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TPPと農業、医療への影響 平成25年2月5日 TPP研修会 1.TPP(環太平洋連携協定)とは 2.農政における構造改革路線とTPP 3.TPPと国民皆保険制度の崩壊 大木島

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TPPと農業、医療への影響

平成25年2月5日TPP研修会

1.TPP(環太平洋連携協定)とは2.農政における構造改革路線とTPP3.TPPと国民皆保険制度の崩壊

大木島 真

2

TPPとは

1.TPPの背景 アジアの台頭 貿易立国から貿易投資立国へ2.TPP交渉の経過とWTOとの違い3.21分野の交渉内容4.アメリカとの事前交渉5.投資のルール化 ISD6.TPP参加を巡る論点7.TPPは日米構造協議の集大成

国際収支の状況国際収支の状況

-50,000

0

50,000

100,000

150,000

200,000

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300,000

1985C.Y.

1987C.Y.

1989C.Y.

1991C.Y.

1993C.Y.

1995C.Y.

1997C.Y.

1999C.Y.

2001C.Y.

2003C.Y.

2005C.Y.

2007C.Y.

2009C.Y.

2011C.Y.

億円

経常収支

貿易サービス収支

所得収支

3

財務省

貿易収支は縮小し、所得収支(海外投資等)が拡大

貿易立国 貿易投資立国

4

130123 第3回経済再生本部

三井物産 アジアの病院に投資 5

「自分たちの強みを生かせるなら、卸売業にとどまらず自らメーカーになるべきだ」。昨夏、飲料大手メルシャンの医薬部門を約100億円で買収した三井物産。案件を陣頭指揮したのは、国内製薬大手から05年に転職した鈴木正暢(49)だ。

鈴木は国内外の製薬大手と幅広い関係を持つ商社の機能に着目。メルシャンの発酵技術と商社の情報網を駆使すれば、医薬品原料の製造受託事業を大きく伸ばせると判断し、経営陣の了承を取り付けた。自ら社長に就いた子会社には今年1月、東レが2割出資。中長期的に売上高100億円を目指し世界に挑む。医薬品製造だけではない。今年1月には、昨年900億円で3割

出資したアジア最大の病院グループ「IHH」を通じ、トルコの病院最大手を買収。人口増や高齢化でアジアなど新興国には年80兆円の医療産業の市場があるとされ、さらに拡大が続く。病院の新設や周辺ビジネスの展開で「年40億~50億円の利益貢

献」(幹部)を見込む。

三井物産が出資先を通して傘下に収めたトルコの病院

120404 日経

北米の養豚場に熱い視線!商社が“ブタ確保”に動く 6

商社が相次いで投資熱を高めている分野がある。“食肉”だ。昨年、三菱商事は伊藤ハムや米久との合弁を通じて中国の食料最大手COFCOと提携、2017年までに約1250億円を投じて生産拠点を倍以上に増やす計画だ。伊藤忠商事も今年1月、カナダ最大規模の養豚・豚肉生産会社HyLifeの株式33.4%を約50億円で取得、他商社も北米の養豚場への投資などが決まりそう。いずれも巨大市場と化す中国の胃袋がターゲットである。それもそのはず。例えば、豚肉は世界の年間消費量が1億トンと最も多い肉だが、中国だけで5000万トンを占める。伊藤忠商事の萩原武畜産部長は、「豚肉はいかに中国を中心としたアジ

アに売っていくかが勝負。日系だけでなく、世界中の企業が販売力強化のためにしのぎを削っている」と明かす。さらに、食肉分野の強化には別の狙いもある。商社自らが養豚場など生産拠点を確保することで、自社でトレードしているトウモロコシなど、飼料用穀物の安定的な納入先を同時に獲得することができるのだ。実は、豚肉を1キログラム生産するためには約7キログラムの飼料用穀物が必要といわれ、世

界の食肉需要が大きくなるにつれて、当然エサとなる穀物市場も急拡大している。とはいえ、商社にとってはトレーディングだけでは利幅は増えない。また、激しさを増す競争や、天候などのリスクもある。そうしたものを相殺する一つの手段として目を付けたのが“畜産”とい

うわけだ。高まる需要で収益を伸ばしながら、同時にリスクヘッジを図ろうという、いかにも商社らしいビジネスといえる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)

130131 ダイヤモンドオンライン

中国との貿易が拡大するアメリカ貿易日本は、変わらず4番の地位

7

【輸出】 【輸入】

http://utsubonews.blogspot.com/2011/02/blog-post_6092.html

アメリカへの中国からの輸入額は、この20年間で爆破的に増加し、1990年には8位であったが、2010年にはカナダを抜いて第一となった。輸出先でも、18位から3位まで上昇している。日本は、1990年・2000年では2位であったが、2010年にはメキシコにも抜かれ第4位

中国

日本

中国

日本

1990年2000年

1990年

2000年

2010年

2010年

21世紀 世界の貿易地図は書き換えられた 8

日米貿易摩擦

対中国戦略が焦点

2013.01.09内閣府 経済の現状

国際収支のランキング 2010年度アメリカは貿易立国から知財・特許立国に

9

輸出額順位

サービス収入額

順位

内特許収益順位

所得収入順位

米国 1,277,580 2 544,357 1 105,583 1 663,241 1

英国 405,290 10 237,943 2 9,676 7 255,424 2

ドイツ 1,267,653 3 237,574 3 14,384 3 230,536 3

日本 769,838 4 141,457 6 26,680 2 173,677 5

中国 1,578,270 1 171,203 4 830 18 144,622 6

データ出展 グローバルノート

国連の推計によれば、2011年10月末で世界人口が70

億人を突破した。すでに飢餓人口は10億人弱と世界人口の7分の1に及んでいる。飽食の時代を経験しているのは、世界人口の2割に当たる先進国での話に過ぎない。

120118 ダイヤモンドオンライン 資源・食料問題研究所代表 柴田明夫

ガットUR農業交渉コメ関税化

WTO農業交渉

ガット東京ラウンド

食糧危機

日米農業交渉牛肉・オレンジ

食糧危機

10

在庫率が15%=2ヶ月を切ると食料危機

米国農家は好景気自由化の論議をしている時ではない

TPP協定参加を巡る経過 11

2006.05 P4発行環太平洋背略的経済連携協定、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリ4カ国の

08.07.30 WTO決裂 ドーハラウンドは、中国・インドの反対により決裂

09.10. 鳩山 所信表明演説 対等な日米同盟、「東アジア共同体構想」を推進する

10.039ヶ国交渉開始

環太平洋パートナーシップTransPacificPartnership 交渉開始

オバマ 輸出倍増計画2014年までの5年間で輸出を倍増し、200万人の雇用を生み出す

10.10.10 管臨時国会の所信表明演説

TPP協定交渉等への参加を検討し、国を開き、具体的な交渉進める。

11.11.11 野田 記者会見 TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る

11.11.17 オバマ 豪州議会オバマドクトリン 「アジア太平洋国家」としてアジアに力点

12.04.30 日米共同声明アジア太平洋地域の貿易・投資に関する高い水準のルールの構築を確約、TPPに関する2国間協議を引き続き前進させる

12.07.11 民主党 PT 政府に「国益を損なういかなる譲歩もしないように」求める決議案を採択

WTO交渉におけるサービス交渉の位置づけ 12

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto/pdf/negotiation/service/aboutgats.pdf

BIA:WTO設立時に既に交渉を開始することが決められている項目TRIPS:知的財産権の貿易の側面に関する交渉

13

経済連携協定からTPP(貿易・投資協定)へ 14

環太平洋戦略的経済連携協定小国4ヶ国(シンガポール・ブルネイ・

ニュージーランド・チリ)関税撤廃を目的/2006年に発足

小国4ヶ国(ブルネイ・シンガポール・チリ・ニュージーランド)

米国・豪州・ペルー・ベトナム・マレーシア+

環太平洋連携協定(TPP)2008年9月交渉開始

投資・金融サービスの自由化(非関税障壁の撤廃)

(投資家・知的財産権の保護)

例外無き貿易の自由化(関税障壁撤廃) +

日本?・カナダ・メキシコ+

印度・中国の反対でWTO交渉決裂2008年8月

南北米州FTA多国間投資協定

挫折(1995年)

中国の台頭(経済・軍事)

米国の双子の赤字・リーマンショック

中国主導のASEAN+3

鳩山政権東アジア構想

太平洋国家アメリカ

東南アジアをめぐるFTA関係図 15

EU:‘93

アメリカ

カナダ

メキシコ

NAFTA:‘94中国 韓国 日本

ペルー

豪州

○ニュージー

AFTA:‘92

○ブルネイ

インドネシア マレーシア

フィリピン ○シンガポール

タイ

カンボジア

ラオス

ミャンマー ベトナムベトナム

○チリ

ブラジル

TPP

インド

ASEAN(東南アジア諸国連合)+3 ロシア

メルコスール:‘95

FTAAP構想

16

TPP9ヶ国交渉の内容 H24年3月現在 17

交渉参加国が有する投資関連協定をもとに,保護を与える範囲や保護の内容,紛争が生じた場合の手続等について議論を行っており,特に,「国家と投資家の間の紛争解決手続」の導入が重要な論点になっている模様。

