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限界を超えた時、初めて見えるものがある。—アスカ・シン
ブロックチェーンの限界を超えるBeyond Blockchain One
一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事 /慶應義塾大学 SFC研究所上席所員斉藤賢爾
[email protected]ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.1/22
簡単な自己紹介斉藤賢爾 (さいとうけんじ)慶應義塾大学 SFC研究所上席所員・環境情報学部講師 (非常勤) (村井純研究室)
一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事株式会社ブロックチェーンハブ CSO (Chief Science Officer)
一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事
経歴1993年、コーネル大学より M.Eng取得 (コンピュータサイエンス)
2006年、慶應義塾大学よりデジタル通貨の研究で博士号取得 (政策・メディア)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科や SFC研究所にて 17年以上にわたりP2P (Peer-to-Peer)およびデジタル通貨等の研究に従事2011年夏より福島のこどもたちのための「アカデミーキャンプ」を実施
→ 私の頭の中ではつながっています (これからの社会のデザインは?)
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.2/22
最近の著書
「信用の新世紀ブロックチェーン後の未来」(インプレス R&D, 2017.12)
ジャンル: 短編 SFプロトタイピング +解説 +妄想貨幣経済の衰退から新しい経済社会のメイキングまで
2048年の社会は?根本的な仕組みから自動化されている「何を実現したいのか」という、ひとりひとりの意思が大切である社会
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.3/22
最近の記事
日経サイエンス 2018年 5月号特集 : 仮想通貨の科学「ブロックチェーンの課題を乗り越える」
ジャンル: ステマ (笑)
ブロックチェーンの課題を整理するBeyond Blockchain One (BBc-1)の設計概要オープンソースです
「ブロックチェーンの威力と弱点」の「弱点」担当翻訳記事に厳しい監修者ノートも付けています
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.4/22
ブロックチェーン (狭義)の動作的特徴参加ノードに状態が複製される
(1)等しい初期状態からはじまる(2)すべての参加ノードにイベントがコピーされる(3)かつ同じ順序でコピーされる(4)全イベントは状態に対して決定的に (どのノードでも等しく) 作用する
なので耐障害性を維持できる一部のノードが動いていなくても機能を保てる
このことは重要ではないが、狭義のブロックチェーンの動作を特徴づけるこのことが重要なのだったら state machine replicationなど既存の技術がある
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.5/22
ブロックチェーンは何を提供する技術か1)内容も存在も誰にも否定できない記録を保存・維持する2)その確かさを誰でも確認できる3)以上のことを誰にも止めさせない
「誰にも」「誰でも」とは定義されたステークホルダーたち
⇒ あたかも空中に記録を固定できる
⇒ 二重の課題があるそのことは本当に実現できているのか?そのことが実現できたら取り沙汰されている応用が可能なのか?物理的実体とデジタルな記録との間の確実な紐付けの問題· サプライチェーンにおいては、加工等を経ても確実に追跡可能か実時間性・規模拡大/縮小性・適応性・持続性等の課題 (dependableなものになり得るのか)
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.6/22
ビットコインの「問い」と「答え」(1)
ビットコインの「問い」「自分が持っているお金をいつでも自分の好きに送金することを誰にも止めさせない」ためには?
(中央) 銀行マネーへの不信
ビットコインの「答え」特定のサービス提供者がいる風にはできない
⇒ デジタルなコインを P2Pでやり取りするコインを送ったことを否定されたら?
⇒ デジタル署名を用いる (検証可能性と内容の否認不可能性の担保)
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.7/22
ビットコインの「問い」と「答え」(2)
デジタル署名だけでは解けない問題がある二重消費 (double spending)を防ぐ必要がある (存在の否認不可能性を担保したい)
⇒ 取引の証拠を新聞に載せればよい掲載拒否やディスコンの恐れは?
