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特  集 World Allergy Organization Guidelines for the Assessment and Management of Anaphylaxis アナフィラキシーの評価および管理に関する 世界アレルギー機構ガイドライン F. Estelle R. Simons, MD, FRCPC 1) , Ledit R. F. Ardusso, MD 2) , M. Beatrice Bilò, MD 3) , Yehia M. El-Gamal, MD, PhD 4) , Dennis K. Ledford, MD 5) , Johannes Ring, MD, PhD 6) , Mario Sanchez-Borges, MD 7) , Gian Enrico Senna, MD 8) , Aziz Sheikh, MD, FRCGP, FRCP 9) , and Bernard Y. Thong, MD 10) 翻訳:日本アレルギー学会 Anaphylaxis 対策特別委員会 海老澤 元宏:国立病院機構相模原病院臨床研究センター(委員長) 伊藤 浩明:あいち小児保健医療総合センター 岡本 美孝:千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科頭頸部腫瘍科 塩原 哲夫:杏林大学医学部皮膚科学教室 谷口 正実:国立病院機構相模原病院臨床研究センター 永田  真:埼玉医科大学呼吸器内科/アレルギーセンター 平田 博国:獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科 山口 正雄:帝京大学医学部呼吸器・アレルギー内科 Ruby Pawankar:日本医科大学小児科(JSA-WAO 連携特別委員会) 本稿は次に挙げる World Allergy Organization Journal と J Allergy Clin Immunol の補遺として刊行されたものである. Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, El-Gamal YM, Ledford DK et al. World Allergy Organization guidelines for the assessment and management of anaphylaxis. World Allergy Organization Journal 2011; 4: 2, pp 13-37. (doi:10.1097/WOX.0b013e318211496c) Access at http://www.waojournal.org/content/4/2/13 Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, El-Gamal YM, Ledford DK et al. World Allergy Organization anaphylaxis guidelines: Summary. (See appendix for full guidelines) . Journal of Allergy and Clinical Immunology 2011;127(3) : 587-593.e22. Access at: http://www.jacionline.org/article/S0091-6749%2811%2900128-X/fulltext すべての内容は World Allergy Organization と Elsevier の許諾のもと翻訳された. 1) Department of Pediatrics & Child Health, Faculty of Medicine, University of Manitoba, Winnipeg, Canada, 2) Cátedra Neumonología, Alergia e Inmunología Facultad de Ciencias Médicas, Universidad Nacional de Rosario, Rosario, Argen- tina, 3) Allergy Unit, Department of Internal Medicine, University Hospital Ospedali Riuniti, Ancona, Italy, 4) Pediatric Allergy and Immunology Unit, Ain Shams University, Cairo, Egypt, 5) University of South Florida College of Medicine, Tampa, FL, 6) Department of Dermatology and Allergy, Technology Universitat Muenchen, Munich, Germany, 7) Centro Medico Docente La Trinidad, Caracas, Clinica El Avila, Caracas, Venezuela, 8) The Allergy Unit, Verona General Hospi- tal, Verona, Italy, 9) Center for Population Health Sciences, The University of Edinburgh, Edinburgh, United Kingdom, 10) Department of Rheumatology, Allergy & Immunology, Tan Tock Seng Hospital, Singapore F Estelle R Simons, Room FE125 820 Sherbrook Street, Winnipeg, Manitoba, Canada, R3A 1R9 E-mail:[email protected] Copyright©2011 by World Allergy Organization アレルギー 62(11), 1464―1500, 2013(平25)

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特  集

World Allergy Organization Guidelines for the Assessment

and Management of Anaphylaxis

アナフィラキシーの評価および管理に関する 世界アレルギー機構ガイドライン

F. Estelle R. Simons, MD, FRCPC1), Ledit R. F. Ardusso, MD2), M. Beatrice Bilò, MD3), Yehia M. El-Gamal, MD, PhD4), Dennis K. Ledford, MD5), Johannes Ring, MD, PhD6),

Mario Sanchez-Borges, MD7), Gian Enrico Senna, MD8), Aziz Sheikh, MD, FRCGP, FRCP9), and Bernard Y. Thong, MD10)

翻訳:日本アレルギー学会 Anaphylaxis 対策特別委員会海老澤 元宏:国立病院機構相模原病院臨床研究センター(委員長)伊藤 浩明:あいち小児保健医療総合センター岡本 美孝: 千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科頭頸部腫瘍科塩原 哲夫:杏林大学医学部皮膚科学教室谷口 正実:国立病院機構相模原病院臨床研究センター永田  真: 埼玉医科大学呼吸器内科/アレルギーセンター平田 博国:獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科山口 正雄:帝京大学医学部呼吸器・アレルギー内科Ruby Pawankar: 日本医科大学小児科(JSA-WAO 連携特別委員会)

本稿は次に挙げるWorld Allergy Organization JournalとJ Allergy Clin Immunolの補遺として刊行されたものである.Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, El-Gamal YM, Ledford DK et al. World Allergy Organization guidelines for the assessment and management of anaphylaxis. World Allergy Organization Journal 2011; 4: 2, pp 13-37.

(doi:10.1097/WOX.0b013e318211496c) Access at http://www.waojournal.org/content/4/2/13Simons FER, Ardusso LRF, Bilò MB, El-Gamal YM, Ledford DK et al. World Allergy Organization anaphylaxis guidelines: Summary. (See appendix for full guidelines). Journal of Allergy and Clinical Immunology 2011;127(3): 587-593.e22. Access at: http://www.jacionline.org/article/S0091-6749%2811%2900128-X/fulltextすべての内容は World Allergy Organization と Elsevier の許諾のもと翻訳された.

1)Department of Pediatrics & Child Health, Faculty of Medicine, University of Manitoba, Winnipeg, Canada, 2)Cátedra Neumonología, Alergia e Inmunología Facultad de Ciencias Médicas, Universidad Nacional de Rosario, Rosario, Argen-tina, 3)Allergy Unit, Department of Internal Medicine, University Hospital Ospedali Riuniti, Ancona, Italy, 4)Pediatric Allergy and Immunology Unit, Ain Shams University, Cairo, Egypt, 5)University of South Florida College of Medicine, Tampa, FL, 6)Department of Dermatology and Allergy, Technology Universitat Muenchen, Munich, Germany, 7)Centro Medico Docente La Trinidad, Caracas, Clinica El Avila, Caracas, Venezuela, 8)The Allergy Unit, Verona General Hospi-tal, Verona, Italy, 9)Center for Population Health Sciences, The University of Edinburgh, Edinburgh, United Kingdom, 10)Department of Rheumatology, Allergy & Immunology, Tan Tock Seng Hospital, Singapore

F Estelle R Simons, Room FE125 820 Sherbrook Street, Winnipeg, Manitoba, Canada, R3A 1R9E-mail:[email protected]©2011 by World Allergy Organization

アレルギー 62(11),1464―1500, 2013(平25)

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抄録:図解された世界アレルギー機構(World Allergy Organization: WAO)アナフィラキシーガイドラインは,アナフィラキシーに関する世界的なガイドラインが存在しないことを受けて作成された.このガイドラインの作成以前に,アナフィラキシーの診断および治療に不可欠な基本情報が世界的に不十分であることが報告されていた.このガイドラインは,6 大陸の 100 名を超えるアレルギー/免疫専門医が関与している.勧告の根拠としては,2010 年 12 月末までに刊行された文献により裏付けられた,入手可能な最も有力なエビデンスに基づいている.このガイドラインでは,重度または致死的なアナフィラキシーの患者の危険因子,アナフィラキシーを増殖させる促進因子,妊婦,乳幼児,高齢者,心血管疾患患者など要注意患者におけるアナフィラキシーについて概説する.また,迅速な臨床診断が最も重要であると位置付け,緊急時に必要とされる,設備が不十分な環境でも実施できる基本的な初期治療を重点的に示している.初期治療では,文書化された緊急時用プロトコールを作成して定期的な訓練を行い,アナフィラキシーと診断した後の迅速な支援要請,アドレナリン(エピネフリン)の筋肉注射,患者の仰臥位または楽な体位の確保と下肢の挙上を速やかにかつ同時に行う.必要な場合に追加して行うきわめて重要な手順として,酸素投与,気道確保,静脈路の確保と急速輸液,継続的な胸部圧迫法による心肺蘇生の開始がある.頻回かつ定期的にバイタルサインおよび心肺状態を(可能であれば継続的に)モニタリングする必要がある.このガイドラインでは,基本的な初期治療に難治性のアナフィラキシーの管理についても簡潔に述べる.また,日常生活の場でアナフィラキシーを再発した場合の自己治療の準備,アナフィラキシーの誘因の確定,誘因の回避と免疫調節による再発予防の重要性を強調している.さらに,普及と実施に関する新たな戦略の概要を示し,世界的に検討すべきアナフィラキシーに関する研究課題を提唱している.

Key words: anaphylaxis ―― risk factors ―― clinical diagnosis ―― adrenaline (epinephnine) ―― antihistamines ―― glucocorticoids

(WAO Journal 2011; 4:13-37)

はじめに

 世界的に共通して使用されているアナフィラキシーの定義は,「重篤で致死的な広範あるいは全身性の過敏反応」および「急速に起こり,死に至る可能性がある重篤なアレルギー反応」である1)―3).患者とその介護者がアナフィラキシーを過小認識し,医療従事者が過小診断するため,一般集団における,あらゆる誘因により起こるアナフィラキシーの実際の世界的な発生率は不明である.また,多くの疫学研究では,過小報告,使用される症例定義の違い,使用される発生に関する尺度の違い

(発生率,有病率など),不十分なコード化が問題として認められる.こうした状況ではあるが,アナフィラキシーの発生は稀ではなく,地理的な差

異はあるものの,発生率の上昇傾向が認められる4)―7).国際的な研究に基づいて推定された生涯有病率は 0.05~2% である4). 公衆衛生学的には,アナフィラキシーは死因として稀なものとみなされている7)―13).正確な致死率を明らかにすることは困難である.患者の状況や様子に関する詳細な病歴を目撃者から得られないため,死亡現場の調査が不完全であるため,死亡後の検査によって得られる特異的な病理学的所見が少ないため,疾患特異的な臨床検査がないために,アナフィラキシーによる死亡と診断されないことがしばしばある11). アナフィラキシー患者の評価および管理に関するエビデンス14)―16)は,喘息患者またはアレルギー性鼻炎患者などの評価および管理に関するエビデ

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ンス17)―19)に比して脆弱である.アナフィラキシー発症時に実施する治療介入に関する無作為化対照試験が行われないため,このような状況が続いていると考えられる20).

WAO アナフィラキシーガイドラインの作成

 WAO は,84 の国と地域のアレルギーおよび臨床免疫学に関する学会が加盟し,アレルギーおよび臨床免疫学に関する臨床,研究,教育,訓練の認識を高め,その向上と充実を目指す国際団体である.WAO アナフィラキシーガイドラインは,アナフィラキシーに関する国際的なガイドラインが存在しないことを受けて作成された.独自の観点 このガイドラインの作成以前に,アナフィラキシーの診断および管理に不可欠な基本情報が世界的に不十分であることが報告されていた3).このガイドラインでは,重度または致命的なアナフィラキシーの患者危険因子,アナフィラキシーを増幅させる促進因子,妊婦,乳幼児,高齢者など要注意患者におけるアナフィラキシーについて概説する.また,心臓マスト細胞の生物学的役割と,急性冠動脈症候群を呈するアナフィラキシーについて考察する.本ガイドラインでは,迅速な臨床診断が最も重要であると位置付け,緊急時に必要とされる,国,地域,航空機の客室内,僻地などの特定の場所などで設備が不十分な環境でも実施できる基本的な初期治療を重点的に示している.心肺蘇生に関する勧告は,胸部圧迫法の後に人工呼吸を行うことを提言している,2010 年のガイドラインに基づいている.また,アレルギー/免疫専門医が果たす役割の重要性,特に再発予防に関して果たす役割について明確に示している.勧告の根拠としては,2010 年末までに発表された文献を参照した.さらに,アナフィラキシーの評価および管理における未確定事項について世界的に検討する際の研究課題も提案している.なお,言語の障壁に関わらず理解を促進するため,このガイドラインにおいて示す評価および治療の 5 つの各指針をまとめた図も示してある.

作成の根拠,目的,適応範囲 アナフィラキシーの評価および管理に関する国際的なガイドラインはこれまでに発表されておらず,多くの国でアナフィラキシーガイドラインが使用されていない3).一方,各国または各地域のアレルギー/免疫学に関わる団体が作成したガイドライン,あるいは,このような団体から提供された情報に基づいて作成されたガイドラインは,適応範囲と包括性に差異が見られる.エビデンスに基づいていないガイドラインも認められる.PubMed などの検索エンジンにインデックス化されていて検索可能で,ピアレビューが行われる医学誌に発表されたガイドラインはごくわずかにすぎない21)―29).アドレナリンのアンプルを除き,アナフィラキシーの治療に不可欠な薬剤,医療備品,医療機器の多くは,世界各地において普遍的に入手可能なものではない3). WAO アナフィラキシーガイドラインは,医療現場におけるアナフィラキシーの評価および管理の最新概念の認知度を世界的に高めること,各地域におけるアナフィラキシーの再発予防または減少,アナフィラキシーに関する研究課題の提案,アナフィラキシー教育への寄与,アナフィラキシーに関わる人員/機器などの増強を目的としている. WAO ガイドラインは主に,アナフィラキシーガイドラインがない国のアレルギー/免疫専門医による使用と,アナフィラキシーガイドラインが既にある国における付加的資料としての使用を意図して作成されたが,幅広い領域の医療従事者にとっても興味深い内容であると考えられる.このガイドラインでは,医療現場(病院,診療施設,診療所)におけるアナフィラキシーの評価および管理に関する勧告と,日常生活の場におけるアナフィラキシーの管理および予防に関する勧告を示している.特に,設備が不十分な環境でも実施できる,アナフィラキシーの基本的な初期治療を重点的に示す.また,最適な環境下における難治性アナフィラキシーの評価および管理についても簡潔に考察している.

