女性が気をつけたい高血圧 - mhlw女性が気をつけたい高血圧...
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女性が気をつけたい高血圧女性が気をつけたい高血圧~ライフステージに応じてリスクを見つめる~
目時 弘仁目時 弘仁(東北大学大学院医学系研究科環境遺伝医学総合研究センター 助教)環境遺伝医学総合研究センタ 助教)
1
本日のトピック本日のトピック
高血 有病者 割合• 高血圧有病者の割合
• 高血圧はなぜ危険か高血圧はなぜ危険か
• ストレスや薬と高血圧
• 妊娠と高血圧
• 高血圧の予防高血圧の予防
• 次世代の高血圧を防ぐために
2
高血圧有病者の割合(女性)
80
90
100
60
70
80
40
50
10
20
30
0
10
30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上、もしくは血圧を下げる薬を服用している者
平成22年 国民健康・栄養調査より3
高血圧はなぜ危険か(血圧値別にみた脳卒中発症率)
対1000人・年
61.760
70
40
50
発症
12 5
23.8 23.8
20
30症率
7.3 8.912.5
0
10
0<120 120‐129 130‐139 140‐159 160‐179 180≦かつ または または または または または<80 80‐84 85‐89 90‐99 100‐109 110≦
血圧(mmHg)
久山町第一集団 60歳以上の男女、580名 追跡32年、性・年齢調整 Arch Intern Med 2003;163:361‐64
高血圧と言われたことがある者における、治療の状況(女性)
80%
90%
100%
60%
70%
80%これまでに治療を受けた
ことがない
過去に受けたことがある
40%
50%
過去に受けたことがある
が、現在は受けていない
過去に中断したことがあ
るが 現在は受けている
10%
20%
30%るが、現在は受けている
過去から現在にかけて継
続的に受けている
0%
10%
30~49歳 50~69歳 70歳以上
平成22年 国民健康・栄養調査より 5
過去1年間に家庭で血圧測定をしたことがある者の割合ことがある者の割合
(男女あわせて)
80
90
100
60
70
80
40
50
10
20
30
0
10
30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
平成22年 国民健康・栄養調査より 6
高血圧の指摘があり、過去1年間に家庭で血圧測定をしたことがある者の割合過去1年間に家庭で血圧測定をしたことがある者の割合
(男女あわせて)
80
90
100
60
70
80
40
50
10
20
30
0
10
30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
平成22年 国民健康・栄養調査より 7
家庭血圧の重要性測定回数により、予後予測能は改善する
リスク上昇率(95%CI)
収縮期
随時血圧
初日のみ
8% (‐1% to 18%)
収縮期(10mmHg上昇毎)
初日のみ
2日間の平均
1週間の平均
家庭血
19% (8% to 31%)
20% (8% to 33%)
27% (13% to 43%)
2週間の平均
全体の平均
血圧 31% (16% to 47%)
35% (20% to 51%)
拡張期(10mmHg
随時血圧
初日のみ
2日間の平均家
8% (1% to 16%)
10% (3% to 18%)
12% (4% to 21%)上昇毎)
2日間の平均
1週間の平均
2週間の平均
全体の平均
家庭血圧
12% (4% to 21%)
16% (7% to 27%)
20% (10% to 31%)
8
全体の平均
1 1.50.75
21% (11% to 33%)
白衣高血圧も、長期追跡すると持続性高血圧同様に予後不良
白衣高血圧群
高血圧群
正常血圧群発症
率(%
)
正常血圧群
脳卒
中発
累積
時 経 年時間経過(年)
9
ストレスでも血圧は上昇するストレスでも血圧は上昇する
9/11以前 9/11以後
地域 対象者数 SBP(mmHg)
平均測定回数
SBP(mmHg)
平均測定回数(mmHg) 回数 (mmHg) 回数
2001年
シカゴ 363 142.3 48.3 144.0 45.0シカ
ワシントンDC 22 131.8 56.4 135.6 43.7
