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インドネシアの投資環境 44 外資導入政策と管轄官庁 管轄官庁 インドネシアにおける外資誘致の担当機関は、インドネシア共和国投資調整庁(BKPMBadan Koordinasi Penanaman Modal、英語では Indonesia Investment Coordinating Board)である。同庁は 1973 年に大統領直轄機関として設立され、石油、ガス、金融を除いた分野での投資案件の許認可権限 を有している。また、外資の便宜を図るため、外資進出に係る様々な手続きを担当する政府機関 の職員を BKPM 事務所内に駐在させ、外資系企業の設立手続きの受付窓口としている。 2009 年以 降は中央省庁級に格上げとなった。 BKPM は、国内全 34 州の各地方政府の下に地方投資調整事務所を有する。また、 BKPM は東京 を含め海外にも事務所を有し、インドネシアへの投資に興味を持つ外国企業に対し投資手続きに 関する助言や投資申請書式の提供などを行っている。 外資導入の概要 インドネシアの外資導入は 1967 年の外国投資法(1967 年法律第 1 号)の制定で端緒が開かれ た。外国投資法は、外国資本による経営を認めてその資本を保護すること、輸入関税免除等の優 遇措置を認めること、利益送金や外国人技術者の雇用等について規定していた。1994 年には政令 によって外資に対する規制が緩和され、外国資本 100%による法人設立が認められた。 2007 年に入ると、それまでの外国投資法および内国投資法(1968 年法律第 6 号)に代わり内外 からの投資全体を包含する新投資法(2007 年法律第 25 号)が制定された。 2019 9 月時点でも、 この新投資法が外資誘致に関する基本法となっている。 新投資法による主な改正は、それまで問題とされることが多かった手続き面、インフラ面、労 務面などが中心である。また、新たに盛り込まれた主な内容として、内外無差別の原則、中央政 府と地方政府の投資承認権限の分担、ワンストップサービスや経済特区の概念の導入等が挙げら れる。 近年の主要な投資促進・優遇策 近年では、内資や外資の別を問わず、投資促進・優遇策が導入されている。詳細は「第 9 要投資インセンティブ」を参照のこと。以下では、手続き面の改善を中心に説明する。 ワンストップサービス(PTSP) ワンストップサービス(Pelayanan Terpadu Satu PintuPTSP)は、投資に関連する各省庁の許認 可権限を BKPM に委譲・集中させ、各種申請から許認可取得までのプロセスを一ヵ所に集約する 政策である。22 の省庁/関連機関が権限を委譲して、中央政府レベルのサービスが 2015 1 月に 正式にスタートした。外国投資企業(PMA)の工業許可、外国投資を含む商業関係の許認可など を取り扱っている。地方政府(州・県・市)レベルでの各種許認可についてもワンストップサー

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インドネシアの投資環境

44

外資導入政策と管轄官庁

管轄官庁

インドネシアにおける外資誘致の担当機関は、インドネシア共和国投資調整庁(BKPM:Badan Koordinasi Penanaman Modal、英語では Indonesia Investment Coordinating Board)である。同庁は 1973年に大統領直轄機関として設立され、石油、ガス、金融を除いた分野での投資案件の許認可権限

を有している。また、外資の便宜を図るため、外資進出に係る様々な手続きを担当する政府機関

の職員を BKPM 事務所内に駐在させ、外資系企業の設立手続きの受付窓口としている。2009 年以

降は中央省庁級に格上げとなった。

BKPM は、国内全 34 州の各地方政府の下に地方投資調整事務所を有する。また、BKPM は東京

を含め海外にも事務所を有し、インドネシアへの投資に興味を持つ外国企業に対し投資手続きに

関する助言や投資申請書式の提供などを行っている。

外資導入の概要

インドネシアの外資導入は 1967 年の外国投資法(1967 年法律第 1 号)の制定で端緒が開かれ

た。外国投資法は、外国資本による経営を認めてその資本を保護すること、輸入関税免除等の優

遇措置を認めること、利益送金や外国人技術者の雇用等について規定していた。1994 年には政令

によって外資に対する規制が緩和され、外国資本 100%による法人設立が認められた。

2007 年に入ると、それまでの外国投資法および内国投資法(1968 年法律第 6 号)に代わり内外

からの投資全体を包含する新投資法(2007 年法律第 25 号)が制定された。2019 年 9 月時点でも、

この新投資法が外資誘致に関する基本法となっている。

新投資法による主な改正は、それまで問題とされることが多かった手続き面、インフラ面、労

務面などが中心である。また、新たに盛り込まれた主な内容として、内外無差別の原則、中央政

府と地方政府の投資承認権限の分担、ワンストップサービスや経済特区の概念の導入等が挙げら

れる。

近年の主要な投資促進・優遇策

近年では、内資や外資の別を問わず、投資促進・優遇策が導入されている。詳細は「第 9 章 主要投資インセンティブ」を参照のこと。以下では、手続き面の改善を中心に説明する。

ワンストップサービス(PTSP)

