2011年2月3日 経済成長における 金融の役割300 26,200 14,000 機関投資家...

33
経済成長における 金融の役割 金融庁 鷲見 周久 2011年2月3日 東京 *内容は、全て執筆者の個人的見解であり、金融庁の公式見解を示すものではない。 国際コンファレンス「アジアの成長と金融セクターの役割」 201123

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経済成長における

金融の役割

金融庁 鷲見 周久

2011年2月3日

東京

*内容は、全て執筆者の個人的見解であり、金融庁の公式見解を示すものではない。

国際コンファレンス「アジアの成長と金融セクターの役割」2011年2月3日

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講演概要

1

実体経済を支えること

(1) 経済成長の促進~金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン~

金融自身が成長産業として経済をリードすること

金融危機後の現状

金融危機に対する政策対応

(2) 金融の安定

I. 経済成長における金融の役割

II. アジア各国の経済成長に向けたさらなる取組み

-適切な投資機会の提供と多様な資金調達手段の提供

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目次

I. 経済成長における金融の役割

(1)経済成長の促進

~金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン~

(2)金融の安定

II.アジア各国の経済成長に向けたさらなる取組み

2

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I.(1)経済成長の促進~金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン~

3

「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」(平成22年12月公表)は、経済成長に向けた金融の役割を十分に発揮するための環境を整備するため、金融庁として今後取り組んでいく方策について、以下の3つの柱にまとめ、その実現に向けた道筋を示すものである。

アクションプランの3本柱

企業等の規模・成長段階に応じた適切な資金供給企業等の規模・成長段階に応じた適切な資金供給

アジアと日本とをつなぐ金融アジアと日本とをつなぐ金融

国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備

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•ライツ・オファリングが円滑に行われるための開示制度等の整備

•四半期報告の大幅簡素化

•中堅・中小企業の実態に応じた会計基準・内部統制報告制度等の見直し

企業等の規模・成長段階に応じた適切な資金供給

4

コミットメントライン法の適用対象の拡大コミットメントライン法の適用対象の拡大>>>>

銀行・保険会社等の金融機関本体によるファイナンス・リースの活用の解禁銀行・保険会社等の金融機関本体によるファイナンス・リースの活用の解禁>>>>

新興市場等の信頼性回復・活性化新興市場等の信頼性回復・活性化>>>>

プロ向け社債発行・流通市場の整備プロ向け社債発行・流通市場の整備>>>>

開示諸制度の見直し開示諸制度の見直し>>>>

•グリーンシート(未上場企業向け株式流通制度)の活用促進

•一定の質が確保された上場前の企業のリスト化

•上場廃止銘柄の受皿の整備 等

•プロ向け社債市場の整備に向けた取組を促進 (TOKYO PRO-BOND Market).

•発行時の開示書類の簡素化や、英文開示を可能に.

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アジアと日本とをつなぐ金融

アジアの主たる市場(メイン・マーケット)たる日本市場の実現

-外国企業による我が国市場での資金調達の促進

-外国企業への我が国投資家の投資機会の拡大

外国企業等による英文開示の範囲拡大等の制度整備外国企業等による英文開示の範囲拡大等の制度整備>>>>

5

継続開示書類に限られている英文開示の対象書類を、発行開示書類に拡大

総合的な取引所(証券・金融・商品)創設を促す制度・施策総合的な取引所(証券・金融・商品)創設を促す制度・施策>>>>

日本市場の魅力を向上させ、公正性・透明性を確保するとともに、内外の利用者にとっても信頼できる利便性の高い金融資本市場を実現する。

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アジア諸国の金融・資本市場に関する政策協調の推進アジア諸国の金融・資本市場に関する政策協調の推進>>>>

