平成 28 年1月 株式会社ディー・ブレイン九州

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平成26年度補正「先端課題に対応したベンチャー事業化支援 等事業(ITベンチャーのスタートアップ促進事業)」「②先輩起 業家等によるスタートアップ支援モデル実証事業」 -調査報告書- 平成 28 年1月 株式会社ディー・ブレイン九州 平成 26 年補正 経済産業省委託事業

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Page 1: 平成 28 年1月 株式会社ディー・ブレイン九州

平成26年度補正「先端課題に対応したベンチャー事業化支援

等事業(IT ベンチャーのスタートアップ促進事業)」「②先輩起

業家等によるスタートアップ支援モデル実証事業」

-調査報告書-

平成 28 年1月

株式会社ディー・ブレイン九州

平成 26 年補正

経済産業省委託事業

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<目次>

第 1 章 調査報告の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1.1 背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1.2 実施内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

1.3 実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第 2 章 IT 起業家候補・駆け出しベンチャーと先輩起業家等とのマッチング報告・・・ 5

2.1 アクセラレーションプログラムの実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

第 3 章 起業・スタートアップを促進する環境・イベント開催に関する報告・・・・・ 16

3.1 起業・スタートアップを促進する環境の提供・・・・・・・・・・・・・・・ 16

3.2 起業・スタートアップを促進するイベント開催・・・・・・・・・・・・・・ 18

3.3 オープンイノベーションの促進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

第 4 章 カリキュラム・マニュアル作成報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

第 5 章 総括と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

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第1章 調査報告の概要

1.1 背景と目的

福岡市は「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されたこともあり、多くの IT 企業を中心と

した起業が活発になってきている。しかし、創業を促進するイベントなどは活発に行われている

ものの、起業後に実際にビジネスを世界に向けて立ち上げていこうという革新的な Startup に対

する支援体制は整っているとは言い難い。特にシード期における金融的な支援としては、日本政

策金融公庫の創業融資や資本性ローンに依るところが多く、スタートアップアクセラレータやエ

ンジェルがほとんど存在しない地方においては、東京に行くしかないというのが現状である。ま

た、東京においては多くの大企業がオープンイノベーションに積極的に取り組みを開始している

が、九州においてはまだそのような動きが本格化していない。今回のアクセラレーションプログ

ラムはこれらの課題に対して、先輩起業家等と StartupGo!Go!実行委員会、日本政策金融公庫、

西日本鉄道が連携することで、革新的な Startup を成功に導く解決策を提示するものである。

福岡市の中心地に位置する「天神から」世界を目指す Startup を生み出すアクセラレーション

プログラムを開始し、「グローバル創業特区」に指定された福岡市における民間主導のインキュベ

ーション事業として起業家が起業家を生む好循環を創りだし、エコシステムを構築することを目

的としている。

革新的ベンチャーを生み出しているシリコンバレーでは、卓越した能力を持つ人材の企業に対

し、事業開発資金として少額出資を行い、起業成功者がビジネス構築のノウハウを伝授するスタ

ートアップアクセラレータが多数存在しており、起業家が起業家を生む好循環を形成している。

九州でもベンチャーに出資するVCはあるものの東京に比べると格段に数が少ないのが現状であ

る。東京においては創業時にリスクマネーを供給するエンジェルやスタートアップアクセラレー

タが多く存在し、起業家が起業家を生む好循環を生み出しつつあるように思われる。創業を促進

する取り組みが活発で起業家が増え始めている地方こそ、スタートアップアクセラレータの継続

的な取り組みとファンドを組成するなどリスクマネーの供給能力の獲得が求められているといえ

よう。

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1.2 実施内容

IT 起業家候補・駆け出しベンチャーと先輩起業家等のマッチングを行い、ビジネス構築などの

アドバイスを行うメンタリングにあたっては、次のような方針を基に先輩起業家等の選定を行っ

た。StartupGo!Go!などのイベントを通じてすでに関係のある先輩起業家等、東京の第一線の方、

九州を代表する方を中心に人選し、Startup 企業にとって今後の事業展開に重要な影響を与える

ような人脈を提供することを主眼に置いた。

先輩起業家等による研修を開催し指導・相談対応を行った。プログラムマネージャー、ディレ

クター、サブプログラムマネージャー、コミュニティマネージャーも参加し、フォローアップを

行っている。個別の相談に対しては、別途先輩起業家等との面談の機会を設定して指導・相談対

応(メンタリング)を行った。必要に応じてプログラムマネージャー、コミュニティマネージャ

ーが先輩起業家、専門家と協力してネットワークの提供、メンタリング、事業開発・製品開発の

指導、マーケティングの支援、法律・税務等の相談等を実施した。資金調達の相談については連

携先である日本政策金融公庫が創業融資、資本性ローンなどの対応を行った。

IT 起業家候補・駆け出しベンチャーの募集においては、過去の StartupGo!Go!のイベントに参

加した起業家や、日本政策金融公庫福岡創業支援センターが相談対応をしている起業家などを中

心に募集を行い、30人ほどの起業家をプログラムの参加者として登録、研修プログラムを提供

した。平成 27 年 10 月に DEMO DAY を開催し、投資家等とのマッチングを行った。

起業・スタートアップを促進するイベントを数多く開催した。これらのイベントにおいては海

外で活躍する最先端の情報をもった Startup 起業家、エンジェル、シードアクセラレーター、ベ

ンチャーキャピタリスト等の招聘を行い、スタートアップが生まれ、成長を促進する環境の創出

を図った。

起業・スタートアップを促進する環境の提供として、平成 27 年6月から福岡市の中心地天神に

おいて、西日本鉄道が保有する賃貸ビルを改装してコワーキングスペース「天神 COLOR」をオー

プン。入居者は事前に審査を行い、革新的な IT を主体とした Startup を対象として入居を認めて

いる。原則としてアクセラレーションプログラムへの参加を行うこととしている。

委託事業の連携先である西日本鉄道は、鉄道事業、商業施設の運営、不動産事業、旅行事業な

ど多岐に渡る事業分野を持っている。西日本鉄道に対する事業提案を競う「西鉄オープンイノベ

ーションコンテスト」を開催し、オープンイノベーションの促進を図るとともに、Startup と大

企業との協業の可能性を探った。

1.3 実施体制

九州最大のスタートアップイベントを実施した「StartupGo!Go!実行委員会」(事務局 株式会

社ディー・ブレイン九州)、イベントの共催者である日本政策金融公庫福岡創業支援センター、「平

成27年6月に天神にコワーキングスペースを開設した西日本鉄道の3者がパートナー契約を締結

して実施した。

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図 1 実施体制図

実施に当たっては以下のような人員体制を中心に行っている。

<事務局・プログラムマネージャー>StartupGo!Go!実行委員会実行委員長、株式会社ディー・ブ

レイン九州代表取締役社長 岸原稔泰

全体の統括及び Startup の募集・指導相談対応、先輩起業家との調整、専門家との調整、イベ

ントの企画等を行った。

<ディレクター> 日本政策金融公庫福岡創業支援センター 所長代理 中原健

プログラムの企画立案、Startup の募集・指導相談対応、先輩起業家との調整、専門家との調

整、イベントの企画、ウェブの運営管理、広報等を行った。

<サブプログラムマネージャー> 黒川合同会計事務所 税理士 寺井博志

プログラムマネージャー、ディレクターの補助。

<コミュニティマネージャー> StartupGo!Go!実行委員会 安達誠寛

コワーキングスペースに常駐し、コワーキングスペースの運営管理、入居者の募集、入退去の

管理、Startup 企業の状況把握、Startup 同士の連携を図るとともに、プログラムの企画立案、

Startup の指導相談対応、先輩起業家との調整、専門家との調整、イベントの企画、ウェブの運

営管理等を行った。

<アドバイザー> 西日本鉄道 都市開発事業部本部ビル事業部営業第二課

コワーキングスペースでのコミュニティの形成支援、プログラム構成の検討、西日本鉄道内の

調整等を行い、プログラム全体にアドバイスを行った。

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第2章 IT 起業家候補・駆け出しベンチャーと先輩起業家等とのマッチング報告

