Title 外科領域における Enzymotherapy Lysozyme の外科的応用第1報

Author(s) 里村, 紀作; 横田, 通夫; 白羽, 誠

Citation 日本外科宝函 (1965), 34(4): 1076-1091

Issue Date 1965-07-01

URL http://hdl.handle.net/2433/206504

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

1076 日本外科宝函第3＂！巻第 4号

臨 床

外科領域における Enzymotherapy

Lysozymeの外科的応用

前 1報

京都大挙医学部外科学教室第2講座（指導：木村忠司教授）

里村紀｛乍・横田通夫・白羽 誠

〔原稿受付昭和40年 5月IO日］

Clinical Study of Lysozyme in Surgery

hy

K1sAKU SATOMURA, MICHIO YOKOTA and SEr SHJRAHA

From the 2nd Surgical Division, School of Medicine Kyot口 University.

(Director : Prof. Dr. CHUJI KIMURA)

Clinical investigations to elucidate the effect of lysozyme chloride which was extracted

from egg white were carried out on 53 surgical patients. The enzyme was administered

by mouth or intramuscularly in daily doses of from 30mg to 300mg.

The following effects were observed :

1) Preventive and curative effects on the respiratory infections, especially in infants

with congenital heart disease.

2) Improvement of digestive dysfunction due to the abdominal surgery.

3) Remission of unfavorable symptoms of the malignant tumor such as fever and

pain.

4) Preventive effects on the surgical shock as well as on the surgical infections.

Side-effect of the enzyme was observed only in :one case in this seri田； toxicodermia

which disappeared five days after discontinuation the therapy with the enzyme developed

in a 60 year-old male suffering from stomach cancer.

I.緒 言

細菌溶解酵素として L川町mei土，ペニシリンの発

見に先立ってF 1922年 Alexander Flemin宮］）により卵

蛋白から分離された．

1937年には E P. Abraham らによって結晶として

取り出されている．その後］川｜｜トら及び R.E. Can-

fieJdZ＞の研究の結果p 同 lのような今次構造が与えら

れている．

Ly>ozymeは卵蛋白のみでなく y 生体内に広く分布

されており p 動物の種類によって多少の差がそのアミ

ノ酸構成にあることが， Jollesの研究で明らかにされ

ている．しかし N－末端及びc－末端はそれぞれ lysine

及び leucineであることは変わりがない．

L、、｛内・meの物理化学的性質は，白色無臭，甘味を

有する水溶性の結晶状の粉末であってP 分子量15000

程度の Polypeptideである．生化予の研究分野ではp

つとに細胞膜を破壊する｜｜的で屡々利用されて来た．

外科官i'!J均：おける E1＂＇ 川氏lwr.11巧 L¥'sozymt・の外科的応用

図 1 The amino acid sequence of egg "'hite I）・同zyme.

