t2k実験前置検出器 での ビーム試験と光学シミュレーション …...fgd2 tpc tpc...
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T2K実験前置検出器Super FGDでのビーム試験と光学シミュレーションによる粒子識別能力の評価
京都大学修士2回生 栗林 宗一郎
T2K実験• J-PARCからの大強度のニュートリノビームを、前置検出器および295 km離れたスーパーカミオカンデで測定する実験
• 現在T2K実験は特にニュートリノ振動におけるCP対称性の破れの発見を目指している
• ニュートリノ反応断面積の不定性が系統誤差の主要因の一つ →ニュートリノ反応の正確な理解が必要
T2K実験概要T2K実験概要
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• ニュートリノ生成標的から280m下流にあり、振動前のニュートリノの断面積とフラックスを測定するための検出器(スーパーカミオカンデと同じ方向にある検出器)
• FGD: 棒状のプラスチックシンチレーターを並べてビーム軸と垂直な平面状にxとy方向に交互に積層したニュートリノ反応点検出器 TPC: FGD等で起きたニュートリノ反応により生じた荷電粒子の識別や方向、運動量の精密測定を行うガス検出器
ND280 ND280(T2K前置検出器)
ND280 FGD
νTPC
FGD
3
ND280 改良の必要性
現状のND280には弱点が • 大角度の散乱に対して検出効率が低い (SKでは4πアクセプタンス)
• 低エネルギーの荷電粒子に対して検出効率 が低い
ND280 upgrade
現行のND280
大角度の散乱に対して 検出効率が低い
大角度に散乱された荷電粒子
前方に散乱された荷電粒子
ν
ν
ν
ν
ν
ν
FGD断面図
FGD1
ν
TPC
FGD2
TPCTPC
飛跡を再構成するには 複数のヒットが必要
4
ND280 upgrade従来の 検出器群
1 cm56 cm
184 cm192 cm
改良される 検出器群
TPC
TPC
Super FGD
• 3方向から穴を空けたキューブ型のプラスチックシンチレーター (1 cm3) 約200万個を積層
• 約6万本の波長変換ファイバーでその穴を通して3方向から読み出し、光検出器MPPCで信号を読み出す
->特徴;大きな標的サイズ(~2 t)、4πアクセプタンス、高い細分性
Super FGD
ND280 upgrade•新しい構造を持つ新型のプラスチックシンチレーター検出器Super FGDとその上下にHigh angle TPCの導入
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光量による粒子識別• ニュートリノと原子核の反応により様々な粒子が出てくる (例:CCQE反応 , CC1π反応 )
• これらの反応を識別する上でニュートリノ反応由来の粒子を識別する必要がある
• ニュートリノ反応由来の荷電粒子の一つの識別方法として、光量を用いる
• 各荷電粒子によるエネルギー損失、すなわち光量の違いにより粒子識別が可能 → 正確なエネルギー損失を測定するには一様かつ十分な光量が必要
ν + n → l + p ν + p → l + π + p
Super FGDの断面図
p?
l?6
ν
• 光量は様々な要因により、変化しうる (MPPCとファイバーでの光学的接続、ファイバーでの減衰等…)
• 今回の発表では、シンチレータの応答によるものについて
時間分解能• 時間分解能 … 各ヒットが閾値を超えた時間の分解能
• 中性子といった中性の粒子は電荷を持たないため、直接的なエネルギー損失はない → 中性子が反跳した荷電粒子(主に陽子)を検出する必要がある
• 中性子のエネルギーを測定する上で反跳した陽子のヒット時間を正確に測定する必要があるので、時間分解能が重要になりうる また、崩壊電子検出にも影響する
p
nν
l
t1t0
7
• 時間分解能は様々な過程により、決まる (シンチレータおよび波長変換ファイバーでの伝達、エレクトロニクでの遅延) →どういった要因で決まっているのかを明らかにする必要がある
Super FGDの断面図
研究目的• Super FGDにおいてニュートリノ反応由来の粒子を測定する上で、光量や時間分解能は重要
• 新しい形状のシンチレータであるため、光量や時間情報についての理解があまり得られていない
• ビーム試験および、光学シミュレーションからシンチレータの応答を理解する
• それらにより得られた結果が、シミュレーションにより十分な性能を有しているかどうか評価
8
陽電子ビーム試験(去年の発表)• ELPHで500 MeV/cの陽電子ビームを照射
• 光量のシンチレータ内の位置依存性を評価
ビームパイプ
下流 ホドスコープ
上流 ホドスコープ
MPPC インターフェース
検出器
ビームパイプ 54cm9 cm 1 cm
e+ 1.7mm×16本
上流 ホドスコープ
下流 ホドスコープ
500MeV
y-axis
z-axis
1 cm3シンチレータ
9
検出器シンチレーターキューブ単体
cube
• 1 cm×1 cm×1 cmのプラスチック シンチレーターキューブ
• 3方向に穴が空いていて、波長変換 ファイバーで3方向から読みだし、 MPPCで光検出をする
•ビーム軸な垂直な平面状に16×16 セル(垂直 成分と水平部分のシンチレーターが 重なってできる領域)を持っている
•各セルの大きさ •有効面 •ビームの飛跡を検出するために使う