アジアと日本とをつなぐ金融

我が国金融機関のアジア域内での活動拡大

•アジア諸国の金融・資本市場に関する実態調査等の実施

•今後のアジアの発展における参考として、我が国の金融危機の経験に基づいた

教訓や、我が国の金融規制・監督モデルの共有

•国際的な金融規制改革の議論等に関して、国際会議・シンポジウム等を通じたアジア諸国の金融当局との対話の更なる強化

金融機関による中堅・中小企業のアジア地域等への進出支援体制の整備・強化金融機関による中堅・中小企業のアジア地域等への進出支援体制の整備・強化>>>>

•日本貿易振興機構(JETRO)や国際協力銀行(JBIC)による、中堅・中小企業及びその現地法人に対する情報提供・相談等の支援

•中堅・中小企業の現地法人が海外の地場金融機関等から融資を受けやすくする観点から、JBICと地域金融機関等の連携により(i) JBICによる地場金融機関等への融資等、(ii)地域金融機関等による地場金融機関等への保証等の供与

6

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国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備

7

金融ADR(裁判外紛争解決)制度の着実な実施>>>>

保険会社における資産運用比率規制の撤廃>>>>

証券の軽減税率の2年延長等>>>>

金融商品に係る損益通算範囲等の拡大>>>>

•保有する資産の種類ごとに総資産額に一定の比率を乗じた額を上限とする資産運用比率規制の撤廃

-金融市場の活性化

-着実な景気回復

-機動的な資産運用

•上場株式等の配当・譲渡所得等に係る10%軽減税率の2年延長(2013年末まで)

•金融ADR(裁判外紛争解決)制度の導入( 2010年10 月)

•金融機関とのトラブルに関する迅速・簡便・中立・公正な苦情処理・紛争解決を図る

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目 次

8

I. 経済成長における金融の役割

(1)経済成長の促進

~金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン

(2)金融の安定

II.アジア各国の経済成長に向けたさらなる取組み

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I. (2) 金融の安定金融セクターへの直接的影響は限定的

サブプライム関連商品へのエクスポージャー (簿価)

9

本邦金融機関のサブプライム関連商品へのエクスポージャーは限定的であった。

2007年3月末 出所:金融庁

(10億円)

2010年3月末

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金融セクターへの直接的影響は限定的

10

我が国金融機関の証券化商品へのエクスポージャーや関連損失の規模は、欧米金融機関に比べて小さかった 。

為替は1$=85円、1€=115円、1£=130円、1SF=85円で算出。

モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス(除 2009年)、リーマン・ブラザーズ、ベアー・スターンズの決算期は括弧内。

損失額を公表していない金融機関については、更新していない。2010年においては、3メガバンクのみ、下記の損失額が公

3,500 2,900

4,500

4-6月期(3-5月期)

(注1)

1-3月期(12-2月期)

中核的自己資本[TierⅠ](投資銀行の場合は純資産額)は、直近決算期の数値。

損失額として、主にABS-CDO、LBOファイナンス、サブプライム関連RMBS及びローン債権に係るものを集計。

(注3)

(注2)

(注4)

(注6)

3,627 19,420 7,107

米国財務省テマセク・ホールディングス韓国投資庁、クウェート投資庁みずほコーポレート銀行 ほか

18,000

76,50080,800

4,170

29,900

4,000

28,36962,8081,485

21,300

22,8874,000 102,246

11,977

8,100

3,600

19,500

2,700

8,5002,600

4,500 4,000

2,200

2,900

3400

5,600

2,900

12,300 22,000 8,500

-10,000

64,000

7,000

8,700 8,900

47,300

28,100 28,000

三菱UFJ・FG

三井住友FG

2,670

ソシエテ・ジェネラル

みずほFG

ゴールドマン・サックス

クレディ・アグリコル

3,000

モルガン・スタンレー

ドイチェバンク

28,500

30,000

一般投資家、限定顧客

カタール・ホールディングスほか主要な世界的投資家

一般投資家

一般投資家

機関投資家一般投資家

みずほコーポレート銀行

米国財務省一般投資家

一般投資家

140,000

90,000

105,000

79,000

30,000

118,000

11,800

主要金融機関のサブプライム関連の損失額の状況出資者

46,800

増資額

シティグループ

83,100

損失額計 中核的自己資本/純資産額

2,300

4,400

107,00087,40011,000 17,900

4,300 3,700 2,7003,200

JPモルガン・チェース

5,900

7,1004,200 5,300

15,600

(みずほ証券)

