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Instructions for use Title 消化管ナトリウム・グルコース共輸送体1(SGLT1)のグルカゴン様ペプチド-1分泌における役割、及び 2型糖尿病治療におけるSGLT1阻害の意義に関する研究 Author(s) 小熊, 高広 Citation 北海道大学. 博士(薬科学) 甲第13172号 Issue Date 2018-03-22 DOI 10.14943/doctoral.k13172 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/69375 Type theses (doctoral) File Information Takahiro_Oguma.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Title 消化管ナトリウム・グルコース共輸送体1(SGLT1)のグルカゴン様ペプチド-1分泌における役割、及び2型糖尿病治療におけるSGLT1阻害の意義に関する研究

Author(s) 小熊, 高広

Citation 北海道大学. 博士(薬科学) 甲第13172号

Issue Date 2018-03-22

DOI 10.14943/doctoral.k13172

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/69375

Type theses (doctoral)

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Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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博士学位論文

消化管ナトリウム・グルコース共輸送体1(SGLT1)の

グルカゴン様ペプチド-1分泌における役割、及び

2型糖尿病治療における SGLT1阻害の意義に関する研究

北海道大学 大学院生命科学院

生命科学専攻 生命医薬科学コース

薬理学研究室

2018 年3月

小熊 高広

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目次

略語表 4

序論 6

本論

第一章 SGLT1阻害が GLP-1分泌に及ぼす影響の検討

緒言 9

結果

1.1 使用化合物の in vitro 活性 10

1.2 SGLT 阻害薬 phloridzin が血漿中 aGLP-1 濃度に及ぼす影響の評価 12

1.3 SGLT 阻害薬 canagliflozin が血漿中 GLP-1 濃度に及ぼす影響の評価 14

1.4 SGLT 阻害薬 CGMI が血漿中 aGLP-1 濃度に及ぼす影響の評価 17

1.5 SGLT 阻害薬 CGMI 及び canagliflozin が消化管内糖質吸収に及ぼす

影響の評価 20

考察 24

小括 27

第二章 異なる構造の SGLT阻害薬や他の糖尿病治療薬が GLP-1分泌に及ぼす影響

の検討

緒言 28

結果

2.1 使用化合物の in vitro 活性 30

2.2 異なる組み合わせの SGLT 阻害薬及び DPP4 阻害薬の併用投与が血漿中

aGLP-1 濃度に及ぼす影響の評価 31

2.3 DPP4 活性欠損ラットにおける SGLT 阻害薬 GTB 及び糖尿病治療薬

metformin が血漿中 aGLP-1 濃度に及ぼす影響の評価 34

考察 37

小括 38

第三章 SGLT阻害薬とDPP4阻害薬の併用の治療学的意義の検討

緒言 39

結果

3.1 ZDF ラットにおける SGLT 阻害薬及び DPP4 阻害薬の併用投与の薬効評価 40

3.2 db/db マウスにおける SGLT 阻害薬及び DPP4 阻害薬の併用投与の薬効評価 43

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3

考察 45

小括 46

総括 47

実験方法

1. 試験材料 48

2. 試薬調製 49

3. 試験方法 53

参考文献 58

COI 63

謝辞 64

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略語表

2-DG: 2-deoxy-D-glucose

-GI: -glucosidase inhibitor

aGLP-1: active glucagon-like peptide-1

AMG: -methyl-D-glucopyranoside

ANOVA: analysis of variance

AUC: area under the curve

ΔAUC: incremental area under the curve

CGMI: 3-(4-cyclopropylphenylmethyl)-1-(-D-glucopyranosyl)-4-methyl-

indole

CHO: chinese hamster ovary

CMA: (2S)-2-Cyano-1-[trans-4-(morpholinocarbonyl)cyclohexylamino]-

acetylpyrrolidine

Cmax: maximum plasma concentration of the drug

CMC: carboxymethyl cellulose

CV: cardiovascular events

DMEM: Dulbecco’s modified Eagle’s medium

DMSO: dimethylsulfoxide

DPP4: dipeptidyl peptidase-4

EDTA: ethylenediaminetetraacetic acid dipotassium salt

ELISA: enzyme-linked immunosorbent assay

GGM: glucose/galactose malabsorption

GIP: glucose-dependent insulinotropic polypeptide

GLP-1: glucagon-like peptide-1

GLUT: facilitative glucose transporter

Gly-Pro-MCA: Glycyl-L-proline 4-methylcoumaryl-7-amine

GPR: G-protein coupled receptor

GTB: 1-(-D-Glucopyranosyl)-4-chloro-3-[5-(6-fluoro-2-pyridyl)-2-

thienylmethyl]benzene

HbA1c: hemoglobin A1c

HF-KK: high-fat diet-fed KK

HPMC: hydroxypropyl methylcellulose

IC50: half maximal inhibitory concentration

IGT: impaired glucose tolerance

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KO: knockout

KRPH: Krebs-Ringer Phosphate Hepes

LC/MS/MS: Liquid Chromatography - tandem Mass Spectrometry

ND: not determined

OGTT: oral glucose tolerance test

PK: pharmacokinetics

PYY: peptide YY

RI: radioisotope

SD: Sprague-Dawley

SEM: standard error of the mean

SGLT: sodium glucose cotransporter

SU: sulphonylurea

Tas1R: taste 1 receptor

tGLP-1: total GLP-1

WT: wild-type

ZDF: zucker diabetic fatty

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序論

糖尿病は,インスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群である 1.イ

ンスリン作用が不足する機序には,インスリンの供給不全と,インスリン感受性の低下(インスリン抵抗

性)とがあり,その成因から糖尿病は1型,2型,その他の機序・疾患によるもの,妊娠糖尿病の4

種に大別される.1型糖尿病が膵β細胞の破壊性病変によるインスリンの絶対的欠乏に起因して発症

するのに対し,全糖尿病患者の 90%以上を占める2型糖尿病は,遺伝因子や生活習慣等によりイ

ンスリン分泌低下やインスリン感受性低下を来して発症する.糖尿病における持続的な高血糖は特有

の合併症を引き起こすことが知られており,網膜症・腎症・神経障害といった細小血管症,および心筋

梗塞や脳卒中の発症リスクが増加する大血管症などが挙げられる 1, 2.こうした合併症の発症,増悪を

抑止するためには,高血糖に起因する代謝異常を改善することが最も重要である.

インスリン非依存性の2型糖尿病に対する基本治療方針は,食事療法や運動療法,それでも不

十分な場合は薬物療法を追加することで,血糖値を正常な範囲内に保つことである 3.HbA1c は過

去1-2ヶ月間の平均血糖値を反映する空腹時血糖の平均指標であるが,HbA1cを6.9%未満に抑

えることで細小血管症の発症・進展をほぼ抑制できることが報告されている 4.一方,大血管症は食後

の血糖値だけが高い耐糖能異常(IGT)の段階から発症・進展することが知られており 5,空腹時高

血糖だけでなく食後高血糖も是正することが必要である.したがって,血糖コントロールの理想的な目

標は,1日を通じて空腹時および食後の高血糖が是正され,その結果 HbA1c 値が正常化することで

ある 3.

これまでに数多くの種類の血糖低下薬が開発され,糖尿病治療に広く用いられてきた.1950 年代

に開発されたスルホニル尿素(SU)薬は,強い血糖降下作用と,細小血管症抑制のエビデンス 6 か

ら,2000 年代まで国内で最も多く使用されてきた経口血糖低下薬である 7.SU 薬は,膵β細胞上

の KATP チャネルの SUR1 サブユニットに結合し,血糖非依存的にインスリン分泌を促進する.しかし体

重増加や低血糖などの副作用頻度が高く,膵β細胞を疲弊させる二次無効が生じやすいといった点が

課題となっていた.こうした欠点を改善した新薬が近年相次いで登場し,血糖低下薬における処方割

合が急増している 7.

インクレチンとは,食事摂取応答性に消化管から分泌され,膵β細胞を刺激してインスリン分泌を促

進するホルモンの総称である.主なインクレチンとしてグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド

(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)が挙げられる.GIP は小腸上部に多く存在する K 細胞

から分泌され,インスリン分泌促進作用以外にも栄養素を脂肪細胞に蓄積する作用や,骨芽細胞の

機能を高めて骨へカルシウムを蓄積する作用を持つ 8.また GLP-1 は小腸下部に多く存在する L 細胞

から分泌され,膵α細胞のグルカゴン分泌抑制作用や,視床下部での食欲抑制作用,膵臓や心臓に

対する臓器保護作用など,多面的な抗糖尿病作用を示すことが明らかにされている(Fig.1)8.イン

クレチンはこうした有益な作用を持つ一方,分解酵素である DPP4 により速やかに不活化されるため,

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Fig.1 The multiple physiological effects of GLP-1 and GIP.

Adapted from Ref.8.

活性型の GIP および GLP-1 の血中半減期は約 2-5 分と非常に短い.そこで血中インクレチン濃度を

高め,インクレチン作用を増強する薬剤としてインクレチン関連薬が開発された.2009 年に登場した

DPP4 阻害薬は,DPP4 によるインクレチンの分解を阻害し,活性型の GIP 及び GLP-1 の血中濃度

を高めることでインスリン分泌を促進する経口血糖低下薬である.SU 薬と異なり,インクレチンは血糖

依存的にインスリン分泌を促進することから,DPP4 阻害薬は SU 薬と比べて低血糖の発現率が低い 9.

またインクレチン刺激によるインスリン分泌は,SU 薬のような二次無効を起こしにくく,むしろ膵β細胞に

対して保護的に作用するといわれている 10, 11.また,GLP-1 の多面的な抗糖尿病作用に着目して開

発されたのが GLP-1 受容体作動薬である.DPP4 による分解に対して耐性を持たせた GLP-1 アナロ

グであり,GLP-1 受容体を介して血糖低下作用や体重低下作用を示す.経口活性がないため注射

剤であることが欠点であるが,最近では週一回投与型の製剤が上市され,患者のアドヒアランス向上が

図られている.

また 2014 年に新規経口血糖低下薬として SGLT2 阻害薬が上市された.SGLT(ナトリウム・グルコ

ース共輸送体)は SLC5 遺伝子ファミリーに属する 14 回膜貫通型のトランスポーターであり,Na+の濃

度勾配を駆動力とし,細胞外のグルコースを細胞内に取り込む(Fig.2).SGLT には 6 種のアイソフ

ォームが確認されているが,特に SGLT1 と SGLT2 に関して研究が進んでいる.SGLT1 は主に消化管

等に発現しており,食物中の糖質を吸収するのに重要な役割を果たしている 12.また SGLT2 は腎臓

の近位尿細管に特異的に発現し,糸球体でろ過されたグルコースを原尿から血液へと再吸収する役割

を持つ 13, 14.そのためSGLT2阻害薬は,グルコース再吸収を抑制し血中の過剰なグルコースを尿中に

排泄して血中グルコース濃度を低下させる 15, 16.SU 薬と比較すると低血糖リスクが低く,血糖を体外

に排出するため体重低下作用等が認められている 17.

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Fig.2 The model of glucose absorption by SGLT.

Adapted from Ref.20.

さらに,糖尿病薬として初めて心血管イベント(CV;心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳

卒中)リスクの低下作用が示されているが 18,これについては内臓脂肪減少や血圧低下などの副次的

作用を併せ持つことによる可能性が考えられる.

最近,健常人を対象とした臨床試験において,SGLT2 阻害薬 canagliflozin が食事後の総

GLP-1(total GLP-1, tGLP-1)および活性型 GLP-1(active GLP-1, aGLP-1)の血中濃度

上昇を増強させることが報告された 19.SGLT2 は消化管にほとんど発現しておらず 20,SGLT2 KO マ

ウスは糖負荷後の GLP-1 分泌量が WT と差がないことから,SGLT2 が GLP-1 分泌に関与している

可能性は低いと考えられている 21.一方,canagliflozin は他の SGLT2 阻害薬と比べて選択性が低

く,SGLT1に対しても弱い阻害活性を持つこと 22,またSGLT1 KOマウスにおいて糖負荷後のGLP-1

分泌量が変化するとの報告があることから,SGLT1 が GLP-1 分泌に関与しているのではないかと考えら

れる.しかし,その役割やメカニズムについては相反する報告があり,未だ統一的なコンセンサスが得ら

れていない.

そこで本研究では,第一章において SGLT 阻害薬による消化管 SGLT1 阻害が GLP-1 分泌に及ぼ

す影響やそのメカニズムについて解析を行った.また第二章では,構造の異なる複数の SGLT 阻害薬と

DPP4 活性欠損動物を用いて,第一章で確認された GLP-1 分泌促進作用が化合物の構造によらず

SGLT 阻害薬に共通して認められる薬効であることを検討した.そして第三章では,糖尿病モデル動物

を用いて,SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用投与が血漿パラメータに及ぼす影響を評価し,その治

療学的意義について検討した.

