国内外重電メーカのo&m戦略について2017-12-13 · copyright (c) mitsubishi...
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2017年3月8日
国内外重電メーカのO&M戦略について
「電力インフラのデジタル化研究会(E-Tech研究会)」(第4回)
経営コンサルティング事業本部経営戦略グループ 主任研究員
杉江周平 [email protected], 03-6705-5399
資料3
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 2 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
本日のプレゼン内容
国内外重電メーカのO&M戦略 2
重電関連機器の市場概況 1
海外メーカのデジタル化戦略 3
日本企業の強みの分析 4
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重電関連機器の 市場概況
戦略検討のためには、まず市場・顧客を把握することが不可欠
平成28年度製造基盤技術実態等調査事業(重電機器産業における競争力強化策の検討に向けたグローバルベンチマーク分析等調査)を参照
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1-1 インフラシステム輸出の戦略転換
インフラシステム輸出戦略初版では、「日本の優れたシステムを輸出」という戦略であったが、現地ニーズとのミスマッチが頻出
現地ニーズに即して、日本企業の強みを生かすという戦略に転換
インフラビジネスにおいても、何よりも顧客の声を聴くことが重要
デジタル化の方向性についても顧客にどのような価値を届けるのかという視点で考えるべき
取組前の仮説 苦労後の戦略変化
日本の優れたシステムを輸出 現地ニーズに即したシステム設計
日本の厳しい顧客の中で 鍛え上げた質の高いインフラ
とにかく電気が欲しい 新興国の顧客
ミスマッチ
低コストで使いやすい電力を 早く供給して欲しい
培った技術から使えるものを探索 不足する技術は他から獲得
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1-2 重電機器関連市場データ (1)発電源別導入見通し
ストックベースでは、地熱や風力といった再生可能エネルギーが最も成長する見込み。
石炭火力発電は2013-2040年で年間1.1%、ガス火力発電は年間1.9%で発電容量が増加する見込み。
2035年までにはガス発電が石炭発電を超える容量で稼働していると推計されている。
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
2013年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
導
入
量[
G
W]
出所)World Energy Outlook 2015より三菱総合研究所作成
世界の発電源別導入見通し
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
2013年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
世界の発電源別導入見通し(中国を除く)
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(2)地域別発電源別導入見通し
石炭火力発電は中国、インドを筆頭に途上国で導入が進むが、先進国では脱石炭のトレンドを受けて発電施設が廃止される見込み。
ガス火力発電は地域に関わらず、世界全体で導入が進む見込み。
出所)World Energy Outlook 2015より三菱総合研究所作成
日本 欧州 ロシア
中東 アフリカ アフリカ
北米
北米
中南米 中国
中国 インド
インド
アジア
アジア
-400
-200
0
200
400
600
800
1,000
2013-2020年 2013-2040年
(GW) 地域別導入見通し(石炭)
日本 日本 欧州 欧州
ロシア
中東
中東 アフリカ
アフリカ
北米
北米
中南米
中国
中国
インド
アジア
アジア
-200
0
200
400
600
800
1,000
1,200
2013-2020年 2013-2040年
(GW) 地域別導入見通し(ガス)
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(3)ガスタービン市場
ロシア、アフリカでは中小型(200MW未満)、日本、欧州、中東、北米、中国では大型(200MW以上)の占める割合が大きい。
中東の市場規模がもっとも大きい。中南米、ASEANは今後さらなる導入が見込まれるが、インド、アフリカはまだ導入が進んでいない。
出所)McCoy Power Reportより三菱総合研究所作成
ガスタービン市場:地域別、サイズ別導入量(2011~2015年)
15,602
