influenza virus...influenza virus (オルソミクスウイルス科)...

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Vol.30,No.2( 21 2 ごあんない ご案 基礎講習会報告 シーズン(20082009 多映 インフルエンザ ばくとおやじの知識箱 /Dermatiaceousfungalinfection( バイキン Quiz (敬称は略させていただきました) 今月の定期講習会は 2月24日(火) 大阪医療技術学園専門学校で開催いたします。 1

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Page 1: Influenza Virus...Influenza Virus (オルソミクスウイルス科) ウイルスの形態(RNA ウイルス) 3 インフルエンザウイルスの構造 ヘマグルチニン:hemagglutinin:HA

Vol.30, No.2(平成 21 年 2 月号)

耳金白

ごあんない

赤木 征宏 ・ 今月の定期講習会 ・ 白金耳ご購読のご案内(別紙)

基礎講習会報告

・ 『今シーズン(2008~2009) 和泉 多映子 のインフルエンザ情報』

ばくとおやじの知識箱

・ 黒色真菌感染症 / Dermatiaceous fungal infection(後編) 佐子 肇

浅田 薫 バイキン Quiz

(敬称は略させていただきました)

今月の定期講習会は

2月24日(火) 大阪医療技術学園専門学校で開催いたします。

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Page 2: Influenza Virus...Influenza Virus (オルソミクスウイルス科) ウイルスの形態(RNA ウイルス) 3 インフルエンザウイルスの構造 ヘマグルチニン:hemagglutinin:HA

2

んな い

講習会

テーマ : 『感染症検査の更なる迅速化 ~外来診療に貢献できる報告をめざして~』

講 師 : 天理よろづ相談所病院臨床病理部 感染症検査・一般検査 中村 彰宏 先生

日時:平成21年2月24日(火) 18:30~20:00 場所:大阪医療技術学園専門学校 (〒530-0044 大阪市北区東天満 2-1-30) 評価点:専門-20点(会員証をお持ちください) 参加費:会員500円、非会員3000円 連絡先:(財)大阪府警察協会大阪警察病院 赤木 征宏 e-mail:[email protected]

今回は天理よろづ相談所病院の中村先生に、先生の御施設で

実施されている様々な迅速化、効率化のノウハウをご教授頂く

予定です。皆様奮ってご参加ください。

昨年、第 21 回臨床微生物迅速診断研究会総会において

“Turnaround time に挑む”と題したシンポジウムが開催され

ました。Turnaround time とは IT 用語で「システムに処理要

求を指示してから結果出力までに要する時間」のことを言いま

すが、これに挑むということは微生物検査の命題でもある迅速

化であり、最も臨床のニーズが高いものであると考えられま

す。では、実際に臨床のニーズに答え貢献できている検査室は、

どのような方法で迅速かつ正確な情報を臨床に報告している

のでしょうか?

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10月定期講習会報告

~ 今シーズン(2008~2009)のインフルエンザ情報 ~ 市立堺病院 和泉多映子

平成 20 年 11 月 25 日定期講習会で行われた「インフルエンザ」について、インバネス・メ

ディカル・ジャパン(株)水戸部 晶先生の講演内容を報告させて頂きます。 1) インフルエンザの基礎知識……ウィルスの構造と役割 2) インフルエンザの最近の話題 ・H5N1インフルエンザウィルス ・インフルエンザワクチンについて ・薬剤耐性ウィルス発生の基序

1) インフルエンザの基礎知識……ウィルスの構造と役割 プリオン ウイルス クラミジア リケッチア マイコプラズマ 細菌 真菌 原虫・寄生虫

0.002μm 0.01-0.5 0.3-2 0.5-2 0.3 1-5 3-10 10μm以上 ←植物細胞→ 動物細胞 ←←←←原核細胞→→→→→→→→ ←真核細胞→ ←←←←生きた細胞内のみ増殖可能→→ ←←←←人工培地でのみ増殖可能→→→ ← 抗生物質が無効→ ←←←←←←← 抗生物質が有効 →→→→→→→ (たん白質) ←←←←DNA、RNA両方を持つ→→→→→→→→→→→

BSE インフルエンザ CJD 肝炎、エイズ

( ↑DNA、RNAどちらかのみ) Influenza Virus (オルソミクスウイルス科)