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本論

第一章 SGLT1阻害が GLP-1分泌に及ぼす影響の検討

緒言

SGLT1 は消化管上皮細胞に発現し,管腔側のグルコースとガラクトースを上皮細胞内に取り込む役

割を果たしている.食物中のグルコース,ガラクトースを吸収する上で必要不可欠であり,SLC5A1

(Sglt1)遺伝子に機能欠失型変異を持ったヒトおよびマウスはグルコース/ガラクトース吸収不全症

(GGM)を呈することが知られている 12,23.また2型糖尿病患者や糖尿病モデル動物では小腸にお

ける SGLT1 の mRNA およびタンパク質発現量が増加しており 24-26,これが糖質吸収を亢進させ,糖

尿病や IGT に認められる食後高血糖などに寄与している可能性がある.

GLP-1 分泌に対する SGLT1 の役割については,これまでに複数のグループが報告しているが未だコ

ンセンサスが得られていない.KO マウスを用いた研究については,Powell らは SGLT1 KO マウスにおい

て WT よりも糖負荷後の GLP-1 分泌増加が増強されると報告しているが 21,逆に Gorboulev らは

SGLT1 KO マウスは WT よりも糖負荷後の GLP-1 分泌量が減少することを示している 12.また SGLT

阻害薬である phloridzin を用いた研究では,Moriya らは糖負荷した正常マウスの血漿中 aGLP-1

濃度が phloridzin 投与により vehicle 群より低下することを報告している 27.しかし,こうした既報に

は糖負荷後 1 時点でのみ血漿中 aGLP-1 濃度を測定している報告もあり,糖負荷後の血漿中

aGLP-1 濃度推移は十分検討されていない.また aGLP-1 の血中半減期は極めて短いため,血中に

分泌されてから採血を行うまでの間に,DPP4 により aGLP-1 が分解されている可能性がある.

上記の点を踏まえ,本章では DPP4 阻害薬との併用下で,SGLT 阻害薬が正常なマウスおよびラッ

トの血漿中 aGLP-1 濃度に及ぼす影響を継時的に評価した.本章では SGLT 阻害薬として

phloridzin, 3-(4-cyclopropylphenylmethyl)-1-(-D-glucopyranosyl)-4- methylindole

(CGMI), canagliflozin の 3 化合物を使用し,in vitro 阻害活性を評価したのち,各化合物を

用いて SGLT1 阻害が GLP-1 分泌に及ぼす影響とそのメカニズムを解析した.

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結果

1.1 使用化合物の in vitro活性

SGLT 阻害活性

本章で使用する 3 種類の SGLT 阻害薬,Phloridzin,CGMI,canagliflozin の SGLT1 および

SGLT2 に対する阻害活性を評価するため,ヒト,ラット,マウスの SGLT1 および SGLT2 をそれぞれ安

定発現させた CHO-K1 細胞を用い,SGLT 特異的な基質である[14C]-methyl-D-gluco-

pyranoside(AMG)の取り込み活性を測定した.各化合物を添加した際の AMG 取り込み活性か

ら,各動物種の SGLT1/2 に対する IC50 値を算出した結果が Table 1 である.

3 化合物はいずれも SGLT1 および SGLT2 に対して 1 mol/L 以下の IC50 値を示した.SGLT1

に対する阻害活性は phloridzin と canagliflozin はほぼ同等であり,CGMI は他の2つの化合物と

比較して約 10 倍強かった.一方,SGLT2 に対する阻害活性は canagliflozin と CGMI がほぼ同等

であり,phloridzin は他の2つの化合物と比較して約 10 倍弱かった.3 化合物とも SGLT1 より

SGLT2 に対する阻害活性が強く,SGLT2/SGLT1 の阻害活性比は phloridzin および CGMI は約

10 倍であり,canagliflozin は約 100 倍であった.以上の結果は,いずれの動物種の SGLT1/2 に

おいても同様の傾向が認められた.

Table 1

Inhibitory effects of SGLT inhibitors on SGLT1 and SGLT2

IC50

(nmol/L) Human Rat Mouse

SGLT1 SGLT2 SGLT1 SGLT2 SGLT1 SGLT2

Phloridzin 241 23.8 609 49.1 760 65.6

Canagliflozina 663 4.2 555 3.7 613 5.6

CGMI 22.1 1.39 39.4 2.73 41.5 6.31

All values are expressed as the geometric mean of two to three experiments. aData from Ref.28.

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GLUT, DPP4 阻害活性

Phloridzin,CGMI,canagliflozin が他のグルコーストランスポーターに対して阻害作用を示すかど

うか確認するため,促通拡散型糖輸送体である GLUT1 に対する阻害活性を評価した.GLUT は

SLC2A 遺伝子ファミリーに属する 12 回膜貫通型のトランスポーターであり,GLUT1 はほぼ全ての細胞

に発現し,糖取り込みに寄与している.本実験では,GLUT1 を高発現しているラット骨格筋由来 L6

細胞を用いて,GLUT1 の基質である 2-deoxy-D-glucose(2-DG)の取り込み活性を測定し,

各化合物の IC50 値を算出した.3 化合物はいずれも 10 mol/L 以上の IC50 値を示し,ほとんど阻

害活性を示さなかった(Table 2).

次に phloridzin,CGMI,canagliflozin が DPP4 に対して阻害作用を示すかどうか確認するため,

in vitro における DPP4 阻害活性を評価した.また以降の試験で DPP4 阻害薬として使用する

sitagliptin を陽性対照薬として設定した.正常ラットから回収した血清に,DPP4 の蛍光基質である

Gly-Pro-MCA と各阻害薬を添加し,基質の分解産物量から DPP4 阻害活性を評価した.3 化合

物はいずれも 10 mol/L 以上の IC50 値を示し,ほとんど阻害活性を示さなかった(Table 2).一

方,sitagliptin の IC50 値は 12.5 nmol/L と,強い阻害活性を示した.

以上より,Phloridzin,CGMI,canagliflozin は SGLT1 および SGLT2 に対して阻害作用を示

すが,GLUT1 や DPP4 には阻害作用を示さないことがわかった.

Table 2

Inhibitory effects of SGLT inhibitors and sitagliptin on rat GLUT1 and DPP4

IC50

(nmol/L) Rat

GLUT1 DPP4

Phloridzin >10,000 >10,000

CGMI >10,000 >10,000

Canagliflozin >10,000a >10,000

Sitagliptin N.D. 12.5

All values are expressed as the geometric mean of two to three experiments.

N.D., not determined. aData from Ref.28.

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1.2 SGLT阻害薬 phloridzinが血漿中 aGLP-1濃度に及ぼす影響の評価

SGLT 阻害薬である phloridzin が血漿中 aGLP-1 濃度に及ぼす影響を評価するため,

C57BL/6J マウスを用いて経口糖負荷試験(OGTT)を実施した.Phloridzin(500 mg/kg)

投与により糖負荷 5 分後の血漿中 aGLP-1 濃度が低下することを示した既報 27 と試験条件を合わせ

るため,phloridzin の投与量は 500 mg/kg とした.また DPP4 による aGLP-1 の分解を防ぐため,

DPP4 阻害薬 sitagliptin(10 mg/kg)の単独投与群,および sitagliptin(10 mg/kg)と

phloridzin(500 mg/kg)の併用投与群を追加した.一晩絶食したマウスに化合物溶液とグルコー

ス溶液(2 g/kg)を同時に経口投与し,糖負荷 3 時間後まで経時的に血漿中 aGLP-1 濃度を評

価した.

Phloridzin を単独投与したところ,糖負荷 5 分後では vehicle 群と有意な差は認められなかったが,

糖負荷 30 分後をピークに血漿中 aGLP-1 濃度の上昇が認められた(Fig.3A).また sitagliptin

の単独投与では,糖負荷 5 分後に血漿中 aGLP-1 濃度が著しく上昇したが,30 分後以降は

vehicle 群と同程度まで低下した.さらに,sitagliptin と phloridzin を併用投与した群では,各化

合物の単独投与群を上回る,顕著かつ持続的な血漿中 aGLP-1 濃度の上昇作用が認められた.

次に,ラットでも同様の作用を示すかどうか検討するため,Sprague-Dawley(SD)ラットを用い

て phloridzin(300 mg/kg)と sitagliptin(10 mg/kg)の単独投与群,あるいは併用投与群

の血漿中 aGLP-1 濃度を比較検討した.また OGTT における各群の aGLP-1 濃度上昇量を比較す

るため,aGLP-1 濃度の曲線下面積(AUC)を算出した.マウスの結果と同様に,ラットでも

phloridzin の単独投与により糖負荷 30 分後以降に血漿中 aGLP-1 濃度が上昇した(Fig.3B,

C).また sitagliptin との併用投与により,この作用は大きく増強された.

以上より,phloridzin は血漿中 aGLP-1 濃度を上昇させることが示された.また,DPP4 阻害薬

sitagliptin との併用投与により,この作用は著しく増強された.

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Fig.3 Effects of phloridzin combined with sitagliptin on plasma aGLP-1 levels

during OGTT in C57BL/6J mice and SD rats.

(A) Time course of plasma aGLP-1 relative levels in mice treated with sitagliptin (10 mg/kg) and

phloridzin (500 mg/kg). (B and C) Time course and AUC0–3h of plasma aGLP-1 relative levels in rats

treated with sitagliptin (10 mg/kg) and phloridzin (300 mg/kg). Phloridzin, sitagliptin, and glucose

solution (2 g/kg) were simultaneously administered to 8-week-old C57BL/6J mice or 7-week-old

SD rats at time 0 by oral gavage. Blood was collected from the abdominal vein in mice and the tail

vein in rats. Data are presented as the mean SEM. (N = 5–6). *P < 0.05 and **P < 0.01 for

sitagliptin compared with vehicle; |P < 0.05 and ||P < 0.01 for phloridzin compared with vehicle;

#P < 0.05 and ##P < 0.01 for sitagliptin + phloridzin compared with sitagliptin; $P < 0.05 and

$$P < 0.01 for sitagliptin + phloridzin compared with phloridzin.

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1.3 SGLT阻害薬 canagliflozinが血漿中 GLP-1濃度に及ぼす影響の評価

次に,健常人において血漿中 GLP-1 濃度上昇作用を示したSGLT 阻害薬 canagliflozin が,齧

歯類でも同様の作用を示すかどうかを確認するため,phloridzin と同様に C57BL6/J マウスおよび SD

ラットを用いて OGTT を実施し,血漿中 aGLP-1 濃度を経時的に解析した.既報 28 より,

C57BL/6JマウスおよびSDラットにおいて尿糖排泄が促進されたcanagliflozinの単回投与用量は,

それぞれ 10 mg/kg 以上および 1 mg/kg 以上であったことから,マウスの投与用量は 10 mg/kg,

ラットの投与用量は 0.3 – 30 mg/kg に設定した.

マウスに対して canagliflozin(10 mg/kg)を単独投与したところ,糖負荷 30 分後において

vehicle 群に比べて血漿中 aGLP-1濃度が有意に上昇した(Fig.4A).また sitagliptin単独投与

群は糖負荷 5 分後をピークに上昇し,以降は急速に低下した.Canagliflozin と sitagliptin の併用

投与群は canagliflozin 単独投与に比べて血漿中 aGLP-1 を顕著に増加させたが,phloridzin

(Fig.3A)と異なり,糖負荷 5 分後から有意に増加していた.

ラットに対して,sitagliptin(10 mg/kg)とともに canagliflozin(0.3 – 30 mg/kg)を投与し

たところ,canagliflozin の用量依存的に血漿中 aGLP-1 濃度を上昇させた(Fig.4B, C).

さらに,Canagliflozin による血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用が,DPP4 阻害に基づく aGLP-1 の

分解抑制によるものではないことを確かめるため,canagliflozin 単独投与時の血漿中 tGLP-1 濃度

および血漿中 DPP4 活性を評価した.

SD ラットに canagliflozin(0.3 – 30 mg/kg)を単独投与し,糖負荷 0 分および 30 分後の血

漿中 tGLP-1 濃度を評価したところ,糖負荷 30 分後において用量依存的に血漿中 tGLP-1 濃度は

上昇した(Fig.5A).

また canagliflozin(1 – 10 mg/kg)を単独投与し,投与 30 分後に採血を行い,血漿中

DPP4活性を測定した.その結果,vehicle群と比べて有意な差は認められなかった(Fig.5B).一

方,sitagliptin(10 mg/kg)と併用投与した群では,canagliflozin(1 – 10 mg/kg)の投与

用量によらず,vehicle 群の約 25%まで血漿中 DPP4 活性が低下していた.すなわち,

canagliflozin は in vivo においても DPP4 阻害活性をほとんど示さなかった.

以上より,canagliflozin は,aGLP-1 の分解抑制ではなく,GLP-1 分泌促進により血漿中

aGLP-1 濃度を上昇させることが示唆された.

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Fig.4 Effects of canagliflozin combined with sitagliptin on plasma GLP-1 levels

during OGTT in C57BL/6J mice and SD rats.

(A) Time course of plasma aGLP-1 relative levels in mice treated with sitagliptin (10 mg/kg) and

canagliflozin (10 mg/kg). (B and C) Time course and AUC0–2h of plasma aGLP-1 relative levels in

rats treated with sitagliptin (10 mg/kg) and canagliflozin (0.3 to 30 mg/kg). Canagliflozin,

sitagliptin, and glucose solution (2 g/kg) were simultaneously administered to mice or rats at time

0 by oral gavage. Blood was collected from the abdominal vein in mice or the tail vein in rats. Data

are presented as the mean ± SEM. (N = 4–6). *P < 0.05, **P < 0.01 for Sitagliptin compared to

Vehicle, |P < 0.05, ||P < 0.01 for Canagliflozin compared to Vehicle, #P < 0.05, ##P < 0.01 for

Sitagliptin + Canagliflozin compared to Sitagliptin, $P < 0.05, $$P < 0.01 for Sitagliptin +

Canagliflozin compared to Canagliflozin. &&P < 0.01 vs Sitagliptin.