1466 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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方法 このガイドラインは,2007 年に WAO 理事長が任命したアナフィラキシー特別委員会(Anaphy-laxis Special Committee)が作成した.アナフィラキシーに関連する多くの臨床的な疑問点の回答となる無作為化対照試験は実施されていないが,本ガイドラインは入手できる最も有力なエビデンスに基づいている30).何が必須で何が必須でないかを判断する際には,WAOが実施した,アナフィラキシーの評価および管理に不可欠な基本情報に関する調査3)を参照した.また,論文検索システムに対応し,インデックス化されており,ピアレビューが行われる医学誌に発表された,アレルギー/免疫学に関わる団体が作成したアナフィラ

キシーガイドラインまたはこのような団体から提供された情報に基づいて作成されたガイドライン21)―29),コクラン・システマティックレビューなどのアナフィラキシーに関するレビュー2)14)―16)31)32)

も参照した.2009 年に,委員会メンバーによる会議と電子メールによる協議を経てガイドラインの草稿を作成し,WAO 理事会のメンバーに配付してコメントを求めた.同年にブエノスアイレスで開催された世界アレルギー学会においても参加者に提示され検討された.2010 年に,WAO に加盟する学会と WAO 理事会に本ガイドラインを配布し,検討,追加コメント,承認を求めた.ガイドライン作成には,6 大陸の 100 名を超えるアレルギー/免疫専門医が貢献している.

表 1 アナフィラキシー診断のための臨床判断基準

以下の 3 つの基準のうち,1 つ以上を満たす場合,アナフィラキシーである確率が非常に高い1.急速に(数分~数時間)起こる皮膚・粘膜のいずれかまたは両方に及ぶ(全身性の蕁麻疹・瘙痒感・紅斑,

口唇・舌・口蓋垂の腫脹)病変に加え,さらに少なくとも次の 1 つを伴う場合A)呼吸器障害(呼吸困難,喘鳴/気管支痙攣,上気道性喘鳴,PEF 低下,低酸素血症)B)血圧低下や随伴症状である末梢循環不全(筋緊張低下[虚脱],失神,失禁)

2.アレルゲンと疑われるものa に患者が接触してから数分~数時間の後に,下記 2 つ以上の項目が急速に発症した場合

A)皮膚・粘膜の病変(全身性の蕁麻疹・瘙痒感・紅斑,口唇・舌・口蓋垂の腫脹)B)呼吸器障害(呼吸困難,喘鳴/気管支痙攣,上気道性喘鳴,PEF 低下,低酸素血症)C)血圧低下や随伴症状(筋緊張低下[虚脱],失神,失禁)D)持続的な消化器症状(疝痛発作,嘔吐)

3.患者にとって既知のアレルゲンb に曝露されてから数分~数時間の後に血圧低下が起きた場合A)乳幼児・小児の場合:収縮期血圧の低下(年齢に応じた)または平常時血圧の 30% を超えて血圧

が低下c する場合B)成人:収縮期血圧が 90mmHg を下回る,または患者の平常時の血圧の 30% を超えて低下する場合

PEF:最大呼気流量a その他の誘因の例)IgE が関与しない免疫学的機序または非免疫学的(直接的)機序によりマスト細胞を活性化する場合.b 例)昆虫に刺された後などは血圧低下が唯一のアナフィラキシーの予兆となりうる.また,同様に,免疫療法中の患者にとって,既知のアレルゲン注射後の全身性蕁麻疹(影響を受けるのは 1 器官系のみ)は,アナフィラキシーの最初の唯一の予兆となりうる.c 小児の血圧低下は,生後 1 か月~ 1 歳では 70mmHg 未満,1 歳~ 10 歳までは(70mmHg+(2×年齢))未満,11歳~17 歳までは90mmHg 未満とする.正常心拍数は,1歳~ 2 歳は 80~ 140回/分,3 歳は 80~ 120回/分,4 歳以上は 70 ~ 115 回/分とする.乳幼児では,血圧低下やショックより呼吸器障害が起こりやすく,この年齢層の場合,ショックの前兆として血圧低下より頻脈が起こりやすい.

(臨床判断基準 1,2,3 は参考文献 2 から抜粋.)(脚注 b は参考文献 33,脚注 c は参考文献 34 に基づく.)

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図 1. アナフィラキシーに関与する患者因子.年齢関連因子,合併症,服用中の薬剤は,重度または致命的なアナフィラキシーに関与する可能性がある.促進因子は,アナフィラキシーを増幅させる可能性がある.アナフィラキシー誘発の一部には,複数の因子および促進因子が関与する場合があ る 2)8)―13)31)―47)57).アトピー性疾患は,食物,運動,ラテックスを誘因とするアナフィラキシーの危険因子であるが,昆虫に刺された場合および薬剤を誘因とするアナフィラキシーの危険因子ではない.b 遮断薬:b アドレナリン遮断薬.ACE 阻害薬:アンジオテンシン変換酵素阻害薬.

年齢関連因子*

合併症*

薬剤/アルコール/嗜好性薬物の使用*

アナフィラキシーを増幅させる促進因子*

乳幼児症状を説明できない

喘息などの呼吸器疾患 心血管疾患

βアドレナリン遮断薬,ACE阻害薬***

運動 急性感染症(感冒,発熱など) 精神的ストレス 非日常的な活動

(旅行など)月経前状態(女性)

アルコール/鎮静剤/睡眠薬/抗うつ剤/嗜好性薬物(アナフィラキシーの誘因と症状の認識に影響を及ぼす可能性がある)

マスト(肥満)細胞症/クローン性マスト細胞異常

アレルギー性鼻炎,湿疹**

精神疾患(うつ病など)

思春期・青年期リスクを伴う行動が増加

高齢者薬剤または蜂毒を誘因とするアナフィラキシーによる致死リスク増大

妊娠・出産薬剤によるリスク

(新生児B群レンサ球菌感染症予防のための抗生物質など)

*年齢関連因子,合併症,薬剤は,重度または致命的なアナフィラキシーに関与する可能性がある.促進因子は,アナフィラキシーを増幅させる可能性がある.一部のアナフィラキシー発症には,複数の因子および促進因子が関与すると考えられる.**アトピー性疾患は,食物,運動,ラテックスを誘因とするアナフィラキシーの危険因子であるが,昆虫刺咬により発生するアナフィラキシーの危険因子ではない.***ACE:アンジオテンシン変換酵素

1468 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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アナフィラキシー患者の評価

 アナフィラキシーの診断は,臨床所見に基づいて行う2)33)34)(表 1).ガイドラインのこのセクションでは,重度または致命的なアナフィラキシーの患者危険因子,アナフィラキシーを増幅させるその他の促進因子,アナフィラキシーの誘因,臨床診断の重要性,臨床検査の使用法,鑑別診断について概説する.重度または致死的なアナフィラキシーの患者の危険因子,およびアナフィラキシー増悪の促進因子 重度または致死的なアナフィラキシー発症リスクを上昇させる患者因子の多くは,世界的に類似している.患者因子としては,年齢関連因子34)―36),喘息およびそれ以外の慢性呼吸器疾患などの合併症10)37)38),心血管疾患39)―41),マスト(肥満)細胞症42)

またはクローン性マスト細胞異常43)44),アレルギー性鼻炎など重症のアトピー性疾患45)を挙げることができる.β アドレナリン遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬など一部の薬剤を併用した場合にも,発症リスクが上昇することがある40)41)46)―48)(図 1). さらに,重度または致死的なアナフィラキシーの発症は,メディエーターの分解経路の異常と関連している可能性がある.その結果,例えば,トリプターゼ,ヒスタミン,ブラディキニン(血清ACE 活性の低下のため),血小板活性化因子

(PAF)(血清 PAF アセチルヒドロラーゼ活性の低下のため)のベースライン高値をもたらすことがある45)49)―52). アナフィラキシーを増幅または増強させる促進因子にも共通性が見られる.このうち,運動誘発アナフィラキシーは最も研究が進んでおり,特定の食物(小麦/ω-5 グリアジン,セロリ,甲殻類など)の摂取が関与していることが多い.まれに,アルコール,または腸透過性とアレルゲン吸収を亢進する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の摂取も関与する53)―56).アナフィラキシーを増幅させる促進因子としては,上気道感染症およびそれ以外の急性併発性感染症,発熱,精神的ストレス,旅行などによる日常生活の中断,女性の月経前状

態も挙げることができる2)45)57).複数の因子および促進因子が,一部のアナフィラキシー発症に寄与すると考えられる45)57).アナフィラキシーの誘因 各年齢層において,アナフィラキシーを誘発する比較的重要な誘因は,世界共通であると思われる.食物は,小児,ティーンエイジャー,青少年に最も多い誘因である.昆虫刺咬と薬剤は,中年者,高齢者における誘因として比較的多い.この年齢層では,除外診断である特発性アナフィラキシーも比較的多くみられる31)32).アナフィラキシーの機序と誘因について,図 2 に示す2)22)―25)31)32)53)―87). アナフィラキシーの特異的誘因の多くは世界共通であるが,重要な地理的差異があることも報告されている.誘因となる食物は,地域の食生活,特定の食物への曝露,食物の調理法により異なる58)―67).北米諸国と,欧州,およびアジアの一部の国では,牛乳,鶏卵,ピーナッツ,木の実,甲殻類,魚が多く見られる原因食物である.これ以外の欧州諸国では桃などの果物,中東ではゴマが誘因になることが多い.また,アジアの場合,ソバ,ヒヨコマメ,米,ツバメの巣のスープなどの食物を誘因として検討する必要がある. 大陸ごとに異なる昆虫集団が存在し,同一大陸内でも地域により差異が見られる.その結果,分類上の各目各科の刺咬昆虫に曝露する確率と,その昆虫によりアナフィラキシーを発症するリスクに差異が生じる68)―71).刺咬昆虫(膜翅目)とアナフィラキシーとの関係は欧州,北米,オーストラリアのみで広範に研究されている.サシガメ(半翅目),蚊(双翅目),マダニ(ダニ目)などの刺咬昆虫を誘因とするアナフィラキシーについては十分に研究されていない. 抗菌薬,抗ウイルス薬,抗真菌薬などの薬剤は,世界共通のアナフィラキシーの誘因である72)73).国による差異のある薬剤として,例えばリウマチ熱に対して筋注用ペニシリンが使用され続けている国では筋注用ペニシリンによるアナフィラキシーが多く認められ,抗結核薬によるアナフィラキシーが比較的多く認められる国もある.NSAIDsは通常,同じ薬理学的クラス内でも薬剤特異的に

1469F. Estelle R. Simons, et al.

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図 2. アナフィラキシーの機序および誘因.アナフィラキシーは通常,IgE が関与する免疫学的機序により発生し,最も多くみられる誘因は食物,刺咬昆虫の毒,薬剤である.薬剤は,IgE が関与しない免疫学的機序,およびマスト細胞を直接活性化することによっても,アナフィラキシーの誘因となりうる.造影剤は,IgE が関与する機序と関与しない機序の両者により,アナフィラキシーの誘因となりうる.精液,吸入アレルゲンを誘因とするアナフィラキシーがまれに見られ,アレルゲンの全身への吸収が関与していると考えられる.特発性アナフィラキシー患者の場合,誘因としての新たなアレルゲン,あるいはマスト(肥満)細胞症またはクローン性マスト細胞異常の可能性について検討すべきである 2)22)―25)31)32)53)―87).NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬.HMW:高分子量.

(IgEが関与する)免疫学的機序

(IgEが関与しない)免疫学的機序

非免疫学的機序(マスト(肥満)細胞を直接活性化する場合)

特発性アナフィラキシー(明らかな誘因が存在しない)

ピーナッツ 木の実 甲殻類 魚

牛乳 鶏卵 大豆 桃 ゴマ 刺咬昆虫

βラクタム系抗生物質*

NSAIDs*** 生物学的製剤*

食物 毒 薬剤

天然ゴムラテックス 職業性アレルゲン 精液 空中アレルゲン 造影剤*

造影剤* NSAIDs*** デキストラン(HMW***の鉄その他の供給源など)

生物学的製剤*(一部のモノクローナル抗体など)

身体的誘因(運動,低温,高温,日光など) アルコール 薬剤*

(オピオイドなど)

これまで認識されていないアレルゲンの可能性*複数の機序により,アナフィラキシーの誘因となる **NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬 ***HMW:高分子量

マスト(肥満)細胞症/クローン性マスト細胞異常の可能性

1470 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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アナフィラキシーの誘因となる.それは,喘息,鼻炎,鼻茸,慢性蕁麻疹など他の NSAIDs 関連疾患とは関連性がない74). アナフィラキシーは,化学療法剤(カルボプラチン,ドキソルビシン)や,モノクローナル抗体

(セツキシマブ,リツキシマブ,インフリキシマブ,まれにオマリズマブ)などの生物学的製剤によっても引き起こされることがある72)75)―77).さらに,ヘパリンに含まれる過硫酸化コンドロイチン硫酸78)などの薬剤添加物や漢方薬79)も,アナフィラキシーの誘因となりうる. 検査薬の中でアナフィラキシーの誘因として比較的多いものに,造影剤(RCM)24)80),フルオレセインなどの医療用色素がある.また,周術期に治療の治療薬でアナフィラキシーの誘因となるものとして,神経筋遮断薬(スキサメトニウム,ロクロニウムなど),麻酔薬(チオペンタール,プロポフォールなど),オピオイド,抗菌薬,プロタミン,クロルヘキシジン,ラテックス,コロイド状血漿増量剤(デキストランなど)がある24)81)82).アレルゲン皮膚テスト(特に皮内テスト),食物または薬剤によるチャレンジ/誘発テスト,アレルゲン免疫療法,薬剤脱感作も,アナフィラキシーの誘因になる可能性がある33)59)72)73)83)84).天然ゴムラテックス(NRL)は,医療現場において,医療機器