2.1 アクセラレーションプログラムの実施

第1回メンター 株式会社マネーフォワード 代表取締役 辻 康介氏

開催日時 平成 27 年7月9日(木)18:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 12名

実施内容 講演フリーディスカッション(質問形式)

実施概要 創業時の資金調達方法及び使途について、創業時のメンバー編成、集め方、事業化に

向けての取り組み方向性の合わせ方、サービス開発などについて、プログラム参加者からの質

問を基に回答する方式で実施。0から1を創りだすところが大変。Must have のサービスを創

ることが大事。ターゲットを具体的に設定することで、サービス内容が洗練される。初期ユー

ザーを集めることは、すごく大変。資金がなかったので、メディアの人に会って、売り込むこ

とで、露出につながったなどのお話をいただいた。

第2回メンター REAPRA PTE.LTE CEO 諸藤周平(SMS創業者)

開催日時 平成 27 年7月 14 日(火)18:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 11名

実施内容 講演、個別メンタリング4者

実施概要 講演では、事業化するにあたって考慮している点として、レッドオーシャンではない

こと。マーケットが成熟しておらず、その後の拡大が期待でき、さらにプレーヤーいないこと。

絶対あるはずだということを数値化して、ニーズとマネタイズの仮説を立てる。提供価値が何

かで、マーケットサイズを設定する。いくつかのプロダクトを minimum の資金で走らせて、実

証実験をして検証する。といった話をいただいた。その後の個別メンタリングでは、グループ

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ウェアを開発している企業に対してグローバル化のアドバイス、医療分野での事業展開を考え

ている企業に対して業界の特性についてのアドバイス、パソコン周辺機器を製作しようという

企業に対してパテント戦略についてのアドバイス、東南アジアでマーケットプレイスを展開し

ようとする企業に対していかに競争優位性を保つかといったアドバスと海外での人脈を紹介

いただいた。

第3回メンター 株式会社ドリームインキュベータ シニアマネージャー 田上和宏氏

開催日時 平成 27 年7月 25 日(土)講演 13:00 メンタリング 15:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 10名

実施内容 講演、個別メンタリング4名

実施概要 講演では、投資家の視点として、回収手段は IPO かM&A。大きなポイントはビジネ

ス面と経営者(実行力)、ビジネス面として、現状分析、市場規模、特化しているか、アセッ

ト積上げ型か、フック(差別化)と回収エンジン(収益化)は何か、将来の変化への対応を考

えているか。高校の同級生である孫泰蔵氏はいち早くスマホのゲームが主流になることを読ん

でいたといった話をいただいた。個別メンタリングでは、サブカルチャー分野のIoT企業に

対して資本政策のアドバイス、顧客評価システムの開発会社には、ターゲッティングについて

アドバイス、動画を使った塾展開を行っている企業には、どのような価値を提供して差別化す

るかのアドバイス、コスメ分野で起業した会社には、アプリによる事業展開についてのアドバ

スなどを行っていただいた。

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第4回メンター コイニー株式会社 代表取締役 佐俣奈緒子氏

開催日時 平成 27 年8月7日(金)15:00~17:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 13名

実施内容 講演、個別メンタリング2名

実施概要 日本は海外に比べ、決済方法の種類が多い一方で、使える場所が少なかったので、全

国どこでも使える決済方法を創り、決済環境をかえたいと思い、コイニー㈱を創業した。人材

採用にあたってはブログを閲覧し、気になる人にアプローチしたほか、友達に紹介を依頼した。

人を口説く秘訣は、悪いこと、出来ないことをオープンにすること。金調達する際は、事業が

VC にあうのか、エンジェルに合うのか、間接金融に合うのかを検討した方がよい。 スモー

ルビジネスに対する営業戦略は、足を使った営業の方が効率的と考えている。当社のサービス

は、提携先が売ってくれている。個別メンタリングにおいては、顧客評価システムの開発会社

に対して、プレゼンテーションの方法として、プロブレム、ソリューション、ビジネスモデル、・

技術、マーケティング、競合、チーム、マイルストーン、タイムライン、スケジュールの順に

説明するとよいといったアドバイス、現金による電子書籍の決済システムを提供する企業に対

しては、業界の慣行やビジネスモデルなどの質問に対してアドバイスをいただいた。

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第5回メンター セカイラボ PTE.Ltd COO 大熊 一慶

開催日時 平成 27 年8月 28 日(金)18:00~19:30

開催場所 天神COLOR

参加人数 6名

実施内容 講演

実施概要 オフショア開発の元請になり、自社開発、または外注している。オフショア開発は、

立ち上げに時間がかかる、また、コミュニケーションコストが高い。オフショア開発の問題の

9割は、コミュニケーションであり、発注者が精密に目的、内容等を説明することが大事であ

る。10 人規模になった際に、問題点の共有が困難になった。次の壁は、30 人規模。規模が大

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きくなるにつれ、ビジョンの共有が難しくなったといった話をいただいた。

第6回メンター 株式会社ヌーラボ CEO 橋本 正徳氏

開催日時 平成 27 年 9 月 15 日(火)メンタリング 18:00、講演 19:30

開催場所 天神COLOR

参加人数 9名

実施内容 個別メンタリング5名、講演

実施概要 個別メンタリングにおいては、グループウェアを開発する会社には、受託から自社プ

ロダクトへの移行に対するアドバイス、全国の特産物集めたマーケットプレイスを開発する会

社には、初期のユーザー獲得方法についてのアドバイス、サブカルチャー分野の IoT 企業に対

してはユーザー対応についてアドバイス、謎解きアプリを開発する企業に対しては初期ユーザ

ーの獲得について詳しい人脈の紹介、東南アジアでマーケットプレイスを展開しようとする企

業に対してはユーザーインタビューについてのアドバイスをいただいた。講演については、初

期ユーザーの獲得にメディアが有効であったこと、海外展開の方法、ペルソナの検証の方法な

どについて話をいただいた。

第7回メンター 元日本アジア投資ベンチャーキャピタリスト(現中国銀行)石元 玲氏

開催日時 平成 27 年 9 月 19 日(土)メンタリング 13:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 3名

