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Kobe University Repository : Kernel
タイトルTit le
心神喪失者等医療観察法の考え方と運用の実際 (行政だより)(行政だより)
著者Author(s) 前田, 光哉
掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学医学部神緑会学術誌,22:122-127
刊行日Issue date 2006-08
資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文
版区分Resource Version publisher
権利Rights
DOI
JaLCDOI 10.24546/81007945
URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81007945
PDF issue: 2020-12-11
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行政 だよ り
心神喪失者等医療観察法の考え方 と運用の実際
厚生労働省関東信越厚生局医事課課長 前 田 光 哉(平4年 卒)
1.は じ め に
関東信越厚生局 とは,厚 生労働省の出先機 関(地 方
支分部局)で あ る地方厚生局(全 国7か 所)の 一つで
あ り,埼 玉県さいたま市 にあ ります。 また,地 方厚生
局の職員数は,平 成17年 度で625人 であ り,厚 生労働省
の他の地方支分 部局 である労働局の6,199人,労 働基
準監督署の4,664人,公 共職業安定所(ハ ローワーク)
の12,164人,社 会保険事務局の16,495人 の中で最少で
す.
他省庁の地方支分部局と比較 して も,財 務局(財 務
省)の4,81?人,管 区行政評価局(総 務省)の903人,
地方農政局(農 林水産省)の17,362人,地 方整備局(国
土交通省)の22,392人,経 済産業局(経 済産業省)の
2,002人 と比較 して も小 さな組織 であ ることが分 か り
ます.
地方厚生局は健康福祉部,麻 薬取締部の2つ の部か
らな り,健 康福祉 部6課 の うち一つが医事課です.
医事課 では,医 師及 び歯科医師臨床研修 について,
研修 プログラムの審査,研 修修了者の医籍登録の申請
受付 を担 当する とともに,特 定機能病院(大 学病院な
ど)の 立入検査,医 療事故防止対策,健 康危機管理対
策,医 療 関連職種の養成施設の指導,国 の開設する医
療機関の認可等,医 療 にかかわる様々な事務 を担当 し
てい ますが,昨 年か ら新たに,罪 を犯 した精神障害者
の医療に関わる業務 を行っています。
本稿では,2005年7月 より施行 されている 「心神喪
失等の状態 で重大 な他害行為 を行った者の医療及び観
察等 に関す る法律」(略 して 「心神喪失者等医療観 察
法」)の 考 え方 と地方厚生局の行 う実務 について紹介
したい と思います.
2.心 神 喪 失 者 等 医 療 観 察 法 と は
精神の障害のために善悪の区別がつかないなど,通
常の刑事責任が問えない状態のうち,全 く責任 を問え
ない場合 を心神 喪失,限 定的 な責任 を問える場合 を心
神耗弱 と呼びますが,こ の法律は,重 大な他害行為(殺
人,放 火,強 盗 強姦,強 制わいせつ,傷 害 など)を
犯 したの に,心 神喪失又は心神耗弱の状態であったと
い う理 由で不起訴や無罪判決 となった人の社会復帰 を
促進す ることを 目的 としています.
この制度がで きるまでは,不 起訴や無罪判決等が出
た場合 には,精 神保健福祉法に基づ く措置入院や,釈
放 により通常の生活が行われてお り,制 度面 医療面
では,表1の ような課題が指摘 されていました.
表1心 神喪失者等医療観察法施行前の課題
(制度面の課題)
1.不 起訴又 は無罪 となった人のうち,約4割 は
措置入院の対象となる症状がなかった.
2.責 任能力の判断に関する鑑定の信頼性 に疑問
が提起 されていた.
3.被 害者 ・家族が,対 象 となる人の処遇の決定
過程 を知 ることができなかった.
(医療面の課題)
1.措 置入院の場合,入 退院の判断が都道府県知
事(事 実上は,そ の委任 を受けた精神保健指定
医)に 委ね られていた.
2.入 院先の医療機関の体制の違い によ り,医 療
の提供にば らつきがあった.
3.退 院後の処遇を確実に継続 させ るための実効
ある仕組みがなか った,
心神喪失者等医療観察法においては,上 記の課題 を
解決するため,表2に 掲 げる事項を制度化 し,そ の運
用状況は表3の とお りです.
