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IoTの特許戦略 日本弁理士会関東支部 弁理士 渡部 1. はじめに IoT は第四次産業革命を起こすともいわれ、大きな利 益をもたらす可能性を秘めている。しかし、IoT の技術 革新によってもたらされるこの利益を自社の利益として 確保するためには、他社に先駆けて利益に貢献する特許 の取得が不可欠といえる。 一方、IoT の技術内容がどんなに革新的であっても特 許要件を満たさなければ特許を取得することはできない。 また、例え特許を取得しても、他社が容易に技術回避で きるような特許であっては、自社への利益の確保が難し い。 そこで、本稿では、IoT の特許戦略と題し、特許出願 の際に有効なポイントとなる着目点と、他社への影響力 が強い特許を取得するための特許戦略について解説する。 2. IoT の特許でポイントとなる着目点 2-1. 新規性と進歩性 IoT の構成は大きく、モノに取り付けるセンサーと、 情報を処理するクラウドに分類される。センサーとクラ ウドという単位で考えると、バリエーションが少なく、 特許を取得するのが一見困難であるように見える。 「新規 性」「進歩性」という特許要件が障壁となるからである。 「新規性」は、同一の技術が開示されているかどうか を判断するものであるが、センサー単体やクラウド単体 の技術については、これまで多数の技術が開示されてい る。そこで、センサー単体の技術の領域と、クラウド単 体の技術の領域と重なり合う領域を避け、それ以外の領 域にターゲットを絞り込むという着目がポイントとなる。 「進歩性」は、発明が容易に創作できるかどうかを判 断するものであるが、特許庁では、従来文献に動機付け が記載されているかどうかで審査する。技術を組み合わ せるための動機付けが記載されていなければ、個々の技 術が新しくなくても、組み合わせに進歩性が認められる。 2-2. サービスの新しさと抽出方法 IoT では、センサーから得た情報の中から、新しいサ ービスの提供のために必要な情報を抽出する。この場合、 サービスの内容と、抽出すべき情報と、抽出方法(情報 処理)は1対1に対応する。したがって、サービスの内 容が新しければ、これに対応する、抽出すべき情報や抽 出方法も新しいはずである。大量の情報の中から必要な 情報を抽出する方法は多数ある。抽出方法ごとに特許を 取得することもできるし、費用対効果を考え各抽出方法 の共通の通過点を見つけ、そこを特許で取得する戦略も 効果的である。 2-3. 情報の横断的利用 IoT の特許を取得する上で有効な着目点の一つは、情 報を横断的に利用する点である。横断的な利用とは、例 えば、A宅のセンサー情報のほか、B、C、D宅のセン サー情報も用いて、A宅のユーザにサービスを提供する ような場合である。 モノとサービス利用者が1対1に対応している技術は、 これまで多数の技術が開示されている。これに対し、 IoT ならではの横断的な利用に着目したn対1やn対nの技 術は、より質の高いサービスを提供できるといった効果 につながるので、1対1の技術に比して特許性を主張す ることができる。 3. 他社への影響力が強い特許を取得 3-1. 他社の実施バリエーションを捕捉する特許 - 1で述べたように、 IoT の特許の中心となる構成は センサーとクラウドであり、この組み合わせで特許を取 得することは効果的な戦略となる。しかし、他社に対し 特許を行使するためには、他社技術が特許の構成をすべ て備えている必要がある。センサーとクラウドの構成で 特許を取得した場合は、センサーだけ又はクラウドだけ を製造等する他社には特許を行使できない。 そこで、組み合わせが新しいことを理由に特許を取得 する場合であっても、他社の実施バリエーションをでき るだけ多く捕捉できる特許を取得することが重要である。 3-2. 目に見える部分を捕捉する特許 他社技術が特許を侵害していることを発見しやすい特 許を取得することも重要なポイントである。情報を処理 する技術は、通常、閉じたクラウド内で使われるもので あるので、その技術について特許を取得した場合に特許 技術が他社に使われているかどうかを外から把握するこ とが難しい場合がある。外から把握できなければ、特許 を侵害しているのかどうかを権利者側で判断することも また難しく、特許を行使しにくいという問題にあたる。 そこで、外から把握できる部分について特許を取得す ることが効果的である。例えば、情報を表示したりメー ルを送信したりファイルを生成したりする部分について 特許を取得すれば、外から把握することができるので、 侵害の発見が容易であり、特許を行使しやすくなる。 4.まとめ 特許の独占効果を高めるために質だけでなく数も確保 したいが、特許の取得・維持にはコストがかかるため、 優先順位をつける必要性がある。上記着目点で多数の候 補をピックアッ プし、上記影響 力の観点で絞り 込み、特許を取 得することが好 ましい。 3PM-A01 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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Page 1: IoTの特許戦略 - KISTEC · が強い特許を取得するための特許戦略について解説する。 2. IoT の特許でポイントとなる着目点 2-1. 新規性と進歩性

