第1章 lorentz 変換›¸ 対 論 的 力 学 第1章 lorentz 変換 1.lorentz 変換の特徴...

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1Lorentz 変換 1.Lorentz 変換の特徴 1) ある空間 K(例えば地面上)に対し,K 同じ空間を占有する別の空間 K (例えば電車内)を 考える.空間 K に属する直線 L と,空間 K に属する直線 L を考え,最初 L L 重ねておく. 空間 K に対して,空間 K L の方向に一定の速さ v で運動させる.運動にともない, L から 見て L が,ある方向に傾いて見えたり,平行移動して見えたりすれば,空間の等方性に反す るので, L L は重なって見えるはずである. 2) 直線 L x 軸として K ) , , , ( t z y x 系,直線 L x 軸として K ) , , , ( t z y x 系をとる.最初 K K 系を重ねておき, K 系の x 軸の負方向に K 系を十分な距離だけ平行移動させ,その後 K 系を K 系の x 軸正方向に一定の速さ v で運動させる.このとき x 軸と x 軸の方向は 1)より一 致している.K 系の原点と K 系原点が一致したときを,それぞれの原点での時刻を 0 t 0 t とする.この瞬間に, K 系の原点に置かれた光源から非常に短時間の光パルスを発生さ せる. 3) K 系に固定されたある点 ) , , ( P z y x は, K 系では ) , , ( P z y x として観察されるものとする.点 P に光の波面が届いた瞬間を,K 系では時刻 t K 系では時刻 t であったとする. 4) 光速度不変の原理により,光の速度は光源の運動状態に関係なく一定であり,それを c とする と, 0 , 0 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 t c z y x s t c z y x s が成り立つ. 0 , 0 2 2 s s の場合でも, 2 s に座標変換則 ) , , , ( ) , , , ( t z y x t z y x を代入して 計算した結果は, 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 ) ( ) )( ( s v t c z y x v t c z y x s のように, ) ( 2 2 2 2 2 t c z y x の因数を含むはずである.そうでなければ, 0 2 s と, 0 2 s が同時には成り立ないからである. 5) このような,座標変換は1次変換に限る. 1 次変換であるから,任意の時刻 t において K 系か ら見た, K 系の y x 面, z y 面, x z 面などは,すべて平面に見える. 6) 空間の等方性(軸対称性)により,K 系から見た K 系の z y 面は,K 系の x 軸に垂直な平面 に見えるはすである. 7) また,K 系から見て K 系の z y 面が,K 系の x 軸周りに剛体的回転しているとするなら,K 系の x 軸は, K 系の z y 面の回転中心(回転に対する不動点)である.K 系の x 軸は,相対 速度の方向に平行なら,本来どこにとってもよいはずである.したがって, z y 面内には無 数の回転中心が存在することになる.この要請を満たすのは,K 系から見て K 系の z y 面は 回転していない場合のみである. 8) また, y x 面, z y 面, x z 面の各座標格子が,せん断変形のような平行四辺形になるとす れば,やはり空間の等方性(軸対称性)に反するのでこのようなことも起こらない.ただし, 座標格子の膨張収縮の可能性は否定できない. 9) 座標格子の膨張収縮の可能性は否定できないので, z v z y v y ) ( , ) ( とする.空間の等方

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相 対 論 的 力 学

第1章 Lorentz 変換

1.Lorentz 変換の特徴

1) ある空間 K(例えば地面上)に対し,K同じ空間を占有する別の空間K (例えば電車内)を

考える.空間 K に属する直線L と,空間K に属する直線L を考え,最初L とL 重ねておく.

空間 Kに対して,空間K をL の方向に一定の速さ vで運動させる.運動にともない,L から

見てL が,ある方向に傾いて見えたり,平行移動して見えたりすれば,空間の等方性に反す

るので,L とL は重なって見えるはずである.