⇒ 群衆が (出来事の証拠として)発行する「新聞」に取引の証拠を載せる
ブロックチェーンは、あたかも「空中に約束を固定する」「約束」の形式をもつ記録を固定できる→貨幣は「約束」であり、公共財(広い意味の)公共財を公正に扱うことができるという期待 (完全ではない)
この考え方に基づくコインの盗難はコインチェック事件のような顛末を辿る「自分が持っているお金をいつでも自分の好きに送金することを誰にも止めさせない」
⇒ 本人であることを自分自身だけで証明する→秘密鍵の所持のゼロ知識証明→秘密鍵を使えるなら誰であれ本人⇒ 取引は万人が検証可能だが取り消せない→盗まれたコインは追跡できるが取り戻せない
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.8/22
新しい技術は、新しい事故を生む—ポール・ヴィリリオ
技術文明は常に新しい事故を発明する
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.9/22
ビーカー /新聞モデルの世界 (1)
ビットコインとブロックチェーンを物理モデルで説明します2,100万 cm
3 (cc)の、人類にとって無価値な液体があるタンクに入っている
1億分の 1cm3 まで計量できるビーカーを各自がいくつでも
持てる公共空間に置かれるビーカーには鍵付きの蓋がついている
平均 10分おきに選ばれた人だけが、自分のビーカーに今なら12.5cm
3 くみ出せる特殊なくじ引きで選ぶ当たりくじは、各自の箱の中にあり、それぞれが全力でくじを引きまくる⇒ 速く引けた方が有利⇒ 「システムが停まらない (ライブネス)」性質を満たせる
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.10/22
ビーカー /新聞モデルの世界 (2)
ビーカー間で比較的自由に液体をやり取りできる (正当性の保証)
蓋を開けられるのは鍵を持っている本人だけ一度開けたら、他の (複数の)ビーカーに注ぎ切る
先の「選ばれた人」は、やり取りを「監査」し、新聞の紙面をつくって記録を残す「追記人」でもある (存在の証明)
やり取りのおこぼれ (手数料)ももらえる同じページ番号が被ったら、ページ列の長い方の履歴が有効(唯一性の合意)
ときどき、ビーカーの鍵を無くす人がいる
そんな仕組みをデジタルでつくり、通貨と見なしてみた→ ビットコイン
(見なしを必要としない貨幣・通貨は法貨も含め存在しない)
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.11/22
存在の証明 ∼作業証明付きハッシュチェーン
頁番号 : n 頁番号 : n+1 頁番号 : n+2
前頁のダイジェスト(ターゲット以下でないといけない )
はみだしコーナー(ダイジェストがターゲット以下になるように入れる適当な内容 )
ページのダイジェスト (暗号学的ハッシュ関数による出力)はターゲット以下でなければならない元のデータをどういじればどんなダイジェストになるのかは予めわからない→途方もない作業を要する
これがくじ引きの原理であり、同じだけのコストをかけなければ改ざんできないブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.12/22
唯一性の合意 ∼ナカモト・コンセンサス
ページ番号 : n ページ番号 : n+1 ページ番号 : n+2 ページ番号 : n+3
ページ番号 : n+1 ページ番号 : n+2 ページ番号 : n+3
ページ番号 : n+4
こっちの歴史が有効
ほぼ同時に別々の誰かがくじに当たってページ列が分かれてしまう現象はたまにある誰にも止めさせないための自律分散的動作のため不可避
くじ引きに累積で最も大きなコストがかかっている歴史が最も改ざんしにくいそれが正史であると全員が合意する (厳密なコンセンサスは実現できていない)
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.13/22
ブロックチェーン/DLTの現状ブロックチェーン (主として「空中」はグローバル)
Bitcoin (ザ・ブロックチェーン)
Open Assets Protocol (OAP)(ビットコインブロックチェーン上に任意の量を定義して移転できる)
Ethereum (分散アプリケーションのための基盤) (多分に実験システム)
Enterprise Ethereum Alliance (↓こっち方向への進化)
その他の分散レッジャー (DLT) (主として「空中」はローカル)
Hyperledger (Linux Foundation)Fabric (IBM/DAH), Sawtooth (Intel), Iroha (ソラミツ)などの開発が進行中
Corda (R3), Tangle (IOTA), . . ., BBc-1 (我々)
本当に記録の内容も存在も誰にも否定できないのか?本当に記録の確かさを誰でも確認できると言えるのか?