★ウイルスの形態(RNAウイルス)

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インフルエンザウイルスの構造

ヘマグルチニン:hemagglutinin:HA インフルエンザウイルスを赤血球と反応させると、赤血球の凝集が起こる。これは インフルエンザウイルスの表面にあるスパイクが赤血球と結合する性質があるためで、

このスパイクを赤血球凝集素(ヘマグルチニン:hemagglutinin:HA)という。 感染する ときに、呼吸器系細胞の表面のシアル酸レセプターとしっかりと結び付く。現在までに

報告されているインフルエンザウイルスのヘマグルチニンには 16 種類あり、ヒトではH1、H2、H3、(H5、H7、H9)の5種類である。 核たん白質:NucleoProtein:NP ウイルスの遺伝子を包むタンパク質。A、B、Cの 3つの型がある。 これにより A型、B型、C型等のインフルエンザウイルスと決定される。 イムノクロマトグラフ法のほとんどは核たん白質を検出する。 ノイラミニダーゼ:NA 感染した細胞内で増殖したインフルエンザウイルスは、紐に繋がった数珠玉のように ゾロゾロ細胞から出てくる。紐に繋がっている限り、ウイルスは一人前になれないため、

この紐を切って解放する必要がある。ノイラミニダーゼはこの紐を切るハサミの役目を

している。 このハサミの役目を阻止する薬(タミフル:リン酸オセルタミビル、 リレンザ:ザナミビル)が開発され、日本では非常に多く処方されている。 NAは1~9の亜型に分類

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インフルエンザウイルスの感染、増殖、治療薬 感染者からの飛沫や空気中に浮遊する乾燥したウイルス粒子により感染する。

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<A型インフルエンザ 亜型分布>

HAによる細胞表面への結合 NAによる放出

(タミフル・リレンザ

の作用点)

M2による脱核 (アマンタジン の作用点)

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歴史

A型インフルエンザの変異

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※“グローバルサーベイランス”の重要性

インフルエンザとは? 毎年冬季に数十万人から百数十万人が感染するカゼとは異なるインフルエンザウイルスに よる 感染症である。

症状は、高熱(38℃以上)、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感、鼻汁、のどの痛みなどの 症状が5日~1週間ほど続く。

高齢者などのハイリスク群では、気管支炎、肺炎など併発し、死亡する例も見られる。 近年、インフルエンザに対して有効な治療薬及び迅速検査薬が開発され、日本では迅速検 査薬による診断と治療薬投与がセットで実施され、急速に市場が拡大した。

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感染経路

カゼとの違い

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インフルエンザウイルス量と症状の推移

-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

発症後の日数

症例A(ウイルス量)

症例B(ウイルス量)

症状

抗体価

迅速検査実施期間

発症後48時間

発症時間と感度 合併症

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<12 12-24 24-48 48-96

感度

(%) .

発病後経過時間 (hr)

A型(香港型) B型

検査実施

陽性

検査薬の

検出限界

陰性

感染 発症

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ハイリスク群 ・65歳以上の高齢者 ・妊娠 28週以降の妊婦 ・慢性肺疾患 ・心疾患 ・腎疾患 ・代謝異常 ・免疫不全状態の患者

今シーズンの流行状況 インフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は、2008年第 41週以降増加が続いており、第 45 週の報告数は 0.17(患者発生報告数 811)となったが、まだ地域的には注意報レベル、警報レベルを超えている保健所地域は存在しない。都道府県別の定点当たり報告数は、山梨県

(3.23)、大阪府(0.77)、徳島県(0.68)、兵庫県(0.38)、沖縄県(0.33)、和歌山県(0.32)の順である。 第 36週以降、これまでにインフルエンザウイルスの検出は A/H1(Aソ連)型 4件、 A/H3(A香港)型 15件、B型 27件が報告されている (流行の兆しはあるが地域的に注意報・警報レベルを超える保健所地域は存在しない)

インフルエンザウイルスの検出法 1.ウイルス分離培養同定法 (感度:2~101 PFU/Test) ウイルスの検出法としては、ゴールドスタンダードで、検出感度も高い。生きている

ウイルスを検出する。A, B型鑑別診断(サブタイプも含め)が可能。測定結果が 確定するまで 2週間程度必要。

2.RT-PCR(感度:Nested: 2~101, 1st: 103~104 PFU/Test) (nested RT-PCR法) 検出感度の高い準ゴールドスタンダード法。RNAを検出する。特別な設備が 必要であり手技が複雑で、コスト高。