2) 直線L をx軸として K ),,,( tzyx 系,直線L をx軸としてK ),,,( tzyx 系をとる.最初K 系

と K 系を重ねておき,K系のx軸の負方向にK 系を十分な距離だけ平行移動させ,その後K

系を K 系のx軸正方向に一定の速さ vで運動させる.このときx軸とx軸の方向は 1)より一

致している.K 系の原点とK 系原点が一致したときを,それぞれの原点での時刻を 0t ,

0t とする.この瞬間に,K系の原点に置かれた光源から非常に短時間の光パルスを発生さ

せる.

3) K 系に固定されたある点 ),,(P zyx は,K 系では ),,(P zyx として観察されるものとする.点

P に光の波面が届いた瞬間を,K 系では時刻 t,K 系では時刻 tであったとする.

4) 光速度不変の原理により,光の速度は光源の運動状態に関係なく一定であり,それをcとする

と,

0,0 222222222222 tczyxstczyxs

が成り立つ. 0,0 22 ss の場合でも, 2s に座標変換則 ),,,(),,,( tzyxtzyx を代入して

計算した結果は, 222222222222 )())(( svtczyxvtczyxs

のように, )( 22222 tczyx の因数を含むはずである.そうでなければ, 02 s と, 02 s

が同時には成り立ないからである.

5) このような,座標変換は1次変換に限る.1 次変換であるから,任意の時刻 tにおいて K系か

ら見た,K 系の yx 面, zy 面, xz 面などは,すべて平面に見える.

6) 空間の等方性(軸対称性)により,K 系から見たK 系の zy 面は,K 系のx軸に垂直な平面

に見えるはすである.

7) また,K 系から見てK 系の zy 面が,K 系のx軸周りに剛体的回転しているとするなら,K

系のx軸は,K 系の zy 面の回転中心(回転に対する不動点)である.K 系のx軸は,相対

速度の方向に平行なら,本来どこにとってもよいはずである.したがって, zy 面内には無

数の回転中心が存在することになる.この要請を満たすのは,K 系から見てK 系の zy 面は

回転していない場合のみである.

8) また, yx 面, zy 面, xz 面の各座標格子が,せん断変形のような平行四辺形になるとす

れば,やはり空間の等方性(軸対称性)に反するのでこのようなことも起こらない.ただし,

座標格子の膨張収縮の可能性は否定できない.

9) 座標格子の膨張収縮の可能性は否定できないので, zvzyvy )(,)( とする.空間の等方

性により, )()( vv でなければならない.

10) yvy )( であるから, yvyvvyvy )()()()( 2 となり, 1)(,1)(2 vv を

得る.しかし, 0v のときは,y軸とy 軸は一致するから, 1)( v としなければならない.

11) したがって, yy となり,同様に zz となる.

12) 22 , ss について 10)と同様の手順で考察すれば, 1)( v を得る.ここで 0 tt のときは,

任意の点に対して, 0,0 22222222 zyxszyxs となるべきでありから,

1)( v としなければならない.したがって, 22 ss となるが,これに 11)を用いると,次

の条件式を得る. 222222 tcxtcx

13) 座標変換則 ),,,(),,,( tzyxtzyx において, tazayaxax 4321 とする. 0t かつ

0x の場合を考えると,yや zの位置に関係なく 0x となるはずなので, 0,0 32 aa で

なければならない.さらに,K 系は K 系のx軸方向へ速度 vで移動しているから,時刻 tでK

系の 0x の地点は K 系から見れば t秒後には vtx の位置にあるので, )( vtxAx とい

う形でなければならない.

14) 次に, tbzbybxbt 4321 として, )( vtxAx とともに, 2222 tcxs に代入すれ

ば,恒等的に 222222 tcxtcx となるはずである. 02 b とすれば,左辺には 22

2

2 ybc の

項が生じるが,右辺にはないので, 02 b である.同様に 03 b であることがわかる.

15) したがって, ),,,(K tzyx 系と ),,,(K tzyx 系の座標変換則 ),,,(),,,( tzyxtzyx は,次の

ような形となる.

