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造 林 学
-森林土壌-
2018.06.29
造林学 第四版
-日本の土壌に見られる7つの土壌生成作用-
・粘土化作用(シアライト化作用)・ポドゾル化作用・グライ化作用・泥炭集積作用・ラテライト化作用(アリット化作用)・塩類集積作用・粘土の移動集積作用
造林学 第四版
-土壌生成作用-
・母材 風化のされやすさや土壌の化学性を規定主な母材マグマが冷却固化した火成岩水底で堆積固化した水成岩圧力や熱を受けて融解,再結晶化した変成岩
火成岩 ケイ酸含有率と産状によって酸性岩,中性岩,塩基性岩,超塩基性岩
白っぽい 低 ←← ミネラル分含有率 →→ 高 黒っぽい
火山岩,半深成岩,深成岩 に区分
水成岩 凝灰岩,石灰岩,チャートなど火山噴出部を除く一般に火成岩に比べるとミネラル分に乏しい礫岩,砂岩,泥岩など構成粒子の大きさで区分生成年代が古いものほど風化されにくい
造林学 第四版
・堆積様式 どのようにしてその場に堆積したのか
母材(母岩)
-土壌の分布と体積様式-
残積土
崩積土
匍行土または崩積土
古い水積土(扇状地)
古い水積土(段丘)
水積土
残積土
運積土
崩積土
水積土
匍行土崖錐 扇状地
段丘水積土
極端な単純化(山地)
残積土 匍行土 崩積土
崖錐
造林学 第四版
・気候,地形,生物の作用 土壌中での物質移動の規定要因
土壌養分土壌の広い範囲から植物に吸収される落葉落枝によって地表面に集積⇒微生物や土壌動物の働きで無機化
土壌水分環境平行な土壌層が作られる要因降水量と可能蒸発散量(気候)地下水位(地形)
洗滌型,非洗滌型,滲出型に分類右図 に区分
日本の土壌洗滌型土壌水分環境
⇒系外への物質流亡が起こりやすい
半乾燥地での塩類集積土壌滲出型土壌で生成
-日本の土壌に見られる7つの土壌生成作用-
・粘土化作用(シアライト化作用)一次鉱物が加水分解や塩基類の溶脱などの化学的風化を受け,結晶性の粘土鉱物が生成される作用.ケイ酸とアルミナの層を基本構造とする.粘土鉱物は最終的に鉄とアルミニウムの酸化物になる.
・ポドゾル化作用加湿・乾燥・低温など有機物分解が不良な条件下で,地表に厚く堆積した有機物層の堆積が過剰に進行し,この層で生成されるフルボ酸のような有機酸によって表層の粘土鉱物が破壊され,鉄やアルミニウム等が溶脱し,土壌の下層に移動集積する.尾根(乾燥)での生成には雪解け水が影響.
・グライ化作用地下水の滞留によって強い還元状態になった下層土において,鉄やマンガンなどが還元・溶脱され,灰白色や盛会職の土層が形成
造林学 第四版
-日本の土壌に見られる7つの土壌生成作用-
・泥炭集積作用沼や湖などの湿地において,水面下の嫌気的環境で堆積した植物遺体が,時間の経過にともなって,生化学的な分解作用を受けて炭化して生成
・ラテライト化作用(アリット化作用)高温多湿な気候条件下でのケイ酸塩鉱物の風化分解作用が進行し,石英以外に含まれるケイ酸が流亡し,鉄やアルミニウムが残留富化
・塩類集積作用滲出型土壌水分条件で,地下水に含まれるナトリウム塩やカルシウム塩が土壌表層や地表に析出し集積
・粘土の移動集積作用土壌表層に含まれる分散性の高い粘土が,浸透水に懸濁して次の下層に運搬され,運搬された層の土壌構造の表面あるいは孔隙内に沈殿・集積する
造林学 第四版
-日本の林野土壌分類における8つの土群-
◎は日本国内に比較的多い土群
造林学 第四版
・ポドゾル群・褐色森林土群 ◎