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1077

一方p 臨床的応用はイ タリヤの医学者逮を中心とし

て検討され， 1959年以来3固に亘って，この酵素に関

する シンポジウム，“冷lll[J＜吋11111 lnternazionale sul Li-

sozima di Fleming＂が イタリヤにおいて聞かれている．

しかしし、＞ozymeの作用機序の詳細についてはいまだ

明らかでない．余りにも多方面に亘って効果が認灼ら

れつつあることp 及び種々の蛋自体から分縫され， そ

れぞれ多少異なった酵素活性を有する事実が，その作

いは特'1：な補体を要するかp 又病的な状態で始めて効

果を発揮するものであるのか明らかにされるべきであ

ろう．もと もと生体内に広〈分布されている酵素であ

るから，外来性の類似作用を有する酵素が導入された

場合，単l二生理的に存在するものの作用を場強するだ

けか，あるいは異なった効果を呈するものかといった

疑問も起ってくる．

用機序解明を困難にしている．

HU1卜＇ ；；，の諸作用が認められている．

I I 抗炎症，抗浮腫作用

2）抗菌作用

3〕 抗ウィルス作用

-1) パイロジェン不活性作用

5） 止 JTil作用

どの項闘を取り上げて L外F、川［J；々 において興味をひ

くものであるがp このように多方面にわたって作用す

ると汚えられる Lysozymeの臨床効果を追究するにあ

たってはp 効果半I］定が1'.'[cfi：に行なわれねばならない．

生理的t,t: ('I で·，：~；に活性を示すものであるのかp ある

実際に臨床上使用し てp どの程度前述の作用が認め

られるものか，どんな副作用を招来するか，術前術後

の患者を対照として検討した．

II.臨床例

投与量及び投与方法

成人にit I日90rng～300田唱をp 幼児に対しては30～

60rng，乳児には30rngをp 最低3日聞からp 最高33日間

に亘IJ経口的あるいは筋肉注射の形で投与した．乳児

には怜 代にしてミルクに混入して与えたが，そのq1れ、

甘味は経口投与に有利である．五千口投与と非経口的投

与に主があるか否かは，酵素療法では倹討する必要が

ある．

1078 日本外科宝函司＇＼ 31を第4号

（経口投与には結品性卵白塩化 L＇.＂＂リ11ぞ「 N~1川 me

錠〕を，筋肉注射は卵白塩化 Ly"'"・meの」%ゲルコ

ーし 1 %エピロカイン溶液を用いた．いづれもエー

ザイ株式会社の提供をうけた． 後者は， 重量比 11

100,000の卵白アルブミンを含有するにすぎなし、）．

1) 筑幼児心臓手術P 特に低体温麻酔下関心術の術

前後処置としての使用例

現在心臓外科の一課題である乳幼児期における関心

術について， 教室の日笠3）らが提唱して来た低体温法

を応用しp i～9 kgの体重を有する先天性心疾患7例

の手術経験を有する．更に生後3ヵ月及び10ヵ月の乳

児2例の動脈管開存症の根治手術を行なった．その概

同時は表1に示しているが，前者の中6例と後者の 2例

に Lysczymeを投与し，効果が認められた．一般に先

尺性心岐忠、をもった乳児は呼吸器感染を来し易しか

っ一度擢患すると重篤な呼吸障害を惹起する．この合

併症が屡々患児の両親をして根治手術の決心をうなが

す原因となっている．従って心疾患児が我々外科医を

訪つれる時Lt，程度に軽重の差こそあれ，ほぼその全

例は呼吸器感染の症状を呈している．この問題を克服

しない限り，手術を決心しても状態の改善ーを待つため

労らに時間を経過させるだけである．かかる悪循環を

断ちp 手術を成功させる第一歩としてp 呼吸器感染を

コントロールする必要がある. {J民休温麻酔法自体，術

表 1 乳 幼 児 心 臓手術例

＼り ザ性 l病名｜体重！議｜手術｜暴露［島霊 IlL~styxm~ I ：品質ψ 日（ー ー ..J＿~g」染一」 一」時間｜ ［

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3 T 討 4 I♀ VSD I 4.01掛｜パッチ縫着 29! 22.0 30mg×3 ｜ （ー）

Y.T.' 18 I <!; VSD ! 7訓柵 l // 23 I 22.3 30 10 I （~~f 1.o×10 mgx 0.2 x8

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よ，＂口ι、

5 s .:¥. 6 合 Fallot I 6.01 - ，， 54 20.2 い（M.C.1.0. 5 I治C恥1.0.2 x 10

6 O.H.1 51♀ VSD 日。O't+ // 45 20.0 30mg x IO （ー） 死亡関存孔残仔

DA I 9.oj件 30mg x 10 (M.C. 0.4 x 4 ｝台7 i M.H.! 10 I ♀ 結 査を ｜

8 T.Y.1 3 I合 PDA LO！桝 ，， 30mg×10 i (C.恥1.0.4 x 4 治、、LR. 0.4×2

* M.C. : Mycillin (Penicillin 20 x l04u +Streptomycin 0.25g/g)

l.S. : Ilosone

S1日： Sigmamycin

C.M. : Chloromycetm

表 2 Pre-and Postoperative Treatment of Infant for H凹 rtSurgery

I. Preoperative Treatment

I. ~川；1 bean Lecithin : :2～3g/kg/day l 2. Vitamin E : 20～30111巨／kg/day f 7～1.1 cl川市 priorto op.

3し＇＂＂vme: 30mg/day )

