今回は各地で広がっている園芸作物の取組みを紹介し ... - …...- 5 -...

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-1- 楢葉町では、原子力災害からの農業再生に向けた主力産品 としてさつまいもの栽培が平成29年(1.5ha)から行われて います。 平成30年度は、白ハト食品工業株 式会社の傘下グループの、農業生産法 人株式会社しろはとファームが畑を借 りて作付けした分と地元の生産者が作 付けした分を併せて、約12haまで作 付けが拡大されています。 楢葉町によると「町とさつまいも菓 子などの中心メーカーである白ハト食 品工業株式会社が生産者への栽培技術 指導と生産物全量買取りのタイアップ により、お菓子・お総菜用加工原料のさつまいもの生産を拡大してきた。」「営農する 姿を町内外の方に広く見てもらい、産地化を進めながら雇用の創出、住民の帰還促進 につなげ、そのうえで段階的に面積を増やしていき、営農再開を加速したい。」「さつ まいも栽培を振興する理由としては、①他作物と比べ手間がかからない、②加工品で あり付加価値を高めた販売が可能、③安定的な収入が見込める、④白ハトとの連携に より生産物の販路が確保されており、全量出荷が保証されている点がポイントで、将 来的には50ha以上の作付拡大を目標としている。」「しろはとファームは、浜通りの温 暖な気候条件での生産拠点の確保と福島の復興支援という2つの想いから楢葉町内に 拠点事務所を構えながら楢葉町で営農を開始している。今後、休耕地の営農再開を進 めるために町も連携して規模拡大を後押ししたい。」とのことでした。 しろはとファームの内田さんによると「耕作放棄地を開 墾した初年度のため、畑によっては収穫量がまだ安定しな い可能性があるが、今のところ天候にも恵まれ、いもの肥 大が順調に進んでいる。」「楢葉町には休耕したままの農 地も多く、町からも農地の確保に協力してもらい機械化を 進めながら規模拡大を図り、来年度は30 の作付けを計 画している。」とのことです。 今回は各地で広がっている園芸作物の取組みを紹介します。 震災復興室だより(第 26 号)

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Page 1: 今回は各地で広がっている園芸作物の取組みを紹介し ... - …...- 5 - 震災復興室だより(第26 号) 被災市町村の飯舘村、葛尾村などでは、避難指示解除後

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楢葉町では、原子力災害からの農業再生に向けた主力産品

としてさつまいもの栽培が平成29年(1.5ha)から行われて

います。

平成30年度は、白ハト食品工業株

式会社の傘下グループの、農業生産法

人株式会社しろはとファームが畑を借

りて作付けした分と地元の生産者が作

付けした分を併せて、約12haまで作

付けが拡大されています。

楢葉町によると「町とさつまいも菓

子などの中心メーカーである白ハト食

品工業株式会社が生産者への栽培技術

指導と生産物全量買取りのタイアップ

により、お菓子・お総菜用加工原料のさつまいもの生産を拡大してきた。」「営農する

姿を町内外の方に広く見てもらい、産地化を進めながら雇用の創出、住民の帰還促進

につなげ、そのうえで段階的に面積を増やしていき、営農再開を加速したい。」「さつ

まいも栽培を振興する理由としては、①他作物と比べ手間がかからない、②加工品で

あり付加価値を高めた販売が可能、③安定的な収入が見込める、④白ハトとの連携に

より生産物の販路が確保されており、全量出荷が保証されている点がポイントで、将

来的には50ha以上の作付拡大を目標としている。」「しろはとファームは、浜通りの温

暖な気候条件での生産拠点の確保と福島の復興支援という2つの想いから楢葉町内に

拠点事務所を構えながら楢葉町で営農を開始している。今後、休耕地の営農再開を進

めるために町も連携して規模拡大を後押ししたい。」とのことでした。

しろはとファームの内田さんによると「耕作放棄地を開

墾した初年度のため、畑によっては収穫量がまだ安定しな

い可能性があるが、今のところ天候にも恵まれ、いもの肥

大が順調に進んでいる。」「楢葉町には休耕したままの農

地も多く、町からも農地の確保に協力してもらい機械化を

㏊進めながら規模拡大を図り、来年度は30 の作付けを計

画している。」とのことです。

今回は各地で広がっている園芸作物の取組みを紹介します。

震災復興室だより(第 26号)

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震災復興室だより(第 26号)

福島県とJA福島さくらは、双葉地域の土地利用型地域

振興作物として、たまねぎ栽培を推進しています。

福島県相双農林事務所双葉農業普及所では、①長期間不

作付けで湛水機能を失った圃場が多いこと、②他産地のたまねぎ供給の端境期にあた

る8月に出荷が可能であること、③県内の大手たまねぎカット業者(業務用たまねぎ)