IoTの特許戦略

日本弁理士会関東支部 弁理士 渡部 仁 1. はじめに

IoT は第四次産業革命を起こすともいわれ、大きな利

益をもたらす可能性を秘めている。しかし、IoT の技術

革新によってもたらされるこの利益を自社の利益として

確保するためには、他社に先駆けて利益に貢献する特許

の取得が不可欠といえる。

一方、IoT の技術内容がどんなに革新的であっても特

許要件を満たさなければ特許を取得することはできない。

また、例え特許を取得しても、他社が容易に技術回避で

きるような特許であっては、自社への利益の確保が難し

い。

そこで、本稿では、IoT の特許戦略と題し、特許出願

の際に有効なポイントとなる着目点と、他社への影響力

が強い特許を取得するための特許戦略について解説する。 2. IoTの特許でポイントとなる着目点

2-1. 新規性と進歩性

IoT の構成は大きく、モノに取り付けるセンサーと、

情報を処理するクラウドに分類される。センサーとクラ

ウドという単位で考えると、バリエーションが少なく、

特許を取得するのが一見困難であるように見える。「新規

性」「進歩性」という特許要件が障壁となるからである。

「新規性」は、同一の技術が開示されているかどうか

を判断するものであるが、センサー単体やクラウド単体

の技術については、これまで多数の技術が開示されてい

る。そこで、センサー単体の技術の領域と、クラウド単

体の技術の領域と重なり合う領域を避け、それ以外の領

域にターゲットを絞り込むという着目がポイントとなる。

「進歩性」は、発明が容易に創作できるかどうかを判

断するものであるが、特許庁では、従来文献に動機付け

が記載されているかどうかで審査する。技術を組み合わ

せるための動機付けが記載されていなければ、個々の技

術が新しくなくても、組み合わせに進歩性が認められる。

2-2. サービスの新しさと抽出方法

IoT では、センサーから得た情報の中から、新しいサ

ービスの提供のために必要な情報を抽出する。この場合、

サービスの内容と、抽出すべき情報と、抽出方法(情報

処理)は1対1に対応する。したがって、サービスの内

容が新しければ、これに対応する、抽出すべき情報や抽

出方法も新しいはずである。大量の情報の中から必要な

情報を抽出する方法は多数ある。抽出方法ごとに特許を

取得することもできるし、費用対効果を考え各抽出方法

の共通の通過点を見つけ、そこを特許で取得する戦略も

効果的である。 2-3. 情報の横断的利用

IoT の特許を取得する上で有効な着目点の一つは、情

報を横断的に利用する点である。横断的な利用とは、例

えば、A宅のセンサー情報のほか、B、C、D宅のセン

サー情報も用いて、A宅のユーザにサービスを提供する

ような場合である。 モノとサービス利用者が1対1に対応している技術は、

これまで多数の技術が開示されている。これに対し、IoTならではの横断的な利用に着目したn対1やn対nの技

術は、より質の高いサービスを提供できるといった効果

につながるので、1対1の技術に比して特許性を主張す

ることができる。 3. 他社への影響力が強い特許を取得

3-1. 他社の実施バリエーションを捕捉する特許

2-1で述べたように、IoTの特許の中心となる構成は

センサーとクラウドであり、この組み合わせで特許を取

得することは効果的な戦略となる。しかし、他社に対し

特許を行使するためには、他社技術が特許の構成をすべ

て備えている必要がある。センサーとクラウドの構成で

特許を取得した場合は、センサーだけ又はクラウドだけ

を製造等する他社には特許を行使できない。 そこで、組み合わせが新しいことを理由に特許を取得

する場合であっても、他社の実施バリエーションをでき

るだけ多く捕捉できる特許を取得することが重要である。 3-2. 目に見える部分を捕捉する特許

他社技術が特許を侵害していることを発見しやすい特

許を取得することも重要なポイントである。情報を処理

する技術は、通常、閉じたクラウド内で使われるもので

あるので、その技術について特許を取得した場合に特許

技術が他社に使われているかどうかを外から把握するこ

とが難しい場合がある。外から把握できなければ、特許

を侵害しているのかどうかを権利者側で判断することも

また難しく、特許を行使しにくいという問題にあたる。 そこで、外から把握できる部分について特許を取得す

ることが効果的である。例えば、情報を表示したりメー

ルを送信したりファイルを生成したりする部分について

特許を取得すれば、外から把握することができるので、

侵害の発見が容易であり、特許を行使しやすくなる。 4.まとめ

特許の独占効果を高めるために質だけでなく数も確保

したいが、特許の取得・維持にはコストがかかるため、

優先順位をつける必要性がある。上記着目点で多数の候

補をピックアッ

プし、上記影響

力の観点で絞り

込み、特許を取

得することが好

ましい。

3PM-A01 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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埼玉県におけるIoT化推進事業の紹介

