nagoya institute of technology2) 【水深 20 m の海における周期が 6 s...

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101 拡張されたベルヌーイの定理 (非定常流れ) 【解答】 1) みを する運 ように される. = = + + + E E g t p g y u g 0 1 2 2 ; ∂φ ρ r (1) したがって, において E るこ がわかる.ただし, により E が変 するこ される E ように される. E g t p g y u g ft = ( ) + + + = () 1 2 2 ∂φ ρ r (2) ころ ポテンシャル ,そ みに がある に対して により変 して かまわ い)を して 変わら い.す わち, φ + () g f t dt めて, ポテンシャル φ して ,一 い( ,第2 にゼロ る).したがって, 1 2 0 2 g t p g y u g ∂φ ρ + + + = r (3) される. 2) に沿って, s る(右 s = 0 する). (1) される拡 されたベルヌーイ ,以 おり ある(ここ z おいた). = + + 1 2 2 g t s s p g z u g ∂φ ρ (4) ポテンシャル φ すれ あり,ポテンシャルを きる), u せる. u s = ∂φ (5) これを (4) すれ られる. = = = L g u t z s a s b (6) お, あれ り, u (および u t s に対し て変 いこ から, 1 g u t ds b a g u t L g u t a b = = (7) s u g u g u s 2 2 0 = = (8) いう変 っている.ここ a および b ,右 および あり, s に一 L おく) ある.また,いずれ 圧に いう p p = = 0 const. いた. z = + η z = - η s = 0 z = 0 s = a s = b z = + η z = - η s = 0 z = 0 s = a s = b case 1) case 2) -1 GNU GPL2 © 2006 by T. Kitano

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Page 1: Nagoya Institute of Technology2) 【水深 20 m の海における周期が 6 s の海面波】の波速は,式(3) を用いて概算すれば,> (round(9.8/2/pi * 6, 2) -> C)

101

■ 拡張されたベルヌーイの定理(非定常流れ)  【解答】

1) 重力のみを外力とする運動方程式は,次式のように表される.

∇ = = + + +E E

g t

p

gy

u

g0

12

2

;∂ φ∂ ρ

r

(1)

したがって,全空間において E は一定値をとることがわかる.ただし,時間によりEの値が変化することは許されるので,E は以下のように表される.

E

g t

p

gy

u

gf t=( ) + + + = ( )1

2

2∂ φ∂ ρ

r

(2)

ところで,速度ポテンシャルは,その空間勾配のみに力学的な意味があるので,空間座標の変化に対して一定な値(時間により変化してもかまわない)を付与しても意味は変わらない.すなわち,

φ + ( )∫g f t dt

を改めて,速度ポテンシャル φ と定義しても,一般性は失わない(空間勾配をとれば,第2項は常にゼロとなる).したがって,

12

02

g t

p

gy

u

g

∂ φ∂ ρ

+ + + =r

(3)

と表される.

2) 管に沿って,座標軸 s をとる(右側の管での静止水面の位置を s = 0 とする).式 (1)で表される拡張されたベルヌーイ式は,以下のとおりである(ここでは,鉛直座標を z とおいた).

− = + +

12

2

g t s s

p

gz

u

g

∂∂

∂ φ∂

∂∂ ρ (4)

この時,速度ポテンシャル φ を導入すれば(本問は1次元流れであり,ポテンシャルを仮定できる),管内の流速 u は,次式で表せる.

us

= ∂ φ∂ (5)

これを式 (4)に代入すれば,次式が得られる.

− = ==L

g

u

tz

s a

s b∂∂ (6)

なお,管の断面積はどこでも一定であれば,連続式より,流速 u (および加速度 ∂ ∂u t )は軸 s に対して変化しないことから,

1g

u

tds

b a

g

u

t

L

g

u

ta

b∂∂

∂∂

∂∂∫ = − = (7)

∂∂

∂∂s

u

g

u

g

u

s

2

20

= = (8)

という変形を行っている.ここで, a および b は,右側および左側の管での水面位置であり,両者の水面位置の s 軸上での距離の差は,常に一定( L とおく)である.また,いずれの水面での圧力も大気圧に等しいという条件( p p= =0 const.)も用いた.

z = + η

z = - ηs = 0

z = 0s = a

s = b

z = + η

z = - η

s = 0z = 0

s = a

s = b

case 1)

case 2)

図 -1 流体振動

GNU GPL2 © 2006 by T. Kitano

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ここで,1)右側の管の水位( z = >( )η 0 )が,左側の管の水位( z = −η )より高い場合,すなわち,

zs a

s b

== = −( ) − = −η η η2 (9)

である時には,時間 ∆t >( )0 の間に水位変化 ∆η の符号と流速 u の符号は,次のような関係がある.

∆η , , , ,u{ } = + −{ } − +{ } (10)

よって,流速 u は,水位の時間変化率として,次式のように表せる.

ut

= −∂ η∂ (11)

また,2)左側の管の水位( z = >( )η 0 )が,右側の管の水位( z = −η )より高い場合,すなわち,

zs a

s b

== = − −( ) =η η η2 (12)

である時には,時間 ∆t >( )0 の間に水位変化 ∆η の符号と流速 u の符号は,次のような関係がある.

∆η , , , ,u{ } = + +{ } − −{ } (13)

よって,流速 u は,水位の時間変化率として,次式のように表せる.

ut

= ∂ η∂ (14)

したがって,上記の1)および2)のいずれの場合も,式 (6)は以下のように整理できる.

∂ η∂

η2

2

2t

g

L= − (15)

よって,時刻 t 0 において,水位を s A= 0 および流速をゼロとすれば,水面振動を表す解は,

s t A t tg

L= ( ) = −( ) =η ω ω0 0

2 2cos ; (16)

と表される.また,この流体振動の固有振動周期 T は,以下のとおりである.

TL

g= =2

22

πω

π (17)

3) 以下の関係式が成立する.

∂∂

σ ∂∂

σ σ ∂ φ∂

φ2

22

2

22

xk x t k

xk x t k k x t

xksin cos sin−( ) = −( ) = − −( ) ⇒ = − (18)

∂∂

∂∂

∂ φ∂

φ2

22

2

22

yk h y k

yk h y k k h y

ykcosh sinh cosh+( ) = +( ) = +( ) ⇒ = (19)

したがって,速度ポテンシャル φ は,ラプラス方程式を満足する.

∂ φ∂

∂ φ∂

2

2

2

2 0x y

+ = (20)

4) 海底面における流速の鉛直成分 v は,

vy

ak h y

khk x t

y hy h y h

=−=− =−

= = +( ) −( ) =∂ φ∂

σ σsinh

sinhsin 0 (21)

となる.すなわち,海底面を不透過と考えるため,水粒子の鉛直成分はゼロとなる.

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103

A

B

y = η (x, t0)

y = η (x, t0+∆t)

A

B

,

,

u ∆ t

C

D

v ∆ t

x0 x0 + u ∆ t

5)図 - 2 に示すように,時刻 t 0 での水面上のある点 A が時刻 t t0 + ∆ での水面上の点 B に移動したとする.点 A と点 B の水平距離 AC は,流速の水平成分 u を用いて, u t∆ と表される.同様に,2点の鉛直距離 BC は,流速の鉛直成分 v を用いて, v t∆ と表される.時刻 t 0 における点 A の位置での水位 η x t0 0,( ) は,微小時間 ∆t の間に,距離 AA′ だけ上昇する.すなわち,

AA′ = +( ) − ( ) ≈η η ∂ η∂

x t t x t tt0 0 0 0, ,∆ ∆ (22)

である.また,時間 ∆t が十分に小さければ,点 ′A での水面勾配は,点 A での水面勾配で近似できること,点 ′A と点 B の鉛直距離 BD は距離 ′B D で近似できる(図 -2 は各点の区別が可能であるように,時間 ∆t が微小でない場合をあえて表示しているため,点 ′B は点 B からかなり外れている)ことから,

BD B D ACB DAC

≈ ′ = × ′ = u tx

∆ ∂ η∂ (23)

となる.以上から,点 A と点 B の鉛直距離 BC は,距離 AA′ と距離 BD の和に等しいことから,全ての距離を微小時間 ∆t で除し(さらに,極限 ∆t → 0 を考えれば,上記の近似は,極限で“等号”として成立するので),式 (6)は,以下のように導かれる.

vt t t

ux

= ≈ ′ ′ = × ′ = +BC AA B DAC

B DAD∆ ∆

+ ∂ η∂

∂ η∂ (24)

6)式 (6)で表される海面での条件を近似すれば,以下のように変形できる.

∂ φ∂

∂ η∂y

vt

at y=( ) = =( )0 (25)

7)式 (7)と,前問6)で得られる海面での条件を用いて,水位 η を消去すれば,

∂ φ∂

∂ φ∂y g t

at y+ = =( )10 0

2

2 (26)

と整理できる.式 (3)で表される速度ポテンシャルを式 (26)の各項に代入すれば,次のようになる.

∂ φ∂ σ

σy

agkkh k x t at y= −( ) =( )tanh sin 0 (27)

1

02

2g ta k x t at y

∂ φ∂

σ σ= − −( ) =( )sin (28)

以上から,式 (8)の分散関係式は得られる.

図 -2 微小時間における水面の変化

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■ 微小振幅波の特性(1) 波速 【解答】

1) 水深 10 m の海において,波長 70 m ,30 m および 100 m となる海面波の波速は,以下のように算出できる.ただし,単位は, [m/s] である.

> celerity.d10 <- function(L) round(sqrt(9.8 * L/2/pi * tanh(2*pi*10/L)), 2)> celerity.d10(L=c( 70, 30, 100))[1] 8.84 6.74 9.32

2) 【水深 20 m の海における周期が 6 s の海面波】の波速は,式 (3)を用いて概算すれば,

> (round(9.8/2/pi * 6, 2) -> C)[1] 9.36

となる(単位は m/s である).したがって,この時,波長は約 60 m ほどであり,tanh kh は1に十分近似できることがわかる.

> (C * 6 -> L)[1] 56.16> tanh(2*pi*20/L)[1] 0.9774806

【水深 5 m の海における周期が 12 s の海面波】の波速は,式 (4) を用いて概算すると,

> (round(sqrt(9.8 * 5), 2) -> C)[1] 7

となる(単位は m/s である).この時, tanh kh は kh に十分近似できることがわかる.

> (C * 12 -> L)[1] 84> C * 12 -> L; (2*pi*5/L -> kh)[1] 0.3739991> tanh(kh)/kh[1] 0.9558438

なお,近似式の適用を間違えないように気をつけること! 誤用例として,後者に,式 (3)を適用すれば,

> (round(9.8/2/pi * 12, 2) -> C)[1] 18.72> C * 12 -> L; tanh(2*pi*5/L)[1] 0.1389454

として,波速は得られたように思うけれども, tanh kh は1にほど遠い値となっており,これは誤り.