ニューヨーク 25 129.0 117.0 131.4 68.8
ミシシッピ 17 129.3 122.5 133.0 122.5
2000年
ワシントンDC 50 133.2 55.1 133.4 48.1
ミシシッピ 51 130.0 135.6 129.9 110.6
2001.9.11の事件後、遠隔地の住民でも心的ストレスにより家庭血圧の上昇が認められている。Gerin et el. J Hypertens. 2005:23;279‐28410
東日本大震災直後の家庭血圧の推移
Satoh M et al. Hypertension 2011;58:e193-e19411
更年期の高血圧更年期の高血圧
• 経口避妊薬やホルモン補充療法により血圧の上昇をみることがあり、注意が必要
• 閉経期を含む女性の高血圧は病態生理及び閉経期を含む女性の高血圧は病態生理及び治療法が男性とは異なる可能性がある。
日本高血圧学会ガイドライン2009より 12
現在習慣的に喫煙している者の割合現在習慣的に喫煙している者の割合
80
90
100
60
70
80
40
50
10
20
30
0
10
20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
13
受動喫煙でも家庭血圧が上昇する受動喫煙でも家庭血圧が上昇する
受動喫煙なし
受動喫煙(家庭)
受動喫煙(職場)
受動喫煙(両方)
収縮期血圧(mmHg) 113.1 114.7 116.2 116.8
拡張期血圧(mmHg) 71.0 71.4 71.6 72.0
受動喫煙なし
受動喫煙時
受動喫煙もなし 時々 いつも
収縮期血圧(mmHg) 113.0 115.9 116.7
拡張期血圧( H ) 71 1 72 0 71 5拡張期血圧(mmHg) 71.1 72.0 71.5
14
妊婦さんの血圧
15
妊婦の血圧推移妊婦の血圧推移(n=418)
116
118
収縮期血圧 (mmHg)
74
76
拡張期血圧 (mmHg)( )
収縮期血圧 拡張期血圧
112
114
116
70
72
74
108
110
66
68
104
106
62
64
100
102
8 12 16 20 24 28 32 36 40 44
58
60
8 12 16 20 24 28 32 36 40 44
妊娠週数 (週) 妊娠週数 (週)16
妊娠高血圧症候群の病型分類妊娠高血圧症候群の病型分類
1 妊娠高血圧1. 妊娠高血圧妊娠20週以降にはじめて高血圧(収縮期血圧140mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上)が発症し分娩後12週までに正常に復する場合。
2 妊娠高血圧腎症2. 妊娠高血圧腎症妊娠20週以降にはじめて高血圧(収縮期血圧140mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上)が発症し、かつ蛋白尿(基本的には300mg/日以上)を伴うもので分娩後12週までに正常に復する場合。
3. 子癇妊娠20週以降にはじめてけいれん発作を起こし、てんかんや二次性けいれんが否定されるもの。けいれん発作の起こった時期により、妊娠子癇、分娩子癇、産褥子癇と称する産褥子癇と称する。
4. 加重型妊娠高血圧腎症a. 高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに既に認められ、妊娠20週以降蛋白
尿を伴う場合。尿を伴う場合。b. 高血圧と蛋白尿が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降、
いずれか、または両症状が増悪する場合。c. 蛋白尿のみを呈する腎疾患が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠
週以降に高血圧が発症する場合20週以降に高血圧が発症する場合。
17日本高血圧学会ガイドライン2009 女性の高血圧より
妊娠中の血圧は将来の高血圧有病率と関連する
16
オッズ比
12.7 14
16
10
12
6
8
1 0
3.3 3.2
2
4
1.0
0
2
正常妊娠 妊娠蛋白尿 妊娠高血圧 妊娠高血圧腎症
※ 現在の年齢、妊娠時の年齢、出産時妊娠週数で補正 18
高血圧発症リスク高血圧発症リスク
1615.8
12
16
9.5
5 7
9.8
4
8
1.0 3.4
2.7 6.5
3.8 5.7 UP(‐)
UP(+)
UP(‐)
UP(+)0
Q1Q2