,I. c吋ilanid: Digitalizing do：明： 0.06～0.07mg/kg/36hrs.

Maintenance 《k"e: Digitalizing dose x 71 /21 hrs. II. p,"t＇’per;itive Treatment

!. Penicillin : 20,000u/kg/day

2. Streptomycin ：コ：＞mg/kg/d‘＂Y

3. IλH川 Ill!＂・： iom日／d川

l. Cedilanid : i'vb1nten;incr・ d1"e

.). Parenteral Fluid Tlicr;明： l:i～50cc/kg/21hr,.

rShりuld 快 cliscontinued 川川•n as pりssible)

V卜朴lii'iJ戒における 1・:11ハ111<1¥lwr;qハL""'YllWの外科的応用 1079

後呼吸器感染を来すおそれが十分あり，更に術中心細 ておけば十分子術に耐え得ろ．

動といった危険がひそんで、いる．日笠らは VitaminE 経口的に Lv河川・meを投与するとp 消化器の機能に

及び不可宍脂酸を術前に投与することp 又抗生物質の 好影響を及ぼしF 食慾の先進を来す．

併用によりある程度目的を達して来た．更にLysozyme 従って低体温麻酔による関心術を行なった患者で

を追加投与することによって一層効果をあげ得たと考 L，遅くとも術後24時間で食餌の経口投与が可能とな

えられる．現在我々が行なっている術前後処置は表2 払長時間経静脈輸液をおこなう必要がなしこれに

に示す如くである．術前これらの処置で一応平熱を持 よる危険が避けられる．更に乳幼児は屡々疫の略出を

続し，呼吸器感染の認められなくなった時期を選んで せず膜下して， 消化管障害を惹起する，h これも

手術を行なうのを原則としているがy 多少レ線検査で Lv州叫・rnぞの粁口投与によって防止し得るようである．

肺に陰影を認める程度であっても，上記術前処置をし 図2に示すのは，関心術唐児術前の胸部レ線写点で

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図 2

1080 日本外科宝函第34巻第l号

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図 3a 症例＼o.5 6 month-old V, S. D. + P. S. (Fallot)

Openrheart surgery under hyp口thermia(23.8℃）

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外科領域における E1川 111oth山 lハL1・-.01.)m の外科的応用

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図4 10 month-old ♀ ヘメ D Open heart向 1r阿川 underlwpotherm旧（：：＇.： LC)C'

1081

1082 日本外科宝函 4~3"1 t会第 l 号

3 表

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図5 症例＼o.9 l-year-and-5-month－＜前Iλtrh1a日ni+ Megacolon