ホドスコープ ホドスコープ
1.7 mm × 1.7 mm
26 mm × 26 mm
10
GEANT4を用いた光学シミュレーション
1e+ 500 MeV2
MPPC
45
3
波長変換ファイバー シンチレータ キューブ
1. 荷電粒子のエネルギー損失により、シンチレーション光が等方的に放出
2. シンチレータ内で減衰と壁面での反射
3. ファイバーに到達し、波長変換
4. ファイバー内で減衰しながらも、伝達
5. MPPCで検出
• 一連の過程を シミュレーション内に実装 • 測定と同様のセットアップ で比較
測定をより理解するために シミュレーションも行った
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飛跡検出と光量の計算方法• シンチレータの上下流に置かれたホドスコープにより、飛跡検出
• 光量 … 各ホドスコープの同一のセルでヒット(> 2.5 P.E.)があったイベントの光量分布をランダウ関数でフィットした際の、MPV(Most probable value)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 1000
10
20
30
40
50
hist_z_15_15hist_z_15_15Entries 500Mean 18.74Std Dev 6.657
hist_z_15_15あるチャンネルでの光量分布
Light yield (P.E.)
# of events
12
ランダウ関数で フィット
光量についての結果の比較
5
10
15
20
25
30
35
40
23.02 22.67 23.47 22.79 22.53 22.61
24.22 21.41 24.46 24.64 22.92 24.25
25.44 25.4 25.73 24.06 24.66 25.09
26.72 27.86 27.48 25.28 26.08 26.23
26.09 27.23 26.87 25.16 26.47 26.38 1.48
26.29 27.64 27.61 24.96 26.47 25.99
Ovserved light yield (p.e.) in each cell from X readout
5 6 7 8 9 10 11 12 13Cell# along X
5
6
7
8
9
10
11
12
13
Cel
l# a
long
Y
Ovserved light yield (p.e.) in each cell from X readout
5
10
15
20
25
30
35
40
19.64 20.88 21.65 22.68 22.74 22.83
19.8 19.55 22.33 22.88 23.86 23.6
20.65 21.4 22.95 23.08 24.58 23.75
21.09 21.17 22.14 22.72 23.25 22.91
19.22 19.77 20.23 20.95 22.66 21.59
20.83 20.49 22.12 21.92 23.93 22.5
Ovserved light yield (p.e.) in each cell from Y readout
5 6 7 8 9 10 11 12 13Cell# along X
5
6
7
8
9
10
11
12
13
Cel
l# a
long
Y
Ovserved light yield (p.e.) in each cell from Y readout
5
10
15
20
25
30
35
40
30.66 30.84 29.1 26.23 23.87 23.99
32.43 50.07 30.83 26.94 24.43 24.99
30.84 32.19 36.67 25.4 25.11 25.61
27.5 27.6 29.32 27.61 23.79 24.36
24.27 24.6 23.77 24.3 23.34 21.71
24.74 25.41 25.55 22.03 24.68 26.04
1.21 3.9
Ovserved light yield (p.e.) in each cell from Z readout
5 6 7 8 9 10 11 12 13Cell# along X
5
6
7
8
9
10
11
12
13
Cel
l# a
long
Y
Ovserved light yield (p.e.) in each cell from Z readout
5
10
15
20
25
30
35
29.9 30.6 28 26.1 22.1 24.2
30.8 33.4 28.5 26.1 21.8 24.1
28.2 28.6 26.9 25.4 21.4 24.2
26.3 26.1 25.7 24.7 22 23.8
22.2 22.3 22.2 21.7 18.4 20.6
24.3 24.1 24.4 23.4 20.8 22.6
Light yield (P.E.) for each cell
5− 4− 3− 2− 1− 0 1 2 3 4 5beam position along X (mm)
5−
4−
3−
2−
1−
0
1
2
3
4
5
beam
pos
ition
alo
ng Y
(mm
)
Light yield (P.E.) for each cell
5
10
15
20
25
30
35
23.2 23.3 24 24.3 21.5 23.7
23.6 21.8 24.6 24.4 21.4 24.3