8,396
24,515
77,114
5,397
55,841
19,241
38,489
3,296
18,193
0
20,000
40,000
60,000
80,000
100,000
日本
欧州
ロシア
中東
アフリカ
北米
中南米
中国
インド
ASEAN
導
入
量[
M
W]
0%
20%
40%
60%
80%
100%
日本
欧州
ロシア
中東
アフリカ
北米
中南米
中国
インド
ASEAN
各
サ
イ
ズ
の
割
合
(
M
W
ベ
ー
ス
)
60MW未満 60-120MW 120-200MW
200-300MW 300MW以上
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(4)蒸気タービン
蒸気タービンは効率化を背景に大型化が進んでおり、ロシアおよび中南米を除いて300MW以上の大型タービンが導入量の大半を占める。
出所)McCoy Power Reportより三菱総合研究所作成
蒸気タービン市場:地域別、サイズ別導入量(2011~2015年)
4,562 8,904 1,562
11,598 849 1,020 2,898
251,950
57,309
25,200
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
日本
欧州
ロシア
中東
アフリカ
北米
中南米
中国
インド
ASEAN
導
入
量[
M
W]
0%
20%
40%
60%
80%
100%
日本
欧州
ロシア
中東
アフリカ
北米
中南米
中国
インド
ASEAN
サ
イ
ズ
別
割
合
(M
W
ベ
ース
)
60MW未満 60-150MW 150-300MW
300-700MW 700MW以上
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(5)ボイラー
蒸気タービンと同様に、ロシア、北米、中南米を除き300MW以上の大型タービンが導入量の大半を占める。
北米では過去5年間で蒸気タービン3基、ボイラー2基のみが導入された。
出所)McCoy Power Reportより三菱総合研究所作成
ボイラー市場:地域別、サイズ別導入量(2011~2015年)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
日本
欧州
ロシア
中東
アフリカ
北米
中南米
中国
インド
ASEAN
各
サ
イ
ズ
の
割
合
(
M
W
ベ
ー
ス
)
60MW未満 60-150MW 150-300MW
300-700MW 700MW以上
5,304
7,168
420
10,634
1,110 130
2,788
255,472
56,254
27,440
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
日本
欧州
ロシア
中東
アフリカ
北米
中南米
中国
インド
ASEAN
導
入
量[
M
W]
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(6)蒸気タービンとボイラーメーカの関係性
SiemensやAlstom等のグローバル企業は複数企業の製品と併用されており、自社製品の導入機会を広げている。
出所)McCoy Power Reportより三菱総合研究所作成
注:2011年~2015年での合計販売量が1,000MW未満のメーカは除く
蒸気タービン(表側) ×ボイラー(表頭)
BHEL 上海電気
ハルビン電気
MHPS
Amec Foster Wheeler
東方電気
IHI 斗山重工業
Power Machines
B&W Alstom
RAFAKO
Wuxi Huaguang Boiler
現代重工業
斗山Babcock
BTG 杭州銭江電気
BHEL 18 0 0 0 2 0 0 0 0 13 7 0 0 0 0 0 0
上海電気 0 70 27 0 0 33 0 0 0 13 6 0 0 0 0 0 0
ハルビン電気 0 7 96 0 0 27 0 0 0 2 4 0 0 0 4 0 0
MHPS 0 0 0 30 3 0 2 2 0 0 6 0 0 0 0 0 0
斗山重工業 0 0 0 1 10 0 2 5 0 1 0 0 0 0 0 0 0
東方電気 0 23 36 0 0 76 0 0 0 12 2 0 1 0 0 0 0
富士電機 0 0 0 0 6 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
東芝 0 0 2 1 4 0 4 6 0 3 2 0 0 0 0 0 0
Siemens 3 3 0 1 22 1 0 0 0 2 16 4 0 8 0 0 3
GE 0 0 0 0 0 0 0 2 2 2 0 0 0 0 0 0 0
Alstom 0 3 6 2 2 2 0 0 0 5 10 0 2 0 0 0 0
南京華洋電気 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 0 0 0 0