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.14/22
ブロックチェーン/DLTの課題非実時間性 (確率的動作)
秘匿の困難性 (万人への検証可能性の担保)
ワンネス (分散 vs. 複製)
スケーラビリティがない (全参加者に複製されるならスケールしない)
進化のガバナンスが困難 (全員が一丸となる必要があるなら変われない)
インセンティブ不整合性ネイティブ通貨の価値で支えられている (暴落するとすべての応用が止まる)
⇒ ゼロベースで設計し直せば解ける実際に進行中です (例 : BBc-1)
多くの DLTはゼロベースで考えていないところが問題例 : 作業証明の付かないハッシュチェーンは改ざんし放題例 : 新聞モデルで、業界紙や社内報に載せるようなことをしても存在証明にならない
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.15/22
ブロックチェーン vs. プライベートレッジャー耐改ざん : 抹消・捏造ができない検証性 : 第三者が検証できる耐障害 : 障害で止まらない一貫性 : 状態が一意に保たれる省資源 : 省エネ・メモリ・帯域等低遅延 : 反応が速い処理量 : スケールアウトできる開発工数 : アプリを作りやすい持続性 : 長生きするか
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.16/22
Beyond Blockchain One (BBc-1)
Bitcoinその他のパブリックレッジャー
BBc-1オープンでパブリックな 分散レッジャー 分散ストレージ管理
サーバレス ( 極力メインテナンスフリー ) な実行環境
アプリケーション
その他さまざまな
アプリの可能性
デジタル通貨SDK デジタルアセットAPI
BBc-1 開発項目
移行アシスタント
地域通貨アプリ
ポイントアプリ
来歴証明アプリ
…
初期ターゲット
初期ターゲット
初期において存在証明を依存個々のストレージサービス
可能なターゲット
例えば「お客様も社内報にアクセスできます」といっただけの状況でも存在証明ができる2017 年 10 月 31 日オープンソース化 (https://github.com/beyond-blockchain/bbc1)、非営利組織で管理一般社団法人ビヨンドブロックチェーンでは、応援してくださる会員企業を募集しています
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.17/22
Introducing BBc-1 —特徴正当性の保証
UTXO + 識別子と公開鍵の分離 +ドメイン内での検証
債権としてのアセット +Byzantine Paxos 等
ネイティブ通貨をもたない +ドメイン内自治
ドメイン間の履歴交差 +初期においてはブロックチェーンへのアンカリング
存在の証明 唯一性の合意 ガバナンス
https://beyond-blockchain.org
開発者コミュニケーションへの参加希望は [email protected]までブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.18/22
「のびしろ」がある設計
BBc-1の初期の設計や参照ソフトウェアが得意でない部分にも改善・拡張の余地がある
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.19/22
関連資料BBc Trust (満たすべき要求) — https://beyond-blockchain.org/public/bbc-trust.pdf
同日本語スライド— https://beyond-blockchain.org/public/bbc-trust_ja.pdf
Design Paper (white paper) (2018/3現在は revision 0.1)
— https://beyond-blockchain.org/public/bbc1-design-paper.pdf
プレスリリース— https://beyond-blockchain.org/public/BBc-1-press-release20171031.pdf
お披露目会発表スライド— https://beyond-blockchain.org/public/BBc-1-introduction-and-showcase20171031a.pdf
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.20/22
サイバーフィジカル社会とサイバネティクスサイバネティクスは動物を通信や制御で理解するところから始まったもともとフィジカル
社会が新たな目や耳、手や足をもつ例 : どこにいても「藤沢市付近に雨雲が近づいています」と知れる ←今ココ
例 : 実際に家の洗濯物をロボットが取り込んで畳む⇒ その新たな目や耳を通して知られた内容は正しいか?
そして制御とその判断は正しいか?ミッションは正しいか?
AIは社会のネットワークにおけるビザンチンノードかもしれないビザンチン =発生しうる障害について前提を置けず任意の逸脱が起きうる
AIによっても覆せない記録を保存・維持できることには意義がありそうブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.21/22
まとめあらゆる技術は特定の「問い」に対する「答え」ですまず「何を問うか」を問わなければなりません
私たちは来たるべきサイボーグ社会 (Cybernetically Organized Society)に何を期待するのでしょうかそれが dependableであることは、どうしても必要です
ブロックチェーンの限界を超える— 2018-04-25 – p.22/22