3.イムノクロマトグラフ法 (感度:103~106 PFU/Test) 検出感度は高くないが、結果が 10-15分で得られるため急速に普及。 核たん白質(NP)

を検出する。 インフルエンザウイルス RNAウイルスで、核たんぱく質(NP)とマトリックスたんぱく質(M1)の抗原性の 違いから A型、B型及び C型に分類される。A型及び B型感染時は症状が重く、

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抗ウイルス薬も開発されている。 A型は、ウイルス表面のHA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミニダーゼ)の抗原性の

違いによる亜型が多数存在する。

インフルエンザの治療薬 2001年2月にインフルエンザA型、B型双方に効果が期待できるとして、下記の薬剤

が保険適用された。最近の調査で、タミフルがB型に効きにくいことがわかってきた。

HANA

M2

エンベローブ

M1100n

NP & RNA(8本or7本)

迅速診断薬は、NPを検出する。

製品名:「タミフル」(Tamiflu)

一般名:リン酸オセルタミビル

製造元:日本ロシュ

形 態 :75mg/カプセル ・ ドライシロップ

製品名:「リレンザ」(Relenza)

一般名:ザナミビル

形 態:ディスク吸入器1つ及び、ディスク5つ入り

製造元:グラクソ・スミスクライン

なお、シンメトレル(塩酸アマンタジン)もあるが、A型のみに有効。

何れの薬剤も感染後、2日以内に服用することで効果がある。従って、迅速にA型、B型を鑑

別診断できる診断法が必要。 ※関連する法律 インフルエンザは、国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症の一つとして、感染症の

予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で「五類感染症」に定められています. 学校保健法では、第二種伝染病に指定されていて、解熱した後2日経過するまでは出席停止と

なります。(ただし、医師によって 病状により伝染のおそれがないと認められた場合はこの限りではありません) 2) インフルエンザの最近の話題 高病原性トリインフルエンザ(H5N1)の話題(1)

• 2008年 6月 19日時点で世界保健機構(WHO)に 2003年以降報告された トリインフルエンザの累積症例数は 385(死亡率 63%)

• 患者の 90%は 40歳以下の若年層(中央値 18歳)で性差はない。 • 致死率は 10~19歳の群で最も高く、50歳以上の群で最も低い。

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• 無症候感染や軽症例はまれと考えられている。 • 患者のほとんどは農村部に住み、自宅周辺で家禽を飼育。発症前一週間に病気や死亡した家禽をつかまえる事が最も よく認められる危険因子である。(感染家禽をつかまえる際のウィルス汚染飛沫の吸入、感染家禽の排泄物(ウィルス含む)で汚染された環境からの感染 ) 高病原性トリインフルエンザ(H5N1)の話題(2)

• 鳥インフルエンザ(H5N1)はきわめて稀な感染症である。 • トリからヒトへの感染は容易には起こらない。 • 家族集積例が全体の 4分の 1に見られる。 • ヒトーヒト感染が疑われる症例中、90%に血縁関係が認められる。 • 鳥インフルエンザ(H5N1)に感受性の高いヒト集団があるか不明。 • 潜伏期間は2~5日間である(最長 8日間の報告がある。)

高病原性トリインフルエンザ(H5N1)の話題(3) • 鳥インフルエンザ(H5N1)を疑うべき患者 • 2008年 11月現在、家禽の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)に対して日本は清浄国であるため、汚染地域に滞在歴のある旅行者で発熱および急性呼吸器症状を呈しているも

のが主な対象となる。 • 発熱のある海外旅行者には渡航地、トリや患者との接触の有無の確認が重要。 • ヒト症例の報告が多いインドネシアやベトナムでは熱帯感染症(輸入感染症)も多く、 鑑別疾患となる。

• 同地域での(H5N1)の所期診断は肺炎、デング熱、腸チフスなどであった。 (血液検査、血液培養、胸部 X線検査、デング熱に関する検査)

インフルエンザワクチン製造株の決定過程

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厚生労働省 健康局

国立感染症研究所(感染

全国76ヶ所の地方衛生研究所

感染研

厚生労働省結核感染症課

感染症発生動向調査事

報告

厚生労働省医薬食品局長 がワクチン株を公布(5月~6月)