ネガティブ・リスト方式(リストに掲載したものは適用対象としない方式。一般に,自由化対象のみを記載するポジティブ・リスト方式に比べ,自由化の水準が高い。)を採用する模様。

内外投資家の無差別原則(内国民待遇,最恵国待遇),投資に関する紛争解決手続等について定める。P4では対象外

投資

無差別原則(内国民待遇,最恵国待遇)等の基本ルールに加え,金融サービス分野に特有のルールについて,共通のルールを設けるべく議論しているが,詳細には至っていない模様。なお、公的医療保険制度など国が実施する金融サービスの提供は,TPP協定交渉参加国間のFTAでもGATSと同様に適用除外とされており,議論の対象となっていない模様。

ネガティブ・リスト方式(リストに掲載したものは適用対象としない方式。一般に,自由化対象のみを記載するポジティブ・リスト方式に比べ,自由化の水準が高い。)が検討されている模様。

金融分野の国境を越えるサービスの提供について,金融サービス分野に特有の定義やルールを定める。P4の場合、適用除外とした上で,継続協議とされた。

金融サービス

基本的にWTO協定と同様のルールなお,米豪FTAでは,物品章に医薬品に関する附属書があり新薬の保険適用に関する審査の透明性の確保等が規定米韓FTAでは,分野別の規定として,医薬品及び医療機器に関する章が設けられ,,医薬品・医療機器の価格決定等を申請者の要請に応じて見直す独立の機関を設置米韓FTAでは、韓国の農協共済に対して,同種の民間保険と同一のルールを適用し、3年以内に,農協共済を金融監督委員会(FSC)の規制下に

センシティブ品目の扱いについては,関税の撤廃・削減の対象としない「除外」や,扱いを将来の交渉に先送りする「再協議」は原則として認めず,長期間の段階的関税撤廃というアプローチをとるべきとの考え方を示す国が多い

物品の貿易に関して,関税の撤廃や削減の方法等を定める。また,「物品ルール」として内国民待遇など物品貿易に係るWTO・GATTの基本的なルールを確認し,輸出入に係る規制の撤廃などの追加的なルールについても定める。

物品市場アクセス

ルールの分野アクセス分野概要

国家戦略室 資料から編集

TPP9ヶ国交渉の内容 H24年3月現在 ② 18

TPP協定交渉参加国がこれまでに締結したFTAに含まれる共通の要素(競争法の原則,競争法の執行とそれに係る競争当局間の協力,公的企業(国営企業)及び指定独占企業に対する規律のあり方)を中心に議論され,統合条文案の作成が行われている模様。

貿易・投資の自由化で得られる利益が,カルテル等により害されるのを防ぐため,競争法・政策の強化・改善,政府(競争当局)間の協力等について定める。

競争政策

米国の二国間FTA(米豪,米シンガポール,米チリ,米ペルー)及び豪チリFTAの知的財産章には,特許,商標,地理的表示,医薬品関連,権利執行(主に模倣品・海賊版対策に関するもので,具体的には,国境措置,民事救済,刑事手続,デジタル環境下での執行)等の分野において,TRIPS協定の知的財産保護の水準を上回る多くの規定が設けられている例がある

知的財産の十分で効果的な保護,模倣品や海賊版に対する取締り等について定める

知的財産

WTO・SPS協定の権利義務の再確認を基本として,SPS措置を実施する際の手続の迅速化や透明性の向上等が議論されている。WTO・SPS協定上の権利義務の変更が求められるおそれがある。例えば,「措置の同等」と「地域主義【注2】」について,ルールが一律に適用されるおそれがある【注2】地域主義病害虫発生国であっても,清浄地域(病害虫の発生していない地域)において生産されたものであればその輸入を認める概念。(イ)SPS措置について国際基準との調和を一般的に義務付ける規定が盛り込まれるような場合には,WTO・SPS協定上の各国の権利の行使が制約を受けるおそれがある。

食品の安全を確保したり,動物や植物が病気にかからないようにするための措置(SPS措置)の実施に関するルールについて定める

SPS(衛生植物検疫)

ルールの分野概要

国家戦略室 資料から編集

米国を除くTPP交渉参加8ヶ国との協議で得られた主な情報 19

新規交渉参加国に求める共通の条件

事前に除外を求めることなく、全てを交渉のテーブルにのせ、包括的自由化にコミットすることが参加の条件

包括的かつ高いレベルの自由化の水準にコミットすることは参加のための基準

関税撤廃の扱い

90~95%の品目の関税を即時撤廃し、残る関税も7年以内に段階的に撤廃

すべしとの考えを支持している国が多数ある。即時撤廃率より低くすべきとの提案もある

長期の関税撤廃などを通じて、いつかは関税をゼロにするというのが基本的な考え方

センシティブ品目の扱い方や除外

例外なき関税撤廃を実現し、種々のセンシティビティへの対応として7年から10年の段階的な撤廃により対応することが、基本的な原則として全ての交渉参加国で合意されているが、本当にセンシティブな品目の取扱については今後の交渉を見極める必要がある

センシティブ品目への配慮は段階的関税撤廃で対応すべき

関税割当は過去に議論されたことはあったが、もはや議論されておらず、現在の議論の対象は関税撤廃をどれだけの時間をかけて行うかである

除外については議論していない

除外はTPPの目標と一致しない 120316 日本農業新聞

20

TPPの危険性 食品の安全・安心 21

米国の要求 問題点

BSE防疫規制の緩和

BSEの輸入制限の月例制限を国際基準に合わせ30ヶ月から20ヶ月に緩和

BSE検査の対象は米国の肉牛の1%程度で、個体識別管理のなく、BSE罹患牛肉の輸入の危険度が高まる

残留農薬規制の緩和

残留農薬規制は国際基準(コーデック基準)へ統一ポストハーベストは農薬ではなく食品添加物として扱うべし。また食品添加物として表示義務の撤廃有機農産物の残留基準の緩和

農薬の使用基準、食品の安全基準は各国の独自性を認めるべきポストハーベストは発ガン性との関連もあり、厳格に規制すべき

遺伝子組替食品の表示義務撤廃

GMOの安全性は科学的に証明されており表示義務の撤廃(特別扱いすることは、貿易障壁に当たる。)

GMOの安全性に関する知見は定まっておらず少なくとも表示を行い、購入時の選択権を保障すべき

食品添加物規制の緩和

食品添加物(特に加工食品)の規制の緩和(米国と同じ規制水準に)

食品添加物の審査を進めている

衛生防疫の保護水準

保護水準は統一すべき輸入米の安全検査の簡素化冷凍食品(例えばフライドポテト)に関する細菌含有の規格の緩和

人種や風土によって安全基準は違う。国民の生命を守る基準は、主権国家の権利であり、自主権を保留すべき

日米事前協議の争点 22焦点の一つが自動車だ。米

国では日本のTPP参加を農業団体が歓迎する一方、自動車団体が反対する。農協が反対し、経済団体が賛成する日本とは逆の構図だ。USTRで日本担当のカトラー代表補も「事前協議で自動車市場の開放はカギ」と指摘。全米商工会議所のオバーバイ・アジア担当副会頭は米国車輸入に一定の目標数量枠を設ける案も選択肢とする。日本郵政グループが手掛ける保険事業もやり玉にあがる可能性がある。日本で米大手保険が高シェアを持つがん保険の郵便局での販売拡大を求めたり、日本郵政グループが自前のがん保険を開発することをけん制したりする可能性がある

120113 日経

国境措置撤廃による農産生産への影響 23

品目別影響と主産地 24

関税率生産減少

額減少率 1位 2位 3位 1位 2位 3位

その他

りんご 17 100 9 青森 長野 岩手 53% 19% 6% 21%かんきつ類 20 100 9 和歌山 愛媛 静岡 19% 16% 12% 53%鶏卵 20 1,500 18 茨城 鹿児島 千葉 7% 6% 6% 81%鶏肉 10 1,900 20 鹿児島 宮崎 岩手 18% 18% 13% 51%インゲン 403 30 23 北海道 長野 福島 94% 2% 1% 4%

茶 20 300 25 静岡 鹿児島 三重 44% 25% 8% 23%ラッカセイ 737 100 40 千葉 茨城 神奈川 75% 14% 2% 8%

牛乳乳製品 360 4,500 56 北海道 栃木 岩手 52% 4% 3% 41%豚肉 482円 4,600 70 鹿児島 宮崎 茨城 14% 9% 6% 71%小豆 403 200 71 北海道 青森 岩手 88% 1% 1% 10%牛肉 38.5 4,500 75 北海道 鹿児島 宮崎 16% 13% 9% 62%大麦 256 200 79 福井 茨城 栃木 32% 15% 13% 40%パイナップル 20 10 80 沖縄 100%コンニャク芋 1706 300 90 群馬 栃木 茨城 89% 5% 1% 4%