実施内容 個別メンタリング3名

実施概要 個別メンタリングにおいては、東南アジアでマーケットプレイスを展開する企業に対

して決済手段、資本政策のアドバイス、コスメ分野で起業した企業に対しては、アプリによる

事業展開についてアドバイス、現金による電子書籍の決済システムを提供する企業に対しては

事業の方向性に関してのアドバイスをいただいた。

第8回メンター 本荘事務所 本荘修二氏

開催日時 平成 27 年 9 月 26 日(土)メンタリング 13:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 6名

実施内容 個別メンタリング6名

実施概要 WiFi のシェアリングサービスを展開する会社に対して、ユーザーの獲得方法について

アドバス、顧客評価システムを開発する企業に対して、誰に対してソリューションを提供する

のかを明確にするようアドバイス、デーティングアプリを開発する企業に対しては、サービス

の提供方法、ユーザーの獲得方法についてアドバイス、ハンドメイド商品のキュレーションサ

イトを運営する企業に対しては、初期ユーザーの獲得についてアドバイス、プレゼンデータの

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自動生成システムを開発する企業に対しては、マネタイズに対するアドバイス、リモートワー

クをキュレーションしたサイトを運営する企業に対しては、メディアとしての展開方法などに

ついてアドバイスをいただいた。今回のメンタリングについては主にDEMO DAYに出場

する企業を中心にプレゼンに向けたブラッシュアップを目的として行った。

第9回メンター Goodpatch アカウントマネージャー、UX デザイナー 佐宗純氏

開催日時 平成 27 年 10 月 9 日(金)16:30

開催場所 天神COLOR

参加人数 17名

実施内容 講演、ワークショップ

実施概要 ビジョンとしてハートを揺さぶるデザインで世界を前進させるを掲げている。事業

内容としては UI デザイン、サービスデザインを軸にしたデザイン制作、開発を行っている。

ワークショップにおいては、ペルソナ役のユーザーを実際に用意して、考えたコンセプトやプ

ロトタイプに対して繰り返しフィードバックをもらい反映させる、つくっては修正する、PDCA

サイクルを高速で回す開発手法を学んだ。

第 10 回メンター 阿部・井窪・片山法律事務所 服部誠弁護士

開催日時 平成 27 年 10 月 20 日(火)講演 19:30

開催場所 天神COLOR

参加人数 10名

実施内容 講演

実施概要 契約書をしっかりと締結すべき。口頭でも契約は成立する。見積もりやチャットなど

でも内容によっては合意があったとみなされる。しかし後日争いになることも。報酬の金額・

方法を明確に。請負は完成をすることを前提、費用も含む。委任は業務をすること自体を請け

負ったのか。委任か請負かは実態をみて判断する。中途解約になった場合、出来高に応じて報

酬が請求できるような条文を入れておく。委任の場合は条文が入ってないと請求できない。完

成を目的とするか、部分部分で業務を行ったとするかが争点になる。下請法では、著作権は下

請事業者にあるとしている。デザインも少し変えただけも著作権違反に問える支払い遅延が発

生した場合は迅速かつ執拗な催促をすることが大事といったお話しいただいた。

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第 11 回メンター リープマインド株式会社 代表取締役 松田 総一氏

開催日時 平成 27 年 10 月 23 日(金)講演 19:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 17名

実施内容 講演

実施概要 DeepLeaning はニューラルネットワークの超パワーアップ版。ニューラルネットワー

クは神経回路。Google が YouTube の動画をランダムに見続けることでネコの概念を獲得した実

験が有名。DL は自己学習して INPUT するところが大きな違い。ニューロンの繋がりの「重み」

を判断して出力、違っていれば立ち戻って再出力。次元を深くしていくとデータが抽象的な形

になっていくことで概念を覚えさせる。抽象化すると計算量が減る。概念を覚えさせるには

Teach が必要。なぜ必要になってきたのか?クラウド以前とデータの量・複雑さが変わってき

ている。画像解析はいいアルゴリズムなどが日々開発されて実用化が進んでいる。次は音声認

識でデータ量、処理能力が増えていく、さらに進むと自然言語処理。統合知能と進んでいく。

差別化の要素としてはデータ量。といったお話しをいただいた。

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第 12 回メンター Femto Growth Capital LLP ゼネラルパートナー 磯崎哲也氏

開催日時 2015 年 11 月 19 日(木)19:00~21:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 30名

実施内容 個別メンタリング2名、講演

実施概要 個別メンタリングにおいては、登山者向けのアプリを提供している企業に対して、投

資家の視点でどのような点について見ているかアドバイス、WiFi のシェアリングサービスを展

開する企業に対して、マーケットサイズによる企業価値の評価などについてのアドバイスをい

ただく。講演においては、株式とはどう山分けするかという経済的権利、会社をコントロール

する権利。エンジェルと思ったら悪魔だったということもある、自分の一部を分けることに等

しい。株式はベンチャーにとっての最大の武器、創業者が持っている株式はベンチャーの打て

る残りの弾の数である。ベンチャーファイナンスの特異性、90年代までは金融機関が VC を

やっていた。アメリカも70年代は同じだった。セコイヤやジョンドーアなどがでてきて事業

に詳しい人たちが VC をはじめてきた。アメリカも昔はM&Aに批判的だったが現在はM&A

のほうが多くなっている。日本もいずれそうなる。M&Aで儲かった人はまた起業する人が多

い。それはベンチャーがもっともエキサイティングだから。エンジェルとして投資する人も多

い。といった話をいただいた。

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第 13 回メンター 株式会社アドライト 代表取締役 公認会計士 木村 忠昭氏

開催日時 2015 年 11 月 19 日(木)19:00~21:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 5名

実施内容 個別メンタリング5名

実施概要 個別メンタリングにおいては、謎解きアプリを展開する企業に対しては、ビジネスモ

デルについてのアドバイス、現金による電子書籍の決済システムを提供する企に対しては誰に

対するソリューションであるかといったアドバイス、登山者向けのアプリを提供する企業に対

しては、資本提携先、スケールの方向性などについてアドバイス、グループウェアを開発する

企業に対しては、資本政策についてのアドバイス、東南アジアでマーケットプレイスを展開す

る企業には、投資家に対するプレゼンテーションについてのアドバイスをいただいた。

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第 14 回メンター

DRAPER NEXUS VENTUE PARTNERS,LLC マネージングディレクター 中垣 徹二郎氏

開催日時 2016 年1月8日(金)メンタリング 14:00 講演 16:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 講演30名

実施内容 個別メンタリング3名、講演

実施概要 個別メンタリングにおいては、東南アジアでマーケットプレイスを展開する企業に対

して現地でのマーケット調査の重要性についてのアドバイス、個人間の不動産流通支援サイト

を展開しようとする企業に対しては、サービスのコンセプトの構築についてのアドバイス、簡

易的にサイトを立ち上げられるCMSを展開する企業には、マーケティングに関してのアドバ

イスをいただいた。講演においては、スタートアップは破壊的イノベーションの源泉。実行リ

スクが高くて市場リスクが高い事業があるとして、その両方のリスクを取れるのはスタートア

ップのみ。すべての事業分野において新しい Disruption が始まる。CVC が物凄い伸びてきてい

る。コマツ、クラレ、日立ソリューションなどの事例の紹介。オープンイノベーションを成功

させるためには、Startup と大企業の役割分担についての正しい見解、中長期かつ戦略性ある

活動が必要といった話をいただいた。

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第3章 起業・スタートアップを促進する環境・イベント開催に関する報告