(フェイスマスク,気管内チューブ,血圧測定用カフ,聴診器のチューブなど)および医療消耗品(使い捨て手袋,カテーテル,粘着テープ,止血帯,ゴム栓付きバイアルなど)に使用され,アナフィラキシーの誘因になる可能性がある.NRL は,日常生活においても,使い捨て手袋,コンドーム,乳児用のおしゃぶり,風船,玩具,スポーツ用品などの物品に使用されており,アナフィラキシーの誘因になりうる.NRL に感作された患者では,交差反応性を持つ食物がアナフィラキシーを誘発することもある24).重要なことに,感染症を予防するためのワクチンは,アナフィラキシーの誘因になることは稀である85). 養蜂家におけるハチ毒,医療従事者におけるラテックスなどの職業性アレルゲンがアナフィラキシーの誘因になることがある24)68)69).まれに,アト

ピーの女性において,精液がアナフィラキシーの誘因になりうる24)32)86).また,エアロゾル化した食物粒子,花粉,動物の皮屑などの空中アレルゲンがアナフィラキシーの誘因になることも稀にあり,これには,気道や皮膚を通してアレルゲンが全身性に吸収されることが関与していると考えられる. 特発性アナフィラキシーという診断は,発症時の詳細な病歴聴取,アレルゲン皮膚テスト,既知又は未知のアレルゲン候補に対する血清 IgE 値を測定し,特定の患者において必要な場合は医療従事者の監視下における段階的なチャレンジ/誘発テストを行っても,誘因を特定できない場合に下される24)32)87).特発性アナフィラキシーという診断の中から,その時点までに認識されていない誘因

(赤肉類に含まれる糖であるガラクトース α-1,3-ガラクトースに対するアナフィラキシーなど)67)

や,病態生理学的機序(ヘパリンに混入した過硫酸化コンドロイチン硫酸が,補体経路と凝固経路を介してアナフィラキシーの誘因になる,など)78)

が解明される可能性がある.さらに特発性アナフィラキシーと診断された患者の中から,病歴,身体診察,平常時の血清トリプターゼ高値,必要なその他の検査により,マスト(肥満)細胞症やクローン性マスト細胞異常を特定できる可能性もある42)―44).臨床診断の重要性 アナフィラキシーの診断は主に,症状発現数時間以内の,あらゆる曝露とイベントに関する情報を含めた発症時の詳細な経過(問診)に基づいて行う.このような情報としては,運動,処方薬の摂取,処方薬以外の薬剤の摂取,嗜好性薬物の摂取,アルコールの摂取,感冒などの急性感染症,精神的ストレス,旅行などによる日常生活の中断,女性の月経前状態などがある.診断においては,特徴的なパターンを認識することがカギとなる.すなわち,既知の誘因または可能性のある誘因への曝露後数分~数時間以内に特徴的な症状および徴候が突然起こり,場合によってはその後数時間にわたって症状および徴候が急速に進行するとき,アナフィラキシーと診断する2)32).アナフィラ

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図 3. アナフィラキシーの診断のための臨床判断基準.ここに図示した臨床判断基準は,参考文献 2 からの抜粋である.1 器官系のみが関与するアナフィラキシーについては,参考文献 2 および 33 を参照.乳幼児のアナフィラキシーについては,参考文献 34 を参照.

1472 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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キシーの診断のための臨床判断基準の詳細を,図3 および表 1 に示す2)31)―34). アナフィラキシーの標的となる臓器は多種である.通常,症状は,皮膚・粘膜,上気道・下気道,消化管,心血管系,中枢神経系の中の 2 つ以上の器官系に生じる2).特定の状況では,1 臓器症状でも,アナフィラキシーと診断できる.例えば,昆虫に刺された後に突然起こる心血管症状は唯一の徴候となりうる.また,アレルゲン免疫療法後に

突然起こる全身性蕁麻疹は最初の唯一の徴候となりうる2)33). アナフィラキシーに特徴的な症状および徴候を表2に示す2)22)―25)31)32).皮膚徴候は全患者の80~90%に認められ,皮膚徴候がない場合にアナフィラキシーを認識するのは困難である.症状および徴候のパターン(発症,数,経過)は患者により異なり,同一患者でもアナフィラキシーの発症毎に差異が認められる.発症初期には,進行の速さや最

表 2 アナフィラキシーの症状および徴候

皮膚,皮下組織,粘膜a, b, c

紅潮,瘙痒感,蕁麻疹,血管浮腫,麻疹様発疹,立毛眼窩周囲の瘙痒感,紅斑および浮腫,眼結膜充血,流涙口唇・舌・口蓋・外耳道の瘙痒感,口唇・舌・口蓋垂の腫脹性器・手掌・足底の瘙痒感

呼吸器a

鼻瘙痒感,鼻閉,鼻汁,くしゃみ咽頭瘙痒感,咽喉絞扼感,発声障害,嗄声,上気道性喘鳴,断続的な乾性咳嗽下気道:呼吸数増加,息切れ,胸部絞扼感,激しい咳漱,喘鳴/気管支痙攣,ピークフロー値(PEF)低下チアノーゼ呼吸停止

消化器a

腹痛,嘔気,嘔吐(糸状の粘液),下痢,嚥下障害心血管系a

胸痛頻脈,徐脈(まれ),その他の不整脈,動悸血圧低下,失神する感じ,尿失禁または便失禁,ショック心停止

中枢神経系a

切迫した破滅感,不安(乳幼児や小児の場合は,突然の行動変化,例えば,短気になる,遊ぶのを止める,親にまとわりつくなど),拍動性頭痛(アドレナリン投与前),精神状態変化,浮動性めまい,錯乱,トンネル状視野

その他a

口内の金属味女性の場合,子宮収縮による疝痛と出血

a 症状および徴候が突然起こるのが,アナフィラキシーの特徴である.b 本表の徴候および症状の一覧は,アナフィラキシー発症の迅速な診断に役立てるため,および複数器官系への急速な進行の可能性を示したものであり,重症度のグレード付けを行うためのものではない.c 皮膚および粘膜の症状はアナフィラキシー患者の 80 ~ 90% に発現することが報告されている.また,気道症状は最大 70%,消化管症状は最大 45%,心血管系症状は最大 45%,中枢神経系症状は最大 15% であることが報告されている.症状のパターンは患者により異なり,同一患者でもアナフィラキシーの発症毎に異なる.少数の症状のみを呈する場合もある.

(参考文献 2,22-25,31,32 より引用.)

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終的な重症度の予測が困難であり,数分で死に至ることもある2)13)22)―25)31)32). アナフィラキシーの診断が時に困難な場合がある.視覚障害または聴覚障害,神経疾患,精神疾患(うつ病,薬物乱用,自閉症関連障害,注意欠陥・多動性障害,認知障害など)を有する患者は,アナフィラキシーの誘因と症状の認識力が低下している可能性がある32).年齢を問わず,鎮静剤,睡眠薬,抗うつ剤,鎮静性のある第一世代 H1 抗ヒスタミン薬などの中枢神経に作用する薬剤を併用すると,アナフィラキシーの誘因と症状の認識力,症状の説明能力が阻害される可能性がある.喘息,慢性閉塞性肺疾患,うっ血性心不全などの合併患

者では,これらの疾患の症状および徴候により,アナフィラキシーの鑑別診断が困難になることがある32).注意を要する患者 妊娠時にアナフィラキシーを起こすと,母子ともに死亡または低酸素性虚血性脳症に至るリスクが高い.妊娠第 1,第 2,第 3 三半期における可能性のある誘因は妊娠していない女性と同様である.分娩および出産中にアナフィラキシーを発症した場合,その誘因は通常オキシトシンなどの医療行為であるが,新生児 B 群溶血性レンサ球菌感染症予防のため母親に投与されるペニシリン,セファロスポリンなどの抗菌薬を誘因とするアナ

表 3 アナフィラキシーの診断における臨床検査の役割

総トリプターゼ(pro, pro’, and mature forms of alpha/beta tryptase)症状発症後 15 分~ 3 時間の範囲内で血液検体を採取するa, b

アナフィラキシー経過中に適切な時間に採取した血液検体の測定を考慮する発症中の測定値とベースライン測定値を比較することを考慮するc, d

ヒスタミン症状発症後 15 分~ 1 時間の範囲内で血液検体を採取するa

血液検体に対する特別な処理(広口径針の使用,検体を 4℃ に保ち迅速に遠心分離,血漿を迅速に凍結)を必要とする24 時間尿検体中のヒスタミンおよびヒスタミン代謝物 N-メチルヒスタミンを測定する

その他e

a トリプターゼ値は,心筋梗塞,外傷,羊水塞栓,乳児突然死症候群などの疾患においても急速に上昇することがある.ヒスタミン値は,サバ中毒においても上昇することがある(通常,同じ魚を摂食した複数名が発症する).b 死亡後の血清トリプターゼ値を測定可能である.この際の血液検体は,心臓ではなく大腿部の血管からの採取が望ましい.トリプターゼ高値はアナフィラキシーと無関係の心筋梗塞,外傷,羊水塞栓,乳児突然死症候群など他の疾患に関連して死亡した患者においても認められるため,トリプターゼ値と臨床経過との間に関連が認められる必要がある.一方,臨床的にアナフィラキシーであることが実証された患者のトリプターゼ値が正常範囲内の値を示すこともある.c 可能であれば,急性発症からの回復後 24 時間経過時の血液検体または凍結血清の測定値.-20℃ で保存された血清のトリプターゼ値は 1 年以上安定している.d ベースライン血清トリプターゼ値が 11.4ng/mL 超の場合,マスト(肥満)細胞症またはクローン性マスト細胞異常である可能性について検討する必要がある.急性アナフィラキシー発症中のトリプターゼ値がベースライン血清トリプターゼ値より高い場合,アナフィラキシーという確定診断を下す.急性アナフィラキシーを発症していると臨床的に診断した場合に,トリプターゼ値が正常範囲内の値を示しても,これを根拠としてアナフィラキシーを除外することはできない.e 一般的に使用されていないが,アナフィラキシーの鑑別診断においては,総トリプターゼおよびヒスタミン以外の特異的な臨床検査を実施し,カルチノイド症候群,褐色細胞腫に対する奇異性反応,その他のまれな疾患を除外する必要がある.

(参考文献 3,24,42-44,50,51,90 より引用.)

1474 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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フィラキシーも多く認められる36). 乳幼児期のアナフィラキシーの診断は難しいことがある.乳幼児は症状を説明できない.乳幼児の場合,泣いた後に起こる皮膚紅潮や発声障害,摂食後に起こす嘔吐,失禁など,アナフィラキシーの徴候の一部は正常児でも毎日認められる.健常な乳幼児の血圧は年長児,成人に比して低く,安静時心拍数も多いため,血圧低下と頻脈については,年齢に応じた判断基準を用いる必要がある34)

(表 1). ティーンエイジャーは,アナフィラキシーの誘因を避けない,自己注射用アドレナリンを携帯しないなど,リスクを伴う行動をとるため,アナフィラキシーの再発に関して注意を要する31). 中年および高齢者は既知または無症状の心血管疾患により,またその治療薬により,重度または致命的なアナフィラキシーを起こすリスクが高い39)―41)46)47).健常なヒトの心臓の冠動脈および壁内血管の周囲,心筋線維間,冠動脈内皮にマスト細胞が存在する39).虚血性心疾患患者では,これらのマスト細胞数が増加し,密度が高まるだけでなく,マスト細胞がアテローム性動脈硬化巣にも存在する.アナフィラキシーの際に心臓のマスト細胞から放出されるヒスタミン,ロイコトリエン,PAF などのメディエーターが血管収縮と冠動脈攣縮を引き起こす39).アナフィラキシーは,アドレナリン注射前またはアドレナリン注射をしない場合に,急性冠動脈症候群(ACS)(狭心症,心筋梗塞,不整脈)として発現することがある.アナフィラキシーによる ACS は,既知の冠動脈疾患患者や無症状の冠動脈疾患患者だけでなく,心血管異常のない患者での一過性の血管攣縮でも起きうる39)88)89).臨床検査の役割 トリプターゼ値測定用の血液検体は,症状発現後 15 分~3 時間の範囲内での採取が最適である.また,ヒスタミン値測定用の血液検体は,症状発現後 15~60 分の範囲内での採取が最適である(表3).これらの検査は一般的に使用されていない.また,緊急時に実施されず3)24)50)51)90),アナフィラキシー特異的ではない.