3) 【水深 20 m ,周期が 6 s の海面波】の波速を求めるために,まず,式 (5)における定数 a の値を求める.

> (a <- (2*pi/6)^2*20/9.8)[1] 2.238006

これを初期値 x 0 として与え,式 (6)の繰り返し計算を実行すれば,

> (sol <- a)[1] 2.238006> (sol <- a/tanh(sol))[1] 2.289523> (sol <- a/tanh(sol))[1] 2.284427> (sol <- a/tanh(sol))[1] 2.284907

となり,極限値 x∞ は,およそ 2.285 と得る.以下のとおり,式 (6)を数値的に満足することがわかる.

> a/tanh(2.285) /2.285

[1] 0.9999357

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したがって,波速(単位:m/s )は,次のようにして求めることができる.

> round(2*pi/6/(sol/20), 2)[1] 9.17

式 (3)を用いて得られた前問2)での概算値 9.36 m/s は,ほどよく適切であるといえる. 同様に,【水深 5 m ,周期が 12 s の海面波】に関しても,極限値 x∞ を以下のように計算する.

> (sol <- a <- (2*pi/12)^2*5/9.8)[1] 0.1398753> (sol <- a/tanh(sol))[1] 1.006513> (sol <- a/tanh(sol))[1] 0.1830072> (sol <- a/tanh(sol))[1] 0.7728297> for (try in 1:100) sol <- a/tanh(sol)> sol[1] 0.3829601> a/tanh(0.383)[1] 0.382895

その結果,波速(単位:m/s )は,以下の値となる.この場合も,前問2)での概算値は妥当といえよう.

> round(2*pi/12/(sol/5), 2)[1] 6.84

なお,この場合には,収束が遅いので, for 文により 100 回の繰り返し計算を行っている. 【水深 10 m ,周期が 8 s の海面波】について,極限値 x∞ を以下のように計算する.

> (sol <- a <- (2*pi/8)^2*10/9.8)[1] 0.629439> (sol2 <- a/tanh(sol))[1] 1.128703> while (abs(sol2 - sol) > 0.0001) {+ sol <- sol2+ sol2 <- a/tanh(sol)}> sol[1] 0.886725> a/tanh(0.887)[1] 0.8866478

この場合には, 繰り返し数を明示的に与えずに,while 文を用いて,収束の判定を計算機にゆだねた.なお,波速(単位:m/s )は,次の値となる.

> round(2*pi/8/(sol/10), 2)[1] 8.86

なお,この場合は,式 (2)のいずれの近似も適用はできそうにないことがわかる.

> tanh(sol)[1] 0.7097724> tanh(sol)/sol[1] 0.8004425

プリント # 9 の図 -5 に示すように,不動点定理に基づく解法の特徴は,渦巻き線に囲まれるようにして収束点を求めることや,渦巻きの囲み幅の更新が大きくないことである.そのため,収束が比較的に遅いことが知られている.効率的な収束計算のためには,以下に示す Newton 法がよい. 式 (5)を変形し,右辺が定数ゼロとなるように移項して,左辺を関数 f x( ) と置く.

f x x a x( ) =( ) − =tanh 0 (1)

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106

0.8 0.9 1.0 1.1 1.2

−0.

4−

0.2

0.0

0.2

x

f (x)

x0 x1

f(x0)

この曲線( y f x= ( ))に対し,ある点 x f xn n, ( )( ) における接線(= 直線)は,′( ) =

− ( )−

f xy f x

x xnn

n(2)

と表される.この接線が x 軸( y = 0 )と交差する点を xn+( )1 0, と表せば,以下の漸化式が成立する.

x xf x

f xn nn

n+ = − ( )

′( )1 (3)

この時,接線と曲線が同一視できるようであれば,すなわち,x xn= の周辺で ′( ) ≈ ′( )f x f xn であれば,

f x f xn∞ +( ) ≈ ( ) ≈1 0 (4)

となる.したがって,式 (3)の漸化式により収束する値は,式 (1)の関係を満たす.漸化式により繰り返し計算を開始するにあたり,初期値が必要となる.Newton 法は初期値に敏感であり,一般に注意が必要である.ただし,いまの場合には,式 (1)で表される曲線には変曲点を含まないように,都合良く変形しているので,初期値に対して特に考慮する必要がない.これは,次式は常に負となることから確認できる.

′′ ( ) = − −( ) <( )f x a x x2 1 02 3tanh tanh (5)

 例として,【水深 20 m ,周期が 10 s の海面波】について検討しよう.

> (sol <- a <- (2*pi/10)^2*20/9.8)[1] 0.805682> f <- function(x) x - a/tanh(x)> f1 <- function(x) 1 - a*(1 - 1/tanh(x)^2)

> curve(f, 0.75, 1.2); abline(h=0, col="blue")

初期値を含め3項分の漸化式による数列は,以下のように求めることができる.

> for (n in 1:2) sol <- c(sol[1] - f(sol[1])/f1(sol[1]), sol)> sol[1] 1.036761 1.006197 0.805682

Newton 法の考え方をより良く理解するために,漸化式の計算を曲線と接線を図示しよう.

> points(sol, f(sol))> abline(f(sol[3])-sol[3]*f1(sol[3]), f1(sol[3]), lty=2)> abline(v=sol, lty=3); points(sol, rep(0,3))> text(0.83, 0.03, "x0"); text(0.99, 0.03, "x1")> text(0.84, -.44, "f(x0)"); lines(c(.75,.87), rep(f(a),2), lty=5)

図 -1 Newton 法における曲線とその接線

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107

0 5 10 15 20 25

05

1015

20

period

cele

rity

Shallow−waterDeep−water

あと少しだけ繰り返し計算を実行すれば,

> for (n in 1:3) sol <- c(sol[1] - f(sol[1])/f1(sol[1]), sol)> sol[1] 1.037205 1.037205 1.037205 1.036761 1.006197 0.805682

以下のように収束値を得る.片側から攻めていることと,更新の幅が大きいことからも収束が早いことは納得できるであろう(なお,Newton 法であっても,両側から攻めることもあります). 不動点定理や Newton 法を用いた数値解の他の方法も知られる.以下に示す Hunt (1979) の方法は,定数a を与えて x を得る式を,テーラー展開を用いて,陽に表現している(合田 , 1997).

> disp.sol <- function(a) a*sqrt(1 + 1/a/(1 + a*(0.6666666666 ++ a*(0.3555555555 ++ a*(0.1608465608 ++ a*(0.0632098765 ++ a*(0.0217540484 ++ a* 0.0065407983)))))))

前述の例(定数 aの値= 0.805682)で確認すれば,以下のようになる.

> disp.sol(a)

[1] 1.037254

4) 水深 30 m の海において,周期による波速の変化を図示しよう.

> period <- seq(0.01, 25, length=100)> sigma <- 2*pi/period> a <- sigma^2*30/9.8> plot(period, sigma/(disp.sol(a)/30), type="l", ylab="celerity", ylim=c(0,20))> abline(h=sqrt(9.8*30), col="red")> abline(0, 9.8/2/pi, col="blue")> legend(15, 5, c("Shallow-water", "Deep-water"), col=c("red", "blue"), lty=1, bty="n")

なお,深海波および極浅海波の波速をそれぞれ,漸近線として図中に記している.余談になるが,英語表現と日本語表現の違いは興味深い.日本語では,深海および極浅海波というに波に名前をつける表現をするのに対し,英語の場合は,deep-water および shallow-water というように海に名前をつけて表現することが一般的である.波長と水深の比を表すパラメータ kh の大小に対し,海の特性(=水深)を基準に,波の特性(=波長)を見て,波に名前をつける発想もあれば,その逆の発想も当然あるワケである.物事は一面だけを見てはならない,ということですかね,...

図 -2 周期に対する波速の変化

Hunt, J. N. (1979): Direct solution of wave dispersion equation, Proc. ASCE, Vol. 104, No. WW4, pp.457-459.

合田良実 (1990): 港湾構造物の耐波設計,増補改訂,鹿島出版会,333p.

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108

0 5 10 15 20

−20

−15

−10

−5

0

pressure at crest

p

y

DyanmicStatic

Kp = 1

0 5 10 15 20

−20

−15

−10

−5

0

p

y

pressure at trough

NegativeStatic

■ 微小振幅波の特性(2) 圧力分布 【解答】

1) 峰と谷の位相での圧力の鉛直分布を図 -1 に示す. いずれの位相の場合も太実線が全圧力(=静水圧+動水圧)である.縦軸が水深(単位: m ),横軸は圧力を水頭(単位: m )で表している.図示にあたり,波高を 6 m とし,【水深 20 m ,周期が 6 s の海面波】の場合をとりあげた. 峰の位相では,実際の水面は,静水面の上方にあるけれど,静水面から水面までの圧力が描かれていない.これは,微小振幅波の仮定は,水面を静水面の位置にとるため,実際の水面周辺での圧力は不正確となるからである.これは,谷の位相の場合にもいえることである.また,谷の位相では,動水圧は負となり,静水圧に対して負圧になることに注意.

> par(mfrow=c(1,2))> y <- seq(0, -20, length=100); kh <- 2.28> p <- 3 * cosh(kh * (1 + y/20))/cosh(kh) - y> plot(p, y, type="l", xlim=c(0, 21), ylim=c(-20,3), main="pressure at crest")> polygon(c(0, p, 0), c(0, y, -20), density=30, col="red")> polygon(c(0, 20, 0), c(0, -20, -20), col="lightblue", border=NA)> abline(h=c(0, -20), lty=c(3,1))

> yy <- seq(-2, 0, length=10)> pp <- 3 * cosh(kh * (1 - yy/20))/cosh(kh) + yy> lines(pp, -yy, lwd=2, lty=2, col="gray"); lines( p, y, lwd=2)> legend(15,3, c("Dyanmic", "Static"), lty=1, col=c("red", "lightblue"),+ lwd=c(1,2), bty="n")> lines(c(3, 23), c(0, -20), lty=4); legend(15,-2, "Kp = 1", lty=4, bty="n")

> tp <- - 3 * cosh(kh * (1 + y/20))/cosh(kh) - y> tp[tp < 0] <- NA> plot(tp, y, type="l", xlim=c(0, 21), ylim=c(-20,3), xlab="p")> title(main="pressure at trough")> polygon(c(0, 20, 0), c(0, -20, -20), density=30, col="orange")> polygon(c(0, tp[-(1:12)], 0), c(y[-(1:11)], -20), col="lightblue", border=NA)> lines(tp, y, lwd=2); lines(c(0, 20), c(0, -20), col="blue"); abline(h=-20)> legend(15,3, c("Negative", "Static"), lty=1, col=c("orange", "blue"), bty="n")

図 -1 水中圧力

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109

静水として水位が η だけ上昇したのであれば,式 (1)において, K P = 0 である.しかし,波として水位が上昇しているので, K P ≠ 0 であり,動水圧 p gy+ ρ は,水底に向かって減衰していることが,図 -1

からも確認できる.