3.1 起業・スタートアップを促進する環境の提供

平成 27 年6月に福岡市の中心部に位置する明治通りビルにおいてコワーキングスペース「天神

COLOR」がオープン。西日本鉄道が所有しているビル。レンタルオフィス、学習室として活

用しているビルの2Fを改装して開設。運営を StartupGo!Go!実行委員会、日本政策金融公庫と

連携して行うこととなった。「天神から世界を目指す」Startupを生み出すことを目的としている。

アクセラレーションプログラムを同年7月から開始し、創業後の成長に向けた支援を行う。

<施設概要>

【場 所】 天神明治通りビル 2 階(福岡市中央区天神 1 丁目 15-5)

【面 積】 119.97 m²(36.29 坪)

【営 業時間】24 時間利用可能

【付 帯設備】デスク、椅子、ロッカー(有料)、給湯室、トイレ、空調、Wi-Fi 環境

【募 集人員】27名

【使 用料】

《フ リ ― 席》 月額 12,000 円(税別)

《固 定 席》 月額 15,000 円(税別)

《商業登記》 月額+5,000 円(税別)

※1 共益費月 2,000 円。入会費1ヶ月分。ロッカー使用月 1,500 円。

※2 1年更新、契約更新は最大 2 年まで。

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「天神 COLOR」オープニングセレモニーの開催

開催日時 平成 27 年6月1日(月)式典 14:00、ピッチ 15:00、懇親会 17:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 70名

来賓 福岡市長 高島宗一郎氏、西日本鉄道 取締役 専務執行役員, 高崎 繁行氏、日本政

策金融公庫 福岡支店支店長 池隅剛志氏

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3.2 起業・スタートアップを促進するイベント開催

(1) StartupGo!Go! in 北九州

開催日時 平成 27 年5月 23 日 13:00 ワークショップスタート、14:30 イベント開始

開催場所 fabbit(北九州市小倉北区)

参加人数 ワークショップ 10 名、イベント50名

開催内容

基調講演 株式会社グルーブノーツ代表取締役社長 最首 英裕氏

講演概要 「新たなビジネス領域として IoT がキーワードになることが増えています。

数多くの IoT ビジネスに関わっている経験から、実験ではなく、現実に IoT をビジネ

スにしていくということはどのようなことなのか。ビジネスはどのように変化しつつ

あるのか。これまでの常識が大きく変わろうとしているなか、経営者として何を考え、

行動すべきなのか」について講演いただいた。

ピッチ 九州工業大学 佐藤 寧教授、JOYAS CEO 内村 康一氏、Reif Co., Ltd. 竹本

良美 取締役。

ネットワーキングパーティー

ワークショップにおいては「IoT とオモチャ」をテーマにアイデアソンを実施した。

(2) Supecial MonthlyGo!Go!

開催日時 平成 27 年 6 月 10 日(水)19:00

開催場所 福岡市スタートアップカフェ

参加人数 30名

開催協力 株式会社サムライインキュベート

開催内容 「Startup が一緒に働くということ」をテーマに開催

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リソースが限られたスタートアップ。限られたリソースを最大化するためにはスター

トアップ同士が協力することが必要。そのためにシード期においてはコワーキングスペ

ースでの協働が有効といわれている。コワーキング、インキュベートの先駆けであるサ

ムライインキュベートの両角氏と支援企業である株式会社 tritrue 共同創業者 CTO 廣

瀬 誠氏にパネルディスカッションを行っていただいた。また、6月からスタートしたア

クセラレーションプログラム&コワーキングスペース「天神COLOR」の内容説明会を

実施。

(3) アメリカへ Go!Go!

開催日時 平成 27 年7月 11 日(土)16:00

開催場所 天神 COLOR

参加人数 50名

開催趣旨 サンフランシスコ・シリコンバレー視察に参加した Startup 関係者がその経験、

感じたこと等をセミナー参加者に共有し、福岡のエコシステム構築をさらにすす

めることを目的とする。

【主催】StartupGo!Go!実行委員会

【協力】福岡市スタートアップカフェ、福岡地域戦略推進協議会(FDC)

【後援】福岡市

開催内容

スペシャルゲスト講演 btrax ブランドン片山ヒル氏

基調報告 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 執行役員九州カンパニーカ

ンパニー社長 鎌浦慎一郎氏「アメリカGOGO日記」

視察参加者によるパネルディスカッション

高島市長のコメント

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ネットワーキング

(4) アニス・ウッザマン氏へのピッチ、Kyushu Startup Pavilion(KSP)2015

開催日時 平成 27 年7月 30 日(木)ピッチ 16:30、KSP19:00

開催場所 ピッチ:天神COLOR、KSP:エルガーラホール

参加人数 アニス・ウッザマン氏へのピッチ3名、KSP250名

【ピッチ主催】StartupGo!Go!実行委員会

【KSP主催】トーマツベンチャーサポート株式会社、株式会社ドーガン

【KSP共催】福岡市、StartupGo!Go!実行委員会

開催内容

アニス・ウッザマン氏へのピッチ(開催場所 天神COLOR)

Kyushu Startup Pavilion(KSP)2015

Page 22: 平成 28 年1月 株式会社ディー・ブレイン九州

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基調講演 Fenox Venture Capital 共同代表パートナー&CEO アニス・ウッザマン氏

スタートアップ ピッチ 株式会社 炭化、株式会社 セフリ、株式会社 リーボ、ウミー

ベ 株式会社、株式会社 ユニゾンシステムズ、有限会社 QPS 研究所、株式会社 トゥ

トゥモロウ

(5) MonthlyGo!Go! Aug with FECC

開催日時 平成 27 年8月1日(土)16:30

開催場所 福岡市スタートアップカフェ

参加人数 30名

【共催】福岡市雇用労働相談センター(FECC)

開催内容

いつでも弁護士に無料で相談ができるというスタートアップ支援事業を行っている

FECC とのコラボ企画として開催。「優秀な人材を東京から福岡へ」をテーマに開催。

パネルディスカッション「東京からの優秀なスタートアップ人材の獲得」

パネリスト

株式会社グルーヴノーツ 会長 佐々木 久美子氏

株式会社グッドラックスリー CEO 井上 和久氏

ウミーベ株式会社 CEO カズワタベ氏

プレゼンテーション1「成長を目指すベンチャーの幹部人材採用ルール」

株式会社アマテラス 代表取締役社長 藤岡 清高氏

プレゼンテーション2「採用・引き抜きにおける”落とし穴”」

FECC 代表相談員 弁護士 田邊 俊氏

Page 23: 平成 28 年1月 株式会社ディー・ブレイン九州

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ネットワーキング

(6) Special Go!Go! with Samurai & Tech in Asia

開催日時 平成 27 年8月 20 日(木)17:00

開催場所 石蔵酒造 博多百年蔵

参加人数 50名

【協力】株式会社サムライインキュベート、Tech in Asia

開催内容

なぜ、起業したのか??