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Fig.5 Effects of canagliflozin on plasma total GLP-1 levels and DPP4 activity

during OGTT in SD rats

(A) Plasma total GLP-1 relative levels at 0 and 30 min after glucose administration in rats treated

with canagliflozin (0.3 to 30 mg/kg). (B) Plasma DPP4 activity at 30 min after glucose

administration in rats. Canagliflozin, sitagliptin, and glucose solution (2 g/kg) were simultaneously

administered to SD rats at time 0 by oral gavage. Blood was collected from the tail vein in rats.

Data are presented as the mean ± SEM. (N = 6). ++P < 0.01 vs Vehicle group by one-way ANOVA

with Dunnett’s post hoc test. In plasma DPP4 activity, no significant differences between

Canagliflozin (1 to 10 mg/kg) vs Vehicle group, and between Sitagliptin + Canagliflozin (1 to 10

mg/kg) vs Sitagliptin group by one-way ANOVA with Dunnett’s post hoc test, respectively.

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1.4 SGLT阻害薬 CGMIが血漿中 aGLP-1濃度に及ぼす影響の評価

Canagliflozin による GLP-1 分泌促進作用に SGLT1 が関与していることを検証するため,SGLT1

に対する阻害活性の異なる 2 化合物を用いて以下の検討を行った.Table 1 で示したとおり,CGMI

と canagliflozin はほぼ同等のラット SGLT2 阻害活性を持つ一方,ラット SGLT1 に対する阻害活性

は canagliflozin に比べて CGMI は 10 倍以上強い.SD ラットを用いて DPP4 阻害薬 sitagliptin

との併用下で,CGMI および canagliflozin が血漿中 aGLP-1 濃度に及ぼす影響を評価した.

Sitagliptin(10 mg/kg)と CGMI(0.1 – 1 mg/kg)を併用投与したところ,CGMI の用量依

存的に血漿中 aGLP-1 濃度が上昇した(Fig.6A, B).また sitagliptin と canagliflozin(10

mg/kg)の併用投与群と比較したところ,sitagliptin と CGMI(0.3 mg/kg)の併用投与群がほ

ぼ同等の血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用を示した.以上より,CGMI は canagliflozin に比べて 30

倍程度低い用量から同等の aGLP-1 濃度上昇作用を示し,この有効用量の違いは SGLT1 阻害活

性の違いに起因する可能性が考えられた.

SGLT1 の寄与をさらに検証するため,SGLT1 がグルコースを基質とする点に着目し,CGMI による血

漿中 aGLP-1 濃度上昇作用の糖負荷依存性について検討した.これまでの試験は全てグルコース溶

液を経口負荷した条件で化合物の作用を評価してきたが,本検討ではグルコース溶液の代わりに水,

または脂質溶液を経口負荷し,CGMI が血漿 aGLP-1 濃度に及ぼす影響を比較した.

まず水,またはグルコース溶液を経口負荷した条件下で,sitagliptin(10 mg/kg)の単独投与,

あるいは sitagliptin と CGMI(0.3 mg/kg)の併用投与後の血漿中 aGLP-1 濃度を評価した.グ

ルコース溶液を負荷した条件では,Fig.6 で見られたとおり sitagliptin 単独投与群に比べて,

sitagliptin と CGMI の併用投与群では有意に血漿中 aGLP-1 濃度が上昇した.しかし,水を負荷

した条件では,単独投与群と併用投与群の血漿中 aGLP-1 濃度はほぼ同等であり,CGMI による血

漿中 aGLP-1 濃度上昇作用は認められなかった(Fig.7A, B).

次に,グルコース溶液(2 g/kg)と脂質溶液(2 g/kg)を経口負荷した条件下で,sitagliptin

(10 mg/kg)の単独投与,あるいは sitagliptin と CGMI(0.3 mg/kg)の併用投与後の血漿

中aGLP-1濃度を評価した.グルコース負荷条件では,Fig.6と同じようにsitagliptin単独投与群に

比べて CGMI との併用投与群で血漿中 aGLP-1 濃度が上昇した.脂質負荷条件では,sitagliptin

単独投与群においてグルコース負荷条件より大きく血漿中aGLP-1濃度が上昇したものの,CGMIとの

併用投与群では sitagliptin 単独投与群に比べて有意な上昇作用は認められなかった(Fig.7C,

D).

以上より,CGMI による血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用は,水や脂質溶液を負荷した条件では認

められず,グルコース溶液を経口負荷した場合にのみ生じる,糖負荷依存的な作用であることが示され

た.

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Fig.6 Effects of CGMI combined with sitagliptin on plasma aGLP-1 levels

during OGTT in SD rats

(A and B) Time course and AUC0–3h of plasma aGLP-1 relative levels. CGMI (0.1 to 1 mg/kg),

canagliflozin (10 mg/kg), sitagliptin (10 mg/kg), and glucose solution (2 g/kg) were administered

to SD rats at time 0 by oral gavage, and blood was collected from the tail vein. Data are presented

as the mean SEM. (N = 6). *P < 0.05 vs Vehicle group, ##P < 0.01 vs Sitagliptin group. $P <

0.05, $$P < 0.01 vs Sitagliptin group by one-way ANOVA with Dunnett’s post hoc test.

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Fig.7 Effects of CGMI combined with sitagliptin on plasma aGLP-1 levels

during oral glucose or fat tolerance test in SD rats

(A and B) Time course and AUC0–3h of plasma aGLP-1 relative levels after glucose or water loading.

(C and D) Time course and AUC0–3h of plasma aGLP-1 relative levels after glucose or fat loading.

CGMI (0.3 mg/kg), sitagliptin (10 mg/kg), and glucose or fat solution (2 g/kg) were administered

to SD rats at time 0 by oral gavage, and blood was collected from the tail vein. Data are presented

as the mean SEM. (N = 6). **P < 0.01 vs Vehicle-treated glucose-loading group, ##P < 0.01 vs

Sitagliptin-treated glucose-loading group, $$P < 0.01 vs Vehicle-treated fat-loading group.

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1.5 SGLT阻害薬 CGMI及び canagliflozinが消化管内糖質吸収に及ぼす影響の評価

SGLT 阻害薬が消化管上の SGLT1 を機能的に阻害していることを確認するため,SGLT 阻害薬が

糖質吸収に及ぼす影響を評価した.本試験では,化合物溶液とスクロース溶液(2.5 g/kg)を経

口投与し,糖負荷 1 時間後または 6 時間後に消化管を採材・分割した上で各管腔内を生理食塩水

で洗浄し,糖質残存量を測定した.小腸については上部・中部・下部に三分割し,各部位および小

腸全体の糖質残存量を測定した.

Fig.6, 7 において血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用が認められた CGMI(0.3 mg/kg)の効果を検

討したところ,糖負荷 1 時間後において小腸の中部,下部,全体において有意な糖質残存量の上昇

が認められた(Fig.8A).糖質残存量は未吸収の糖質を示すことから,CGMI(0.3 mg/kg)が

糖負荷1時間後において小腸内糖質吸収を抑制していることが示唆された.また,このときの血漿中グ

ルコース濃度を評価したところ,vehicle 群と比べて糖負荷 30 分後の血糖上昇が有意に抑制された

(Fig.8B).しかし,糖負荷 2 時間後の血漿中グルコース濃度は vehicle 群より高く,糖負荷 3 時

間後までの AUC を比較すると vehicle 群と差はなかった(Fig.8C).これは,CGMI(0.3 mg/kg)

により糖負荷 30-60 分後まで糖質吸収が抑制されたものの,糖負荷 1-2 時間後頃から糖質吸収が

進み,糖負荷 3 時間後までの糖質吸収量は vehicle 群と差がなかったことを示している.

次に,canagliflozin を用いて同様の検討を行った.本試験では糖負荷 1 時間後および 6 時間後

の 2 時点で採材し,小腸だけでなく盲腸および大腸も回収した.また小腸における糖質吸収を阻害す

る陽性対照群として,-グルコシダーゼ阻害薬(-GI)voglibose(0.1 mg/kg)投与群を設定

した.-GI は血糖低下薬のひとつであり,二糖類や多糖類の分解を抑制することで糖質吸収を抑制

する.canagliflozin は Fig.4 で血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用が認められた 10 mg/kg を投与用

量とした.

canagliflozin(10 mg/kg)を投与したところ,糖負荷 1 時間後において小腸の上部,中部,

消化管全体において有意な糖質残存量の増加が認められた(Fig.9A).すなわち,canagliflozin

も CGMI と同様に小腸内糖質吸収を抑制することが示唆された.また voglibose(0.1 mg/kg)も

同じ部位において糖質残存量を増加させた.

一方,糖負荷6 時間後において voglibose(0.1 mg/kg)群では小腸だけでなく,盲腸および大

腸において糖質残存量が増加した(Fig.9B).これは小腸における糖質吸収が阻害された結果,未

吸収糖質が盲腸や大腸まで到達したことを示唆している.しかし canagliflozin(10 mg/kg)群で

は,いずれの部位においても vehicle 群と同等の糖質残存量であり,管腔内にほとんど未吸収糖質が

認められなかった.すなわち,canagliflozin 群では糖負荷 6 時間後までに小腸内糖質吸収が完了し

ていることが示された.

さらに,消化管SGLT1を阻害するのに十分な薬物濃度に達しているかを確認するため,小腸上部の

管腔内に含まれる canagliflozin 量を LC/MS/MS を用いて評価した.小腸上部管腔内からの回収

液に含まれる canagliflozin 量(amount)を測定し,ラット小腸管腔内の水分含有量を 11.1

g/kg29 として,小腸上部管腔内の canagliflozin 濃度を算出した.その結果,糖負荷 1 時間後お

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よび6時間後の小腸上部管腔内のcanagliflozin濃度は35.4 mol/Lおよび6.2 mol/Lであり,

canagliflozin のラット SGLT1 に対する IC50 値(555 nmol/L)を 10 倍以上上回っていた.

以上より,CGMI および canagliflozin は小腸上部の SGLT1 を阻害し,小腸における糖質吸収を

一過性に遅延させることが示唆された.

Table 3

The intraluminal amount and concentration of canagliflozin in the upper

small intestine at 1h and 6h after a single oral administration

Canagliflozin in the upper

small intestine 1h 6h

Amount (nmol) 93.86 64.81 16.11 11.87

Concentration (mol/L) 35.4 6.2

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Fig.8 Effects of CGMI on carbohydrate absorption in small intestine and

plasma glucose levels in sucrose-loaded SD rats

(A) Carbohydrate content in upper, middle, lower, and total segment of small intestine after

sucrose loading. (B and C) Time course and AUC0–3h of plasma glucose levels after sucrose loading.

CGMI (0.3 mg/kg) and sucrose solution (2.5 g/kg) were simultaneously administered to SD rats

by oral gavage. Intestinal contents were collected from the small intestine divided into three parts.

Data are presented as the mean SEM. (N = 6). **P < 0.01 vs Vehicle group.

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Fig.9 Effects of canagliflozin on carbohydrate absorption in the GI tract in

sucrose-loaded SD rats

(A and B) Carbohydrate content in the upper small intestine, middle small intestine, lower small

intestine, cecum, large intestine, and total segment of intestine 1 h (A) or 6 h (B) after sucrose

loading. Canagliflozin (10 mg/kg) or voglibose (0.1 mg/kg) and sucrose solution (2.5 g/kg) were

simultaneously administered to SD rats by oral gavage. Intestinal contents were collected from the

GI tract divided into five parts. Data are presented as the mean SEM. (N = 4–6). *P < 0.05, **P

< 0.01 vs Vehicle group.

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考察

第一章では,SGLT 阻害薬を用いて SGLT1 の阻害が GLP-1 分泌に及ぼす影響やメカニズムについ

て検討を行った.SGLT 阻害薬である phloridzin および canagliflozin は単独投与で血漿中

aGLP-1 濃度を上昇させ, DPP4 阻害薬 sitagliptin との併用投与により,この作用は大きく増強さ

れた.また SGLT1 阻害活性の強い CGMI は低用量から血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用を示し,こ

の作用は糖負荷依存的だった.さらにCGMIと canagliflozin は消化管SGLT1 を阻害して糖質吸収

を遅延させた.これらの結果から,消化管SGLT1の阻害がGLP-1分泌を促進させる可能性が示唆さ

れた.