2) 圧力変動の振幅 pa は,水位変動の振幅 a に対し,次式が成立する.

p

g

a

kha

ρ=

cosh (1)

水圧計により,振幅 pa と周期を計測することができる.得られた周期は,水位変動の周期に一致するはずであり,水深 h が与えられていれば,分散関係式により,波数 kを求めることができる.以上により,式 (1)を用いて,水面波の波高(=水位変動の振幅 a の2倍)を得ることが可能である.以上は,水圧式波高計の原理である. さて,【水深 12 m ,周期が 10 s の海面波】について,Newton 法により,kh の値を求る.

> epsilon <- function(x) (x - a/tanh(x))/(1 - a*(1 - 1/tanh(x)^2))> (a <- (2*pi/10)^2*12/9.8)[1] 0.4834092> sol <- a; eps <- epsilon(sol)> while (abs(eps) > 0.0001) {+ sol <- sol - eps+ eps <- epsilon(sol)}> sol

[1] 0.7564901

したがって,式 (1)より,波高(単位: m )は次のように得られる.

> round(2 * 5000/9800 * cosh(sol), 2)[1] 1.33

3)圧力変動は,水深に応じて減衰するため,水深の深い海底面では微細となる.その場合,観測記録される圧力変動とその他の要因による誤差変動とが区別できなくなる可能性が否めない.したがって,水圧式波高計の短所は,水圧計を水深の深い海底面には設置できない点である.

4)式 (3)で表される速度ポテンシャル φ の鉛直座標に依存する項は,圧力係数 Kp である.

Kk h y

kh

e e

e ee

e

ep

k h y k h y

kh khky

k h y

kh= +( ) = ++

= ++

+( ) − +( )

− +( )

cosh

cosh1

1

2

2 (2)

したがって, kh → ∞の時,

K epky→ (3)

となる.よって,深海波の速度ポテンシャルは,式 (2)で表されることがわかる.ただし,厳密にいえば,y h≈ − → − ∞( ) の領域では,式 (3)は成り立たない.以下の議論は,いささかヤヤコシイけれど,無限を扱う上で重要な示唆を与えている. 式 (2)において,y h≈ − の領域では,

e e k h yk h y k− +( ) −= ≈ − + ⋅ ⋅ ⋅ = +[ ]2 2 1 2ε ε ε (4)

という項は,無視できない(ゼロでない)値をとるからである.しかしながら,この領域では, e ky ≈ 0 であり,式 (4)の項が無視できなくても, Kp ≈ 0 (すなわち,速度ポテンシャルがゼロ)となる.つまり,この領域では,波の性質を検討する上で興味の対象とならない.したがって,興味の対象となる(海面波の影響がある)領域では,式 (3)のように考えて差し支えない(などと,言い訳をすることになる).なお,深海波の境界条件をキチンと与えて微分方程式を解いて得られる(正しい)速度ポテンシャルは,式(3)にキチンと一致している. 以上の議論によれば,正解なのに誤り?!ということになる.本問は,実のところ,有限な水深の境界

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110

条件を与えて微分方程式を解いた後に,極限をとって考えよ,といっている.このような矛盾は,極限の操作と,微分方程式を解くという操作の順番を入れ替えているために生じたワケである.ここでの教訓は,ムヤミに無茶はしない方がイイですよ,デキルことはキチンとやった方がイイですよ,ということです.

5)前問と同じ議論で,式 (5)における鉛直関数に対し,kh → ∞の極限をとったと考えてもよいだろう.また,式 (2)で表される速度ポテンシャルを反射波の速度ポテンシャル φ− と見れば,深海波の場合,入射波の速度ポテンシャルは,以下のように表される.

φσ

σ+ = +( )2age k x tk y sin (6)

これらの入射波と反射波を重ね合わせることにより,重複波の速度ポテンシャルは,以下のように得る.

φ φ φσ

σSk yag

e k x t= + =+ −2

sin cos (7)

6) 式(7)の速度ポテンシャルにベルヌーイの定理を適用して,以下のように得られる.

˜sin sin

p

g

p

gy

g tae k x tS k y

ρ ρ∂ φ∂

σ= +

= − =12 (8)

7) 重複波の場合,流速の水平および鉛直成分は,以下のとおりである.

ux

ag

Ce k x t

vy

ag

Ce k x t

S k y

S k y

= =

= =

∂ φ∂

σ

∂ φ∂

σ

2

2

cos cos

sin cos(9)

流線の式(プリント # 3)に,上式の流速を代入すれば(複雑さをさけるために,ここでは t = 0 とおいて時間を固定する:なぜなら,流線は,ある瞬間の流速ベクトルの接線から得られる曲線であるから),以下の微分方程式を得る.

d y

d xkx= tan (10)

両辺を積分すれば,

ky kx c= − ( ) +log cos (11)

となる.ただし, c は積分定数である.上式を整理すれば,次式で表される流線が求められる.

e k x c c ek y ccos ;= ′ ′ = (12)

流線の具体的な図示は,追加ノートにゆずり,ここでは,特別な場合を考える.

k xn= +2 12

π (13)

とする位置では,定数 ′c はゼロとなり,ky は任意の値で,式 (12)が成立する.したがって,式 (13)で表される直線は,流線の1つである.固体面(つまり,直立壁)は,流線の1つになっていないといけないので,式(13)で表される直線の1つが直立壁である.追加ノートでは, n = −1 としている.なお,式(13)の直線上では,式 (9)をみるとおり,流速の水平成分 u は,ゼロとなる.また,勘違いのないように付記しておくと,式 (13)

で表される位置の全てに直立壁が必要ではない.通常,どこかに1つあればよい.にもかかわらず,式 (13)の位置全てに直立壁があるように,流体は運動しているのである.したがって,完全重複波の場合,峰と谷の半波長ごとにセルになって,水粒子の運動は分断されている.

> !

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111

◆ プリント # 10 での設問 7)において,分散関係式を導く際に,式 (3)で表される速度ポテンシャル φを用いている.ここでは,速度ポテンシャル φ が,式 (3)として表されることを導こう.

 水位変動 η が余弦関数で与えられる(これも,境界条件の1つであろう)とすれば,式 (7)から,水面

での速度ポテンシャルは,

φ φσ

σt x yag

k x ty

, , sin=( ) =( ) = −( )=00 (1)

となる.したがって,水中での任意の位置での速度ポテンシャルは,

φσ

σt x yag

y k x t, , sin( ) = ( ) −( )Φ (2)

と表される(と考えることが自然である).ここで, Φ は鉛直関数であり,水面( y = 0)では,

Φ 0 1( ) = (3)

となる.式 (2)として速度ポテンシャルを表現したことで,水平座標と鉛直座標は変数分離となっている.したがって,以下では,速度ポテンシャルを,水平関数と鉛直関数の積で表される解を探そう,ということである(解は1つ見つかればよいので,簡単な条件で探すのがよい).また,式 (7)を時間で積分したのであれば,時間には依存しないが,空間(水平および鉛直座標)による変化を許す積分定数が付与されるのではないのか?という疑問もあろう.しかし,このような積分定数は必要がない.なぜなら,ここでは,変数分離解を検討しているからである(積分定数として空間関数を付加すれば,解が変数分離しない). 注意すべき点がもう1つ:線形化すると,どうして y = 0 が水面になるの? また,それが正しいならば,波の水面が常に静水面になるのではないのか? あるいは,もっと直接的にいえば,水面は, y = η ではないのか?という疑問もわきおこるであろう.さらに言えば,式 (7)は,式 (1)で表されるベルヌーイの定理において,速度の自乗で表される速度水頭が2次の微小量であるので,それを無視しただけであろう.そうならば,式(7)は,y = η と表される水面で成立するものではないのか?と反論したくなるであろう.しかし,その反論には誤りがある.微小振幅波は,文字どおり,振幅を微小と見て,2次の微小量を無視したものである.水位 η および速度ポテンシャル φ の各種微係数について,それらの絶対値は,高々,振幅と同程度であり,微小量として扱われる.この時,実際の水面( y = η)における非定常項は,以下のようにテーラー展開が可能である.

∂ φ∂

∂ φ∂

η ∂∂

∂ φ∂ηt t y t

y y y= = =

= + + ⋅ ⋅ ⋅0 0

(4)

上式において,右辺の第2項は,2次の微小量であり,無視しなければならない.したがって,

∂ φ∂

∂ φ∂ηt t

y y= =

≈0

(5)

となるので,実際の水面( y = η)における非定常項(∂ φ ∂t )は,水面( y = 0)での非定常項と区別がつかないのである.そのために,微小振幅波理論では,式(7)は,y = 0 を水面とする境界条件となる.このように,静水面であるのに波があるという曖昧さが生じる.式(6)を線形化する際も同様のことがいえる. 式 (5)で表される底面での条件に,式 (1)を代入すれば,

∂ φ∂ σ

σy

ag d

d yk x t

y h y h=− =−

=

−( ) =Φ

sin 0 (6)

となるので,常に成立するためには, Φ は以下の条件が必要である.なお,鉛直関数は,鉛直座標の1次関数であるので,当然,常微分である.

d

d yy h

Φ

=−

= 0 (7)

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112

 最後に,流体内部で常に成立する条件である連続式に,式 (2)を代入すれば,

agk

d

d yk x t

σσ− +

−( ) =22

2 0Φ Φsin (8)

となるので,上式が常に成り立つためは,次式を満足しなければならない.

d

d yk

2

22Φ Φ= (9)

 以上を整理すれば,式 (9)の常微分方程式を所与の境界条件で解く問題であることがわかる.式 (8)の解は,積分定数とともに,次に示すように2とおりに表現が可能である.

Φ y A ky B ky( ) = ( ) + −( )exp exp (10)

Φ y ky ky( ) = ( ) + ( )ϕ ϕ1 2cosh sinh (11)

式 (10)は,式 (11)に,次式を代入すれば同じ解(表現が異なるだけ)であることが確認できる.

cosh ; sinhkye e

kye eky ky ky ky

= + = −− −

2 2(12)

つまり,2つの表現は,定数の取り方が異なるため,表現が異なる.式 (7)で表される境界条件を満足するように解を表すには,式 (11)の表現を用いる必要がある.鉛直関数の1階微分は,

d

d yk ky ky

Φ = ( ) + ( ){ }ϕ ϕ1 2sinh cosh (13)

となるので,式 (7)の条件から,

ϕ 2 0= (14)

である.また,式 (3)の条件から,以下を得る.