 血清トリプターゼ高値は,昆虫に刺された後または薬剤注射後にアナフィラキシーを発症し,血圧が低下している患者の臨床診断の根拠となることが多い.しかし,食物によるアナフィラキシーを発症し,血圧が正常な患者の場合,血清トリプターゼ値は正常範囲内であることが多い90).アナフィラキシー発症中のトリプターゼ値を経時的に測定するとともに,回復後のベースライン値を測定すると,一時点のみの測定より有用であることが報告されている.トリプターゼまたはヒスタミンが正常値であってもアナフィラキシーの除外基準とはならない50)51)90)(表 3).PAF,カルボキシペプチダーゼ A3 など,これ以外のバイオマーカーの血液検査については未だ研究レベルである52)90).鑑別診断 アナフィラキシーとの鑑別が困難であり,多く認められる疾患として,喘息発作,失神,不安発作/パニック発作を挙げることができる2)22)―25)31)32)

(表 4).喘息とアナフィラキシーの両者において喘鳴,咳嗽,息切れが生じうるため,アナフィラキシーと重症喘息発作との鑑別は困難であるが,喘息発作において瘙痒感,蕁麻疹,血管浮腫,腹痛,血圧低下が生じることは少ない.不安発作/パニック発作とアナフィラキシーの両者において切迫した破滅感,息切れ,皮膚紅潮,頻脈,消化器症状が生じうるため,アナフィラキシーと不安発作/パニック発作との鑑別は困難であるが,不安発作/パニック発作において蕁麻疹,血管浮腫,喘鳴,血圧低下が生じることは少ない.失神とアナフィラキシーの両者において血圧低下が生じうるため,アナフィラキシーと失神との鑑別は困難であるが,失神による症状は横臥位をとると軽減され,通常は蒼白と発汗を伴い,蕁麻疹,皮膚紅潮,呼吸器症状,消化器症状がない2)24)32). 食後症候群,内因性ヒスタミン過剰症候群,皮膚紅潮症候群,非器質性疾患などの疾患も鑑別診断において考慮する必要がある2)24)31)32)(表 4).これらの疾患の中には,疾患を理解する上での重要な進歩が報告されているものもある91)92). 年齢および性別を考慮することは,アナフィラキシーの鑑別診断に有用である.例えば,分娩お

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よび出産中に認める羊水塞栓,乳幼児および若年小児に認める木の実や異物による窒息および誤嚥,中年者または高齢者に認めるアナフィラキシーと無関係の脳血管イベント,肺塞栓症,心筋梗塞を挙げることができる34)―36)39)―41).

医療現場におけるアナフィラキシーの治療

 アナフィラキシーは医療上の緊急事態である.迅速な評価および治療がきわめて重要である.本セクションでは,アナフィラキシーの基本的な初

期治療の系統的アプローチについて説明し,治療においてアドレナリンが果たす中心的役割を明確に示す.また,緊急時用プロトコールの作成,曝露誘因の除去(可能である場合),患者の迅速な評価,支援要請・アドレナリンの筋肉注射・適切な患者体位の確保を同時に実行することの重要性についても述べる.呼吸窮迫,血圧低下,ショックの初期治療についても概説し,抗ヒスタミン薬,β2 アドレナリン受容体刺激薬,グルココルチコイドなど,第 2 選択薬の使用について説明する.さ

表 4 アナフィラキシーの鑑別診断

鑑別困難で多く認められる疾患 皮膚紅潮症候群喘息発作a 閉経周辺期失神 カルチノイド症候群不安発作/パニック発作 自律神経性てんかん急性全身性蕁麻疹a 甲状腺髄様癌異物の誤嚥 非器質性疾患心血管イベント(心筋梗塞a,肺塞栓症) 声帯機能不全神経学的イベント(けいれん,脳血管イベント) 過換気

食後症候群 心身症サバ中毒b ショック花粉―食物アレルギー症候群c Hypovolemicグルタミン酸ナトリウム 心原性亜硫酸塩 血液分布異常性d

食中毒 敗血症性その他

内因性ヒスタミン過剰 非アレルギー性血管浮腫マスト(肥満)細胞症/クローン性マスト細胞異常e 遺伝性血管浮腫 I 型,II 型,III 型好塩基球性白血病 ACE 阻害薬関連の血管浮腫

全身性毛細管漏出症候群レッドマン症候群(バンコマイシン)褐色細胞腫(奇異反応)

a 喘息発作の症状,急性全身性蕁麻疹,または心筋梗塞の症状は,アナフィラキシー経過中にも発現しうる.b 常温下で保存されたマグロなどの魚に由来するヒスタミン中毒.通常,その魚を摂食した複数名が発症する.c 花粉/食物アレルギー症候群(口腔アレルギー症候群)は,花粉アレルゲンとの交差反応性の高い植物性タンパク質を含む果物や野菜を摂取することにより誘発される.典型的な症状には,生の未調理の果物や野菜摂食後に起こる,口唇・舌・口蓋・咽頭・耳の瘙痒感,イガイガ感,血管浮腫がある.d 血液分布異常性ショックは,アナフィラキシーまたは脊髄損傷に起因する.e マスト(肥満)細胞症およびクローン性マスト細胞異常を有する場合,アナフィラキシーのリスクが高い.また,アナフィラキシーが本疾患の初期症状にもなりうる.

(参考文献 2,22-25,31,32,91,92 より引用.)

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図 4. アナフィラキシーの基本的な治療.この図に示す基本的な初期治療は,比較的安価で実行でき,設備が不十分な環境でも実行可能と考えられる.アナフィラキシーと診断した場合は直ちに,4,5,6 として示した手順を速やかに同時に行う必要がある.蘇生に関するガイドラインでは,胸部圧迫法のみ(手のみ)による心肺蘇生後に人工呼吸を行うよう勧告されている.成人の場合,胸部圧迫法の速さは 100 ~ 120 回/分,深さは 5 ~ 6cm とする.小児の場合,速さは 100 回/分以上,深さは 5cm(乳幼児の場合は 4cm)とする.急性アナフィラキシー急性期の最初数分間に治療を行えないと,以降の治療がより困難になるおそれがある 2)22)―25)32)93)―99).

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らに,基本的な初期治療抵抗性のアナフィラキシーの治療,注意を要する患者におけるアナフィラキシーの治療,医療現場における観察期間についても述べる2)22)―25)31)32)93)―99). アドレナリン,多くの抗ヒスタミン薬,グルココルチコイドによるアナフィラキシーの治療は,無作為化対照試験が実施されるようになった時期およびエビデンスに基づく医療(「個別の患者ケアについて判断する際,最新かつ最良のエビデンスを明確にかつ思慮深く用いること」と定義)100)が提唱されるようになった時期より前から行われている.方法論的問題が存在せず,現在の基準に合致する,アナフィラキシー患者を対象とした,これらの薬剤に関する無作為化対照試験は実施されていない14)―16)20).無作為化対照試験が行われていないため,臨床的な疑問点の回答となり,入手できる最も有力な,委員会以外により示されているエビデンス100)を,今回示す勧告の基礎とした.アナフィラキシーの治療の系統的アプローチ 系統的アプローチはきわめて重要である.本治療指針はあらゆる誘因によるすべてのアナフィラキシー患者に適用され,また急性発症中のあらゆる時点に適用されるものとする2)22)―25)31)32)93)―99).設備が不十分な環境であっても,すべての医療従事者が行う必要のある基本的な初期治療の概要を図 4および表 5 に示す2)3)22)―25)32)93)―99).あらかじめ,緊急時用プロトコールを文書化し,掲示し,定期的に訓練を行う.薬剤,医療備品,医療器具の一覧を表 6 に示す2)3)21)―25).本ガイドラインにおいて,小児とは思春期前の患者とし,年齢ではなく体重が35~40 kg 未満の者と定義する. 患者を迅速に評価し,プロトコール記載の治療を開始する.曝露誘因があれば取り除き(例えば,治療薬・検査薬の静脈投与を中止する),患者の循環,気道,呼吸,意識状態,皮膚を迅速に評価し,体重を推定する.支援要請,大腿部中央の前外側へのアドレナリンの筋肉注射,患者の仰臥位の確保(呼吸促迫や嘔吐が認められる場合は楽な体位の確保)と下肢の挙上を速やかに同時に行う.酸素投与,静脈カテーテル挿入,静脈内輸液による蘇生処置,継続的な胸部圧迫法による心肺蘇生処

置が必要と判断した場合には,いかなる時点でも速やかに開始する.頻回かつ定期的に患者の血圧,脈拍,心機能,呼吸状態,酸素化を評価し,心電図をとる.可能であれば,継続的に非侵襲性のモニタリングを開始する2)22)―25)31)32)93)―99)(図 4,表 5,表 6).アドレナリン:第 1 選択治療としての使用に関するエビデンス 世界保健機構(http://www.who.int)では,アドレナリンをアナフィラキシーの治療に不可欠な薬剤に分類している.WAO が以前に発表した論文3)99)101)102)と,論文検索システムに対応し,ピアレビューが行われる雑誌に発表されたアナフィラキシーガイドライン21)―29)の両者において,迅速なアドレナリンの注射がアナフィラキシーの第 1 選択治療として明確に示されている. アドレナリンの救命効果は,多くの器官系(骨格筋を除く)に対するα1 アドレナリン性の血管収縮作用,粘膜浮腫により生じる気道閉塞を阻止および改善する作用,血圧低下とショックを阻止および改善する作用による97)―99).この他のアナフィラキシー関連の特徴として,心収縮力増強と心収縮速度向上をもたらす β1 アドレナリン作動性の心収縮力増強作用と心拍数増加作用,および β2 アドレナリン作動性のメディエーター遊離抑制作用,気管支拡張作用,蕁麻疹の緩和作用を挙げることができる97)―116).これらの特徴を表 7 に示す. アナフィラキシーの初期治療における迅速なアドレナリン注射に関するエビデンスは,アナフィラキシーに対する抗ヒスタミン薬およびグルココルチコイドの使用に関するエビデンスより強固である14)―16)20)97)101)―116).具体的には,アナフィラキシー患者を対象とした観察研究103)―106),アナフィラキシーのリスクを有するが,治療介入時にアナフィラキシーを呈していない時点の患者を対象とした無作為化対照臨床薬理試験97)―99),アナフィラキシーの動物モデルを対象とした研究97)―99)107),in

vitro 試 験97)108), 後 ろ 向 き 研 究( 疫 学 調査14)97)―99)109)―116),死亡に至るアナフィラキシーに関する研究8)―10)13)など)がある.特に,死亡に至るアナフィラキシーに関する研究は,迅速なアドレナ

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リン注射の必要性を示すエビデンスである8)―10)13).例えば,この中の 1 試験13)では,致命的なアナフィラキシー発症者 164 名中,心肺停止前にアドレナリンの投与を受けたのは 14% のみであった.心肺停止までの時間の中央値は,検査薬または治療薬によるアナフィラキシーの場合が投与後 5 分,昆

虫に刺された場合が刺傷後 15 分,食物摂取による場合が摂取後 30 分であった13).アドレナリンの用量および投与経路 アナフィラキシーと診断した場合または強く疑われる場合は,大腿部中央の前外側に 0.1% アドレナリン(1:1,000;1 mg/mL)0.01 mg/kg を直ち

表 5 アナフィラキシーの基本的な治療a

治療開始前の手順 1)アナフィラキシーの認識および治療のための緊急時用プロトコールを文書化し,掲示し,定期的に訓練を行うb

  2)曝露誘因があれば取り除く(例えば,症状を誘発していると思われる治療薬・検査薬の静脈投与を中止する) 3)患者の循環,気道,呼吸,精神状態,皮膚,体重を評価するc

速やかに同時に行う手順d

  4)可能であれば支援を要請する(病院などの医療機関の場合は蘇生チーム,医療機関以外の場所では救急車) 5)大腿部中央の前外側に 0.1% アドレナリン(1:1,000;1mg/mL)0.01mg/kg を筋肉注射する(最大量:

成人 0.5mg,小児e 0.3mg).投与時刻を記録し,必要に応じて 5 ~ 15 分毎に再投与する.多くの患者は 1 ~ 2 回の投与で反応する

 6)患者を仰臥位にする.嘔吐や呼吸促迫がある場合は楽な体位にする.下肢を挙上させる.突然立ち上がったり座ったりした場合,数秒で急変する場合がある

アナフィラキシーの発症中に必要と判断した場合,いかなる時点でも行う手順 7)フェイスマスクか経口エアウェイを用いて高流量(6 ~ 8L/分)の酸素投与を行うf

  8)太目の留置針(成人では 14 ~ 16G)を用いて静脈路を確保する.必要に応じて,0.9% 生理食塩水 1 ~ 2 リットルを急速に投与する(例えば,最初の 5 ~ 10 分間での投与速度は成人で 5 ~ 10mL/kg,小児で 10mL/kg)

  9)必要と判断した場合,直ちに胸部圧迫法で心肺蘇生を開始できるように準備しておくg

上記に加えて補足的に行う手順10)頻回かつ定期的に患者の血圧,脈拍,心機能,呼吸状態,酸素化を評価し,心電図をとる.可能であ

れば,継続的に非侵襲性のモニタリングを開始するh

a 本ガイドラインは主に,アレルギー/免疫専門医が行うアナフィラキシーの基本的な初期治療を示すことを意図しているが,幅広い領域の医療従事者にとっても興味深い内容であると考えられる.b アナフィラキシーの評価および治療のため緊急時用プロトコールを文書化する際には,成人および小児の薬剤の用量,蘇生チーム,救急車要請,救急科などの電話番号と連絡先の詳細を記載する.プロトコールには,臨床所見と変化の時期,バイタルサイン測定値,投与した薬剤とその量,酸素と静脈内輸液による治療の詳細,観察時刻と各処置の介入時刻の記録用フローチャート(具体例は参考文献 24 を参照)も記載する.c 体重は,薬剤投与量と,体液補正のための静脈内輸液量を正確に算出するために測定または推定する.d アナフィラキシーと診断した場合または強く疑われる場合は,4,5,6として示した手順を速やかに同時に行う.アナフィラキシー急性期の最初数分間に治療を行えなかった場合,以降の治療がより困難になるおそれがある.e 小児とは思春期前の患者とし,年齢ではなく体重が 35 ~ 40kg 未満の者と定義する.f 酸素投与は,呼吸促迫を呈し,アドレナリンを繰り返し投与している患者全てに対して行う.喘息,喘息以外の慢性呼吸器疾患,または心血管疾患を合併しているアナフィラキシー患者への酸素投与も検討する.g 胸部圧迫法のみ(手のみ)による心肺蘇生後に人工呼吸を行う.成人の場合,胸部圧迫法の速さは 100 ~120 回/分,深さは 5 ~ 6cm とする.小児の場合,速さは 100 回/分以上,深さは 5cm(乳幼児の場合は4cm)とする.救急救命士 1 名が胸部圧迫法と人工呼吸を実施する場合,その比率は 30:2 とする.h モニタリング期間は個別に設定する.例えば,中等度の呼吸器障害または心血管障害を呈する患者は,医療監視下において 4 時間以上,必要な場合は 8 ~ 10 時間以上モニタリングする.重度のアナフィラキシー患者または遷延性アナフィラキシー患者は,数日間にわたるモニタリングと治療を要する場合もある.