表2
1.公 正な手続 きの実現
・裁判所 において,適 切 な鑑定や専門家 ・関係
者の意見 を踏 まえ,最 も適切な処遇を決定.
2.専 門的医療の提供
。入院医療 については,国 公立の指定医療機関
において実施(全 額国費)し,そ の症状に応
じた適切 な処遇を実施
3.地 域ケアの確保
・退院後は,指 定通院医療機関で医療 を継続.
保護観察所が都道府県等 と連携 の上,処 遇の
実施計画を定め,観 察 ・指導等 を実施.
4.被 害者等への配慮
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神緑会学術誌 第22巻2006年
・被害者等に裁判所の手続 きの傍聴を認め,ま
た,審 判の結果を通知する仕組みを創設.
表3医 療 観 察 法 に か か る 申 立,
(2006.5.31現 在)
1.当 初 審 判
決定等の状況
3.対 象 と な る 人 の 入 院 や 通 院 の 手 続 き
この制度では,対 象 となる人の入院や通院を,地 方
裁判所で行われる審判で決定す ることとしてい ます,
心神喪失等の状態で重大 な他害行為を行い,不 起訴
や無罪になった人について,検 察官か ら地方裁判所 に,
適切な処遇の決定 を求める申立てがされます,申 立て
を受けた裁判所 では,対 象 となる人に対 して鑑定入院
を命令 し,入 院か ら最長で も3か 月の間に,裁 判官 と
精神科医(法 律上,精 神保健審判員 と呼 ばれています)
がそれぞれの専 門性 をいか して審判 を行います.
審判の過程では,詳 しい精神鑑定が行われ るほか,
保護観察所(法 務省 の出先機関〉によるその人の居住
地や家族の状況,利 用可能 な精神保健福祉サー ビスな
どの生活環境の調査が行われます.裁 判所では,鑑 定
の結果 を基礎 とし,生 活環境 を考慮 して,さ らに精神
保健福祉士(い わゆる精神科 ソーシャルワーカーで,
法律上,精 神保健参与員 と呼ばれています)の 意見 も
聴いた上で,① 入院させ る,② 通院 させる,③ 制度 の
対象外のいずれかの決定 を行い ます.
また,対 象 となる人の権利擁護の観点から,当 初審
判では,必 ず弁護士である付添人を付けることとし,
審判 においては,本 人や付添人からも資料提出や意見
陳述がで きます.
地方厚生局では,こ の制度の運用に必要不可欠 な鑑
定入 院を引 き受ける医療機関、精神保健審判員,精 神
保健参与員 を裁判所が選定で きるようにするため,関
係 自治体,団 体 との調整業務 を行 っています.
具体的には,各 都道府県の精神保健福祉部局や精神
科病院協会な どの関係 団体 に協力 を仰 ぎながら,精 神
科病院への依頼,有 資格者に対す る依頼,名 簿の作成 ・
提出を行 ってい ます.現 在,鑑 定入院 を引 き受ける医
療機関 リス トとして215医 療機 関(公 的医療機関49,民
聞等166)を 裁判所に提出 しています.
また,精 神保健審判員の候補者 と して449名,精 神保
健参与員の候補者 として405名 の名簿 を裁判所 に提 出
しています.
○申立総数
○決定数・入院決定
・通院決定
・不処遇決定
・申立却下
○鑑定入院中
299件
122件 ※
60件
35件
9件
73件
※抗告審に於いて入院決定が却下決定に変更され
た事案も含む
2.入 院継続の確認 退院の許可
○入院継続の確認※。申立件数21件(う ち,
○退院の許可・申立件数17件(う ち,
継続決定10件)
退院決定5件)
4.指 定 入 院 医 療 機 関 での 医 療
この制度における医療は,厚 生労働大臣が指定する
指定入院医療機関又は指定通院医療機関で行われます
が,地 方裁判所で入院決定を受けた人について,入 院
による医療を提供するのが 「指定入院医療機関」です.
※指定入院医療機関の管理者 は,入 院決定又は前
回入院継続確認 の決定が あった 日か ら起算 し
て,6月 が経過するEIま でに申立て をしなけれ
ばならない(法 第49条 第2項)
指定入院医療機関では,30床 程度の小規模 の病棟に
おいて,対 象 となる人の症状 の段階に応 じ,人 的 ・物
的資源 を集中的に投入 し,専 門的で手厚 い医療 を提供
しています.