Beijing Beizhong STG 0 0 7 0 0 4 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0
Power Machines 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 6 0
ROTEC 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0
蒸気タービン、ボイラーメーカの導入数(2011~2015年)
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(7)送配電機器
規模は異なるが、送電機器と配電機器の市場は同様傾向で推移すると推計される。
中国を除き、市場が急拡大する地域は見られない。
送電市場:地域別市場規模(金額)推移
出所)Goulden Rreportsより三菱総合研究所作成
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
年
間
販
売
額[
百
万
U
S
D]
配電市場:地域別市場規模(金額)推移
0
20,000
40,000
60,000
80,000
100,000
120,000
※送配電機器には変圧器、スイッチギヤ、碍子・取付部品・パイロン、送電線・高圧ケーブル、コンバーター/インバーター装置、メータリング、制御装置、FACTS (フレキシブル交流送電システム)が含まれる。
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国内外重電メーカの O&M戦略
重電メーカにとって、O&Mによるサービス事業は収益の源泉になりつつある
地域戦略を明確に立てている点が特徴的 送配電はソフトウェアサービスへの注力が増している
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発電
送配電
発電
2.1 電力分野の市場構造 (1)プレイヤーマップ
(メンテナンス) O&M (オペレーション) 主要機器
電力市場におけるプレーヤーは案件形成・主要機器・O&Mの各段階でそれぞれ設計コンサル会社、メーカー、電力会社に大別される。
主要機器については主に発電機器(ガスタービン、蒸気タービン)を検討した。
日本企業
グローバル主要企業
EPC 案件形成
日本工営、 東電設計等
石炭火力 (IHI、MHPS、東芝)
GTCC(MHPS) 商社 子会社
設計コンサル メーカー 電力会社等
Siemens(EPCに強み、GTCCではO&Mも実施)
GE (O&Mは代理店を通じ高い競争力)
韓国重工メーカー 石炭火力中国メーカー 現地ディベロッパー
電力 会社
商社
AECOM Technology
Worley Parsons
・・・・
東芝、三菱電機 等
送配電 ABB、Siemens
中国・韓国メーカー
現地O&M企業
現地電力会社
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(2) 電力分野における日本企業の課題と解決の方向性
O&M 主要機器
設計コンサル メーカー 電力会社等
EPC 案件形成
日本の現状
課題
解決の方向性
コンサル能力をもつ電力会社の海外進出が不十分
国内コンサル会社の受注の多くはODA案件
ただし、コンサル会社によるメーカー指定は困難
コンサル会社を強化しても、日本の主要機器の導入増には結びつかない
受注競争力を高めるためには、コンサル強化ではなく政府による入札のルール作りが必要
PQ段階での中国企業排除 • 「質の高い電力インフラガイドライン」の策定、OECD加盟国企業縛りの適による中国企業を排除
• インド現地化政策の活用
ガスタービン市場はGE、Siemensの後塵を拝している状態
蒸気タービン(石炭火力)は製品のコモディティ化に伴い中韓メーカーが台頭(ボイラーは既に後塵)
中韓メーカーよりイニシャルコストが高く、欧米メーカーと比較しても性能面・価格面で優位ではないため、日本製品はコストパフォーマンスが低いと顧客から認識されている。
中韓印企業との連携強化による価格競争力の強化
第三国での生産を進める。JBIC出融資/NEXI保険を通じた現地化支援のファイナンス等でそれを制度的に支援
日本が研究開発で優位に立つIGCC、A-USCの商用化を加速
(GTCC) 欧米メーカーと比較し、グローバル市場におけ
るメンテナンスキャパシティが少ない。 メンテナンスは基本的に自社で対応し、サード
パーティ製品も許可していない。
代理店によるメンテナンスやサードパーティ製品を活用しているGEと比較して、現地拠点とメンテナンス人材が不足している日本メーカーのO&Mコストは高く、ライフサイクルコスト増加の要因となっている。
日本企業向けのメンテナンス訓練校を整備し、メンテナンスの現地化を支援
HIDA(AOTS)人材育成支援事業を活用し、研修生の日本への受入れ研修や現地への専門家派遣により、現地中核人材を育成
電力分野の各バリューチェーンにおいて、欧米および中国韓国企業に対する差別化要因の明確化が喫緊の課題。
