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土の中の『銀河』微生物多様性が支える地球生命圏 中央農業総合研究センター 横山和成

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“土の中の『銀河』” 微生物多様性が支える地球生命圏

中央農業総合研究センター

横山和成

• 化石燃料の独り占め

• 直線的廃棄

• 部分的・一方的浪費

• 刹那的幸福追求

• 表面的認知

• 20世紀型科学技術 「不可能を可能にする」 (単純系、還元論)

• 自然の人工制御幻想

• 過剰な土壌荒廃を誘発

我々が直面している幾つもの危機: 現代人の思考・行動が作った宿痾

FAOの2008年報告では,生態系の機能や生産性の低下と定義される土地の劣化は,耕作地の20%,森林の30%,草地の10%で進行中となっています。劣化する土地に直接依存している人は15億人にのぼると推定。

人類が引き起こした土壌劣化地図

水浸食

風浸食

化学性悪化

物理性悪化

重篤悪化

安定

不使用

水圏

「土壌の豊かさ」とは 化学性、物理性、生物性の3つで表します。

4 DGC Technology Inc.

今まで土壌の生物性を測る方法は、ほとんどありませんでした。

豊かさ

• 化学性

pH、窒素、リン酸、

カリ、ミネラル、腐

植など

• 物理性

粒状、堅さ、水は

け、水持ちなど

• 生物性

微生物、小動物な

ど 化学・物理・生物性3つが揃って

始めて豊かな土壌といえます

化学性

生物性 物理性

土壌の豊かさを表す3つの視点

土壌微生物の世界は科学的に 未踏の領域

• 数

–土壌1グラム当たり億~兆の数存在。

• 種類

–土壌1グラム当たり千種以上、殆どが新種。

• 個々の機能

–見える数の百分の一以下しか培養出来ない。

• 群としての機能

–組合せの数が多すぎて群として調べられない。

Patterns begin developing in as little as 4 hours

縦に8列、横に12列、計96個のウェル(へこみ)が手のひら大のプラスチックプレートに並べられています(左図)。左肩の1ウェルを除いて、各ウェルには、高分子、エステル、糖、アミノ酸、有機酸他、全体で9種類のカテゴリーから、細菌を同定(種を見分ける)するために有効な有機物が塗布されていている。全てのウェルに同じ微生物を入れて、一定時間おくと、その微生物が分解することが出来る有機物が塗布されているウェルは赤紫に着色する(右:拡大図)

微生物の性質を数値化するためのキーテクノロジーは、 海の向こう(米国)からやって来ました。

バイオログ社製細菌簡易同定キット

土壌 サンプル

希釈懸濁 液調製 寒天平板

培養

無作為採取したコロニーを バイオログプレートへ

ステップA

ステップC

ステップB

クラスター解析法

有機物分解能を数値化 プレート リーダー

土壌微生物多様性指数法の実験手順

持続的生産が可能な土壌には多様な微生物が居た

多様性指数

連作障害発病度(%)

岐阜県飛騨地方のホウレンソウ連作土壌の例 岐阜県高冷地農業試験場

群集構成者の利用炭素源数

連作障害土壌 抑止土壌

岐阜県高冷地農業試験場 中央大学 イリノイ大学

それぞれの土壌微生物群集の有機物分解能を比べてみたら?