EtDxt

vtxAx )(

16) ところで, 0v の極限で, ),,,(K tzyx 系は ),,,(K tzyx に一致し, ttxx , となる

はずであるから, EDA ,, の係数は,

0v のとき, 1,0,1 EDA

の性質を有しているはずである.

2.係数の決定

座標変換則 14)を,恒等式 13)の右辺に代入すれば,

222

22222222222222 )()(2)(

tcx

tAvEcxtDEcvAxDcAtcx

係数の比較から,

1222 DcA ①

022 DEcvA ②

22222 cAvEc ③

①より,

222 1 DcA ④

これを②,③に代入して,

vDEcDvc 222 ⑤

2222222 vcDcvEc ⑥

⑤ v ⑥より, 2222 cEcDEvc となる.この式と⑤を整理すれば,

1)( EvDE ⑦

vEvDDc )(2 ⑧

⑧÷⑦より,

Ec

vD

2 ⑨

⑦に代入して, 1)1(2

22

c

vE を得るが,前節 17)の条件より,

222 1

1

/1

1

cvE ⑩

⑩を⑨に代入して,

2

2

22

2

1

/

/1

/

cv

cv

cvD ⑪

⑩を⑦に代入すれば,2222

222

/1

1

/1

/1

cvcv

cvA

を得るが,前節 17)の条件より,

222 1

1

/1

1

cvA ⑫

となる.これで係数がすべて決定された.

cv / とおき,⑩~⑫を整理すると,

21

1

EA ,

2

2

1

/

cvD

したがって,Lorentz 変換は,

2

2

2

1

)/(

1

xcvtt

vtxx

t

x

cv

v

t

x

1/

1

1

12

2

のように書かれ,Lorentz 逆変換は,次のようになる.

2

2

2

1

)/(

1

xcvtt

tvxx

t

x

cv

v

t

x

1/

1

1

12

2

3.幾何学的意味

2

2

2

1

)/(

1

xcvtt

tvxx

21/1

21/1

2

2

2

1

)/(

1

xcvtt

vtxx

x

A

t t’

x’

1/1

1/

1

1

1/

1/

1

v/c2

vv

x

t t’

x’

1/

1

1/

1

1

1/

1/

1

- v/c2

-v -v

3.Lorentz収縮

① ②

)(2

)(1

1A1

1AA

txc

t

tcxx

)(2

)(1

B1

BB

txc

t

tcxx

)(4

)(3

1A1

1AA

txc

t

tcxx

)(4

)(3

1B

1BB

txc

t

tcxx

②-3 と①-3 より,

)( 1BB tcxx , )( 1AA tcxx

両辺を引いて,

)( ABAB xxxx 11/1 2 だから, ABAB xxxx

②-1 と①-1,②-2 と①-2 の両辺をそれぞれ引いても,同じ結果を得るが計算が面倒

4.時間の遅れ

① ③

)(2

)(1

1A1

1AA

txc

t

tcxx

)(2

)(1

2A2

2A

txc

t

tcxx

t

x

t’

x’ t1’

(x’B , t’)

(xB , t1) (xA , t1)

t’

x’A

x’B

t1 (x’A , t1’)

xA xB

t

x

t’

x’ t1’ (xA , t1)

(x’A , t2’)

(x , t2) t2’

x’A

t2

t1 (x’A , t1’)

)(4

)(3

1A1

1AA

txc

t

tcxx

)(4

)(3

22

2A

txc

t

tcxx

③-2 と①-2 より,

)( 2A2 txc

t

, )( 1A1 txc

t

両辺を引いて,

)( 1212 tttt 11/1 2 だから, 1212 tttt

③-4 と①-4,②-3 と①-3 の両辺をそれぞれ引いても,同じ結果を得る計算が面倒

第2章 相対論的力学

1.Lorentz変換の行列表示

・座標系 );O(K txyz に対して,一定の速度 V で x 軸の正方向に動いている座標系を

);O(K tzyx とする.O とOが一致したときを, 0 tt とする.