なぜ、その業界を選んだのか??

なぜ、エコシステムは重要なのか??

なぜ、その場所を選んだのか??

なぜ、上手くいくと思ったのか?

先輩起業家に加え、日本の No. 1 インキュベーター、サムライインキュベート、シンガ

ポールを拠点に活動する Tech in asia からゲストを招き、福岡のスタートアップととも

にスタートアップの「Why」を切り口にこれからのスタートアップの在り方に迫った。

Tech in asia プレゼン

Tech in Asia chief editor for Japan and South Korea JEFFREY QUIGLEY 氏

パネルディスカッション1

Tech in Asia chief editor for Japan and South Korea JEFFREY QUIGLEY 氏

Lingua Franca Holdings Pte.Ltd 代表 藤山英昭氏

モデレーター 株式会社サムライインキュベート 寺久保 拓磨氏

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基調講演

ピクシブ株式会社代表取締役社長 片桐 孝憲氏

パネルディスカッション2

ピクシブ株式会社代表取締役社長 片桐 孝憲氏

株式会社落し物ドットコム 代表取締役 増木 大己氏

モデレーター 株式会社サムライインキュベート 両角 将太氏

ピッチコンテスト

株式会社 Qurate、シェア WiFi 株式会社、株式会社ぺんぎー、株式会社 anect、ドレミ

ングアジア株式会社、株式会社ぽちっとかんぱにー

ネットワーキング

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(7) 天神COLORアクセラレーションプログラム DEMO DAY

開催日時 平成 27 年 10 月3日(土)17:00

開催場所 九州大学 大橋キャンパス 多次元ホール

参加人数 320名

開催内容 天神COLORアクセラレーションプログラムに参加する Startup によるピッチ

コンテスト。在京のVC担当者が10社以上参加し審査員を務めた。

出場 Startup21社

anect 株式会社、Doreming asia 株式会社、合同会社 Essence、株式会社 Medy、株式会

社ジョイアス、株式会社 thee moment、テラスマイル株式会社、株式会社 ELGAME、株式

会社キャンディ、株式会社 Qurate、シェア WiFi 株式会社、株式会社フレクションコン

サルティング、 株式会社ホットエージー、エナリズム、SEREAL、株式会社コラボプラネ

ット、株式会社リフラックス、パルメクス株式会社、DIA、remoru

参加ベンチャーキャピタル12社

K&P パートナーズ、グロービス・キャピタルパートナーズ、ドリームインキュベータ、

サイバーエージェントクラウドファンディング、ベンチャーユナイテッド、YJ キャピタ

ル、DBJ キャピタル、プライマルキャピタル、サイバーエージェントベンチャーズ、SMBC

ベンチャーキャピタル、NECキャピタルソリューション、みずほキャピタル

※本イベントは「StartupGo!Go!2015~尖レ~」の同時開催イベントとして開催された。

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(8) StartupGo!Go! in 熊本

開催日時 平成 27 年 11 月 23 日(月)16:30

開催場所 未来会議室

参加人数 40名

【共催】未来会議室

開催内容

メインスピーチ 「起業でもなんでもいまの時代に大切なこと」勝屋 久氏

熊本出身の経営者によるパネルディスカッション

株式会社IBJ代表取締役副社長中本 哲宏氏

株式会社エスケーホーム代表取締役社長瀬口 力氏

モデレーター K&P パートナーズ株式会社代表取締役 松村伸也氏

ピッチコンテスト8社

Palmex、Hidamari、オーケープランニング、あきまろ舎、内村氏、フロンティアビジ

ョン、林和文氏、ジョイアス

ネットワーキング

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(9) Get in the Ring National Final

開催日時 平成 27 年 12 月 18 日(金)17:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 30名

開催内容

Get in the ring は2012年にオランダで生まれた、オランダ政府公認の団体が運

営するスタートアップを支援するためのイベント。ピッチの場を提供し、勝ち残ったス

タートアップにはさまざまなサポートを提供する。Get in the ring は地方決勝、国内

決勝、地域決勝、世界決勝となる。今回は福岡にて国内決勝にあたる JAPAN FINAL を開

催。 優勝者には1月に韓国で行われる Regional Final の出場権を得る。さらにそれも

勝ち残れば、今年はコロンビアで行われる決勝へ。1対1のボクシング形式によるピッ

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チ対決の結果、ローバーと株式会社フレクションコンサルティングが平成 28 年1月 21

日に韓国で行われる Resional Final へ出場することとなった。

(10) ハッカソン、地域スタートアップ支援機関連携イベント

開催日時 平成 28 年 1 月 20 日(水)ハッカソン 15:00、連携イベント 18:00

開催場所 天神COLOR

参加人数 10名

開催内容 ハッカソンでは、未踏OBであるテクニカルロックスターの部谷氏をモデレータ

ーとして、自社が開発した IoT プラットフォームである Milkcocoa を使った事業開発をテ

ーマに開催した。

地域スタートアップ支援機関連携イベント。Startup Go! Go! と(一社)未踏におい

てはそれぞれ、IT スタートアップ企業の発掘・育成に取り組んでいる。「地域スタートア

ップ支援機関連携イベント」として、天神を拠点とした起業家育成プログラム「天神 COLOR」

を実施している Startup Go! Go! と、未踏の OB/OG 人材等の会員ネットワークを有する

(一社)未踏の取組をご紹介し相互連携を通じた地域活性化を目指すと共に、イベント終

了後の交流会等を通じて参加者の皆様のビジネス機会の拡大を目指して開催した。

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(11) IPO&Startup セミナー

開催日時 平成 28 年1月 22 日(金)15:00

開催場所 福岡証券取引所

参加人数 40名

開催内容

基調講演 「Fintech の衝撃~テクノロジーが変える金融の未来」

株式会社マネーフォワード取締役 マネーフォワード Fintech 研究所長 瀧 俊雄氏

パネルディスカッション

赤れんが法律事務所 弁護士 杉山 央 氏

株式会社アカウンティング・アシスト 公認会計士 茂田井 純一氏

岡三証券㈱ 企業公開部長 小塚 正樹氏

株式会社ジャフコ 九州支社長 山形 修功氏

福岡証券取引所 営業部 牛島 亮太氏

モデレーター 重見公認会計士事務所所長 公認会計士 重見 亘彦氏

ネットワーキング

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29

3.3 オープンイノベーションの促進

九州においては、まだ大手企業と Startup が協業するオープンイノベーションが進んでいない。

コワーキングスペース「天神COLOR」の開設、アクセラレーションプログラムの運営を通じ

え連携している西日本鉄道に対して、Startup がビジネス提案を行うビジネスプランコンテスト

を開催し、九州では初となる大手企業による本格的なオープンイノベーション推進、Startup 支

援イベントを開催した。

(1)「西鉄オープンイノベーションコンテスト」開催概要

運営体制

【主催】西日本鉄道、StartupGo!Go!実行委員会

【後援】福岡市、日本政策金融公庫

応募資格

下記①は必須条件とし、加えて②または③のいずれかを満たすこと

[1] 設立 7年以内のベンチャー企業

[2] IT 関連技術を有する企業

[3] 西鉄グループと事業の連携が可能な企業

選考基準

革新性、事業及びマーケットの成長性、西鉄グループとの連携の実現可能性など。

スケジュール

平成 27 年 11 月 27 日(金) 募集開始

平成 27 年 12 月 18 日(金) プレエントリー締切

平成 28 年 1 月 12 日(火)「鉄ッカソン」(西鉄社員とのアイデアソン)開催

平成 28 年 1 月 12 日・13 日 ブラッシュアップ

平成 28 年 1 月 15 日(金) 最終締切

平成 28 年 1 月 29 日(金) 最終選考(ピッチコンテスト)