ϕ 1

1=cosh kh (15)

以上により,式 (3)で表される速度ポテンシャル φ を得ることができた.

◆ 深海波の場合には,水深が無限大であり,底面がないので,式 (5)で表される底面の境界条件は,不正確である.以下のように修正すべきである.

φy=−∞ = 0 (16)

すなわち,無限遠点では,海面の変動の影響がない,ということである.この条件を満足するように解を表すには,式 (10)の表現を用いる必要がある.この条件より,鉛直関数 Φ は無限遠点でゼロでなければならないので,

B = 0 (17)

となる.また,式 (3)の条件から,

A = 1 (18)

である.以上により,深海波の速度ポテンシャル φ は,プリント # 12 の式 (2)として得られた.

◆ 境界条件の名称: プリント # 10 の設問 5)で得られる海面の条件を,幾何学的条件(kinematic

condition)とよび,ベルヌーイの定理から得られる,もう1つの海面の条件を,動力学的条件(dynamical

condition)とよぶ.

 [ 以上で議論した微小振幅波の微分方程式について,後に,浅海長波の場合にも再検討を行う. ]

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113

■ 微小振幅波の特性(3) 流線 【解答】

1) 流れ関数が一定となる曲線と,流線は,同一であることは,プリント # 7 の設問 6)で示されている.そこで,深海波の場合,重複波の流線は,前問 7)での解答によれば,式 (12)で表されるので,積分定数 ′c を以下のように設定すれば,流れ関数 ′ψ S は式 (1)で表されることがわかる.

′ = ′cag S

σ ψ2 (1)

2) 深海波の波速 C は,プリント # 11 の式(3)を見るとおり,

C g= σ (2)

であることから,深海波の場合,重複波の複素速度ポテンシャルは,

′ = ′ + ′ = ( ) ⋅ −( )W i aC ky i ik xS S Sφ ψ 2 exp exp (3)

となるので,式 (2)のように整理できることがわかる.なお,複素平面を座標軸にとり,

z x iy= + (4)

とすることと,オイラーの公式

exp cos sini iθ θ θ( ) = + (5)

を用いている.

3) 指数関数には,次のような加法定理が知られている(指数関数と三角関数は,同類ですネ!).

sinh sinh cosh cosh sinhα β α β α β±( ) = ± (6)

cosh cosh cosh cosh coshα β α β α β±( ) = ± (7)

この公式は,右辺を展開すれば左辺となることから,容易に確認できる.これを用いると,

i k h iz i k h y ik x

k h y k x i k h y k x

sinh sinh

cosh sin sinh cos

−( ) = +( ) −{ }= +( ) + +( )

となるので,次のように,複素速度ポテンシャルは実部と虚部に分解できる.

   ′ + ′ =( ) ′ = +( ) + +( )φ ψS S Si W aCk h y k x i k h y k x

kh2

cosh sin sinh cos

sinh(9)

したがって,上式から得られる速度ポテンシャルは,プリント # 12 の式 (5)の速度ポテンシャル φSにて,時間項を分離したものに一致することがわかる.ここで,指数関数と三角関数の関係として,

cosh cos ; sinh sini i iθ θ θ θ= = (10)

を用いた.これは,式 (5)に示したオイラーの公式の別の表現である. また,式 (9)から,流れ関数 ′ψ S は,以下のように得られる.

′ = +( )ψ S aCk h y

khk x2

sinh

sinhcos (11)

これらの微係数は,以下に示すとおり, Cauchy-Riemann の関係(プリント # 6 を参照)を満足する.

ux y

ak h y

khk xS S=

′=

′= +( )∂ φ

∂∂ψ∂

σ2cosh

sinhcos (12)

vy x

ak h y

khk xS S=

′= −

′= +( )∂ φ

∂∂ψ∂

σ2sinh

sinhsin (13)

(8)

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114

◆ 進行波の流速成分は,水深が有限である場合,プリント # 10 の式(3)より,

ux y

ak h y

khk x t= ′ = ′ = +( ) −( )∂ φ

∂∂ψ∂

σ σcosh

sinhcos (14)

vy x

ak h y

khk x t= ′ = − = +( ) −( )∂ φ

∂∂ψ∂

σ σsinh

sinhsin (15)

となる(ここで,分散関係式を用いて整理していることに注意).時刻 t = 0 の瞬間での流速成分は,式(12)

および(13)で示される重複波の流速成分と等しい(振幅が半分であることを除いて).流速成分が等しいので,当然,その瞬間の流線も同一である.したがって,基本的に,重複波も,進行波も,流線は同じであることがわかる. 式 (4)に示すような工夫をすれば,“進行する”という特性を活用できる.すなわち,波速で進行する視点(移動座標)から見れば,相対速度ゼロで,波形および流線は静止する(時間項をどのように扱うか?という処理の問題である).このような観点から,設問 4) では,進行波の流線を議論している. 式(14)の水平流速 u は,静止座標 x からみた流速であるので,移動座標 ′ = −( )x x Ct からみた流速は,波速 C を差引いたものとなる.したがって,移動座標で表した速度ポテンシャルを ′φP とすれば,

∂ φ∂

′′

= −P

xu C (16)

を得る.これを積分することにより,式 (5)で表される ′φP が得られる.積分定数を考えれば,変数 y に依存する関数を付与しなければならないが,式 (5)で表される ′φP を変数 y で微分して,式 (15)の鉛直流速 v に一致しなければならない(移動座標は,鉛直方向に移動するものではない!).そうなれば,通常の定数を積分定数として付与しなければならないが,それは ′φP に含めればよいのである.また,Cauchy-

Riemann の関係より,次式が成立しなければならない.同様な議論により,式 (6)の流れ関数 ′ψ P を得る.

∂ψ∂

′= −P

yu C (17)

4) 式 (6)を次式のように変形する.

yC

ag k h y

khk x P= +( ) ′ − ′

ψsinh

coshcos (18)

上式の右辺において,仮りに y = 0 を代入し,分散関係式から,

gkh C

σtanh = (19)

であることから,流れ関数の値が ′ =ψ P 0 となる流線は,以下のように整理できる.

y a k x= ′cos (20)

これはプリント # 10 の式 (3)に示される水面波形である.ただし,振幅が微小であるので,上式は,

y ≈ 0 (21)

とみなすこともできる.したがって,仮りに代入した y = 0 を正当化できる(水面は, y = 0 であって,そうでない,という曖昧さは,前述のとおりであるが,ここにも現れる). また,流れ関数の値が ′ =ψ P Ch となる流線は,

y h= − (22)

となる.このことは,上式を式 (18)に代入すれば,確認できる.また,式 (22)の流線は,底面を示している.流線の具体的な表示は,追加ノートにゆずるが,底面の水平線から,海面の波形まで,振幅が徐々に増大する波形として,流線が描かれる.これは,前述の重複波の流線とはおおいに異なる点で,進行波の特徴を的確に示している.微小振幅波の曖昧さを取り除き,海面の境界条件を線形化することなく,キッチリと(数値的に)満足するように流線を描く方法を Dean (1965) は,移動座標 ′x を用いて示している.

5/18 訂正

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115

kx0/pi

ky0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2

−0.

4−

0.2

0.0

0.2

2 1.8 1.6 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0

time coordinate (direction <−−− )

◆ 微小振幅波の流跡線を以下では検討する.流跡線は,プリント # 7 の式 (7) で示される微分方程式の解である.振幅が微小であるので,流速成分も微小と考え,水粒子の代表位置を X Y0 0,( ) とした時の流速は,式 (14)および (15)より,以下のように与えられる.

u t ak h Y

khk X t( ) =

+( )−( )σ σ

cosh

sinhcos

0

0 (23)

v t ak h Y

khk X t( ) =

+( )−( )σ σ

sinh

sinhsin

0

0 (24)

これを,プリント # 3 の 式 (7)に代入して積分すれば,時刻 t での水粒子の位置 X Y,( ) は,

X t X dX u t dt ak h Y

khk X t

ak h Y

khk X t

( ) − = = ( ) = −+( )

−( )

=+( )

− +( )

∫ ∫0

0

0

0

0 2

cosh

sinhsin

cosh

sinhcos

σ

σ π

Y t Y dY v t dt ak h Y

khk X t

ak h Y

khk X t

( ) − = = ( ) =+( )

−( )

=+( )

− +( )

∫ ∫0

0

0

0

0 2

sinh

sinhcos

cosh

sinhsin

σ

σ π

(25)

(26)

5) 複素速度ポテンシャル ′WP は,式 (5)を実部に,式 (6)を虚部に複素関数 ′WP

を定義すれば,式 (7)

として得る.

0.0 0.2 0.4 0.6

−0.

6−

0.4

−0.

20.

0

kx0

ky0

x

x

x

x

x

Shallow water

0.0 0.2 0.4 0.6

−0.

6−

0.4

−0.

20.

0

kx0

ky0

x

x

x

x

x

Deep water

図 -1 水粒子の運動

図 -2 浅海波と深海波の水粒子の軌道の違い

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116

と求められる(この式にも,微小振幅波の曖昧さが現れている).ここで,時間項を消去するために,三角関数の恒等式: cos sin2 2 1θ θ+ = を用いれば,次式のように,流跡線を得る.

  X t X

k h Y

Y t Y

k h Y

a

kh

( ) −{ }+( ) +

( ) −{ }+( ) =0

2

20

0

2

20

2

2cosh sinh sinh (27)

を得る.これは,楕円を表す式である.楕円の水平径に対する鉛直径の比は,tanh k h Y+( )0 であり,水平径は鉛直径より常に大きい.比が1となる条件は,極限 h → ∞ である.したがって,深海波では,円軌道である.また,式 (25)および (26)の最右辺からわかるように,時間の経過に伴い,位相が減少するので,水粒子は,時計回りに楕円を描く運動をすることがわかる(図 -1 を参照:これは空間波形であるが,この場合は,右から左に見ることで,時間波形として見ることができる). 図 -2 は,水深 20 m において,周期 6 s および 16 s の波について,流跡線を描いたものである.深海の条件では,正円に近い楕円軌道であり,他方,浅海の条件では,底面に近づくにつれて,楕円の鉛直径はゼロとなることがわかる.また,浅海の条件では,楕円の水平径は,深さによらずに,ほぼ同程度とみなせることに注意したい.このことは,浅海波の条件で,微分方程式を変形する上で重要な事実である.なお,以下を実行することにより,図 -1 および -2 を作成できる.