(参考文献 2,22-25,32,93-99 より改変.)

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表 6 アナフィラキシーの治療に関する薬剤,医療備品,医療機器

薬剤a, b

第 1 選択薬(優先順位が高い薬剤)0.1% アドレナリン(1:1,000;1mg/mL)0.01mg/kg の筋肉注射(最大量;成人 0.5mg,小児c 0.3mg)

第 2 選択薬H1 抗ヒスタミン薬の静脈内注入.例)クロルフェニラミンを 10mg(成人),2.5 ~ 5mg(小児c),またはジフェンヒドラミンを 25 ~ 50mg(成人)(1mg/kg,最大量 50mg[小児c])b2 アドレナリン受容体刺激薬.例)サルブタモール(アルブテロール)溶液 2.5mg/3mL または 5mg/3mL(成人)

(2.5mg/3mL[小児c])をネブライザーおよびフェイスマスクにより投与グルココルチコイドの静脈内注入.例)ヒドロコルチゾンを 200mg(成人),最大量 100mg(小児c),またはメチルプレドニゾロンを 50 ~ 100mg(成人)(1mg/kg,最大量 50mg[小児c])H2 抗ヒスタミン薬の静脈内注入d.例)ラニチジンを 50mg(成人)(1mg/kg,最大量 50mg[小児c])

医療備品気道確保

酸素(酸素ボンベb,流量計付バルブ,延長チューブ)リザーバー付きアンビューバッグ(容量:700 ~ 1,000mL[成人],100 ~ 700mL[小児c])使い捨てフェイスマスク(乳児用,幼児用,小児用,成人用)経鼻エアウェイ:6cm,7cm,8cm,9cm,10cmポケットマスク,鼻カニューレe,ラリンジアルマスクe

吸引用備品挿管用備品

血圧低下およびショックの治療速やかに多量の静脈内輸液を投与するための備品.例)0.9%(等張)食塩水 1L バッグアルコール消毒綿止血帯静脈内留置カテーテル(内径 14,16,18,20,22G)翼付静脈針(内径 19,21,23,25G)注射針付き注射器(1mL,10mL,20mL)マクロドリップ型点滴セット延長チューブT コネクタ三方活栓アームボード(4 サイズ)

その他の備品アナフィラキシーの治療のための文書化された緊急時用プロトコールf

回数およびイベントの記録用フローチャート合成繊維製テープ手袋(ラテックスを使用していないものが望ましい)

医療機器必須のもの

聴診器血圧計,血圧測定用カフ(乳幼児用,小児用,成人用,肥満者用)時計心停止時,心肺蘇生に用いるバックボード,または平坦で硬質の台吸引用医療機器挿管用医療機器速やかに多量の静脈内輸液を投与するための医療機器

装備が望ましいもの心電計およびその消耗品継続的な非侵襲性の血圧モニタリング用の医療機器g

継続的な非侵襲性の心臓モニタリング用の医療機器g

パルスオキシメーター除細動器

a H1 抗ヒスタミン薬,グルココルチコイドなどの第 2 選択薬は,10 ~ 15 分かけて緩徐に静脈内注入する.第 2 選択薬の調製と投与に時間をとることにより,アドレナリンの投与,酸素投与,静脈内輸液による蘇生処置に遅延が生じないようにする.b すべての薬剤の有効期限を定期的に(例えば,使用直後および 1 か月に 1 回,その後は必要に応じ補充時)確認する.酸素ボンベも定期的に確認する.c 小児とは思春期前の患者とし,年齢ではなく体重 35 ~ 40kg 未満の者と定義する.d H2 抗ヒスタミン薬は,米国およびカナダにおいて,アナフィラキシーの治療に用いられることがある.e 鼻カニューレによる酸素投与の流量は 2 ~ 6L/分である.ラリンジアルマスクには誤嚥に対する保護機能がなく,嘔吐を来している患者または嘔吐のリスクを有する患者の場合は危険である.f アナフィラキシーの治療のための文書化された緊急時用プロトコールは,見やすい場所に掲示し,定期的に訓練を行う.プロトコールには,成人および小児の薬剤の用量,蘇生チーム,救急車要請,救急科などの電話番号と連絡先の詳細を記載する.g アドレナリンまたは他の血管収縮剤を静脈投与する場合に必要.

(参考文献 3,21-25 より改変.)

1480 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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に筋肉注射する.最大量は成人 0.5 mg(小児 0.3 mg)とする22)―25)96)―99).この処置により,アドレナリンは速やかに最高血漿中濃度および最高組織中濃度に到達する.アナフィラキシーの重症度と初回投与に対する反応に応じて,必要と判断した場合は,5~15 分毎に同用量を繰り返し投与する.迅速にアドレナリンを筋肉注射した場合,多くの患者が 1~2 回の投与で反応を示すが,3 回以上の投与を必要とする患者も存在する105)106)109)110). アドレナリンは,アナフィラキシーの治療に十分に用いられていない8)―10)13)111)112).迅速にアドレナリンを注射しない場合,死亡,低酸素や虚血による脳症を呈することがある.また,初期症状からの回復後 1~72 時間(通常 8~10 時間)以内に,アナフィラキシーの原因への再曝露がないにも関わらず症状が再燃する二相性アナフィラキシーを呈することもある106)107)117)―120). 0.1% アドレナリン(1:1,000;1 mg/mL)0.01 mg/kg の迅速な筋肉注射は,アナフィラキシーの初期治療において有効かつ安全である.初期治療以外の場合,この応急処置の低用量では効果が得られない可能性がある.例えば,ショックを発症しつつある状態または既にショックに至った状態では,アドレナリンを緩徐に静脈投与する必要がある.この際,心拍数と心機能を継続的に非侵襲的にモニタリングし,用量を微調整することが望ましい.心停止を起こしつつある状態または心停止に至った場合は,アドレナリンの静脈内急速投与が必要となる.ただし,ここに示した以外の状態における治療の場合,以下に示す理由により,静脈投与は行うべきでない116).アドレナリンの有害作用 アドレナリンを推奨用量で投与した場合,いずれの経路においても,一過性の薬理作用として蒼白,振戦,不安,動悸,浮動性めまい,頭痛などが認められる97)―99)105).こうした症状は,治療量が投与されたことを示す97)―99)104).アドレナリンの過量投与は,いずれの経路においても,心室性不整脈,高血圧クリーゼ,肺水腫など重篤な有害作用を引き起こす可能性がある.重篤な有害作用は主に,過度の急速静脈内点滴,静脈内注入または静

脈内注射の用量誤りなど,アドレナリンの静脈投与後に報告されている13).用量の誤りは,静脈投与に適した希釈溶液(1:10,000[0.1 mg/mL]または 1:100,000[0.01 mg/mL])ではなく,筋肉注射に適した溶液(1:1,000[1 mg/mL])を使用することにより生じる.アナフィラキシーの初期治療でアドレナリンを使用する場合の正確な用量および投与経路と,ショックおよび心停止の場合の正確な用量および注入経路を医師が混同していると,アドレナリンを過量投与することにより,アナフィラキシーによる死亡につながるおそれがある116).アドレナリンと心臓 1475 ページに示したとおり,心臓はアナフィラキシーの標的臓器になりうる39).既知の冠動脈疾患を有する患者,およびアナフィラキシー発症により無症状の冠動脈疾患の存在が判明した患者に対してアドレナリンを注射しない場合,アナフィラキシーによって ACS を発症するおそれがある40)88)89).アナフィラキシーによる ACS を発症した患者が完全に回復した後,心電図および心エコーの所見では心血管異常が認められない場合であっても ACS を発症する可能性があり,これは小児を含むあらゆる年齢において起こりうる88)89).アドレナリンは,投与に際して注意を要し,用量の誤りを防止する必要のある薬剤であるが,既知の心血管疾患を有するアナフィラキシー患者,心血管疾患の疑いがあるアナフィラキシー患者,冠動脈疾患の病歴がなく,年齢のみにより ACS のリスクが高いと判断される中年または高齢のアナフィラキシー患者に対する治療において禁忌とはならない40)97).アドレナリンの β1 アドレナリン作動性作用により,心筋収縮力が増大するとともに拡張期の時間が収縮期比で相対的に延長し,実質的に冠動脈血流が増加する40).したがって,アドレナリンの投与によって心臓に対する有害作用が生じる可能性と,アナフィラキシーを治療しないことによって生じる心臓に関する懸念事項とを比較検討する必要がある39)―41)46)47)97).患者の体位 アナフィラキシー患者が,急に座ったり立ち上

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表 7 アドレナリン:アナフィラキシーの治療の第 1 選択薬

推奨度 B ~ C(脚注で定義)a

注射投与時の薬理学的作用b a1 アドレナリン受容体血管収縮作用の強化および血管抵抗の増加(多くの器官系において)c

血圧上昇気道の粘膜浮腫の抑制

b1 アドレナリン受容体心収縮力増大心拍数増加

b2 アドレナリン受容体メディエーターの放出低下気管支拡張の促進

臨床的意義 血圧上昇による低血圧およびショックの防止と緩和上気道閉塞(喉頭など)の軽減蕁麻疹および血管浮腫の軽減喘鳴の軽減

想定される有害作用:通常量のアドレナリン(1:1,000;1mg/mL)0.01 mg/kg の筋肉注射d(最大量;成人0.5mg,小児 0.3mg)時

蒼白,振戦,不安,動悸,浮動性めまい,頭痛.こうした症状は,薬理作用量が注射されたことを示す.

想定される有害作用:アドレナリン過量投与時(過度の急速静脈内点滴,静脈内ボーラス投与,1:1,000(1mg/mL)溶液を希釈せず静脈投与するなどの用量の誤りなどe)

心室性不整脈,高血圧,肺水腫.心臓自体がアナフィラキシーの標的臓器になりうることに注意.したがって,既知の冠動脈疾患を有する患者,無症状の冠動脈疾患が判明した患者,冠動脈疾患を有しておらず,一過性の血管攣縮による症状を呈する患者(小児を含む)において,アナフィラキシーの治療を行わない場合であっても,急性冠動脈症候群(狭心症,心筋梗塞,不整脈)が発生しうる.

アナフィラキシーの初期治療において皮下注射より筋肉注射が推奨される理由

アドレナリンには骨格筋の血管拡張作用がありc,骨格筋には血管が広く分布している.外側広筋(大腿部中央の前外側)への筋肉注射時の吸収は迅速で,アドレナリンが速やかに中心循環に達する.アナフィラキシーでは迅速な吸収が重要であり,心肺停止までの時間の中央値は,医原性(注射された薬剤など)の場合 5 分,刺咬昆虫の毒の場合 15 分,食物の場合 30 分であると報告されている.

アドレナリンに対する反応が認められない場合に想定される理由

診断の誤り,アドレナリン注射後患者が突然立ち上がったり座ったりした場合(または立位の場合),アナフィラキシーの急速な進行,アドレナリンの作用を阻害する b アドレナリン遮断薬またはその他の薬剤を患者が投与されている場合,アドレナリン注射の遅延,用量(mg/kg 単位)不足,有効期限切れアドレナリンの使用による用量不足f,注射力不十分,投与経路が最適でない場合,注射部位が最適でない場合,その他

a エビデンスレベルは次のとおり定義する.A:無作為化対照試験のメタアナリシスの結果によるもの,または,少なくとも1 つの無作為化対照試験から得られたエビデンス.B:少なくとも1 つの非無作為化対照試験または他の種類の準実験的研究の結果によるもの,あるいは,こうした試験や研究からの外挿によって得られた結果によるもの.C:比較研究などの非実験的記述的研究から得られたエビデンス,または無作為化対照試験もしくは準実験的研究からの外挿によって得られた結果によるもの.bアナフィラキシーの初期治療においてアドレナリンの筋肉注射が推奨される理由は上記のとおりである.アドレナリンの皮下注射は,局所的な血管収縮を引き起こし,吸収の遅延をもたらす可能性がある.加圧式定量噴霧式吸入器によりアドレナリンを投与する場合,血漿中/組織中のアドレナリン濃度が高くなり,全身作用をもたらすには 20 ~ 30 回の吸入を必要とするが,これは困難である.粘膜浮腫,中咽頭閉塞,喉頭閉塞を呈する場合,気管内チューブまたはフェイスマスクとコンプレッサーを使用して,局所的に投与される.アドレナリンの経口投与は,消化管において迅速に代謝されるため有効ではない.c アドレナリンは骨格筋の血管拡張作用を有し,心筋収縮力の増大と拡張期の時間延長によって冠動脈血流も増加させる.これらの作用は,内因性アドレナリンの「闘争か逃走か」(fight or flight)反応においてよく知られているものである.d アナフィラキシー発症時のアドレナリン(1:1,000;1mg/mL)初回筋肉注射の最大量(0.3 ~ 0.5mg)は,心肺蘇生時の初回推奨量 1mgより少ない.アナフィラキシーからショックまたは心停止に進行した場合,筋肉注射の用量が有効である可能性は低い.e アドレナリンの静脈投与は,訓練を十分に行った,経験豊富な医師が,血圧,心拍数,心機能の継続的なモニタリング下において,輸液ポンプで昇圧剤を投与しながら,用量の漸増または漸減を頻回に行って実行することが望ましい.f 溶液中のアドレナリンは,熱および光への曝露により急速に分解するおそれがある.

(参考文献 2,3,13,14,22,23,30-32,39-41,88,89,97-99,104,116 より改変.)