過去の報告と今回の試験データから,想定される SGLT 阻害薬の GLP-1 分泌促進メカニズムを

Fig.10 に図示した.SGLT1 は小腸上部に多く発現することが知られているが 30,GLP-1 を分泌する

消化管上皮細胞である L 細胞は小腸下部に多く局在する 31.SGLT1 は高親和性・低容量の取り込

み機構を持ち,SGLT2 の 140 倍の取り込み(濃縮)能を有するため 32,小腸上部において経口摂

取した糖質は速やかに吸収される.L 細胞は食物中の糖質や脂質,タンパク質等の刺激を受けて

GLP-1 を分泌するが,糖質の大部分は SGLT1 により吸収されるため,通常時の L 細胞は糖質の刺

激を受けにくく,GLP-1 分泌量は少ないと考えられる.一方,SGLT 阻害薬を経口投与した場合,

小腸上部の腸管内薬物濃度が高まり,消化管上皮細胞上のSGLT1が阻害される.Canagliflozin

の最高血漿中薬物濃度(Cmax)はラット SGLT1 に対する IC50 値に達しないこと 28,canagliflozin

は SGLT1 に対して細胞外(管腔側)からのみ阻害できることから 33, SGLT 阻害薬による消化管

SGLT1 の阻害には腸管の管腔内薬物濃度が重要であると考えられる.小腸上部の SGLT1 が阻害さ

れることで,未吸収の糖質は小腸の中部・下部に多く到達するようになり,L細胞を刺激してGLP-1分

泌を促進する.また小腸下部では腸管内薬物濃度が薄まり,SGLT1 に対する阻害作用が弱まること

で未吸収の糖質が吸収され,一過性の糖質吸収遅延作用にとどまるものと考えられる.

上記のモデルにおいて,SGLT 阻害薬による血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用の薬効強度を決める重

要な指標は,SGLT1 に対する阻害活性と,薬剤の投与用量であると考えられる.前者については

CGMI が canagliflozin よりも 30 倍少ない用量から GLP-1 分泌を引き起こしたことからもわかるように,

強い阻害活性を持つ化合物ほど低用量から作用を示す.また腸管内の初期薬物濃度を規定するのは

投与用量であると考えられることから,投与用量が多いほど消化管 SGLT1 に対して曝露する薬物濃度

が高まる.Canagliflozin は,上市されている SGLT2 阻害薬の中で最も SGLT1 阻害活性が強く,

また他剤と比べて臨床投与用量が多い.そのため,上市された SGLT2 阻害薬の中で canagliflozin

は血漿中 aGLP-1 濃度の上昇作用を比較的検出しやすい化合物であったと考えられる.

本研究では,phloridzin 投与により糖負荷 30 分後において血漿中 aGLP-1 濃度の上昇が認めら

れたが,SGLT1 KO マウスや phloridzin を用いた検討で GLP-1 濃度の低下が報告されている 12, 27.

これらの報告では糖負荷 5 分後において GLP-1 濃度を測定しており,この時点では本研究においても

vehicle 群と phloridzin 群の間に差はなかった(Fig.3A).これは canagliflozin を用いた検討で

も同様であった(Fig.4A).

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Fig.10 Scheme of the effect of SGLT inhibitors on glucose absorption and

GLP-1 secretion in the small intestine

Glucose absorption by SGLT1 and GLP-1 secretion by L cells in the small intestine

under normal (upper panel) and SGLT1 inhibition (lower panel) conditions.

L 細胞上にはグルコースを感知する分子として GLUT2/5 や Tas1R2/3,そして SGLT1 が機能してい

ることが知られているが 34,小腸上部の L 細胞には特に SGLT1 が発現しているといわれている 12.糖

負荷直後は糖質が小腸下部にまで達しないため,小腸上部に存在する L 細胞が SGLT1 を介してグル

コースを感知し,GLP-1 の初期分泌を担っていると考えられる.そのため SGLT1 KO マウスや

phloridzinを投与した個体では,消化管への糖質の流入を感知できず,糖負荷直後のGLP-1分泌

量が減少した可能性がある. SGLT1 KO マウスでは糖負荷 1 時間後において GLP-1 分泌が上昇す

るとの報告 21 があることから,小腸下部の L 細胞では SGLT1 を介さないグルコース感知機構が主に働

いているものと考えられる.

Canagliflozinが他のインクレチンの分泌に及ぼす影響として,食事後のGIP分泌が減少するとの臨

床および非臨床の報告がある 19, 35.GIP は小腸上部の K 細胞から分泌されるが,K 細胞上にも

SGLT1 の発現が確認されており,SGLT1 が GIP 分泌のグルコースセンサーとして働いていると考えられ

る.そのため,SGLT 阻害薬による糖質吸収遅延が生じても,K 細胞はグルコースを感知できないため

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活性化されず,GIP 分泌が減少するのではないかと考えられる.

本研究では,SGLT 阻害薬による小腸内糖質吸収遅延作用を示し,未吸収糖質による小腸下部

L 細胞刺激を介した GLP-1 分泌促進メカニズムを提唱した.糖尿病治療薬による GLP-1 分泌促進

作用のメカニズムについてはこれまでにいくつかの仮説が報告されている.Enç らは,-GI の acarbose

によるGLP-1分泌促進作用が本薬剤による胃排泄抑制に起因しており,胃排泄が遅くなることで持続

的に腸管内に糖質が流入することが GLP-1 分泌につながると報告している 36.本研究で使用した

canagliflozin は胃排泄抑制作用を示さないことから 19,胃排泄遅延による持続的な糖質流入は本

剤のGLP-1分泌促進作用には寄与していないと考えられる.Powellらは,未吸収の糖質が盲腸にお

いて腸内細菌による発酵を受け,短鎖脂肪酸に変換された上で短鎖脂肪酸受容体 GPR43 や

GPR120 を刺激し,GLP-1 分泌を促進すると報告した 21.本研究では盲腸および大腸を採材し,

糖負荷 6 時間後まで評価したが,canagliflozin 群における未吸収糖質の盲腸および大腸への到達

は認められなかった.そのため,canagliflozinは盲腸における糖質の発酵を介さずにGLP-1分泌を促

進しているものと考えられる.また L 細胞の株化細胞である GLUTag 細胞を用いた検討から,

canagliflozin が L 細胞に直接的に作用して GLP-1 分泌を引き起こすことはないことが示されている 35.

以上より,未吸収糖質による L 細胞刺激が GLP-1 分泌促進作用につながっていると考えられる.

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小括

SGLT 阻害薬は血漿中 aGLP-1 濃度を上昇させた.特に DPP4 阻害薬との併用投与により,

単独投与に比べてより顕著に上昇させた.

SGLT 阻害薬の単独投与により総 GLP-1 濃度が上昇したことから,SGLT 阻害薬は GLP-1 の

分泌を促進していることが示唆された.

SGLT 阻害薬による血症中 aGLP-1 濃度上昇作用は糖負荷依存的であり,SGLT 阻害薬は小

腸内糖質吸収を遅延させた.

以上より,SGLT 阻害薬は消化管 SGLT1 を阻害することで一過性に小腸内糖質吸収を遅延させ,

血漿中 aGLP-1 濃度を上昇させたと考えられる.

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第二章 異なる構造のSGLT阻害薬や他の糖尿病治療薬がGLP-1分泌

に及ぼす影響の検討

緒言

過剰な糖を体外に排出するという,SGLT2 阻害薬のコンセプトの契機となった化合物は,第一章で

使用した phloridzin である.Phloridzin は 1835 年にフランスの科学者によってリンゴの樹皮から抽出

され,当初は腎性糖尿(尿糖排泄)を引き起こす毒物として認識されていた 37.それから 150 年後,

1987 年の DeFronzo らによる phloridzin の血糖低下作用の報告 38 と,1994 年の Kanai らによ

る SGLT2 のクローニング 39 により,SGLT2 阻害薬の研究が開始された.Phloridzin は腸管βグルコ

シダーゼにより容易に分解されるため,経口投与では十分な尿糖排泄促進作用を示さない.そこで,

βグルコシダーゼに対して抵抗性を持ち,経口投与可能な SGLT2 阻害薬の合成が試みられた.

世界初の経口投与可能な SGLT2 阻害薬は,1999 年に田辺製薬(現 田辺三菱製薬)により

創製された T-1095 である 40.T-1095 は,phloridzin の化学構造の糖の部分に修飾を行い,βグ

ルコシダーゼに対する抵抗性を持たせている.各種糖尿病モデル動物において T-1095 は強い血糖低

下作用を示し 15, 16,SGLT2 阻害薬として初めて臨床における proof of concept(POC)が取得さ

れたものの,βグルコシダーゼに対する抵抗性が不十分であったため,薬物動態上の問題から 2003 年

に臨床開発が中止された.Phloridzin や T-1095 の構造の中でも,糖とアグリコンを連結する酸素原

子がβグルコシダーゼによる加水分解を受けやすいことがわかり(Fig.11),他社の O-glucoside 誘

導体も相次いで開発中止となった.一方,糖とアグリコンの結合を別の化学構造に変換することでβグ

ルコシダーゼ抵抗性を持たせた化合物が 2001 年頃から多く報告され,その中から見出された

dapagliflozin や canagliflozin が臨床試験において優れた薬理作用と薬物動態を示し,

2011-2013 年に欧米で初めて承認された.

Phloridzin や T-1095 のように,糖とアグリコンが酸素原子(O)で連結された化合物を

O-glucoside,糖をベンゼン環の炭素原子(C)に連結させた canagliflozin や 1-(β-D-Gluco-

pyranosyl)-4-chloro-3-[5-(6-fluoro-2-pyridyl)-2-thienylmethyl]-benzene (GTB)など

の化合物を C-glucoside,糖をインドール環の窒素原子(N)に連結させた TA-1887 などの化合物

を N-glucoside と呼ぶ.C-glucoside は dapagliflozin や empagliflozin をはじめ,現在上市さ

れている SGLT2 阻害薬の多くが属する,高い SGLT2 選択性と代謝安定性を持った化学構造である.

N-glucoside は報告例が少ないものの,TA-1887(3 mg/kg)が高脂肪食負荷 KK (HF-KK)マ

ウスにおいて空腹時高血糖を投与 24 時間後まで有意に抑制するなど,強い SGLT2 阻害活性と良好

な PK プロファイルを示している 41.

第二章では,第一章で認められた SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用投与による顕著な血漿中

aGLP-1 濃度の上昇作用が,SGLT 阻害薬および DPP4 阻害薬の構造によらず,共通して認められ

る薬効であるかを,構造の異なる複数の SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬を用いて検討した.本章では

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29

SGLT 阻害薬として GTB,TA-1887,canagliflozin を,DPP4 阻害薬として sitagliptin,

(2S)-2-Cyano-1-[trans-4-(morpholinocarbonyl)cyclohexylamino]acetylpyrrolidine

(CMA),teneligliptin を使用した.また GLP-1 分泌促進作用が報告されている糖尿病治療薬

metformin を比較対照とし,SGLT 阻害薬と GLP-1 分泌促進メカニズムの違いについて検討を行っ

た.

Fig.11 The chemical structures of SGLT inhibitors

The chemical structures of phloridzin, T-1095, and canagliflozin were adapted from Ref.42.

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30

結果

2.1 使用化合物の in vitro活性

SGLT 阻害薬である GTB の SGLT1 および SGLT2 に対する阻害活性を評価するため,ヒトの

SGLT1 および SGLT2 をそれぞれ安定発現させた CHO-K1 細胞を用い,SGLT 特異的な基質である

[14C] AMG の取り込み活性を測定して各化合物の IC50 値を算出した.その結果,GTB は SGLT1

に対する IC50 値が 966 nmol/L と,比較的弱い阻害活性を示した(Table 3).一方,

TA-1887 は canagliflozin を上回る SGLT1 阻害活性を示すことが報告されている 41, 28.

次に DPP4 阻害薬である CMA の DPP4 に対する阻害作用を評価するため,ヒト血清に DPP4 の蛍

光基質である Gly-Pro-MCA と CMA を添加し,基質の分解産物量から DPP4 阻害活性を評価した.

CMA は DPP4 に対する IC50 値が 2.9 nmol/L と,強い阻害活性を示した(Table 4).また,

teneligliptinおよびsitagliptinも5 nmol/Lを下回る強い阻害活性を示すことが報告されている 43.

以上より,SGLT 阻害薬 GTB は SGLT1 に対して比較的弱い阻害作用を持ち,DPP4 阻害薬

CMA は強い DPP4 阻害作用を持つことがわかった.

Table3

Inhibitory effects of SGLT inhibitors on human SGLT1 and SGLT2

IC50 (nmol/L) Human

SGLT1 SGLT2

GTB 966 1.5

TA-1887 a 230 1.4

Canagliflozin b 663 4.2

All values are expressed as the geometric mean of two to three experiments. a, bData from Ref.41 and Ref.28, respectively.

Table4

Inhibitory effects of DPP4 inhibitors on human DPP4

IC50

(nmol/L) Human

DPP4

CMA 2.90

Teneligliptinc 1.45

Sitagliptinc 4.48

All values are expressed as the geometric mean of two to three experiments. cData from Ref.43.

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31

2.2 異なる組み合わせの SGLT阻害薬及びDPP4阻害薬の併用投与が血漿中 aGLP-1濃度に

及ぼす影響の評価

第一章とは異なる組み合わせの SGLT 阻害薬および DPP4 阻害薬を併用投与しても血漿中

aGLP-1 濃度が上昇するか否かを検討するため,in vitro 阻害活性を評価した SGLT 阻害薬 GTB と

DPP4 阻害薬 CMA の単独投与および併用投与時のラット血漿中パラメータを解析した.本試験では,

一晩絶食した F344/NSlc ラットに対して化合物溶液とグルコース溶液(2 g/kg)を同時投与し,糖

負荷 5 時間後まで経時的に採血を行った.血液から血漿を遠心分離し,血漿中のグルコース,インス

リン,aGLP-1 濃度を測定した.

