組織戦略,hrmおよび企業業績 ·...
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1.はじめに
従業員とHRMシステム(Human Resource Management System)は,組織の業績を向上させる1つの方法である。SHRM(Strategic Human Resource Manage-ment)研究者は,組織の成功が部分的に組織戦略の実行の際における従業員と従業員の行動に依存する(Becker & Gerhart, 1996; Delery & Doty, 1996; Wright & McMahan, 1992),またHRMシステムを通じて従業員のモチベーションと行動に効果的に影響を与える組織は優れた業績を獲得する(Huselid, 1995)と主張する。
本研究では,HRM戦略/ HRMシステムに焦点をあてて,組織戦略が HRM戦略/HRM システムにどのような影響を与えるのか,HRM 戦略/ HRM システムと組織戦略は企業の業績,とくに財務業績にどのような影響を与えるのかを実証的に明らかにする。第2節では本研究の理論的背景を述べる。それを踏まえて概念モデルを提示する。第3節は分析方法を,第4節は分析結果を,続いて第5節は分析結果の要約と含意,課題を述べる。
2.理論的背景と概念モデル
2.1 SHRM
Wright & McMahan(1992)は,SHRMを「組織が目標を達成することができるように意図された,計画的な人的資源の配置および活動のパターン(p.298)」と定義する。この定義は次の2つのことを含意する。第1に,組織はHRMを通じて,組織レベルのアウトカムに影響を与えることができることである。第2に,戦略的なレベルで,
咸 惠 善
Heasun HAM
組織戦略,HRMおよび企業業績
Organizational Strategy, Human Resource Management and Firm Performance
産業経済研究所紀要 第 22 号 2 012 年3月 論 文
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HRM の組織に対する影響能力を決定するのは,個別のHRM 施策よりも HRM 施策の組み合わせ,システムであることである。
多くの研究が様々なHRM測定尺度と企業業績間に有意な正の関係を見出した。これらの研究において使用された HRM 測定尺度には,HPWS(High Performance Work Systems)とHIWS(High Involvement Work Systems)(Huselid, 1995; Ar-thur, 1994),ワーク・ライフ・バランス(Perry-Smith & Blum, 2000; Konard & Mangel, 2000; 咸 , 2007, 2008)および個別のHRM施策,たとえば,報酬やトレーニング(Gehart & Milkovich, 1990)がある。
伝統的な HRM 研究は,HRM の特定機能に限定して行われた。たとえば,トレーニングはトレーニング機能のみについて,特定のインプット,プロセスおよびアウトプットを強調し,ほかの機能とは独立して研究が行われた。伝統的なHRM研究はトレーニングが報酬や採用のようなほかのHRM機能と組み合わせてどのように働くのか,あるいはHRM機能が組織レベルの業績にどのような影響を与えるのかについてはほとんど研究せず,HRMの特定機能に限定して異なった機能との調整がなくお互いに独立して進化した。戦略と戦略経営といった概念(Miles & Snow, 1984; Porter, 1980, 1985)の台頭で,企業は戦略的に競争するため,自らをどのように位置づけるかについて関心をもつようになった。このことはHRMが戦略経営プロセスにおいてどのように貢献することができるかという問題を生じさせたのである。
2.2 組織戦略とHRM
HRMと事業戦略との関係を分析した初期の研究は,事業戦略の達成に対する特定の HRM機能の効果に焦点をあてた。初期研究の研究結果は,トレーニングや報酬のような特定のHRM機能が事業戦略に結び付けられ,これらの特定の HRM機能と事業戦略間の適切な結びつきが持続的な競争優位に貢献することを示唆した(Miles & Snow, 1984; Schuler & Jackson, 1987)。
企業が所有する内部資源に焦点をあてた戦略理論,資源ベース理論の出現により,SHRMは初期の研究での特定のHRM機能を組織戦略に結びつけることから,組織レベルの戦略がシステムとしてのHRM(HRMシステム)にどのような影響を与え,次にHRMシステムが企業業績にどのような影響を与えるのかというより統合した考え方へと進化した。
SHRM では HRM 施策の束あるいは全体としての HRM 機能が企業戦略の達成にどのように貢献するのかが1つの研究イシューになったのである(Wright, Dunford, & Snell, 2001)。
