4章 分子と光の相互作用 5章 光化学における時間 ス …...4章...
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4章 分子と光の相互作用 5章 光化学における時間スケール
担当 藤塚 守 大阪大学産業科学研究所
4章 分子と光の相互作用 1.光吸収に関するLabbert-Beerの法則 2.分子からみた光:光が分子の上を通過する 3.分子による光子の吸収と放出 4.光吸収の強弱 5.励起状態の波動関数は正しいのか
5章 光化学における時間スケール 1.光の吸収・放出と分子運動 2.励起状態分子の動的挙動
4章 分子と光の 相互作用
1.光吸収に関するLambert-Beerの法則
図4.1 P.39
c /M
I0 I
l /cm log(I0 /I)= ecl
Lambert-Beerの法則
log(I0 /I)= ecl
I = 2.303I0exp(-ecl)
T= I/I0= 10-ecl
logT= log(I/I0)= -A
= -ecl
A= -logT = log(I0/I)
T= 10-A
Abs= (I0 - I)/I0= 1-T
Abs+ T= 1
I0 入射光強度 I 透過光強度 e モル吸光係数
c 試料の濃度
l 光路長
T 透過度
A= O.D. 吸光度
Abs 吸収光量比
吸収光量= (I0 - I)
p.39
O.D.、 %Abs、 %Tの関係 OD= 0.01, %Abs = 2.28, %T= 97.72 OD= 0.10, %Abs = 20.57, %T= 79.43 OD= 0.15, %Abs = 29.21, %T= 70.79 OD= 0.50, %Abs = 68.38, %T= 31.62 OD= 1.00, %Abs = 90.0, %T= 10.0 OD= 2.00, %Abs = 99.0, %T= 1.0 OD= 3.00, %Abs = 99.9, %T= 0.1
p.40
Lambert-Beerの法則で明らかなよう
に、光化学では均一条件は得られない!
光路長に沿って光強度は減少する →光路長に沿って励起分子の濃度は減少する。
→反応系の不均一性
p.40
2.分子からみた光ー光が分子の上を通過する 2.1 電子遷移のFranck-Condon原理 光の速度:3x108 m s-1(真空中)
ベンゼン分子上を260 nmの光が通過する時間は10-15 s。分子振動10-14 s。 光吸収過程では分子は動かない!
p.40
Franck-Condon励起状態 基底状態と同じ構造で、電子構造のみが異なる状態
p.41-2
垂直遷移
電子遷移~10-15秒程度 分子振動~10
-14秒程度
最低励起状態 振動緩和
囲み記事:通常の光源の光子密度と光等量則
実験用紫外ランプの光子数:1015光子 cm-
2 s-1
1秒間にベンゼン分子に衝突する光子数:2.5 s-1。光子と光子の距離:1.2x108 m。光子と光子の時間間隔: 0.4秒。
光は時間的・空間的に密度が低い!
Einsteinの光等量則:1個の分子は1個の光子を吸収して反応する。
量子収率:1個の光子を吸収した分子が反応する確率 p.41
3.分子による光子の吸収と放出(光吸収、自然放出、誘導放出) なぜ分子に光が吸収されるのか? 光の電場としての性質(振動電場と考えられる)が電子の振動に影響 = 光エネルギーが電子振動子エネルギーに変換される = 吸収
p.42-3
エチレンと光の相互作用
分子の吸収:エネルギーを吸収し得る方向に揺さぶられるときのみ吸収が起こる。
エチレン分子を固定化すると光の振動電場方向によって光子エネルギーを吸収したり、しなかったりする p.42-3
吸収
自然放出 B*→ B + hn 誘導放出 B*+ hn → B + hn + hn
放出
紫外可視光:hn>>>kT →自然放出>>>誘導放出
マイクロ波:hn<<<kT→自然放出<<<誘導放出
p.45-6
光子数に比例
定常状態:式4.3
Laser (Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)
特徴(単色性、指向性、干渉性、高エネルギー密度=時間的・空間的にコヒーレント)。 レーザーの原理:反転分布状態
(Boltzmann分布: N1/N0 = (g1/g0)exp(-(e1 - e0)/kT)において N1>N0 , T<0(負の温度))のとき、光が物質を透過するとその強度が増大する。誘導放出。負の吸収。
レーザーの構成: 媒質: 液体(色素)、気体(He-Ne, Ar, Kr, Excimer, CO2, N2, Cu, He-Cd)、固体(Ruby, Nd:YAG)、半導体(GaAs, InP) 励起媒体: 放電(He-Ne, Ar, Kr, N2, CO2, Excimer laser)、電流(Diode laser)、フラッシュランプ(Ruby, Nd:YAG laser)、レーザー(色素レーザー) 共振器: ファブリペロー干渉計=2枚の反射鏡:high reflector(後方) + output coupler(出力側)。
囲み記事:2光子化学ー多光子励起とレーザー
XeClエキシマーレーザー50 mJ cm-2/10
ns flash
1秒間にベンゼン分子に衝突する光子数:2x1010 s-1
光子と光子の距離:1.5x108 Å 光子と光子の時間間隔: 5x10-11 s レーザー光は時間的にも空間的にも密度が高いので、2光子吸収が起こる!