小麦 252 800 99 北海道 福岡 佐賀 65% 7% 5% 23%加工用トマト 20 300 100 長野

でんぷん原料 583 200 100 北海道 長崎 鹿児島 77% 4% 3% 16%

てんさい305 1,500 100

北海道 100%さとうきび 沖縄 鹿児島 61% 39%米 778 19,700 90 北海道 新潟 秋田 7% 7% 5% 81%

農業及び関連産業への影響 25

国(農林水産省) 県(農政部)

【農業への影響】

主要農産品19品目(関税率10%以上、かつ生産額10億円以上のものを注出。注1)について全世界を対象に直ちに関税撤廃を行い、何

らの対策も講じない場合

国が試算した19品目のうち、県内生産への影響が懸念される7品目(注2)への影響を農

水省の試算方法に準じて算出

●生産減 毎年▲4兆1000億円 程度 毎年▲685億円 程度

●食料自給率の減少(供給熱量ベース)

40%→14% 程度 53%→20% 程度

【農業及び関連産業への影響】実質GDPに占める割合は、2008年の数値から算出。

平成17年長野県産業連関表34部門表により計測を行った理論値。

●GDPの減少額▲7兆9000億円 程度

(実質GDPの1.6%)▲536億円 程度

(H19県内総生産額の0.65%)

●就業機会の減少 ▲340万人 程度▲2万9000人 程度

(うち農林水産業2万7000人程度)

備 考平成22年10月27日

民主党APEC・EPA・FTA対応検討プロジェクトチーム会議資料より

注1:米、小麦、大麦、インゲン、小豆、ラッカセイ、甘味資源作物、でんぷん原料作物、コンニャク、茶、加工用トマト、かんきつ類、リンゴ、パイナップル、牛乳乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵

注2:米、小麦、牛乳乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵

2010.長野県農政部試算

26

品 目H20年農業産出額

(億円)農水省試算減少割合

(%)影響額(億円)

米 490 90 ▲441

小 麦 4 99 ▲4

生 乳 110 100 ▲110

牛 肉 75 75 ▲56

豚 肉 56 80 ▲45

鶏 卵 24 33 ▲8

鶏 肉 33 65 ▲21

その他 1,922 ― ―

合 計 2,714 ― ▲685

関税全廃後の県農業産出額 685億円(▲25%)

注) 国の試算対象品目:関税率が10%以上、かつ生産額が10億円以上の品目(米、大麦、小麦、インゲン、

小豆、ラッカセイ、でんぶん原料作物、コンニャク芋、甘味資源作物、茶、加工用トマト、かんきつ類、リンゴ、パインアップル、牛乳乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵)なお、野菜や果樹の大部分の品目や林産物・水産物は含まれていない。

27

米韓FTAの問題点 28法律の位置づけ 米国法>米韓FTA履歴法>米国州法>米韓FTA>韓国法

米国の法律では対外協定は国内法が優先することになっている(WTO協定も同じ)

ネガティブリスト 留保目録に掲載していないサービス分野を全て開放。

今後新たに登場するサービス分野に対し、政府の規制強化不可

最恵国待遇 他国とのFTA条件が米国より有利な場合、米国も同じ条件が適用

ラチョエット条項 一度緩和した規制は元に戻れず、政府の自立性を大きく制約

スナップバック 自動車分野で韓国がFTAに反した場合、又は米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米国企業が判断した場合、米国自動車輸入関税2.5%撤廃を無効に

ISD条項 韓国に投資した米企業が、韓国の政策により損害を生じた場合、韓国政府を国際投資紛争仲裁センターに提訴し、損害賠償を求めることができる。

非違反提訴条項 米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに反しなくても、米国政府が代わりに、国際機関に韓国を提訴できる

政府の立証責任 韓国政府は規制が必要不可欠であることを科学的に立証しなければならない。

サービスの非設立権の認定

相手国に事業所を設立しなくても営業することができる。韓国は国内に設立していない会社を処罰する法律がない

知的財産権 米国企業が韓国のウエブサイトを弊祭することができる。インターネットで写真1枚をダウンロードし、ミニホームページの背景写真にした場合刑事刑罰

金融・資本市場の完全開放

米系資本が韓国国内金融機関の株を100%所有することができる

間接収用による損失補償

韓国の政策や規程による直接的な損害がなくても米企業が被害を被ったと判断すれば、これを補償しなればならない

投資の自由化 29

内閣が推進する重要な論点であるが、このことはそのまま外国からの要求である。例えば、水源を守るため森林保護の条例をつくれば、外国から訴訟されることにもなる。投資の自由化は米国の切なる要求事項

ISDS 30☆ISDS:Investor State Dispute Settlment

投資家 国家 紛争 解決

☆ICSID :International Centre for Settlement of Investment Disputes 国際 センター 解決 投資 紛争

欧米企業が、発展途上国や資源保有国の政府による強制収用(国有化など)に対する欧米企業が自己の権益を守るために生み出した対応手段企業が強制収用した政府を国際投資紛争解決センター(ICSID)等協定で決めた仲介組織に提訴できる仕組み。日本が締結するEPAなどでも挿入されている

世界銀行参加にあり、IMF体制の主催国であるアメリカの意向を反映しやすい

1994年のNAFTA発効に際して、米国の提案によってISDS条項が初めて多国間協定に導入されて以来、状況は激変した。米国企業や米国の投資家は米国企業や米国の投資家は、たとえ資産が国有化されるなどの直接的な被害を被ってなく

ても、儲からない場合儲からない場合でも「収用」と同等の「間接収用」と見なして、カナダが、米国企業によって次々とISDS条項によって国際仲裁所に提訴された国際仲裁所に提訴された。

米国の企業と投資家が、カナダの公的医療保険によって市場参入機会を阻まれたとしてカナダ政府を提訴した→提訴は受理されなかった。TPPの場合、公的医療保険が民間保険会社のビジネスを阻害しているという理由で、米国

の保険会社がISDS条項を使って日本政府を提訴してくることも想定し得る

「正論」平成24年2月号 ちょっと待った TPPより危険な日中韓政府投資協定

投資家の利益>公共の利益

投資協定の内容 31

×

再交渉

×

×

×

米豪FTA

○締約国間の紛争解決手続き国家対国家の紛争解決

○投資家対締約国間の国際仲裁手続き投資家対国家の紛争解決紛争解

○安全保障のための例外安全保障例外

○公の秩序、生命・健康等のための例外一般的例外例外

○投資関連法令の公表透明性

○自国民雇用要求

○現地調達要求特定措置の履行要求

○収用時の原則(公共目的・適正補償など)収用と補償

○締約国による投資家との契約の遵守義務約束遵守義務

○恣意的。差別的措置の禁止、投資家の合理的期待の保護

公正・衡平待遇

○外国人間の無差別待遇最恵国待遇

○外国人と自国民に対し、同等の待遇を与える内国民待遇

投資の保護・自由化

日本のEPA

国家戦略室 資料から編集

ISDの事例 1 32

事例1

差別的待遇を禁止している「公正かつ衡平な待遇」違反とした

チェコの旧国営4銀行の不良債権処理に当たって、A銀行(ペパーカンパニーであるB社が46%の株を保有)には他3社と同様の支援を受けることができずに、公的管理になった。

チェコ政府は、企業として実態のないB社は投資家とはいえないと主張したが、B社は投資家であると認定。

B社にはチェコ政府がA銀行にも他3銀行と同様の財政支援を期待する合理的な理由があり、

事例2

「収用の禁止」違反とした

アメリカC社はメキシコのD社を買収し、産業廃棄物の埋め立て事業に着手しよとしたが、地方政府は建設停止の措置に。

加えた、メキシコ地方政府は、建設予定地を含む周辺地域を自然保護地域に指定したため、廃業に追い込まれてた

メキシコ政府が地方政府に建設停止を撤回させなかったのは、地方政府だけでなくメキシコ政府もC社の操業権を否定した。

また、自然保護地域の指定は、間接収用(政策的な措置によって、結果的に投資財産や収益機会が奪われること)に当たる

地上2012年7月号

ISDの事例 2 33

事例3

「内国民待遇」違反

アメリカのE社はカナダに現地法人を設立し、有害廃棄物をアメリカに於いて処理することにしたが、カナダ政府は環境保護の観点から廃棄物の輸出を禁止したため事業継続できなくなった。