・K において時刻 tを決めると,質点の位置  ))(),(),(( tztytx が決まる.K ではこれを,時刻 tで

質点の位置が ))()(),(( tztytx として観測するものとする.

・この対応

),,,(),,,( tzyxtzyx  

は,Lorentz 変換 L で与えられる.

L:

21/1/

)(

)(

,ただし, cV

txc

t

zz

yy

tcxx

(1)

・以下のように表記すると,

4

3

2

1

x

x

x

x

ict

z

y

x

x ,

4

3

2

1

x

x

x

x

tic

z

y

x

x ,

00

0100

0010

00

i

i

L

Lorentz 変換と逆変換は,次のように簡明に書くことができる.ここで, ELLt であることに

注意する.

xx

xx

L

Lt逆変換:

変換 :

Lorentz

Lorentz (2)

2.不変量(スカラー)と固有時間

・K の x とK の x が対応しているとする. 2

4

2

3

2

2

2

1

2

4

2

3

2

2

2

1 xxxxELLxxxx ttttt xxxxxxxx

となるから, xx ts2 は不変量である.

・K において xxx と変化したとき,K では xxx と変化したとする.すると,

xxxxxxxx LLL )(

となり, xx L であるから,次式を得る.

xx L (3)

・したがって,

22 )()( sELLs ttttt xxxxxxxx

を得る.無限小の変化でも同様で,

 ),,,( tzyx  ),,,( tzyx

L

0)}())(

(1{))()(()}()()()({

)()()()()()()()(

)()()()()(

22222222222

2222222222

24

23

22

21

2

dtc

tucdtctudtctututu

dtcdt

dz

dt

dy

dt

dxdtcdzdydx

dxdxdxdxds

xxx

は不変量である.

・次式で定義される d も KとK に共通な不変量である.

tdc

tudt

c

tud

22 )

)((1)

)((1 (4)

・質点が基準の状態 O から,ある状態 P まで運動したとする.この運動を K およびK の両方で

観測したとき,次の は KとK に共通な量となる. を固有時間という.

P

O

2

P

O

2 ))(

(1)(K))(

(1)(K tdc

tutdt

c

tut :: (5)

・式(5)の逆関数を )(),( tttt とする.固有時間 を指定すれば,K およびK のそれぞれで,

互いに対応する時刻と質点の位置が決まる.したがって,K およびK のそれぞれにおいて,時刻

と質点を次のように固有時間 の関数と考える.

)()),(()),(()),((),(),(),(K

)()),(()),(()),((),(),(),(K

tictztytxtictztytx

icttztytxicttztytx

 系:

:系

3.共変性とベクトル

・K において,ある 4 元量 ))(()),(()),(()),(())(( 4321 tAtAtAtAt A があり,K においては,

))(()),(()),(()),(())(( 4321 tAtAtAtAt A のように観測されていたとする.このような 4

元量において,2 つの慣性系での成分間の変換則が,Lorentz 変換にしたがうことを共変性といい,

その 4 元量をベクトルという.すなわち, ))(( tA と ))(( tA の間に共変性,

AA L

が成り立てば, A (あるいは A )という量はベクトルである.

・式(3)によれば,固有時間が d と変化した場合の変化量 Ad と A d は共変であるから,

不変量(スカラー) d で割っても共変である.したがって,共変ベクトルの による微分もやはり

共変である.

d

dL

d

dL

AAAA

(6)

4.4次元速度と4次元加速度および物理成分

・K において定義された関数 ))(( tf の,固有時間 による微係数と,実時間 tによる微係数の関

係を求めておく.

dt

tdftk

dt

tdf

d

dt

d

df )()(

)()(

ただし, )(/1)

)((1 2 tkc

tu

dt

d

(7)

すなわち,実時間 tによる微係数を )(tk 倍すれば,固有時間 による微係数となる.