咸 惠 善
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2.2.1 資源ベース理論とHRM
多くの理論がHRMと企業業績との関係を説明するために用いられたものの,SHRM研究において使用される支配的な理論は資源ベース理論である(Wright & McMahan, 1992)1)。企業の内部資源が競争優位の源泉になるという資源ベース理論は,外部環境と,産業,顧客および競合者などといった要因に焦点が当てられた戦略(Miles & Smile, 1978; Porter, 1980, 1985)とは異なる。資源ベース理論は,企業の人的資源が業績と競争優位にどのように貢献するのかについて理論的に説明した。資源ベース理論では,企業内の資源が価値,希少性,非模倣性および非代替性といった4つの基準を満たすと,それは企業にとって競合者が容易に複製できない価値ある資源になり,企業の競争優位の源泉となる。
このことは企業内の人的資源のどの側面が資源として成立するのかという問題を引き起こす。Wright, McMahan, & McWilliams(1994)は,競争優位をもたらす資源とは企業の人的資本であると主張する。彼らは企業内の個人が所有する知識やスキル,能力が前述した4つの基準を満たすという。
一方,Lado & Wilson(1994)はHRM システム全体として結合された HRM施策は特有かつ模倣しにくいので,それは持続的な競争優位の条件を満たす資源であると主張する。理論的枠組みとして資源ベース理論を使用する多くの研究は,組織の人的資本を開発する機能を果たす資源として HRMシステムに焦点をあてている(Boxall, 1998)。
Wright et al.(1994)は,HRM システムは競合者によって容易に複製されうるので,持続的な競争優位の源泉でないと主張した。しかしながら,Becker & Gerhart
(1996)はなぜ成功した企業のHRMシステムを容易に複製できないのかについて,次の2つの理由をあげている。第1に,因果関係の曖昧さである。それはHRM システムが組織の競争優位に貢献する正確な方法がわからないあるいは非常に曖昧であるので模倣するのが困難であることを意味する。彼らによると,成功した企業のHRMシステムを複製するためにはこの複雑なシステムを構成する要素すべてがどのように相互作用するかを理解する必要があるからである。
第2に,HRMシステムの理解と複製を困難にさせるのは経路依存性である。HRMシステムは時間の経過とともに開発・実施される。その例として管理者の報酬システムをあげる。この個別の HRM 施策の開発と実施は,時間の経過とともに展開する。この施策に対する管理者の努力を誘い,その報酬システムの欠点をなくすのに時間がかかる。またそのシステムを組織の文化とニーズだけでなく現在の戦略に結び付けるのにも時間がかかるし,最終的に,組織の特定のニーズを解決するために創出された管理や組織の哲学と文化を反映する施策となる。組織の哲学や状況に応じて特定の歴史と進化をもつ各々の施策を統合した全体システム,HRMシステムを競合者が時間と金銭的な資源の双方の投資なしでは容易には複製できないし,また購入もできない。
組織戦略,HRMおよび企業業績
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企業が所有する内部資源に焦点をあてる資源ベース理論は,なぜHRMシステムが組織の持続的な競争優位をもたらすのかについての理論的な根拠を与えたのである。
2.2.2 事業戦略とHRM
ここでは,事業戦略とHRMを結び付ける研究として,Miles & Snow(1978)の事業戦略類型を使用する,Miles & Snow(1984)とWright & Snell(1991)を検討する2)。表1には,前述した2つの研究での事業戦略とHRM戦略の結び付きがまとめられている。
表1 事業戦略とHRM戦略の結び付き
Miles & Snow(1978, 1984)の事業戦略類型は,次の4つである。①「防御型」は比較的に狭いかつ安定的な製品と市場ドメインをもつので,運営の構造,技術,方法での主たる調整を行う必要はなく,運営の効率性向上に焦点をあてている。防御型の特徴は限定した製品ラインで既存の製品を既存の顧客に効率よく提供することである。②「攻撃型」は新しい製品と市場の機会を常に模索する。攻撃型は環境トレンドへの対応を潜在的に実験する。攻撃型は競合者が対応すべき変化と不確実性を生み出すものでもあるが,製品と市場のイノベーションに対する強い関心のため,完全には効率的ではない。