開催場所 西鉄グランドホテル

開催内容 スタートアップによるピッチ(プレゼン) 、パネルディスカッション

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審査員

(審査委員長)本荘事務所代表 本荘 修二氏

株式会社ドリームインキュベータ シニアマネージャー 田上 和宏氏

日本政策金融公庫 創業支援部ベンチャー支援GL 永沼 智佳氏

ほか、西鉄グループより数名

パネルディスカッション「オープンイノベーションで変わる大企業と起業家の関係」

株式会社からくりもの 代表取締役社長 岡本 豊氏

株式会社グルーヴノーツ 代表取締役会長 佐々木 久美子氏

西鉄エム・テック株式会社 取締役 米田 幸司氏

モデレーター StartupGo!Go!実行委員長 岸原 稔泰

ネットワーキング

「鉄ッカソン」の様子

2016 年1月 29 日ファイナルの様子(於:西鉄グランドホテル)

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56社のエントリーの中から、ブラッシュアップを経て書類審査により11社のファイナリス

トを選出し、最終選考会を開催した。

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パネルディスカッション

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11 社のファイナリストの中から以下の通り最優秀賞と優秀賞、特別賞を授与した。

ファイナリスト 11 社

株式会社 Liquid、株式会社スカイディスク、イジゲン株式会社、株式会社オフィス at、

株式会社みらい De やさい、株式会社ビッグバン コーポレーション、株式会社アイコトバ、

株式会社 Qurate、リーボ株式会社、株式会社 thee moment、LeapMind 株式会社

最優秀賞 LeapMind 株式会社

優秀賞 株式会社 Qurate、株式会社 thee moment

特別賞 株式会社オフィス at

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第 4 章 カリキュラム・マニュアル作成報告

本委託事業を通じて実施してきたアクセラレーションプログラムを踏まえて、スタートアップ

の起業時における成長加速のためのプログラムとしては、先輩起業家からのアドバイスが非常に

有効であることが明確となった。それは、最先端の事業分野を開拓しようとする起業家にとって

同じような分野で事業経験のある起業家の話を聞くことが多くの気づきを得るものであり、その

ような気づきを与えられるのは自ら新しい事業領域を切り開いてきた起業家であるということで

あると言える。また多くのスタートアップに対して投資をしてきたベンチャーキャピタリストや

経営幹部であった方々からも多くの貴重なアドバイスをいただいている。成功・失敗を繰り返す

起業家に寄り添いながら様々な苦難をともに乗り越えてきた方々の話も、創業間もない起業家に

とって大変参考になる貴重なアドバイスをいただくことができた。

アクセラレーションプログラムを実施してきた結果、以下のようなカリキュラムを構築し、短

期間(3か月程度)の間に週1回全12回程度の講義・メンタリングを創業間もない起業家に対

してプログラムを提供することが成長加速のために有効であると思われる。

回 内容 摘要

1 先輩起業家による講義・メンタリング 東京の ITstartup 起業家

2 先輩起業家による講義・メンタリング 東京の ITstartup 起業家

3 先輩起業家による講義・メンタリング 海外で活躍する起業家

4 先輩起業家による講義・メンタリング 最先端の技術分野

5 先輩起業家による講義・メンタリング 最先端の技術分野

6 先輩起業家による講義・メンタリング 地元の ITstartup 起業家

7 ベンチャーキャピタリストによる講義・メンタリング

8 ベンチャーキャピタリストによる講義・メンタリング

9 公認会計士による資本政策の講義・メンタリング

10 弁護士による法務の講義・メンタリング

11 CFO経験者による講義・メンタリング

12 新事業開発の専門家による講義・メンタリング

また、本委託事業の中で現在の福岡の起業家が置かれている状況などを考慮して、どのような

スキル・教育が必要かを、IT人材の教育、起業家の育成などを手掛けている特定非営利活動法

人AIPに委託して調査した。調査研究の結果、次のようなカリキュラムを実施することも有効

であると考えられる。

① 起業家向けカリキュラムの構築の検討(特定非営利活動法人AIP調査から抜粋)

福岡市はその地理的な特徴(九州の商業・工業・政治の中心地、アジア地区へのアクセスの利

便性 等)から、九州他県・山口から多くの人材が流入する近年成長目覚しい地域である。201

4年(平成26年)には国から国家戦略特別区域として選定され「グローバル創業・雇用創出特

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区」として、創業の支援と雇用の創出に取り組んでおり、さらなる注目を集めている。 起業を支