まず DPP4 阻害薬 CMA(3 mg/kg)の単独投与群は,糖負荷後の血糖上昇に対する弱い抑制

作用と,強いインスリン分泌促進作用を示した(Fig.12A, B).一方,GTB(10, 30 mg/kg)

の単独投与群は,SGLT2 阻害に基づく尿糖排泄促進作用により,糖負荷後の血糖上昇を強く抑制

した.SGLT 阻害薬はインスリン非依存的に血糖値を低下させるため,血漿中インスリン濃度は上昇し

なかった.インスリン分泌量は血糖値に依存するため,血糖値が下がったことでむしろ vehicle 群より血

漿中インスリン濃度が低下した.GTB と CMA の併用投与群については,GTB により血糖値上昇が抑

制されており,DPP4 阻害薬も正常レベルよりも血糖値を下げる効果はあまりないことから,血漿中グル

コース濃度推移は GTB 単独投与群とほぼ同等であった.また両剤の単独投与群に比べて,併用投

与群では GTB の用量に依存して血漿中 aGLP-1 濃度が上昇した(Fig.12C).

次に,さらに別の SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の組み合わせを検討するため,SGLT 阻害薬として

canagliflozin と TA-1887,DPP4 阻害薬として CMA と teneligliptin を用い,計 4 種類の組み

合わせについて F344/NSlc ラットを用いて検討を行った.まず teneligliptin と canagliflozin あるい

は TA-1887 の組み合わせで評価を行ったところ,teneligliptin 単独投与群に比べて canagliflozin

併用群および TA-1887 併用群はいずれも糖負荷 2 時間後の血漿中 GLP-1 濃度を有意に上昇させ

た(Fig.13A).また sitagliptin と canagliflozin あるいは TA-1887 の組み合わせで評価を行った

ところ,sitagliptin 単独投与群に比べて canagliflozin 併用群および TA-1887 併用群はいずれも

糖負荷 2 時間後の血漿中 GLP-1 濃度を有意に上昇させた(Fig.13B).いずれの試験でも,

canagliflozin 併用群と比べて TA-1887 併用群の方が血漿中 aGLP-1 濃度が高い傾向が認められ

たが,これは SGLT1 に対する阻害活性が TA-1887 の方が強いためではないかと考えられる.

以上より,F344 系統ラットにおいて SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用投与は,いずれの組み合

わせでも血漿中 aGLP-1 濃度を顕著に上昇させ,この併用効果は各化合物の構造によらず,発揮さ

れることが示された.

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Fig.12 Effects of GTB combined with CMA on plasma glucose, insulin, and

aGLP-1 levels during OGTT in normal F344 rats

(A) Time course (left panel) and peak (right panel) of plasma glucose levels. (B) Time course (left

panel) and peak (right panel) of plasma insulin levels. (C) Time course (left panel) and ΔAUC0–5h

(right panel) of relative plasma aGLP-1 levels. GTB (10, 30 mg/kg), CMA (3 mg/kg), and glucose

solutions (2 g/kg) were simultaneously administered to 9-week-old F344/NSlc rats at time 0 by

oral gavage. Data are presented as the mean SEM. (N = 5–6). **P < 0.01 vs vehicle group by

t-test; ##P < 0.01 vs vehicle group, and $$P < 0.01 vs CMA group by one-way ANOVA with

Dunnett’s post hoc test.

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33

Fig.13 Effects of canagliflozin and TA-1887 combined with a DPP4 inhibitor on

plasma aGLP-1 levels during OGTT in normal F344 rats

(A) Relative plasma aGLP-1 levels 2 h after glucose-loading when administered with canagliflozin

or TA-1887 combined with teneligliptin. (B) Relative plasma aGLP-1 levels 2 h after

glucose-loading when administered with canagliflozin or TA-1887 combined with sitagliptin.

Canagliflozin (30 mg/kg), TA-1887 (30 mg/kg), teneligliptin (5 mg/kg), sitagliptin (10 mg/kg),

and glucose solution (2 g/kg) were simultaneously administered to 9-week-old F344/NSlc rats at

time 0 by oral gavage. Data are presented as the mean ± SEM. (N = 5–6). *P < 0.05, **P < 0.01

vs teneligliptin group; ##P < 0.01 vs sitagliptin group by one-way ANOVA with Dunnett’s post hoc

test.

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34

2.3 DPP4活性欠損ラットにおける SGLT阻害薬 GTB及び糖尿病治療薬metforminが血漿

中 aGLP-1濃度に及ぼす影響の評価

次に,DPP4 活性を欠損したラットを用いて検討を行った.F344 ラット系統の一種である

F344/DuCrlCrlj は,Dpp4 遺伝子に loss-of-function 型の変異を持ち,DPP4 の酵素活性をほ

とんど失っている 44.この DPP4 活性欠損ラットを用いて,CMA との併用により顕著な血漿中 aGLP-1

濃度上昇作用を示した GTB について,単独投与による薬効を評価した.また,GLP-1 分泌促進作

用が過去に報告 45 されている血糖低下薬 metformin についても検討を行い SGLT 阻害薬と比較し

た.

一晩絶食させた F344/DuCrlCrlj ラットに対し,グルコース溶液を経口負荷するとともに GTB(10,

30 mg/kg)を単独投与したところ,血漿中 aGLP-1 濃度は大きく上昇した(Fig.14).正常な

DPP4 活性を持つ F344/NSlc ラットに GTB(10, 30 mg/kg)と CMA(3 mg/kg)を併用投与

した Fig.12 と比較すると,同等以上に aGLP-1 濃度の上昇が認められた.また metformin(300

mg/kg)の単独投与群においても,血漿中 aGLP-1 濃度の上昇が認められた.

次に,GTB と metformin の作用機序の違いを明らかにするため,DPP4 活性を欠損した

F344/DuCrlCrlj ラットにグルコース溶液を経口負荷せず,化合物溶液のみを投与して経時的な血漿

中パラメータ濃度変化を検討した.GTB(10, 30 mg/kg)を単独投与したところ,経口糖負荷した

場合(Fig.14)と異なり,血漿中 aGLP-1 濃度の有意な変化は認められなかった(Fig.15).一

方,metformin(300 mg/kg)単独投与群では,経口糖負荷時(Fig.14)と同じように血漿

中 aGLP-1 濃度の上昇が認められた.第一章において考察したように,SGLT 阻害薬は SGLT1 の阻

害により GLP-1 の分泌を促進するため,糖負荷依存的な作用であると考えられる.一方,

metforminは糖負荷非依存的に血漿中aGLP-1濃度上昇作用を示したことから, SGLT阻害薬と

は異なる別の作用機序により GLP-1 分泌を促進することが示唆された.

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35

Fig.14 Effects of GTB and metformin on plasma glucose, insulin, and aGLP-1

levels during OGTT in DPP4-deficient F344 rats

(A) Time course (left panel) and peak (right panel) of plasma glucose levels. (B) Time course (left

panel) and peak (right panel) of plasma insulin levels. (C) Time course (left panel) and ΔAUC0–5h

(right panel) of relative plasma aGLP-1 levels. GTB (10, 30 mg/kg), metformin (300 mg/kg) and

glucose solutions (2 g/kg) were simultaneously administered to 9-week-old F344/DuCrlCrlj rats at

time 0 by oral gavage. Data are presented as the mean SEM. (N = 6). *P < 0.05, **P < 0.01 vs

vehicle group by t-test; ##P < 0.01 vs vehicle group by one-way ANOVA with Dunnett’s post hoc

test.

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36

Fig.15 Effects of GTB and metformin on plasma glucose, insulin, and aGLP-1

levels without glucose-loading in DPP4-deficient F344 rats

(A) Time course of plasma glucose levels. (B) Time course of plasma insulin levels. (C) Time

course (left panel) and ΔAUC0–5h (right panel) of relative plasma aGLP-1 levels. GTB (10 and 30

mg/kg), metformin (300 mg/kg), and water instead of glucose were administered simultaneously

to 9-week-old F344/DuCrlCrlj rats at time 0 by oral gavage. Data are presented as the mean SEM.

(N = 6). **P < 0.01 vs vehicle group by t-test.

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37

考察

第二章では,複数の構造の異なる SGLT 阻害薬および DPP4 阻害薬を組み合わせ,aGLP-1 濃

度上昇作用が化合物の構造によらず共通して認められる薬効であることか否かを検証した.

C-glucoside である GTB や canagliflozin,N-glucoside である TA-1887 は,DPP4 阻害薬と

の併用投与により血漿中 aGLP-1 濃度を大きく上昇させた.第一章において O-glucoside の

phloridzin も血症中 aGLP-1 濃度を上昇させたことから,SGLT 阻害薬による血漿中 aGLP-1 濃度

上昇作用は SGLT 阻害薬の化学構造によらず生じることが示された.また,DPP4 阻害薬として CMA,

teneligliptin,sitagliptin のいずれを用いても,SGLT 阻害薬との併用効果が認められたことと,

DPP4 活性を欠損したラットにおいて SGLT 阻害薬は単独投与により顕著な血漿中 aGLP-1 濃度上

昇作用を示したことから,十分に DPP4 酵素活性が阻害された条件下であれば SGLT 阻害薬の血漿

中aGLP-1濃度上昇作用が強く増強されることが示唆された.以上より,SGLT阻害薬とDPP4阻害

薬の併用による血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用は,それぞれの化合物の構造によらず共通して認めら

れる作用であると考えられる.

本章では糖尿病治療薬の一つである metformin についても検討し,糖負荷非依存的に血漿中

aGLP-1 濃度を上昇させることを確認した.metformin は欧米において最も広く使用されている糖尿

病治療薬であり,肝臓において AMP-activated protein kinase(AMPK)活性化により糖新生を

抑制することで血糖値を低下させる.また臨床および非臨床研究において GLP-1 分泌を促進すると報

告されているものの 45,そのメカニズムについてはあまりわかっていない.Canagliflozin は臨床試験にお

いて GLP-1 とともに食欲抑制ホルモンの PYY も分泌促進することが報告されており,PYY は GLP-1 と

同じくL細胞から分泌されることから,糖質刺激によってL細胞におけるGLP-1とPYYの共通した合成・

分泌機構が促進されるものと考えられる.一方,metformin を投与すると GLP-1 のみが分泌促進さ

れて PYY 分泌には変化がないことから 46, GLP-1 の合成・分泌機構を特異的に賦活化しているので

はないかと考えられる.欧米の糖尿病治療ガイドラインでは,経口血糖低下薬を使用する場合には

metformin をまず検討し,それでも血糖コントロールが不十分な場合には metformin に他の血糖低

下薬を組み合わせて服用することが推奨されており 47,そのため metformin と SGLT2 阻害薬,ある

いは metformin とDPP4 阻害薬といった組み合わせの合剤が販売されている.Metformin は膵島の

GLP-1 受容体の発現量を増加させ,GLP-1 感受性を亢進することから 46,metformin と SGLT2

阻害薬あるいは DPP4 阻害薬との併用は,GLP-1 の作用を増強する上で有用な組み合わせであると

考えられる.

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38

小括

SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用効果は,異なる構造の化合物の組み合わせでも共通して

認められた.

DPP4 活性欠損ラットにおいて,SGLT 阻害薬 GTB は単独投与により血漿中 aGLP-1 濃度を

上昇させた.

糖尿病治療薬 metformin は,GTB と異なり糖負荷非依存的に血漿中 aGLP-1 濃度を上昇

させたことから,SGLT 阻害薬とは異なる機序で GLP-1 分泌を促進させることが示唆された.

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39

第三章 SGLT阻害薬と DPP4阻害薬の併用の治療学的意義の検討

緒言

現在,2型糖尿病の治療において,食事・運動療法に加えて数多くの糖尿病治療薬が使用されて

いるが,長期間にわたって厳格に血糖コントロールを維持するのは非常に難しい 48.その理由の一つは

膵β細胞の疲弊である.糖尿病の罹病期間が長くなるにつれてβ細胞のインスリン分泌能が落ち,イン

スリン分泌を刺激する薬剤やインスリン抵抗性を改善する薬剤は効きにくくなる.また,食事・運動療法

がおろそかになることで血糖低下薬の効果が低下したり,他の疾患を併発することで血糖コントロールが

悪化することも多い.第一選択薬の単独投与によっても血糖コントロール目標値に到達しない場合は,

第一選択薬の増量,より血糖改善効果の強い血糖低下薬への変更,あるいは作用機序の異なる血

糖低下薬の併用が考慮される.どの方法が最善かについてのエビデンスはないが,臨床では併用療法

が試みられることが多く,併用する薬剤数が増えるほど血糖コントロールが改善すると報告されている 7.

一方,多剤併用時には低血糖の発症頻度が増加する場合が多く,薬剤の用量設定や十分な血糖モ

ニタリングが重要になる.