・K において,4 次元速度は次のように定義される.

4,3,2,1;)()()()(

)( itutkdt

dxtk

dt

dx

d

dt

d

dxw i

iiii

(8)

))(( txi は共変であるから ))(( twi も共変であり,Lorentz 変換すればK における成分が求まる.

・右辺の )(tui は, 3,2,1i に対しては,

)()(

)(),()(

)(),()(

)( 321 tudt

tdztutu

dt

tdytutu

dt

tdxtu zyx (9)

で,通常の意味の速度に等しい. 4i に対しては,

)()( 44 定数ic

dt

dxtu (10)

とする. 4,3,2,1i について, )(tui を 4 次元速度 )(iw の物理成分と呼ぶことにする.

・4 次元加速度 )(i を次のように定義する.やはり共変であることは自明である.

4,3,2,1;)()()]()([)()(

)( itatktutkdt

dtk

dt

dw

d

dt

d

dwii

iii

(11)

右辺 )(tai は, 3,2,1i に対しては,

)]()([)()],()([)(,)]()([)( 321 tutkdt

dtatutk

dt

dtatutk

dt

dta yyx (12)

であるが,通常の加速度 dttdui /)( に相対論的修正を加えた,新しい加速度の定義となるべきもの

と考えられる.また, 4i については,次の通りとする.

dt

tdkicta

)()(4 (13)

4,3,2,1i について, )(ia は 4 次元速度 )(i の物理成分である.

・K(同一慣性系)における,4 次元速度 )(iw および 4 次元加速度 )(i と,それらの物理成分

の関係は,次のように同形に整理される.

速 度 加速度

)()()()(

)(

)()()(

)(

)()()(

)(

)()()(

)(

44

4

33

22

11

ticktutkd

dxw

tutkd

dxw

tutkd

dxw

tutkd

dxw

z

y

x

)()()]([)()(

)(

)()()]()([)()(

)(

)()()]()([)()(

)(

)()()]()([)()(

)(

44

4

33

22

11

tatktickdt

dtk

d

dw

tatktutkdt

dtk

d

dw

tatktutkdt

dtk

d

dw

tatktutkdt

dtk

d

dw

zz

yy

xx

(14)

4.運動方程式

・質点の質量 0m は,K およびK に共通の値で不変量と考えられるから,共変量 )(i に 0m を乗

じた )(0 im も共変である.これに,共変な 4 次元力 )(if を探し出して,

4,3,2,1;)()(

0 ifd

dwm i

i

(15)

を運動方程式としたい.そうすれば,任意の慣性系で式(15)が成り立ち,相対性の要請を満足す

ることになる.このような 4 次元力 )(if は,果たしてどのようなものであろうか.

・仮に,そのような 4 次元力 4,3,2,1),( ifi が見つかったとする. )(if を実時間で表示すれば,

4,3,2,1;)]()([)()

)( 00

itutkdt

dtkm

d

dwmf i

ii

(16)

となる.4 次元力 )(if の物理成分を )(tFi として, )(if と )(tFi 間に,式(14)と同様な,

4,3,2,1;)()()( itFtkf ii (17)

の関係があるものと仮定すれば,次式となる.

4,3,2,1;)]()([)( 0 itutkdt

dmtF ii (18)

・ここで,式(18)の )(tFi の意味を考える.

・まず, 3,2,1i については,式(18)右辺の

3,2,1;)()]()([ itatutkdt

dii

は,修正された 3 次元加速度であるから, )(tFi は質点に働いている力と考えられる.したがって,

式(18)の 3,2,1i は,相対論的に修正された運動方程式と考えられる.