③「分析型」は防御型と攻撃型のハイブリッドである。分析型は安定と不安定の双方のドメインで運営する。安定的ドメインでは,公式的な構造とプロセスを通じてルーチンかつ効率的に運営する。不安的なドメインでは,マネジャーは競争者を注意深く観察し,新しいアイデアのうち,最も有望と思われるアイデアをすばやく採用する。分析型の特徴は安定的な製品についてはコスト効率的な技術を,新製品についてはプロジェクト技術を混合していることである。
④反応型は一貫性のある戦略がなく,戦略,構造およびプロセスが十分に連携していない。規制産業を除いて反応型は他の3つのタイプに比べて企業業績が低い。Miles & Snow(1984)は防御型,攻撃型および分析型はPorter(1980, 1985)の競争
防御型戦略 攻撃型戦略 分析型戦略
Miles & Snow(1984)
人的資源の構築メイク戦略
人的資源の獲得バイ戦略
人的資源の配分メイクとバイ戦略
Wright & Snell
(1991)
コンピテンス活用行動コントロール行動調整
コンピテンス獲得コンピテンス交代行動調整
新市場コンピテンス獲得コンピテンス・リテンション行動調整成熟市場コンピテンス活用コンピテンス・リテンション行動コントロール
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戦略の類型のコストリーダーシップ,差別化およびフォーカスに各々相当するもので,各々の戦略志向は本質的に同じであると述べている3)。
Miles & Snow(1984)は自らの事業戦略類型をHRM 戦略/ HRM システムに結び付けている。「防御型」はメイクHRM戦略を強調する人的資源の構築,「攻撃型」はバイ HRM戦略を強調する人的資源の獲得,「分析型」はメイクとバイHRM戦略の双方を強調する人的資源の配分に結び付けている。Miles & Snow(1984)はHRMの特定領域として「リクルート・選考と配置」,「スタッフ計画・トレーニングと開発」,「業績評価」および「報酬」をあげている。3つの戦略類型別の4つの HRM機能の内容は次の通りである。「防御型」では,①「リクルート・選考と配置」:エントリーレベルのみでのリクルート,望ましくない従業員を取り除く選考,②「スタッフ計画・トレーニングと開発」:公式かつ広範なスタッフ計画,スキル構築,③「業績評価」:過程志向手続き(たとえば,生産目標),個人/グループの業績評価,時系列比較(たとえば,前年度の業績),④「報酬」:組織階層のポジション志向,内部公正さである。「攻撃型」では,①「リクルート・選考と配置」:すべてのレベルでの洗練されたリクルート,心理テストによる選考,②「スタッフ計画・トレーニングと開発」:非公式かつ制限されたスタッフ計画,スキルの明確化と獲得,③「業績評価」:結果志向手続き(たとえば,目標管理あるいは利益目標),事業部/企業の業績評価,横断的な比較(同じ時期の他企業との比較),④「報酬」:業績志向,外部競争性である。「分析型」では,①「リクルート・選考と配置」:混合したリクルートと選考,②「スタッフ計画・トレーニングと開発」:公式かつ広範囲なスタッフ計画,スキルの構築と獲得,③「業績評価」:主にプロセス志向の手続き,個人/グループ/事業部の業績評価,主に時系列比較とある程度の横断的比較,③「業績評価」:主に階層志向,ある程度業績も考慮,④「報酬」:内部公平さと外部競争性である。
Wright & Snell(1991)はHRMを2つのマネジメント―コンピテンスマネジメントと行動マネジメント―としてとらえている。個人のコンピテンスと行動を区別することはオープンシステムとしてのHRMのインプットとスループット要因の違いに類似する。HRMシステムのインプット要因は従業員のスキル,知識,能力,モチーフなどで,それらがコンピテンスである。コンピテンスマネジメントはHRMのインプットのマネジメントに相当するし,行動マネジメントはHRMのスループットのマネジメントに相当するものである。
企業は必要なコンピテンスなしで戦略を効果的に実行することは困難である。また従業員が望ましい行動を提供しなければ,企業は従業員がもつ知識やスキルを十分に用いることはできない。コンピテンスと行動,双方を強調することによりHRM戦略が企業の戦略実行のために必要なコンピテンスと行動を管理するため,HRM戦略と結び付けられたHRM施策を確実に確保することができる。彼らはコンピテンスと行動をHRM戦略の構成要素にして,4つのコンピテンスマネジメント戦略,コンピテ
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ンス獲得戦略,コンピテンス活用戦略,コンピテンスリテンション戦略およびコンピテンス交代戦略と,2つの行動マネジメント戦略,行動コントロール戦略と行動調整戦略を開発した。
彼らはこれらの6つの戦略を Miles & Snow(1978)の戦略類型に結び付けている。「防御型」は効率的な生産に焦点をあてている。そのため標準化した行動と調整された行動を必要とするので,行動コントロール戦略と行動調整戦略を強調する。Miles & Snow(1984)によると,「防御型」は企業を効率的に機能させるのが重要なので,従業員に幅広いトレーニングを提供する。防御型は狭いかつ安定的な市場で機能するので,業績に基づく報酬システムと行動ベース評価を通じて従業員の行動をコントロールすることができる。また従業員の参加を通じてコンピテンス活用戦略を強調する。
