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1 1998年、東京・渋谷に店を構えたジャズ・ギター専門店ウォーキ ン。歴史的アーチトップのヴィンテージや新作の販売だけではなく、 修理やメンテナンスにおいてもトップ・プロをはじめ、絶対的な信頼 を寄せるプレイヤーは多い。また、ジェシ・ヴァン・ルーラー、ウル フ・ワケーニウスのギター・クリニックなども積極的に行ない、ギタ ー・ショップの枠を超えた日本を代表するアーチトップ・ギター専門 店だ。そのウォーキンが、2010 年秋にプライヴェート・ブランド “Archtop Tribute”を発表した。これまでに膨大なアーチトッ プ・ギターの流通、修理を行なってきた同店ならではの高いクオリテ ィと、ジャズ・ギターに対する譲れないこだわりによって完成したこ の“アーチトップ・トリビュート”は、いずれも大きな反響を呼んでい る。ブランドの誕生のいきさつ、そして現在入手できるラインナップ を、試奏を交えてじっくりと紹介しよう。 実用面にフォーカスし、虚飾を配した“Made in Japan”クオリティのギター かつて入門用や安定したサブ・ギターとして評 価の高かった、10万円前後から10万円台の新品日 本製アーチトップ・ギターは、景気や為替相場の変 動、木材資源の枯渇と高騰、原油高による製造コス トの上昇などの理由により、残念ながら現在入手す ることは難しい。 しかし、「10万円程度で良いアーチトップ・ギタ ーを」といった問い合せはウォーキンに常にあり、 なんとかリーズナブルなエントリー・モデルを販売 できないものかと、以前からスタッフ間で検討を続 けてきた。 そして、このリクエストに応えるべく立案され たプロジェクトこそが、Archtop Tributeの始ま りだった。“101 (ワン・オー・ワン)”と銘打たれた この企画は、スタンダード・モデルの販売価格を10 万円未満に設定し、充分なアフター・サービス体制 の下、エントリー・ユーザーはもちろん、プロの使 用にも耐えうる高いクオリティのアーチトップ・ギ ターをプロデュースしようというもので、2010年 秋にスタートした。ちなみに“101”とは、入門、初 級を意味する。 この企画で、ウォーキンとコラボレーションす る楽器メーカーは、アーチトップの量産にかけて は、世界でも屈指の実力を評価されている寺田楽 器。材料の仕入れに始まり、その材料の加工、組 み上げ、仕上げ、といった行程で進められ、その すべてにおいて、日本製ならではの優れた品質管 理が行なわれる。 まずデザインは、60年以上にわたってジャズ・ ギターの定番モデルとして愛されている“イチナナ ゴ”をモティーフとし製作された。ブランド名は偉 大なモデルへのリスペクトを忘れず“Archtop Tribute”と名付けられ、モデル名は“AT101”。価 格は、税別ながら99,800円というロー・プライスを 実現させている。採用予定パーツは、優れた精度の 日本製汎用パーツを使用することにより、品質の維 ボディのトップとバックには、4.4mm厚のウォーキン特注合板 “Rich Presence Plywood”を採用。フロント・ポジションに 設けられたピックアップ・ホールは、この時点ではまだ仮の状態だ。 セル・バインディングの 巻き付け行程を待つ、半完成のボディた ち。スタンダード・モデルの“AT101”、上位モデルの“AT102” ともに、ボディ自体は共用だ。 アーチトップ・トリビュート挑戦 ジャズ・ギター専門店ウォーキン・プライヴェート・ブランド 取材:布施雄一郎/編 集 部 撮影:桧川泰治/小貝和夫 写真 提 供:ウォーキン ジャズライフ2010年 9月号掲載 ここで紹介している記事は、ジャズライフ2010年9月号、10月号、11月号、12月号、2011年5月号、6月号に掲載したものを再編集したものです。 2010年秋 ――アーチトップ・トリビュート 101 の誕生 PRESENTS アーチトップ・ギターの現在 ディテール この度の大震災にて被災されました皆様、ご家族、ご友人の方々に、心よりお見舞い申し 上げます。また、安否不明な方々のご無事を、心よりお祈り申し上げております。 弊社では、株式会社寺田楽器様ご賛同のもと、Archtop Tribute製品の売り上げの一部 を、「日本赤十字社 東日本大震災義援金」に募金させて頂いております。 日本製であることの素晴らしさを謳った弊社製品が、未曾有の大災害を乗り切らんと する被災地の皆様に、僅かばかりでもお役立てを頂くことが叶うのであれば、それはまた私 達にとっても、大きな心の支えとなります。願わくは、Archtop Tribute製品オーナー各 位にも、今回の募金につきましてのご理解を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。 重ねまして、被災されました皆様のご無事とご健康を、心よりお祈り申し上げております。 有限会社ウォーキン 社員一同 Archtop Tribute製品の売り上げの一部を、義援金とさせて頂きます 試奏 高内"HARU"春彦 田辺充邦 馬場孝喜 http://www.haru-jazz.com http://tanabe-mitsukuni.com http://www.geocities.jp/babatakayoshi/ 問:ウォーキン渋谷駅前店3階フロア(TEL.03-5467-1625)、 渋谷駅前店4階フロア(TEL.03-5467-1627) WEB:http://www.walkin.co.jp