E社は、カナダ政府は「自国企業を他国の企業より有利に扱う」ための措置であると訴えた

カナダ政府には環境保護を確立する権利は認めたが、

「保護主義的な意図は」決定的ではなく、自国の投資家と外国の投資家とで不均衡な便益を与えているかなど「実態的な影響」が重視されるべきでると判断された

事例4

「特定措置の履行要求の禁止」

並びに「内国民待遇」違反

アメリカのF社とG社はメキシコに現地法人を設立し、人口甘味飲料の製造に着手した。

メキシコ政府は、自国の砂糖以外の甘味料を使った飲料には20%の税金を課税したことは「特定措置の履行要求」に、自国の砂糖産業を保護していると訴えた

課税措置は、砂糖以外の甘味料を使わないことを条件とする税の優遇措置である。

砂糖と人工甘味料は品目としては別物であるが、両者は同じ甘味料として競争関係にあり「同様の条件の下にある」と判断し、明らかに国内産業の優遇措置であると判断された

地上2012年7月号

TPPを巡る論点 34

推進派の主張 反対派の主張

国際競争力の確保

貿易立国である日本において、輸出企業は生命線、国際化を進めるため、「平成の開国」し、関税の撤廃が必要「1.5%農業保護のために98.5%が犠牲になってはならない」市場開放を機に農業を成長産業に

日本の平均関税は他国より低い、外国投資についても既に開放済み経済のブロック化を防止し、発展途上国を含めて公正な貿易ルールづくりが必要農業・医療・福祉は社会的共通資本であり、営利企業による貿易ルールとは別次元であるべき

対外投資の円滑化

日本は投資立国として発展する時代になった、投資を拡大するには、非関税障壁の解消や投資企業の保護(ISDS)が必要

ISDS等、企業の論理が民主的国家の論理を超える仕組みは民主主義の破壊ヘッジファンドや国際金融資本の暴走を抑える仕組みづくりが必要

東アジアとの経済連携

アジアの成長を取り入れるには、中国を巻き込んだ新たな貿易ルールの確立が必要。「バスに乗り遅れるな」

朝鮮半島や中台関係の安定など東アジアの安全保障にとって、中国と日本との善隣友好関係は基本的条件。ASEANや中国・韓国との連携が基本既に、日本の貿易・投資に比重は東アジアにシフトしており、東アジアの連携に楔をさすアメリカ主導の経済連携に疑問

対中国戦略

GDP2位まで躍進した中国に対する安全保障を含めた強力な政治・経済の日米同盟の強化が必要

TPP参加を巡る懸念と政府見解 35

関係者の懸念 政府見解 備考

人の移動

単純労働者が流入、雇用の影響

議論の情報はない

FTAが単純労働者が自由化された例は承知せず

NAFTAは、メキシカンの流入によって、500万人が失業したとの報道あり、

オバマ大統領も米国の雇用が脅かされるTPPはあり得ないとしている。→ILO遵守が基本。

看護師・介護士候補者が流入

看護師・介護士候補者は2国間交渉で受入

既に実施しているが、国家資格を得られないことなど定着していない→国家資格の見直しを規制緩和で検討中

医療

医療保険制度が崩壊する

社会保障制度は従来のFTAで自由化の適用除外

「混合診療」は国内問題として議論中

税が投入されている社会保障制度そのものの自由化は適用外であっても、混合診療を導入し、公的社会保障の範囲を最低限に縮小し、他は民間保険でカバーすることが、小泉構造改革でも、行政刷新会議でも議論されており、民間保険の自由化は投資やサービスの自由化の範疇として整理される可能性大。

外国人医師が参入、医療の質の低下

医師には厳正な資格要件を課しており、今後も主体的に判断

外国人医師による医療の質の低下よりも、医療ツーリズムに見られるように、病院の設置基準の国際化が迫られるとともに、

医療への株式会社の参入や外国人の富裕層の診療やドッグの受入により、「誰でも、何処でも、何時でも、同じ」医療の原則が崩壊し、医療格差が拡大することが懸念される。

TPP参加を巡る懸念と政府見解 36

関係者の懸念 政府見解 備考

政府調達

地方自治体の公共工事入札で外国企業が参入

地方自治体に政府と同程度、外国企業に解放要請する動きがある

ベトナムなどは解放に慎重で、9ヶ国意見に相違、交渉の中で議論

米国の貿易・投資に関する交渉に対する戦略は、多国間協議を進めながら、二国間で迫る二面作戦。

既に日米イニシアティブにおいても談合問題などで入札制度に注文を付けてきた経過もあり、既に人口の多い地方自治体では外国企業の参入を進めており、人口の少ない地方自治体への拡大は予想される

その他

郵政民営化見直しに影響

TPPにかかわらず欧米から競争条件確保など要請があるが、従来から公平性配慮が基本

復活した日米経済調整対話でも、郵政の民営化とともに、「共済」制度に対する改善(所管官庁も含め、同じ競争条件を整備すべし)要求があるところであり、TPPが締結されれば、個別案件としても要求がエスカレートする可能性は大

金融部門で米企業に支配される

日本は既に自由化、新興国の自由化に関心を持つ点で米と共有

米通商代表部「2010年衛生・植物検疫措置に関す

る報告書にあるように、BSE問題を始め要求されている。USTRは牛肉について「日本が(TPPで)前進したいか判断する際の検討事項の一部だと思って

いる」とも指摘しており。TPPの枠内に入るか否かは別として、TPP参加の前提とされる可能性は大

食の安全が脅かされる

TPPでの議論は、WTOの衛生植物検疫ルールの透明性向上などが中心

110307信濃毎日をベースに備考欄を追加

TPP参加した場合の影響 全中USTRへの意見書提出 37

第1 多面的機能を有する日本農業は壊滅的打撃を受ける。⇒日米両国の長期渡る友好関係を損なう。例えば日本の畜産生産が大幅に減少すれば、米国産の飼料原料を購入しなくなり米国の産業にも影響が出る。

第2 国境地帯の農業や関連産業が深刻な打撃を被れば、安全保障上の問題を引き起こす恐れがある。⇒台風の多い沖縄はサトウキビ以外の代替作物がなく、北海道は酪農・小麦・テンサイが地域の雇用と産業を支えている。⇒離島の過疎化、無人島化となれば日米安保の対象外となり、東アジアの安全保障に影響を与える

第3 世界の飢餓・栄養不足人口の大幅な増加となる。⇒日本の食料輸入が急増し、アジア地域で飢餓人口が2億7000万人増える可能性がある。世界の貧困・飢餓人口を2015年までに半減させることなどを掲げた国連ミレニアム開発目標をはじめ、日米両国が加わって合意した貧困・飢餓削減の国際協定に反するとした

第4 TPPによる各国の関税撤廃や規制の統一は、アジア太平洋地域の農業の多様性を損ない、農業の持続的発展に役立たない。

120114 e農ネット 一部加筆

国土条件の国際比較

日本 米国 EU 豪州

耕地及び永年作物地面積(万ha)

463 17,320 12,079 4,453

(日本との比較) - 37倍 26倍 10倍

出典:農林水産省HP(海外農業情報)※日本と米国は2008年、EUと豪州は2007年の数値

日本 米国 EU全体 独 仏 英国 豪州

農家一戸当たりの農地面積(ha)

1.9 198.1 13.5 45.7 55.8 58.8 3023.7

(日本との比較) - 104倍 7倍 24倍

29倍

31倍

1591倍

※日本は2009年、日本以外の国は2007年の数値 出典:内閣官房(EPA関係資料集:平成22年10月)

38

2011年1月 全中学習資料

農地の総面積では、米国は日本の37倍単位当たりの面積では。米国は日本の100倍、豪州は1600倍

食糧危機の関連図 39

食糧不足

価格暴騰

バイオ燃料

優良農地の減少

干ばつ・洪水・砂漠化 水不足

農業用水の増加

洋食・肉食化

発展途上国等人口増加

地球温暖化

BRICsの経済成長

原油の高騰 世界金融問題(投機資本の流入)

肥料投入量の増加

鉱物資源の枯渇

環境問題の発生

石油需要の増大

緑の革命

食料不足の解消

08年の投機資本による価格の高騰は、一次的なものであったが、他の要因は恒常的であり、全体として食糧不足が常態化

県民所得が小さい県ほど、主業農家が多い 40

県民所得 × 主業農家率

沖縄高知

青森

宮崎

長崎

鹿児島

秋田

鳥取

愛媛

岩手

熊本

山形

島根

佐賀

大分

香川

宮城

岡山

奈良

福岡

和歌山

福島

山梨

兵庫

徳島

新潟

岐阜

茨城

長野

石川

群馬

福井

京都

埼玉

千葉

山口

広島

全国

大阪

三重

富山

栃木

神奈川

滋賀

静岡

愛知

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500

県民所得

主業農家率

★北海道

★東京

畜産園芸農業地帯

都市農業地帯

水田兼業地帯

この地帯の農業をどうも守るか←戸別所得ではだめ

新自主主義経済によって、県民格差が拡大してきが、県民所得が小さい県ほど、主業農家率は高く、農業がその地域の主産業であり、畜産と園芸の主産地である。TPPはこの地域を直撃する

総まとめ TPPに参加すると国のかたちが変わる 41

経済社会のルールがアメリカ化する関税・非関税障壁がなくなる

(柵がとられ、堀が埋められる)

競争が一層激化する(市場原理による弱肉強食の社会、

特許と訴訟社会に)

○デフレの深化○格差社会の拡大

○助け合い・絆社会の崩壊( 日本の伝統文化の崩壊

簡易保険、共済の一般保険化)

くらしといのちを守る国の自主権が奪われ、米国等巨大資本に隷属させられる

農業・農村の崩壊食料安全保障(自給率・安全安心)の崩壊

中小企業・地域経済の崩壊地域医療・皆保険制度の崩壊

国土安全保障の崩壊(山村・島しょの過疎化)財政バランスの崩壊(郵貯により保全されてい

る国債の国外流出)

東アジアが不安定化(親米と親中に分断)食糧危機が増大(アジアの食料を日本が奪う)

TPPとは 42

例外なき関税の撤廃

ISDS条項を背景にした多国籍・超国家企業・投資家の利益を最大化する構造改革(規制緩和・市場原理・公共施策の民営化)の強力な推進

TPPとは

日米構造協議、構造改革路線(新自由主義路線)の総仕上げ

例外品目を設けても7年程度自由化を猶予するに過ぎない?