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2.2 発電におけるO&Mサービス (1)市場概況
石炭 ガス
大型 (石炭:500MW~ ガス:200MW~)
中型 (石炭:200MW~500MW ガス:100~200MW)
小型 (石炭:~200MW ガス:~100MW) -
• O&M技術はコモディティ化 • 現地のO&M会社/電力会社が
O&Mを実施 • 日本メーカーのO&Mは過剰品
質・高コスト
• ベースロード電源であり、焚き方の工夫の余地が少なく、ICT活用による差別化が困難
• ボリュームゾーンで導入数が多いため、O&Mの現地化(代理店、M&A)により、コスト差別化の余地が大きい
• ピーク電源であるため、ICT活用により、焚き方を変え、収益性を向上させる余地がある
• 大型で非常に高価な機器であるため、各社適切なO&M体制を構築
出所)各社ヒアリング結果等よりMRI作成
メーカーにとってO&Mのサービス内容が競争力に関連しているのは主に小~中型のガスタービンの領域である(大型ガスタービンは非常に高価な機器であるため、各社独自のサービスをセットで提供することが前提となっている)。
石炭火力については、IGCC等の新技術であれば、メーカーがO&Mを行い、そこから収益を得ることができる可能性はあるが、新技術以外の通常石炭火力についてはコモディティ技術となっており、O&Mによる差別化は困難。
ICTを活用したO&Mで、実際のコスト低減メリットをもたらすという考え方もありうるが、予知保全の重要性は認識されているものの、技術的難易度が高く、実用性は不十分。
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(2) 各社のO&M競争力比較
GE Siemens 日本メーカー
サービス内容
• サードパーティ製品一部 許可
• 自社製品のみ
• 自社製品のみ
拠点体制 • 米国中心に自社拠点構築 • アジアはパートナー企業とのJVが中心
• 欧州を中心に各地域のシェアに応じた自社拠点を構築
• 導入数が少なく、O&M体制が希薄な地域が多数(拠点数自体は他社と同水準)
サービスの実施方法
• 大部分を代理店に委託、代理店間での競争
• ICT活用による収益性向上コンサルティングの実施
• 自社(買収企業)で実施 • メンテナンス市場でアンサルドと競合、結果的にメンテナンスコストが低下
• ICT活用による収益性向上コンサルティングの実施
• 自社で実施
サービスコスト (およその相対的な比較)
低 中 高
サービス内容・パーツの性能に大きな差は無し パーツの海賊版はいずれも認めていない
出所)各社ヒアリング結果等よりMRI作成
O&Mそのもので収益を上げるのではなく、高い製品競争力が効率的なO&Mを可能とし、発電事業の収益性を高めることに寄与している。
サービス内容・パーツの質自体では日米欧メーカーで差は少ない (ただし、中小型においてはGEが圧倒的な製品競争力を有する)
GE、Siemensは導入数が多い地域ほど現地拠点を充実させ、O&Mコストを低減
先進国自由化市場では、ICT活用による収益性向上コンサルも実施。
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(参考)主要三社のメンテナンス体制の顧客評価
GE
• GEが強みとしている小規模(10万W~20万W)製品は汎用品であるため、GE以外の業者でもO&Mが可能である。そのため、GEのO&Mをめぐって多数のO&M業者が参入することで市場原理が発生し、結果的にO&Mコストが低下している。
• 指定された業者ならサードパーティ製品の使用をGEは許可している。サードパーティ製品を使えることは事業者としてはありがたい。
• GE/Siemensは複数のMaintenance Centersが全米をカバーしているが、日本企業の場合はこれが弱い印象あり。日本企業のMaintenance Centerが近い地域では大きな違いはないが、遠くになる地域では、上述のイメージ/パーセプションを含め、GE/Siemensが優位になると思われる。
• MHPSがGEやSiemensのようにライセンス生産をしない理由としては、MHPSがモノづくりを自社でやりたいという理由に加えて、MHPSのライセンスを担ぎたい企業がないということが挙げられる。
• サードパーティについては、使用できる部品がGE製品に限られており、MHPS、Siemens、アルストムについてはサードパーティで適応できるタービンがない。 Siemens
/MHPS • MHPSは、自社のタービンを他社に触れられることを嫌がり、顧客が手を加えたり、サード
パーティ製の部品を使おうとすると責任を取らないと宣言している。
総合商社
電力会社
電力コンサル
GEのO&MはGEのメンテナンス代理店間で競争原理を発生させていることが低コストの要因
MHPSは他社にメンテナンスを委託しておらず、また導入数も少ないため対応できる業者もいないことがO&Mコスト競争力の低下を招いている。