エーテル処理効果など) ・ワクチン製造株としての適格性検討(増殖効率、抗原的安定性、免疫原性、 ・次シーズンの予備的流行予測とワクチン候補株の選択

・流行状況

・分離ウィルスの抗原性、遺伝子解析成績(約 5,000株) ・住民の抗体保有状況調査成績(感染症流行予測事業による)

依頼

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インフルエンザワクチンについて ・インフルエンザワクチンの効果 ワクチン接種をしなかった場合におこる危険性をワクチン接種によってどのくらい減らす事が出来る

かという相対危険で表す事が合理的であるとされる。 ・有効率について

インフルエンザワクチンは高齢者を中心としたハイリスク群において肺炎などの合併症や入院死亡

など重篤な健康被害を減少させる効果がWHOをはじめ世界各国で認められている。

・インフルエンザワクチンの限界(1)

平成20年度(2008/09シーズン)にむけたインフルエンザワクチン

A/ブリスベン/59/2007(H1N1)

A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)

B/フロリダ/4/2006

2008年2月に世界保健機関(WHO)が提示した、2008年11月-2009年4月の北半球世界で

のインフルエンザワクチン推奨株と一致している

有効率75%と

「ワクチン接種者100人の内75人が発症しない。」

「ワクチン接種を受けずに発症した人の75%は、

接種を受けていれば発症を免れた。」 ◎

×

A型インフルエンザはヒト以外にトリ、ブタ、ウマなどを自然宿主とする人獣共通感染症なので天然痘や

ポリオなどのようにヒトにワクチン接種することによってインフルエンザウィルスを根絶する事は不可能

(1回のワクチン接種で終生免疫は付与不能)

過去の感染やワクチン接種で獲得した免疫で対応できない抗原変異ウィルスが生じてしまう。

HA蛋白をコードするHA遺伝子には頻繁に突然変異が起こるためにHA蛋白の抗原構造が次々と変化する。

インフルエンザウィルスの表面の赤血球凝集素(HA)という糖蛋白が感染防御免疫に関わる主要な

ウィルス抗原であり、HA蛋白に対する免疫が感染防御に中心的な役割を果たす。

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・インフルエンザワクチンの限界(2) ・薬剤耐性ウイルス発生について

毎年シーズン前に接種を繰り返す必要がある。インフルエンザシーズンの1ヶ月前

の11月頃を中心に接種が推奨されている。

→卵アレルギーの人は要注意

薬物耐性偶然(自然)

獲得説

アマンタジン耐性の

調査の結果、年間150万件処方される米国と

めったに処方されない日本とあまり差がなかった。

ポイントミューテーションの常在:1万個

ウィルス中に1個の耐性ウィルスが存在

耐性発生の可能性はウィルス分

日本では世界最大のタミフル使用国にも拘らず1.6%とかなり低い。

タミフルが殆ど処方されないノルウェーで67%の耐性EU全体でも20%以上耐性

(drug selection pressure)

薬物による淘汰圧説

インフルエンザワクチン中に卵由来の成分の残存:

ワクチン接種による重篤な神経系副作用:100万人に一人

インフルエンザワクチンによる有効な防御免疫の持続期間は3ヶ月程度 *時間とともに低下

不活化ワクチンによって賦与される免疫

<国内のタミフル耐性ウイルス確認情報について> 国立感染症研究所の調査結果から(H20.10.28)

• Aソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)で、タミフル耐性インフルエンザが 昨冬9県で見つかる。(1,713株)

• 山形、栃木、神奈川、長野、岐阜、愛知、兵庫、鳥取、島根の9県 • 鳥取県は 32.4%と飛び抜けていた。(22株/68株中):理由は不明。 • 隣の島根県では 1.2%、殆どの県で数%以下。

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• 耐性44株はタミフル未使用患者からの採取。自然発生的変異か。

先日、当直中のインフルエンザ検査で、某迅速キット(イムノクロマト法)にて Aと B両方のラインが出ました。日勤帯のウイルス検査専任技師に判断を仰ぎ、検体を再採取の上、より感度・特異度