岐阜県飛騨地方のホウレンソウ連作土壌の例 岐阜県高冷地農業試験場 中央大学 イリノイ大学

連作障害抑止型土壌 連作障害激発土壌

殆どの微生物は同じ有機物分解

機能をもった中心点(矢印)に集中

同じ有機物分解機能をもった微生物

は殆どいないため、均等に分散

2001年

2007年

Biolog社製オムニログ ロボットシステムによる自動化で2000倍の効率化を達成

2005年~2007年

農林水産業「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」

土壌 サンプル

希釈懸濁 液調製

懸濁液を直接 バイオログプレートへ

ステップC 有機物分解能を

数値化 プレート リーダー

土壌微生物多様性・活性値の実験手順

スキップ

微生物活性の低い土壌 微生物活性の高い土壌

土壌の有機物分解反応を48時間自動観測

オムニログシステムのロボットアイがデータを 自動採取し、データベース化

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

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土壌サンプル

活性指数

図3.北海道十勝地方の畑作土壌の微生物活性評価例

□:優良土壌 ▲:問題土壌

要注意ゾーン

危険ゾーン

安全ゾーン ×1,000,000

土壌微生物による発根促進・ 高品質化

611,275 1,303,391

(株)DGCテクノロジー、 (株)エーピーコーポレーション

処理前発病率

100% 444,960

処理後発病率

19.2% 1,069,672

ベニバナインゲン

綿腐病 人工的微生物多様化成功

片倉チッカリン(株) 筑波総合研究所、茨城県農業総合センター農業研究所、(株)DGCテクノロジー

2012年

西欧 702,823

南米 13,337 オセアニア 1,882,792

日本 2,163,260

日本の土づくり技術は世界トップ!

先祖が育てた日本の農地土壌は、現時点での、20000サンプルの中では群を抜いている。しかも、それを守り育てた人間はまだ生きている。

DGC Technology Inc.

ミミズやドジョウの住み良い田んぼ 「土壌微生物について、尺度があるのはとても良いと感じました。日頃から微生物が中心になって作物が育つのは間違いないと思っていたからです」と瀬川さん。自然観察をしながら北海道で有機農業に取り組んでいます。

米、野菜を約140haの圃場で栽培する当麻グリーンライフ。野菜・畑・水田圃場の9割の面積で有機農産物を生産しており、田んぼの生き物調査もしています。分析結果は驚きの200万を超えました。

当麻グリーンライフさんの水田土壌。

土壌微生物多様性・活性値:2,007,209

DGC Technology Inc.

自然を大切にして40年 「土壌微生物多様性・活性値分析の結果を見て、土壌中の微生物の種類と数が確実に増えていることが分かり、自分たちがやってきたことが間違いではなかったと実感しています」とおっしゃる金子さん。長年、有機農業に取り組んでこられた、環境保全型農業のカリスマです。

自家製堆肥や廃油の再利用など、大自然から与えられたものを無駄なく使う「自然エネルギー循環型有機農業」を実践されています。

金子さんの水稲-小麦-大豆ブロックローテーション圃場の土壌微生物多様性・活性値を分析したプレート。

土壌微生物多様性・活性値:1,680,376

DGC Technology Inc.

試行錯誤の土づくり

20 DGC Technology Inc.

「私のやってきた土作りは、間違っていなかった。報われた気分です」とおっしゃる新潟県燕市市議も務める農業者の大原伊一さん.。 一度は大量に有機物を投入しすぎて土を壊してしまった苦い経験があります。その後は農産物や土と対話しながら、試行錯誤で土作りをしてこられました。 米、チューリップ、ユリを栽培しておられます

大原さんの有機水田土壌の微生物多様性・活性値は160万を超え、丹念に土作りをしてきたことが実証されました。 自信を持って消費者の方へ栽培履歴を公開されています。

大原さんの有機水田の土壌微生物多様性・活性値を分析したプレート。

土壌微生物多様性・活性値:1,626,110

20 DGC Technology Inc.

後生のために持続可能な農業を 「豊かな土壌を維持するためには、無農薬・無化学肥料栽培だけでなく、大豆を途中に入れた輪作体系が必要だ」とおっしゃる岩手県畠山さん。実際に土壌中の微生物の多様性・活性値を測定してみたところ、大豆を作付けした畑は大変高い数値となりました。

有機栽培のショウガ、ニンニク、大豆などを輪作することで土づくりをし、大変良い農産物を収穫されています。「昔から大豆を入れた輪作が大事だと言われていたが、本当かどうか確認したかった。分析によりこの説が数値で明確に表れ、自信がついた」ととても誇らしげです。

畠山さんの輪作圃場の土壌微生物多様性・活性値を分析したプレート。

土壌微生物多様性・活性値:1,437,349 DGC Technology Inc.