バンク・オブ・アメリカ

2,200

HSBC

RBS

2,4005,900

バークレイズ3,400

4,300

ウェルズ・ファーゴ

5,777

17,400

38,000

7,940

32,00014,700

野村HD

2007年下段中段

2009年2008年

102,900

スイス財務省シンガポール政府投資公社(GIC)中東の匿名投資家既存株主 ほか

米国財務省一般投資家

既存株主

40,400 米国財務省一般投資家

損失額は、各社の決算公表資料に基づく。

15,300

10-12月期 (9-11月期)

43,500

46,000

11,000

7-9月期(6-8月期)

68,000

24,600

16,100

14,400

11,000

3,400

3,000

2,500米国財務省一般投資家

米国財務省アブダビ投資庁シンガポール政府投資公社(GIC)クウェート投資庁 ほか

UBS

クレディ・スイス

33,000

16,300

56,000

44,000

上段

ベアー・スターンズ(JPモルガン・チェース)

AIG(国有化)

リーマン・ブラザーズ(破綻)

ワコビア(ウェルズ・ファーゴ)

メリルリンチ(バンク・オブ・アメリカ)

9,300

機関投資家一般投資家

59,000

53,106

15,80044,000

米国財務省バークシャー・ハザウェイ一般投資家

既存株主フランス政府

英国財務省既存株主

10,200

8,800

米国財務省三菱UFJ・FG中国投資公司

91,300

26,200

14,000 機関投資家

カタール投資庁、カタール・ホールディングス、チャレンジャー(カタール)、三井住友銀行等

既存株主フランス政府

10,400 22,800 22,800

7,600

6,800

2,400

8,400 7,40012,700 9,400

2,200 5,300 6,300

4,900 20,900

4,600 5,700

11,600

6,100 7,000

(注5)

2,750

3,20020,200

8,500

13,100

4,000 3,4004,600

4,300

5,800

12,300

5,600 7,200 8,400

13,700

1-3月期 4-6月期(億円)

6,300

14300

されており、右記の損失額に計上しているが、金額が僅少なため、グラフには反映していない。

三井住友FG三菱UFJ・FGみずほFG -140

110 -102 0

(単位:億円)

<参考>主な破綻・吸収合併された金融機関

シティバンク

バンク・オブ・アメリカ

UBS

HSBC

モルガン・スタンレー

ドイチェバンク

RBS

クレディ・スイス

バークレイズ

クレディ・アグリコル

ゴールドマン・サックス

ソシエテ・ジェネラル

みずほFG

三菱UFJ・FG

三井住友FG

野村HD

(みずほ証券)

AIG(国有化)

メリルリンチ(バンク・オブ・アメリカ)

ワコビア(ウェルズ・ファーゴ)

リーマン・ブラザーズ(破綻)

ベアー・スターンズ(JPモルガン・チェース)

JPモルガン・チェース

ウェルズ・ファーゴ

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日本: 2007年3月末カナダ: 2007年10月末ヨーロッパ: 2008年12月末

(多くの加盟国で実施)

アメリカ: 未実施

※ バーゼルⅡのもとでは, 未格付の証券化商品に対するエクスポージャーについては、銀行が原資産のリスク・プロファイルを適切に捕捉する場合を除き、同額の自己資本が原則控除される。