・赤色,黄色土群 ◎
・黒色土群 ◎・暗赤色土群
・グライ化土群 ◎
・泥炭土群・未熟土群
-日本の林野土壌分類における8つの土群-
◎は日本国内に比較的多い土群
造林学 第四版
・ポドゾル群乾性ポドゾルと湿性鉄型ポドゾル,湿性腐食型ポドゾルの亜群で構成.微生物活性が低く,A0層が厚く堆積する環境条件(低温・過湿・加湿)分布面積は森林面積の4%
・褐色森林土群 ◎多雨気候下の温帯から暖帯の山地に分布.土壌の乾湿状態から,5つの亜群,6つの土壌型と1つの土壌亜型分布面積は森林面積の70%.酸性~弱酸性の土壌
・赤色,黄色土群 ◎洪積世の間氷期(温暖期)にラテライト化作用で生成された土壌が現在まで保存されている古土壌.様々な地域に斑状に分布.淡色のA層,赤褐色ないし明赤褐色,あるいは明黄褐色のB,C層一般的に強酸性
・黒色土群 ◎火山の山麓,丘陵,段丘などの安定地形で,火山灰に覆われている地域に,九州から北海道まで分布.厚く黒いA層を持ち,A層からB層への推移が明瞭に判別できる.分布面積は森林面積の13%.
・暗赤色土群石灰岩や超塩基性岩,塩基性岩を母材とする地域で見られ,下層が暗赤色となる土壌,火山による熱水によって生成した土壌,あるいは非塩基性土壌であっても似たような断面を呈する土壌を一括して呼んでいる.詳細な生成過程は未だ不明.
・グライ化土群 ◎地下水や季節的な停滞水の影響を受けて生成された灰白色~青灰色のグライ層を深さ1m以内に有する.地下水位の季節的変動に伴って,斑鉄を有す.
造林学 第四版
◎は日本国内に比較的多い土群
-日本の林野土壌分類における8つの土群-
造林学 第四版
・泥炭土群沼沢地などのように常に湛水する条件下で,湿原群落の植物遺体の分解が進行せずに堆積して炭化することによって生成.有機質土壌.
・未熟土群生成時間の短さや浸食によって土層の発達が不十分な土壌.受蝕土(表層が剥ぎ取られた土壌)と未熟土に分類される.A層やB層が無い,もしくは発達程度が低い断面形態.
受蝕土
固相
液相
気相
土壌の三相組成
・ 固相・・・土粒子の存在部分
・ 液相・・・水を含む孔隙
・ 気相・・・水を含まない孔隙
土壌の三相組成
図 土壌構造の大きさと孔隙の大きさの関係
土壌の三相組成
水分状態や粒径組成⇒土性土壌構造,三相組成,孔隙組成,保水性,透水性,通気性を規定する土壌の性質
土壌の物理性とは
土壌動物・微生物の活性や根系の発達に直接的に影響樹木の成長を左右する重要な特性
土壌構造の分類
土壌の保水性
土壌水分特性曲線
土壌のマトリックポテンシャルと土壌水分量の曲線
大きな孔隙→弱い
小さな孔隙→強い
水分保持力
森林土壌の孔隙は大小さまざま
土壌の物理(理学)性
土壌の透水性
飽和透水係数
単位時間に単位面積を通過した水の体積
ex. 10-2~10-3cm3/s(砂)10-8cm3/s以下 (粘土)
森林土壌の団粒構造→良好な透水性の発揮
根や土壌動物の活動跡→排水路の形成
土壌の物理(理学)性
土壌の通気性
土壌呼吸 根,土壌微生物,土壌動物の呼吸
→土壌中の二酸化炭素濃度は高く,酸素濃度は低い
土壌中のガスの移動
・ 主にガスの拡散
・ 気相率と高い相関→気相率が高いほど拡散速度は上昇
土壌の物理(理学)性
踏圧
踏圧が樹木に与える影響
踏圧の有無の判別方法
・ 土壌硬度計を用いて表層土の硬さを調査
・ 孔隙の減少
→根系の伸長の障害根呼吸の障害
生育障害
人為的影響を受けた土壌の特徴
植物の栄養分
・ 窒素 リン カリウム 農業の場合は施肥により供給されるが,森林樹木は施肥なしで生育