地方厚生局においては,地 方裁判所で入院の決定の
連絡 を受けると,対 象 となる人の地元に最 も近い指定
入院医療機関の空床状況 を調べた上で,入 院する医療
機関 を1.1.'-定します.そ の後,鑑 定入院を引 き受けてい
る医療機関か ら指定入院医療機関まで,対 象 となる人
を移送 します、
指定入院医療機関に入院後 は,医 師,看 護師等の医
療従事者による頻繁なケースカンファランスの結果に
基づ き,① 急性期,② 回復期,③ 社会復帰期 といった
病状の段 階に応 じた医療 を提供 しています.標 準的な
入院期間は,概 ね1年6か 月 と言われています,
入院中に指定入院医療機関又は本人等か らの申立て
により,裁 判所が,入 院に よる医療の必要性がないと
認めた ときは,退 院が許可 されます.入 院を継続する
場合 にも,少 なくとも6か 月に1回 はその必要性につ
いて裁判所が判断することとしています.
指定入 院医療機関の指定基準 については,厚 生労働
省令で定め られていますが,そ の概要は表4の 通 りで
す.
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表4指 定入院医療機関の指定の基準
1医 療法 に定め る人員,施 設の基準 を満た して
いること,
(ただ し,当 該医療機関における精神障害を有
す る者 に対す る医療及び保護の体制,当 該医療
機関の管理運営の状況,当 該医療機関の地域 に
おけ る役割等 を勘案 し指定入院医療機 関として
指定することが適当であると認め られる病院に
ついては,こ の限 りでない.)
2精 神障害の特性 に応 じ,円 滑 な社会復帰を促
進す るために必要な医療 を適切 に実施する こと
がで きる態勢 を整 えていること.
3心 神喪失者等医療観察法で入院決定を受けた
人に対す る専用の病棟 を設置 していること.
4.病 棟 に次に掲げる者 を置いていること,
(D医 師
② 看護師又 は准看護師(常 時勤務す る者に限
る.〉
(3)作 業療法士
(4)精 神保健福祉士
(5)臨 床心理技術者
指定入院医療機関の診療報酬については,大 臣告示
で定まっていますが,人 的 ・物的資源 を集 中的に投入
し,専 門的で手厚い医療 を提供することを評価する内
容 となってお り,そ の概要は表5の 通 りです,
表5
入 院対象者入院医学管理料(1日 につき)
1.急 性期入 院対象者入院医学管理料6,680点
2,回 復期入 院対象者入院医学管理料4,920点
3,社 会復帰期入院対象者入院医学管理料5,820点
○入院対象者入院医学管理料の施設基準
1,次 に掲 げる病棟を単位 として行 うものであること.
(1)心 神喪失者等医療観察法で入院決定を受けた人に対する専用の病棟
く2)(1)に 掲 げるもののほか,病 院の病棟 の一部であ って,心 神喪失者等医療観察法で入院決定 を受けた人
であって集中的な治療 を要するものを入院させるための精神病床(14床 を超 えない ものに限る)に より
構成 される病棟(以 下 「小規格病棟」)
2.医 療法施行規則に定める薬剤師の員数以上の員数が配置されていること,
3,当 該病棟 における医師の数は,入 院対象者 の数が8又 はその端数 を増す ごとに1以 上であ り,か つ,当
該病棟 に勤務する医師の過半数は常勤の医師であること.
4.当 該病棟 に常勤の精神保健指定医が1名 以上配置 されてお り,か つ,当 該病棟 を有する指定入院医療機
関に常勤の精神保健指定医が2名 以上配置 されていること。
5.当 該病棟 における常勤の看護師の数は,4に,当 該病棟 の入院対象者の数に1.3を 乗 じた数 を加 えた数以
上である こと.た だ し,そ の一部 に小規格病 棟 を有 している病 院の病棟 にあっては,当 該病院の病棟 にお
け る看護職員の数が当該病院の病棟 の入院患者の数が3又 はその端数 を増す ごとに1以 上であ り,か つ,
その最小必要数の4割 以上が看護師であって,当 該小規格病棟 について入院対象者の入院医学管理を行 う
につ き十分 な体制が整備 されていること.