「攻撃型」は製品ラインが大きく変化するのでコンピテンス獲得戦略,行動調整戦略およびコンピテンス交代戦略を強調する。攻撃型はダイナミックな環境で機能しているので,行動コントロール戦略よりも行動調整戦略を強調する。このことは結果志向の評価システムと事業部/企業業績ベースの評価によって行動調整を行う。
防御型とは対照的に,攻撃型はトレーニングよりも選考を通じてコンピテンスを獲得している。攻撃型のコンピテンス獲得戦略はメイク決定よりもバイ決定を通じて獲得する(Miles & Snow, 1984)。報酬がコンピテンス獲得活動をサポートする。製品市場の変化に対応するための新しいコンピテンスの獲得は,結果的には既存のコンピテンスを交代することを必要とする。「分析型」は防御型と攻撃型のハイブリッドであり,特定の製品市場に応じて戦略強
調を変える。分析型は新市場では攻撃型のように競争するし,成熟した市場では防御型のように競争する。新たに開拓した市場ではコンピテンス獲得戦略,コンピテンスリテンション戦略および行動調整戦略を強調する。新市場が成熟すると,行動コントロール戦略とコンピテンスリテンション戦略を強調する。分析型はコンピテンス活用戦略を強調する。コンピテンス活用戦略は柔軟性を提供するし,さらにコンピテンスリテンション戦略と連携すると,製品のライフサイクルすべての段階を通じて安定性を提供することができる。分析型はコンピテンスリテンションを追求しながら,製品ライフサイクルの異なる段階に応じてコンピテンスを正しく配分することを必要とする。
2.3 HRMと企業業績
2.3.1 HRMと企業業績の測定
(1)HRMの測定
Lado & Wilson(1994)によると,HRMシステムは組織にとって人的資源を構築する施策,ポリシーおよび哲学からなっている。Wright, Dunford, & Snell(2001)は,HRM 施策あるいは HRM システムを人的資本の獲得,開発,モチベーションを促進
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するし,またそれらが複雑な企業環境のなかで統合するとき,特有な資源を創出するものとしてとらえている。
Wright, Gardner, & Allen(2005)はHRMと組織アウトカムの関係を実証的に分析した68研究をレビューし,これらの多くの研究が説明変数として,人的資本という直接的な尺度でなく HRMシステムという尺度を採用しているものの,HRMシステムを異なったレベルで測定していると報告している。
Becker & Gerhart(1996)は,これらの異なるレベルを施策レベル,ポリシーレベルおよびアーキテクチャーレベルに分類しており,研究スタンスから,異なるレベルでの HRMシステムの測定は異なる含意があると主張する。施策レベルは HRMシステムの最も詳細なレベルでの測定である。たとえば,リクルートの際に使われる標準化されたインタビュー問題の使用のような非常に特定的なHRM施策による測定である。このレベルの測定はその詳細さのため,異なったコンテクストに適用する際にその一般化の度合いは最も低い。HRM システムの次の測定レベルはポリシーレベルである。このレベルは特定の施策の束で測定される。ここでの施策の束とは,たとえば,高度な知識やスキルをもつ従業員を採用することを意図した採用施策のセットである。このレベルは施策レベルほど特定的ではないものの,依然として,特定の施策に直接関連する。多様なデータセットにおけるこのレベルでの測定はその一般化はある程度制限される。HRMシステムが測定されるレベルで最も高いレベルは哲学レベルである。このレベルはある企業内における HRMと関連した原理,価値観あるいは哲学の測定を意味する。これらの価値観あるいは哲学は企業によって異なるが,一般的なものとして考えられる。他の2つのレベルよりもその一般化の度合いは最も高い。理論的には,HRM施策やHRMポリシーはHRM哲学から導かれる。このレベルの測定の例は,組織の文化とよくフィットする従業員を採用するという哲学である。このレベルの測定は高度な一般化が必要とされる状況において最も適切である。(2)業績の測定
被説明変数は一般的に業績アウトカムで測定する。業績アウトカムとは何かを理解するため,Dyer(1984)のSHRMモデルを検討する。