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(参考)主要三社の拠点比較
地 域 拠点
GE Siemens MHPS
欧 州 7 16 11
北 中 南 米 18 8
(アメリカ) 11
ア ジ ア ・ オ セ ア ニ ア
7 1 20
中 東 ・ ア フ リ カ
4 - 5
合 計 36 25 47
三社の主な拠点数の比較
GE、Siemens、MHPSの地域別拠点は以下の通り。
GEは北米、Siemensは欧州、MHPSはアジアに拠点を重点的に配置。特にGE、Siemensについては自社の基点である市場のシェアを抑えていることが競争力の源泉となっている。
GE、Siemensに関しては、自社拠点以外にもO&Mを実施する代理店が各地に存在している。その数を網羅的に捉えることは難しいが、自社拠点以外を代理店でカバーすることで競争力につなげている。
出所:各社資料よりMRI作成
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(3) GEのサービス内容 ①全体像
能力アップグレード
GE P&W:保守サービス
パーツ交換
ユニット・部品交換 ガスタービンエンジン全交換 ローター延命処理 コンプレッサー改造 乾燥型Nox排出量削減システム
OpFlex* :設備調整制御
リモート監視・検査
動作中検査 修理
装置停止サービス
フィールドサービス
ソフトウェア・分析
GE Predictivity ソリューション
プラント評価・最適化サービス
保守契約
出所)GE Power & Water HomePageよりMRI作成 既存の保守サービス商品
Industrial Internetのサービス商品
世界に約7,000のGEのガスタービンがあり、そのうち713台の動作データを保有
基本的価値
差異化価値
GEのHPにみられるガスタービン保守サービスの体系は、以下の通り整理できる。 Industrial Internet戦略により、Predictivity、OpFlexとプラント評価・最適化サービスが明示的に追加されている。 リモート監視によりGEがデータ収集をしている装置は、全体の約10%程度である。
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② 保守サービス契約
出所)GE Power & Water WhitePaper
GEのガスタービン保守サービス契約は、以下に示される通り、顧客のリスクをGEがどこまでとるかで価格設定されている。 究極は、パーフォーマンス(年間発電量/稼働)=顧客の発電による収益の保証であり、点検・部品交換・オペレーションを全てGEが代行する契約である。
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③ サービス実施方法
能力アップグレード
GE P&W:保守サービス
パーツ交換
修理
装置停止サービス
フィールドサービス
ソフトウェア・分析
基本的価値
差異化価値
電力会社の設備管理部門、現地代理店が実施。
GEはトレーニングと技術支援を提供
先進国(電力自由化済)
地域のアライアンス先(蒸気タービンメーカー)、サブコントラクタ先が実施
GEはアライアンス・サブコントラクタ先の育成と技術支援を実施
電力公社 IPP
政策やCEOのトップセールスを通じた予算化促進 顧客収益拡大提案
新興国(規制電力中心)
電力自由化の状況によって保守サービスを提供するプレイヤーが異なるため、それに応じた提供体制を構築している。 現地拠点に対して保守サービス人材の育成を行い、GE製品をメンテナンス可能とする体制を各地で構築していることが同
社の保守サービスの高い競争力の一員となっている。
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④ GEのメンテナンス体制 世界中に存在する東芝などの代理店では、最新の補修技術を導入し、GE製タービンの現地におけるメンテナンス
サービスの迅速化に努めている。
現地の代理店がそれぞれ技術者を雇用し、OJTでメンテナンス方法を指導している可能性が高い。
実際に東芝GEガスタービンは採用情報にて上記を示唆している。
出所:経済産業省 第2回エネルギービジネス戦略研究会
アジアにおけるGEの代理店
東芝では電力用ガスタービンの補修サービスを提供しており、日本人技術者の求人も行っている。
他国においても、各代理店が現地の技術者を雇用し、育成していると考えられる。
認証制度はないが、メンテナンス方法については研修等により習得していると考えられる。
東芝は日本でのサービス拠点
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Siemens Energy : Long Term Service Agreement Example サービスプログラム
メンテナンスソリューション
モダナイゼーション・アップグレード
発電力分析
オペレーション&保守
修理
ガスタービン