> orbit <-+ function(kx0, ky0, kh, a=0.1, col="blue", lwd=2) {+ circle.x <- cos(2*pi*(0:100)/100)+ circle.y <- sin(2*pi*(0:100)/100)+ lines(cosh(kh * (1 + ky0/kh))/sinh(kh) * circle.x * a + kx0,+ sinh(kh * (1 + ky0/kh))/sinh(kh) * circle.y * a + ky0,+ col=col, lwd=lwd)}

> prtcl <-+ function(kx0, ky0, kh, a=0.1, col="blue", pch=16)+ points(cosh(kh * (1 + ky0/kh))/sinh(kh) * cos(kx0 + pi/2) * a + kx0,+ sinh(kh * (1 + ky0/kh))/sinh(kh) * sin(kx0 + pi/2) * a + ky0,+ col=col, pch=pch)

> (disp.sol((2*pi/16)^2*20/9.8) -> kh.1)[1] 0.5921786

> xx <- seq(0, 2, length=100)*pi> eta <- (20*2*pi/16/kh.1)/9.8 * .1 * cos(xx)> plot(xx, eta, type="l", axes=F, ylim=c(-.4, .2), xlab="kx0/pi", ylab="ky0",+ col="blue", lwd=2)> xx0 <- seq(0, 2, by=.2); axis(1, xx0*pi, xx0); axis(2, -2:1/5)> for (kx0 in xx0*pi) orbit(kx0=kx0, ky0=-.3, kh=kh.1, col="aquamarine3", lwd=1)> for (kx0 in xx0*pi) prtcl(kx0=kx0, ky0=-.3, kh=kh.1)> axis(3, xx0*pi, rev(xx0)); text(pi,.15, "time coordinate (direction <--- )")

> par(mfrow=c(1,2), pty="s") -> op> plot(c(0, .6), c(0, -.6), type="n", xlab="kx0", ylab="ky0")> orbit(kx0=0.3, ky0=-.1, kh=kh.1)> orbit(kx0=0.3, ky0=-.3, kh=kh.1); orbit(kx0=0.3, ky0=-.4, kh=kh.1)> orbit(kx0=0.3, ky0=-.5, kh=kh.1); orbit(kx0=0.3, ky0=-.58, kh=kh.1)> points(rep(0.3, 5), - c(.1,.3,.4,.5, .58), pch="x")> abline(h= - kh.1, lty=3) # it shows the bottom line> title("Shallow water")

> plot(c(0, .6), c(0, -.6), type="n", xlab="kx0", ylab="ky0")> (disp.sol((2*pi/6)^2*20/9.8) -> kh.2)[1] 2.288947

> orbit(kx0=0.3, ky0=-.1, kh=kh.2)> orbit(kx0=0.3, ky0=-.3, kh=kh.2); orbit(kx0=0.3, ky0=-.4, kh=kh.2)

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117

◆ 波動方程式について,浅海域の条件の下で再検討を行う.連続式を鉛直方向に積分すれば,

∂∂

η

η

u

xdz v v

hy y h

−= =−∫ + −( ) = 0 (28)

となる.前述の考察によれば,浅海域では,水平流速 u (およびその微係数 ∂ ∂u x )は,鉛直にほぼ一定とみなせるので,上式の第1項は,次式のように変形できる.

∂∂

∂∂

η ∂∂

∂∂

η ηu

xdz

u

xdz h

u

xh

u

xh h− −∫ ∫≈ = +( ) ≈ (29)

水面および底面での境界条件(幾何学的条件)は,

vt

vy y h= =−= =η

∂ η∂

; 0 (30)

である.式 (29)および (30)を式 (28)に代入したものを,時間で微分すれば,次式が得られる.

hu

x t t

∂∂ ∂

∂ η∂

2 2

2 0+ = (31)

他方,プリント # 10 の式 (7)で示す水面の動力学的条件を x で(2階)微分し,水深 h を掛ければ,

  hu

x tgh

x

∂∂ ∂

∂ η∂

2 2

2 0+ = (32)

となる.式 (31)および (32)から,共通項を消去して,以下の微分方程式が得られる.

∂ η∂

∂ η∂

2

22

2

2tc

xc gh= =; (33)

これは,最も基本的な波動方程式であり,以下の一般解が知られている.

η η ηx t x c t x c t,( ) = −( ) + +( )1 2 (34)

ここで,関数 η 1 および η 2 は,任意の1変数関数である.したがって,水面波形を三角関数に限定されないことに注意せよ! なお,式 (33)で定義される定数 c は波速 C となり,したがって,浅海波は,波形を変化させることなく,速度 c Cor( ) で伝播することがわかる.

> orbit(kx0=0.3, ky0=-.5, kh=kh.2); orbit(kx0=0.3, ky0=-.6, kh=kh.2)> points(rep(0.3, 5), - c(.1,.3,.4,.5, .6), pch="x")> title("Deep water")> par(op)

● 波の速度って,なんだろうか? 時刻 t t= 0 の時, x x= 0 の点での位相は,

θ σ0 0 0= −k x t (35)

と表せる.微小時間 ∆ t の後に,点 x x x= +0 ∆ にて,位相が θ 0 となるならば,次式が成立する.

θ σ

θ σ0 0 0

0

= +( ) − +( )= + −

k x x t t

k xk

t

∆ ∆

∆ ∆

この時,上式の第2項はゼロとなるので,

∆∆

x

t k= σ

(37)

を得る.位相 θ 0 の進行速度は,距離 ∆ x を時間 ∆ t で除したものとして,上式の左辺で与えられる.し

(36)

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118

◇ 式 (33)の波動方程式の一般解が,式 (34)として導かれることを示そう(式 (34)の解が,式 (33)の微分方程式を満足することは,容易に確認できる.ここで検討したいことは,それとは逆向きの議論である). 次式に示すように,等速度 ′c で左右に移動する座標系(2つ)を導入する(符号の付け方に注意せよ!つまり,ここでは,添字としての符号は,式の符号と逆にしている).

x x c t

x x c tc

+

= − ′= + ′

′ >( )0 (38)

静止座標と移動座標に対して,変数変換に伴う微係数の関係は,次のとおりである.

  

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

x

x

x x

x

x x x x

c t

x

c t x

x

c t x x x

= + = +

′=

′+

′= − +

+

+

− + −

+

+

− + −

(39)

したがって,2階の微係数は,

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂ ∂

∂∂

2

2

2 2

2

2 2

22x x x x x x x

= +

= + ++ − + + − −

(40)

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂ ∂

∂∂

2

2 2

2 2

2

2 2

22′

= −

= − ++ − + + − −c t x x x x x x

(41)

となるので,これを式 (33)に適用すれば,次のようになる.

∂ η∂ ∂

∂ η∂

∂ η∂

2 2 2

2 2

2

2

2

22x x

c c

c c x x+ − + −

= ′ −′ +( ) +

(42)

ここで, ′ =c c ととれば,式 (33)の偏微分方程式は,以下のように簡明に表現できる.

 ∂ η∂ ∂

2

0x x+ −

= (43)

変数 x+ および x− のいずれから積分してもよいが,まず,変数 x− で積分することにより,

  ∂ η∂

ηx

x+

+= ( )˙1 (44)

となる.ここで,η̇1 は1変数関数 η1 を微分を表し,この場合,変数 x− に対して(積分)定数である.次に,変数 x+ で積分すれば,積分定数として,関数 η 2 x−( ) を用いて,次のようになる.

η η η= ( ) + ( )+ −1 2x x (45)

ここで,式 (38)を用いて,元の変数に戻せば,式 (34)の一般解が得られる. 式 (39)の逆の関係は,以下のとおりである.

 

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

x x c t

x x c t

+

= −′

= +′

12

12

(46)

たがって,このように得られる位相の伝播速度が,波速のことである(逆に言えば,いわゆる波速と呼んでいるものは,正確には,位相速度である).

● 位相って,そもそも,なんだろうか???  ... 注)波形関数は,必ずしも三角関数に限定されませんネ!

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119

これを,上の議論の途中段階である式 (43)に適用すると,

∂∂

∂∂

∂∂

∂∂

ηx c t x c t

−′

+′

= 0 (47)

となる.2階の偏微分方程式を次のように,1階の偏微分方程式の組として分解することが可能である(方程式の符号と解の座標系の符号に注意).

 

∂ η∂

∂ η∂

∂ η∂

∂ η∂

1 1

2 2

0

0

tc

x

tc

x

+ ′ =

− ′ =

(48)

上式は,輸送方程式ともよばれる.水理学の基本式である,オイラーの運動方程式(プリント # 5 を参照)を空間1次元で書き改めれば,

  ∂∂

∂∂ ρ

∂∂

u

tu

u

xF

p

xx+ = − 1(49)

となり,式 (48)に類似することが明確になる.左辺は,水粒子の流速(微小時間における変位とみればよい)のラグランジュ微分であり,左辺の第2項は移流項を表す.オイラーの運動方程式を輸送方程式の1つと見れば,式 (48)の右辺とは異なり,式 (49)の右辺がゼロではないので,重力という外力と,圧力という内力による影響を受けて水粒子が輸送される様子を記述したものと解釈もできる. ここでは,最も基本的な波動方程式で議論をしているが,さらに複雑な波動方程式に対して,上述に類似した手法は効果を発揮する.つまり,入射波と反射波の混在する楕円型偏微分方程式を,入射波のみの放物型微分方程式に変形する場合である.例えば,次式に示す楕円型偏微分方程式(Berkhoff , 1972;これは,緩勾配方程式と呼ばれる)への適用(Radder, 1979)は有名である.

  cct

c ccg g

∂ η∂

η2

22= ∇ ⋅ ∇( ) (50)

緩勾配方程式は,通常,平面2次元で表現されるので,上式を空間1次元で書き改めれば,

  cct

cx

ccxg g

∂ η∂

∂∂

∂ η∂

2

22=

(51)

となる.式 (51)と式 (33)を見比べよ.なお,ここで, ccg という量は何か?ということを気にしなくて良いが,空間的に一定ではないことに注意する(むしろ,一定であれば,式 (51)は式 (33)に退化).そこで,式(50)に対して式(48) の分解を行い,さらに幾つかの処理を行えば,以下の放物型微分方程式が得られる.

∂ ζ∂

∂∂

∂∂

∂∂

ζ++= −

( )+

xik

k cc

k cc

x

i

k cc yk cc

yg

g

gg

12 2 (52)

なお,水位 ζ + は複素化されており,また,時間による微分演算 ∂ ∂c t( ) は,関数 ik に置き換えられているので,多少の見難さはあるかもしれないが,式 (52)は式 (48)に類似した表現である雰囲気はわかるであろう.

Berkhoff, J. C. W. (1972): Computation of combined refraction-diffraction, Proc. 13 Coastal Eng. Conf., pp.471-490.

Dean, R. G. (1965): Stream function representation of nonlinear ocean waves, J. Geophys. Res., Vol. 70, No. 18, pp.

4561-4572.

Radder, A. C. (1979): On the parabolic equation method for water-wave propagation, J. Fluid Mech., Vol. 95, pp.159-

176.