Dyer の SHRM モデルは HRM が異なるレベルで企業に影響を与えることを仮定する。このモデルは HRM が従業員に直接的に影響を与えるものから始まる。このHRMレベルでの測定尺度には職務満足,コミットメント,離職などがある。次のレベルは業務活動レベルである。このレベルではHRMシステムにより直接的に影響されないものの,HRMシステムが人々に影響を与え,人々が業務活動に影響を与える。このレベルでの測定尺度は品質,スピード,労働生産性,顧客サービスなどで,業務活動レベルの影響は財務アウトカムに続く。財務アウトカムレベルでの測定尺度には経常利益,売上高,ROA,ROEなどが含まれる。業務活動業績と財務業績に対する市場の反応は株価などの市場ベースの測定尺度に影響する。
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HRMは最初にHRMアウトカムに影響を与え,それが次に業務活動アウトカムに影響を与える。また業務活動アウトカムは財務アウトカムに影響する。多くの研究は財務業績に焦点をあてている(Dyer & Reeves,1995)。
2.3.2 HRMと企業業績の因果関係
SHRM 研 究 は HRM が 企 業 業 績 の 原 因 で あ る と 仮 定 し て い る。Wright et al.(2005)はHRMと企業業績に関する実証研究のレビューからこうした仮定には十分な根拠がないと指摘している。原因を推論するためには,次の3つの基準を満たすことが必要である。それらは原因変数と結果変数が共変すること,原因が結果より時間的に先行することおよび原因を代替的に説明する要因を排除することである。しかし Wright et al.(2005)は多くの実証研究が,共変基準に焦点をあてて,ほかの2つの基準は疎かにしていると指摘している4)。原因の時間的な先行の設定と原因以外のほかの説明要因を排除することなしでは,逆因果関係あるいは擬似関係のような研究結果の解釈は排除できない。
HRMシステムはその効果が現れるまでには長時間がかかるので,時間的先行と経時的分析により,因果関係を立証することは困難である。したがって,原因になりうる代替的な説明を排除することが必要となる。このことは研究プロセスにおいてコントロール変数や調整変数の適切な使用が必要であることを意味する。
2.4 組織戦略,HRMおよび企業業績の概念モデル
本研究の概念モデルは HRM 戦略/ HRM システムとその先行変数,組織戦略と,そのアウトカム変数,企業業績からなっている(図1)。この概念モデルはMiles & Snow(1978, 1984)の枠組みを用いて,「HRM戦略」はメイクとバイの2つのタイプを含む。「HRMシステム」は4つの下位機能,HRフロー,トレーニング,業績評価および報酬を含む。「組織戦略」は3つのタイプ―防御型,攻撃型および分析型―を含む。
「企業業績」は経常利益,売上高成長率および相対的企業業績を含むものである。本モデルは2つのセットからなっており,1つのセットは組織戦略とHRM戦略/
HRM システムの関係,もう1つのセットはHRM 戦略/ HRM システムと企業業績との関係である。組織戦略は HRM戦略/ HRMシステムに影響を与えるし,組織戦略は企業業績に影響を与える。またHRM戦略/ HRMシステムは企業業績に影響を与える。これらの2つのセットを統合すると,「HRM戦略/ HRMシステムが組織戦略を支持する,あるいは組織戦略と適切に結び付けている企業ほど,企業業績が優れている」と仮定することができる。
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図1 組織戦略,HRMおよび企業業績の概念モデル
3.方法
3.1 サンプル
本研究で使用したデータは,2005年4月から5月にかけて,愛知県所在の企業に対する質問紙調査(「人事戦略と人事システムの関連に関する調査」)から得られたものである。質問票は人事・労務担当役員に郵送され,また郵便で回収された。質問票の有効回答数は129社,有効回答回収率は16.5 %である。表2はサンプルを示す。
表2 サンプル
(N=129)
組織戦略
防御型戦略
攻撃型戦略
分析型戦略
企業業績
経常利益
売上高成長率
相対的企業業績
HRMシステム
HRフロートレーニング業績評価報酬
企業数(%)
業 種
製 造 業 58 (45.0%)
非製造業卸 売・ 小 売 業サ ー ビ ス 業建 設 業
18 (14.0%) 28 (21.7%) 25 (19.4%)
企 業 規 模
30 ~ 99 人 100 ~ 299 人 300 ~ 999 人 1000 人以上
49 (38.0%) 42 (32.6%) 19 (14.7%) 19 (14.7%)
企 業 年 齢
0 ~ 9 年 10 ~ 29 年 30 ~ 49 年 50 年以上
4 (3.1%) 19 (14.7%) 44 (34.1%) 62 (48.1%)
組織戦略,HRMおよび企業業績