・次に, 4i については, ictu )(4 であるから,

)]([)]()([)( 0404 tkdt

dicmtutk

dt

dmtF (19)

となる.この式の意味を考えるため,試みに 4 次元速度の大きさの2乗をとれば,

0)()/)((1

)(})()()(){(

)}()()()(){()()()()(

2

2

2222222

24

23

22

21

224

23

22

21

一定cctu

ctuctutututk

tututututkwwww

zyx

のように,一定となる.両辺を で微分すれば,

0)(

)()(

)()(

)()(

)( 44

33

22

11

d

dww

d

dww

d

dww

d

dww

となり,質量 0m を掛ければ,式(16)より,

0)()()()()()()()( 44131211 fwfwfwfw

を得る. )()(4 tickw であるから,式(15),(17)を用いると,

)()()(

)}()()()()()({)(

)}()()()()()({)(

)( 3322114

ttc

tiktFtutFtutFtu

c

tik

fwfwfwtck

if

zzyyxx uF

(20)

を得る. )(),(),( 321 fff を与えれば,式(15)の第 1~3 式より,速度 )(),(),( 321 www が決まる

から, )(4 f は,もはや )(),(),( 321 fff と独立に与えることはできない.したがって,式(19)で

定義された )(4 tF も,

)()()(4 ttc

itF uF (21)

と等しくなければならない.右辺の )()( tt uF は,単位時間に質点に与える仕事を示しているから,

)(4 f や )(4 tF は,式(15)の第 1~3 式より決定される質点の運動状態のエネルギに関係する量であ

る.

以上の議論を踏まえて,次のように Newton の第 2 法則を次のように修正する.

まず,質量 kg10 m の基準物体について実験を行い,質点の速さ )(tu を調べ,

2))(

(1

)()]()([

c

tu

tu

dt

dtutk

dt

d

によって力の目盛を定義する.そして,質量の異なる別の物体で実験を行い, dttutkd /)]()([ が定

義された力と比例することを確認し,その比例定数を質量 0m と定義する.こうすれば,次式(22)

の第 1~3 式は相対論的に修正された運動方程式となる.第 1~3 式において, 0|/)(| ctu とす

れば 1)( tk となり Newton の運動方程式に一致する.

)]()([)(

)]()([)(

)]()([)(

0

0

0

tutkdt

dmtF

tutkdt

dmtF

tutkdt

dmtF

zz

yy

xx

(22)

たとえば,力を与えれば式(22)よって速度が決まり,これらから )(4 tF を

)()()()()()()()()(4 ttc

itFtutFtutFtu

c

itF zzyyxx uF (23)

と定義する.

・このように決めた力の物理成分 )(tFi から,式(17)に基づいて 4 次元力 )(if を定義する.定義さ

れた )(if が式(15)左辺と等しくなる資格を得るためには,提案した )(if が共変である必要がある

が,これは次のように簡単に説明できる.すなわち, 4,3,2,1i に対して,

)]([)]([)()]()([)()()()( 000

iiiii w

d

dmw

d

d

dt

dmtktutk

dt

dmtktFtkf

となる.4 次元速度 )(iw はすでに共変であることがわかっているので,それを微分し,スカラー

0m を乗じた )(if は共変である.ただし,式(7)を利用した.なお, 4i については,式(23)の右

辺は式(19)に等しいことに注意する.このようにして,4 次元の運動方程式(15)が成立する.

・式(22)は 3 次元の運動方程式であり,次のようにも表すことができる.

3,2,1;)(

)]([)]()([)( 0 idt

tdptmu

dt

dtutk

dt

dmtF i

iii (24)

質量:2

0

))(

(1c

tu

mm

, 運動量: 3,2,1;)(

))(

(1

)(2

0

itu

c

tu

mtp ii

・式(22)右辺の )()( tt uF は単位時間に質点が受ける仕事であるから,質点のエネルギを )(tE とす

ると, )(4 tF は

dt

tdE

c

itF

)()(4 (25)

と書ける.これが式(19)と等しいとおくと,

dt

tdE

c

i

c

tu

m

dt

dictkm

dt

dic

)(

))(

(1

)]([2

00

を得る.したがって,有名な公式

2

20

))(

(1

)(

c

tu

cmtE

(26)

を得る.質点の速度 )(tu が,光速cより十分小さければ,次のように近似できる.