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Page 1: P1-P8/ [ i++ - walkin.co.jp · 1 1998年、東京・渋谷に店を構えたジャズ・ギター専門店ウォーキ ン。歴史的アーチトップのヴィンテージや新作の販売だけ

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1998年、東京・渋谷に店を構えたジャズ・ギター専門店ウォーキン。歴史的アーチトップのヴィンテージや新作の販売だけではなく、修理やメンテナンスにおいてもトップ・プロをはじめ、絶対的な信頼を寄せるプレイヤーは多い。また、ジェシ・ヴァン・ルーラー、ウルフ・ワケーニウスのギター・クリニックなども積極的に行ない、ギタ

ー・ショップの枠を超えた日本を代表するアーチトップ・ギター専門店だ。そのウォーキンが、2010年秋にプライヴェート・ブランド“Archtop Tribute”を発表した。これまでに膨大なアーチトップ・ギターの流通、修理を行なってきた同店ならではの高いクオリティと、ジャズ・ギターに対する譲れないこだわりによって完成したこ

の“アーチトップ・トリビュート”は、いずれも大きな反響を呼んでいる。ブランドの誕生のいきさつ、そして現在入手できるラインナップを、試奏を交えてじっくりと紹介しよう。

実用面にフォーカスし、虚飾を配した“Made in Japan”クオリティのギター

 かつて入門用や安定したサブ・ギターとして評

価の高かった、10万円前後から10万円台の新品日

本製アーチトップ・ギターは、景気や為替相場の変

動、木材資源の枯渇と高騰、原油高による製造コス

トの上昇などの理由により、残念ながら現在入手す

ることは難しい。

 しかし、「10万円程度で良いアーチトップ・ギタ

ーを」といった問い合せはウォーキンに常にあり、

なんとかリーズナブルなエントリー・モデルを販売

できないものかと、以前からスタッフ間で検討を続

けてきた。

 そして、このリクエストに応えるべく立案され

たプロジェクトこそが、Archtop Tributeの始ま

りだった。“101(ワン・オー・ワン)”と銘打たれた

この企画は、スタンダード・モデルの販売価格を10

万円未満に設定し、充分なアフター・サービス体制

の下、エントリー・ユーザーはもちろん、プロの使

用にも耐えうる高いクオリティのアーチトップ・ギ

ターをプロデュースしようというもので、2010年

秋にスタートした。ちなみに“101”とは、入門、初

級を意味する。

 この企画で、ウォーキンとコラボレーションす

る楽器メーカーは、アーチトップの量産にかけて

は、世界でも屈指の実力を評価されている寺田楽

器。材料の仕入れに始まり、その材料の加工、組

み上げ、仕上げ、といった行程で進められ、その

すべてにおいて、日本製ならではの優れた品質管

理が行なわれる。

 まずデザインは、60年以上にわたってジャズ・

ギターの定番モデルとして愛されている“イチナナ

ゴ”をモティーフとし製作された。ブランド名は偉

大なモデルへのリスペクトを忘れず“Archtop

Tribute”と名付けられ、モデル名は“AT101”。価

格は、税別ながら99,800円というロー・プライスを

実現させている。採用予定パーツは、優れた精度の

日本製汎用パーツを使用することにより、品質の維

ボディのトップとバックには、4.4mm厚のウォーキン特注合板“Rich Presence Plywood”を採用。フロント・ポジションに設けられたピックアップ・ホールは、この時点ではまだ仮の状態だ。

セル・バインディングの巻き付け行程を待つ、半完成のボディたち。スタンダード・モデルの“AT101”、上位モデルの“AT102”ともに、ボディ自体は共用だ。

アーチトップ・トリビュートの挑戦

ジャズ・ギター専門店ウォーキン・プライヴェート・ブランド

取材:布施雄一郎/編集部 撮影:桧川泰治/小貝和夫 写真提供:ウォーキン

ジャズライフ2010年9月号掲載

ここで紹介している記事は、ジャズライフ2010年9月号、10月号、11月号、12月号、2011年5月号、6月号に掲載したものを再編集したものです。

2010年秋――アーチトップ・トリビュート101の誕生

PRESENTS

 アーチトップ・ギターの現在  ディテール

 この度の大震災にて被災されました皆様、ご家族、ご友人の方々に、心よりお見舞い申し上げます。また、安否不明な方々のご無事を、心よりお祈り申し上げております。 弊社では、株式会社寺田楽器様ご賛同のもと、Archtop Tribute製品の売り上げの一部