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サンプルの属性は次の通りである。業種別には製造業が 45.0%,卸売・小売業14.0%,サービス業21.7%, 建設業19.4% である。企業規模別には30人以上300人未満が70.6%,300人以上1,000人未満が14.7%,1,000人以上が14.7%である。企業年齢別には30年未満が17.8%,30年以上50年未満が34.1%,50年以上が48.1%である。
3.2 測定尺度
①組織戦略
「組織戦略」はMiles & Snow(1978)の事業戦略類型に基づくもので,防御型=1,分析型=2,攻撃型=3で測定し,その点数が多いほど「攻撃志向型戦略」である。②HRM戦略/ HRMシステム
HRM 施策12項目を用い,「HRM 戦略」と「HRM システム」を測定した。HRM 施策の12項目は次の通りである。
5-1 「我が社は,欠員が出たとき,通常,企業の外から人員を補充する」5-2 「我が社は明確なキャリアパスあるいはキャリアプランがある」5-3 「我が社は社員の職務範囲を明確に決めている」5-4 「我が社はすべての社員に対して充実した教育プログラムを提供している」5-5 「我が社が提供する公式的な教育訓練プログラムは社員の昇進可能性を高
めるものである」5-6 「我が社は会社の方針や経営情報を知る機会を社員に提供している」5-7 「我が社の人事考課の目的は社員の業績を向上させることにある」5-8 「我が社の人事考課は客観的で量的に測定可能な成果・業績のみに基づく」5-9 「我が社は人事考課の評価基準や評価結果を公開している」5-10 「我が社は評価に対する不満の申し出や救済の機会を社員に提供している」5-11 「我が社の給料のレベルは同業他社より高い」5-12 「我が社の福利厚生のレベルは同業他社より高い」
③企業業績
企業業績尺度として客観的尺度―「経常利益」と「売上高成長率」―と主観的尺度―「相対的企業業績」―の2種類を使用した。「経常利益」は「最近3年間(2002年度~2004年度)経常利益」で,赤字の年はなかった=3,1年だけ赤字の年があった=2,2年赤字の年があった=1,3年間赤字だった= 0で測定した。「売上高成長率」は最近3年間の売上高成長率を,回答者に年度ごとに記入させ,3年間の平均値で測定した。「相対的企業業績」は最近3年間の経常利益が同業他社を上回っている=2,同じ程度=1,下回っている=0で測定した。④コントロール変数
コントロール変数として企業規模,企業年齢,業種および組合を使用した。「企業規
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模」と「企業年齢」は,対数変換した数値を用いた。「業種」は製造業=1,非製造業=0,「組合」は有り=1,なし=0で測定した。
4.分析結果
4.1 変数間の相関
表3には,変数の平均値と標準偏差,項目数およびα係数が示されている。
表3 記 述 統 計
表4は相関分析の結果を示す。「HRMシステム」と「企業規模」の間には,有意な正の相関( r = 0.299,p <0.01)がある。「HRフロー」と「企業規模」の相関は有意な正( r= 0.196,p < 0.05)であり,「トレーニング」と「企業規模」は有意な正の関係( r =0.209,p <0.05)がある。「HRフロー」と「企業年齢」は有意な負の相関( r=-0.230, p <0.05)がある。「企業規模」と「企業年齢」の相関は,有意な正( r=0.215,p <0.05)である。「トレー
ニング」と「業績評価」の相関は有意な負の関係( r=- 0.306,p < 0.01)であり,「トレーニング」と「報酬」の相関は有意な正の関係( r = 0.209,p < 0.05)である。「組織戦略」と「HRMシステム」の相関は,有意な正の関係(r=-0.237,p<0.01)であり,
「組織戦略」と「HRフロー」の相関は有意な正の関係(r=0.152,p<0.10)である。「組織戦略」と「トレーニング」の相関は有意な正の関係(r=0.237,p<0.01)であり,「組織戦略」と「報酬」の相関は有意な正の関係(r=0.197,p< 0.05)である。
変 数 平均値 標準偏差 項目数 α係数
組織戦略防御型戦略攻撃型戦略分析型戦略
0.3020.2330.434
0.4610.4240.498
111
---
HRM システムHR フロートレーニング業績評価報 酬
- 0.2650.5750.0290.168
0.6390.7440.6530.748
3342
0.300.730.610.62
企業業績経常利益売上高成長率相対的企業業績
0.7970.0190.238
0.5080.0970.586
111
---
企業規模 2.273 0.525 1 -
企業年齢 3.720 0.566 1 -
組織戦略,HRMおよび企業業績
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表4
相
関分
析の
結果
変
数
12
34
56
78
910
1
企業
規模
1.00
0
2
企業
年齢
0 .21
5*1.