1482 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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がったりする動作を行わないようにする必要がある.また,立位ではなく仰臥位にし,下肢を挙上させる必要がある.嘔吐や呼吸促(窮)迫を呈している場合は楽な体位にし,下肢を挙上させる.この処置により,1)循環中心血管コンパートメント体液(中心血管コンパートメント)の維持(血液分布異常性ショック治療において重要),2)empty vena cava/empty ventricle syndrome(アナフィラキシー患者が急に立ち上がった場合または患者を立位にしていた場合に数秒以内に発症することがある)の防止が可能である.empty vena cava/empty ventricle syndrome を呈する患者の突然死のリスクは高く,投与経路に関わらずアドレナリンに反応する可能性が低い.これは,アドレナリンが心臓に到達せず,その結果,身体全体に循環しないためである93).呼吸促迫の治療 呼吸促迫を呈し,アドレナリンを再投与した全患者に対し,フェイスマスクまたは経口エアウェイによる流量 6~8 L/分の酸素投与を行う必要がある2)22)―25)32)96)(表 5).喘息,喘息以外の慢性呼吸器疾患,または心血管疾患を合併しているアナフィラキシー患者に対しても,酸素投与を検討する96).可能であれば,パルスオキシメーターを使用して,酸素化を継続的にモニタリングすることが望ましい.血圧低下およびショックの治療 アナフィラキシー発症中には,多量の体液が患者の循環から間質組織に移行する可能性がある.したがって,必要と判断した場合には,0.9%(等張/生理)食塩水の迅速な静脈内注入を直ちに開始する必要がある(表 5).投与速度は,血圧,心拍数,心機能,尿量に応じて漸増または漸減する.このような治療を行う全ての患者について,注入量の過負荷が生じないようにモニタリングを行う必要がある2)22)―25)32)96).第 2 選択薬 抗ヒスタミン薬,β2 アドレナリン受容体刺激薬,グルココルチコイドなど第 2 選択薬の投与については,検索可能なピアレビュー雑誌に発表されているアナフィラキシーガイドラインに記載されて

いるが推奨内容は異なる.アナフィラキシーの初期治療におけるこれらの薬剤の使用(用量および用法を含む)に関するエビデンスは,主に蕁麻疹

(抗ヒスタミン薬),喘息発作(β2 アドレナリン受容体刺激薬,グルココルチコイド)など他の疾患の治療における使用結果から推察されたものである.1 剤または複数の第 2 選択薬を投与することで,第 1 選択治療であるアドレナリンの迅速な注射投与の遅延することは避けなければならない.各第 2 選択薬の詳細については,以降の項および表 5,6,8 に示す2)3)15)16)21)―25)32)121)―127).H1 抗ヒスタミン薬 H1 抗ヒスタミン薬は,アナフィラキシーにおける瘙痒感,紅斑,蕁麻疹,血管浮腫,鼻および眼の症状を緩和する111).ただし,H1 抗ヒスタミン薬に救命効果はないため,アドレナリンの代替にはならない.すなわち,H1 抗ヒスタミン薬を使用しても,上気道閉塞,血圧低下,ショックは防止または緩和されない2)15)22)23)32)96)121)(表 8).ガイドラインによっては,現在の試験基準を満たした無作為化対照試験によるエビデンスが無いことを理由に,H1 抗ヒスタミン薬によるアナフィラキシーの治療を推奨していない23).一方,他のガイドラインでは,薬剤と用法(静脈投与,経口投与)に差異はあるが,H1 抗ヒスタミン薬による治療が推奨されている21)22)24)25).コクラン・システマティックレビューでは,アナフィラキシーの治療におけるH1 抗ヒスタミン薬の使用を支持する質の高い,無作為化対照試験によるエビデンスは認められていない15).H1 抗ヒスタミン薬は,アドレナリンに比して作用発現が緩徐である点,中枢神経系に対する有害作用の可能性がある点,特に第一世代H1 抗ヒスタミン薬の通常量投与により生じる傾眠および認知機能障害などを考慮する必要がある15)121)―124).β2 アドレナリン受容体刺激薬 喘息発作における使用結果に基づき,アドレナリンにより緩和されない,アナフィラキシーによる喘鳴,咳嗽,息切れの追加治療薬としてサルブタモール(アルブテロール)などの選択的 β2 アドレナリン受容体刺激薬を投与することがある.β2

アドレナリン受容体刺激薬は下気道症状には有用

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表 8 アナフィラキシーの治療の第 2 選択薬

薬剤 H1 抗ヒスタミン薬a(クロルフェニラミンまたはジフェンヒドラミン静脈投与,セチリジン経口投与など)

b2 アドレナリン受容体刺激薬a(サルブタモール

[アルブテロール]吸入投与など)

グルココルチコイドa(ヒドロコルチゾンまたはメチルプレドニゾロン静脈投与,プレドニゾンまたはプレドニゾロン経口投与など)

アナフィラキシーでの使用の推奨度b C C C

薬理作用 H1 受容体においてアゴニストの作用をなくし,不活性型の受容体を安定.皮膚症状,粘膜症状を軽減.

b2 受容体を刺激して気管支拡張を促進.

炎症促進性タンパク質をコードする活性化遺伝子の転写を阻害.アレルギーの遅発相反応を軽減.

臨床的意義 瘙痒感,紅斑,蕁麻疹,くしゃみ,鼻漏を軽減するが,気道閉塞や血圧低下/ショックを防止,改善しないため救命効果はない.

喘鳴,咳嗽,息切れを軽減するが,上気道閉塞や血圧低下/ショックを防止,改善しないため救命効果はない.

作用発現には数時間を要する.したがって,アナフィラキシー発症後最初の数時間は救命効果はない.遷延性または二相性アナフィラキシーの防止,緩和に使用する.ただし,その効果は立証されていない.

一定の可能性が ある有害作用 

(常用量)

第一世代抗ヒスタミン薬は,傾眠状態,傾眠,認知機能障害をもたらすc

振戦,頻脈,浮動性めまい,びくつき

短時間経過で生じる可能性は低い

一定の可能性が ある有害作用 

(過量投与)

過度の傾眠状態,錯乱,昏睡,呼吸抑制,奇異性の中枢神経系刺激(乳幼児,小児の痙攣発作など)

頭痛,低カリウム血症,血管拡張

可能性は低い

コメント アナフィラキシーガイドラインの中には補助的薬剤として,1 ~ 14 種類のH1 抗ヒスタミン薬c と各種用法が掲載しているものがあるが,その役割は立証されていない.

アナフィラキシーにおける使用は,喘息発作における使用から推察されている.アドレナリンにより緩和されない気管支痙攣の補助的治療として投与する場合,フェイスマスクと噴霧により適切に投与する必要がある.

アナフィラキシーガイドラインの中には補助的薬剤として,1 ~ 3 種類のグルココルチコイドd と各種用法d を掲載しているものがあるが,その役割は立証されていない.

a H1 抗ヒスタミン薬,b2 アドレナリン受容体刺激薬,グルココルチコイドは,第 1 選択薬であるアドレナリンに対する第 2 選択薬(補助的,付随的薬剤)であるとみなされる.急性アナフィラキシー発症時の治療に関する,これらの薬剤の無作為化プラセボ対照試験は行われていない.b エビデンスレベルは次のとおり定義する.A:無作為化対照試験のメタアナリシスの結果によるもの,または,少なくとも 1 つの無作為化対照試験から得られたエビデンス.B:少なくとも 1 つの非無作為化対照試験または他の種類の準実験的研究の結果によるもの,あるいは,こうした試験や研究からの類推によって得られた結果によるもの.C:比較研究などの非実験的記述的研究から得られたエビデンス,または無作為化対照試験もしくは準実験的研究からの類推によって得られた結果によるもの.c アナフィラキシーにおける H1 抗ヒスタミン薬の使用と用量は,蕁麻疹の治療から類推されている.投与経路は,アナフィラキシーの重症度により異なる.第一世代 H1 抗ヒスタミン薬のみ,静脈内に投与できる.迅速に投与した場合,血管拡張と血圧低下を助長する可能性がある.H1抗ヒスタミン薬を経口投与する場合,一般に入手可能で迅速に吸収されるセチリジンなど,鎮静作用が弱い薬剤の方が,クロルフェニラミン,ジフェンヒドラミンなどの鎮静性 H1 抗ヒスタミン薬より望ましい.d アナフィラキシーにおけるグルココルチコイドの使用と用量は,喘息発作の治療から類推されている.投与経路は,アナフィラキシーの重症度により異なる.

(参考文献 2,3,15,16,21-25,30-32,121-126 より改変.)

1484 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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であるが,α1 アドレナリン作動性の血管収縮作用はごくわずかであり,喉頭浮腫による上気道閉塞,血圧低下,ショックを防止または緩和できないため,アドレナリンの代替にはならない2)22)23)25)32)(表8).グルココルチコイド グルココルチコイドは,炎症促進性タンパク質をコードする多数の活性化遺伝子の転写を阻害する.喘息発作期での使用結果によれば,グルココルチコイドの全身性の作用発現には数時間を要する125)126).グルココルチコイドは,遷延性アナフィラキシー症状を緩和し,二相性アナフィラキシーを防止する可能性があるが2)16)22)24)25)32)111),その効果は立証されていない(表 8).コクラン・システマティックレビューでは,アナフィラキシーの治療にグルココルチコイドが有効であると認められた無作為化対照試験によるエビデンスは確認されておらず,第 1 選択薬としてアドレナリンの代わりに不適切に使用される例が多く認められるという懸念が示されている16).H2 抗ヒスタミン薬 H1 抗ヒスタミン薬と併用投与される H2 抗ヒスタミン薬は,紅斑,頭痛などの症状の軽減に寄与する可能性がある121).ただし,H2 抗ヒスタミン薬が推奨されているアナフィラキシーガイドラインは非常に少ない24)58).シメチジンの迅速な静脈投与により,血圧低下を助長されることが報告されている2)24)32).また,ラニチジンに対するアナフィラキシーも報告されている12)127).アナフィラキシーに関して実施された H2 抗ヒスタミン薬の研究があるが122)123),方法論的に問題がない無作為化プラセボ対照試験によるアナフィラキシーの治療における使用を支持するエビデンスはない.難治性のアナフィラキシーの治療 アドレナリンの筋肉注射,下肢を挙上した仰臥位,酸素投与,急速輸液,第 2 選択薬といった,アナフィラキシーの基本的な初期治療を行っても,少数の患者は適時に反応しない.可能であれば,そうした患者は,救急医療,救命救急医療,または麻酔学の専門チームの治療に迅速に委ねる2)22)―25)32)96).通常これらの医師,看護師,技師は

訓練を十分に行い,経験豊富で,優れたスキルを持っており,気道確保と機械的人工換気の管理に熟練し,心血管および呼吸器の継続的な非侵襲性のモニタリング結果に基づき,輸液ポンプによる昇圧剤の安全な投与と用量の頻回な漸増漸減により,ショックに対し最適な治療を行う128)―131)(表6). こうした支援を直ちに受けることができない地域に勤務する医師は,可能であれば,初回のアドレナリン筋肉注射,酸素投与,および急速輸液に抵抗性のアナフィラキシーに対する特別な訓練を受けるべきである.理想的には,人工呼吸に先立ち胸部圧迫による心肺蘇生術を行うことを含む最新の心肺蘇生技術も身につけておくべきである94)95).挿管 アナフィラキシー患者に対する挿管が必要な場合,対応可能な最も経験豊富な医療従事者が実施する.患者の舌および咽頭粘膜が腫脹し,血管浮腫および多量の粘液分泌があると,喉頭や上気道の解剖学的指標がわかりにくく,気管内チューブの挿入が困難になることがあるためである.患者には,あらかじめ 3~4 分間酸素化を行った後に挿管すべきである.気道確保に最適な医療備品と医療機器については,表 6 に概説する24)96).機械的人工換気が使用できない場合,リザーバー付きの自己膨張式バッグ,マスク,酸素投与による換気を数時間にわたり試みることは,アナフィラキシーの治療として功を奏することが多い96).昇圧剤の静脈投与 静脈内輸液による蘇生など基本的な初期治療に対して難治性の血圧低下またはショックが患者に認められる場合,アドレナリンの静脈投与を行う必要がある.場合によっては,昇圧剤またはその他薬剤の静脈投与の追加を要する.臨床試験において,ドパミン,ドブタミン,ノルアドレナリン,フェニレフリン,バソプレシンでの明確な優位性は(アドレナリン単独への追加投与,または相互比較のいずれにおいても)示されていない.初回量に関する勧告は提示されているが,臨床反応に応じて用量を漸増漸減するため,これらの薬剤のいずれにも確立された用法は存在しない128)―130). これからの薬物療法の最も適切な投与には,昇

1485F. Estelle R. Simons, et al.