豊かな自然を取り戻すために

22 DGC Technology Inc.

梨の産地鳥取県では、産地を守るために大量の農薬が使われ、気がつけば鳥や虫たちが姿を消してしまいました。 井田農園では自然に配慮した土作りをすることで、根が発達しとても美味しい梨を実らせ、同時に豊かな自然を取り戻しました。

ツグミやホタル、野蒜やコガネグモ、モリアオガエル。ほかにもたくさんの生き物が戻ってきました。豊かな自然の中で実った井田農園の梨は、予約で完売するほどおいしい梨です。

井田農園の土壌微生物多様性・活性値を分析したプレート。

土壌微生物多様性・活性値:1,314,979

22 DGC Technology Inc.

施肥の影響

無処理

879,791

速効性肥料の連用

181,984 (株)DGCテクノロジー、㈱三功

有機性肥料の連用

1,462,27

土壌薫蒸消毒の影響

土壌消毒前

983,569

土壌消毒後

181,984 (株)DGCテクノロジー、茨城県

土づくり

1,417,411

ミミズ通過前 273,270

ミミズ通過後 1,880,240

(株)DGCテクノロジー、 ㈱報徳

ミミズなど 土壌動物の影響

「水と生きる」=「森と生きる」=「土と生きる」 サントリーHPより

多様性・活性値

0

400,000

800,000

1,200,000

1,600,000

2,000,000

1 2 3 4 5 ひのき林 ミズナラ 巨木エリア 広葉樹

天然水の森「奥大山」

(株)DGCテクノロジー、 サントリーホールディングス(株)

土は生きた浄化プラント

土の力の数値化により

真の国力を見える化

生態系の復元力(Resilience)を活用した田んぼの復興マップ

南三陸

志津川

渡波

寒風沢島

大谷

米崎

小森・熊田

秋目川

桃和田

前浜

NPO 田んぼ

津波被災直後の大谷の田んぼ NPO 田んぼ

April 2011 May 2011

May 2011 August 2011

Kesennuma, Miyagi

NPO 田んぼ

経済的支援

グリーンツーリズム NPO 田んぼ

Soil Projectは、何を目指しているか

■ Soilマークについて

私達は、今までに全くなかった新しい方法で農地の土壌を分析し、生物性豊かな土壌で育てられた農産物に「SOILマーク」シー

ルを貼り、安心を求める農産物選びの目安の提供を開始しました。

SOILマーク

DGC Technology Inc. NPO生活者のための食の安心協議会

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現場の息づかいを皆で伝え合う仕掛け作り 例えば・・・にんじんに最適な土づくりからはじめました!

• ひとつの食材をテーマにその基礎研究から、料理まで、それぞれの過程でのこだわりを伝えていく。

• テーマ案 にんじん

• 微生物土壌研究

• 医療からみた有機へのこだわり

• 収穫のタイミング

• にんじんを使ったメニュー開発の苦労

• メニュー紹介

• 店舗紹介

NPO 生活者のための食の安心協議会

つかいて

(調理者) かたりて(医師、研究者など)

つくりて(生産者)

土壌微生物が教える事

• 40億年の稼働実績

• 1兆/グラムの存在量

• 地球生命圏のエネルギー 循環の要

• いつも、どこでも、いつまでも

• 多様性がが可能にする 可変性と永続性

生命量

圧倒的多数は

土壌微生物

認知の水平線

太陽エネルギー

地球生命

氷球の世界観

人知らず・・・

唯一の生命再生産産業「農」から

始まる人間・社会・文化の大進化 • 地球生命圏のプレイヤー: 生産者(植物)・消費者(動物)・還元者(微生物) ①始めに微生物出現

②光、CO2、水で有機物を作る植物

③植物を食べる動物

④植物と動物を食べる人間

• 微生物

植物と動物(人間)を多様な

微生物が支えている

• 進化し続ける農家

「微生物多様性」を支える→

人類の持続的生存を支えている

微生物

植物

動物

人間

HERO!

21世紀 最高の楽しみ

多様な

HEROを育

てよう!

20世紀を見送ったころ、私は、カリフォルニア州の田舎町、パサデナにあるNASAの研究所で、一枚の写真を見たことがある・・・・

それは、30年も前に地球を飛び立った惑星探査機が、いよいよ太陽系を去ろうとした時に、 振り返って撮った一枚の地球の写真だった。

強力な太陽光ビームの片隅で、青黒く見える宇宙に浮かんだそれは、か弱いまでに小さな

光の点であった。

私にはそれが、いつか見た土の、その中で輝く、銀河の中の一つひとつの小さな点に見えた。