を、「日本赤十字社 東日本大震災義援金」に募金させて頂いております。 日本製であることの素晴らしさを謳った弊社製品が、未曾有の大災害を乗り切らんと

する被災地の皆様に、僅かばかりでもお役立てを頂くことが叶うのであれば、それはまた私達にとっても、大きな心の支えとなります。願わくは、Archtop Tribute製品オーナー各位にも、今回の募金につきましてのご理解を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

 重ねまして、被災されました皆様のご無事とご健康を、心よりお祈り申し上げております。有限会社ウォーキン 社員一同

Archtop Tribute製品の売り上げの一部を、義援金とさせて頂きます試奏

高内"HARU"春彦田辺充邦馬場孝喜

(http://www.haru-jazz.com

http://tanabe-mitsukuni.com

http://www.geocities.jp/babatakayoshi/

問:ウォーキン渋谷駅前店3階フロア(TEL.03-5467-1625)、  渋谷駅前店4階フロア(TEL.03-5467-1627)

  WEB:http://www.walkin.co.jp

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 アーチトップ・トリビュートが、なぜ「日本製」であることに

拘るのか。そこにはいくつかの理由がある。そのひとつは、た

とえばスタビリティ=安定性だ。これはほとんどすべてのギタ

ーに当てはまることだが、主な材料が「木」である以上、多少の

差はあれど、ギターには経年変化や季節毎の変化が生じる。そ

れは木が本来に持つ固有の性質であったり、あるいはシーズニ

ング(材料の乾燥工程)の問題であったり、また時には、ギター

のおかれた気候や管理の状況等、外的な要因によることもある

だろう。日本のように四季の寒暖、乾湿の差が大きければ、な

おのことである。それはまた、ギターが「生き物」にたとえられ

る所以でもあり、味わいとも言えるのだが、過度の状態の変化

は、当然プレイヤーのストレスに直結する。

 現在、世界中の多くの有名ブランドがOEMで日本製のフル

アコをリリースしているのは、そんなストレスがなく、仕上が

りの精度だけではない長期的な安定性が評価され続けてきた結

果でもある。同一の工場設備で数十年に渡ってフルアコを製作

し続け、少しずつ改良を重ね、そしてそのノウハウを蓄積した

上で製作される日本製の製品には、安定性の面で圧倒的なアド

ヴァンテージがあるのだ。

 また、細かな仕上げにも気を遣う日本人気質と、良い意味で

の職人気質が、ギター1本1本の仕上がりに反映される点も大

きな強みだ。そして、多くの日本の楽器工場では、音楽が好き

な製作スタッフたちが、実際に製作の現場で作業にあたってい

るという点も見逃せない。実際に弾き手が作ったギターか、そ

うでないか……。各工程における“さじ加減”の積み重ねは、ギ

ターが単なる工業製品ではなく“楽器”として成り立つために、

欠かすことのできない要素なのだ。

 “Archtop Tribute”には、確かに半世紀以上を生き抜いてき

たヴィンテージ・ギターのような風合いはない。また、高い精

度で組み上げられ、均一に仕上げられたその外観は、ともすれ

ば存在感が希薄だと受け取られることもあるだろう。しかし、

このプロジェクトの狙いは、そもそもそこにはない。「楽器=道

具」としての本来の用途に立ち戻り、スタンダードかつリーズナ

ブルなフルアコでありながら、サウンド、演奏性、品質的な安

定性、そしてもちろん販売価格のバランスにおいて、ベストの

製品を生み出すこと。そしてその目標達成のためには、やはり

日本製以外の選択肢は考えられなかったのだ。      ■

99,800円に設定されたAT101のボディには、シンプルなシングル・バインディングが採用される。対して上位モデルのAT102は、より“イチナナゴ”テイストなトリプル・バインディングを採用。

ごく僅かな狂いが全体に及んでしまうため、ネックとボディのジョイント工程には非常に繊細な作業が要求される。この組み上げ時の精度の高さと、後々の狂いの少なさは、日本製ならではの魅力だ。

ネック・ジョイント

ローズウッドの指板は、AT101がシンプルなバインディングレス仕様、AT102はシングル・バウンド仕様となる。ネックはいずれもマホガニー材だが、AT102にはより良質な1ピース材を採用。

指板の接着

作り手としてだけではなく、弾き手としての勘どころも要求される工程だ。この後、全体の塗装工程を経てから指板面のシェイプを整える作業に入り、続いてその指板にフレットが打ち込まれる。

ネック・シェイプ

写真はfホール断面部分の木地を仕上げている様子。直接サウンドに影響する部分ではないが、こうした細やかな仕上げの美しさも、日本製のフルアコが高評価を受ける一因だ。

木地の研磨

ブラウン・サンバーストの下色となる、イエロー系の着色を行なっている。写真を注意して見ると、カッタウェイが左右逆になっていることが分かる。このモデルがレフト・ハンド仕様だ。