外科li\1 .f： .~における ！日1ハ l刊，t lwrap; L）明zymeの外科的応用 1083

あるがp メ N.例を向、いて軽度， 中等；度気管支炎の像

が認められゐ．図3に代表的な術後経過を示している

が＇ L川内me非投与例（図 4）と比蚊すると， その

りょIJ果がうかがわれる．

症例＼o.8 i士， l.Okgの体重を合して生後3ヵ月の男

子で， 動脈管閲存症の根治手術をiJなった例である

が，術前 1週間に気管支肺炎のため ）(I心こ及ぶ高熱を

出していた．この症例でも前述の~,f前処置によって十

分手術に耐えp 治癒、せしめ得た．

2) 小児手術p 特に内臓手術例に対する使用例

鎖紅および Hirschsprung氏病の鹿児は， 手術；）；fl.11

似的に fjなわれてもP 術後なおば々排便異常を訴える

ものであってF ｛更の性状（，－－＼ど代性fiJ.!J'f'..1こより代表され

るよ うに異常なことが多い．レ線検査で腸管の略々正

常な陰影を認めながらかかる主主訴が洩る． このような

症例に対してP その腸内紛l的；：·~の iJf化，正常化を意図

して Lysozymeを投与してみた．

鎖紅及び Hir町 hsprung氏病それぞれ4例に対してp

経口的に Ly＞＜川n背を投与した． 1,・1＇.例 .＼o.I lの l例を

除きp 他の全例にp まづ食慾の増進が認められ， 次い

で似通の正常化が認められた． 下年1jfiJ~ （ t有形（iJ.!1こ，便

秘は逆に軟便へと改善された．この効果ll:，主として

腸内細繭叢への作用によるものと行えられあが，腸管

上皮細胞への作用も考えられん

症例＼o.9は 1才 5h月の男児． λt問、iaani及び

Meg~co lon の患児で， メ ’／状主，＇； 1: 1,,＼に造設していた人工

虹門から結腸の脱出を来し，更に改めて造設 した回盲

部人工紅門からも回腸脱を ~＇ し，側めて発育が惑かった．

前3回の手術創感染のためか 37.2～39.8cの発熱を

持続しており，Kanamycin, Chi日rampl淀川cholの投与

も無効であった．人工紅門の閉鎖とp 会陰部へ横行結

Pt＼の号｜抜き を行ないp E門成形術を一次的に完成し

Tこ．

本例では~／fr後 My仁 illin I cc／日とし、刈叫mechloride

30rng／日を 9日間に亘り制一用P 殆ど fド~j~ll 二 Uj/i;lL, 1兇

通 I,f,f'j後第3日から規則正しくみら1Lるようになっ

fこ．

一般に幼児手術後はp 抗生物質の使用によって一応

細雨感染は抑制し得て も，不定型な1UAを来すこと？・

多く p 父小llJJの原因で食~不娠を訴えP 経口奴食を忌

避する場合が多い．

症例：＼... 17はこのよう な l例で， lieusの原因と なっ

た infectt-durnchal tわ tの制 I＇，， 腸管癒着の剥既を行な

い，術後7日にはp 明らかに腸管の正常な通過を認め

ていたにも拘わらずp 給口摂食不能であった 3才の女

児の例であ乙． 術後下降を 辿っていた白血球数も

いw山 Illeの使用と共に，一段と正常値に近づき， 下

熱および著明な食慾充進を認、灼ている．

症例＼o.19は，8才の男児．手術診断は • ..\pp~nd1nt1、

+Ile』tislt'rminalis で λI》pend虻I•Hll) を行なった．術

前から引き続き術後も38～39。Cの発熱があったがp 血

清学的検査によって rheumaticfeverの合併が判明し

た．テトラサイクリ ン及びクロラムフェニコールを使

用していたが， 図7に示すよ うにい、oz;rnc・ chloride

印田g／日の追加により， その使用 3日後には平熱にな

っている．この症例では発熱以外の症状は訴え られて

いなかった〉勺 下熱と共に一般状t@.1;11げらかに改善さ

れている．

以上のように小児外科領域においてはp ① w~管系

に対してその機能を正常化させP ② mild な！必和こ対

し効果があり，更に抗生物質との併用により，相乗的

な効果を表わし3 ③発熱因子に対して作用すること

がp LY＂＇勾 ・meに存すると考えられる． これらの諾効

果は成人の場合よりも著明であることが注目される点

である．

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1084

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日本外科宝函第34巻第ーl号

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図 7 症例＼o.19 8 year-old

Appendicitis

Ileitis terminahs

Rheumatic Fever

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lミecurrenceof stomach cancer, Carc in<>'i＇. ’ l'<>t , il 山町t r~山川口