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120

◆ 重複波の粒跡線を検討する. 式 (12)および (13)に本来含まれていた時間項を戻してやれば(プリント # 12 の末尾にあるように,振幅 a は ′ =a a tcos σ である),水粒子の代表位置 X Y0 0,( ) における重複波の流速は,

u t ak h Y

khk X t( ) =

+( )2

0

0σ σcosh

sinhcos cos

v t ak h Y

khk X t( ) =

+( )2

0

0σ σsinh

sinhsin cos

となる.進行波と同様に,プリント # 3 の式 (7)に代入して積分すれば,

X t X u t dt ak h Y

khk X t( ) − = ( ) =

+( )∫0

0

02cosh

sinhcos sinσ

Y t Y v t dt ak h Y

khk X t( ) − = ( ) =

+( )∫0

0

02sinh

sinhsin sinσ

として,水粒子の位置 X Y,( ) を得る.上式から時間項を消去すれば,以下のように流跡線は求められる. Y t Y X t X k h Y k X( ) − = ( ) −( ) +( ){ }0 0 0 0tanh tan

 さて,整数 n を用いて, i) kx n= +( )2 1 2π を満たす点,プリント # 12 の式 (4)からわかるとおり,この地点における水位は腹である.また,ii) kx n= π を満たす点,この地点における水位は節である.以上の特別な点について,流跡線を具体的に考えよう.

( Coming soon, ... )

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121

0 50 100 150 200

−2

−1

01

23

x

eta

surface elevationenvelop

■ 微小振幅波の特性(4) 浅水変形 【解答】

1) 三角関数の加法定理により,

 

cos cos

cos cos sin sin

k x t k x t k x t

k x t k x t k x t k x t

1 1 0 0

0 0 0 0

−( ) = −( ) + −( ){ }= −( ) −( ) − −( ) −( )

σ σ σ

σ σ σ σ

∆ ∆

∆ ∆ ∆ ∆

および

 cos cos cos sin sink x t k x t k x t k x t k x t2 2 0 0 0 0−( ) = −( ) −( ) + −( ) −( )σ σ σ σ σ∆ ∆ ∆ ∆ (2)

となる.ここで,

∆ ∆kk k

kk k

=−

=+

=−

=+1 2

01 2 1 2

01 2

2 2 2 2; ; ;σ

σ σσ

σ σ(3)

である.成分波を重ね合わせることにより,合成波は,以下のように得られる.

η σ σ= −( ) −( )2 0 0a k x t k x tcos cos ∆ ∆ (4)

合成波は,2つの三角関数の積で表現されており,2つの成分波 η1 および η 2 が類似しておれば,すなわち,

k k1 2 1 2≈ ≈, σ σ (5)

であれば,次のような関係になる.

∆ ∆k

kk

k kk

k k

0

1 20

1 212 2

<< =−

=+

; , (6)

∆ ∆σσ

σσ σ

σσ σ

0

1 20

1 212 2

<< =−

=+

; , (7)

および

∆ ∆k x t

k x t

−−

<<σσ0 0

1 (8)

したがって,距離 x や時間 t の変化量に対し,位相 ∆ ∆k x t+ σ の変化は,位相 k x t0 0−σ の変化にくらべて緩やかである.つまり,位相 ∆ ∆k x t+ σ による変動は,局所的には,ほとんど変化しないと見てよい.そこで,この変動を振幅に含め,包絡線関数 A x t,( ) として定義し,合成波の振幅が変化するものとして扱うことにしている.図 -1 (その詳細は,後述)に見るように,包絡線関数の空間的変化は,波形の空間的変化に比して,穏やかである.

(1)

図 -1 水位変動とその包絡線関数

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122

x

time

0 50 100 150 200

01

23

45

67

89

2) 水深 20 m の海で周期 5 s と 6 s の同一方向に進行する2つの波の合成波について,波数 k1 および k2 は以下のように得られる(確認:関数 disp.sol は,既に定義している).

> (disp.sol((2*pi/5)^2*20/9.8)/20 -> k1)[1] 0.1618715> (disp.sol((2*pi/6)^2*20/9.8)/20 -> k2)[1] 0.1144473

図 -1 は,時刻 t = 0 での合成波の波形と包絡線関数の波形を,範囲 0 1 5≤ ≤∆k x . π で示したものである.> 1.5*pi/((k1 - k2)/2 -> dk)[1] 198.7338> x <- seq(0, 200, length=300)> eta <- function(x,t) cos(k1*x - 2*pi*t/5) + cos(k2*x - 2*pi*t/6)> envelop <- function(x,t) 2*cos(dk*x - 2*pi*t*(1/5 - 1/6)/2)> plot(x, eta(x,0), type="l", lwd=2, ylab="eta", ylim=c(-2,3))

図 -2 は,時刻 t = 0 からの時刻の変化に伴う波形の移動を図示したものである.波形の位相速度(最も大きな波峰の移動が見やすい)と包絡線関数の移動速度(節の移動が見やすい)が異なることが,確認できる.

> plot(x, eta(x,0), type="l", lwd=2, ylab="time", ylim=c(-2,20), axes=F)> for (j in 1:9) {lines(x, eta(x, j) + 2*j)+ lines(x, envelop(x,j) + 2*j, col="red", lty=3)+ lines(x, - envelop(x,j) + 2*j, col="red", lty=3)}> lines(x, envelop(x,0), col="red")> lines(x, - envelop(x,0), col="red"); axis(1); axis(2, 2*(0:9), 0:9)

図 -2 水位変動とその包絡線関数の移動(その1)

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123

x

time

02.

5

60 80 100 120 140 160 180 200 220

DisappearedGenerated

3) プリント # 10 の式(8)で表される分散関係式の両辺を,波数 k で微分すれば,

2 2σ σd

dkg kh

gkh

kh= +tanh

cosh (9)

となる.両辺を σ σC k=( )2 で除すことにより,

21 1

222

2

C

d

dk

kh

kh kh

kh

kh

σσ

σ= + = +sinh cosh sinh

(10)

と変形できる.これにより,式 (4)は得られる.なお,上式の変形において,指数関数の倍角公式:

 sinh sinh cosh2 2kh kh kh= (11)

を利用していることに注意せよ.また,

( sinh ) coshx x x− ′ = − ≤1 0 (12)

および

( sinh )x xx

− == 00 (13)

であるので,以下の関係が成立する.すなわち,(重力による)海面波については,群速度は波速度より遅い.

C

C

kh

khG = +

≤12

12

21

sinh (14)

4)沖波,すなわち,深海波は,極限 kh → ∞ の波であるので,指数関数の性質から,

 2

241

04

4

kh

kh

khe

e

k h

k hsinh=

−→

− (15)

となる.したがって,沖波の群速度は,その位相速度 C0 の半分,すなわち,

  limk h

GCC

→∞= 0

2 (16)

になる.逆に,極浅海波では,極限 kh → 0 であるので,式 (10)の右辺において,

22

2

2 21

16

3

kh

kh

kh

kh khsinh ...=

+ ( ) +→ (17)

図 -3 水位変動とその包絡線関数の移動(その2)

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124

となる.したがって,極浅海波の群速度は,その位相速度と同一,すなわち,

  limk h

GC gh→

=0

(18)

となる.

◆ 群速度は,包絡線関数の波形の移動速度である.また,それは,位相速度より遅い.しかし,これだけの事項だけでは,図 -3 のように1つの波群しかない場合に,波群の先端から抜け出た個々波が消滅し,波群の後端から新たな個々波が生成されることを示すことはできない.そのためには,(単位水平距離あたりの)平均エネルギーと(単位時間あたりの)エネルギーの輸送率を調べる必要がある.

> x0 <- seq(pi/2, 3*pi/2, length=300)/dk> plot(x0, eta(x0,0), type="l", lwd=2,+ xlab="x", ylab="time", xlim=c(60, 220), ylim=c(-2,7), axes=F)> lines(x0, envelop(x0,0), col="red"); lines(x0, - envelop(x0,0), col="red")> dx <- 2*pi*2.5*(1/5 + 1/6)/(k1 + k2)> lines(x0 + dx, eta(x0 + dx, 2.5) + 2.5*2, lwd=2)> x1 <- 2*pi*2.5*(1/5 - 1/6)/2/dk + x0> lines(x1, envelop(x1, 2.5) + 2.5*2, col="red")> lines(x1, - envelop(x1, 2.5) + 2.5*2, col="red")

> axis(2, c(0, 2.5*2), c(0, 2.5)); axis(1, seq(60, 220, by=20))> arrows(c(84,213), c(3.5,3.5), c(84,213), c(4.9, 4.7), col="blue")> text(210, 3, "Disappeared", col="blue")> text( 80, 3, "Generated", col="blue")

> head <- seq(x1[300], x0[300] + dx, length=20)> lines(head, eta(head, 2.5) + 2.5*2, lwd=2, col="gray50")> tail <- seq(x1[1], x0[1] + dx, length=20)> lines(tail, eta(tail, 2.5) + 2.5*2, lwd=2, col="gray80")

◆ 波のエネルギー:単位距離あたりの平均エネルギー(鉛直方向には,総和)を考える.また,質量のエネルギーには,位置によるものと,運動によるものに分類されることに注意.

 ◎ 波による(平均)位置エネルギー: 高さ y にある,微小要素 d x d y× の位置エネルギー は,

dE d x d y gyp = ( )ρ (19)

である.これを鉛直方向に総和(積分)し,水平方向に平均(キッカリ1波長分)をとれば,

EL

dEL

dEg

Ld xp

h h

p

x

x L

p

x

x L

x

x L

= −

= =

− −

+ + +

∫ ∫∫ ∫∫ ∫1 12

0

0

2

0

0

0

0

0

0η η ρ η (20)

となる.ただし,波による位置エネルギーとは,「波が存在することによる位置エネルギーの増分」であるので,波がない時の位置エネルギー,すなわち,静水時の位置エネルギー

12

0

0 0 2

LdE

gh

x

x L

p

h

+

−∫ ∫ = − ρ

(21)

を引いていることに注意せよ(エネルギーが負?などと驚かないように!エネルギーは基準に対する増減

量として表される). # 10 の式 (3)の水位 η を式 (20)に代入し,

12 2

1 22 2

22

22 2 2 2

0

0

0

0

0

0

Ld x

ad

a d a

x

x L

ηπ

θ θ θ θπθ

θ π

θ

θ π+ + +

∫ ∫ ∫= = +( ) =cos cos (22)

となるので,位置エネルギー Ep は以下のように得られる.