下塗り

木工以外でも、このような地道で繊細な作業が連続する。ちなみにこの後の工程では、“ArchtopTribute”のロゴの下に、“Made in Japan”の文字をレイアウトした図案が入る。

ヘッドのロゴ貼り

着色後のトップコートを塗装している様子。ブラウン・サンバーストの色合いは、マウントされるピックアップの形式によって異なる。フィニッシュはポリ系だが、こちらも別注指定にて極薄仕上げだ。

トップコート

バインディング巻き付け

Made in Japanに拘るその理由とは……

持と共にコストは大幅な軽減が可能となった。ピ

ックアップはフロント・ポジションのみ、ボディの

セル・バインディングはシングルで、ネックにバイ

ンディングはなく、ポジション・マークはドット。

まさに、実用面のみにフォーカスし、装飾を極限ま

でそぎ落としたモデルと言ってもよいだろう。

 ただし、あえてコスト・アップを選択した部分は

何点もある。そのひとつが指板。“心地よいフィンガ

リング”の実現のため、指板のアール形状を整える行

程でも細心の注意を払い、フレッティング行程の一

連の作業には、より多くの時間を割く。これは現在、

寺田楽器で製作されている最上級の機種にのみ採用

されている手法と、まったく同一の作業工程である。

 さらにもうひとつこだわったのが、合板材=プラ

イウッドだ。より存在感のあるサウンドを目指し、

本プロジェクトのために特注製作されたこの合板

材、“Rich Presence Plywood”は、メイプル/

スプルース/スプルース/メイプルという4層構

造を持ち、約4.4mmという、適度な厚みを持たせ

た仕様に仕上げられている。これは倍音を豊かに

含みつつ音痩せのないエレクトリック・ジャズ・

ギター・トーンを目指したもので、生鳴りのヴォ

リューム感よりも、むしろアンプリファイズした

際の使い勝手の良さにフォーカスした故のこだわ

りだ。

 “AT101”は、マウントされるハードウェアももち

ろん日本製で組まれる。ペグは世界的に定評のある

GOTOH製の“SD90”が採用される。また、ジグザ

グ・スタイルのテールピースも、リーズナブルで高

精度な国内製作品で構成される。ピックアップにつ

いては、くせがなく、またマッチングも良好だっ

た、アルニコ・マグネット採用の日本製ハムバッカ

ーに決定した。そして、今回もう1機種、P-90スタ

イルのシングルコイル・ピックアップをマウントし

た“AT101 Classic”もラインナップされた。

 完成したギターは、寺田楽器で出荷前の最終確認

を終えた後、一旦すべてがウォーキンの自社工房へ

送られ、ナットやブリッジの仕上げに入る。なおそ

の仕上げについては、必要以上に弦高を下げるよう

な“攻めた”セッティングではなく、プレイヤーの好

みによる調整の余地を残した、“ニュートラルな状

態”を目指しているという。そうして店舗に納品さ

れた後、さらに演奏面のチェックや微妙な調整が行

なわれる。

 ここまで徹底してなお、プライス・タグの表記は

99,800円なのだ。              ■

 フィンガリングのこだわり

 ハードウェアの選定

 プライウッドのこだわり

 セットアップのこだわり

2

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3

HARU:1、2弦の鳴りがすごく良いね。それにネックの厚みや太さ、フレットの高さも

抜群、とても弾きやすい。

田辺:10万円前後のロー・プライスのギターだと、どうしても1~2弦がペキペキ鳴って

しまい、仕事で使うには厳しいモデルが多い

けれど、これは1~2弦が充分にメロディを

歌ってくれます。温かい響きがするし、トー

ンを全開にしても音が薄くなることがありま

せん。しかも11~13フレットあたりがすごく

気持ちが良いですね。ジャズはFやE♭のキー

をよく使うので、このあたりの鳴りが良いと

いうことは、ギターにとってとても重要なこ

とだと思います。

HARU:それに2本とも、音程がすごく良いよね。ヴィンテージのピッチの悪さが作り出

す甘い響きではなく、現代的な響き。僕はこ

のモダンなトーンが大いに気に入った。

田辺:「AT101 Classic」は芯がスーっと出るシングル・ピックアップ特有の音、「AT101」

はハムバッカーらしい甘さがあって、しっか

りと個性が出ている点も、素晴らしいです

ね。僕は「AT101 Classic」の生の鳴りと、

「AT101」のヴィンテージが放つような特有の

サンバーストの色合いに惚れ込みました(笑)。

HARU:どちらも音が上品で、ゲージ012の弦が張られているとは思えないほどテンショ

ン感も良い。田辺くんが言ったように、ラミ

ネート構造のこのタイプのギターは、1~2

弦が「ビョン」って鳴る物が多いんだけど、こ

れは音が真っ直ぐ鳴ってくれるので、まった

くストレスなく演奏できる。この完成度の高

さには驚きだよね。