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31 悪性腫副首手術患者に対する応用

悪性』重湯に対する Ly回，zymeの直接効果については2,3の報

告がみられるが，未だ効果有無を云々する段階ではない．我々

も表一lに示す如く，胃癌5例， C:ircinosis -1例，乳癌2例，結

腸癌4例p その他4例，合計19例に対して投与したがp その意

図したものは，

ill 悪性1重湯根治手術の侵襲に対する抵抗性の増強

12) 手術による感染の防止

(3) 抗悪性l重湯剤或は放射線療法による障害の防止及び予防

等を考えて行なった．

』重湯から遊離し，新し〈転移を生じようとするi重湯細胞に対

する L、メ〈〉χ

Lysozymeの作用如l可は非常に興味を抱虫孟せる問題であるが今

f炎の詳車凹tJ.検討をf失つ必、要がある．

手術侵襲に対する抵抗力地強p 感染の防止という点から

すれば，一般的な手術の場合と同僚p 発熱抑制，一般状態回復

の促進等から認められるようにかなり効果がある．悪性種場に

夫Iする手術であったからといって，別に異なった点は認められ

なかった．

(2) 放射線療法p 抗蓮疹剤投与による副作用に対しては，白

血球数の回復，下熱効果p 一般状態回復など著明なものがあっ

た．

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症例i¥'o.31は胃癌再発による腹腔内の広汎な転移を認めたH

才の男子の例でP 胃全易リ， E平易H，横行結腸切除，回腸割1分切除

を行ない，図に示す如く WT後10日間38～ 39℃の発熱p 全身衰弱

を来していた．広汎な手術侵製と同時に行なわれた抗壇場剤の

投与によるものと考えられp L、＂zyme JOOmg／日の投与（筋肉

注射）を行なったところ， 4～6日後には平熱となり，経口摂

食可能， H j事；＇； 1 11，~IこY，＇.；，たした人工紅門からも，各々有形の使を

排rt止するようになった．

症例？い 30は24才の男子． リンパ腺転移を認めた胃癌（未分

化癌）に対し，胃切除術を行なし、， 1週間後再開腹の下に周囲

リン パ腺に向けて仁川島ll 20001のけne,Jiol照射を行なった．照

射後著~！~な白血球数の減少（2000）と凶 9 に示すよ う に発熱を

,i2.める よう になったがp Ly"izy111cと Leucuvarineの併用によ

って，白血球は5300に回復し， うL平熱となった．一般状態は食

慾の繕進と共に急激に改善されて来た．

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法による抗腫f蕩剤の infusio】n を行なうと JI＜；こ， Ly川 zymeを