良好の他社製キットにて検査実施し(-)となりました。結局当院では(-)として報告しま

したが、患者さんは前医にてインフルエンザ A(+)であったとのことで、臨床では(+)扱いで対処されました。 また一方、A型と B型の重複感染が迅速診断キットで疑われ、RT-PCR法とウイルス分離法で確定された 11例についての文献が感染症学雑誌に掲載されていました。あくまでも簡易検査である以上、採取法や採取時期の問題、検出限界、非特異反応の存在を念頭におき、診断に際

しては流行状況や臨床症状を合わせて総合的判断が必要であると改めて実感しました。

黒色真菌感染症 / Dermatiaceous fungal infection(後編)

大阪医療センタ- 佐子 肇

【 Fonsecaea属の形態学的鑑別 】 写真-1 F.pedrosoi 写真-2 F.compacta

PDA培地、27℃、20日間培養 PDA培地、27℃、20日間培養 写真-3(スライド培養)F.pedrosoi 写真-4(スライド培養)F.compacta

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×400 矢印:クラドスポリウム形(出芽型)の分生子 ×400 矢印:樽型 写真-3は F.pedrosoi の分生子が次々に数個の分生子を生じて多分岐性の短い分生子連鎖を形成している。 Fonsecaeaタイプ( クラドスポリウム形の分生子形成 )は隔壁をもつ分生子柄の上部から1細胞性の分生子を仮軸状 sympodialに形成し、この1次分生子はその先端が膨化し、その部分から2次分生子を仮軸状に形成する。同様に不規則に膨化し、分生子連鎖を形成する。 写真-4の F.compactaの分生子は F.pedrosoiより丸味を帯び、分生子柄と分生子、分生子同士が密着する。そのため、分生子鎖の途中の分生子は樽形になることもある。

Fonsecaea属の鑑別表 菌 種 F.pedrosoi F.compcta 病 型

CBMと PHM > CBMと PHM 皮下膿瘍、内臓病変

分 布 世界各地 中南米、中国、その他各地 頻 度 最も多い まれ 寄生形態 sclerotic cells(内臓病変では菌糸

形) sclerotic cell

発育/外観 中等度~やや遅い/ 黒緑色~黒褐色

(表面に短い灰色菌糸)

極めて遅い/ 黒褐色~黒色

(表面に短い灰色菌糸) 出芽型 > シンポジオ型、 出芽型 > シンポジオ型、 分生子形成

フィアロ型(まれ) フィアロ型(まれ) 分生子 1細胞性、円筒形~紡錘形、

淡褐色~褐色 多分岐性の短い分生子連鎖を

F.pedrosoiと似ているが、球形~亜球形(樽型)で、分生子同志が密着し塊状を呈する。

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形成する。

その他の病原性黒色真菌 【 Phialophora verrucosaの形態学的鑑別 】

スライド培養 PDA培地、27℃、20日間培養 矢印:Phialophora属は暗色に着色した Callaretteをもつフラスコ状の phialideと楕円形の分生子の集団である。Phialide はその先端に暗褐色の濃いカップ状のカラレット(callarette)を伴って徳利形に見える。P.verrucosaの分生子は phialophora タイプのみ豊富につくる。

P.verrucosaの鑑別表 菌 種 P.verrucosa その他の Phialophora 病型

CBMと PHM 皮下膿瘍、角膜真菌症

寄生形態 Sclerotic cell(硬壁細胞)、胞子形成、菌糸形

発育速度 中等度 分生子形成 phialophora タイプ phialide callaretteをもつフラスコ状

callarette 暗褐色の濃いカップ状( 徳利形 ) 受皿状 分生子 卵形~ソ-セ-ジ形

【 Exophiala 属の形態学的鑑別】 (A)Exophiala dermatitidis ×400 (B)Exophiala moniliae ×400

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写真-A上、矢印は菌糸側壁小突起から分生子が産生している。 写真-A下は brain heart infusion dextrose (1%) agar 27℃、20日間培養 ( 酵母様集落形成 )。 矢印は溶けたチョコレ-ト状に発育する。 写真-B上、矢印は球形又は基部の方が膨らみ、連鎖したり枝分かれして小集塊をなしている。分生子形成細胞は菌糸に側生するものは球形ないし亜球形で、分生子を産生するた びに、その分生子形成部位は先へ先へと伸長し、細長い管状で多少曲がった形態となる。分生