ワンストップサービス(Pelayanan Terpadu Satu Pintu:PTSP)は、投資に関連する各省庁の許認

可権限を BKPM に委譲・集中させ、各種申請から許認可取得までのプロセスを一ヵ所に集約する

政策である。22 の省庁/関連機関が権限を委譲して、中央政府レベルのサービスが 2015 年 1 月に

正式にスタートした。外国投資企業(PMA)の工業許可、外国投資を含む商業関係の許認可など

を取り扱っている。地方政府(州・県・市)レベルでの各種許認可についてもワンストップサー

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第 6 章 外資導入政策と管轄官庁

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ビスが導入されている。

尚、後述のオンライン・シングル・サブミッション(Online Single Submission:OSS)が導入さ

れ、今後、PTSP の機能は OSS に統合される計画である。

3時間許認可サービス

BKPM は、一定の条件を満たす投資案件の申請に対し、3 時間以内に投資ライセンスや納税者

番号等を発行するサービスを 2015 年 10 月から開始している。同サービスは、以下のいずれかを

満たす場合に提供される。

投資総額が 1,000 億ルピア(約 8 億円)以上であること

現地労働者を 1,000 人以上雇用すること

また、同サービスにより、以下を 3 時間以内に取得することができる。

図表 6-1 3 時間許認可サービスで発行されるライセンス等

(出所)BKPM ウェブサイトより作成

オンライン・シングル・サブミッション(OSS)の導入

オンライン上で投資関連の申請受付、ライセンスの発行等を一元的に行うオンライン・シング

ル・サブミッション(OSS)が 2018 年 7 月に正式に導入された。OSS は当初は経済調整庁の所管

であったが、2019 年 1 月に BKPM へ移管された。これまで、地方により異なっていた投資許認可

手続きの統一・簡素化を図り、投資を拡大させることを目的としている。OSS で発行される許認

可は以下の通りである。

事業基本番号(NIB)

外国人労働者利用契約

立地許可

建設許可

1. 投資ライセンス

2. 会社設立証書

3. 納税者番号

4. 会社登録番号

5. 外国人労働者雇用許可

6. 外国人労働者雇用計画

7. 生産者輸入者識別番号

8. 税関登録番号

9. 土地利用可能性に関するレター(オプション)

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インドネシアの投資環境

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環境許可

事業許可

営業許可

前述の通り、OSS の導入により、今後、投資に関する各種申請やライセンスの発行等は OSS に

集約されることとなっている。

尚、2019 年 6 月の現地調査の時点では、OSS の運用は開始されたものの、不具合も多く、安定

していないとの指摘が多かった。同年 10 月 29 日時点で、OSS のウェブサイトでは、11 月 4 日に

新しいバージョンのシステムを導入することを告知している。

保税地域(Bonded Zone)と自由貿易地域(FTZ: Free Trade Zone)

保税地域とは輸出加工区のことで、保税地域内の企業に対しては製造設備や原材料等の輸入関

税、付加価値税等の諸税が免除される。また、前年の輸出等実績額の 50%を上限に、正規の輸入

手続きを経た上で国内向け販売を行うことも認められている。

自由貿易地域とは国が自ら指定して開発した保税地域のことで、制度上の扱いは通常の保税地

域と変わらない。2019 年 10 月時点では、シンガポール対岸にあるバタム島、ビンタン島、カリ

ムン島が自由貿易地域の指定を受けており、それぞれに監督庁が設置されている。日系を含む輸

出向け製造企業が多数進出している。

指定業種、政府指定の各地域の特定業種に対する優遇

2019 年 10 月時点、タックスホリデー(税減免)として、パイオニア産業 18 分野(基礎金属・

石油ガス・無機基礎化学 等)に対する 1,000 億ルピア以上の投資に 50~100%の法人税減免が定

められている。

また、タックスアローワンス(税控除)として、全国統一 56 分野と特定地域の 40 分野につい

ては、投資額の一部の課税所得控除、減価償却期間の短縮といった法人所得税上の便宜が供与さ

れる。

経済特区(SEZ)

インドネシアは首都圏への集中是正と地方の経済発展を謳い、首都圏外の産業発展のために経

済特区(Special Economic Zone:SEZ)をテコに地方開発を促進している。税制特典の付与はあく

までも既存のタックスホリデー(税減免)、タックスアローアンス(税控除)制度をベースに行わ

れるが、非税制面では外国投資ネガティブリスト規定が適用されないという大きな特徴がある。

このため、SEZ 内への投資は、認可次第で全業種において外資 100%出資が可能となる。

SEZ 国家評議会(National Council for Special Economic Zones)に拠ると、2019 年 10 月 29 日時

点で、インドネシア全国で 11 ヵ所の SEZ が稼動しており、更に 2 ヵ所の SEZ が準備中である。

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第 6 章 外資導入政策と管轄官庁

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図表 6-2 稼動・準備中 SEZ

(出所)SEZ 国家評議会ウェブサイトより作成

1 Sei Mangkei SEZ 北スマトラ

2 Tanjung Lesung SEZ バンテン

3 Palu SEZ 中部スラウェシ

4 Mandalika SEZ 西ヌサ・トゥンガラ

5 Galang Batang SEZ リアウ

6 Arun Lhokseumawe SEZ アチェ

7 Tanjung Kelayang SEZ バンカ・ブリトゥン

8 Bitung SEZ 北スラウェシ

9 Morotai SEZ 北マルク

10 Maloy Batuta Trans Kalimantan (MBTK) SEZ 東カリマンタン

11 Sorong SEZ 西パプア

1 Tanjung Api-Api SEZ バンカ・ブリトゥン

2 Singhasari SEZ 東ジャワ

【稼動SEZ】

【準備中SEZ】