24.8 25.6 25.3 25.5 22.3 24.8
26.3 26.5 26.6 26.6 23.3 26
24.9 26 26.2 25.5 22.2 24.9
27.7 27.7 27.4 27.6 23.8 26.4
Light yield (P.E.) for each cell
5− 4− 3− 2− 1− 0 1 2 3 4 5beam position along X (mm)
5−
4−
3−
2−
1−
0
1
2
3
4
5
beam
pos
ition
alo
ng Y
(mm
)
Light yield (P.E.) for each cell
5
10
15
20
25
30
35
22.9 24.3 24.8 26.4 25 27.2
22.4 22.1 25.4 26.6 25.2 28
23.9 24.7 25.3 26.1 25.4 27.7
24 24.7 25.2 26.3 25.6 27.8
21.3 21.6 22.6 23.5 22.3 23.6
23.7 24 24.4 26 24.5 26.5
Light yield (P.E.) for each cell
5− 4− 3− 2− 1− 0 1 2 3 4 5beam position along X (mm)
5−
4−
3−
2−
1−
0
1
2
3
4
5
beam
pos
ition
alo
ng Y
(mm
)
Light yield (P.E.) for each cell
シミュレーション測定
x軸 y軸 z軸平均 25.1 21.9 27.2RMS 1.5 1.3 5.0RMS/平均 7% 7% 18%
x軸 y軸 z軸平均 24.8 24.9 24.9RMS 1.7 1.7 3.3RMS/平均 6.9%7.0% 13%
• シミュレーションと測定で同じような傾向→シミュレーションにより光学的振る舞いをよく理解できている
• z軸の結果についてのみ違い、→ファイバーでのチェレンコフ光やシンチレーション光?
x軸での光量分布 x軸での光量分布y軸での光量分布
z軸での光量分布
y軸での光量分布
z軸での光量分布
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光量の位置依存性(P.E.) 光量の位置依存性(P.E.)
粒子識別への影響•本研究により得た光量への影響を検出器シミュレーションに実装
• 高い運動量を持った荷電粒子はTPCにより高い精度で粒子識別されるため、検出器内で停止するような低運動量の陽子とπ粒子を用いて評価
• 光量を十分にあるかも評価するために光量の統計的なふらつきあるなしで比較 →いずれの場合も混入率が0.4%程度と ほとんど変化がなく十分かつ一様な 光量が得られている
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 Light yield (P.E.)/Track length (cm)
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
# o
f eve
nts
Light yield (P.E.)/track length (cm) distributionproton
pion
proton expected value
pion expected value
点線…光量の統計的なふらつきを考慮していない場合 実線…光量の統計的なふらつきを考慮している場合
飛程が2 cmの場合
陽子
π粒子
14
1e+ 500 MeV2
MPPC
45
3
波長変換ファイバー シンチレータ キューブ
時間分解能についての結果• 時間分解能において最も主要な項は波長変換時間であると考えられている ~ 12 nsec程度 (>> シンチレーション時間 O(1) nsec)
• 陽子ビームを用いた測定結果からは、光量に関係なく、0.95 nsec、 宇宙線試験からも 0.6 ~ 1.0 nsec →幾ばくかおかしな点も存在しており、より詳細な検証を必要としている (時間分解能 ∝ ?)
• 光学シミュレーションからも計算 0.8 nsec程度 →エレクトロニクスでの遅延を考慮していないことを考えると無矛盾な結果 →今後この時間分解能が十分か議論していく →さらに、中性子ビームテストとの結果を比較することで、光量や閾値への依存性等について、より深い理解が得られる可能性
1/ light yield
6 8 10 12 14 16 180
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
220
240
htiming_z[15][15]htiming_z[15][15]Entries 300Mean 11.37Std Dev 0.6657
htiming_z[15][15]
標準偏差
最初の光子の到達時間(nsec)
シミュレーションでの 時間分布
15
# of events
波長変換過程
結論および今後の展望• 光量および時間分解能について陽電子ビームテストおよび光学シミュレーションから評価した
• 粒子識別という観点において、光量が十分かつ一様であることを確認した →その他光量に関連する検出器部分のデザイン決定に反映させていく
• 時間分解能については、今後中性子ビームテストとの比較等により理解を進めていく →エレクトロニクス等での応答も含めてシミュレーション内に実装し、解析ツール開発に役立てていく
16
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