援するための法律・資金・設備・フォロー人材は特区指定後様々な場面・場所等で整ってきてお

り、実際の起業事例も増えてきている。 起業に関して、起業前・起業後に必要となる知識やスキ

ル等の教育は上記と合わせて行われているが、ICT(情報通信技術)の活用を含んだ総合的な教育

はあまり行われていない状況となっている。

起業(スタートアップ)にはビジネスプランや人材等ももちろんながら、具体的な行動のスピ

ードが必須である。ICT はその行動スピードやビジネスそのものを大いに助けるものである。様々

な起業に関する条件等が整ってきた現状だからこそ、総合的な育成のための仕組みが必要であり、

ICT を含む教育カリキュラムが必要だと考える。

起業にあたっては、ビジネスプランを構築する、そのプランを実現(具体化)する、ビジネス

を継続していく、等が必要となる。これらを実現するには前述の ICT の活用も含めて以下が必要

だと考えられる。

a)市場・ユーザのニーズ把握、マーケティング(コミュニティ活用) b)思い描く案(ビジ

ネスプラン)の具体化 c)企業運営(経営・経理・人事) d)行動の手法(マネジメント・フ

ァシリテート)e)ICT 理解・活用。

a)市場・ユーザのニーズ把握、マーケティング(コミュニティ活用)市場・ユーザが何を求

めているのかを把握することが、新たな価値・既存以上の価値を提供するためには必要である。

また把握の後、その価値を市場やユーザに伝えていくためにマーケティングに関する知識や手法

理解が必要となる。

現代においてはニーズ把握やマーケティングにはソーシャルメディア (SNS)や個人が集まって

目的・目標等を共有して行動するコミュニティも力 が大きく無視できないものがある。

古典的マーケティングや SNS についての教育はすでにある一定数あり、カリキュラムではまだ

あまりまとめられてないコミュニティに関するものを構築に含む。

b)思い描く案(ビジネスプラン)の具体化。自らが思い描くビジネスプランを具体的な形に

していくことは必須である。マインドマップ等の手法による思考の見える化や構造化によってプ

ランを具体化する。

c)企業運営(経営・経理・人事)。起業後は当然ながら事業を継続していくことが求められる。

経営・経理に関しては特に小規模起業の場合は起業者本人が行わねばならず、経営手法のみなら

ず簿記等に代表される経理知識等も必要となる。手法や知識を学んだとしても、実際に経営を始

めなければ理解し辛いことが多々ある。カリキュラムでは「会社」というものを、「経営」「経理」

というものを、実際に経営者にならないと体験できない部分を疑似体験できるカリキュラムとす

る。また、起業後に規模を拡大していく上で人材の雇用が発生すると思われる。効果的な採用は

相手のスキルや人間性の把握だけではなく、その後の会社運営を見据えた取り組み・準備が必要

である。そのためには起業段階から、組織の人事ポリシーや評価基準等を意識・準備することが

必要となる。 カリキュラムでは人事に関する内容も含むものとする。

Page 37: 平成 28 年1月 株式会社ディー・ブレイン九州

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d)行動の手法(マネジメント・ファシリテート) 起業後ビジネスを進めていくにあたって、

様々なプロジェクト(スケジュー ルが有限な取り組み)を運営していく必要がある。運営・マネ

ジメント においてはプロジェクトの基本である PMBOK を理解することは必須ではあり、近年マ

ネジメントだけでは十分でなく、ファシリテートも必要であるといわれている。カリキュラムで

はマネジメントとファシリテートをそれぞれ構築に含むことで「成功」し「幸せな」プロジェク

トを実現する方法を学ぶ。

e)ICT 理解・活用

すでに記述したように、現代の起業においては ICT の活用は必須である。クラウドパワーによ

って過去の ICT システムのようにゼロベースで全て構築していく時代は終わり、既存のサービス

との連携や活用も視 野に入れることが大事になってきている。当カリキュラムではクラウドの基

礎知識や最新の開発手法、品質について学ぶ。

図 2 カリキュラムの全体像

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具体的なカリキュラム内容としては以下のような内容が考えられる。

No. 講 座 名 時 間

1 サービス構築・運営を支える DevOps 入門 6 時間

2 経済とコミュニティ 3 時間

3 実践型プロジェクトマネジメント 6 時間

4 プロジェクトを円滑に進める プロジェクト・ファシリテー

ション

6 時間

5 実体験で経営を学ぶ マネジメントゲーム 8 時間

6 組織の評価と運営 人事マネジメント 6 時間

(1)サービス構築・運営を支える DevOps 入門

開発と運用の壁を取り払い、IT サービスの品質やリリースを格段に 向上させる概念を DevOps

と言う。

DevOps を活用すると、クラウドインフラ環境を自動化させ開発との シームレスなプラットフ

ォームを作ることで、新しい形のシステム管理が可能となる。講座ではクラウドインフラ環境を

モデルとして従来型のドキュメント指向ではなく、DevOps で使われる Infrastructure as a Code

を中心にインフラ環境の自動化を、実際に環境構築をしながら理解していく。また社内への導入、

顧客への提案をするための知識や導入モデルを理解し、ケースワークを通じて全体像を学習する。

(2)経済とコミュニティ

ビジネスにおいて人と人との繋がりは必須と言うのは昔から変わりない。それが現代において、

SNS 等の力もあり、その繋がりは多種多 様になり、さらに重要度を増している。

講座では、リアルと SNS 等を活かした新しい繋がりに関して、実際に福岡での多くのコミュニ

ティに深く関わり、県外や、海外にも繋がりを持つ講師が、現状や活動のコツ、今後のビジネス(経

済)としてコミュニテ ィの可能性について紹介する。

(3)実践型プロジェクトマネジメント

PMBOK をベースとして、プロジェクトとはそもそもどういったことを指し示すのか、理想的な

プロジェクトを行うには何が必要なのかを学ぶ。 また受注側のみならず発注側からの視点や、双

方の留意点をグループワークを通じて体験・理解していく。 実際のプロジェクトの例なども豊富

に取り入れ、見過ごしがちなポイン ト等を理解していく。

Page 39: 平成 28 年1月 株式会社ディー・ブレイン九州

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(4)プロジェクトを円滑に進める プロジェクトェクト・ファシリテーション