埼玉県産業技術総合センター 関根正裕

1 はじめに

近年、急速に進んだ産業のグローバル化やアジア南米諸国の技術力向上、先進国工業が抱えるエネルギーや環境の

問題、産業や人口の集中による交通渋滞、少子高齢化に伴う労働力不足などの多くの問題に直面する日本の製造業は

大幅な刷新を迫られている。同様の問題を抱える欧米では、工業生産において情報通信技術を活用するIoT(Internet

of Things)により、高い生産性や新たな価値を創生するインダストリー4.0やインダストリアルインターネット等の

取り組みを始めており、日本でも昨年より産学官共同のIoT関連プロジェクトが始まった。このような状況の中、埼玉

県では、平成28年度から県内産業のIoT化推進を目的とする事業を開始した。ここでは、埼玉県単独で実施する既存設

備を活用して生産のIoT化を目指す「スマートものづくり基盤構築支援プロジェクト」と神奈川県と共同で実施する工

場内外における物流のスマート化を支援する「中小企業IoT化事業」について紹介する(図1)。

図1 スマートものづくり基盤構築事業

2 スマートものづくり基盤構築支援プロジェクト

IoTではインターネットにより生産機器を接続

し、生産機器から得られるデジタル情報を活用し

て高生産性の実現を目指すが、コンピュータを用

いて生産工程の調整・制御や状況判断を行うため

には、取得されるデジタル情報が工業生産におけ

る物質や形状変化を正しく反映することが必須

となる。埼玉県産業技術総合センターでは、既存

の生産工程から正確なデジタル情報を得るため

のセンサー網や目標の調整を実施するため制御

手段の設置や再配置を行い、デジタル情報の集積

、解析を行う設備を提案し、遠隔管理や予知保全

の実現を支援する(図2)。

図2 IoTによる生産・設計・開発のスマート化

また、開発したシステムの安全な導入を支援する

ため、埼玉県産業技術総合センター内に検証環境

を設置する。

一方、IoTでは、市場の求める機能や特性を有

する工業製品を最適なタイミングで提供できる

迅速な製品開発や柔軟な個別対応を可能とする

ため、設計から試作までの設計・開発工程におけ

るデジタル情報の活用も重要となる(図2)。そ

こで、設計、シミュレーション、3Dプリンタを用

いた試作、NC工作機械などで扱うデータの互換化

や相互変換について支援する。

本事業ではIoT化を迅速かつ効果的に進めるた

め、積極的に外部技術者を活用する。支援で生じ

た課題を職員が要素化し、専門技術を持つ「もの

づくり技術指導員」に相談し、得られた解決策を

職員が集約して課題解決に導くものである。

3 中小企業IoT化事業

埼玉県では、神奈川県との共同事業において、生産の

IoT 化に伴って生じることが危惧される工場内外の物資

配送の遅滞を防ぐため、物流のスマート化を支援する。

交通渋滞や環境問題への対応が求められる県内製造業者

に対し、限られた輸送手

段により効率的な物流を

可能とするため、交通情

報や移動体通信情報を活

用した最新の物流管理シ

ステムの導入支援を行う。

また、企業へのIoT関

連技術情報の提供の場を

設けるため、IoT利用技

術研究会を開催する。こ

の研究会は神奈川県の実

施するIoT研究会と広域

連携しながら進める。(図

3)

図3 IoT利用技術研究会

3PM-A03 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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IoT 関連技術による中小企業支援基盤づくり

千葉県産業支援技術研究所 ○阿久津和司,大谷 大輔

1. はじめに

近年、IoT への注目が高まっており、異なる

工場間で製造設備を連動させるだけでなく、サ

ービス業等においても IoTを活用した革新的サ