p.44
1)励起分子B*からの生成物(反応中間体)が2個目の光子を吸収: B*→C、 C + hn →C*
2)B*(励起状態)が2個目の光子を吸収:
B*+ hn →B**
3)Bが2個の光子を同時に吸収: B+ 2hn →B**
p.45-6
囲み記事:2光子化学
4.光吸収の強弱ー吸収スペクトルの強度はなぜ分子により異なるのか? 4.1 遷移と選択則
紫外可視光:電子状態の変化
赤外光:核運動
マイクロ波:電子スピンの反転
ラジオ波:核スピンの反転
スペクトル:量子エネルギー依存性
分子の遷移エネルギー特異性
p.46
p.46-7 ポテンシャル曲線でも理解する。
分子エネルギー状態と光吸収
紫外可視光励起:電子状態の変化
赤外光励起:振動状態の励起
状態間の遷移 単位時間に変化する確率=遷移確率
式4.7の積分を取り出した式8が遷移モーメントm
分子スペクトルの選択則
mが0; 禁制遷移
mが0でないとき; 許容遷移
p.47-8
電磁場:時間依存
摂動ハミルトニアン
調和振動する電子(振動子)が光
を吸収する確率を1とした時の原子・分子の光吸収確率
fは遷移モーメントm2に比例
m2は∫ednに比例
f は∫ednに比例
p.48
囲み記事:振動子強度(f)
状態間の遷移(時間を含む関数)
遷移前の時間t=0ではHの条件下にΨ1~Ψnの固有関数を有している。 Ψiはそのうちの一つの解。 H0 + H’と式4.11を式4.10に代入しcj(t)を求める。
p.49-50 省略
状態間の遷移(時間を含む関数)
p.49-50 省略
分子スペクトルの選択則
電子励起状態への遷移の選択則
核スピンは電子遷移で変化しないので電子遷移の選択則は電子軌道部分、核振動部分、電子スピン部分の3つの因子に依存。 p.50-1
電子遷移の選択則
a. 電子軌道部分の積分による遷移確率の大小
電子軌道部分の積分はx、y、z軸偏光に対する選択側の3項に分解される。
溶液中では偏光方向によって遷移確率は異ならない。
固体中などで固定化した分子は偏光方向によって遷移確率が異なる。これを利用して分子の配向を調べることが可能。 フタロシアニンp.54 p.51
p.54
囲み記事:銅フタロシアニン誘導体のLB膜
偏光方向が膜の浸積方向に垂直の場合の吸光度は、平行な場合に比較して小さい(1:16)。この分子の遷移モーメントが分子内に存在するため。
積分関数が対称(偶関数)の場合は許容
遷移、反対称(奇関数)の場合は禁制遷移
1) 遷移前の分子軌道の対称性
2) x、y、zベクトルの対称性(奇関数)
3) 遷移後の分子軌道の対称性 p.52
電子軌道部分の積分
x
y z
x, y z
奇関数 奇関数
偶関数 奇関数
奇関数
奇関数
偶関数 奇関数
s-trans-ブタジエンはx,y偏光に対して許容、z偏光に対して禁制
HOMO
LUMO
電子遷移の選択則
b. 空間重なりの程度による遷移確率の大小
遷移前後の分子軌道の空間重なりの
程度が遷移確率に影響。
nπ*遷移の場合、n軌道(y軸)→π*
軌道(z軸)遷移は互いに直交している
ので禁制遷移。