田辺:“ポロン”と弾いたときの「AT101Classic」の生鳴りの良さには、ほんとうに驚き

ました。僕は、ボディの上側(ネック付け根の

上側部)が鳴ってくれる楽器が好きなんです。

さらに、ボディ裏がお腹に響く感じで、もう

これはアンプで鳴らさなくてもいいくらいの

ギターだって確信できました(笑)。ヴォリュ

ーム5程度で、生鳴りとアンプの音が混ざっ

た音が一番気持ち良いですね。

田辺:2本とも、バインディングやパーツがグレード・アップしているせいか、やはり鳴

りがちょっと違いますね。

HARU:より中低音が出るよね。僕は低音が鳴り過ぎない方が好きなんだけど、これはち

ょうどいい感じなんじゃないかな。

田辺:ブーミーではなくて、はっきりと音が聴き取りやすいですね。1~2弦と4~6弦

の音のバランスがすごく良いですよ。さっ

き、HARUさんが相当変なコードを弾いてま

したけど(笑)、音の分離がよく、聴きやすか

ったですからね。

HARU:「AT102」は、よりハムバッカーの音で、ポリトーンとの組み合わせは抜群だよ

ね。「AT102 Classic」も、さっきのモデルは

高音域でシングルならではの可憐さを感じた

けど、これはまたちょっと違う個性がある。

田辺:カラッとしてるけれど、艶やかで、音に芯がありますね。「AT102」も「AT102

Classic」も、アンプで鳴らした時の音が、も

のすごく良い!

HARU:この「AT102 Classic」は相当良いですよ。普通のシングル・ピックアップとま

た違って力強さがあるし、ローランドJC-120

で鳴らした時の、コーラスのかかり具合もす

ごくきれい。

田辺:JC-120で良い音が鳴らせるというは、すごく強みだと思います。ライヴハウスには、

ほとんどJC-120が置かれていますから。

HARU:どこのライヴハウスでもこの音が出せれば、地方のツアーにこのギターだけを持

って行くというのもいいかも。

田辺:トーンも、音がこもらずに甘くなってくれるので、僕のような刻みが多いプレイヤ

ーには本当に嬉しいですよ。アーチトップの

形状も自然で素晴らしいし、本当に細かい部

分にこだわりを感じます。

HARU:どれもこんなに安くていいのかな、と思っちゃうよね(笑)。しかも、「安い割に良

い」のではなくて、楽器として素晴らしい。ラ

ミネート構造のギターで、価格に関係なく好

きなのを選んでいいと言われても、これは充

分に第一候補になるよね。

田辺:トーンを絞るとパット・メセニーやジム・ホール的なアプローチもできるし、ちょ

っと硬めの音にすればファンキーなプレイも

バッチリですね。そして何よりも、“Made in

Japan”ってヘッドに入っているのが嬉しいで

す。日本は、これだけのギターをこの価格で

作れるんだという誇りを感じます。   ■

「“AT101 Classic”の生鳴りと、 “AT101”のサンバーストの色合いに 惚れ込みました(笑)」 田辺充邦

「価格に関係なく好きなものを選んでいいと 言われても、これは充分に第一候補になるね」 高内"HARU"春彦

AT101/AT101 Classic

AT102/AT102 Classic

ジャズライフ2010年11月号掲載

撮影:桧川泰治(人物)、小貝和夫(楽器)

高内"HARU"春彦×田辺充邦

AT101/AT101 Classic/AT102/AT102 Classic

試奏

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販売価格:¥99,800(税抜き)実用面のみにフォーカスし、装飾を極限までそぎ落としたモデル。GOTOH製のペグなど、ハードウェアも日本製にこだわっている。ピックアップはアルニコ・マグネット製のハムバッカーを採用。

AT101

ブランド名“ArchtopTribute”は、ジャズ・ギターの定番モデルへのリスペクトから名付けられた。ロゴ下には、“Made in Japan”の文字が刻まれている

上のピックアップは、「AT101」「AT102」に搭載されているアルニコ・マグネット採用のハムバッカー。下は、「Classic」シリーズに採用されたP-90スタイルのシングルコイル・ピックアップ。もちろんどちらも日本製

販売価格:¥99,800(税抜き)こだわりの材、またハードウェアはすべて「AT101」と同様のもので構成されている。ピックアップには、P-90スタイルのシングルコイル・ピックアップが搭載されている。

AT102Classic

AT102

AT101Classic

上が50年代後期のヴィンテージをイメージした“Late '50s Burst”、下が50年代前期のヴィンテージをイメージした“Early'50s Burst”。何れのブラウン・サンバーストも、その年代の雰囲気を見事に再現している。

販売価格:¥129,800(税抜き)トリプル・バウンドのボディ・バインディングやスプリット・パラレログラム・シェイプのポジション・マークなど、「AT102」と同スペック。ただピックアップのみ、P-90スタイルが組み込まれている。