筋注した症例である．

有I刊IJ.1¥.11・38は食道務の頭部リン ペ腺転彬によって腕神経叢へ

の圧迫， l•../ iirJのための強度の神経痛を訴えて来院した68才の男

で，11＇（ちに lλ川川111e300mg／日を 31叫に分けて筋肉；L1Hをifな

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与の方が優っている．

電解質パランスが正常に似たれており，選篤な感染

症の合併しない限り， L、引mmeの経口投与後24～48

時間にはほぼ正常な腸機能の回f更がみられた．

止血作用に関する po、iti¥Tな効果は不明であった

がp 栓球数は図13に示すように15万前後の値を中心と

して，｛民いものは向くなり，高いものは低くなる傾向

が認められた．

51 副作用について

全例中， 疲伊f¥u.28 (60才男， Lysozyme!OOmg／日

x 15日使用）に Toxicodermyをす〈したのみて’あった．

投与中止後5日でほぼ消退した． ’抗，，仰IJ:'¥u.20 (I才

7ヵ月女児， I」，.，z,・me30mg／日× 10日間使用）は経口

的投与を拒み，非経口的投与をとらざるを得なかった

1伊Iである．

III.考按及び結語

Lrnzymeの外科領域における応用l士， M ぐampani

及び P.( ¥1rtinovis6>, （＂吋 Donati7l.. ¥ Talio, E. Poli-

うと共に，右腕動脈からシリコンチューブを挿人，

mfu,1けn(Methotrexateを用いた）を開始したところ，

疹痛lt急j放に緩徐されI 3日後にはほぼ自覚症状がな

くなった． しかし infusion開始後9日にしてP 脳血管

栓塞症のため死の転機をとった．

症例！＼o. 39~ I，お卵巣にl京発し，腹腔全域を充満し

ていた巨大な Embryonalcarcinomaの刻HHMを，十品｛（

せる骨聖書佐内腫務組織に対し，（；0so照射， .＼ul凶 collりid

注入，抗腫蕩剤］の投与等を行なった13才の女子の例で

あら これらの療法により全身衰弱強＜， 38℃T'~＇度の

発熱が持続した．本例に対する L＇哨町meの効果(i:症

伊rrN11.38に比し低かった．即ち軽度下熱と疹痛緩和を

みたのみでp 一般状態の改善は認められなかった．

L、川z,・me の悪性腫疹に対する効果を期待するたら

I I，その投与方法を十分検討する必要請：あろう ． え 1~.

記2例を比較すると，量的な問題を考慮すべきである

と考えられる．

症例代o.. 10～42 ! t高度な手術侵鑓に対する Ly叩－

z¥・meの予防的効果を期待して投与した例である． い

づれもE筆頭十二指腸切除或は更に結腸有半切除を加え

た高度な手術侵襲に対し十分耐えj~｝，しかも術後は全

く無熱に経過している．この 3例には術前 5日間， I

日100略宛筋注の砲で投与， 術後は 1～5日間に亘っ

て同量を同方法で投与した．

J，じ10!'¥ ... ~ 1. 42の術後経過は図10,l lに示している．

症例No.42は47才の女． 上行結腸に原発した腺癌が診

断のつかないまま，一年有ゴ？？に亘って放置され，その

間，癌変性を来した腸壁の穿孔による股疹の形成を来

し3 手術時には，胃，肝＇ IJc事に転移を認めた．非常に

広汎な廓清術を行なったが，その経過は全く %:i.;lhj（（も

のであった．

4〕 一般手術例

友6に見られるように，胃潰場3例，胆右症3例，

lieus症状3例P その他2例， 合計11例に使用した．

これらの中特に効果の認められたのは， lieus症状で手

術し， ．術後腸管機能の悪かった例に fl）~用し た 時であ

る．

これらlt，いづれも腸嬬動の回復が十分でなかった

が，L、州勾meの経口投与が行なわれた. Iλ州zymeの

；円'It:が骸門：に於て表われること， 及び酸に対する溶解

度の高いことから，かかる状態であっても，胃液の分

i·~·.7＇停止していない限り，経口投与が可能と考えたか

らである． 又小児腹部手術患者の経験からしても，腸

管機能改F：ーの目的には，非経口的投与よりも，経円投

--1090 日本外科宝函 ；X¥34巻第4号

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図14 Influence on Leukぽ vteCount

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chette8＞らに よって検討されて来た．彼等は特に手術忠