長期保守契約
パーツ供給
保守支援(点検修理)
蒸気タービン
発電機、励磁機
コンデンサー
リパワリング
サービス商品 ガスタービン能力改善(コンプレッサー洗浄、出力温度調整等) 蒸気タービン能力改善(タービンアップグレード、ボイラー給水システム延命処理等)
発電機・励磁機(オンサイトテスト、スターター改善、ローター改善等) コンデンサー(構成確認、チューブ交換等) ガスタービン装置へのHRSG・蒸気タービン装着によるコンバインドサイクル化
Siemensは、以下のサービスプログラム、メンテナンスソリューション、発電力分析を、顧客に応じて組合せをカスタマイズして保守契約として提供している。また、モダナイゼーション・アップグレードを、サービス商品として販売している。
(4) Siemens ①サービス内容
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② O&Mコスト低下の施策
サードパーティ製品に対するスタンス
発電事業においてはサードパーティ製品を認めていない。GEより導入数が少なく、扱える業者が少ないことも一因と言える。(欧州は自由化が遅れたため、O&Mを他社に委託することは少なかったことが背景)
各拠点の役割
欧州の生産拠点から各拠点に製品を輸出、その他の地域は修理拠点が中心
ユーザー(発電事業者)
Siemens
サードパーティ
LTSAを契約
Siemens(ユーザーに近い
拠点)パーツ供給
LTSAによりサードパーティ排除部品の現地調達を推進
Siemens製品のメンテナンス市場には参入不可
SiemensもGEと同様、シェアの高い地域において現地拠点を充実させ、O&Mコストを低減することで発電事業の競争力を高めている。
SiemensはGEとは異なりサードパーティ製品を認めず(扱える業者がなく)、自社の拠点で対応するスタンスのため、高い競争力を発揮できる地域は従来からシェアの高い欧州とその周辺地域に限られる。
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2.2 送配電におけるO&Mサービス (1)サービス構成要素 送配電のサービス事業の競争力(他社との差別化要因)は、サービス内容、拠点体制、サービス実施方法の三つに大別される。
他社との差別化
(顧客への提供価値
向上、サービス事業のコ
スト低下)
どのようなサービスを提供するか
パーツ交換・修理など基本的なサービスか
ソフトウェアサービスか
どこにどの程度の規模の拠点を配置するか
どの国・地域を重点的に進出するか
各海外拠点にはどのような機能を持たせるか
どのようにサービス事業を提供するか
パーツは自社製品のみか/サードパーティを認めるか
自社ですべて請け負うか/代理店に委託するか
最終的にどこで稼ぐか
サービス内容 (What)
サービス実施方法 (How)
拠点体制 (Where)
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送変電機器の 資産価値を向上させる サービス
送変電機器の 資産価値を 維持させるサービス
出所)Siemens HP
(2) Siemens ①サービス内容 送配電線、変電所設備のメンテナンスなど基本的なサービスは網羅的に提供されている。
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サービス名 内 容 参考イメージ
PSSⓇ
送配電の系統計画分析ツール 最適な送配電網の敷設、容量をシミュレーション
PSSⓇE 115ヵ国で実績あり 送電モデリング、シミレーションができ、最適化フロー分析、短絡計算カスタマイズも可能なソフトウエア
PSSⓇSINCAL
電力およびパイプネットワークの設計およびモデリング、シミュレーションが可能なソフトウエア。
Energy IP eMeterを買収し、サービス提供開始 スマートメーターから入手した電力データの収集・分析・運用ツール
世界17国47社に提供 (電力会社向けサービス)電力需給量・変圧器故障時期の予測、料金決済管理
(需要家向けサービス)デマンドレスポンス、停電管理
出所)Siemens HP
②ソフトウェア分析サービス 現在Siemensが提供している主なソフトウェア分析サービスには系統計画分析ツールのPSSや、電力データ分析アプリの
Energy IPなどがあり、すでに実績を有している。
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送電事業者 Siemens
サードパーティ
純正品を売買
純正品を使用しない 場合は製品提供
サードパーティ製品購入の場合は故障時に責任を負う
契約によっては Siemensが購入
純正品/サードパーティ使用はユーザーとの交渉による (Siemensとしては利益率の高い純正品を提供したい模様)
出所)シーメンスジャパン エナジーマネジメント事業本部 ヒアリング結果