患者の服薬アドヒアランスの改善と経済的負担の軽減を目的とし,血糖低下薬の配合剤が多く販売

されているが,近年注目を集めているのが SGLT2 阻害薬と DPP4 阻害薬の配合剤である.SGLT2

阻害薬はインスリン非依存的に血糖値を低下させるため膵疲弊の影響を受けにくく,長期間にわたって

血糖低下作用を維持することが期待されている.また DPP4 阻害薬はインクレチンを介した膵保護作用

により,膵疲弊を減弱する可能性が示されている 11.さらに SGLT2 阻害薬は尿糖排泄を促進する結

果として肝糖新生を亢進し,グルカゴン濃度を上昇させる副作用を持つが,DPP4 阻害薬は膵α細胞

に作用しグルカゴン分泌を抑制する.このような相補的なメカニズムなどから,臨床でも両剤の併用療法

が試みられ,それぞれの単独療法に比べて血糖低下作用が増強されることが報告されている 49.

本章では,糖尿病モデル動物を用いて SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用効果を評価し,その

治療学的意義について検討を行った.第一章・二章で示したように,正常動物において両剤の併用は

血漿中aGLP-1濃度を大きく上昇させるが,2型糖尿病患者または耐糖能異常(IGT)患者ではイ

ンクレチンの効果が低下し,インスリン分泌が減弱していることが報告されており 50,糖尿病における両

剤の併用効果は未だ明らかではない.そこで,2型糖尿病モデル動物である zucker diabetic fatty

(ZDF)ラット,および db/db マウスを用いて,OGTT により SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用

効果を検討した.

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40

結果

3.1 ZDF ラットにおける SGLT阻害薬及びDPP4阻害薬の併用投与の薬効評価

自然発症型の2型糖尿病モデルラットとして,ZDF ラットを用いて検討を行った.ZDF ラットは fa 遺

伝子に変異を持ち,高脂肪飼料(Purina5008)を与えて成育させることで,約 12 週齢において高

グルコース血症や高インスリン血症,高脂血症,高度のインスリン抵抗性などの2型糖尿病様症状を

呈する 51.そこで本検討では,第一章で SD ラットにおける併用効果を検討した SGLT 阻害薬の

canagliflozin と DPP4 阻害薬の sitagliptin を用い,糖尿病を発症する前の 8 週齢と,糖尿病を

発症した後の 13 週齢の ZDF ラットに及ぼす影響を評価した.

8 週齢の ZDF ラットに対して canagliflozin(10 mg/kg)および sitagliptin(10 mg/kg)をそ

れぞれ単独投与したところ,いずれも糖負荷後の血糖上昇を有意に抑制した(Fig.16).また血漿

中インスリン濃度については,インクレチン依存的にインスリン分泌を促進する sitagliptin 群では有意に

上昇したが,インスリン非依存的に血糖値を低下させる canagliflozin 群では血糖値が下がったことで

インスリン分泌も減り,vehicle 群よりも低下した.両剤の併用投与は,それぞれの単独投与群と比

較すると,糖負荷後の血糖上昇をさらに強く抑制し,血漿中 aGLP-1 濃度は顕著に上昇した.また

血糖値は大きく低下したにも関わらず,血漿中インスリン濃度は sitagliptin 単独投与群と同程度に高

く,耐糖能の改善作用が認められた.

次に 13 週齢の ZDF ラットを用いて同様に検討を行った.8 週齢 ZDF ラットと同じように,

canagliflozin(10 mg/kg)およびsitagliptin(10 mg/kg)の単独投与はそれぞれ糖負荷後の

血糖上昇を有意に抑制し,sitagliptin 群では有意な血漿中インスリン濃度の上昇が認められた

(Fig.17).また両剤の併用投与群では,各化合物の単独投与を上回る血糖上昇抑制作用が認

められ,血漿中インスリン濃度は sitagliptin 単独投与群とほぼ同等だった.血漿中 aGLP-1 濃度は

各化合物の単独投与群と比較して有意に上昇した.

以上より,8 週齢および 13 週齢の ZDF ラットにおいて,canagliflozin と sitagliptin の併用投与

は強い血糖上昇抑制作用と血漿中 aGLP-1 濃度上昇作用を示すことが明らかとなった.

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41

Fig.16 Effects of canagliflozin combined with sitagliptin on plasma glucose,

insulin, and aGLP-1 levels during OGTT in 8-week-old ZDF rats

(A) Time course (left panel) and ΔAUC0–3h (right panel) of plasma glucose levels. (B) Time course

(left panel) and ΔAUC0–3h (right panel) of plasma insulin levels. (C) Time course (left panel) and

ΔAUC0–3h (right panel) of plasma aGLP-1 relative levels. Canagliflozin (10 mg/kg), sitagliptin (10

mg/kg), and glucose solution (2 g/kg) were administered to 8-week-old ZDF rats at time 0 by oral

gavage, and blood was collected from the tail vein. Data are presented as the mean SEM. (N =

6). *P < 0.05, **P < 0.01 vs Vehicle group, ||P < 0.01 vs Sitagliptin group, $$P < 0.01 vs

Canagliflozin group.

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42

Fig.17 Effects of canagliflozin combined with sitagliptin on plasma glucose,

insulin, and aGLP-1 levels during OGTT in 13-week-old ZDF rats

(A) Time course (left panel) and ΔAUC0–3h (right panel) of plasma glucose levels. (B) Time course

(left panel) and ΔAUC0–3h (right panel) of plasma insulin levels. (C) Time course (left panel) and

ΔAUC0–3h (right panel) of plasma aGLP-1 relative levels. Canagliflozin (10 mg/kg), sitagliptin (10

mg/kg), and glucose solutions (2 g/kg) were administered to 13-week-old ZDF rats at time 0 by

oral gavage, and blood was collected from the tail vein. Data are presented as the mean SEM. (N

= 6). *P < 0.05, **P < 0.01 vs Vehicle group, |P < 0.05, ||P < 0.01 vs Sitagliptin group, $P <

0.05, $$P < 0.01 vs Canagliflozin group.

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43

3.2 db/db マウスにおける SGLT阻害薬とDPP4阻害薬の併用投与の薬効評価

次に糖尿病モデルマウスにおける SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用効果を検討するため,db/db

マウスを使用した.db/dbマウスはレプチン受容体を欠損しており,6週齢頃から肥満や高グルコース血

症,高インスリン血症等の糖尿病様症状を呈する2型糖尿病モデル動物である 52.本検討では既に

糖尿病を発症した 13 週齢の db/db マウスを用い,第二章で使用した SGLT 阻害薬 GTB と DPP4

阻害薬 CMA の併用投与を検討した.

GTB(10 mg/kg)の単独投与は糖負荷後の血糖上昇を有意に抑制したものの,CMA(3

mg/kg)の単独投与は血漿中グルコースおよびインスリン濃度に対して有意な作用を示さなかった

(Fig.18).一方,両剤の併用投与群では糖負荷後の血糖上昇を強く抑制し,血漿中 aGLP-1

濃度を顕著に上昇させた.以上より,db/db マウスにおいても SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用

効果が認められた.

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44

Fig.18 Effects of GTB combined with CMA on plasma glucose, insulin, and

aGLP-1 levels during OGTT in db/db mice.

(A) Time course (left panel) and peak (right panel) of plasma glucose levels. (B) Time course (left

panel) and peak (right panel) of plasma insulin levels. (C) Time course (left panel) and ΔAUC0–5h

(right panel) of plasma aGLP-1 levels. GTB (10 mg/kg), CMA (3 mg/kg), and glucose solutions (2

g/kg) were simultaneously administered to db/db mice at time 0 by oral gavage. Data are

presented as the mean SEM. (N = 8). **P < 0.01 vs vehicle group; ||P < 0.01 vs CMA group by

one-way ANOVA followed by t-test.

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45

考察

第三章では糖尿病モデル動物である ZDF ラットと db/db マウスを用い,SGLT 阻害薬と DPP4 阻害

薬の併用効果を検討した.ZDF ラットについては canagliflozin と sitagliptin,db/db マウスについ

ては GTB と CMA の組合せを使用して検討を行った.いずれの糖尿病モデル動物においても,SGLT

阻害薬と DPP4 阻害薬の併用は単独投与に比べて強い血糖上昇抑制作用と血漿中 aGLP-1 濃度

上昇作用を示した.また ZDF ラットについては 8 週齢と 13 週齢のいずれにおいても同様に薬効が認め

られたことから,SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用効果は,糖尿病の発症前後や2型糖尿病モデ

ル動物の種類によらず認められることが示唆された.我々は別の研究報告においても,13 週齢の ZDF

ラットに対し canagliflozin(3, 10 mg/kg)と teneligliptin(0.3 mg/kg)をグルコース溶液とと

もに投与すると,今回の結果と同様に,血糖上昇が強く抑制され,血漿中 aGLP-1 濃度が有意に上

昇することを示している 53.第二章では正常動物を用いて異なる構造のSGLT阻害薬とDPP4阻害薬

の組み合わせでも共通して併用効果が認められることを示したが,糖尿病モデル動物でも同様に両剤の

併用効果は化合物の構造によらず生じるものと考えられる.

本研究では糖負荷後の血糖上昇に及ぼす SGLT 阻害薬及び DPP4 阻害薬の作用を評価している

が,序論で述べたように食後高血糖は糖尿病合併症のひとつである大血管症の発症・進展に寄与する

可能性があり,なるべく正常な血糖値の範囲に是正することが合併症の予防・増悪阻止には重要であ

ると考えられている.本検討において両剤の併用は,SGLT2 阻害に基づく尿糖排泄促進と,GLP-1

によるインスリン分泌促進により,血糖上昇を強く抑制することが示された.また canagliflozin や GTB

の持つ SGLT1 阻害作用は,第一章で示したように小腸における糖質吸収を遅延させることで,食事

後の急峻な血糖上昇を抑制するのに寄与しているものと考えられる.以上より,SGLT 阻害薬と DPP4

阻害薬の併用は糖負荷後の血糖上昇を抑制し,大血管症などの合併症の発症・増悪を改善する可

能性が示唆された.

本研究では ZDF ラットを用いた検討(Fig.16, 17)において,SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併

用投与により血糖値が大きく低下しているにも関わらず,血糖依存的に変動する血漿中インスリン濃度

が高濃度に維持されていた.これは併用投与により増加した aGLP-1 によるインスリン分泌促進作用に

よるものではないかと考えられる.一方,GLP-1 が持つ食欲抑制作用や体重低下作用,膵保護作

用等を評価するには長期にわたる反復投与試験が必要となる.今後は,糖尿病モデル動物に対して

SGLT 阻害薬および DPP4 阻害薬を単独あるいは併用して反復投与し,摂餌量や体重,膵β細胞の

量・機能に及ぼす影響を検討する必要がある.

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46

小括

2型糖尿病モデルラットである ZDF ラットにおいて,canagliflozin と sitagliptin の併用投与によ

り,糖負荷後の血糖上昇抑制や血漿中 aGLP-1 濃度上昇が認められた.これらの作用は,8

週齢(糖尿病発症前)及び 13 週齢(発症後)の ZDF ラットにおいて同様に認められた.

2型糖尿病モデルマウスである db/db マウスにおいて,GTB と CMA の併用投与により糖負荷後

の血糖上昇抑制や血漿中 aGLP-1 濃度上昇が認められた.

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総括

以上の研究結果から,SGLT 阻害薬が,消化管 SGLT1 阻害に基づく小腸内糖質吸収遅延作用

により血漿中 aGLP-1 濃度を上昇させること,また DPP4 阻害薬と併用することでこの作用は著しく増

強されることが示された.SGLT 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用効果は,異なる構造の化合物の組み

合わせでも共通して認められ,糖尿病モデル動物において単独投与を上回る血糖低下作用と血漿中

aGLP-1 濃度上昇作用,耐糖能改善作用などを示した.これらの結果から,SGLT 阻害薬と DPP4

阻害薬の併用投与は,2型糖尿病治療における有用な選択肢となる可能性がある.

SGLT2 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用は,異なる作用機序に基づく血糖低下作用を有すること,

GLP-1 分泌促進効果と aGLP-1 分解抑制効果を持つこと,両剤とも低血糖リスクが比較的少ないこ

と,などから血糖低下薬の理想的な組み合わせの一つであると考えられる.ただし,SGLT2 阻害薬は

尿路感染症,代謝性アシドーシス,脱水などの副作用が報告されており,また,両剤の併用は単独

投与に比べて低血糖の発症リスクを高める可能性がある.さらに,SGLT 阻害薬により過度に SGLT1

を阻害すると,SLC5A1 変異患者に見られるような GGM を生じて下痢などの消化器症状を呈するおそ

れがある.本研究で用いた canagliflozin は臨床・非臨床において消化器症状は報告されていないが,

canagliflozin より強力な SGLT1 阻害活性を有する SGLT 阻害薬や高用量の SGLT 阻害薬を使用

する場合には注意が必要である.DPP4 阻害薬については副作用リスクは少ないものの,薬剤の種類

によって代謝・排泄経路が大きく異なり,腎排泄型のDPP4阻害薬では腎機能に応じた用量調節が必

要である.こうしたリスクや注意点を踏まえ,糖尿病の病態や併発疾患等を考慮し,リスクを上回るベ

ネフィットが期待される患者にのみ,SGLT2 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用療法は実施されるべきであ

る.