プロジェクトをマネジメントする上で、マネージャやリーダーがチームに対してどのようにか

かわるか、プロジェクト・ファシリテーションの視点から意識すべき点や具体的な方法を習得す

る。具体的な技術とその実践例の紹介と解説は座学を中心に行い、その内容を実践的に得るため

に体験型の演習を交えて行う。

(5)実体験で経営を学ぶマネジメントゲーム

マネジメントゲームは、経営シミュレーションを通して経営戦略・経営 用語をゲーム感覚で学

ぶことができるビジネスゲームである。

「会社」というものを、「経営」「経理」というものを、実際に経営者にならないと体験できな

い部分を疑似体験することができる。

3 期の会社経営を行い、会社の仕組み、営業センス、決算処理など、会社 経営の流れを一通り

すべて経験し、体感することで経営者感覚を磨いていく。

(6)組織の評価と運営、人事マネジメント

チーム運営、組織運営、企業経営には人材をどのようにマネジメントするかが重要なポイント

である。経営ビジョンや理念が重要な様に、人材の育成・評価・処遇などに一貫性を持たせる人

事ポリシーを持つことも重要となる。実在の企業をケースメソッドとして、参加者でディスカッ

ションをおこない人事ポリシーをつくり、人事において重要なポイント等を学んでいく。

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第 5 章 総括と課題

StartupGo!Go!実行委員会(事務局:株式会社ディー・ブレイン九州)と西日本鉄道、日本政策

金融公庫が連携して、本委託事業を 11 か月にわたって実行してきた。スタートアップコミュニテ

ィと大手電鉄会社、政策金融機関の連携という組み合わせも全国にない珍しい組み合わせであっ

たが、結果的に地域におけるスタートアップ支援体制として非常に有効に機能したのではないか

と思われる。スタートアップにリーチしているコミュニティに対して、地元の信用ある大手企業

がリソースを提供し、創業初期の資金調達を政策金融機関が提供するという組み合わせは絶妙の

組み合わせであったと言える。

先輩起業家やVCなどの専門家を招聘するにあたって、西日本鉄道が開設したコワーキングス

ペース「天神COLOR」を拠点として利用できたことは、本委託事業の遂行に非常にプラスに

働いた。やはり拠点があることで求心力が生まれ、熱意ある人が集まってくるという効果がある

ものと思われる。

今回アクセラレーションプログラム、各種イベントに多くの先輩起業家、専門家にお越しいた

だいた。彼らの多くは、自らが受けてきた先輩起業家等からのアドバイスや人脈の紹介が今の事

業の立ち上げに大きく貢献しており、自らが受けた恩を感じ、次に続く起業家に対しても同じく

支援をしようという思いで、快く我々の要請を受けていただいた。また、福岡市が「グローバル

創業・雇用創出特区」に選ばれ、実際に起業家が多く表れていることもあり、地域的に注目を集

めているのであればと、遠くからも福岡に足を運んでいただいた。

現代のスタートアップにとって、最先端の事業分野を自ら切り開いて失敗を繰り返しながらも

事業を推進している先輩起業家の生の話を聞き、アドバイスをもらえることは、何よりも事業の

推進に有効であったものと思われる。メンタリングを受けたスタートアップの中には、アドバイ

スを受けてピボットした者や、紹介してもらった人脈で取引を獲得した者、紹介をしてもったメ

ディアへの掲載などに繋がっているものも少なくない。また、ビジネスの経験が少ない彼らにと

って、弁護士による法務の講義、公認会計士による資本政策の講義などは、スタートアップの経

営を行っていくにあたって基本的な知識を得るために必要不可欠なものと思われる。今回のメン

ターを選ぶにあたっては、地元の方を中心にするのではなく、なるべく東京、海外でも第一線で

活躍する方々にお越しいただくよう尽力した。地方のスタートップにとって、東京や海外などの

スタートアップとの情報格差は大きな課題である。スタートアップの世界では最新の情報をいか

に早く取得できるかが重要である。そういった情報は起業家同志、専門家によるスタートアップ

コミュニティの中にいなければ得られないことも多い。そういった情報格差をなくすためにも東

京、海外で活躍する第一線の起業家、専門家に地方に来てもらうことは非常に重要である。また、

目線を上げるためにも大きくビジネスを展開している方に直接話をしてもらうことも重要であろ

う。シリコンバレーでも、身近にいる彼ができるなら自分でもできるはずだといった意識を持て

る環境が重要だといった話も聞いた。そういった意味でも第一線の人材の話を直接聞ける、交流

する機会をつくることは、とりわけ地方においてスタートアップを活性化するために重要である

と思われる。

世界的なスタートアップブーム、国家戦略特区の指定もあり、福岡でスタートアップが盛り上

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がっていることは間違いない。今後の課題としては以下のような項目があげられる。

1.福岡市以外の九州の地方都市への波及

2.シード・アーリー期におけるリスクマネーの供給

3.オープンイノベーションの推進

4.海外、特にアジアへの進出、アジアからの起業家、投資家の受け入れ

1.福岡市以外の九州の地方都市への波及

我々は今回、福岡市だけではなく、北九州や熊本などでもスタートアップイベントを開催した。

これは、福岡市だけが盛り上がっていても、九州のスタートアップの盛り上がりが底の浅いもの

となるであろうし、福岡市以外の地方にもスタートアップの機運を盛り上げようという目的で開

催した。北九州ではセンサー技術を持つ大学教授のシーズ、熊本では東京のIT企業で活躍した

人材によるサービスなどの発表があり、福岡以外の地方都市においてもスタートアップの盛り上

がりを感じさせるものとなった。宮崎県では宮崎スタートアップバレーといった組織が立ち上が

っており、今後連携イベントを開催する計画である。その他の地域においても連携してイベント

を開催してほしいといった要望もあり、九州全体でスタートアップを盛り上げていくような活動

が今後も求められている。

2.シード・アーリー期におけるリスクマネーの供給

とりわけ地方においてはエンジェルやシードアクセラレーターが存在せず、シード期、アーリ

ー期におけるエクイティによるリスクマネーの供給主体が存在しないという大きな課題がある。

現状スタートアップに資金を供給しているのは日本政策金融公庫国民生活事業の創業融資や資本

性ローンによっていることが大きい。これらの課題を解決する手段としては、シード期に投資を

するエンジェルやベンチャーキャピタルに地方にも投資をするよう促し、そのような場を作るこ

とが考えられよう。本委託事業においてもアクセラレーションプログラムのDEMO DAYを

開催し、東京のベンチャーキャピタル11社にお越しいただいた。総じてベンチャーキャピタリ

ストには九州・福岡のスタートアップに関心を示していただき、投資も検討いただいているとこ

ろも出てきている。しかし、シード期、アーリー期の投資はハンズオンが重要であり、距離のハ

ンデがあるのは否めない。

現状のスタートアップの盛り上がりを維持し発展させていくためには、シード・アーリー期に

おけるエクイティによるリスクマネーを供給するシードアクセラレーターが地方こそ必要不可欠

であろうと思われる。

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図 3 九州におけるリスクマネーの環境

3.オープンイノベーションの推進

今回、西日本鉄道と連携して本委託事業を行うことを機会に、幅広い事業分野を持つ西日本鉄

道に対してスタートアップがビジネスプランを提案する「西鉄オープンイノベーションコンテス

ト」を開催した。九州において大手企業が本格的にオープンイノベーションに取り組む初めての

事例ともなった。これからの時代において、スタートアップの革新性と大手企業のリソースを合

わせたオープンイノベーションの流れを促進することは非常に重要である。今回のコンテストに

おいては優秀なビジネスプランを表彰することが目的ではない、コンテストという形式を通じて、

コラボレーションするきっかけを作ることが大きな目的である。西鉄社員側からもスタートアッ

プからも、いままで接触する機会すらなかった。こういったコンテストを機会に知り合いになれ

たことは大きな収穫であったといった声を多く聞くことができた。まずはお互いのことを理解し

あうこと、個人と個人の関係の構築に努めること、コンテストが終わっても相談しあえる関係作

りができることを主眼として企画を組み立てた。西鉄社員とスタートアップが参加してのアイデ

アソン「鉄ッカソン」を開催するなどは、本コンテストならではの企画となったと思われる。今

回の取り組みは九州におけるオープンイノベーションのはしりに過ぎない。今後もこのような取

り組みを通じて多くの大企業がスタートアップとのコラボレーションを行っていく環境が求めら

れよう。

オープンイノベーションの推進にあたっては、あくまでも対等な関係であり、パートナーとし

ての関係作りが重要である。大企業側にはリスクを許容する度量と目利きの力も必要となるであ

ろう。オープンイノベーションがうまく進むよう仲介する存在も必要となるであろう。今後はス

タートアップ側、大企業側の両者に対しての啓蒙活動と円滑油となる仲介者の存在が求められる。

4.海外、特にアジアへの進出、アジアからの起業家、投資家の受け入れ

スタートアップの世界ではスマートフォン、SNSの普及もあり、容易に海外にサービスを展

開できるという環境がある。福岡はアジアに近い、国際空港が非常に便利という地理的な優位性

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がある。経済成長著しいアジア地域の中産階級向けの市場をスタートアップが開拓するというビ

ジネス展開も十分考えられる。東京にない福岡の特徴を出すという意味でも非常に重要な要素で

あると思われる。

また、海外に進出するというだけではなく、海外の投資家、起業家を福岡に呼び込むというこ

とも考えられる。国際的なスタートアップ都市として認知されることは、地元のスタートアップ

のチャンスを広げることにもつながり、全体のレベルアップにもつながるものと考えられる。

国際的なスタートアップ都市となるためには、英語による情報発信や海外からの人材受け入れ

のインフラの整備といったことも求められよう。

以上のような課題が本委託事業を実行する中で確認することができた。今後もこれらの課題の

解決を通じてさらなるスタートアップの成長促進を図るとともに、先輩起業家が起業家を育てる

エコシステムの構築を地方においても実現していくことが求められよう。

以上