子は1細胞性で、楕円形であるが、ソ-セイジ形のものも見られる。 写真-B下は brain heart infusion dextrose (1%) agar 27℃、20日間培養( 酵母様発育からやがて菌糸様集落に発育する)。

(D)Exophiala spinifera ×400

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分生子形成細胞の分生子形成部位が細長く 鋭い棘の様な突起 先へ先へと伸長していることも特徴である。 アネライド先端に鋭い棘の様な突起が1本生じ、 次々にアネロ形分生子を産生する

写真 D-1 BHIdextrose (1%) agar 写真 D-2 PDA培地 27℃、20日間培養 27℃、25日間培養 酵母様発育からやがて菌糸様集落に発育する。 PDA培地( E.dematitidis ) PDA培地のジャイアント集落( E.moniliae )

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PDA培地、27℃、10日間培養 PDA培地、27℃、25日間培養 矢印-左上: 黒色酵母様集落形成 矢印-右上 : 菌糸様発育 E.moniliae のスライド培養

PDA培地のジャイアント集落 27℃、25日間培養。 ↑:バナナ形の分生子が混じるのが特徴 黒緑色菌糸様集落を形成し黒色色素を拡散

E.dematitidisと E.moniliaeの鑑別 発育温度 ℃ 菌 種 35 42 1%ブドウ糖加 BHI培地(27℃) PDA培地

E.dematitidis + + 溶けたチョコレ-ト様の酵母状 集落形成

初め酵母状で黒緑

色を呈し黒色色素

を拡散する

E.moniliae + d 酵母様から菌糸状集落形成 灰色の気生菌糸が表

面を覆うようになる

E.spinifera + d 酵母様から菌糸状集落形成 灰色の気生菌糸が表

面を覆うようになる d:発育する株がある

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Exophiala属の鑑別表 菌 種 E.dermatitidis E.moniliae E.spinifera同義語 Wangiella dermatitidis 病 型 CBM , PHM

皮下膿瘍、内臓病変 CBM , PHM 皮下膿瘍、足菌腫

肉芽腫性病変

分 布 日本に多い 豪州、インド、日本 米国、インド、南米 寄生形態 sclerotic cells、 胞子形、

菌糸形 胞子連鎖、菌糸形 胞子形、胞子連鎖

発育/外観 遅い / 黒緑~黒褐色 やや遅い / 灰緑色~黒緑色

中等度/黒褐色羊毛

状~ビロ-ド状 分生子形成細胞が 細長く先へ先へと 伸長する。

分生子形成細胞

annellide フラスコ形~円筒形、

細胞の集塊あるいは連鎖

状。菌糸側壁の小突起か

ら分生子が生じる。

分生子形成細胞は介在

性のものは円筒形、菌

糸に側生するものは球

形~亜球形、小集塊状

(数珠状)に固まって

生じやすい。

分生子柄は剛直で脊

柱様(spin-like)である。

分生子 1細胞性、亜球形~円筒形 ( E.moniliaeはバナナ形を呈することもある )

上限発育温度 40~42℃ 40℃( 発育できない株もある )

Exophiala属の分生子形成はアネロ型で、分生子形成細胞(アネライド、annellide)が菌糸先端部或いは側枝として生じるのが特徴である。また小突起はアネライドの先端部或いは菌糸

側壁部からも生じ、分生子を次々と産生する。現在、病原性を有するものとして4菌種報告さ

れているが、各菌種は培養条件により酵母様集落または菌糸状集落を形成する。これらの菌種

は形態学的に類似しているため上記した鑑別性状及び発育温度なども鑑別の参考になるが、あ

る程度の経験を必要とする。 【 Cladosporium属の形態学的鑑別 】

C.devriesii C.trichoides

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C.devriesii C.trichoides PDA培地、27℃、25日間 PDA培地、27℃、25日間 Cladosporium 属は出芽型の一型で、分生子柄や菌糸から出芽した分生子が、次々に分生子を

出芽し、分岐しながら連鎖を形成する。本属は自然界に普遍的に存在するが、人の皮膚に対す

る病原性として皮下膿瘍、CM などが知られている。まれに角膜真菌症や肺菌球症の原因菌と

なることがある。菌種の鑑別は分生子連鎖の長さと分岐の頻度、分生子の大きさと形状、温度

耐性などが参考になる(Cladosporium属鑑別表)。 Cladosporium 属の鑑別表

菌 種 C.trichoides ( C.bantianum )

