6。

P0= Npρn3d5=(6)(1000)(1.950)3(0.66)5=5571

NA=Qg/nd3=0.01805π/{(1.950)(0.66)3}=0.1011(>0.035)

Pg/P0=0.62-1.85NA=0.62-(1.85)(0.1011)=0.4329

Pg=0.4329P0=(0.4329)(5571)=2411≒2.41 kW

(3-3)Ug=Qg/A=0.01805π/{π(2.0/2)2}=0.01805

εg=96(Pg/V)1/3Ug0.68=(96)(2411/2.166π)1/3(0.01805)0.68=44.30≒44.3%

(3-4)dB=(4.15)[σ0.6/{(Pg/V)0.4ρ0.2}]εg0.5(μg/μ)0.25+0.0009

dB=(4.15)[(0.072)0.6/[2176/{(2411/2.166π)0.4(1000)0.2}]](0.4430)0.5(0.0000182/0.001)0.25+0.0009

dB=0.00592 m≒5.9 mm

(3-5)KLa=0.435(Pg/V)0.62Ug0.42 a=0.55(Pg/V)0.4Ug

0.5

KL={0.435(Pg/V)0.62Ug0.42}/{0.55(Pg/V)0.4Ug

0.5}=(0.435/0.55)(Pg/V)(0.62-0.4)Ug(0.42-0.5)

KL=(0.435/0.55)(Pg/V)0.22Ug-0.08=(0.435/0.55)(2411/2.166π) 0.22(0.01805)-0.08=3.967≒3.97 m/s

(3-6)酸素が溶解した水の全モル濃度 CT [mol/m3]=水中の溶存酸素モル濃度 CO2+水のモル濃度 CH2O

酸素は水に難溶であることから CO2<<CH2O、CT≒CH2O

酸素飽和濃度 C*=CTxA≒CH2OxA

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CH2O=ρ/M=1000/(18×10-3)=5.556×104 mol/m3

ヘンリーの法則より pA=H’xA

xA=(0.21×105)/(4.44×109)=4.73×10-6

C*= CH2OxA =(5.556×104)(4.73×10-6)=0.2628 mol/m3

操作前に酸素は溶存していないので C=0

NV=KLa(C*-0)=[0.435(Pg/V)0.62Ug0.42](0.2628-0)=(0.435)(2411/2.166π)0.62(0.01805)0.42(0.2628)

NV=0.8062 mol/(m3・s)≒0.806 mol/(m3・s)

解答4

(4-1)VT=0.2708πD3=(0.2708)(0.60)3π=0.05849π=0.1837≒0.184 m3 (184 ℓ)

(4-2) D=QD/(QC+QD)=[(24×103)/875]/[(20×103)/997+(24×103)/875]=0.5775≒0.578

(4-3)ρM=ρC C+ρD D=(997)(1-0.5775)+(875)(0.5775)=926.5≒926 kg/m3

μM=(μC/ C)[1+1.5μD D/(μC+μD)]=[3.2/(1-0.5775)][1+(1.5)(1.91)(0.5775)/(3.2+1.91)]=10.02≒10.0 kg/m/h

(4-4)σ=(3.24×105)kg/h2(1/36002)h2/s2=0.025 kg/s2

g=(1.27×108)m/h2(1/36002)h2/s2=9.799 m/s2

μM=(10.02)kg/(m・h)(1/3600)h/s=2.783×10-3 kg/(m・s)

nC2ρMd/(g ρ)=C2(D/d)2α D

0.106[μM2σ/{d5ρMg2( ρ)2}]0.084

nC=[C2(D/d)2α D0.106[μM

2σ/{d5ρMg2( ρ)2}]0.084[g ρ/(ρMd)]]0.5 nC=[(0.95)2(0.600/0.15)(2)(1.38)(0.5775)0.106[(2.783×10-3)2(0.025)/{(0.15)5(926)(9.80)2(997 - 875)2}]0.084[(9.80)(997

-875)/{(926)(0.15)}]]0.5=5.906≒5.91 s-1=354 rpm

(4-5)Re=ρnd2/μM=(926)(5.906)(0.15)2/(2.783×10-3)=44215≒4.42×104 動力特性曲線より Np≒6

PV=NPρn3d5/VT=(6)(926)(5.906)3(0.15)5/0.1837=473.1=0.473 kW/m3

(4-6)τ=VT/(QC+QD)=0.1837/[(20×103)/997+(24×103)/875]=3.868×10-3 h=13.92≒13.9 s

(4-7)We=ρCn2d3/σ=(997)(5.906)2(0.15)3/0.025=4694

a=100 DWe0.6/(1+9 D)d=(100)(0.5775)(4694)0.6/[{1+(9)(0.5775)}(0.15)]=9912≒9.91×103 m2/m3

(4-8)dp=6 D/a=(6)(0.5775)/9912=3.495×10-4 m=0.350 mm (4-9)kD=(dp/6τ)ln[1/[1-{1-exp(-4π2)D Dτ/dp

2}0.5]]

kD=[3.495×10-4/(6×3.868×10-3)]ln[1/[1-[1-exp{(-4π2)(10.69×10-6)(3.868×10-3)/(3.495×10-4)2}]0.5]]

kD=(0.01505)ln[1/[1-{1-exp(-13.36)}0.5]]=0.2114≒0.211 m/h kC=(0.052)(ρCnd2/μC)0.833[μC/(ρCDC)]0.5(DC/DT)

kC=(0.052)[(997)(5.906)(3600)(0.15)2/3.2]0.833[3.2/{(997)(4.82×10-6)}]0.5(4.82×10-6/0.60)=0.2197≒0.220 m/h

KOD=1/[(1/kD)+(m/kC)]=1/[(1/0.2114)+(0.715/0.2197)]=0.1252 m/h

KODa=(0.1252)(9912)=1241≒1.24×103 h-1

(4-10)KODaV/QD=(1241)(0.1837)/[(24×103)/875]=8.311

EMD=(KODaV/QD)/[1+(KODaV/QD)]=8.311/(1+8.311)=0.8926≒0.893

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令和 2 年 1 月 9 日作成

令和 2 年 1 月 10 日改訂

令和 2 年 1 月 29 日改訂