への販売が可能であること、④機械化により高齢者でも一定規模の面積が栽培できる

ことなどを考慮し、「水田での機械化

によるたまねぎ栽培」を推進してき

ました。

JA福島さくらによると、たまね

ぎの栽培は平成28年から開始され、

平成30年産には栽培が本格化し(浪

江町・大熊町・富岡町・楢葉町・広野町

で20人3.4ha)、出荷ベースでは概

ね120t程度を見込んでいるとのこ

とです。

7月には収穫が完了し、8月17日

まで富岡町にあるJA福島さくら富

岡農業資材センター内で共同選別作業が行われていました。JA福島さくらによると

「梅雨前に収穫できたことから概ね品質は良好で、収穫目標の10aあたり3.7tをク

リアし、収量の多い人は5tの収穫がありました。しかし、調整・選別作業のスピード

アップが今後の課題であり、共同選別施設搬入前の収穫作業の指導が必要。」とのこと

でした。

富岡町の渡辺董綱さんは補助金を活用してたまねぎ栽培用の機械等を整備し、平成とうこう

29年の秋植えから奥さんと2人で栽培を開始し、収穫を迎えることができました。「収

穫作業は思った以上に大変で、今後面積が拡大することに合わせて課題をクリアして

いく必要がある。」とのことでした。

富岡町によると「栽培技術の向上

と収量アップ、販売を業務用と市場

流通による二本立てとして、安定し

た収入に結びつけることが営農再開・

作付面積拡大には必要である。今後

はJAや農業普及所、自治体など関

係者間で協力・連携して浜通りの産地

化を目指して、富岡町でも営農再開

者への支援を拡充していきたい。」と

のことでした。

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震災復興室だより(第 26号)

川内村内では、平成28年から水稲育苗ハウスを有効活

用したぶどう栽培が行われています。主な栽培品種は、大

粒種の「あづましずく」(福島県オリジナル品種)や「ピ

オーネ」「シャインマスカット」などで、高級種の種なしぶどうです。

平成28年7月には、川内村ハウスぶ

どう生産組合(代表 秋元英男、構成あきもとひで お

員27名)が設立されました。現在、ぶ

どう生産組合は福島県相双農林事務所

双葉農業普及所の指導・協力のもと、

定期的に栽培ハウスにて現地勉強会を

開催しながら、高品質のぶどう生産に

向け栽培技術等の向上に取組んでいま

す。

ぶどう生産組合の1人、秋元敏博さあき もと とし ひろ

ん(上川内)のハウスでは、収穫2年

目を迎える3本(3品種)のぶどうが

栽培されています。今年の夏の猛暑で施設栽培の農産物への影響が心配されたところで

すが、生育は順調とのことで、全体で約200房の収穫が見込まれています。

醸造用ぶどう栽培は川内村(3ha)、富岡町(0.4ha)

で行われています。

川内村にあるぶどう畑では、開始当初に8種類のワイン専用種の試験栽培が行われ、

その後、3品種(シャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニオン)が選定され、新

植が行われました。

現在、川内村内でかわうちワイン株式会社(代表取締役 髙木亨)が栽培管理する高た か ぎ と お る

田島ヴィンヤード(農園名)において、約3ha(約1万本)栽培されています。夏季

には摘果、誘引及び摘心、病害虫防除等、冬季には苗木を防寒資材で被覆する作業を行

い、高品質で安定した生産を目

指しております。今年9月下旬に

は初収穫(約700キログラム)とな

る見込みです。

今後は、自社ワイナリー等の

整備も計画しており、川内村ワ

インのブランド化を志向すると

ともに、新たな観光資源として

地域の活性化に寄与することを

目指しています。

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震災復興室だより(第 26号)

川俣町では、川俣町ポリエステル培地活用推進組

合が中心となり、アンスリウムの栽培に取組んでい

ます。組合は農業者11名で構成され、これまで、土

の代わりに連作障害の無い、ポリエステル培地を使用した養液栽培に取組んで

来ました。近畿大学の技術支援を受けながら栽培マニュアルを整備し、職業と

して選択しうる魅力とやりがいのある新しい農法を推進・普及する事を目標に

新しい園芸スタイルを推進してきました。

また、福島再生加速化交付金を活

用し、栽培施設を11棟(9棟建設中)

整備し、「かわまたアンスリウム」の

産地化を目指しています。

こうした地域農業の再興に向けた

新たな農業に挑む姿勢が評価され、

川俣町で生産されたアンスリウムは

2 0 1 7年から「ミス・グランド・ジ

ャパン」(世界4大ミスコン日本大会)