SPEC ●ピックアップ:ハムバッカー(アルニコ・マグネット) ●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:スプリット・パラレログラム ●ブリッジ:ローズウッド●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:LightAmber Natural、Late '50s Burst

SPEC ●ピックアップ:ハムバッカー(アルニコ・マグネット)●ネック:マホガニー ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ドット ●ブリッジ:ローズウッド ●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst

SPEC ●ピックアップ:P-90タイプ(シングルコイル) ●ネック:マホガニー ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ドット ●ブリッジ:ローズウッド ●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース)●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:LightAmber Natural、Early '50s Burst

SPEC ●ピックアップ:P-90タイプ(シングルコイル) ●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:スプリット・パラレログラム ●ブリッジ:ローズウッド ●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Early '50s Burst

販売価格:¥129,800(税抜き)「AT101」をグレード・アップしたモデル。コントロール・ポットはCTS社製、コンデンサーはオレンジ・ドロップが使われており、ネック材は1ピースのマホガニー材となる。ピックアップは、「AT101」と同様。

※写真の個体は、2010年製作のプロトタイプです。製品版とは若干仕様が異なる場合があります。

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SPEC ●ピックアップ:2×P-90タイプ(シングルコイル) ●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:スプリット・パラレログラム ●ブリッジ:ローズウッド ●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Early '50sBurst

馬場:少し太めのグリップですが、これは弾きやすいですね。ネックの太さも、ふだん使い慣れている97年

のギブソンES-175と変わらないので違和感がまったく

ありません。まさにフルアコの王道というサウンドで

す。ヴォリューム全開で鳴らしているのに、いっぱい

いっぱいな感じがなく、低音弦を弾いた時にもそれほ

どブーミー感がありませんから、気持ちよく弾けま

す。音の分離も良くて、スカッと出てくれるので、ボ

サ・ノヴァ系の複雑なコードでもいけます。これでし

たらバンドで演奏しても音が埋もれないと思います。

欲しいです(笑)。

田辺:音のバランスが良いですし、リア・ピックアップのマウントにスペーサーが装着してあるので、リア

が気持ち良く出てくれます。ふつうはここまで鳴りま

せんよね。低音弦の鳴りも良い感じです。バランスが

取れていて、音の輪郭が鮮明です。ピッチが正確で、

サスティンもあり、ハーモニクスもきれいに出ます。

トーンの効きも、絞るとコモるのではなく、甘くなる

印象。ジャズにはぴったりですね!       ■

「低音弦の鳴りが良く、音の輪郭が鮮明。

トーンの効きもジャズにぴったり」田辺

P-90スタイルのピックアップを搭載した“AT102 Classic”は、シリーズ中1、2を争う人気機種だ。その2ピックアップ仕様がこちらのモデル。シングルコイルの割にはノイズが少なく、また程良い太さを持った歯切れの良いジャズトーンと、1950年代前期の色合いを再現した“Early'50s Burst”のフィニッシュの組み合わせが、価格を超えた高級感を演出している。

AT102D Classic

田辺充邦 馬場孝喜

撮影:桧川泰治(人物&楽器)

販売価格:¥139,800(税抜き)

AT102D ClassicAT102MAT202MDAT135STPAT135TTP

田辺充邦  ×馬場孝喜

試奏

ジャズライフ2011年6月号掲載

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SPEC ●ピックアップ:1×ハムバッカー(アルニコ・マグネット) ●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:スプリット・パラレログラム ●ブリッジ:TOKIWA TABR-1(特注ブラス・サドル仕様) ●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:LightAmber Natural、Late '50s Burst、Dark Gray Burst

田辺:アーチトップ・トリビュートのどのモデルにも言えることですが、高音弦側に行っても音が細くなら

ないで、音のバランスが良い。これはもうパット・メ

セニー好きは放っとかないでしょう(笑)。基本的なこ

とかもしれませんが、フレットがしっかり打ってある

ので、ビビリません。ピックアップのポジションも絶

妙で、オーソドックスなジャズの甘いサウンドでプレ

イすることができます。トーンを使う必要もありませ

んでした。16インチのボディで、抱えた時のバランス

も良いと思います。チューニングもしやすいですね。

馬場:このギターは弾く人の音色になってくれるというか、弾く人によって印象が変わるモデルかもしれま

せん。田辺さんがおっしゃったように、オーソドック

スなジャズでも、さらにコンテンポラリーにも、いず

れにしても、弾いていて不満はありませんでした。コ

ーラス、空間系のエフェクトを使うとさらに面白いと

思いました。何年かすると、アーチトップ・トリビュ

ートの音としてこの世界でも認められる、そういう音

ですね。                   ■

「オーソドックスにも、コンテンポラリーにも、

弾く人の音色になってくれるギター」馬場

AT102M販売価格:¥133,800(税抜き)