金融セクターへの直接的影響は限定的

バーゼルⅡ実施日

11

今次の世界的な金融危機以前に日本はバーゼルⅡを実施。

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金融セクターへの直接的影響は限定的

878

115

431

630

156

追加的な損失あるいは損失引当金(予測ベース)(2010:Q3-2010:Q4)

追加的な損失あるいは損失引当金(実現ベース)(2007:Q2-2010:Q2)

12

アジアの金融機関は、証券化商品へのエクスポージャーが小さかったため、これらの商品から生じた損失が限定的であった。

銀行の償却損もしくは損失引当金(地域別、実現および予測ベース)

(10億米ドル)

出所: IMF Global Financial Stability Report in October, 2010

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実体経済を通じた影響は深刻

出所:Bloomberg

実質GDP (四半期・季節調整済)の推移

13

世界同時不況は、外需の収縮を通じて、わが国の実体経済は急速に悪化した。

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14

•円は米ドルに対して大幅に増価。

•株価も同様に大幅に下落。

実体経済を通じた影響は深刻

日経平均株価とドル円・名目為替レート

出所: Bloomberg

(円) (円/ドル)

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(10億円) 株式評価損

出所:金融庁 15

日本の金融機関の株式評価損は、サブプライム関連商品損失の約10倍である。

2007年3月末 2010年3月末

実体経済を通じた影響は深刻

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株式保有額(時価)

対銀行資産・株式保有額比率

2005 27,734 3%

2006 33,240 4%

2007 33,869 4%

2008 25,606 3%

2009 18,404 2%

(10億円)

出所:日本銀行

銀行による株式保有額と銀行資産 (全国銀行)

16

銀行の比較的大きな株式保有は、大きなリスクを孕んでいる。

実体経済を通じた影響は深刻

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わが国主要行等の利益・損失

2008年度は、

•実質業務純益が、不良債権処分損をカバーしている。

•しかし、当期純利益は巨額の株式等関係損益によりマイナスとなった。

1,159

62

-966

2,930

-1,607

-1,561

-1,911

2,660

1,453

-41

-411

3,277

2007年度

当期純利益

株式等関係損益

不良債権処分損

実質業務純益

(10億円)

出所:金融庁

17

2009年度2008年度

* 主要行等=みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友銀行、り

そな銀行、中央三井信託銀行、住友信託銀行、新生銀行、あおぞら銀行

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主要行等の自己資本

11.64%13.27%

12.30%

7.08%

11.26%12.42%12.53%

15.82%

6.52% 7.67%7.83%7.81%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

2005年3月 2006年3月 2007年3月 2008年3月 2009年3月 2010年3月

自己資本比率の推移

自己資本比率

Tier 1 比率

出所:金融庁

18

主要行等の自己資本比率は、金融危機の影響をそれほど大きく受けていない。

* 主要行等=みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友

銀行、りそな銀行、中央三井信託銀行、住友信託銀行、新生銀行、あおぞら銀行

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わが国の今次金融危機への短期的対応

アメリカやヨーロッパではアメリカやヨーロッパでは, 以下のような大規模な公的支

援を伴った異例の措置が講じられた。

大規模な資本注入

一時的な銀行国有化

政府による信用保証

一方、わが国では、今次金融危機への政策的対応は以下の理由から、金融仲介機能の維持に焦点が当てられていた。

金融システムの相対的安定性

実体経済の悪化

19

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わが国の今次金融危機への短期的対応は次のとおり:

金融仲介機能の強化-改正金融機能強化法の施行

-11地方金融機関に対し、合計3,090億円の資本参加を実施

銀行の株式持合解消に対する支援-銀行等保有株式取得機構による株式買取りの再開 (5226億円)

(市場価格で銀行から直接買取り)

- 日銀による同様の取組み(約3880億円)