金融・医療サービスを含めた非関税障壁の撤廃

農業は締結後7年程度後には丸裸にされる

投資家・知的財産権の保護のルール化

ISDS条項

日本にとって株式会社の参入を規制・排除している農業(農地所有)と医療・保険の分野に投資の風穴をあける

日米双方の多国籍巨大企業の究極のねらい

43

農政における構造改革路線とTPP

1.新自由主義の流れ2.構造改革路線の推移3.農産物の市場開放要求4.構造改革路線と農業の担い手問題

新自由主義の流れ

ドル危機・石油危機・ベトナム戦争の泥沼化

世界不況・インフレ・財政赤字

ケインズ経済学の終焉大きな政府国家による社会経済管理福祉国家

シカゴ学派の台頭小さな政府自己責任自由競争・市場原理による経済運営

シカゴ学派の台頭小さな政府自己責任自由競争・市場原理による経済運営

新保守主義政権の誕生

サッチャーの構造改革国家企業の民営化福祉国家の脱却‘86ビックバン

金融取引の国際化

レーガン‘89年ワシントンコンセ

ンサス新自由主義を基本とする世界戦略

中曽根内閣‘86年民活法、

前川リポート

貿易の国際化と自由貿易圏の組成‘93年:EU統合‘94年:NAFTA‘95年:WTO体制

‘97年 橋本内閣

経済財政諮問会議日本版金融ビッグバン

‘91年ソ連崩壊

‘91年バブル崩壊

1970年代 1980年代 1990年代

2000年代

’01年WTO交渉、9・11テロ

国際金融資本の台頭

’01年小泉構造改革

‘01年総合規制改革会議

日本経済の再生プラン

’03年規制改革・民間解放会議

’07年規制改革会議

’06年郵政民営化・市場化テスト

’02年農業再生プラン

’99年農業農村基本法

’02年農協あり方研究会

’06年基本計画の見直し

’07年品目横断的経営対策

格差の拡大・環境問題の深刻化

44

’97年英国ブレア政権

格差の是正⇒第三の道中くらいな政府政府による総ての国民の就労の機会創出

’07年サブプライム・金融危機

⇒新自由主義の終焉

’09年民主党オバマ政権誕生

’07年参議院選挙・福田内閣・’08年麻生内閣

’01年JAバンク法

’52年全農改革

構造改革路線の推移 451985年 プラザ合意 円高政策

87年7月~92年7月

竹下・レーガン

構造障壁イニシアティブ

日米構造協議

大店法の緩和、公共投資の拡大(630兆円)

外国資本に対する対内投資の解放

1994年 日米保険協議

第三の保険を解禁(1996年)するに当たって、邦人保険会社の解禁を2001年まで延長する

1997年4月~01年

橋本・クリントン

日米間の新たな経済パートナーシップのための枠組み

強化されたイニシアティブ(日米規制緩和対話)

米国の要望に対して経済財政諮問会議が主導して改革を推進

日本版ビッグバン(‘98)、独禁法改正(持株会社解禁)(‘97)、大店法廃止・立地法成立(‘99)、労働者派遣法改正(’99)

2001年6月30日~09年

小泉・ブッシュ

成長のための日米経済パートナーシップ

規制緩和・競争政策イニシアティブ

日米投資イニシアティブ

米国の年次改革要望に対して規制改革・民間開放会議等が主導し構造改革を推進

健康保険窓口3割負担(’02)、労働者派遣法緩和

、都市計画・建築基準法の抜本改革、構造改革特区(‘04)、道路公団・郵政民営化、会社法、対日直

接投資加速プログラム、混合診療一部解禁(保険外併用診療’05)三角合併の解禁(‘07)、保険法(’08)、農地法改正、高度医療特区(‘09)

2011年3月

菅・オバマ

経済成長に向けた諸施策に関するアップデート

日米経済調和対話

民主党鳩山政権で中断したパートナーシップを官内閣で復活

日米年次改革要望と施策との関連 46

1997年 独禁法改正・持株会社の解禁

1998年大規模小売店舗法廃止、大規模小売店舗立地法成立、建築基準法改正

1999年 労働者派遣法の改正、人材派遣の自由化

2002年 健康保険における本人3割負担の導入

2003年 郵政事業庁廃止、日本郵政公社成立

2004年法科大学院の設置と司法試験制度変更、労働者派遣法改正(製造業への派遣解禁)

2005年 日本道路公団解散、分割民営化、新会社法成立

2007年 新会社法の中の三角合併制度の施行

出典:ウィキペディア

対日要求と農産物の自由化の歴史 47

対日要求など 対応 農産物の自由化等

50~60年代 余剰小麦の購買 GATT加盟 PL45、MSA小麦の受入

60年~70年前 繊維摩擦 輸出自主規制 121品目の輸入自由化

1970年代後半~80年代前半

ニクソンショック

自動車摩擦

輸出自主規制+現地生産で対応

大豆・菜種・バナナなど200品目の関税引き下げ

1980年代後半~1990年代

対米不均衡の深刻化

円安是正

日米構造協議

⇒公共事業の拡大

円高誘導⇒プラザ合意

日米二国間農産物交渉

牛肉・オレンジの自由化

トマト・乳製品12品目自由化

1990年代~2000年代

米国とEUの貿易摩擦

金融の自由化

GATT・UR交渉

強化されたイニシアティブ⇒橋本金融ビッグバン

総ての農産物の関税化と段階的引き下げ

農業保護・輸出補助の削減

2000年代~2010年

ソ連の崩壊・グローバル化

市場開放・規制緩和要求

WTO・EPA・FTA交渉

経済パートナシップ(日米年次改革要望書:規制緩和、競争政策、投資)⇒小泉構造改革

重要農産物を例外としてEPA・FTAを締結

農地法改正(株式会社参入)

米流通の規制緩和

JAの信用・経済分離要求

2010年~ リーマンショック

中国の台頭

TPP参加交渉 聖域なき関税の完全自由化

BSEなど食品安全基準緩和

食料自給率の推移 3度目の自由化は国を滅ぼす 48

0

20

40

60

80

100

120

1960 1970 1980 1990 2000 2010 203?

小麦

野菜

果実

牛肉

牛乳/乳製品

砂糖類

食料自給率

日米貿易摩擦→日米牛肉・オレンジ交渉

余剰小麦の購入→MSA小麦・PL480受入

パン・脱脂粉乳給食 TPP 関税撤廃

カロリー自給率13%に

農政における構造改革路線とは何か 49

信・経事業分離

すべての生産者を対象とした価格支持から専業農業者を対象とする所得補償へ

農地法の改正(株式会社の参入拡大)

小規模農業者による協業の助長から専業農業者の育成に重点化

新たな基本法農政の方向

独占禁止法適用化

農産物価格の長期低迷

農協の改革

担い手の高齢化・脱農化専業的農家の減少

TPPは構造改革路線の一層の推進

国際化=関税の縮小

競争力ある産業としての農業の育成

農業基本法から新農業基本法へ 50

【旧農業基本法のポイント】

生産性と生活水準(所得)

の農工間格差の是正

生産政策

価格流通政策

構造政策

農業の生産性向上

選択的拡大と

農業総生産の増大

農産物価格の安定農業所得の確保

農産物流通の合理化等

家族農業経営の発展と自律経営の育成

協業の助長

国民生活の安定工場及び国民経済の健全な発展

食料の安定供給の確保

基本計画の策定⇒食料自給率の目標設定

農業の持続的な発展

農村の振興

多面的機能の発揮

消費者重視の食料政策の展開

自然循環機能の維持増進

望ましい農業構造の確立と経営施策の展開

市場を適正に反映した価格の政策と経営安定

中山間地域等の生産条件の不利補正

【新農業基本法のポイント】

国民生活の安定工場及び国民経済の健全な発展

食料の安定供給の確保

基本計画の策定⇒食料自給率の目標設定

農業の持続的な発展

農村の振興

多面的機能の発揮

消費者重視の食料政策の展開

自然循環機能の維持増進

望ましい農業構造の確立と経営施策の展開

市場を適正に反映した価格の政策と経営安定

中山間地域等の生産条件の不利補正

【新農業基本法のポイント】

新たな基本農政の展開過程

平成12~13年

平成14~15年 平成16~17年

食料農業農村基本法(平成11年7月)