SGLT2 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用効果については,本研究で着目した血漿中 aGLP-1 濃度

変化以外にも報告がある.Terasaki らは抗動脈硬化作用に着目し,SGLT 阻害薬 ipragliflozin と

DPP4 阻害薬 alogliptin を併用することで,単独投与に比べてマクロファージ泡沫化抑制作用や大動

脈におけるアテロームプラーク形成抑制作用が相乗的に増加することを示した 54.血糖値と DPP4 活性

は,スカベンジャー受容体 LOX1 やコレステロールエフラックスメディエーターである ABCA1 の発現に関与

していることから,両剤の併用投与により血糖値の低下とDPP4活性の阻害が生じることでマクロファージ

の泡沫化が相乗的に抑制されると考えられている.また Kern らは SGLT2 阻害薬 empagliflozin と

DPP4 阻害薬 linagliptin を 8 週間にわたって db/db マウスに併用投与することで,linagliptin 単独

投与に比べて肝臓の脂肪含量が減少し,インスリン感受性が亢進したことを報告した 55.臨床において

SGLT2 阻害薬と DPP4 阻害薬の配合剤が増えてきたことで,今後も臨床・非臨床において両剤の併

用効果に関する研究が進むことが期待される.SGLT2 阻害薬と DPP4 阻害薬の併用療法の治療学

的意義について,より長期的な検討や種々の疾患の病態モデル動物を用いるなどして,引き続き検討

を続ける必要がある.

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試験方法

1. 試験材料

1.1 化合物

Canagliflozin , CGMI , sitagliptin , voglibose , GTB , CMA , TA-1887 ,

teneligliptin は田辺三菱製薬株式会社にて合成した.

Phloridzin は Sigma-Aldrich より購入した.

Metformin は和光純薬工業より購入した.

1.2 株化細胞

ヒト・ラット・マウスの SGLT1,SGLT2 をコードしたプラスミドを用いて,各トランスポーターを安定発

現 さ せ た CHO-K1 細 胞 は , Johnson & Johnson ( 現 Janssen Research &

development)より供与された.

ラット骨格筋由来 L6 細胞は財団法人 ヒューマンサイエンス振興財団より購入した.

1.3 動物

C57BL/6J マウスと C57BL/KsJ-db/db Jcl(db/db)マウスは日本クレアより購入した.

SD ラット,F344/DuCrlCrlj ラット,ZDF-Leprfa/CrlCrlj(ZDF)ラットは日本チャールスリバー

より購入した.

F344/NSlc ラットは日本 SLC より購入した.

実験動物は動物実験施設に入荷後,1 週間以上の馴化期間を設け,12 時間の明暗周期のもと,

管理された温湿度環境下で飼育を行った.餌と水は,試験前日まで自由に摂取可能とした.

1.4 臨床サンプル

ヒト血清は,社内健常人ボランティアからのヒト由来試料提供に関する規程に従い,ボランティアの

同意のもと,田辺三菱製薬社内での採血により取得した.

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2. 試薬調製

使用した試薬,緩衝液などの組成を以下に示す.

2.1 In vitro 評価

A) SGLT阻害アッセイ

培地

Ham’s/F-12 Nutrient Mixture(Gibco)に終濃度 10%の FBS(ニチレイバイオサイエンス),

終濃度 400 μg/mL の Geneticin(Gibco)及び終濃度 0.45%の Penicillin-Streptomycin

(Gibco)を添加したものを継代用培地とした.Assay 用培地は,継代用培地に終濃度 10

mmol/L の Sodium butyrate を加えたものを用いた.

Assay buffer

50 mmol/L HEPES,20 mmol/L Tris,5 mmol/L KCl,1 mmol/L MgCl2,1 mmol/L

CaCl2,137 mmol/L NaCl 溶液となるようにそれぞれを精製水に溶解し,卓上型 pH メーター

(METTLER TOLEDO)を用いて 1 mol/L NaOH で pH 7.4 に調整した.また,Negative

control 用 buffer は , Assay buffer 中 の 137 mmol/L NaCl を 137 mmol/L

N-methylglucamine に置換して同様に調製した(-Na Assay buffer).これらの buffer は調製

後,冷蔵庫にて 4℃で保存した.

基質溶液

必要量の-methyl-D-glucopyranoside (AMG; Sigma-Ardrich)を Assay buffer または-Na

Assay buffer にて溶解し,100 mmol/L のストック溶液を調製した.これを各 Assay buffer で希

釈 し , 下 記 の 濃 度 に 調 製 し た . な お , 基 質 溶 液 に は 標 識 基 質 と し て

-methyl-D-[14C]glucopyranoside(PerkinElmer)を添加した.

B) GLUT1阻害アッセイ

培地

500 mLの Dulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM; ライフテクノロジーズ)に56.2 mL

の非働化(約 56℃,30 分間処理)済み FBS 及び 5.62 mL の Penicillin-Streptomycin(ラ

イフテクノロジーズ)を添加し,継代用培地とした.冷蔵庫にて 4℃で保存し,調製後 1 カ月以内に

基質溶液(mmol/L) 終濃度(mmol/L)

h/r/mSGLT1 1.8 0.3

h/r/mSGLT2 3.0 0.5

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使用した.

Krebs-Ringer Phosphate Hepes(KRPH)buffer(pH 7.4)

150 mmol/L NaCl,10 mmol/L HEPES,5 mmol/L KCl,1.25 mmol/L MgSO4,1.25

mmol/L CaCl2 及び 2.9 mmol/L Na2HPO4 となるように精製水に溶解し,0.1 あるいは 1 mol/L

NaOH で pH 7.4 に調整した.室温にて保存し,調製後 1 カ月以内に使用した.

DMSO 含有 KRPH buffer(用時調製)

24.7 mL の KRPH buffer に 0.3 mL の DMSO を添加し,DMSO 含有 KRPH buffer を調製し

た(DMSO 調製濃度:1.2%,DMSO 最終濃度:1.0%).

Cytochalasin B 溶液(用時調製)

必要量の cytochalasin B(和光純薬工業)を秤量し,DMSO に溶解して 5 mmol/L

cytochalasin B 溶液を調製した.これを KRPH buffer を用いて希釈し,以下の調製濃度にした.

Cytochalasin B の調製濃度:60 μmol/L(DMSO 濃度 1.2%)

Cytochalasin B の最終濃度:50 μmol/L(DMSO 濃度 1.0%)

試験物質溶液(用時調製)

必要量の化合物を秤量し,DMSO に溶解して 5 mmol/L の化合物溶液を調製した.これを,

DMSO を用いて希釈し,各 1 mmol/L 溶液を調製した.次に,KRPH buffer を用いて段階希釈し,

各 12 μmol/L(DMSO 濃度 1.2%)溶液を調製した.これを DMSO 含有 KRPH buffer を用い

て段階希釈し,以下の調製濃度にした.

化合物の調製濃度:1.2,3.6,12 μmol/L(DMSO 濃度 1.2%)

化合物の最終濃度:1,3,10 μmol/L(DMSO 濃度 1.0%)

基質溶液(用時調製)

必要量の 2-deoxy-D-glucose(2-DG; 東京化成工業)を秤量し,KRPH buffer にて溶解して

45 mmol/L 2-DG 溶液を調製した.これを KRPH buffer を用いて希釈した後に[3H]-2-DG

(American Radiolabeled Chemicals)を添加し,以下の調製濃度にした.

基質の調製濃度:4.5 mmol/L,12.5 μCi/mL

基質の最終濃度:0.75 mmol/L,2.08 μCi/mL

混合溶液(用時調製)

DMSO含有KRPH bufffer,cytochalasin B溶液あるいは試験物質溶液に対して基質溶液を5:

1 の容量比で混合し,混合溶液とした.

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C) DPP4阻害アッセイ

アッセイ緩衝液

精製水 200 mL につき,PBS tablet(タカラバイオ) 1 錠を加えて,完全に溶解した.これに Brij

L23 Solution(Sigma-Aldrich)を 20 L 添加し,均一化させた.

DPP4 特異的蛍光基質 Gly-Pro-MCA

Gly-Pro-MCA(16 mol; ペプチド研究所)に DMSO 0.8 mL を加えて溶解し,20 mmol/L

溶液を調製した.この原液を,アッセイ緩衝液で 200 倍希釈し,100 mol/L の基質溶液を調製し

た.これらは評価当日に調製し,使用した.

7-amino-4-methyl-coumarin (AMC)

AMC(29 mol; ペプチド研究所)に DMSO 1.45 mL を加えて溶解し,20 mmol/L 溶液を調

製した.この原液をアッセイ緩衝液で希釈し,100000, 25000, 6250, 1563, 391 および 98

nmol/L の検量線用 AMC 溶液を調製した.なお,AMC 溶解濃度 0 nmol/L には,アッセイ緩衝

液を使用し,検量線作成時には blank として取り扱った.これらは評価当日に調製し,使用した.

2.2 In vivo 評価

投与媒体

0.2% Tween 80 含有 0.5% CMC 水溶液は,精製水に 0.5%(w/v)カルボキシメチルセルロー

スナトリウム(CMC; ナカライテスク)及び 0.2% (w/v)Tween 80(ナカライテスク)となるように

溶解した. 0.5% HPMC 水溶液は,精製水に 0.5%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース

(HPMC; 和光純薬工業)となるように溶解した.

糖質あるいは脂質溶液

グルコース溶液は,精製水に D(+)-グルコース(関東化学)を 40%(w/v)となるように溶解して

調製した.スクロース溶液は,精製水にスクロース(関東化学)を 25%(w/v)となるように溶解し

て調製した.脂質溶液は,イントラリポス輸液 20%(大塚製薬工場)を使用した.

化合物溶液

必要量の各化合物を秤量し,投与溶媒を添加した.氷冷しながら超音波破砕機(BRANSON)を

用いて懸濁した後,転倒混和した.化合物溶液は投与当日に調製した.

DPP4 阻害薬-EDTA・2K 溶液

精製水にEDTA・2K(同仁化学研究所)とDPP-Ⅳ Inhibitor (Millipore)を溶解し,DPP4阻害

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薬-EDTA・2K 溶液を調製した.回収した血液と混和した際に,最終濃度が 50 mol/L DPP-Ⅳ

Inhibitor,2.5 mmol/L EDTA・2K となるよう,試験前日あるいは当日に血液回収チューブに一定

量添加した.

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3. 試験方法

3.1 In vitro 評価

A) SGLT阻害アッセイ

AMG の SGLT 発現 CHO 細胞への取り込み試験

各 SGLT を発現した CHO-K1 細胞を Assay 用培地で懸濁し,4×105 cells/mL/well となるよう

に24ウェルプレートに撒き,CO2インキュベーターにて36~48時間培養した.試験当日,培地を吸引

除去し,1 ウェルあたり 400 μL の Assay buffer または-Na Assay buffer で 3 回洗浄し,3 回目

の添加の後 10 分間室温放置した.Buffer を吸引除去し,試験物質溶液を 1 ウェルあたり 250 μL

添加し,CO2 インキュベーター内で 37℃にて 10 分間静置した.次に 50 μL/ウェルの基質溶液を添

加し,CO2 インキュベーター内で 37℃にて 2 時間静置した.試験物質・基質混合溶液を吸引除去し

た後,300 μL/well の 0.3 mol/L NaOH を添加し,水浴にて 60℃で 20 分間加温した.各ウェ

ルを 40 回ピペッティングした後,150 μL の細胞溶解液を液体シンチレーションカウンター(LSC)用ガ

ラスバイアルに,残りはタンパク質濃度測定用として 96 ウェルプレートにそれぞれ分取した.LSC 用ガラ

スバイアルに 3 mL の HIONIC-FLUOR(PerkinElmer)を加え,タッチミキサーにてよく混和した後,

LSC(TRI-CARB 3100TR; Packard bioscience company)にて 14C 放射活性を測定した.

計測時間は 1 バイアルあたり 3 分間とし,計測前消光時間を 6 秒間に設定した.

基質の比放射活性を測定するため,精製水で 20 倍希釈した基質溶液を LSC 用ガラスバイアルに 40

μL 分取し,14C 放射活性を triplicate で測定した.基質濃度の Total count(TC)は,この値

(TC 測定値)の平均値を用いて次の式により算出した.

TC (dpm/nmol)= (TC 測定値の平均値)*20/(基質濃度)/6/40

タンパク質定量

7.5 μL の細胞溶解液を 96 ウェルプレートに分取し,225 μL の Coomassie Plus Protein Assay

Reagent(Thermo scientific)を添加後10分間室温で放置した.プレートミキサーにてよく攪拌し

た後,プレートリーダー(SpectraMax M5e; Molecular Devices)にて 595 nm の吸光度を測定

し,タンパク質濃度を算出した.タンパク質濃度の算定は SOFTmax PRO5.2(Molecular

Devices)を用いて解析した.

データ処理 14C 放射活性(dpm)をTC(dpm/nmol)で除することにより,AMG取り込み量(nmol)を算

出した.ただし,基質濃度中の標識基質濃度は非常に薄いため,添加する標識基質の濃度はデータ

処理に考慮しないこととした.AMG 取り込み量(nmol)をタンパク量(mg)で除することにより,単

位タンパク質あたりの AMG 取り込み量(取り込み量,nmol/mg protein)を算出した.AMG の取

り込み量から Na 非添加群の取り込み量(バックグラウンド値)を減じた値を算出し,SGLT 活性とした.