定番モデル“AT102”のミッド・デプス仕様。ボディ厚は約2.5インチとなり、フル・デプスのAT102よりも約21mm程度薄くなる。サウンドは、ロー・ミッドの輪郭が一回りクリアになる印象だが、それでもアコースティック感は非常に豊か。ボディのホールド性も高く、またエレクトリック・ユースに特化したモデルとして、ブリッジはTune-Oタイプが標準採用となる。

SPEC ●ピックアップ:2×ハムバッカー(アルニコ・マグネット) ●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジションマーク:スプリット・パラレログラム ●ブリッジ:TOKIWA TABR-1(特注ブラス・サドル仕様)●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:LightAmber Natural、Late '50s Burst、Dark Gray Burst

馬場:このギターは、先日ラウンド弦を張って、実際

にライヴに使ってみました。攻撃的にもプレイできる

し、優しくもプレイできるギターで、とっても気に入

りました。ライヴで共演したオルガン奏者が、「ロー

のいらない部分は鳴らず、しかも中域も締まってい

る。このギター、“おしゃれイコライジング”が入って

るの?」って言うんです(笑)。なるほどと思いました。

あと、ハウリングにも強い。このまんま、調整なしで

ステージで使えるクオリティです。

田辺:オルガン奏者が言ったところに説得力がありますね(笑)。確かに音にパンチがあります。1、2弦が

ちょっと頼りない音の新作ギターがよくありますが、

これはそういったところがまったくない。高音弦がき

れいに鳴ります。6弦をドーンと鳴らした後でも、そ

の音がきれいに残ってくれます。ぼくは、175とはひ

と味違うイメージを持ちました。ボディ厚の影響かも

しれませんが、これが「アーチトップ・トリビュート」

の他にはない音と言えるかもしれません。カート・ロ

ーゼンウィンケルが好きな人にもお薦めです。  ■

「ライヴで実証済み。このままステージで、

調整なしで使えるクオリティ」馬場

AT202 MD販売価格:¥145,800(税抜き)

ミッド・デプス仕様“AT102M”の2×ハムバッカー/コンター・ブレイシング仕様。全体の外寸は、右のAT102Mに準じた仕様ながら、ボディ・トップ裏側のブレイシングにスノコ状の“コンター・ブレイシング”を採用し、あえてトップの振動を抑え込む指向でデザインされている。ハウリングにも強く、また芯のある独特のトーンはアンサンブルの中での音抜けも良好だ。

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SPEC ●ピックアップ:2×ハムバッカー(アルニコ・マグネット) ●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ドット ●ブリッジ:GOTOH GE104B ●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst、Relic Cherry Red

馬場:いやー、弾きやすいです。実は、これまでセミアコは苦手で、ぼくが弾くギターではないなって思っ

ていました。弾くポジションによって、頼りない音だ

ったり、とても音が大きくかったりと、とにかくバラ

ンスが良くないイメージがありましたが、これなら気

持ち良く弾けます。気を使わず単音のラインがここま

で鳴らせるとは思いませんでした。しかも、低音弦か

ら高音弦までの音のつながりが良いですね。音の立ち

上がりも速くて、カッティングもいけます。

田辺:セミアコなのに高音弦でも柔らかい音が自然に出ますね。トーンがフルでも、“ウーマン・トーン”の

ようなサウンドもいけます。もしかしたらブライン

ド・テストをしたら、フルアコと間違える人も多いか

もしれません。クリーン・トーンでの空間系のエフェ

クトはもちろんですが、歪み系のエフェクトでも音の

バランスが良いですね。フィードバックも自由自在で

す。フレットの調整が良くできていて、ネックも吸い

付くような握り心地です。弦の押さえ方でもトーンの

ヴァリエーションを出すことができます。    ■

「単音のラインがここまで鳴らせるとは。

低音から高音の音のつながりも良い」馬場

AT135 STP販売価格:¥134,800(税抜き)

SPEC ●ピックアップ:2×ハムバッカー(アルニコ・マグネット) ●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ブロック●ブリッジ:GOTOH GE104B ●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、'60s Light Burst、Relic Cherry Red

馬場:コードはもちろんですが、サスティンがあってこのギターも単音がきれい。こんなに弾きやすいもの

なんですね、セミアコって(笑)。気分良くメロディが

弾けます。個体差かもしれませんが、若干硬めのトー

ンを持っている印象です。ですから、セミアコを越

えたトーンの幅を感じさせます。歪ませても、品の

あるサウンドです。クランチ気味にしてブルースも

良いですね。

田辺:ネックがやや薄めで、親指を指板から出して握り込むタイプのプレイヤーにお薦めです。ケニー・バ

レルのような押さえ方も可能です。馬場さんがコメン

トしたとおり、発音が良く音がはっきりしていますか

ら、シンセサイザーやエレクトリック・ベースのプレ

イヤーとプレイしても、音が硬めの分だけ音が抜けて

くると思います。ファンクにも合うし、親指で弾いて

もそれらしいトーンが出ますね。もちろん、トラピー

ズ・テールピースですから、甘い音作りも可能です。

コーラス、ディレイの空間系のエフェクトで、ビル・

フリーゼル系のサウンドもいけます。      ■

「ファンクにも合うし、親指で弾いてもよし。

空間系のエフェクトにもぴったり」田辺

AT135 TTP販売価格:¥134,800(税抜き)