6.当 該病棟 における常勤の作業療法士,精 神保健福祉士及び臨床心理技術者の数の合計 は,1に 当該病棟
の入 院対象者の数が5又 はその端数を増す ごとに1を 加 えた数以上であること.
(ただ し,100人 以上の患者 を入院 させ るための施設 を有 し,そ の診療科名中に内科,外 科,婦 人科,眼 科
及び耳鼻咽喉科 を含 む病院であって,入 院対象者の状態 に応 じた入院医学管理を行 うにつ き十分 な体制が
整備 されているものにあってはこの限 りでない。)
7.入 院対象者入院医学管理を行 うにつき十分な体制が整備されていること.
8.入 院対象者入院医学管理を行 うにつき十分な構造設備 を有 していること.
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神緑会学術誌 第22巻2006年
指定入院医療機関の指定状況は,表6の とお りです.
表6指 定入院医療機関
1.国 立精神 ・神経センター武蔵病院
(東京都,2005年7月 指定>
2.国 立病院機構花巻病院
(岩手県,2005年10月 指定)
3.国 立病院機構東尾張病院
(愛知県,2005年12月 指定)
4.国 立病院機構肥前精神医療セ ンター
(佐賀県,2006年z月 指定)
5.国 立病院機構北陸病院
(富山県,2006年2月 指定)
6.国 立病院機構久里浜アルコール症センター
(神奈川県,2006年4月 指定)
7.国 立病院機構 さいがた病 院
(新潟県,2006年4月 指定)
8.国 立病院機構小諸高原病院
(長野県,2006年6月 指定)
5.指 定 通 院 医 療 機 関 で の 医 療
鑑定の結果,地 方裁判所で通院決定を受けた人 と,
指定入院医療機関 を退院 した人については 「指定通院
医療機関」 において,保 護観察所の精神保健観察 を受
けなが ら,必 要 な医療を受けます,こ の制度による通
院期 間は原則3年 間(最 長5年 間)で す、
指定通院医療機 関は,地 方厚生局において各都道府
県の精神保健福祉部局や精神科病院協会などの関係団
体に協力 を仰 ぎ,精 神科病院に依頼 して指定を進めて
い ますが,現 在の ところ,232医 療機関(公 的医療機関
47,民 間等185)を 指定 しています..
これ ら指定医療機 関が提供す る医療については,い
ずれも全額国費により賄 われています.
指定通院医療機関については,指 定入院医療機関 と
同様,厚 生労働省令で指定基準が定め られていますが,
その概要は表7の 通 りです,
な医療を適切 に実施することができる態勢 を整
えていること,
3薬 局にあっては.当 該薬局が健康保険法の指
定 を受けてい ること.
4訪 問看護ステーションにあっては,医 療 を連
携 して行 う指定通院医療機関があること.
指定通院医療機関の診療報酬については,大 臣告示
で定 まっていますが,入 院医療 と同様,人 的 ・物的資
源 を集 中的に投入 し,専 門的で手厚い医療を提供する
ことを評価する内容 となってお り,そ の概要 は表8の
通 りです,
表8
表7指 定通院医療機関の指定の基準
1病 院又は診療所にあっては,次 に掲 げる者 を
置いていること,
(1)看 護師又は准看護師
(2)作 業療法士,精 神保健福祉士又は臨床心理
技術者
2病 院又は診療所 にあっては,精 神障害の特性
に応 じ,円 滑な社会復帰 を促進するために必要
通院対象者通院医学管理料(1月 につ き)
1.前 期通院対象者通院医学管理料5,500点
2.中 期通院対象者通院医学管理料4,500点
3.後 期通院対象者通院医学管理料3,500点
4.急 性増悪包括管理料39,000点
○通院対象者通院医学管理料 の施設基準
1.指 定通院医療機関に通院対象者通院医学管理
を担当する常勤の精神保健指定医が1名 以上配
置されていること,
2.通 院対象者通院医学管理 を行 うにつ き十分 な
体制が整備 されているこ と.