のオフィシャルフラワーに採用され

ています。

川俣町山木屋地区では3名の農業者がシャクヤク栽培に

取組んでいます。そのうち1名の農業者は避難指示解除前

から栽培しており昨年から出荷を始めています。

同地区は標高が高いことから出荷時期が5月下旬から6月中旬と、他産地より出荷

が遅くなることで、価格が高い時期の出荷が可能となっています。

シャクヤクは、株を植えて3年目か

ら出荷ができるようになるため、JA

ふくしま未来(花き共選センター)等

の指導・協力を得ながら、栽培管理を

行っています。6月以降は猛暑対策で

株への散水や施肥作業等、翌年に向け

ての株作りを行っています。

次年度以降は、他の農家もシャクヤ

クの株が3年目を迎え、出荷可能とな

るため、さらに出荷量が増えていくと

期待されています。

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震災復興室だより(第 26号)

被災市町村の飯舘村、葛尾村などでは、避難指示解除後

からカスミソウ栽培が始まっていますが、今回は飯舘村の

取組みについて紹介します。

飯舘村では、震災以前からトルコギキョウなどの花き栽培が盛んに行われていまし

た。平成29年3月末の避難指示解除直後から高冷地の気候を活かしたカスミソウの栽

培が始まり、今年度までの2ヶ年で、松塚、小宮、比曽地区の3地区、6名にまで取組

みが拡大しています。これは、被災12市町村農業者支援事業を活用して種苗を導入し、

平成29年から4名の農業者が先進的に栽培・出荷販売に取組んできたことがきっかけで

す。初夏と秋の栽培・出荷にあたっては、市場の情報収集を行い、種苗会社の技術指

導を活かして、より高品質の花きを出荷できる

ように取組んでいます。平成31年には新規就農

者等も含め10名以上の農業者が栽培を行う予定

となっています。

栽培農家の高橋日出夫さんは「飯舘村の気候たか はし ひ で お

はカスミソウ栽培に適している。他の産地より

も花の蕾が全て咲ききる等、昨年出荷した市場

での評価も良かった。一方、繁忙期には家族の

みでは作業が間に合わないことから、労働力の

確保が課題となっている。現在カスミソウ栽培

に取組む農業者も増えてきていることから、飯

舘村の特産となるよう期待している。」と新たな

特産品となるよう意欲を持って取組んでいます。

小ギク栽培は、川俣町、飯舘村、川内村などの多くの市町村

で取組まれていますが、その中で、新たに始まった葛尾村の取

組みについて紹介します。

葛尾村の齊藤洋平さん(野川地区)は、今年から小ギクの栽培を始めました。平成2さいとうようへい

9年4月に帰村した齊藤さんは「新たに取組める畑作物はないか」と検討していたとこ

ろ、福島県浜地域農業再生研究センターの助言を受け、小ギクの栽培に挑戦すること

を決意しました。同研究センター及び福島

県相双農林事務所双葉農業普及所の協力及

び指導のもと、今年は15a(実証栽培を含

む)を作付けしました。7月以降の高温及

び水不足により開花に多少の遅れが見られ

たものの、概ね良好な生育となり、計画ど

おり約1万5千本の出荷することができま

した。齊藤さんは小ギク栽培に手応えを感

じており、今後は作付けを拡大していきた

いとのことです。

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震災復興室だより(第 26号)

耕作再開モデルゾーン

140㏊

再生可能エネルギー活用・農業再生ゾーン

90㏊

※詳細については、双葉町復興ポータルサイトをご覧下さい。

HP アドレス(http://www.futaba-fukkou.jp/archives/1373)

※詳細については、大熊町役場 HPをご覧下さい。HP アドレス(http://www.town.okuma.fukushima.jp/site/fukkou/4381.html)

居住・営農ゾーン(下野上地区約 510㏊)

※復興庁 HP からの引用

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震災復興室だより(第 26号)

農業再生ゾーン(室原地区 349㏊)

農業再生ゾーン(末森地区 159㏊)

○計画の概要

室原地区:米、野菜、飼料作物等の実証栽培を

実施する。

末森地区:米、野菜等の実証栽培や、畜産、園

芸等の実施に向けたモデル事業を展

開する。

津島地区:既存農地の保全、米、野菜、飼料作

物等の実証栽培を進める。

農業再生ゾーン(津島地区 153 ㏊)

※詳細については、浪江町役場 HPをご覧下さい。HP アドレス(http://www.town.namie.fukushima.jp/soshiki/2/17557.html)

農用地活用ゾーン

※詳細については、富岡町役場 HPをご覧下さい。HP アドレス(http://www.tomioka-town.jp/living/cat25/2018/03/003821.html)

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震災復興室だより(第 26号)

※詳細については、飯舘村 HPをご覧下さい。HP アドレス(http://www.vill.iitate.fukushima.jp/soshiki/1/3231.html)

農の再生ゾーン(長泥地区 186㏊)

※詳細については、葛尾村 HPをご覧下さい。HP アドレス(http://www.katsurao.org/soshiki/21/kyotenkeikaku.html)

農業再生ゾーン

(野行地区 95㏊)