Q3
1.1
Q3Q4
Q5SBP 98.5‐110.0 110.0‐114.0 114.0‐118.8 118.8‐124.0 124.0‐138.0
※ 現在の年齢、妊娠時の年齢で補正19
出産前後の血圧推移出産前後の血圧推移
SBP DBP(mmHg) (mmHg)120
80
SBP DBP
110
115
70
75
105 65
95
100
55
60
-150 -100 -50 0 50 -150 -100 -50 0 50(日) (日)
出産日
出産日
✱気温、出産年齢、出産時の体重で補正西村ら 第31回日本高血圧学会
20
出産後の血圧上昇出産後の血圧上昇出産後の血圧上昇出産後の血圧上昇
( H )
SBPSBP DBPDBP
116
74
76(mmHg)
✱✱ ✱
(mmHg)
✱
112
114
72
74✱
✱ ✱ ✱
約 約110 70
約7mmHg上昇 約7mmHg上昇
106
108
66
68
106
0 1 2 3 4 5 6 7 8
660 1 2 3 4 5 6 7 8 (日)
出産
出産日
(日)
✱出産日と比較、P<0.05
日 日
✱気温、出産年齢、出産時の体重で補正 西村ら 第31回日本高血圧学会21
妊娠時に血圧が高いと言われたあなたへ
今 度• 今一度血圧が高くないか確認してみてください。
• 可能であれば可能であれば自宅にて1週間くらい血圧測定を。
• もし、血圧が高いようなら内科を受診してください内科を受診してください。
22
遺伝と高血圧
23
両親が長寿であると、子(平均60歳時)の家庭血圧が低い
128127.4
127.8家庭収縮期血圧(mmHg)
125
126
127
124 7
126125.9
122
123
124
123.4124.3
124.7
123.6
中間
早世
120
121
早世
122.6
父親長寿早世
中間
長寿
父親
母親母親
24
高血圧に関連する遺伝子多型を有する数が増えるほど、高血圧発症リスクが増大する。
10
16.9倍
10
4 7倍
ズ比
3 2.6倍
4.7倍
オッズ
1.6倍
倍
1
0 321 4
25
リスク多型の数
補正項目: ベースライン血圧, 年齢, 性, 肥満, 喫煙, 糖尿病・高脂血症・脳心血管疾患既往歴
妊婦の母親の妊娠中血圧と妊娠20週、36週における家庭血圧
72114
*: P<0.05 vs Q1*
68
70
110
112
g) g)
*
**
66
10
108
圧(m
mHg
圧(m
mHg
**
*
62
64
104
106
縮期
血圧
張期
血圧 **
58
60
100
102収縮
拡張
Q1Q2Q3Q4Q5 56
58
98
100
Q1Q2Q3Q4Q5 Q1Q2Q3Q4Q5 Q1Q2Q3Q4Q520週 36週 20週 36週
2626
20週 36週 20週 36週(妊婦年齢、BMI、季節要因補正)
母親の妊娠中血圧: ■ Q1: <109mmHg ■ Q2: 109‐114mmHg ■ Q3: 114‐119mmHg ■Q4: 119‐124mmHg ■Q5: ≥124mmHg
妊婦の母親の妊娠中血圧と娘の妊娠中血圧
拡張期血圧(mmHg)
70
72
*
*
妊婦の母親の妊娠中血圧
■Q5: ≥124mmHg
66
68*■Q4: 119‐124mmHg
■Q3: 114‐119mmHg
Q2 109 114 H
62
64■Q2: 109‐114mmHg
■Q1: <109mmHg
58
60
56
58
8 12 16 20 24 28 32 36 40 44
妊娠週数 (週) 27
高血圧の予防
28
肥満の有無とリスク遺伝子多型肥満の有無とリスク遺伝子多型10
高血圧発症リスク(オッズ比)
8
9
109.9
5
6
7
3
4
55.9
2.1
3.74.7
肥満あり0
1
2
reference 1.5
2.7
01
23or4
肥満なし
リスク多型の数が増えるほど高血圧発症リスクが増大するが、肥満を持つとリスク多型の数によらずそれぞれ約2倍リスクが増大する。肥満でなくリスク多型を1つも持たない群に比較して、リスク多型を3個以上持つ肥満者では、高血圧発症リスクが約10倍高値となる。 29
果物摂取果物摂取
横断研究 お 果物や野菜 カ ウム摂• 横断研究において、果物や野菜、カリウム摂取、ビタミンCの摂取が多い群では、摂取が少な 群に比較し も高血圧有病者ない群に比較して38~45%も高血圧有病者が少なかった。
» Utsugi MT et al. Hypertens Res. 2008.