基本計画(平成12年3月)

農業の持続的発展に関する施策

基本計画見直し(平成17年3月)

食料自給率の目標

食料の安定供給の確保に関する施策

検討事項○品目横断的経営安定対策○農地の利用制度のあり方○農業環境政策

農村の振興に関する施策

中山間直接支払制度の創設

価格安定制度の見直しと品目別経営安定対策の導入

土地改良法を改正し、環境との調和に配慮

都市と農村の共生対流

○都市と農山漁村の共生・対流の推進○バイオマスニッポン総合戦略

農業構造改革の加速化

○米政策改革○特区内リース方式での株式会社の農業参入○農業経営の法人化

食の安全と安心の確保

○食の安全安心大綱○食品表示規制の強化○食育とリスクコミュニケーション○トレサビリティ

農地法を改正し株式会社形

態を導入

不測時の食料安保マニュアルの策定

食生活指針の策定

食と農の再生プラン(平成14年4月)

経営所得安定対策大綱

○品目横断的経営安定対策○米改革の見直し○農地・水・環境支払

食の安全安心と安定供給の確保

○JAS法の見直しと食品

表示の見直し○食育基本法の制定

農業経営基盤強化法の見直し

○リース方式による株式会社の農業参入

24

農協あり方研究会報告(H15年3月) 52

農協のあり方について検討(研究会14年9月〜15年3月)

基本理念

改革の基本方向

研究会報告書の概要

競争原理が活かされる農協へ

○農協は、「民間の経済主体として協同が必要なことを自覚し、○厳しい競争社会を生き抜くための「経営感覚」を持ち、○農業者・消費者から「選択される農協」へ改革。

「全農中心システム」から「JA中心システム」へ

○単位農協が「自立」することで、全農は「補完機能」に特化

全農の機能強化(単位農協の補完)

○全農の農産物販売事業は単協支援機能に特化、○競争力のある生産資材事業に特化○コンプラ意識の徹底

単位農協が主役となる改革の徹底

○市場シグナルを受けて、機動的に対応できる生産・販売体制の整備○生産資材コストの抜本的引下げ○単位農協の経済事業の収支均衡

食料自給率

の向上

国際競争力の

向上

消費者のメリット

農業者のメリット

○消費者ニーズを汲み上げた生産・販売への転換、○生産コスト削減の効果を価格に反映○トレーサビリティの導入による安全・安心確保

○付加価値の向上やコストの削減による農業者手取りの増大○担い手中心の農業構造への再編

農業構造の展望(2005基本計画) 53

農地法の改正と株式会社の農地利用 54

農地法改正により、借地営農なら全国どこでも一般株式会社の農業参入を容認

2009.06

経営基盤強化法改正による町村指定地区での一般株式会社の借地営農全国化

2005.09

今回の改正で、耕作者主義の原則を修正加筆したので、一定の歯止めはかかったが

特区法に基き、農業特区での一般株式会社のリース方式営農開始

農地法の改正で農業生産法人の一形態として株式会社容認

一定の条件の下で株式会社の農地取得を認める

借地方式による株式会社の営農を認める

農業生産法人への株式会社の出資要件を大幅に緩和する

農業基本法の見通しに関する提言(1997年9月 経団連)

第三段階

第二段階

第一段階

2003.04

2000.11

農地法の改正(株式会社継体による農業経営の導入)

農地法改正により、借地営農なら全国どこでも一般株式会社の農業参入を容認

2009.06

経営基盤強化法改正による町村指定地区での一般株式会社の借地営農全国化

2005.09

今回の改正で、耕作者主義の原則を修正加筆したので、一定の歯止めはかかったが

特区法に基き、農業特区での一般株式会社のリース方式営農開始

農地法の改正で農業生産法人の一形態として株式会社容認

一定の条件の下で株式会社の農地取得を認める

借地方式による株式会社の営農を認める

農業生産法人への株式会社の出資要件を大幅に緩和する

農業基本法の見通しに関する提言(1997年9月 経団連)

第三段階

第二段階

第一段階

2003.04

2000.11

農地法の改正(株式会社継体による農業経営の導入)

農地法改正案のポイント 55

「適正かつ効率的な利用の確保」の責務を創設ー農地権利者の責務

すべての遊休農地を対象にした仕組みに見直し、

所有者が分からない遊休農地も利用権を設定できるようにする

市町村が指定した遊休農地について、農業振興の観点から必要な措置を講じる

遊休農地対策

50年以下20年以下賃貸借期間

1事業者当り10%以下を廃止

全体の25%以下は継続

農商工連携事業者などの場合は50%未満に

1事業者当り10%以下、

全体で25%以下

農業生産法人への出資

所有は現行通り、

利用は一般企業やJA、NPO法人などにも認める。

ただ、周辺地域での農地の効率的利用に支障を生じる恐れがある場合は、農業委員会が許可しない要件を新設

所有・利用とも農業者、農業生産法人

農地の所有と利用利

用規制

法人の罰金を1億円以下に引き上げ。

都道府県知事などによる行政代執行制度を創設

懲役3年以下または、

罰金300万円以下違反転用

都道府県と国が協議許可不要公共施設整備に伴う農地転用

転用規制

耕作者の地位の安定と地域と調和を前提にした農地の効率的な利用促進

耕作者自らが所有することが最も適当

目的規定

改正案現行

090214 農業新聞

JAの営農振興の環境の大転換 56

JAとの一体的立場 JAとは一定の距離

農業基本法

協業の助長を基本に、JAへの流通施設の近代化を積極的に支援

食料・農業・農村基本法

効率的かつ安定的な農業経営の育成

食糧管理制度

生産者⇒一次出荷業者(農協)⇒二次出荷業者(経済連)⇒全農⇒政府の流通ルートが特定し、コメ・麦流通の90%以上を系統が扱う

生産調整は国が主導

改正食糧法

政府によるコメ管理からの撤退(備蓄のみ)

流通は自由化、系統三段階性を制度として必要としない。

生産調整は生産者が主体的に取組むべし

卸売市場法

指定野菜生産団地制度(価格安定制度を含む)と卸売市場が一体的になって、系統共販を基本とする大型生産団地を育成

改正卸売市場法

生産者からの無条件委託、中卸業者へのせり原則は撤廃

量販店のニーズを基本に原則自由化

価格安定制度は、系統だけでなく個人でも適用に

農地法 自作農主義(所有者が利用)を基本に、小規模化した農業者の地域を保全するために農協を設立

改正農地法

耕作者主義は残したが、所有と利用を分離し、株式会社の賃貸者を基本的に容認した。大規模な農地利用を推進

農業の担い手と産業構造 57

農業の担い手構造と産業構造

北海道

青森

岩手宮城

秋田

山形福島

茨城

栃木

群馬

埼玉

千葉

東京

神奈川

新潟富山

石川福井

山梨

長野

岐阜

静岡

愛知

三重

滋賀

京都

大阪

兵庫

奈良

和歌山

鳥取島根

岡山

広島

山口

徳島

香川

愛媛 高知

福岡

佐賀

長崎

熊本

大分

宮崎

鹿児島

沖縄

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5

6

-4 -2 0 2 4 6 8 10

産業構造と農業担い手構造

営農類型

サービス業で主業農家が多い工業地帯で主業農家が少ない

園芸地帯

水田地帯

安定兼業・高齢水田農業地帯=主として社会政策

主水田農業地帯=主として産業政策

畜産・主農業地帯=主として産業政策

園芸農業地帯=主として産業政策

農業振興政策を考える場合、産業政策(構造政策)と社会政策(地域政策)の二方向の議論が必要であり、地域政策では環境・観光・高齢者福祉の観点から視点が重要

北海道と沖縄は、主業農家率も高く、農業が主産業であり、国防上からも農業振興が必須しかし、TPPはここの農業を最も強く直撃する

10年度の農業の担い手の実態 58

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

1990

1995

2000

2005

2010

2015推

2020推

2025推

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

180,000

主業農家

準主業農家

副業的農家

販売農家数

農家数

1.05 1.02 0.82 0.69 0.72 0.60 0.70 2010/2000

80.1%13.9%86,02939,733 31,827 6,573 5,532 2025推

73.4%15.0%94,27746,492 34,145 8,465 6,992 2020推

67.3%16.2%103,31654,401 36,632 10,902 8,837 2015推

58.4%18.5%111,31662,098 36,274 14,358 11,466 2010

57.5%19.0%126,85774,719 42,979 17,558 14,182 2005

55.5%18.1%136,03390,401 50,147 23,906 16,348 2000

49.5%23.0%149,078103,674 51,365 28,453 23,856 1995

40.8%24.7%162,298115,637 47,158 39,967 28,512 1990

副業的農家率主業農家率農家数販売農家数副業的農家準主業農家主業農家

このまま推移すれば10年度、2025年の主業農家は全県で5000人強となり、生産額がピークであった1993年頃に比べれば、主業農家数は2割(販売農家で3割)の水準に減少する→この事態に対してどう対処するのか