ービスの創出が求められている。

国においては、IoT・ビッグデータ・AIの進

展を踏まえた2030年の「新産業構造ビジョ

ン」の策定や、企業・業種の枠を超えて産官学

で利活用を促進するために「IoT 推進コンソー

シアム」を設立するなど動きが活発化している。

こうした中、県内中小企業においても IoTへ

の関心が非常に高くなっており、一部では IT

企業と連携して IoTの取り組みを始めている企

業もある。

しかし、多くの企業では、"IoT とは何?"、

"IoTで何ができるの?"、"IoTの導入には何を

したら良いの?"との声が多く模索中であり、自

治体を中心とした IoT導入に向けた支援体制づ

くりや技術支援が求められている。

2.基盤構築へのアプローチ

本事業の中心は、平成 29年度の実施を計画し

ている実証実験である。概要は、弊所において

“もの”や“設備”に多種多様なセンサーを取

り付け、更に環境に適合した無線ネットワーク

を構築することでスマート化に向けた実証実験

を行い、もって県内中小企業の IoT導入促進に

役立てることである。各室から知見のある者を

集め、プロジェクトチームとしてあたることで、

職場全体として IoT技術に関するノウハウの蓄

積を図る。

3.実証実験事例

来年度の研究の準備として、疲労試験機の運

転管理を実施している。疲労試験機は、長期間

の試験になることが多く、試験体に変化があれ

ば、すぐに装置を停止させる等の操作が必要に

なるため、担当者が頻繁に試験状況のチェック

をしている。これに IoT技術を導入することに

図1 実証実験のイメージ

図2 ローカルエリアネットワークの構築

図3 疲労試験機の運転管理

より、担当者の負担軽減や適切な運転管理を行

うものである。たとえば、装置の遠隔監視や、

センサーを活用した運転管理(異常時に自動的

に停止させる等)を検討している。

4.今後の展望

今後は、引き続き中小企業のニーズの把握に

努め、実証試験の事例を増やすことで技術的知

見の蓄積を図る。そして、その成果を発信する

ことで中小企業が自社での IoT活用法を検討す

る契機とするとともに、企業の事業内容や規模

に応じた IoT導入・活用支援に取り組む。

3PM-A04 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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情報技術グループにおける IoT への取組み事例紹介

地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター 情報技術グループ ○入月 康晴

1. はじめに

モノとインターネットの融合により新たな付加価値を

創造する IoTが非常に注目されている。IoTは、センサ、

ネットワーク、コンピューティングの3つの要素を中心

に構成される。

センサに関しては、温度、振動、位置、画像といった

対象物の状態を把握するためのデバイスである。センサ

の小型化、省エネ化、低価格化により、産業機器やスマ

ートフォン等の機器に多種のセンサが搭載されている。

ネットワークに関しては、通信速度の向上や、回線等の

通信エリアの拡大、通信コストの低下により、データ通

信が高速かつ安価に行える環境になりつつある。コンピ

ューティングに関しては、CPU の高速化や計算処理速

度の向上、データアクセス速度の向上、分散処理技術の

導入等によりビッグデータ関連技術の発展につながって

いる。今回は、こうしたセンサ、ネットワーク、コンピ

ューティングを対象にした情報技術グループにおける計

測や検索システム等の取組み事例について紹介する。

2. 取組み事例の紹介

2.1 データのノイズ除去と計測への応用(センサ事例)