  Ega

p = ρ 2

4(23)

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125

 ◎ 波による(平均)運動エネルギー: 微小要素 d x d y× の運動エネルギー は,

dE d x d yu v

k = ( ) +ρ2 2

2(24)

である.ここで,進行波の流速の大きさの自乗を展開すると,

u v

a

k h y k x t k h y k x t

kh

2 2

2

2 2 2 2

2

+( )

=+( ) −( ) + +( ) −( )

σσ σcosh cos sinh sin

sinh (25)

となる.ここで,流速の成分として,微小振幅波の特性(3)の解答における式 (14)および (15)を用いた.上式の右辺の分子に関して,以下のような整理ができる.

cosh cos sinh sin

cosh cos cosh cos

cosh cos

2 2 2 2

14

12

1 2 1 2 1 2 1 2

2 2

ϕ θ ϕ θ

ϕ θ ϕ θ

ϕ θ

+

= +( ) +( ) − −( ) −( ){ }= +( )

また,分散関係式から,

σ 2

22 2k kh

g

khsinh sinh= (27)

と変形できる.したがって,式 (24)を鉛直方向に積分し,水平方向に平均をとれば,運動エネルギー は,

EL

dEL

dxga k h y k x t

khd ky

ga k h y

kh

ga

k

h

k

x

x L

y hx

x L

y h

= ≅+( ) + −( )

( )

= +( ) =

+

= −

+

= −

∫∫ ∫∫1 12

2 2

2

2

2

2 2 4

0

0

0

0 0 2

2 0 2

η ρ σ

ρ ρ

cosh cos

sinh

sinh

sinh

と得られる.なお,積分範囲は,底面( y h= − )から水面( y =η)までであるが,水面変動は微小であるので,水面を y =0 にとっている(もはや,微小振幅波として,当然のルールですネ!). 以上から,波の平均エネルギー(単位距離あたり) E は,以下のように導かれる.

E E Ega

p k= + = ρ 2

2(29)

◆ 波のエネルギー輸送率: エネルギーは(仕事)であり,(力)*(距離)として定義できる(位置エネルギーは,基準面から重力を持ち上げる仕事と解釈できる).さて,波の場合には,鉛直断面に変動水圧がかかり,鉛直断面は水粒子の運動により移動する.したがって,鉛直断面上の微小要素 d y が,微小時間dt の間に行う仕事は,

  dW pd y udt= ( )( ) (30)

また,波は非定常な運動であるので(式 (20)では1波長で積分したのとは対照に,ここでは1周期分で積分し),単位時間あたりの平均量として,波による仕事率 W を考える.

 WT

dWht

t T

=−

+

∫∫1

0

0 η

(31)

圧力 p および水平流速 u を以下のように略記する.

p gy g K Kk h y

khP P+ = = +( )ρ ρ η ;cosh

cosh(32)

u F Fk h y

khu u= = +( )η σ;cosh

sinh(33)

(26)

(28)

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126

式 (32)および (33)を式 (31)に代入して,仕事率 W は,次のように整理できる.

WT

dWT

dt g K y F d yga

K F d yht

t T

P u

ht

t T

P u

h

= = −( ) =−

+

+

−∫∫ ∫∫ ∫1 1

20

0

0

0

22η η η

ρ η η ρ(34)

上式における積分において,運動エネルギーでの考察と同様に,積分範囲に注意して,

K F d y K F d y Ck h y

khd ky

C kh

khC

P u

h

P u

h h

G

− − −∫ ∫ ∫≅ = + +( ) ( )

= +

=( )

η 0 0 1 2

2

21

22

cosh

sinh

sinh

と計算できる.したがって,波による仕事率(単位時間あたりの平均量) W は,

W ECG= (36)

と得られる. 時間間隔 ∆t の間に鉛直断面に平均的に流入したエネルギーは,水平距離 ∆x の波のエネルギーとして,鉛直断面の前方(波の進行方向)に平均的に存在するはずである.すなわち,

  W t E x∆ ∆= (37)

である.これを変形すれば,

  ∆∆

x

t

W

ECG= = (38)

となる.すなわち,鉛直断面に流入したエネルギーは,式 (4)に示す群速度 CG で輸送されることを意味する.したがって,図 -3 において,包絡線関数は群速度で移動するので,包絡線関数の前方からハミダシた波形は,エネルギーを持たないので消滅し,包絡線関数の後方では,消滅した波形分のエネルギーが補填されて(エネルギー保存),新たに波形が生成されるのである. エネルギー流入率のことをエネルギー・フラックスという.同じ発想をすれば,式 (30)で圧力 p の代わりに,単位量1ととれば,体積フラックスを計算することになる.つまり,体積フラックスは,流量のことである.

◆ 浅水係数: 上述の考察において,鉛直断面の前後で水深が階段状に変化する場合を考える.この時,単位時間に流入したエネルギーと単位時間に流出したエネルギーは,保存されるべきである.したがって,

   EC EC ECG G G= ⇔ ( ) = ( ) +const .

_ (39)

となる(添字のプラス・マイナスは,断面の前後を表す).式 (29)の波のエネルギーを波高 H で表せば,

EgH= ρ 2

8(40)

となるので,断面の片側に深海波を,他方を水深 h の微小振幅波があるとすれば,沖波(深海波)の波高H0 に対し,水深 h での波高 H の比は,式 (5)で表される浅水係数 K s として表される.なお,沖波の群速度は,式 (13)で表されることを用いている. 注意(1): 鉛直断面で保存される量がもう一つあることに注意せよ!それは,波の周期(言い方を換えれば,角周波数 σ )である.鉛直断面の前後での水位の振動周期が異なれば,鉛直断面上にある水位はどのように振動すればよいのだろうか? 想像せよ! 周波数は空間的に連続する必要がある.逆に,保存されない量は,波の波長 (あるいは,波数 k x( ) )である.波数は空間的なものであり,鉛直断面の前後の各領域で,波長が異なるワケである.言い方を替えれば,1点という長さゼロの領域で,波の周期は定義できるのに対し,波長は定義できない.波長を定義するには,有限な長さの領域においてはじめて可能である.したがって,波数は不連続が許される.なお,波数が変化するので,波速 C x( ) も鉛直断面の前後で変化する.

(35)

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127

 上記のことをもう少し数学でキチンと言うためには,次式に示す波数の保存式を用いる必要がある.

∂∂

∂σ∂

k

t x+ = 0 (41)

これは,波の位相 θ に対して,以下のように,微分の順番に関して入れ替え可能であることから導かれる.

∂ θ∂ ∂

∂ θ∂ ∂

2 2

t x x t= (42)

さて,上述の浅水変形では,暗黙の了解として,定常状態(∂ ∂k t = 0)を考えている.したがって,式(41)より,次式が成立する.よって,周期の空間的変化はないことがわかる.

 ∂σ∂ x

= 0 (43)

ところで,式 (42)における位相関数 θ は,厳密に言えば,

θ σ= −k x t (44)

ではない.なぜなら,上の表現の場合には,波数の変数は時間のみ,角周波数の変数は空間変数のみし

かとれないため,一般的ではない(つまり,式 (44)における波数 k を k x t,( ) ,角周波数 σ を σ x t,( )と表すと,式 (42)でおかしくなる).一般的な位相関数 θ は,実は,次式のように表す必要がある(再び,位相ってなんだろうか? 奥が深いネ!).

θ σx t k x t dx x t dtx t

, , ,( ) = ′( ) ′ − ′( ) ′∫ ∫ (45)

以上の考察は,ドップラー効果等を考える上で重要である.

 注意(2): 式 (5)に関して,波高に関する議論であるが,波形をイメージしてはイケナイ.この場合,海面下を見るのは御法度である.なぜなら,鉛直断面で急激に変化する場合には,波の反射が生じる.そもそも,深い側の面にある水粒子は,進行波の特性である楕円軌道の流跡線を描くことはできない.したがって,断面で水深が変化するのではなく,コントロール・ボリュームを考えて,その流入断面と流出断面で考えていると想像しなければならない.また,その途中でどのように水深変化があり,それに伴って,どのような波浪変形が生じるかについては,ここでは一切の議論をしていない.このような波浪変形を検討するには,例えば,海底面の起伏が波長に比して緩やかであることを条件に,微小振幅波の特性(3)の解答で紹介した緩勾配方程式を用いた計算が必要となる.

5) 式 (5)は,浅水係数の誘導を想起させる意味で記憶しやすいが,計算するにはメンドウな形式である.プリント # 11 の式 (3)の関係より,ある地点での波速 C と沖波の波速 C0

の比は,

   C C kh0 = tanh (46)

である.これを用いれば,以下のように変形できる.

1 122

2K khkh

khkh kh khs = + = + −( )tanh

coshtanh tanh (47)

以上により,式 (6)が得られる.このように表現すれば,分散関係式を解いた時(すなわち,kh を算出した時),その地点での浅水係数 K s

をスマートに計算できる.

6) 式 (6)を用いて,浅海での波高をもとに,沖波の波高を逆算せよ,という問題である.

> dispr <- function(alpha) {+ f1 <- function(x) x - (x - alpha/tanh(x))/(1 + alpha*(cosh(x)^2 - 1))+ res.bis <- alpha+ res <- f1(res.bis)+ while (abs(res - res.bis) > 10e-6) { res.bis <- res+ res <- f1(res.bis)}+ res}

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> shoaling.coef <- function(kh) 1/(tanh(kh) + kh * (1 - tanh(kh)^2))

> (dispr((2*pi/14)^2*8/9.8) -> kh.6)[1] 0.4169426

> round(3/shoaling.coef(kh.6), 2)[1] 2.24

したがって,沖波の波高は 2.24 m である(スマートでショ!).

7) 式 (6)の浅水係数を図示する際に,横軸を kh でとるよりも,沖波の波数 k 0 を用いて, k h0 を横軸にとる方が都合のよい場合が多い(具体的な図示は,追加ノートにゆずる).なぜなら,ある周波数の波が入射している時に,水深 h が変われば,波数 k h( ) も変わる.そのため,水深 h に対し,横軸 kh (すなわち, k h h( ) )は線形関係にない.これに対し,周波数 σ が与えられれば,波数 k C g0

2= =( )σ σは1つに定まる.そのため,横軸 k h0 は水深に比例する.例えば,地点 A の水深の半分の水深をとる地点 B に対し,横軸を k h0 でとった図では,2地点の浅水係数の比較は容易である.それに対し,横軸を

kh でとった場合には,2地点の比較に手間がかかり,なんと苦労の多いことか! また,水深を固定した時には,横軸 k h0 で示された図は,入射波の周期の大小による浅水係数の大小が読み取れる図となる.合田 (1998) のテキスト,p.82 の図 4.3 浅水係数は,横軸に,h L と T h2 の2種類の目盛りが付けてある.後者のものは, k h0 の逆数に相当する.同様のことは,波速を図示する場合にもいえる.すなわち,式 (41)を用いて,横軸に kh をとり, 波速 C C0 を図示するのは容易であるが,タイヘン使い勝手が悪い.この場合も,横軸は k h0 とするのが望ましい.

