vanderbiltの擬ポテンシャル
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2014/5/17 @dc1394
Vanderbiltの擬ポテンシャル
全電子計算から始める
全電子計算におけるSchrödinger方程式は、次のように書ける。
ここで、T:運動エネルギー演算子、VAE:全電子によるポテンシャル、εi:固有エネルギー、|ψi>:全電子波動関数
あるいはハミルトニアンHを用いると、
より、
擬波動関数の導入
ここで、擬波動関数φ(r)を導入し、以下のように書けたと仮定する。
ここでrcは適当なカットオフ半径、ψ(r)は全電子の波動関数であり、擬波動関数φ(r)の具体的な形はまだ未定である。
擬波動関数の性質
擬波動関数φ(r)は以下の条件を満たす。 ノルム保存条件
一般化ノルム保存条件(Vanderbilt擬ポテンシャル[1]
の特徴、これはi = jの特別な場合として、上記のノルム保存条件を含む)
[1] D. Vanderbilt, Phys. Rev. B 42 7892 (1990).
擬波動関数の性質
カットオフ半径での値および微係数の一致(対数微分の一致)
対数微分のエネルギー微分の一致
ハミルトニアンHの特徴
擬波動関数の導入によって、ハミルトニアンHは、
と書ける。
ここで、T:運動エネルギー演算子、V’loc:スクリーニングされた擬ポテンシャル、VNL:非局所擬ポテンシャル演算子、である。
擬ポテンシャルV’locの性質
V’locは以下の性質を満たす。
ここで、Vloc:アンスクリーニングされた擬ポテンシャル、ρv:適用された系における価電子の電子密度、ρc:内殻電子の電子密度、である。
内殻電子の電子密度ρcはデータとして与えてやる必要がある。
アンスクリーニングとVanderbilt擬ポテンシャルの特殊性
TM擬ポテンシャルにおいて、擬ポテンシャルは、VlocからVHとVXCを差し引く(これをアンスクリーニングという)ことによって得られる。
しかし、Vanderbiltの擬ポテンシャルの場合、V’loc
VHおよびVXCの和を計算する必要がある。
Hartreeポテンシャル
VHは、適用された系における価電子の電子密度の汎関数であり、古典的なCoulombポテンシャルの形をしており、Hartreeポテンシャルと呼ばれている。
一般にVHはρに対して線形である。
交換相関ポテンシャル
VXCは、適用された系における価電子の電子密度と、内殻電子の電子密度の汎関数であり、交換相関ポテンシャルと呼ばれている。
これは、選択した密度汎関数法の方法によって異なる形になる。
一般にVXCはρに対して非線形である。
Louieの方法[1]で、この非線形性によって引き起こされる問題をある程度解決できる。
[1] S. G. Louie, S. Froyen, and M. L. Cohen, Phys. Rev. 26 1738 (1982).
非局所擬ポテンシャル演算子VNLの性質
従って、非局所擬ポテンシャル演算子VNLは以下となる。
ここで、
である。
非局所擬ポテンシャル演算子VNLの証明
VNLがシュレーディンガー方程式を満たしていることは、以下のようにして示すことができる。
非局所擬ポテンシャル演算子VNLの証明(続き)
非局所擬ポテンシャル演算子VNLの証明(結論)
ここで、
であったので、
となり、確かに成り立っている。
Vanderbiltのウルトラソフト擬ポテンシャル
一般化ノルム保存条件Qij = 0が満たされているならば、この擬ポテンシャルはノルム保存型である。
しかしVanderbiltは、条件
が満たされるならば、必ずしも一般化ノルム保存条件Qij = 0を満たさなくてもよいことを示した。
Vanderbiltのウルトラソフト擬ポテンシャル
ただし、
であり、オーバーラップ演算子と呼ばれる。
一般化ノルム保存条件の制限がなくなったことによって、必要とする平面波の数は大幅に軽減されうる。
これが、Vanderbiltのウルトラソフト擬ポテンシャルである。
Vanderbiltのノルム保存型擬ポテンシャルの導出
Vanderbiltの非局所擬ポテンシャル演算子は、
であった。これより、Bijを対角化して、
とすると、
であるので、
Vanderbiltのノルム保存型擬ポテンシャルの導出(続き)
ゆえに、
となる。(ただし、U = U*)
ここで、
Vanderbiltのノルム保存型擬ポテンシャルの導出(結論)
とすれば、
なので、
となり、Vanderbiltのノルム保存型擬ポテンシャルが求まる。