• 果物をよく食べる群では、あまり食べない群に比較して、高血圧発症リスクが0.4倍と低に比較して、高血圧発症リスクが0.4倍と低かった。
» M Tsubota‐Utsugi et al. J Hum Hypertens. 2011.g yp
30
生活習慣の修正生活習慣の修正
• 減塩:減塩目標は食塩6g/日とするが より少ない食塩摂取量が理想で• 減塩:減塩目標は食塩6g/日とするが、より少ない食塩摂取量が理想である。安全性のエビデンスがあるのは3.8g/日までである。一般医療施設における食塩摂取量評価は随時尿(クレアチニン補正)で行うのが実際的である。多くの包装食品はNa表示なので、換算式(Na量[g]×2.5=食塩的 ある。多く 包装食品 表示な 、換算式( 量[g] 食塩量[g])が減塩指導では有用である。
• 食塩以外の栄養素:野菜・果物を積極的に摂取し、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。魚(魚油)の積極的摂取も推奨される。
• 減量:BMI(体重[kg]÷身長[m]2)25未満が目標である、目標に達しなくとも、4‐5kgの減量で有意な降圧が得られる。腹囲も考慮する。
• 運動:中等度の強さの有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う 心血管病 な 高血圧患者が対象 リ ク 高 患者目標に)行う。心血管病のない高血圧患者が対象で、リスクの高い患者は事前にメディカルチェックを行い、対策を講じる。
• 節酒:エタノールで男性20‐30mL/日以下、女性10‐20mL/日以下の節酒をするする。
• 禁煙:喫煙は心血管病の強力なリスクであり、一部で高血圧への影響も指摘されているので、喫煙(受動喫煙を含む)の防止に努める。
• 防寒や情動ストレスの管理などを行う• 防寒や情動ストレスの管理などを行う• 複合的な生活習慣修正はより効果的である。
31日本高血圧学会ガイドライン2009 生活習慣の修正より
肥満者(BMI≧25の割合)肥満者(BMI≧25の割合)
30
平成22年
20
25
15
20
平成22年
5
10
0
20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
32
次世代の高血圧を防ぐために
33
やせの者(BMI<18 5の割合)やせの者(BMI<18.5の割合)
35
平成22年
25
30
15
20
平成22年
5
10
0
5
20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
34
低出生体重児の増加低出生体重児の増加
7
8
9
5
6
7
2
3
4
0
1
2
35
出生時の平均体重の低下出生時の平均体重の低下
3200
3250
3100
3150
3000
3050
2900
2950
36
高血圧や腎機能障害の胎児プログラミング仮説
進行した腎障害
遺伝的要因子宮内でのイベント
未熟性
Na+排泄の減少
さらなるネフロンの減少
低ネフロン数での出生 減少ネフロンの減少での出生
高血圧糸球体硬化糸球体
高血圧/肥大
37
Kambiz Zandi‐Nejad et al. Hypertension 2006;47;502‐508
妊娠高血圧・生活習慣病の再生産?
妊娠生活高血圧習慣病
子宮内発育遅
低出生発育遅
延体重
38