③サービス実施体制 送変電機器はガスタービンよりも技術的な要求水準が高くないため、送電事業者(ユーザー)との交渉に応じてサードパーティ製品を許可している。 サードパーティー品のメンテナンスは、部品をシーメンス側で買う場合と、シーメンスが関与せず、ユーザー側で、サードパーティと直接取引してもらう場合がある。
サードパーティ品を直接使用した際には、ユーザ側が故障時の責任を負うこともある。それ以外の場合は契約に基づいて対応するため、ケースバイケースである。
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(3)ABB ①サービス売上高比率
製品
84%
サービス
16%
製品・サービス別売上比率(2014年のABBの全事業)
※金額の単位は100万ドル
ABBの全事業に占めるサービスの割合は16%にとどまっており、同社のサービスはあくまで機器を売り込むための一環であることがうかがえる。
出所)ABB IR資料
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②サービス内容
サービス名
対象製品
ケ ー ブ ル 変 圧 設 備 発 電 所 変 電 所 H V D C FACTs ソ フ ト ウ ェ ア ・ネ ッ ト ワ ー ク
トレーニング ○ ○ ○ ○ ○ ○
拡張・改修 ○ ○ ○ ○ ○ ○
修理 ○ ○ ○ ○ ○ ○
アドバンスドサービス ○ ○ ○ ○ ○
サービスアグリーメント ○ ○ ○ ○ ○ ○
消耗品供給 ○ ○ ○ ○ ○ ○
設置・試運転 ○ ○ ○ ○
エンジニアリング・コンサルティング ○ ○ ○
置換え・リプレイス ○ ○
販売終了製品対応 ○
オンラインコミュニティ ○
システムシミュレーション ○
サービスグリッド ○
出所)ABB ウェブサイト
Siemensと同様、基本的なサービスは網羅的に注力しつつ、ソフトウェア分析サービスに今後注力している。 パーツ修理など基本的なO&Mサービスはシーメンスと同様に一通りのサービスメニューを提供
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③ ソフトウェアサービス 1) 800xA
従来
800xAの効果
PLC
DCS
安全
メンテナンス
PLC
DCS
安全
メンテナンス
①プラント内の各種システムは
別々に管理・運用
②通信プロトコルが異なる
プラント全体の
情報管理が困難
①各種システムを同一環境
下で動作
②情報を集中的に管理可能
プラント全体の
データ把握が容易
システム設計容易
・作業負担軽減
機器の最適運用・リスク
管理によるコスト削減
800xAの概要
ソフトウェア分析サービスについてはInternet of Thing, Service and Peopleを掲げて産業や電力の生産性・エネルギー効率改善に寄与するシステム事業への展開を目指す 産業プラント・発電プラント向けに機器プロセス制御、データ統合・管理システムの800xAを提供
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2) comPlus Energy Manager
① 機器に設置した計器により、エネルギー(電気、ガス、
水、蒸気など)の利用状況を可視化
② 必要使用量・周期に応じて、機器のエネルギー消費を
予測
③ 予測値に基づき、自家発電・売電・買電などを組み合
わせた最適な運用状態を提示
エネルギーの使用量・供給量の正確な予測を可能にすることで、拠点内のエネルギーコスト削減、売電収入の増加を支援
comPlus Energy Managerの概要
電力需要と発電量を予測し、エネルギーコスト削減及び売電収入の向上を支援するcomPlus Energy Managerを提供。欧米を中心に100か所以上の鉄鋼、紙・パルプ、化学等のプラントで導入実績がある。
出所)ABB ウェブサイト
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④ サービス実施方法
ユーザー (ボイラーメーカー)
ABB日本ベーレー*
* 主に発電所用ボイラー向けの計器類や制御装置の販売会社
出所)ABB日本ベーレー取材結果
ユーザーへのパーツ・メンテナンス・ メンテナンス技能講習の提供
メンテナンス技能講習を受けた サービス員がいる場合は 自社でメンテナンス実施
サードパーティ製品の使用、メンテナンスの実施主体は案件により対応を変えている模様 例えば発電所用ボイラー向け計器・制御装置についてはユーザーとの契約により保証内容は異なる。
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海外メーカのデジタル化 戦略
GE、Siemensはデジタル化に対して桁違いの投資 セグメントごとではなく、企業横断的にデジタル化を推
進している
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3.1 GE (1)事業戦略 GEは製造業回帰を宣言しており、その中でも機器の競争力向上のためにソフトウェアへの注力を掲げている。