)(2

1)

)((

2

11

))(

(1

)( 20

20

220

2

20 tumcm

c

tucm

c

tu

cmtE

右辺第 2 項は運動エネルギを示し,第 1 項は静止している質量のエネルギ.

200 cmE (27)

を示している

付 録

(1)速度の物理成分の変換則( KK )

式(1)再掲

))((

)()(

)()(

))(()(

ttxc

t

tztz

tyty

tctxtx

第 4 式を tで微分したものを )(/1 tq とする.すなわち,

)(

1)](1[)])(([

tqtu

cttx

cdt

d

dt

tdx

)(1

1

)](1[

1

/

1)(

2

tuc

tuc

dttdtq

xx

K およびK の,速度の物理成分には,以下のような変換則が成り立つ.

)()()(

)()()(

)()()(

)(

)()()(

)()()(

)(

)])(()[()])(([)(

)()(

)()()(

44 ictutu

tutqdt

tdztq

td

dt

dt

tzd

td

tzdtu

tutqdt

tdytq

td

dt

dt

tyd

td

tydtu

ctutqtctxdt

dtq

dt

txdtq

td

dt

dt

txd

td

txdtu

zz

yy

x

x

)

(2)4次元力の共変性の証明

念のため,変換性に基づいて,4 次元力 )(if の共変性を証明する.

・式(2)の Lorentz変換における行列の ),( ji 成分を ijl と表記する.すなわち

)( ijlL

である.K での 4 次元速度成分 )(iw と,Kでの 4 次元速度成分 )(jw の関係は,

jiji wlw

である.ただし,総和規約を用いることにする.

・また式(7)に基づき, K およびK のそれぞれにおいて )(tk と )(tk が,

)(/1))(

(1 2 tkc

tu

dt

d

, )(/1)

)((1 2 tkc

tu

td

d

のように定義されている. )(tk と )(tk と )(tq の間には,

)(/

1

/

1/

1

)(

)(tq

dttdtd

dt

tdd

dtdtk

tk

の関係がある.

・さて,K での 4 次元力の成分 )(if は,

jijjijjijjijjij

jijjijiiii

flkFlkudt

dkmlw

dt

dkmlwl

dt

dkm

wldt

dm

k

kkwl

dt

d

td

dtmkw

td

dmkuk

td

dmkFkf

][][][

][][][][

000

0000

のようになり,確かに変換則を満たしているから,4 次元力は共変である.

(3)力の物理成分の変換則( KK )

jijjij

jijjijiii

Fltqkudt

dmltq

wldt

dmtqwl

dt

d

td

dtmw

td

dmuk

td

dmF

)(][)(

][)(][][][

0

0000

)(1)(1

])[(])[()(

)(1

1)()(

)(1

1)()(

)(1)(1

])[(])[()(

414144414144

2

333

2

222

414141411111

tuc

Fc

c

i

tuc

FFiFFitqFlFltqFltqF

tuc

FFtqFltqFF

tuc

FFtqFltqFF

tuc

cF

tuc

FiFFiFtqFlFltqFltqFF

x

x

x

jj

x

zjjz

x

yjjy

x

x

x

jjx

uF

uF

(4)式(27)の定義した )(4 tF が,式(19)と一致することの証明

)]()([)(

)(/)()(

)()(

)()()(

)(

)()(

)(

])(

)()(

)()(

)([)(

)}()()()()()({)(

)}()()()()()({)(

)()()(

)()()(

40044

0

40

4044

0

33

22

11

0

332211

44

tutkdt

dm

dt

tdkicmtkftF

dt

tdktickm

d

dwm

d

dwtick

tck

im

d

dww

tck

im

d

dww

d

dww

d

dww

tck

im

fwfwfwtck

i

tFtutFtutFtuc

tiktt

c

tiktFtkf zzyyxx

uF