中小企業金融の円滑化-金融機関に対して、中小企業等の借り手から申込みがあった場合には、

できる限り、貸付条件の変更等を行うよう要求

わが国の今次金融危機への短期的対応

20

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わが国の今次金融危機への中長期的対応

世界的な金融危機以前には…

銀行はシステミックリスクを抑止し、金融上の健全性を確保する観点から、厳格な規制下にあった。

証券会社は、システミックリスクとは無縁と考えられており、あまり厳格なプルーデンス規制下にはなかった。

21

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わが国の今次金融危機への中長期的対応

リーマン破綻の日本市場に対する影響

証券・デリバティブ取引に、フェイル・遅れが発生したこと。

クリアリングシステムやDVP慣行のため、株・債券市場への影響は限定的。2~3週間のうちに、市場は正常化。

中央清算機関を持たないOTCデリバティブ市場については、市場の正常化は遅れ、より傷が深くなった。

22

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今回の教訓

「システミック・リスク」は、もはや銀行部門特有の問題ではなくなった。

中央清算機関は、リスクに対処するのに有効である。

23

わが国の今次金融危機への中長期的対応

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わが国の今次金融危機への中長期的対応

金融商品取引業者が、以下のあらかじめ設定した基準に該当する場合:

- 自己資本規制比率の変動- 有価証券の価格変動

監督当局は、ヒアリングや報告徴求等を行い、早期にリスクを特定することとする。

24

1兆円を超える総資産を有する証券会社については、

a) 連結自己資本規制

b)当該業者の親・子・兄弟会社に対する報告徴取・検査

早期警戒措置の導入 (2008年)>>>>

証券会社に対するグループ規制・監督の強化(2010年・金融商品取引法改正)

>>>>

証券会社に対するプルーデンス規制の向上

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わが国の今次金融危機への中長期的対応

店頭デリバティブ (2010年・金融商品取引法改正)

2012年11月18日までに、清算機関の清算が義務づけられる店頭デリバティブ取引を決定。

- 以下の店頭デリバティブ取引等に関する国内清算機関の利用を義務付け

a)清算要件が我が国での企業の破綻要件と密接に関連している取引等

b)我が国における取引規模が多額な取引

-他の取引は、国内清算機関、外国清算機関、又は国内清算機関と外国清算機関の連携による清算を義務付け.

25

>>>>

国債取引・貸株取引にかかる決済リスクの削減>>>>

国債売買のフェイルチャージ等の新たなフェイル慣行を平成22年11月に導入

国債取引において決済期間を現行の3日(T+3)から2日(T+2)に短縮化(平成24年4月中目途)

信託銀行は平成26年前半を目途にJGBCCへの参加を目指す.

⇒国債取引におけるJGBCC利用率の拡大

貸株取引における同時履行(DVP)決済 を平成26年1月を目途に実施

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目 次

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I. 経済成長における金融の役割

(1)経済成長の促進

~金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン~

(2)金融の安定

II.アジア各国の経済成長に向けたさらなる取組み

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➣日本のODAは貿易・投資と相俟って、東アジアの経済発展を後押し✓1日1ドル以下で生活する貧困人口は7億人以上減少

【わが国ODAの特徴】✓経済・社会インフラと人材育成を重視。

-各国の投資環境整備に役立ち、民間部門の活力を引き出した。✓援助が直接投資の促進、貿易の振興に則した分野にタイミングよく供与✓貿易・投資と相俟って現地の生産力向上に寄与

東アジア・大洋州、サブサハラ・アフリカにおける一人当たりGDPと貧困率

1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005

02004006008001000120014001600

貧困率(サブサハラ・アフリカ)

貧困率(東アジア・太洋州)

一人当たりGDP(サブサハラ・アフリカ)

一人当たりGDP(東アジア・大洋州)

出所: World Development Indicators (World Bank, 2008)

人口一人当たりGDP(米ドル)貧困率(%)

53.4%

77.7%

50.9%

16.8%

アジアの飛躍的な経済成長に対するわが国の貢献

貧困率:1日1ドル以下で暮らす人口の割合

II.アジア各国の経済成長に向けたさらなる取組み

アジア各国の経済成長へのわが国の貢献

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出所:IMF、Datastream(注)▲ は流出を表す。