59

16%の主業農家で5割の販売額 60

634 6,058 15,600 13%1,040 8,077 ながの・グリーン

162 1,385 3,990 14%266 1,846 北信州みゆき

709 2,640 17,430 33%1,162 3,520 中野市・下高井

401 2,018 9,855 24%657 2,691 須高

115 1,332 2,835 11%189 1,776 ちくま

113 2,161 2,790 6%186 2,881 大北

229 2,799 5,625 10%375 3,732 あづみ

650 4,525 15,975 18%1,065 6,033 ハイランド

202 1,318 4,965 19%331 1,757 塩尻市・洗馬

38 710 930 7%62 946 木曽

727 4,717 17,880 19%1,192 6,289 みなみ信州

304 4,133 7,485 9%499 5,510 上伊那

303 2,372 7,455 16%497 3,163 信州諏訪

328 3,566 8,070 11%538 4,754 信州うえだ

525 5,306 12,900 12%860 7,075 佐久浅間

580 1,520 14,250 47%950 2,026 長野八ヶ岳

6,020 46,557 148,035 16%9,869 62,076 合計

65歳未満の主業農家

販売農家販売額推計(百万円)

同左率65歳未満の主業農家

販売農家

10年後の推計2010年

※ 販売額推計は65歳未満の主業農家の平均販売額を15,000千円と仮定16%の主業農家が県の販売額の約50%を締めることになる

地域営農の担い手の定義

コスト低減に向け生産資材の個別対策

経営サポート対策地域ビジョン・産地計画の実現に向けた対策への支援

大規模農家(法人)

中規模農家

小規模農家

専業的家族農家

女性農業者

高齢農家

兼業農家

新規就農者

副業農家

42,979戸

準主業

17,558戸

主業農家

14,182戸

6,260戸

4,721戸

4,923戸

29,213戸

35,940戸

販売農家74,719戸

1,000万円

500万円

300万円

50万円

JAが定める一定規模の取引農家・集団

産地が定める中心的な担い手

産地を形成する担い手

リストアップし個別対応

認定農業者

中心的な担い手

多様な担い手

○認定農業者(6,079戸)

○特定農業団体(米)

○産地が定める担い手(園芸)

○販売額500万円以上の場合

戸数=約10,000戸戸数割合=16%

販売割合=73%

○販売額300万円未満の場合戸数=約54,000戸戸数割合=77%販売額割合=19%

戸数 認定農家 戸数割 販売割

水稲 450戸X集団

432戸 2% 21%

X%

果樹 3,000戸 1,483戸 15% 52%

野菜花 4,200戸 1,459戸 30% 84%

その他 1,950戸 1,900戸 70% 97%

販売額で8割を占める

多様な担い手(農家の8割)

兼業農家・いきがい農業者

集団対応

61

新基本法に対応する営農事業の展開方向 62

マーケティング活動・営業力の強化多様な販売チャネルへの対応と複数共計(新たな共販)直売・直販事業の拡大相対取引の拡大

量販店・宅配・インターネット販売の台頭

卸売市場取引と共販(野菜指定産地・果樹濃密団地)

旧農業基本法時代に生産販売を支えた体制

食料・農業・農村基本法時代の変化

これからのJAの営農事業の展開方向

人口増加、食糧の確保人口減少、少量多品目生産

多様な農業経営者の団体

農協の育成・協業の助長共同販売・生産部会活動大型集荷調整施設の設置

意欲のある担い手の育成中心的農業者の育成と多様な農業者との連携 小グループ活動

農地法=小作から自作農の自立・保護

平成の農地法改正=所有と利用の分離

利用権の調整主体としての機能発揮基幹作業の担い手の育成

営農団地など集団生産方式農業者の高齢化、集落の混住化

営農組合方式、担い手法人組織の育成

食管法=統制的三段階制行政主体の転作

食糧法=売る自由三段階制の廃止生産者主体の生産調整

食料生産のインテグレーションへの対抗営農資金の調達

近代化資金、公庫資金による営農資金の確保

経済事業と信用事業の分離圧力の強化

63

TPPと国民皆保険制度の崩壊

1.超高齢社会と社会保障2.TPP参加と医療への影響3.国民皆保険制度とTPP4.混合診療とは5.アメリカの医療保険制度と民間医療保険

TPPに参加するとアメリカは何を要求してくるか 64TPP参加後の影響 米韓FTAの場合

第一段階

医療機器・医薬品価格への規制の撤廃

2011年版 外国貿易障壁報告書では

医療機器:外国平均価格調整ルールの廃止又は改定

医薬品:新薬創出加算の恒常化と加算率の上限撤廃。市場拡大再算定ルールの廃止又は改正

米国企業は韓国政府の定めた医薬品・医療機器の償還価格に不満が在る場合には、政府から独立した「医薬品・医療機器委員会」に異議申し立てできる

第二段階

医療特区に限定した市場原理導入

特区医療に限定した株式会社の病院経営の解禁と混合診療の原則解禁

既に日本にも医療特区制度はある

既に3つの経済事由区域が指定され、仁川では全額自費診療のニューヨーク基督長老病院(600床)、他2病院が開業

特区はFTA協定(韓国の医療保険制度は除く)の例外事項としている

第三段階

ISD条項と市場原理の全面的導入

投資家と国家間の紛争解決手続き(ISD条項)に基づき、米国企業が日本政府に損害賠償訴訟を起こす

米韓FTAでは、ISD条項が盛り込まれている。

但し、両国の保険制度の差異を認定するとし、保険制度そのものは条約の範囲外とされている

1201 分化連情報 二木立 日本福祉大学教授 を原型に 一部加筆

韓米FTAが韓国の国民皆保険制度に及ぼす影響 65

①保険薬剤費、保険医療材料費の大幅な増加→薬剤・材料費財政の増嵩

②営利病院の開設許可とその拡大の容認

③民間医療保険への規制ができなくなること

④「ISD条項」(国家的賠償)を求める訴訟を恐れての公的保健・利用政策の後退

FTA協定に組み込まれた「認可ー特許連携制度(先発メーカーが特許を主張・提訴するとそのジェネリック医薬品の販売が自動的に停止する(通常30か月)→新薬の特許期間がどんどん延長され、その独占的な市場占有が許されることで、ジェネリック医薬品は発売そのものができなくなる可能性がある同じく「独立的再審機構」の設立→機構は製薬会社や医療団体、消費者団体で構成→政府や保険者など、保険制度や保険財政の全体を管理する立場の者が含まれない→製薬会社主導の価格形成→薬価の引き上げ

保健医療サービスは未来保留事項(例外規定)とされるが、6つの経済自由区域と済州道(チェジュド)での営利病院設立は例外に。EX。「松島(ソンド)国際病院」の新設(日本大和証券が51%出資した営利法人病院)→住民の反対で営業許可がおりない状況?,仁川イナ大学病院:アジアのメディポート→医療ツーリズム

ラチェット条項により、規制緩和を逆戻りできないので、営利法人を取り消すことはできなくなる

FTA協定は、民間医療保険への規制を認めない内容→現在でも国民皆保険制度の領域に民間医療保険が食い込んでいるが、公的保険制度の改善、民間医療保険拡大を規制する政策は今後事実上不可能に

例え国民のための健康政策であっても、それが投資家の市場縮小につながると考えられた場合、投資家は権利侵害を理由に国際仲裁機構に対象国を提訴することが可能にカナダ:連邦保健法において政府が定めた費用以外の費用を患者に請求することが禁じられているが、米国営利病院から権利侵害であると、提訴された。オーストラリア政府の禁煙政策である「プレーンパッケージ政策」やカナダ・メキシコ州政府が行った有害物資の規制が提訴された。ISD条項は国民の健康を考慮した禁煙政策や有害物質の規制までが難しくなるなどの影響を及ぼしている。

TPPは国民医療を破壊する 京都府保険医協会 かもがわ出版

医療費を上昇さえる協約に挿入された装置 66

許可ー特許連携制度

1984年米国 ワックスマン・ハッチ法案を国際協定に取り入れたもの。韓国、カナダ、豪州、シンガポールのFTA協定に組み入られている。特許権者の「特許権に対する主張」がなされれば、その対象となる医薬品の市販許可が「自動的に停止」される制度この制度により医薬品多国籍メーカーの「エバーグリーニング」(マイナーチェンジで特許を延期する)戦略が活性化する。