~2014年 金融事業が収益を下支え (営業利益に占める金融事業の比率(2014年):42%) ↓ 金融危機の際に多額の 負債を負うリスクが懸念
2014年 2018年
2014年~
① 金融部門(GEキャピタル)の売却
② アルストムの発電・送電事業買収
→ 欧州・中東・アジア地域での基盤強化(10,000百万ドルの収益増見込み)
③ 製造部門の収益強化
<収益強化の方策 = Industrial Internet の推進によるサービス部門の収益向上>
① Power & Water事業を含む製造部門にて、売上の約半数を占めるサービス部
門での付加価値向上を目指す。 ② 産業機器・施設をセンサおよびソフトウェアに接続 ③ 各機器のデータをGEが集約し、分析、フィードバックすることで、機器の生産性を向
上させる。
ユーザーのコスト削減に寄与
付加価値の高いシステム提供により、GE社の高収益を実現
営業利益に占める金融事業比率
の目標値:10%以下
発電事業の事業方針
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(2) GE Digital の変遷 GEは2011年ころからデジタルシフトを推進。ソフトウェアへの投資を続けている。
2015年には各事業セグメントのデジタル部門をGE Digitalとして統合。28000人を超える組織となっている。
出所)GE Annual Report
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(3) 発電分野における取組 IoTの取組みは航空機が最も進んでいるが、発電分野でもメンテナンスのやり方を変えるべく、サービス展開を
している。
従来
Industria
l Intern
et
の効果
ビックデータ として集約
<欧米の場合>
定修の時期、消耗品交換
頻度、点検のやり方などは、
発電所設計時に策定した
保全計画に依る。
O&Mを行うサードパーティは、策定された
保全計画どおりに動き、現場がカイゼンする
ことが少ない。
(カイゼンの例:4年で交換の部品だが、劣化が
少ないので交換を1年延長するなど)
現場が臨機応変な対応を行わな
いようにしていることから、メンテナ
ンスコストが高い傾向
既に稼働している 機器の運用データ
集約データを分析することで、
従来よりも効率的なメンテナンス手
法を構築し、保全計画にフィード
バック
運用・メンテナンスコストの最適化
(ユーザーの収益向上)に寄与
データ収集・分析に関与するシステム・ソフト
Predix
①接続された機器のデータ収集・管理・分析を行うソフトウェアプ
ラットフォームである。
②既に航空機エンジンなどで運用の実績がある。
③2015年には産業向けにPredixの外部提供を開始した。
設備の管理・制御に関与するシステム・ソフト
OpFlex
①燃料消費・ヒューマンエラー・作業員のタスクなどの削減のため、機器
の運用制御するシステムである。
②既に400基以上のガスタービンに実装されている。
【GE社の優位性】
他社よりもデータ蓄積量が多いため、より
高確度・高速でフィードバックが可能
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3.2 Siemens (1) デジタルへの投資 Siemensは2007年から総額€50億以上の投資をデジタル分野に行っている。
PLMソフトウェア、製造実行システム(MES)、自動化技術の総合的なポートフォリオを構築しようとしている。
出所)Siemensプレゼンテーション資料
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(2) 提供しているITサービス シーメンスがこれまで進めてきたスマートグリッドの技術とアクセンチュアのIT技術を融合し、次世代スマー
トグリッドサービスを提供するオムニテック社を2013年10月に設立、世界各地のスマートグリッド案件の獲得を進めている。
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(3) IoT活用プラットフォーム GEのPredixに相当するソフトウェアとしてSimensはオープンクラウドプラットフォームであるCloud for
Industryを開発。
取り組み内容自身はGEよりも実用的かつ高度な内容を実現できていると自負している。
シーメンス製品および非シーメンス製品との接続用のオープンスタンダード(OPC)
シーメンス製品のプラグアンドプレイ型接続 個人ユーザー用アプリケーション向けのオープンアプリケーションインターフェースを搭載した企業向けクラウド
選択可能なクラウンインフラストラクチャー 透明性のある従量課金の価格設定モデル 新しいビジネスモデルの実現(資産の代わりに機械加工の時間を販売等)
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日本企業の強みの分析
2013年度の産業機械課委託調査で、日本の重電メーカの強みの分析・アピール資料の作成を実施
海外訪問時に利用し、顧客からの理解度も高い (別紙参照)