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アジア各国の経済成長へのわが国の貢献(1億米ドル)

直接投資 ▲ 422 ▲ 568 ▲ 514 ▲1,063 ▲628

対外直接投資(ネット) ▲ 454 ▲ 501 ▲ 735 ▲ 1,308 ▲746

対内直接投資(ネット) 32 ▲67 221 245 118

証券投資 ▲ 133 1,275 731 ▲ 2,925 ▲2,164

対外証券投資(ネット) ▲ 1,964 ▲ 710 ▲ 1,234 ▲ 1,896 ▲1,602

対内証券投資(ネット) 1,831 1,985 1,965 ▲ 1,029 ▲562

2005 2006 2007 2008 2009

経常収支 1,657 1,705 2,104 1,566 1,421

外貨準備 (除く金) 8,342 8,796 9,527 10,093 10,222

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(1億米ドル)

出所:IMF 、Datastream(注)▲ は流出を表す。

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アジア各国の経済成長への中国の新しい貢献

直接投資 678 603 1,214 943 343

対外直接投資(ネット) ▲ 113 ▲ 178 ▲170 ▲535 ▲439

対内直接投資(ネット) 791 781 1,384 1,478 782

証券投資 ▲ 50 ▲ 675 187 427 387

対外証券投資(ネット) ▲ 262 ▲ 1,104 ▲ 23 328 99

対内証券投資(ネット) 212 429 210 99 288

2005 2006 2007 2008 2009

経常収支 161 253 372 436 297

外貨準備 (除く金) 8,215 10,694 15,302 19,492 23,888

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受け入れ国の対応

「リスク・アペタイトの低下は、当初は、新興国・発展途上国への資本流入を減少させうる。」

「・・・アジア・ラテンアメリカの中には、大幅な資本流入に起因するリスクの潜在的な蓄積に引き続き直面する国もある。」

IMF国際金融安定性報告書(2010年10月)

IMF世界経済見通し アップデート(2010年7月)

(推 計)

2008 2009 2010 2011

全世界 3.0 -0.6 4.6 4.3

アジア(発展途上国) 7.7 6.9 9.2 8.5

中国 9.6 9.1 10.5 9.6

インド 6.4 5.7 9.4 8.4

ASEAN-5 4.7 1.7 6.4 5.5

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受け入れ国の対応

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アジア通貨危機からの教訓- 短期対外借入への過度の依存は、金融セクターを脆弱にし、

経済の不安定性を高める可能性がある。

- アジア諸国は、金融をより生産的に 活用する準備をしなけ

ればならない。

必要な施策

- 金融のセーフティー・ネットとしての地域的取組

→チェンマイ・イニシアティブ (CMI)

- 域内貯蓄の動員と安全な資金源からの資金供給

→アジア債券市場育成イニシアティブ (ABMI)

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ABMIとABMFを通じたアジア域内債券市場の発展

アジア債券市場育成イニシアティブアジア債券市場育成イニシアティブ (ABMI) (ABMI) >>>>

目的• 強固な債券市場の開発• 通貨と期間の二重のミスマッチの防止• アジアの貯蓄をアジア経済へ

ASEAN+3 ASEAN+3 債券市場フォーラム債券市場フォーラム (ABMF) (2010(ABMF) (2010年設置年設置))>>>>

目的•地域内のクロスボーダー債券取引を促進するような規制と市場慣行をどのように促進するかに関し、市場参加者が認識している既存の規制枠組及び市場参加者の提言の評価

• 地域債券市場発展及び制度の調和、標準化、統合化に向けた改善のた

めに民間セクターとASEAN+3各国当局との対話を強化。

• 地域内における民間・公的セクター間での知識、専門性および経験に関

する意見交換の機会を提供。32