ππ*遷移の場合、π軌道とπ*軌道の
空間的重なりは大きいので許容遷移。
p.53
ベンゾフェノン
nπ*遷移(350 nm) 禁制遷移, e= 102
M-1 cm-1。極性溶媒でブルーシフト=
基底状態がより安定化される。 p.27
参照
ππ*遷移(<300 nm)許容遷移, e>104
M-1 cm-1。極性溶媒でレッドシフト=励
起状態がより安定化される。 p.27参
照
p.53、55
ベンゾフェノンのnp*とpp*
電子遷移の選択則 c. 電子スピン部分の積分による遷移確率の大小
p.55,6
スピン保存則
スピン許容遷移
スピン禁制遷移
重原子効果
例:2-ヨードナフタレンのS→T禁制吸収
電子遷移の選択則 d. 核振動部分の積分による遷移確率の大小(Franck-Condon因子)
電子遷移前の核配置での振動波動関数と電子遷移後の核配置での振動波動関数との重なりの程度
重なり積分~Franck-
Condon因子
吸収はv=0からv’=0,1,2..への遷移 吸収のv= 0→3遷移(0-3遷移)の重なりが最大~吸収最大
蛍光はv’=0からv=0,1,2.. 0-3遷移が最大~鏡像関係
p.56-7
電子遷移の選択則
d. 核振動部分の積分による遷移確率の大小(Franck-Condon因子)
吸収の0-0遷移(最も長波長)と発光の0-0遷移(最も短波長)のずれ(溶媒分子再配向に起因) =Stokes Shift
吸収と発光スペクトルの鏡像関係 p.57-8
電子遷移の選択則
p.58
核スピンは電子遷移で変化しないので電子遷
移の選択則は電子軌道部分、核振動部分、
電子スピン部分の3つの因子に依存。
5.励起状態の波動関数は正しいのか 5.1 励起一重項状態と励起三重項状態の項間交差 我々が理解している励起状態の波
動関数は不十分である!
実際の状態を正確に表していると
はいえない!
例:スピン禁制のS-T遷移が起こり、
三重項が生成する!!! p.60
本当の波動関数とは?本当のハミルトニアンとは? 通常のハミルトニアン(水素類似原子):運動エネルギーと位置エネルギー -> 項間交差を説明できない。
摂動ハミルトニアン:電子の軌道運動から生じる磁気モーメントと電子スピンとの磁気的相互作用による位置エネルギーその他を含む->波動関数のmixingが生じる。(一重項と三重項のmixing)
p.61-3
El-Sayed則:一重項と三重項のMixing
1np* - 3np*: mixing は小さい 1pp*- 3pp*: mixing は小さい 1np* - 3pp*: mixing は大きい 3np* - 1pp*: mixing は大きい
p.64
項間交差速度
1np* - 3pp*: mixing は大きい 1np* - 3np*: mixing は小さい 1pp*- 3pp*: mixing は小さい Br重原子効果: mixing は大きい p.77
5.2 ポテンシャルエネルギー面の交差と遷移 2つの曲面が交差=状態間の遷移:摂動論
1)2つの曲面に全く関係がないとき:遷移しない!