C.carrionii C.devriesii

病 型 脳膿瘍、皮下膿瘍 CM

CM 皮下膿瘍

分布 欧米 中国、南アフリカ、 米国 寄生形態 菌糸形 Sclerotic cells 菌糸形、厚壁細胞

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発育 中等度 やや遅い 中等度 外観 黒色、

表面に灰色菌糸 黒色、 表面に灰色菌糸

灰色調オリ-ブ色 羊毛状

分生子連鎖 長い、 あまり分岐しない

長い(30個以上のものあり)よく分岐

短い(8個以下) 頻繁によく分岐

分生子 1細胞性、淡褐色、

円筒形(長楕円形) 1細胞性、淡褐色、

レモン形 1細胞性、淡褐色、 亜球形~楕円形

上限発育温度 41~45℃ 35~37℃ 36~37℃

以上、黒色真菌及び類似の黒色真菌について述べた。 尚、各種糸状菌のお問い合わせは、[email protected].まで

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北野病院 浅田 薫

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1. N95 というのは、マスクの名称である。

【問題】今回は、我々が仕事中にお世

話になるマスクについて、答えてみてく

ださい。 ↓以下の文章、合っている?間違って

いる?○・×で考えてみてください。

2. N95マスクは、日本の厚労省の規格で、Nは耐油性がないことを表し、95は 3μm

の試験粒子を 95%以上捕集できることを表している。 3. 米国の規格では、DS2 区分マスクが N95 マスクに相当する能力を持つとされてい

る。 4. サージカルマスクは、装着者の側から発する飛沫の拡散を防止する目的で用い

る。 5. N95 などの防じんマスク規格に用いられる試験粒子には、塩化ナトリウムがある。

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岐阜方面のゲレンデに滑りに行ったのですが、山肌の一部見え、温暖化のせいでしょうか2月とは思えないくらいの積雪の悪さでした。温暖化により懸念されるマラリアやデング熱、脳炎、コレラなども、そう珍しくない病気になり、ワクチン接種が渡航者だけに限らないような世の中に日本もなるのかも知れませんね。機会があれば、このような病気に対する勉強会も開催できればと思います。

赤木 征宏 2008.2.9

【白金耳】 Vol.30. No.2. 2009.(平成 21年2月号)

発行日:平成21年2月11日発行 発 行:大阪府臨床検査技師会 学術部 微生物検査部門 表 紙:井邊 幸子 発行者・編集:赤木 征宏(財団法人 大阪警察病院)

〒543-0035 大阪市天王寺区北山町 10-31 TEL: 06 - 6771 – 6051 e-mail: [email protected]

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答え・1.× 2.× 3.× 4.○ 5.○

N95 というのはマスクの名称ではなく、米国の NIOSH(National Institute ofOccupational Safety and Health)規格の N シリーズ(Not resistant to oil)の規格の 1つです。N シリーズ以外にも試験粒子や試験方法の違う R シリーズや P シリーズなどがあり

ますが、これらは特に医療用の規格というわけではなく、基本的には粒子状物質の吸入防

止のためのマスクの規格です。 医療関係で N95 の規格のマスクが使用されるようになったのは結核の感染防止用として

でした。実際に多くの病院で使用されて効果があることが実証されています。このような経緯

もあり医療関係では N95 規格が多くあげられます。SARS の感染拡大時には N95 のマスク

が品薄になり、手に入れることが困難な状況も発生しました。このような状況に対応するため

WHO の出した SARS の院内感染対策のガイドラインに「製造国におけるこれと同等の全国

的/地域的基準を満たすもの」という追記が入り、同等の性能が得られるものも使用可能な

製品に追加されました。 日本では粒子状物質の吸入防止のための規格としては防じんマスクの国家検定規格があ

り、捕集性能などから防じんマスクの RS2、DS2 の区分のマスクと防毒マスクの S2 の区分の

マスクが NIOSH の N95 のものと同等の機能を有していると考えられます。 (注)DS2の「D」は使い捨て式を、RS2の「R」は取り替え式を意味します。(興研株式会社H

Pより抜粋) 参照URL等 http://www.mmm.co.jp/hc/mask/question.html

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