6.保 護 観 察 所 の 役 割
従来か ら,精 神障害者の地域 ケアには,精 神科医療
機関のほか,精 神保健福祉 センター,保 健所な ど精神
保健福祉関係の多 くの機関が関わってい ますが,こ の
制度では対象 となる人をめ ぐり,関 係機関の連携が十
分 に確 保 され るよう,保 護観察所 が処遇の コー一ディ
ネーター役 を果た しています.
具体的には,対 象 となる一人 ひとりについて,地 域
社会における処遇の具体 的内容 を定 める 「処遇の実施
計画」 を関係機関 と協議 しなが ら作成 したり,地 域で
の医療や援助に携わるスタッフに よる 「ケア会議」 を
随時開催 した りするなどして,必 要 な情報の共有や処
遇方針の統一 を図ることとしています.
「処遇の実施計画」には,対 象 となる一人ひ とりの
病状や生活環境に応 じて,表9の よ、うな,必 要 となる
医療,精 神保健観察,援 助の内容等が記載 されます,
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表9処 遇の実施計画に盛 り込まれる主な内容
1.医 療
・治療の方針 ,必 要 とされる通院の頻度 訪問
看護の予定
2.*青 神保健観察
㌔訪問 ・出頭の頻度 ,指 導 ・助言の方針
3.援 助
・精神障害者社会復帰施設 ,居宅生活支援事業,
デイケア等の利用の予定,必 要な福祉サービ
スの内容
4.そ の他
・病状の変化等により緊急 に医療が必要 となっ
た場合の対応方針,関 係機 関及びその担当者
の連絡先,ケ ア会議の開催予定
このほか,本 人 との面談や,関 係機関か らの報告な
どによ り,そ の生活状況等 を見守 り(「精神保健観察」
.と呼ばれて います),地 域 において継続的な医療 とケ
アを確保 しています,
これ らの業務 を適切に実施するため,保 護観察所 に
は,精 神保健や精神障害者福祉等の専 門家である 「社
会復帰調整官」が配置 されてい ます.
7.移 送 業 務 の 実 際
心神喪失者等医療観察法において,裁 判所が入院決
定を出 した際には,厚 生労働省の職員にその決定を執
行 させることとなっています,ま た,そ の執行 の際に
は,必 要な限度 において,人 の住居又は人の看守する
邸宅,建 造物若 しくは船舶内に入 ることがで きます.
移送 をする場合 には,移 送 される者が逃走 し,又 は自
身を傷つけ,若 しくは他人に害 を及ぼすおそれがある
と認めるときは,こ れを防止するため合理的に必要 と
判 断される限度 において,必 要な措置を取 ることがで
きます.
つ まり,裁 判所は鑑定の結果に基づ き,入 院決定の
文書 を出すのですが,そ の後,入 院医療機関の選定,
対象 となる人への告知,入 院医療機関への移送は地方
厚生局の職員が行っています.
私 も移送業務 を行 った経験があ りますので,そ の実
務 について,解 説 します.
(1)地 方裁判所
当日は,移 送担当班 と厚生局待機班に分かれて業務
を行い ます,
移送担 当班は,地 裁職員から入院決定 をした旨の通
知書,本 人 ・家族への告知書 などを受け取 り,通 知書
を厚生局待機班にFAXし ます.
厚生局待機班は,指 定入院医療機関のデータベース
の空床情報 を基に,入 院先 を選定 し,連 絡の上,厚 生
局長までの決裁 を経て入院先を決定 します.
その後,鑑 定入院医療機関へ選定通知書 をFAX(医
療機関用,対 象者用,保 護者用)し,入 院先 となった
指定入院医療機関にもFAXし,移 送担 当班,移 送事
業者,担 当の保護観察所,厚 生労働省(医 療観察法医
療体制整備推進室)に 連絡 します.
② 鑑 定入院医療機 関
移送担当班 と移送事業者 は,入 院決定 を受けた人が
鑑定のために入院 している医療機関の前で待ち合わせ
し,当 日の移送の経路,休 息場所,移 送時間について
打ち合わせを行います,
移送事業者 は,運 転手 と補助者2名 の計3名 が専用
の移送車(大 型のワンボックスカー)で 移送を行いま
す.