◆ 波の屈折: 図 -4 は水平面内を斜めに進行する波を俯瞰したものである.線分 AB を含む直線(点線)で水深が異なる(点 C を含む海域と,点 D を含む海域).黒い実線が波向線であり,波の進行方向を示す.青い実線は波がイメージできるように描いた波形である.波向線と直交する点線が同位相線である(位相が峰を表す時,波峰線ということもあるが,図 -4 で描いてあるのは,ゼロクロスの位相をとる同位相線である).水深が一定となる各領域内部では,波向線は互いに平行である(したがって,波向線に直交する同位相線も,互いに平行である).なお,図中の座標軸は,(注2)で用いる(ひとまず気にしない). 図 -4 での2つの同位相線が示すように,点 C の波形が点 A に移動する時間 ∆t の間に,点 B の波形が点D に移動する.線分 AB を含む点線で区切られる2つの海域の各々で,水深が異なるため,波速度も異なる.したがって,線分 AC およびDB の長さは等しくないので,四角形 ACBD は長方形ではない(が,1組の向き合う2角は直角であるので,タダの四角形でもありません).そして,波形は,点 A に到達の後に,波峰線は線分 BD に平行となるように折れる.これが,屈折の現象である.ここで,各海域での波速 Ci =1 2,

と四角形 ACBD の辺(と対角線)との関係は,以下のとおりとなる.

C t1 1∆ = =AC AB sin ϕ (48)

C t2 2∆ = =BD AB sin ϕ (49)

なお,入射角 ϕ 1 は,入射波の波峰線と線分 AB のなす角であり,角ABC に等しい(入射角ゼロとは,波峰線と線分 AB が平行になることであり,波向線は線分 AB に直角入射).また,屈折角 ϕ 2 は,屈折波の波峰線と線分 AB のなす角であり,角ABD に等しい.式 (48)および (49)に対し,共通する所要時間 ∆tと四角形 ACBD の対角線 AB を消去すれば,

C C C1

1

2

2sin sin sinconst .

ϕ ϕ ϕ= ⇔ = (50)

となる.これは, (高校の物理でもお馴染みの) スネルの法則である. 高校の物理とは異なり,水域防災工学では,むしろ,興味の対象は波高の変化である.異なる2つの波向線(ここでは,CA と BD )に挟まれる領域では,エネルギーが,断面 BC から流入し,断面 AD から流出する.断面 AC や断面 BD において,エネルギーの流出・流入は一切ない(コレって,何か似たモノあるネ! そう,波向線の代わりに流線を,流入・流出するエネルギーの代わりに質量をとれば,連続式の誘導です).したがって,領域 内で砕波などのエネルギーの散逸がなければ,次式が成立する.

bEC bECG G( ) = ( )1 2 (51)

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129

A

B

C

D

Wave Refraction

xy

ここで, b は波向線間隔であり,図 -4 の場合には,

b b1 1 2 2= = = =BC AB AD ABcos , cosϕ ϕ (52)

となる.また,浅水係数を検討した式 (39)では,入射角 ϕ 1 0= および屈折角 ϕ 2 0= として,

b b1 2 1= = =( )AB (53)

としていたことになる(波向線の間隔 AB を単位幅でとる). さて,入射波を深海波にとれば(沖波として,波速 C0 などと添字 0 を付し,他方,屈折波の諸元には添字を付けないものとすれば),式 (51)は,

E

E

C

CG0

0 0

2=

cos

cos

ϕϕ (54)

と変形できる.したがって,屈折係数 K r を

K r =cos

cos

ϕϕ

0(55)

と定義すれば,屈折後の波高 H は,式 (5)の浅水係数 K s も用いて次のように表される.

H K K Hs r= 0 (56)

なお,式 (55)の屈折係数には,屈折角 ϕ も含まれるので,使いにくい.式 (50)を用いれば,

KC

C

C C

r = −

= −

= + −( )[ ]{ }

− −

1 1

1 1 1

2

20

1 4

20 0

2

20

1 4

0

2 20

1 4

sincos cos

tan

tan

ϕϕ ϕ

ϕ

ϕ

と変形できる. 式(51)にもどって,2つの海域での波が,いずれも極浅海波とみなせるとしよう(点 D での水深を h1,点 C での水深 h2 ).その場合,式(18)から群速度は水深で表せる.また,屈折が生じる場所を湾とし,湾全体が2本の波向線で囲まれるとみなせば,長辺 AC (= 湾口幅 b1

)から波高 H1 の波が入射し,短辺

BC (= 湾奥幅 b2 )に波高 H2 の屈折波が到達する(波の進行方向は必ずしも,右上から左下とは限ら

図 -4 海面波の屈折

(57)

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x

y

O

k

k1

k2

s

n

ψ

ない.この場合は,逆に見よ! また,添字の付け方も式 (52)と逆にしている).この時,式(51)は,

H

H

h

h

b

b2

1

1

2

1 4

1

2

1 2

=

(58)

と変形できる.この式をグリーンの法則といい,水深が浅く湾奥で幅が狭くなる湾に,波が入射した時に波高が増大することを簡潔に表現している.なお,誘導の過程から,式 (58)は,式 (56)の特殊なものとわかり,式 (58)において,水深比が浅水係数の,湾幅比が屈折係数の役割であることが確認できる. 一般に,ビーチでは湾奥が扇形に開いているため,波の屈折のため波高が減少し,他方,岬付近で波高が増大し砕波しているのは,波の屈折のため波向線が集中することによる. 屈折角が 90 度をこえる場合には,波はもはや屈折せずに反射する.比較的沿岸部で地震がおこり,それにより発生した津波が大陸棚で反射して戻ることもある点に注意.

注意(1): 屈折係数だけで,屈折後の波高が決まるのではない.屈折は浅水変形を必ず伴うので,屈折後の波高の算出には,浅水係数も必要であることに注意(では,浅水係数も含めて,屈折係数と定義すればイイノニ!と思うかもしれないが,2つの作用を分解して表現することが習わしである).

注意(2): スネルの法則に対し,式 (41)に類似する議論(このような式展開は,米国の学部レベルの標準的なテキスト(Dean・Daltymple, 1991)でもとりあげている点では,君たちも知らないわけにはいかない!)を行う.式 (44)に示す,空間1次元の波浪場における位相関数 θ に対して,空間2次元( xy 水平面内を伝播)の波浪場の場合,位相関数 θ は,次のように表せる.

 θ σ= + −k x k y t1 2 (59)

ここで, x y,( ) は座標である.また, k k1 2,( ) は波数ベクトル rk の成分であり,その大きさは k k=( )r

と記す. 図 -5 に示すように,波数ベクトル rk と x 軸とのなす角を ϕ とすれば,ベクトル

rk は,以下の

ように表せる.

rk

k

kk=

=

1

2

cos

sin

ϕϕ (60)

なお,分散関係は,この場合,波数(ベクトルの大きさ) k と角周波数 σ との関係である.この時,座標ベクトル

rx x y= ′( , ) を用いれば,位相関数 θ は次のように表現することもできる.

   θ σ= ⋅ −r rk x t (61)

したがって,微分 ∇ = ′( , )∂ ∂x y (注:鉛直方向の微分はしない;ベクトル

rx との次元との整合性から

明らか)を用いて逆の言い方をすれば,波数ベクトル rk は次のように表現できる(これらの表現は,位相

関数 θ を式(45)のように表す場合でも可能である.ただし,積分は線積分でとる).

rk = ∇ θ (62)

図 -5 波数ベクトルと2つの直交座標系

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 さて,準備が整った.式 (62)の“回転”(=方向微分との外積)をとれば,右辺は常にゼロである.すなわち,以下のようになる.

  ∇ × = ∇ × ∇ =

=rk

x y y xθ ∂

∂∂θ∂

∂∂

∂θ∂

0 (63)

(コレって,渦なし流れ ∇ × =r

ω 0 で速度ポテンシャル φ が存在する話と全く同じだ!と思った人は,脈アリです)したがって,式 (63)は,以下のように表すこともできる.

∂∂

∂∂

k

x

k

y2 1= (64)

図 -4 (座標軸に注目.また,そのとり方に注意=波は C A→ と進行するイメージ)において,y 方向

の変化は一切考えていないので,変数は x のみで,微分は常微分となる.すなわち,

d k

d x

sin ϕ( ) = 0 (65)

となり,これを積分することにより,以下のように,式 (50)のスネルの法則が得られる.

kC

sin const .sin

const .ϕ θ= ⇔ = (66)

 スネルの法則について,さらに表現を書き換えよう.図 -5 のように,各点での波数ベクトルに平行にs 軸をとり,それに直交するように n 軸をとる移動座標系を考える(極座標とは異なる).この時,座標の変換は,次式で表される.

x

ys n

=

+−

cos

sin

sin

cos

ϕϕ

ϕϕ (67)

また,微係数の関係は,次のとおりである.

∂∂

ϕ ∂∂

ϕ ∂∂s x y

= +cos sin (68)

∂∂

ϕ ∂∂

ϕ ∂∂n x y

= − +sin cos (69)

さて,式 (64)にて,式 (60)を適用し,波数 k および角 ϕ は,座標に依存して変化することに注意すれば,

sin cos cos sinϕ ∂∂

ϕ ∂ ϕ∂

ϕ ∂∂

ϕ ∂ ϕ∂

k

xk

x

k

yk

y+ = − (70)

と変形できる.さらに,波数に関する微分と角に関する微分でまとめ,式(68)および(69)の関係を用いれば,

ks

k

n

∂ ϕ∂

∂∂

= (71)

となる.さらに,

 1 1k

k

nk

n k

∂∂

∂∂

= −

(72)

であることから,以下のように非常に簡潔な表現として,スネルの法則を書き換えることができる.

∂ ϕ∂

∂∂s C

C

n= − 1

(73)

この式を利用すれば,波向線を曲線として沖から順に計算することができる.

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132

L1

L2

L

NG

NG

k1

k2

k

Wave Length & Wave Number

注意(3): 波数と波長は,単純に逆数の関係であり,勘違いはおこりにくいが,波数ベクトルと波長の関係では,勘違いがおこる可能性がある.波数 k とその座標軸成分 k1

および k2 の関係は,式 (60)であり,

それを図示すれば,図 -5 のようになる.他方,波長とその座標軸成分(座標軸上の波を見たもの)は,図 -

5 を早とちりして,図 -6 の右上に示すような NG としてしまいがちである.正しくは,図 -6 の左下に示すものとなる.ポイントは同位相線(波峰線)も描くことである.波長の場合,その成分 L1

および L2

を数式で表せば,以下のとおりである.

 L

LL

1

2

1

1

=

cos

sin

ϕϕ (74)

図 -6 平面波浪場における波長の早とちり

Dean, R. G. and R. A. Daltymple (1991): Water wave mechanics for engineers and scientists, World Scientific, 353p.