他の機器からのノイズによってセンサデータに外れ値

が加わり、それにより誤動作につながる恐れがある。こ

れまでにいくつかの外れ値除去フィルタが提案されてい

るが、パラメータの設計が試行錯誤的となり、設計の妥

当性を保証することが難しかった。そこで、ノイズに関

する物理量を用いて設計することが出来る外れ値除去フ

ィルタを開発した。

具体例として、液体の充填システムでは、大量生産時

に充填する液量のデータ取得に膨大な時間を要する。そ

こで、生産性向上には充填液量の計測時間を短縮するこ

とが重要である。データの時系列特性から前述の外れ値

除去フィルタを基に統計的に予測し、充填液量の計測時

間を短縮する仕組みを提案し製品化した。(図1)

図1 予測型インライン計測システム

2.2 無線センサネットワークでの放射線除染事業向け

モニタリング装置(ネットワーク事例)

除染事業における放射線量の検出を対象に効率的で効

果的な検出方式を検討した。走査中における計測モニタ

リングの時系列データからバックグラウンドのノイズを

除去し、モデル式による汚染残存個所の検出量を予測す

る手法を提案し、無線センサネットワーク(Bluetooth)を用いてデータを送受信することで放射線量を検出する

システムを試作した。(図2)

図2 汚染残存個所検出システム

2.3 検索システム(コンピューティング事例)

インターネット上には膨大な情報が蓄積されており、

そこには必要な情報が存在する反面、その情報量の膨大

さのあまり、必要な情報を必要な時に手に入れることが

難しくなっている。そこで、インターネット上に存在す

る膨大な情報から、ユーザーが必要とする情報を選択的

に収集するWebクローラを開発した。(図3)

図3 WEBクローラ 2.4 データ記憶装置の高信頼化(その他高信頼化事例)

食品業界をはじめ、データ改ざん等が大きな社会問題

となっている。そこで、製造装置における保存データの

高信頼化のため、一度保存したセンサデータは、読み出

しのみが可能で消去を含めた内容の書換えができない仕

組みを提案し製品化した。 3. まとめ

今までは、個別要素を対象にした計測や検索システム

等に取組んできた。今後は、今までの個別要素への研究

開発等の取組みを基に生産システム全体や、サービス事

業全体への IoTの取組みとして発展させていく。

3PM-A05 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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茨城県工業技術センターによる中小企業への自動化技術導入促進

のための取り組みについて

茨城県工業技術センター 技術基盤部門 若生 進一

1.はじめに

昨今の技術の進歩は目覚ましいものがあり,ロ

ボットや IoT等の次世代技術が大きな注目を集め

ている。一方で,自動化技術は,今後,人口減少

に伴う省力化やコスト削減のための効率化等に

大いに貢献が期待される技術である。

本県では,つくば市や,量子ビーム研究が盛ん

な東海村などに集積する大学・研究機関等の次世

代技術に関連した要素技術に着目し,自動化技術

に活用することで,中小企業の生産性向上や新製

品・新サービスの創出支援に取り組んでいる。

2.次世代自動化システムフォーラム

最新の技術動向に関する情報共有や自動化に

関する技術シーズ,ニーズ等の企業連携の場とし

て,平成 26 年度より「次世代自動化システムフ

ォーラム」を工業技術センターに設立した。(図 1)