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圧剤,備品,機器,技術と投与を受けている患者のモニタリングが必要だが常に可能という訳ではない3).また,例え最適な状況下でも,昇圧剤投与患者の死亡率は高い.心室性不整脈,高血圧クリーゼ,肺水腫に至る致死量が誤って投与されるといったことは,輸液ポンプによる昇圧剤の静脈投与を行わない場合,および/または用量の漸増漸減の指標とするための血圧,心拍数,心機能,酸素化の継続的なモニタリングを行わない場合に発生しうる116)128)―130). 低血圧および徐脈を有し,β アドレナリン遮断薬を投与され,アドレナリンに十分な反応を示さない患者には,グルカゴン(カテコールアミン非依存性の心収縮力増強作用と心拍数増加作用を有するポリペプチド)の投与が必要となる場合がある24)131).β アドレナリン遮断薬投与患者には抗コリン薬の投与が必要となる場合がある.例えば,持続性の徐脈患者にアトロピン,アドレナリン抵抗性の気管支痙攣患者にイプラトロピウムを投与する2)22)―24)32)96).注意を要する患者 妊娠中のアナフィラキシーの管理・治療は,非妊娠患者と同様である.アドレナリンの迅速な筋肉注射が第 1 選択治療である.気管支拡張作用および血管収縮作用が強力ではないエフェドリンの使用を支持するエビデンスはほとんどみられない.酸素投与,血圧低下に対する適切な治療はきわめて重要である.妊娠患者は,左半横臥位とし下肢を挙上させ,妊娠子宮による下大静脈圧迫に起因する体位性低血圧を予防する.妊娠 24 週以降の女性がアナフィラキシーを起こした場合,妊婦の酸素化,血圧,心拍数,心機能の頻回かつ継続的なモニタリングに加え,胎児の心臓の定期的なモニタリング(可能であれば,心電図の継続的なモニタリング)が推奨される.妊婦の低酸素症および/または血圧低下を適切な医学的治療で是正することにより,胎児仮死状態を改善する必要がある.ただし,仮死状態が持続する場合,緊急帝王切開を検討すべきである36). 乳幼児のアナフィラキシーの治療は,乳幼児以上の年齢の患者と同様である.アドレナリン(1:

1,000;1mg/mL)0.01mg/kg の筋肉注射量の算出と調製の際は,きわめて注意して行う必要がある.例えば,5kg の乳幼児の正しい用量は 0.05mg である.乳幼児自身は,アドレナリンの過量投与により起こる症状を説明できない.徴候には,小児や成人より低い血圧正常値に基づく高血圧と,咳嗽や呼吸窮迫を呈する肺水腫が挙げられる34). 高齢者のアナフィラキシーの治療は,心血管疾患の合併と心予備力の限界,および β アドレナリン遮断薬などの併用薬により複雑になることがある.1481 ページに示したとおり,高齢患者をアドレナリンにより治療することは絶対的禁忌ではないが,そのベネフィットとリスクを慎重に比較検討する必要がある24)40)41)98).医療現場におけるモニタリング期間 単相性の遷延性アナフィラキシーはまれではあるが,数日間持続しうる.二相性アナフィラキシーは,1481 ページに定義したとおり,成人の最大23%,小児の最大 11% のアナフィラキシーに発生する105)106)118)―120).症状が明らかに回復しても,医学的な管理下におけるモニタリング期間を個別に設定すべきである.例えば,中等度の呼吸器障害または心血管障害の患者は 4 時間以上(必要な場合は 8~10 時間以上)モニタリングする必要がある.重症のアナフィラキシー患者または遷延性アナフィラキシー患者では,数日間のモニタリングと治療を要することがある.実際には,訓練を十分に受けた経験豊富な医療従事者が対応できるかどうか,救急科または病院の病床数など,施設の条件によって可能なモニタリング期間が決定されることが多い2)3)96)99).

医療施設からの退院後における長期管理

 アナフィラキシーの治療は,医療施設での急性症状の回復をもって終了とはならない.本セクションでは,アナフィラキシーの治療後退院した患者の長期管理について述べる.このような患者は,入院時と同じエピソードとして症状が再発する場合も将来的に別のエピソードとして症状が再発する場合もあるが,再発時に治療できるよう準備しておく必要がある.さらに,長期的な再発予

1486 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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防では,誘因の回避と,可能であればアレルゲン免疫療法などの免疫学的調節が重要であることから,患者に対しては,アナフィラキシーの誘因を確定する必要があることを提言すべきである.日常生活におけるアナフィラキシー再発時の自己治療の準備 日常生活におけるアナフィラキシー再発時の自己 治 療 の 準 備 に つ い て, 図 5, 表 9 に 示す2)22)―25)32)59)68)69)72)73)87)96)97)99)132)―139).患者には退院時,アドレナリンまたはその処方箋(1 本以上のアドレナリン自己注射器が望ましい)を渡す.また,アドレナリンを注射する理由,時期,方法を説明し,個別に文書化したアナフィラキシーのアクションプランを準備する必要がある.本計画書には,患者がアナフィラキシーの症状を認識するのに役立つ情報を記載し,迅速にアドレナリンを注射後,医療機関に援助を求めるよう指示するものである132)―134). アドレナリン自己注射器が入手不能または費用上購入不能である場合,患者に適したアドレナリン用量を含有する事前充填済みの 1mL シリンジ,またはアドレナリンのアンプルと 1mL シリンジと正しい用量調製法を記載した指示書など,代替となるアドレナリンの処方が推奨される97)108).この方法は,代替とはなるが望ましくはなく,表 7に示すとおり重要な制限事項がある.アドレナリンの加圧式定量噴霧式吸入器を,注射用アドレナリンの代替にしてはならない97)101)102). 現在入手可能なアドレナリン自己注射器にも一部制限事項がある.自己注射器では,最適な用量範囲にならないことが挙げられる.例えば,体重15kg 未満の乳幼児用の用量が 0.1mg であること,過体重患者または肥満患者の筋肉注射に要する注射針の長さが適切であるか不確定であること,製品の安全性に関する危惧,有効期限が 12~18 カ月にすぎないことが挙げられる97). アナフィラキシーに関する教育は,治療を受けた救急科などの医療施設から患者が退院する前に開始することが理想的である.患者には,患者が命に関わる医学的緊急事態(「killer allergy」)を経験したこと,今後 72 時間以内に症状が再発した

場合,アドレナリンを注射し救急車を呼ぶか,家族または介護者に最寄りの救急施設に連れて行ってもらうように説明する132)133).また,今後のアナフィラキシー発症リスクが高いこと,経過観察(アレルギー/免疫専門医による評価または再評価が望ましい)が必要であることも説明する必要がある.アナフィラキシーの診断,関連する合併症,併用薬を記載した医療用の識別物(ブレスレット,財布に入れるカードなど)の携帯を推奨する. アナフィラキシーに関する教育は,年齢,合併症,併用薬,関連するアナフィラキシーの誘因,地域において該当する誘因に遭遇する可能性を考慮した上で,各患者の必要性に応じて個別に実施すべきである132)133).アナフィラキシーの誘因の確定 アナフィラキシーの誘因は,急性アナフィラキシ ー 発 症 時 の 詳 細 な 経 過 を 調 べ て 特 定 する2)24)31)32).経過により示唆される誘因に対する感作状態は,アレルゲンを用いた皮膚テストおよび血清中のアレルゲン特異的 IgE 値,あるいはこの両者の測定を行って確認する必要がある59)69)135)―138)

(図 5,表 9).検査に最適な時期は,一般に急性アナフィラキシー発症から 3~4 週間後であることが示されている.ただし,多くのアレルゲンに関して,この期間は前向き試験において最終的に確立されているわけではない32).したがって,アナフィラキシーの経過が確実で検査結果が陰性の患者については,数週間後または数カ月後に再検査すべきである32)137). 訓練を十分に受けた,経験豊富な医療従事者がおり,十分な医療器具を備えた医療現場において,医療管理下で段階的な負荷/誘発テストを実施し,アナフィラキシー再発リスクの判断を要する患者がいる138)139).例えば,1)食物誘発性アナフィラキシーの経過が不明確であり,関与する食物,または関連の可能性がある隠れているアレルゲン,共通構造を持つアレルゲン,もしくは交差反応性アレルゲンに対する感作のエビデンスがほとんどないか全くない一部の患者,2)食物依存性運動誘発性アナフィラキシーを有する一部の患者(ただし,このアナフィラキシーを検査時に再現するのは困

1487F. Estelle R. Simons, et al.

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図 5. 日常生活の場において将来的にアナフィラキシーを再発した場合に備えた退院時の対応および退院後の予防法.パネル 1 は,医療現場での急性アナフィラキシーの治療後の,退院時の対応を示している.パネル 2 に示すように,急性アナフィラキシー発症時の経過により示唆されるアナフィラキシーの誘因を,アレルゲン特異的 IgE 値の測定(退院前に実施する場合がある),およびアレルゲンを用いた皮膚テスト(一般に急性アナフィラキシー発症から 3 ~ 4 週間後に実施)により確定すべきである.ただし,多くのアレルゲンに関して,この時間間隔は前向き試験において最終的に確立されていない.したがって,アナフィラキシーの経過として矛盾せず検査結果が陰性の患者については,数週間後または数か月後に再検査すべきである.パネル3 には,既知の確定した誘因の回避と,免疫調節による長期リスクの低下についてまとめてある.例えば,公表済みのプロトコールに従った薬剤脱感作,または昆虫(膜翅目)に刺された場合のアナフィラキシー再発予防のための,適切に基準を定めた蜂毒による免疫療法が挙げられる 2)22)―25)32)59)68)69)72)73)76)

77)87)96)97)99)132)―139).

アナフィラキシーのアクションプラン,教育

アドレナリン自己注射器および使用訓練

医療用の識別物

アレルゲン特異的血清 IgE 値

アレルギー専門医への経過観察来院時のアレルゲン皮膚テスト(急性アナフィラキシー発症から3~ 4週間後など)

既知の誘因を回避

薬剤脱感作

刺咬昆虫の毒による免疫療法

急性アナフィラ

キシー発症後の退院時の対応

アナフィラキシーの誘因の確定

誘因の回避および免疫調節

1488 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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表 9 医療施設からの退院時の推奨事項

薬剤アドレナリン自己注射器a

アドレナリンのアンプル/シリンジb または事前充填済みのシリンジc(代替にはなるが望ましくない処方)それ以外の退院時の対応

アナフィラキシーのアクションプラン(個別,文書化)医療用の識別物(ブレスレット,財布に入れるカードなど)診療録への電子フラグ付加(または診療録へのステッカー貼付)経過観察(アレルギー/免疫専門医への来院が望ましい)の重要性を強調

アレルゲン感作の評価退院前に,テストを実施可能な場合,関連するアレルゲンの血清 IgE 値測定により,急性アナフィラキシーの経過において示唆されるアレルゲン感作の評価を検討d.アナフィラキシー発症から 3 ~ 4 週間後,皮膚テストによりアレルゲン感作について確定e

今後のアナフィラキシー発症リスクをさらに評価するため,食物アレルギーまたは薬剤アレルギーなどを有する一部の患者において,負荷/誘発テストが必要とされることがあるf

長期リスクの低下:誘因の回避および/または免疫調節食物を誘因とするアナフィラキシー:関連する食物の回避刺咬昆虫を誘因とするアナフィラキシー:刺咬昆虫の回避.蜂毒の皮下投与によるアレルゲン免疫療法(最大で成人の 80 ~ 90%,小児の 98% を保護)薬剤を誘因とするアナフィラキシー:関連する薬剤の回避.必要な場合,医療現場において,公表済みのプロトコールに従って医学的に管理された脱感作を実施特発性アナフィラキシー:頻回に発症する場合,2 ~ 3 か月間グルココルチコイドおよびヒスタミン H1受容体拮抗薬による予防を検討

喘息その他合併症の最適な治療a 再発リスクを有する患者は,処方された注射用アドレナリンを常に携帯すべきである.自己注射器で使用可能な固定用量は,3 種類(0.1mg,0.3mg,0.5mg)のみである.(但し,日本では 0.15mg と 0.3mg のみ)(訳者注).アナフィラキシーのためアドレナリン注射を受ける成人の最大 23% に,アドレナリンを複数回注射する必要がある.したがって,複数のアドレナリン自己注射器の処方を検討すること.b アドレナリン自己注射器が入手不能または費用上購入不能である場合,日常生活の場における使用に推奨す る. 訓 練 を 受 け, 文 書 化 さ れ た 指 示 書 が あ る 場 合 で も, 医 学 的 背 景 の な い 者 に は,1mL シリンジを用いてアンプルから正確かつ迅速にアドレナリンの用量を調製するのは困難であることと考えられる.c アドレナリン自己注射器が入手不能または費用上購入不能である場合のみ推奨する.アドレナリンを含有する密封されていない事前充填済みのシリンジは,アドレナリンが空気に曝露されることにより急速に分解することから,3 ~ 4 か月毎に定期的に交換すべきである.(日本では推奨されない)(訳者注)d アナフィラキシー発症中または発症直後に採取した血液検体でアレルゲン特異的 IgE 値を測定する場合,血清 IgE の中和または消費を起こした可能性がある.また,急速輸液を受けた患者の場合も,循環 IgE の希釈作用のため,偽低値または欠如/検出不能になりうる.e 食物,蜂毒,薬剤に対する感作を評価するには,皮膚プリックテストを実施すべきである.皮内検査は蜂毒および薬剤のアレルギーに有用であるが,一般に食物アレルギーには禁忌である.f 患者の選択,プロトコールに従った負荷テストの実施,アナフィラキシーの診断と治療に関して十分な訓練を受けた,経験豊富な医療従事者がおり,十分な医療機器を備えた医療施設においてのみ実施すべきである.負荷テストを実施する前に,想定されるリスクと想定されるベネフィットについて患者に説明し,診療録に記録すべきである.多くの国では,負荷/誘発テストの実施前には書面によるインフォームド・コンセントを入手する.

(参考文献 2,22-25,32,59,68,69,72,73,87,96,97,99,132-139 より改変.)