森林には養分循環が存在(自己施肥)
土壌の化学性
土壌のpH 窒素循環
土壌の養分補給と交換塩基
土壌の化学性
土壌の反応(pH)や養分含有率,養分保持力などのこと
土壌の化学性
森林土壌の前に 植物の必須元素
健康な茎葉に含まれる必須元素の平均含有量(乾物あたり)
元素 µmol g-1 mg kg-1 g Kg-1 相対原子数
土壌の化学性
森林土壌の前に 金属元素のイオン化傾向
土壌のpH
pH(H2O)
・ 土壌質量 : 水 = 1 : 2.5(質量比)で混合したもののpH・ 自然状態でのpH
pH(KCl)
・ 1 mol/Lの塩化カリウム溶液を用いて測定したpH・ 土壌に潜む酸性の指標
AlK+ KAl3+
H2O
Al(OH3)
H+
土壌の化学性
森林の窒素循環
微生物による無機態窒素の生成
アンモニア態窒素(NH4+-N, NH3
+-N )
亜硝酸態窒素(NO2-N)
硝酸態窒素(NO3-N)
有機態窒素
速やかな酸化
→分解が進行するにつれC:N比が低下
有機物中の炭素は呼吸に利用され,窒素は微生物体内に蓄積
→余剰窒素が発生
土壌の化学性
硝化細菌の働き
アンモニア細菌の働き
根からの吸収
土壌の養分保持と交換性塩基
交換性塩基
負に帯電する土壌コロイドに吸着する Na+ K+ Mg2+ Ca2+
CEC(Cation Exchange Capacity:塩基交換容量 or 陽イオン交換容量)
土壌が陽イオンを吸着しうる最大の量
根
Ca2+
Na+
土壌中の陽イオンが根に吸収される仕組みのイメージ図
K+
Mg2+
H+
H+
H+
H+
H+
H+
土壌コロイド
土壌の化学性
土壌断面の記録(調査の手始め)
①層位
L層-落葉層
F層-植物組織を認める有機層
H層-植物組織を認めない有機層
A層-腐食の多い鉱質土層
B層-腐食の少ない鉱質土層
C層-母材層
R層-基岩
土壌断面調査
土壌断面の模式図
実際にはさらに調査項目あり
A0 層
土壌断面の記録
②土色
・ 土色は腐食と鉄の量や質によって決定される
腐食が多いほど暗色の黒味が増加
鉄の酸化程度の増加に従い,土色は褐色→黄色→赤色へと変化
③土壌構造
・ 土壌構造とは土壌を構成する粒子が互いにくっついた集合体
1)単粒状・・・粒子がばらばらで互いにくっつき合っていないもの
2)細粒状構造・・・細かな土粒が菌糸束でつづられた状態のもの
菌糸により白みを帯びている
土壌断面調査
3)粒状構造・・・比較的小型(2mm~5mm程度)で
丸みがあり堅くて緻密なもの
土粒構造
4)堅果状構造・・・稜角およびつやのある面が比較的はっきりし,緻密で 1cm~3cmくらいの大きさのもの
5)塊状構造・・・比較的丸みがあり、表面のつやは弱く,内容もそれほど緻密でない、比較的大型の構造(一般に1cm以上)
6)団粒状構造・・・水分に富み軟らかい数mm程度の小粒の構造
7)かべ状・・・土層全体が緊密に凝集し、一定の構造を認めることが出来ないもの
土壌断面調査
堅密度
土壌断面を親指で押してみてそのくぼみ方で判定
1)しょう・・・少しの力を加えるだけで簡単に土が崩れ、親指が深く入る
2)軟・・・指で押したときにはっきりとした深い指のあとが容易にできる
3)堅・・・断面を強く押しても、指のあとがわずかしか残らない
土性
土壌断面調査
水湿状態
pF値・・・マトリックポテンシャル(cmH2O)の絶対値を常用対数化したもの
ex. pF=1.8 圃場用水量pF=4.2 永久しおれ点
土壌断面調査