移送担当班 は,病 院の担当者を訪問 し,厚 生局か ら
の選定通知書(FAX分)を 受領(対 象者分,保 護者
分)し て,院 長に入院医療機関を選定 したことを説明
します,
次に,対 象 となる人が入院 している病棟へ移動 し,
主治医,病 棟師長 より,当 日の対象者の病状等 を確認
し,退 院サマ リー等を受領 します.
その後,対 象 となる人に選定通知書,告 知書 を手渡
し,① 裁判所が心神喪失者等医療観察法に基づ く入院
決定 を行ったこと,② 厚生労働省 において入院先を○
○病院に選定 したこと,③ 今か ら荷物 を片付 けて転院,
の用意 を して ほしいこと,の3点 を告知 します.
そ して病棟か ら対象 となる人の保護者に電話 し,移
送の件 を説明 します.
対象 となる人が荷物 を片付 け,退 院時処方薬 を受け
取 り,退 院時の精算 を行うことを確認 して,補 助者が
ボデ ィーチェックを行 った後に,病 棟か ら移送車 まで
移動 します.こ のとき,両 脇 を移送事業者の補助者2
名が保護 しています.
⑧ 移送中
移送車内に入ると,両 脇に補助者2名 が座 ります.
移送担 当班 は,対 象 となる人へ移送方法な どを説明 し,
何か疑 問があれば,質 問 しても良い旨を伝えます.
出発時に厚生局待機班 に連絡 します。
移送 中は,時 々,身 体 の具合が悪 くないか等 声掛
けを行 います.
指定入院医療機関に到着する30分 程度前に,担 当者
に連絡 します.
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神緑会学術誌 第22巻2006年
(4>指 定入院医療機関
到着すると,対 象 となる人とともに,病 棟 まで移動
します,こ の とき も補助者2名 が両脇 を固めて いま
す.
病棟に到着する と,病 棟 内に対象 となる人が入るこ
とを確認 し,病 院の担当者に退院サマ リー等 を手渡 し
ます,
すべての作業が終了後に,厚 生局待機班 に連絡 しま
す.
以上が移送の概要ですが,鑑 定入院医療機関で対象
となる人に告知す る習慣が一番緊張 しますが,今 まで
の ところ,本 人が抵抗 して移送未了になる事態は発生
してお らず,順 調 に運用 されてい ます.
文 献
1)法 務 省 保 護 局1心 神 喪 失 者 等 医 療 観 察 法Q&A
(http://www.mOj.go.jp/HOGO/hogo11-Ol.html)
2)心 神 喪 失 等 の 状 態 で 重 大 な 他 害 行 為 を行 っ た 者.の
医 療 及 び 観 察 等 に 関 す る 法 律(平 成15年7月 ユ6El法
律 第110号)
(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_doc-
frame,cgi?MODE=hourei&DMODE=CON-
TENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=
&EFSNO=161}
3)心 神 喪 失 等 の 状 態 で 重 大 な他 害 行 為 を行 っ た 者 の
医 療 及 び 観 察 等 に 関 す る 法 律 に 基 づ く指 定 医 療 機 関
等 に 関 す る 省 令(平 成17年7月14日 厚 生 労 働 省 令 第
117号)
(http:〃wwwhourei.mhlw.g(Ljp/cgi-bin/t_doc-
frame.cgi?MODE=hourei&DMODE=CON-
TENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=
&EF5NO-1614)
4)心 神 喪 失 等 の 状 態 で 重 大 な 他 害 行 為 を行 っ た 者 の
医 療 及 び観 察 等 に 関 す る法 律 第入 十 三 条 第 二 項 の 規
定 に よ る 医 療 に 要 す る 費 用 の 額 の 算 定 方 法(平 成17
年8月2日 厚 生 労 働 省 告 示 第365号)
(http://wwwhoureLlnhlw.go-JP/cgi-bin/t_doc-
frame.cgi?MODE=hourei&DMODE=CON-
TENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=
&EFSNO=1619)
5)基 本 診 療 料 及 び 医 療 観 察 精 神 科 専 門 療 法 の 施 設 基
準 等(平 成17年8月2日 厚 生 労 働 省 告 示 第366号)
(http://wwwhourei皿hlw.go.jp/cgi-bin/tdac-
frame.cgi?MODE=hourei&DMQDE=CDN-
TENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=
&EFSNO=1620)
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