独立的検討機構 「医薬品及び医療機器」の「透明性」の確保として、製薬会社、医療機器メーカーが、医薬品、医療機器の保険適用と薬価決定のすべての段階に介入することを認めた。そのため、FTA協定の履行を監視する両国間委員会の設置を明文化、付属書状で、「独立的検討機構」の設置を規定→米豪FTAでは「独立的検討手続き」だけが規定されており、より強化された。→政府の決定を覆すことができる常設機関の設置を意味する=保険適用、価格決定過程における『民営化』の一つ

革新性の認定 全ての特許医薬品、医療器について、革新性を認定し、協定書5.2の「革新に対する接近」の項で、「革新」を特に規定せず「適正な価格を認定する」としており、革新に伴う追加費用を認めることになる。

競争的市場導出価格

競争的市場価格とは先進国市場の「平均価格の導入」(韓国に比べてEUは約2倍、米国は約3倍高い)を意味する。米豪FTAによって豪州医薬品制度(PBS)が、先進国市場の平均価格を基本に、特許医薬品の価格を引き上げる方向で再編された

医療機器も対象 米韓FTAで、医療機器についても、医薬品の制度が適用される。

特区制度 経済自由区域・済州島の営利病院の許可は、①法律改正により、韓国人も受診できるようになり、②外国人が50%以上でも許可されたので、韓国企業も所有可能に

TPPは国民医療を破壊する 京都府保険医協会 かもがわ出版

後発品のない先発医薬品は19.1%の数量で47.9%の金額を占める

67

77.7 22.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1治療費

薬剤費

19.1

47.9

34.3

35.2

22.8

8.8

23.9

3.1

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

数量シェア

金額シェア

先発医薬品 後発品なし

先発医薬品 後発品あり

後発品

その他

国民医療費のシェア

治療費 薬剤費

120618 週刊社会保障 平成23年9月 薬価調査 厚労省

薬剤費は国民医療費36兆円の22.3%に当たる8兆円その8兆円は、先発医薬品で後発品がないもので、47.9%を占め、後発品のあるものを含めればで83.1%を占めている。一方、後発品のない先発医薬品の数量は19.1%に過ぎず、後発品のあるものを含めれば53,4%になる

薬、貿易赤字「陰の主役」 輸入超過、昨年1.3兆円 開発競争で後手

68

医薬品の輸入が拡大している。新薬開発で米欧の後手に回り、海外から高額な抗がん剤などを買う必要があるためだ。輸入が輸出を上回った額(輸入超過額)は2011年には10年前の5倍の1兆3660億円で、日本の貿易赤字(2.5兆円)の隠れた主役になっている。40兆円規模に膨らんだ日本の

医療費を支える税金と保険料は、海外に流れ出ているのが現状だ

慢性骨髄性白血病治療薬のグリベック、乳がんのハーセプチン――。がんだけを狙い撃ちにする分子標的薬は2000年代に急速に広がったが、患者

1人当たりの薬剤費が月数十万円程度と高額なものが多い。ほとんどが海外メーカーの開発で、医薬が進歩すればするほど、輸入が膨らむ構図になっている。

120514 日経

現行の保険外併用療養費① 69

JA長野健保 23年度版健康保険ガイド

保険診療として認めることを前提としないもの

将来的に保険診療として、認めるか評価を行うもの

現行の保険外併用療養費① 70

JA長野健保 23年度版健康保険ガイド

保険適用外併用診療の費用分類 71

http://www.osaka-med.ac.jp/deps/crc/download/hokengai090401.pdf

混合診療全面解禁とは 72【将来:現行通り】

A:保険診療

B:保険外診療(自己負担)

C:自由診療=全て自己負担

A+c‘:保険診療

B+c:保険外診療(自己負担)

A:保険診療

B:保険外診療

C:自由診療=自己負担

【混合診療全面解禁】

【保険外併用診療】

まがい物は自由診療として残し、保険外診療の部分を保険診療に取り入れていく。

差額ベット代や一部の先端医療(将来保険適用が可能な)は、保険外併用診療として包含し、保険が適用されない部分だけ自己負担する

A‘:保険

診療

B‘:保険

外診療

保険支出を抑制するために、保険診療の範囲を限定し、他は保険外として自己負担とする。→お金持ちや都会でしか良い医療が受けられない可能性大=いつでも、どこでも、だれでも同じ医療を受けられない=皆保険制度の崩壊

【自由診療】

混合診療の全面解禁とは自由診療をなくして、すべて保険外併用診療(保険診療と保険外診療を併存させる)に取り込むこと

73

国民皆保険=保険証一つで、いつでも・どこでも・だれでも同じ医療が受けられる

医療制度の構図 74

シリーズ(1)混合診療全面解禁について-(2004/5 掲載)埼玉県医師会会長(当時) 吉原 忠男に一部加筆

自己責任(民間保険適用・市場原理主義)

制度による共助(制度に加入した者の権利)

小さい政府

大きい政府

リスクの個人化

リスクの社会化

アメリカ

日本国民皆保険

北欧

英 仏独

混合診療

小泉改革民主党TPP路線

政策依存弱い低税負担

政策依存強い高税負担

韓国保険病院と

自由病院の分化?

アメリカの医療保険制度 75

公的保険9,200万人

メディケア4,400万人

アメリカの保険

一般保険

65歳以上の高齢者・障害者

保険料はないが、個人負担が必要

一般的に会社や学校を通してグループ保険に加入する保険会社と企業は契約により医療の水準(治療法や薬の種類などを決める)が管理され医療給付の抑制を図る

マネジドケア

民間保険19,600万人

メディケイド4,800万人

低所得者向け

無保険 4,900万人(6人に1人)

オバマ大統領の医療保険改革新たな公的保険の創設を断念し、無保険者が民間保険に加入することを義務づける。保険会社の加入拒否を違法化

がん保険と日米保険協議 76

1974年 アメリカンファミリー生命保険(アフラック)による医療保険としてがん保険の販売開始→当時、日本の保険会社はがん保険など医療保険の販売が禁止されていたので、独占販売の状態

1996年 新保険業法が施行され、生命と損害の相互参入と合わせて医療保険を解禁する予定だったが、日米保険協議(1994年から毎年開催)の結果、日本の保険会社による医療保険への参入は2001年まで延期されることになった

1999年 米国資本のガン保険の国内販売シェアーは85%以上に

日本は公的医療保険制度が充実しており、当時は医療費の窓口負担は1割。また、高額医療費については、別途救済措置があり、所得に応じて医療費の上限が定められおり、基本的に私的な医療保険は必要がなかった。

2001年4月 大手保険会社の子会社に医療保険の販売が解禁2003年4月 医療費の窓口負担 3割に

20××年4月 医療費の窓口負担 5割に なんてこともあり得る

第一分野生命保険の分野=養老・定期・終身保険

第二分野損害保険の分野=火災保険・自動車保険

第三分野第一・第二に含まれない保険ガン保険、医療保険等

高齢化と社会保障費の増加 77

1960 1970 1980 1990 2000 2010

国債費

地方交付税交付金

その他

公共事業

社会保障費

医療費の自然増は毎年1兆円

超高齢社会 782015年団塊の世代が65才以上に

団塊の世代が後期高齢者に

騎馬戦型 肩車型胴上げ型

平成21年度各種保険の運営状況 79

加入者数 加入者1人当たりの平均保険料(率)

公費負担(率)

平成21年度の赤字

市町村国保

3,566万人

(2,033万世帯)

8.3万円(9.1%) 3,000億円

(一般会計繰入)

3兆5千億(50%)

協会けんぽ

3,483万人

(被保険者

1,925万人)

8.6万円(6.2%)

<事業主8.6万円>

1兆2億円

(16.4%)

4,500億円

(毎年保険料の値上げ)

組合健保 2,995万人

(被保険者

1,572万人)

9.0万円(4.6%)

<事業主11万円>

16億円

(財政窮迫組合補助)

6,000億円

(毎年保険料の値上げ)

共済組合 912万人

(被保険者

465万人)

11万円(6.2%) 11億円

<事業主分として

国・自治体11万円>

後期高齢者医療制度

1,389万人 6.3万円(7.9%) ※4兆円(4割)を被用者保険が負

担6兆2千億(約50%)

TPPと医療保険 80

国際競争力を増すには企業の公的負担(税金や社会保険料)を減らせ→海外に出て行くよ

新薬の開発にはお金がかかる→薬価は自由に、特許の保護の充実

混合診療を解禁せよ→公的保険が適用する範囲を狭めて、他は民間保険に→かんぽの完全民営化、JA等共済の他事業からの分離独立

財政赤字は第二のギリシャだ→消費税増税

予算の半分が社会保障費→医療給付の削減を

混合診療(保険診療と非保険診療が同時に受けられる仕組み)を解禁して、公的保険の範囲を限定

医療介護事業は成長産業だ→民間活力を

金融業界:株式会社による病院経営の解禁を

株式会社による病院経営を解禁→儲かる場所・診療しかしない

日本の財界

米国の財界

TPPで加速

いつでも・どこでも・だれでもの皆保険制度の崩壊

金持ちは良い医療がそうでない人は良質な医療が受けられない

農村から医者が居なくなる

手術も特許として認めるべき