Na 非添加群の取り込み量(バックグラウンド値)を 0,コントロールの SGLT 活性を 100%として,試

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験ごとに全てのウェルの%inhibition を算出した.Graph Pad Prism ver.5.02 を用いて,各濃度に

おける%inhibition の値を元に非線形回帰法により IC50 値を推定し,2 回あるいは 3 回の試験の

IC50 値から幾何平均値を算出した.

B) GLUT1阻害アッセイ

2-DG の L6 細胞への取込み実験

L6 細胞を継代用培地に懸濁し,3×105 cells/mL/well となるように 24 ウェルプレートに播種した.

一晩培養後,細胞を播種したウェル内の培地を除去し,KRPH buffer で 2 回洗浄した.混合溶液

を 300 μL/well ずつ添加して軽く振とうした後,室温で 30 分間静置した.混合溶液を吸引除去し,

PBS で 3 回洗浄した後,0.3 mol/L NaOH を 400 μL/well ずつ添加して 60°C,約 20 分間反

応させ細胞を溶解した.この細胞溶解液をピペッティングにて十分に混和した後に 200 μL/well を測

定バイアルに分取して,5 mL の HIONIC-FLUOR と混合し,LSC を用いて放射活性を測定した.

基質溶液を KRPH buffer で 10 倍希釈し,そのうち 10 μL を測定バイアルに分取して,5 mL の

HIONIC-FLUOR と混合し,LSC を用いて放射活性を測定した.この値を用いて 2-DG の比放射活

性(dpm/nmol)を算出した.

タンパク質定量

SGLT 阻害アッセイと同様の方法で,細胞溶解液中の蛋白質濃度(mg/mL)を算出した.

データ処理

基質溶液の放射活性を 2-DG 量で除することにより,単位 2-DG あたりの放射活性(比放射活性,

dpm/nmol)を算出した.また測定バイアル当たりの放射活性,測定バイアル当たりの細胞溶解液

量および well 当たりの細胞溶解液量から,well 当たりの放射活性(dpm/well)を算出した.これ

を比放射活性で除することにより,well 当たりの 2-DG 量(nmol/well)を算出した.これを well

当たりの細胞蛋白質重量で除することにより,各 well の単位蛋白質重量当たりの 2-DG 量

(nmol/mg protein)を算出した.

Cytochalasin B 処置群の単位蛋白質重量当たりの 2-DG 量(nmol/mg protein)の平均値を

バックグラウンド値とし,各処置群の単位蛋白質重量当たりの 2-DG 量(nmol/mg protein)の平

均値から,各処置群の 2-DG 取込み率(% uptake)を算出した.なお,コントロール群の 2-DG

取込み率(% uptake)は 100%,cytochalasin B 処置群の 2-DG 取込み率(% uptake)

は 0%とした.最後に下記の計算式から試験物質処置群の各 well の 2-DG 取込み抑制率(%

inhibition)を算出した.

試験物質処置群の 2-DG 取込み抑制率(% inhibition)=100- 100)( BC

BA-

A:試験物質処置群の単位蛋白質重量当たりの 2-DG 量の平均値

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B:Cytochalasin B 処置群の単位蛋白質重量当たりの 2-DG 量の平均値

C:コントロール群の単位蛋白質重量当たりの 2-DG 量の平均値

Graph Pad Prism を用いて,各濃度における% inhibition の値を元に非線形回帰法により IC50

値を推定し,3 回の試験の IC50 値から幾何平均値を算出した.

C) DPP4阻害アッセイ

ラット血清の回収

8 週齢の雄性 SD ラット(日本チャールス・リバー)をペントバルビタール(50 mg/kg, ip; 東京化成

工業)麻酔下で腹部大静脈から全採血を行った.採取した血液はベネジェクト II 真空採血管(テル

モ)に回収し,室温で 30 分静置させたのち,遠心分離(1800×g,15 分)して血清を回収し,

-20 ℃で保存した.評価当日に,血清をアッセイ緩衝液で 10 倍希釈して使用した.

ラット血清 DPP4 活性の評価

各試験物質とも,正常ラット 3 例を用い,1 個体から採取した血清毎に DPP4 活性に対する作用を

評価した(n=3).各試験物質の評価濃度は,いずれも 0.1 nmol/L から 10 mol/L とし,公比

3 にて 11 濃度を設定した.96 ウェルプレートの各ウェルに,下表に示す容量のアッセイ緩衝液,試験

物質溶液,5% DMSO 溶液,基質溶液および検量線用 AMC 溶液を分注し,その後,“Serum

(+)”のウェルに,20 L の希釈血清を添加して反応を開始させた.全てのサンプルは duplicate で分

注した.なお,全てのウェル中の DMSO 濃度は 0.5%であった.

各ウェルに分注する溶液

(μL/well)

試験物質用 検量線用

Serum (+) Serum (-)

アッセイ緩衝液 140 160 160

試験物質溶液*) 20 20 -

5% DMSO 溶液 - - 20

基質溶液 20 20 -

検量線用 AMC 溶液**) - - 20

希釈血清 20 - -

計 200 200 200

*):試験物質濃度 0 nmol/L は 5% DMSO 溶液を使用

**):検量線用 AMC 溶液 0 nmol/L にはアッセイ緩衝液を使用

37℃,1 時間インキュベート後,プレートリーダーを用いて,励起波長 360nm,蛍光波長 465nm

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において各ウェルの蛍光強度を測定した.DPP4 活性に応じて,基質 Gly-Pro-MCA から AMC が生

成されることから,SoftMax Pro を用いて血清 1 mL 当り反応 1 分当りの AMC 産生量

(nmol/mL/min)に換算した.Excel を用いて血清ごとに各試験物質各濃度の“Serum (+)”の

AMC 産生量から“Serum (-)”の AMC 産生量の差を算出し,各試験物質各濃度の血清 DPP4 活

性とした.

ヒト血清 DPP4 活性の評価

上記のラット血清を用いた DPP4 活性評価と同様の手法を用いて,ヒト血清 DPP4 活性を評価した.

3.2 In vivo 評価

本研究における全ての動物実験は,田辺三菱製薬株式会社動物実験委員会により審査され,承認

された動物実験計画に沿って実施した.

D) C57BL/6J マウス及び db/db マウスを用いた経口糖負荷試験

一晩絶食させた 9 週齢雄性 C57BL/6J マウス,あるいは 13 週齢雄性 db/db マウスに,経口ゾンデ

を取り付けたシリンジを用いて,化合物溶液とグルコース溶液(2g/kg BW)を同時に経口投与した.

イソフルラン(マイラン製薬)吸入麻酔下で腹部大静脈から採血を行い,DPP4 阻害薬-EDTA・2K

溶液を予め添加しておいたチューブに血液を回収した.採取した血液から遠心処理により血漿を分離し,

得られた血漿を-80℃で保存した.

E) SD ラットを用いたグルコース,水あるいは脂質溶液の経口負荷試験

一晩絶食させた 7-8 週齢雄性 SD ラットに,経口ゾンデを取り付けたシリンジを用いて,化合物溶液と

グルコース溶液(2 g/kg BW)を同時に経口投与した.糖負荷依存性を検討する試験ではグルコー

ス溶液の代わりに,等量の水あるいは脂質溶液(2 g/kg BW)を投与した.ラットを保定し,覚醒

下で尾静脈から採血を行い,DPP4 阻害薬-EDTA・2K 溶液を予め添加しておいたチューブに血液を

回収した.

F) SD ラットを用いた消化管糖質吸収評価試験

血漿中グルコース濃度の評価

一晩絶食させた7週齢雄性SDラットに,経口ゾンデを取り付けたシリンジを用いて,化合物溶液とスク

ロース溶液(2.5 g/kg BW)を同時に経口投与した.血漿中グルコース濃度を評価する試験群は,

糖負荷 3 時間後まで経時的に尾静脈から採血を行い,DPP4 阻害薬-EDTA・2K 溶液を予め添加し

ておいたチューブに血液を回収した.

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消化管内糖質残存量の評価

消化管内糖質残存量を評価する試験群は,糖負荷 1 時間後あるいは 6 時間後に,ペントバルビター

ル(50 mg/kg, ip)麻酔下で小腸・盲腸・大腸を採材し,小腸は上部・中部・下部の 3 部位に分

割した. 各消化管断片の管腔を氷冷した生理食塩水 5 mL で洗浄し,内容物を回収した.液量を

記録したのち,回収液のうち 3 mL を 2N H2SO4 2 mL に添加し混和後,遠心して上清 2 mL を採

取した.沸騰した恒温槽にて 2 時間加熱後,遠心したのち上清 150 L に 2N NaOH 60 L を加

えて中和し,グルコース濃度測定に供した.

消化管管腔内薬物濃度の評価

アセトニトリルを用いて上部小腸から取得した回収液の除タンパクを行い,0.1 mol/L 酢酸アンモニウム

溶液で希釈したのち,サンプル中の canagliflozin を液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計

(LC/MS/MS; API 4000, AB SCIEX)で定量評価した.

G) F344 ラット及び ZDF ラットを用いた経口糖負荷試験

一晩絶食させた 9 週齢雄性 F344/NSlc ラット,9 週齢雄性 F344/DuCrlCrlj ラット,8 週齢あるい

は 13 週齢雄性 ZDF ラットに,経口ゾンデを取り付けたシリンジを用いて,化合物溶液とグルコース溶

液(2 g/kg BW)を同時に経口投与した.ラットを保定し,覚醒下で尾静脈から採血を行い,

DPP4 阻害薬-EDTA・2K 溶液を予め添加しておいたチューブに血液を回収した.

H) 血漿中パラメータの定量解析

血漿中グルコース濃度及び管腔内未吸収糖質濃度はグルコース CII-テストワコー(和光純薬工業)

を用いて測定した.血漿中インスリン濃度は超高感度インスリン測定キット(森永生化学研究所)を

用いて測定した.血漿中 aGLP-1 濃度は,血漿を Oasis HLB mElution plate(Waters)を用

いて固相抽出したのち,Glucagon Like Peptide-1 (Active) ELISA kit(Millipore あるいは

Epitope Diagnostics)を用いて測定した.血漿中総 GLP-1 濃度は Total GLP-1 ELISA kit

(Meso Scale Discovery)を用いて測定した.糖負荷前(0 分値)の vehicle 群の平均血漿中

GLP-1 濃度(ベースライン)を 1 とし,血漿中 GLP-1 濃度は相対値で算出した.

I) 統計解析

実験データは各群の平均値 標準誤差で示した.AUC(曲線下面積)およびΔAUC(曲線下増

加面積; ベースラインより上の曲線下面積)は台形法により算出した.SAS-based system(SAS

Institute)あるいは Prism software(GraphPad Software)を用いて一元配置分散分析ある

いは繰り返しのある二元配置分散分析を行い,仮説の構造化により化合物単独投与群と併用投与

群,続けて vehicle 群と化合物単独投与群について,Dunnett 法による多重比較検定あるいは

Student の t 検定を行った.p < 0.05 の場合に有意であるとみなした.

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63

COI(Conflict of Interest)

Canagliflozin は,田辺三菱製薬株式会社と Janssen Research & Development,

LLC. により共同開発された薬剤である.

著者は田辺三菱製薬社員である.本学位論文に使用したデータは下記論文で報告済みであ

り,指導教員を除き,共著者は全て田辺三菱製薬社員である.

• Oguma T, Nakayama K, Kuriyama C, Matsushita Y, Yoshida K, Hikida K,

Obokata N, Tsuda-Tsukimoto M, Saito A, Arakawa K, Ueta K, Shiotani M.

(2015) Intestinal Sodium Glucose Cotransporter 1 Inhibition Enhances

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• Oguma T, Kuriyama C, Nakayama K, Matsushita Y, Hikida K,

Tsuda-Tsukimoto M, Saito A, Arakawa K, Ueta K, Minami M, Shiotani M.

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謝辞

本研究を遂行するにあたり,御指導,御鞭撻を賜りました,北海道大学 大学院薬学研究院 薬理

学研究室 教授,南雅文先生に心より感謝申し上げます.

本研究を遂行するにあたり,有益な御助言,御指導を頂きました田辺三菱製薬株式会社 SGLT2

阻害薬プロジェクトメンバーの皆様に深く感謝申し上げます.

特に,本研究を遂行するにあたり,試験計画の立案から試験の実施,データ解析にいたるまで,全て

において御指導,御助言,御助力を賜りました,田辺三菱製薬株式会社 薬理第二研究所 中山

慶子研究員,栗山千亜紀研究員,吉田久美子研究員,松下泰明研究員,植田喜一郎研究員,

塩谷正治研究員に心より感謝致します.

本研究を遂行するにあたり,薬物動態学的見地からの有益な御助言,御指導を賜りました,田辺三

菱製薬株式会社 薬物動態研究所 匹田久美子研究員,小保方直行研究員,津田実研究員に

深く御礼申し上げます.

本研究を遂行するにあたり,御指導,御教示と数多くの有益な御助言を頂きました,田辺三菱製薬

株式会社 荒川健司博士,齊藤亜紀良博士に深く御礼申し上げます.

最後に,博士学位の取得に理解を示し,支えてくれた,妻をはじめとする家族に心より感謝致します.