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難な場合がある139)),3)薬剤または生物製剤に対しアナフィラキシーを有する一部の患者である.治療薬によっては,アナフィラキシーと関連があるプロドラッグ,ハプテン,アレルゲン分解物,代謝物が不明であるため,皮膚テストまたは in

vitro テストに使用できないことから,負荷テストが診断法として選択される72)73). 現在研究に用いられている in vitro テストは,今後アナフィラキシーのリスク増加の予測に用いられる可能性があると考えられる140)141).アナフィラキシーの再発予防 アナフィラキシーの再発予防には,特定の誘因の徹底回避と,根本的治療としてアレルゲン免疫療法の有用性が報告されている.しかし,これらを比較した無作為化プラセボ対照二重盲検試験を厳格に行った報告がないため,実臨床では,専門医 の 意 見 や 総 意 に 基 づ い て 判 断 さ れ て いる2)22)―25)32)59)72)73).例外として,蜂毒によるアナフィラキシーの再発予防には,蜂毒抽出エキスを皮下注射するアレルゲン免疫療法はエビデンスに基づいている68)―70)135)―137).既存疾患に対する治療 一度,アナフィラキシーを呈した患者に対する定期的なフォローアップは,アナフィラキシー発症のリスクを減らし,再発予防に必要である2)32)

(図 5,表 9).特に,アナフィラキシーによる呼吸・循環器合併症によって,喘息,心血管障害やマスト(肥満)細胞症などを持つ患者は,重篤化する可能性がある.このため,既存疾患に対する治療および,そのコントロールは極めて重要である8)―10)13)37)―44).また,β遮断薬や ACE 阻害薬などの薬剤の使用については,利益と危険性のバランスを患者ならびにその患者の診療に関わる他の医師と検討し,その考察は患者の診療録に記録するべきである 39)―41)46)―48).誘因の回避とアレルゲン免疫療法 アナフィラキシーの誘因は,診療録に明確に表示する必要がある.確定した特定の誘因(食物,昆虫,薬剤,ラテックス,その他アレルゲン)の回避について,個別に文書化した指示書を定期的に提示および再認識し,患者に対し教育・指導す

ることが推奨される(図 5,表 9).正確な最新情報を提供するため,信頼性の高いウェブサイトやその他情報源(母国語が望ましい)を患者に紹介することも重要である.WAO では,アレルギー専門医が推奨する言語および地理的地域別に分類された教育情報源の患者向け情報リンク集を作成し て い る(http://www.worldallergy.org/links/patient_links.php).有用な英語サイトとして,http://www.anaphylaxis.org.uk/home.asp,http:// www.foodallergy.org,http://www.latexallergyr esources.org などが挙げられる2)22)―25)31)32)96)132)133).食物 食物によりアナフィラキシーを起こしたことのある患者は,原因となった食物を完全除去しなければならない.しかし,洗浄不十分な食器,鍋,フライパンなどから原因アレルゲンが混入することもあり,見ぬくことは難しい.また,加工食品などにはアレルゲンが表示されていないこともある.このため,アレルゲンに対応する別の名前を文書により一覧化すべきである.例えば,牛乳に含まれる「カゼイン」の場合,カゼインの供給源

(キャンディー,クッキー,シリアルバーなど)および交差反応アレルゲン(牛乳とヤギ,ヒツジのミルクなど)ついて明記すべきである.一方,慎重すぎる食物除去基準により,アナフィラキシーのリスクを有する患者,その家族,介護者の生活の質が低下する可能性がある.さらに,多くの食物を厳格に除去することにより,栄養障害をもたらす可能性がある.これを防止するため,栄養士との相談を検討すべきであり,小児の場合,身長と体重の増加をモニタリングすることも必要である58)59)142)―146). 食物によるアナフィラキシー予防のための治療選択肢として,特定の食品を標的とする治療と非標的治療がある58)59).標的治療として,食物アレルゲンが同定された患者に対し,牛乳,鶏卵,ピーナッツ,木の実などの食物を用いて経口免疫療法を行った複数の無作為化プラセボ対照試験では,摂取量の増加により脱感作を起こし,免疫寛容を生じる可能性があることが確認されている.副反応の多くは,初回増量日と以降の増量日に顕著に

1490 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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認められる147)148).非標的治療として近年,抗 IgE抗体の定期的な皮下注射や,漢方製剤である食物アレルギー薬草フォーミュラ 2(Food Allergy Herbal Formula-2)の経口投与の有効性が報告されている59).WAO は現時点では,一般診療においては,食物を誘因とするアナフィラキシー予防のために,食物アレルゲンによる経口免疫療法を推奨していない.昆虫(蜂,蟻)刺傷 刺咬昆虫(蜂,蟻)の毒によるアナフィラキシーを経験した患者において,理想的には,原因昆虫に対する再刺傷を回避しなければならない.しかし,養蜂業,造園業,林業,電気設備業従事者やイチゴ農家などの蜂と同じ生活環境で作業する人は,刺傷から回避することが困難である24).ミツバチ,スズメバチ類,アシナガバチアレルギー患者における治療として,蜂毒エキスを,3~5 年間以上皮下注射するアレルゲン免疫療法が極めて有用であるが,我が国では保険適応となっていない.蜂毒エキスを用いたアレルゲン免疫療法の有効性は,成人では 80~90% 以上,小児では 98% と報告されており,その有効期間は十年以上持続する68)―70)135)―137).薬剤 薬剤によるアナフィラキシーを経験した患者では,該当する薬剤を投与してはならない.もし,投与する必要がある場合,安全かつ有効で交差反応しない薬剤(薬理学的分類が異なるものが望ましい)を代わりに使用する2)24)32)72)―74).また,アナフィラキシーの誘因となる薬剤名,および交差反応する薬剤名を記載した文書一覧を明記すべきである2)24)32)72)―74). 安全かつ有効な代替薬を入手できない薬剤を患者に使用する場合は,脱感作(該当薬剤を一定期間連続投与すると一時的な免疫寛容状態となる)を受けるべきである.脱感作は,該当薬剤に対する決まったプロトコールに沿って行う.また脱感作施行中,アナフィラキシーの発症した場合に備え, 経 験 豊 富 な 医 療 従 事 者 が 行 う べ き で ある72)73)76)77).脱感作のプロトコールは,抗菌薬,抗真菌薬,抗ウイルス薬,NSAIDs,生物製剤や化

学療法剤など多くの薬剤に存在する77).造影剤によるアナフィラキシーのリスクが高い患者(喘息や慢性蕁麻疹など)の場合,非イオン性造影剤を投与し,コルチコステロイドおよび抗ヒスタミン薬の前投薬を検討すべきである24).しかし,前投薬を用いることには異論もあり,前投薬後のアナフィラキシー反応を,すべて予防するとは限らない80).その他の誘因 運動誘発アナフィラキシーの予防には,食物,アルコール,NSAIDs などアナフィラキシーを促進する誘因を回避することが重要である.また高湿度,極端な高温または低温,花粉飛散数が多い環境下では,運動を回避すべきである.さらに予防措置として,1 人で運動しない,アナフィラキシーの初発症状が発生した場合,直ちに運動や作業を中止する必要がある.そして,早急に連絡をとる手段として携帯電話の持参と,アドレナリン自己注射器を所持することなどを行うべきである53)―57). ラテックス由来のアナフィラキシーの場合,医療現場および日常生活の場におけるラテックスの回避が最も重要である.さらに,ラテックスアレルギー患者では,アボカド,キウイ,バナナ,ジャガイモ,トマト,クリ,パパイヤなど交差反応する果物および野菜を回避すべきである24).精液に対するアナフィラキシーの場合,患者のパートナーによるコンドームの使用および,対応可能である場合,精液に対する脱感作が推奨される24)86).また,低温,高温,日光,紫外線照射,アルコールなど一部の非免疫性誘因により誘発されるアナフィラキシーの場合,その誘因を回避することが再発予防に重要である2)32)

特発性アナフィラキシー 特発性アナフィラキシー発症の薬剤予防については,無作為化対照試験は行われていない.しかし,頻回に発症する患者(1 年に 7 回以上,または 2 カ月に 3 回以上)には,全身性グルココルチコイドおよび H1 抗ヒスタミン薬による予防的治療の有効性が報告されている24)87).また,オマリズマブ注射の予防的投与も,発症回数を減少させる

1491F. Estelle R. Simons, et al.

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ことが報告されている149).特発性アナフィラキシー患者の多くは,数年以内に寛解する.長期の経過観察 アナフィラキシーの再発ハイリスク患者には,経過観察のための定期的な来院(1 年に 1 回など)により,アドレナリンの自己注射製剤の使用方法を再確認し,アレルゲンの回避方法と免疫療法の可能性について検討し,アナフィラキシーを重篤化させる呼吸・循環器併存症についても,十分に管理することが重要である(表 9).

WAO アナフィラキシーガイドラインの普及および実施

 WAO アナフィラキシーガイドラインは,World

Allergy Organization Journal(WAO Journal:http://www.WAOJournal.org)に発表して WAO メンバー30,000名全員が迅速にアクセスできるようにすると同時に,The Journal of Allergy and Clinical

Immunology にも発表して,世界各地のすべての医療従事者が PubMed などの検索エンジンを使用して検索できるようにする.本ガイドラインにおいて考察したアナフィラキシーの評価と基本的な初期治療に関する勧告は,ポスター,ポケット版のカード,携帯機器のアプリケーション(アプリ)を通じても普及中である. 本ガイドラインの勧告実施に際して妨げとなるものとして,アナフィラキシーはまれな疾患であるという誤った認識,およびアナフィラキシーの評価と治療に不可欠な薬剤,医療備品,医療機器を世界的に共通して使用できないことが挙げられる.また,アナフィラキシーでも血圧低下やショックを生じないことも多く,血清トリプターゼ値またはヒスタミン値は必ずしも上昇しない.また数分以内に死に至ることがあり,基本的な初期治療の迅速な実施が救命につながりうる,という認識が欠如していることも挙げられる3)4)13)90)94)―97)99)101)102). WAO メンバーとして加盟する各学会が,広範にわたり本ガイドラインの作成に関与した.電子メールによる議論,および国内外の会議における対話を通じ,現在も様々な面での協力を得て,ガイドラインの普及と実施の促進に役立っている.

WAO メンバーとして加盟する学会から依頼があった場合,WAO 事務局では,ポスター,ポケット版のカードなどガイドライン関連資料の翻訳を支援する.

WAO アナフィラキシーガイドラインの更新

 2~4 年の定期的な間隔で,WAO アナフィラキシー特別委員会(Anaphylaxis Special Commit-tee)は,本ガイドラインを支持するエビデンスについて正式に再評価し,実質的に新たなエビデンスを認めた場合はガイドラインを更新し,その普及と実施に関する戦略を改訂する.

世界的なアナフィラキシーの研究課題

 アナフィラキシーの評価および治療における未確定事項について,今後の研究課題として重要である.アナフィラキシーの評価に関して研究の必要性があると考えられる領域には,患者特異的な危険因子の定量化に向けた機器の開発,迅速で特異的な高感度の in vitro テストまたはそうした一連のテストによる臨床診断確定法の開発,アレルゲン感作とアナフィラキシーの発症リスクを識別し,負荷/誘発テストの必要性を低下させる in

vitro テストを開発する必要がある.また,アナフィラキシーの治療に関して研究の必要性がある領域は,アナフィラキシー予防のため無作為化プラセボ対照介入試験,(アドレナリン注射,仰臥位,酸素投与,静脈内輸液による蘇生など適切な予防措置を行った上での)第 2 選択薬の無作為化プラセボ対照試験(アナフィラキシーの治療におけるグルココルチコイドなど)である.第 1 選択薬であるアドレナリンによる無作為化対照試験は倫理上実施されないが,アドレナリン以外の新薬の研究(臨床薬理試験,動物モデル研究,in vitro

試験,疫学調査などの後ろ向き研究など)は,治療のエビデンスを向上させ,臨床的なアナフィラキシーの治療マニュアルを作成するため,継続すべきである2)150).

まとめ

 WAO ガイドラインは,アナフィラキシーの基

1492 アナフィラキシーの評価および管理に関する WAO ガイドライン

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本的な初期治療に関する勧告を重点的に示すものである.その内容を要約すると,以下のとおりである. 医療現場において,アナフィラキシーの評価および治療に向け準備する.文書化された緊急時用プロトコールを作成,掲示し,定期的に訓練する.アナフィラキシーの臨床診断後直ちに,可能であれば誘因への曝露を中止する(治療薬・検査薬を静脈投与している場合中止するなど).速やかに患者を評価する(循環,気道,呼吸,意識状態,皮膚).支援要請,大腿部中央の前外側へのアドレナリンの筋肉注射,患者を仰臥位または楽な体位にし,下肢を挙上させる処置を並行して速やかに行う. アナフィラキシーの発症中に必要であれば,いかなる場合でも,酸素投与,静脈内輸液による蘇生を行い,継続的な胸部圧迫法による心肺蘇生を開始する.頻回かつ定期的に患者の血圧,脈拍,心機能,呼吸状態,酸素化を評価し心電図をとる.可能であれば,継続的に非侵襲性のモニタリングを開始する. 上記治療に難治性のアナフィラキシー患者(挿管および機械的人工換気を要する患者,ならびに静脈内アドレナリン投与または別の昇圧剤を要する患者など)は,可能であれば,追加的な支援が受けられる医療施設に移送すべきである.移送先の医療施設は,救急医療,救命救急医療,または麻酔学の専門医と,訓練を十分に受けた経験豊富な看護師と技師がおり,適切な薬剤,医療備品,医療機器を備えていることが望ましい.このようなスキルを持つ医師等による支援が得られない場合,可能であれば,医師は難治性のアナフィラキシー治療時の訓練と経験をさらに重ね,救命処置の訓練をさらに受けるべきである. 医療現場からの退院時,患者には,自己注射用アドレナリン,アナフィラキシーのアクションプラン,および日常生活の場におけるアナフィラキシーの再発に対し,迅速な認識と治療を容易にする医療用の識別物を準備する.また,経過観察のため来院(アレルギー専門医が従事する)し,患者特異的なアナフィラキシー誘因を確定するこ

と,特定の誘因の回避による再発予防,アレルゲン免疫療法の実施が必要であることを説明する.

 本稿は,2011 年 2 月 18 日に WAO House of Delegatesにより承認された.

免責事項:World Allergy Organization(WAO)はこの論文の使用や信頼から発生するいかなる事象に関しても責任を負うものではない(詳細はwww.worldallergy.orgにある免責事項全文を参照).

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