2)交差点で両者に弱い相互作用があるとき:S-T遷移、ICなどの場合、交差点で両者の波動関数がmixing
p.64-5 Golden Rule
エネルギーギャップ則
2)交差点で両者に弱い相互作用があると
き <エネルギーギャップ則>
振動量子数nが小さいほど交差点での振
動関数の値は大きく、nが小さい基底状態
準位への内部変換ほどその速度は速い。
励起状態と基底状態のエネルギー差が
大きいほどnは大きくなり、ICの速度は遅く
なる。
p.66
項間交差に対するH/D効果
ナフタレン-d6はナフタレンーh6に比
較してその3重項の寿命が増加する。
交差点(T-S0)での基底状態振動準
位の量子数nはC-HよりもC-Dの方
が大きいので、 T-S0への交差速度
が遅くなる。
p.66-7
5.2 ポテンシャルエネルギー面の交差と遷移
3)交差点で両者に強い相互作用があるとき:交
差点で両者の波動関数がmixingして、曲面が変
化して、連続的に繋がる→avoided crossing p.67
2つの曲面が交差
囲み記事
Woodward-Hoffman rule 軌道対称性保存則
p.66-7
エチレン+エチレン→シクロブタン
この反応は基底状態(熱的)では禁制
励起状態(光化学的)では許容
5章
光化学における
時間スケール
5章 光化学における時間スケール
フェムト秒 fs= 10-15 s ピコ秒 ps= 10-12 s ナノ秒 ns= 10-9 s マイクロ秒 ms= 10-6 s ミリ秒 ms= 10-3 s
P.69
P.70
Time Scales From Milli to Femtosecond Chemical, and Biological Changes
Time Scales From Milli to Femtosecond Chemical, and Biological Changes
Radiative Decay
Rotational motion
Vibration Motion
Proton Transfer
Abstraction, Exchange & Elimination
Diels-Alser
Charge Recomb
Protein Motions Photosynthesis(ET) Vision (isom,)
10-12
Pico 10-9
Nano 10-3
Milli
10-6
Micro
10-15
Femto
A. H. Zewail. Angew, Chem. Int. Ed. 2000, 39, 2586
5章 光化学における時間スケール
1.光の吸収・放出と分子運動
1)分子の光吸収の時間スケール
≤10-15 s
P.69
2)発光の時間スケール
蛍光、燐光
ps~s
光を放出するまでの時間を含む
放出そのものは10-15 s
P.70
3)分子運動の時間スケール
重原子と水素などの結合振動
1014 s-1
重原子同士の振動
≤ 1013 s-1 反応速度の上限
回転、並進運動
1012 ~ 103 s-1 媒質の粘度に依存
P.71
4)分子の運動による発光の異方性の欠如ー吸収と分子運動の関係 (1)
振動、回転、並進のいずれも光の吸収放出速度より遅い。この間に核間配は変化しない。
溶液内で無秩序に配向が分布する分子には異方性がない。
P.71
5)振電相互作用によるベンゼンの
対称禁制遷移(ππ*)の解消 ー吸収と分子運動の関係 (2)
振電相互作用 Vibronic interaction
により、 Vibronic遷移が起こり、260
nmに非常に弱い吸収が観測される。
ケトンのnπ*もC=O結合のねじれや偏角振動により禁制が緩和される
P.72
6)スピンー軌道相互作用による
禁制遷移の緩和
一重項と三重項の波動関数のmixing
P.73
2.励起状態分子の動的挙動
励起状態寿命は化学過程と物理過程の速度定数の和の逆数
P.74
2.1 励起状態からの物理過程の時間領域 a.放射過程ー蛍光およびりん光 kem (kF or kP) ~n0
2f P.74
1)蛍光の放射速度定数kF
kF = FF/tS
p-ターフェニル(pp*, f~1)の蛍光: kF= 109 s-1, tS= 1 ns, Ff= 1
アセトン(np*, f~10-4)の蛍光: kF=
5.3x105 s-1, tS= 1.7 ns, Ff=0.0009
ベンゾフェノンは蛍光を示さない:蛍光(<107 s-1)に比べS1→T2項間交差(1011 s-1)が速いため。 P.75
2)リン光の放射速度定数kP 重原子を有する錯体の場合
M= Wのとき重原子効果によってST吸収が観測される。
P.75
M = Wの錯体のリン光: 533 nm tP= 5.1 ms (77 K), kP< 106 s-1 (e < 102)リン光の上限値
ケトン (アセトフェノンやベンゾフェノン) np* S0→S1吸収 np* S0→T1吸収: emax= 1~10-2 M-1 cm-1