行l：使用して，その抗炎症効果， il:Ji11作用，抗ショ ア

ク作用を認めている．

Ly~口ヌyrne は単に溶菌作用を有するだけでなく， ね1

網内皮系の賦活等の作用によってP 抗商作用を表わす

ことが明らかにされつつある..!!PちP 一方では病源休

に作用し，他方生休の防禦力を昂める作用があるとぢ

えられている． これらの効果から，感q~，特に外朴f

術時における 2次的な！感染の予防l.f<_ぴ，t；僚に応用しnることは容易に考えられる．我々が二の目的で L＇・＂ト

zymeの投与を行なった症例は，20例であるが， その

全例術後感~（土認めていない．

しかしい.＂川 meの溶繭作用lt，ムコ多精類が構成

要員である．ある種の細菌細胞膜に作用して，これを

加水分解するためであることが知られていら． 従っ

てP 繭磁如何によってはiji.に部分的にしか細胞膜が破

壕されず，単独投与のみの効果は十分なものでないと

考えられる．事実中沢らの研允によればp ある種のグ

ラム陽性繭にのみ強い抗蘭作用が認められている．

Penicillin C或は合成 E’enicillin剤と併用する時は顕著

な相乗作用を示し， えこれらに対する i耐性菌で もp

Ly＂＇勾 mtとの併用によって感受性が 増加するという

報告は， L,·,ozyme の （1！~ 川法に 〆j~ I旬、を与える ものであ

る． .ffl＇例：＼... 45, 49の如く明らかに股仰を形成してい

た例では無効であった．膿疹のよう l こ massive な ！·~＇4''.巣のあるJt;i{.1，その局所に付しては更に尚治lf!JcIλー

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か検討を要する．しかし上記2例でも全身状態は良好

に維持された点考慮すべきである．

全症例53例の中，術前｛をに亘って使用した26例では

無効3例， 一方術後のみ使用した27例中無効10例であ

った．これらの使用目的は各例多少異なるが，術前か

ら使用した方が明らかに有効であった事実は，抗蘭，

抗感染といった面でもあてはまるものであろう．

術前は単独投与を行ないp 術後，或は感染症に対し

てはい河川町と抗生物質との併用を行なうべきであ

る．我々は Lysozymeと併用した抗生物質の量は減量

していなかが3 全体として投与期間は2～3日短縮し

ている．これは無熱状態を維持したためでp 感染の有

無に拘わらず抗パイロジェン効果が Ly>o7¥・meに認め

られた．白血球数は炎症性tJ~ν官、で噌多しているもので

は減少を，抗騒疹朔l等の使用のため減少していた例で

は増多し，正常範聞に復せしめる効果があった．

FlemingによってP Lysozymeの発見の端緒となっ

た輿汗中の本隊素の存11という事実から，呼吸器感染

への応用がまづ第 lに取り上げられた．この効果は低

( j~ j ,',i\. げ車両if；，－，·例で十分立証されたものと考えられる．次

に11),m・l対車Ill附JI~に対する作用U:, '1::(1＜に対し有利に働

くことが認められた．この両効果は特に小児外科領域

への応用が期待し得るものである．

悪性腫携に対する［直接作用はなお不明であるが，そ

の細胞膜透過性に影響をl}H す可能性が考えられるな

外科日t'！岐における Enzy1notherapy L＼＇討uzvrneの外科的応用 1091

ら ， 抗麗疹剤との併用を，特に J ,,)J i) j ，、~ ！ 向血管よ り カテ

ーテル法によって行ない得るであろ う この問題につ

いて検討を行なっている．

し、叫、me自体抗原性を有するものか否かという問

題がp 特に非経口的に投与する場合起ってれるが，副

作用の項で述べた如し l伺lにのみ！乞湖町1＇状 j；認めら

れたにすぎタずP この例もアレルギー性のむのとは断定

し難い．更に多数の臨床，実験例を終て解明されるべ

きである． L、、nz¥"lne自体 complementの性質を有す

る点p むしろ抗原抗体反応を抑制すみと与えられる．

ただその sourceに混在する Albumine との分離が不

十分であると， Albu mineによる感作が考えられる．

しかしp 我々が使用した筋注用のし、川れmeは重量比

にして， 10万分の 1の λIbu mine しか含有しておら

ず， 臨床的にまず問題はなかったものと思わtLる．

文 献

1) Fleming主.On a remarkable hactPri< ii、ticele-

ment found in ti同＂＂＇ and、守口ぞtion.Pmc R。、．内定， 93: 306. 1922.

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del L1‘、

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