会員企業による展示発表等を実施し,企業間連

携の促進も図ることができた。

図 1 フォーラムの実施体制

3.フォーラムから研究会へ

現在は,企業の新分野(成長分野)への進出を

支援するため,茨城県が設立した「いばらき成長

産業振興協議会」内で,今年度より新たに設立さ

れた「次世代技術研究会」にフォーラムの活動の

場を移し,「次世代自動車」,「環境・新エネルギ

ー」,「健康・医療機器」,「食品」など,分野横断

的な連携による自動化技術導入を支援している。

4.更なる導入促進への取り組み

製造現場の自動化等の課題を解決するための

実証実験を行う場として,現在,工業技術センタ

ー内に IoTやロボット技術検討の場とする模擬ス

マート工場を整備している。(図 2)

図 2 模擬スマート工場イメージ図

5.今後の展開

大学・研究機関と共に模擬スマート工場を活用

しながら,自動化につながるロボット,IoT 等の

次世代技術を使いこなす中核技術者を育成し,県

内中小企業の生産性向上,新製品・新技術開発,

新サービスの創出につなげていく。

3PM-A07 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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IoTを活用する次世代農業分野に向けた新潟県工業技術総合研究所の取り組み

新潟県工業技術総合研究所 企画管理室 ○木嶋 祐太

1. はじめに

新潟県工業技術総合研究所では農業従事者一人当たり

の生産性向上を目的に農業分野へのIoT活用を検討して

いる。そこで植物の生体情報取得など農業分野でデータ

を計測する仕組みを実証した事例を紹介する。

農業分野では生産性向上のために環境条件や生育状況

に応じた細かな栽培管理が重要であるが、現状は生産者

の経験やカンに基づいたものになっている。最適な栽培

を実現するために、環境条件や生育状況をセンサ等で計

測し、膨大なデータをインターネットに保存し解析する

ことが有効と考えられる。本件では IoT計測装置導入を

見据えて、植物の生育状況の計測を汎用的な装置を使っ

て行った。

2. 小型コンピュータを用いた栽培現場での計測

小型コンピュータ(Raspberry財団製 Raspberry Pi)

と汎用的な Web カメラを使用して、栽培現場にてイチ

ゴの群落の葉面積を計測する実験を行った。この小型コ

ンピュータを使えば、ネットワークにも簡単に繋がるの

で、後に IoTの実験も行うことができる。また、汎用的

な装置を使うことで、導入コストが大きく下がり、実験

をスムーズに進めることができる。

図1のようにイチゴの栽培現場に小型コンピュータと

Webカメラを設置し、イチゴを上方から撮影した。その

撮影画像は図2の左の画像である。図2の左の画像から

画像処理で検出し、イチゴと認識した部分を緑色に塗っ

たのが図 2の右の画像である。おおまかではあるがイチ

ゴが検出でき、群落葉面積を計測することができた。

3. マイクロスコープを用いた茎径の計測

トマト栽培では水管理が非常に重要である。トマトの

水分状態によって茎径が変化することがわかっており、

レーザ変位計を利用した茎径計測を栽培に利用する例が

あるが、変位計が高額なため普及していない。そこで、

マイクロスコープ型の Web カメラを茎径計測に利用す

ることを考えた。このマイクロスコープは通常の Web

カメラより拡大した画像が撮影できるので、茎径のよう

な小さい物の計測に適している。

図3のように水分状態を安定させたトマトの茎の前に

マイクロスコープを設置し、茎の画像を撮影した。撮影

した画像が図4で茎の部分を画像処理で認識し、長さを

計測することで茎径とした。図 5は 7日間茎径を計測し

た結果である。0.1mmの分解能で計測をしたが安定した

計測ができていることがわかった。

4.まとめ

・IoT を活用する農業を見据えて、栽培現場にて小型コ

ンピュータを使用して植物の生育状況を計測する実験

を行った。

・マイクロスコープ型の Web カメラを用いることで、

トマトの茎径が安定して測定できることが確認できた。

・小型コンピュータにより IoT化を簡単に実現できるの

で、ネットワーク化がどのように農業に役立つか更に

検証を進める。

図 1 小型コンピュータの設置

図 2 群落葉面積の検出(左:生画像 右:検出結果)

図 3 マイクロスコープ 図 4 撮影した画像

図 5 茎径計測結果

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