燐光寿命:10-2 ~1 s 芳香族化合物の場合 pp* S0→T1吸収はさらに弱い 加圧または外部重原子効果が必要 燐光の観測は77K剛体溶媒(低温マトリックス)中 室温では競争過程があるため測定無理
P.76
b.無放射過程ー内部変換および項間交差 1)内部変換 P. 76-77
P.76
通常、DE(S0-S1) = 209~418 kJ mol-1でkIC = 106~108 s-1
DE(Sn-1-Sn) (n ≥ 2) < 126 kJ mol-1でkIC >1011 s-1
(S2-S1およびS2-S0蛍光は観察できない)
2)項間交差(1)
スピンー軌道相互作用が大きいこと
(El-Sayed則),DESTが小さいことに
よって促進される P.77
2)項間交差(2) ベンゾフェノンとアセトンの比較 P76-77
ベンゾフェノン:S1(1nπ*)-T2 (
3ππ*) -T1 (
3nπ*)
S1(1nπ*)= π(↑↓)n(↓)π*(↑)
T2(3ππ*)= π(↑)n(↑↓)π*(↑)
この遷移においてπ軌道(pz)の電子の一つが直交するn軌道(py)に変わる。電
場と磁場に大きな変動をもたらすのでスピンー軌道相互作用が大きくなる。スピン禁制が緩和される。 P.78
2)項間交差(3) アセトン:S1(
1nπ*)-T1 (3nπ*)
S1(1nπ*)= π(↑↓)n(↓)π*(↑)
T1(3nπ*)= π(↑↓)n(↓)π*(↓)
この遷移においてはスピンのみが変化する。電場と磁場に大きな変動がないのでスピンー軌道相互作用は小さい。したがって、スピン禁制である。
ナフタレン(1pp* - 3pp*)でも大きな軌道変化がないため、スピン禁制。 P.78
2)項間交差(4) 重原子効果
P.78-79
Ru(bpy)3の3MLCT*からの発光
P.63囲み
5章 光化学における時間スケール
2.2 励起状態における化学過程の時間領域 a.一分子反応過程 P.79
非常に速い反応 1) HI + hn → H + I 2) M(CO)n + hn →M(CO)n-1 + CO (5.3) (M = Cr, Mo, W)
P.79-80
L(ビピリジンやフォスフィンなど他の配位子)との交換反応
S1で化学反応が効率よく起こるには、106 s-1
を下限とし、それ以上でなければならない。
三重項の反応(遅い) Norrish Type II
P.80 T1は寿命が長いため、さまざまな反応が関与しうる。
2.2 励起状態における化学過程の時間領域
b.分子間反応過程 二分子が媒質中を動き回り(拡散)、反応
に有効な距離(有効衝突半径)に近づくことで反応が進行。
1)拡散について
粘度、温度により影響される Debyeの式
kdif = 3RT/8000h (h : 粘度、p. 129)
ペンタン:kdif = 3 x 1010 M-1s-1
グリセリン:kdif = 4 x 106 M-1s-1 p.80-81
2)拡散律速反応、拡散律速速度について
P.81
有効衝突:何回の衝突で反応が起こるか。
一回の衝突で反応が起こる場合:拡散律速反応
拡散律速反応の例
1)励起エネルギー移動消光
M* + Q →M + Q*
2)電子移動消光
D* + A →D.+ + A.-
P.82
3)酸素分子による三重項励起分子の消光 酸素分子の電子配置 酸素原子の電子配置は1s22s22p4である。 2つのOの1s 電子→ O2のσ1sとσ*1s:それぞれ2つずつ電子が入る(合計4つ)。 2つのOの2s電子→ O2のσ2sとσ*2s:それぞれ2つずつ電子が入る(合計4つ)。 4つのOの2p電子→σ2pに2つ、π2pyとπ2pz
に合計4つ、縮重しているπ*2pyとπ*2pzにそれぞれ1つ合計2つの電子が入る。 基底状態でO2は三重項である。 (s1s)
2(s*1s)2(s2s)
2(s*2s)2(s2px)
2(p2py)2(p2pz)
2(p*2py)1(p*2pz)
1
P.82
酸素による励起エネルギー移動消光
M* + O2 →M + O2* 酸素の励起エネルギーは95 kJ mol-1と低いため、拡散律速により反応が進行する。有機溶媒中で[O2]~10-3 Mの飽和濃度であることから、kdif x [O2] ~ (1010 M-1s-1)x (10-3 M) = 107 s-1であり、S1は部分的には消光するが、T1はほぼ完全に消光される。
P.82
水中の酸素の飽和濃度: 290μM 細胞内の酸素の飽和濃度: 200 μM 核内の酸素の飽和濃度: 5 μM 水中等では三重項が消光される。
4)典型的分子間反応の例
式5.7
発エルゴン性(>~13 kJ mol-1)のとき、拡散律速で起こる!
P.82-3
M1*
M1
hn
M2 [M1・ M2] *
M2
M1 + M2*
M1.+ + M2.-
励起錯体形成
エネルギー移動
電子移動
拡散律速反応の量子収率 M1* (寿命tS)のM2による消光(エネルギー移動、電子移動など)を考える。
FR = kdif[M2]/(1/tS + kdif[M2])
(三重項の場合はtSをtPに代える。)
M1の寿命に応じて[M2]を変えないと効率よい反応は起こらない。