程良く太めのグリップを持つ17度ヘッドのネック、抜きの少ないセンターブロック、ロングガード、ストップ・テールピース、まさに王道とも言えるスペックを持つセミアコが、このAT135STPだ。ATシリーズ専用の材“RichPresence Plywood”を用いることにより、豊かな倍音を含みつつ、そして高音弦の音痩せのない、バランスの良いセミアコ・モデルに仕上げられている。

幅広で薄めのグリップを持つネックにブロック・ポジションマーク、そしてトラピーズ・テールピースを持つセミアコ・モデル。1960年代中期の過渡期的仕様とも言えるこのモデルには、AT135STPと同じく17度のヘッド角が与えられ、1964年頃のスペックが再現されている。これはATシリーズ全般に言えることだが、セットアップの水準は非常に高い。

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AT102L/AT102L Classic

“アーチトップ・トリビュート”左利きモデルも登場!

 「アーチトップ・トリビュート」の左利きプレイヤー用のモデル

も2機種登場。それぞれの基本仕様は、「AT102L」がハムバッカ

ー仕様、「AT102L Classic」と名付けられたモデルはシングル

コイル・ピックアップ仕様となっている。専用に開発されたプラ

イウッドや、特別ラインでのフレッティングを始めとした製作精

度のこだわりも、そのまま受け継がれている。製品の特性上、ど

うしても右利き用のモデルよりは幾分割高になってしまうが、そ

れでもこのクオリティのフルアコが15万円を切る価格ならば、充

分にリーズナブルと言えるだろう。そもそもほとんど選択肢がな

かったギターのジャンルだけに、左利きのジャズ・ギター・プレ

イヤーにとってはこの上ない朗報だ。           ■

販売価格:各¥142,800(税抜き)

AT102L AT102L Classic

AT130田辺充邦試奏

田辺:ウォーキンのオリジナル・ブランド「アーチトップ・トリビュート」のシンライン・モデルです。まず、手に持って驚

いたのがとてもボディが軽いことです。色合いも自然な木目

の出方に好感が持てます。サウンドだけでなく、フィニッシ

ュの完成度の高さもこのブランドのこだわりを大いに感じさ

せますね。たくさんのヴィンテージを実際に見ていないと、

この絶妙な雰囲気は出せないものです。

 そして、そのこだわりはサウンドや作りにも繋がります。

グリップはやや太く、しっかりとした印象です。長く弾いて

いても疲れを感じません。テールピースがブランコ・テール

ピースというのも良いですね。そしてテールピースの長さも、

汎用パーツに比べ、約1cm以上長く設計されています。ギブ

ソンES-330なども、この長さなのですが、そこまで細かく再

現しているのもうれしいですね。そのためか、弦のテンショ

ンも柔らか過ぎず硬過ぎず、チョーキングもできますし、ク

リーン・トーンでも音が寂しくなりません。この状態で絶妙

なバランスが取られていますから、このままライヴハウスで

演奏できますね。

 ピックアップには、P-90タイプが搭載されています。この

タイプのピックアップですと、ノイズの問題で敬遠してしま

うギタリストもいらっしゃるかもしれませんが、このギター

は驚くほどノイズがありません。オーバードライブをかなり

かけても、まったく気にならないほどでした。これなら、フ

ェイザー系のエフェクターをかけてもおもしろいでしょう。

 さらに驚いたのがフロント・ピックアップの音色です。と

てもこの薄いボディのギターから出ている音ではないですね。

まさにジャズ・ギターの音。この価格ですから、シンライン

を初めて持つ人にはもちろんお薦めですが、プロのプレイヤ

ーが弾いても充分に使えるモデルだと痛感しました。  ■

AT130Light Amber Natural

AT130Late '50s Burst

今回、特注したフロント・ポジション用の薄型ドッグイヤー・ピックアップ・カヴァー。厚みが異なるスペイサーが付属し、これらをカヴァーの下に挟み込むことにより、ピックアップ自体の高さもアジャストできる

オリジナルの長さに忠実に製造されたブランコ・テールピース。弦長、テンションがよりオリジナルのモデルに近づいた。ボディ材は、人気のアーチトップ・トリビュート専用特注合板"Rich Presence Plywood"

ジャズライフ2011年5月号掲載

ジャズライフ2010年12月号掲載

撮影:小貝和夫(楽器)

販売価格:¥129,800(税抜き)

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SPEC ●ピックアップ:2×P-90タイプ(シングルコイル) ●ネック:マホガニー1ピース●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ドット ●ブリッジ:GOTOH GE104B●ボディ:プライウッド(メイプル/スプルース) ●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late'50s Burst、Relic Cherry Red