000
3
HR
Mシ
ステ
ム0.
299*
*-
0.16
0+1.
000
4
HR
フロ
ー0.
196*
-0.
230*
0.52
0**
1.00
0
5
トレ
ーニ
ング
0.20
9*-
0.06
10.
536*
*0.
071.
000
6
業績
評価
0 .07
1-
0.05
30.
247*
*0.
001
-0.
306*
*1.
000
7
報
酬0 .
117
0.00
60.
641*
*0.
043
0.20
9*-
0.06
01.
000
8
組織
戦略
0.11
1-
0.07
70.
277*
*0.
152+
0.23
7**
-0.
056
0.19
7*1.
000
9
経常
利益
0 .17
0+0.
053
0.10
20.
088
0.14
6+-
0.06
00.
022
0.00
71.
000
10
売上
高成
長率
-0 .
113
-0.
173*
0.07
2-
0.01
80.
112
-0.
099
0.12
40.
274*
*0.
158+
1.00
0
11
相対
的企
業業
績-
0.05
3-
0.12
10.
289*
*0.
111
0.08
3-
0.01
00.
370*
*0.
210*
0.18
8*0.
150+
+:
p<
0.10
,*:
p<
0.05
,**
: p<
0.0
咸 惠 善
― 244 ―
「HRMシステム」と「相対的企業業績」の間には,有意な正の関係(r= 0.289,p<0.01)があり,「報酬」と「相対的企業業績」の相関は有意な正(r=0.370,p<0.01)である。「トレーニング」と「経常利益」は有意な正の関係(r=0.146,p<0.10)である。
「組織戦略」と「売上高成長率」の相関は有意な正の関係(r=0.274,p<0.01)であり,「組織戦略」と「相対的企業業績」の相関は有意な正の関係(r= 0.210,p< 0.05)である。「経常利益」と「売上高成長率」の相関は有意な正の関係(r= 0.158,p< 0.10)であり,「経常利益」と「相対的企業業績」の相関は有意な正の関係(r=0.188,p<0.05)である。また,「売上高成長率」と「相対的企業業績」の相関は,有意な正の関係(r =0.15,p<0.10)である。
4.2 HRM施策の因子分析
HRM施策12項目を使用して因子分析を行った。主因子法によって4つの因子を抽出した後,バリマクス回転を行った。その結果は表5に示されており,4つの因子までで分散の58.4%が説明された。
表5 HRMシステムに対する因子負荷量 ab
これらの4つの因子各々について,第1因子は HRM 次元の1つである,内部配置(リクルート,キャリアパス,内部昇進)に関する項目の因子負荷量が高いことから「HRフロー」と名づけた。第2因子は,内部昇進をサポートするトレーニングに関する項目の因子負荷量が高いことから「トレーニング」と名づけた。第3因子は,業績評
因子1:HRフロー
因子2:トレーニング
因子3:業績評価 因子4:報酬
HRフロー 1 [0.838] 0.114 -0.023 0.084HRフロー 2 [0.425] 0.252 -0.287 0.150HRフロー 3 [0.562] -0.373 0.354 -0.195
トレーニング1 0.045 [0.829] -0.121 0.087トレーニング2 0.121 [0.837] 0.035 0.088トレーニング3 -0.054 [0.664] -0.051 0.052
業績評価1 -0.153 -0.373 [0.308] -0.034業績評価2 0.233 0.090 [0.686] -0.050業績評価3 -0.104 -0.056 [0.755] 0.085業績評価4 -0.155 -0.416 [0.635] -0.043
報酬1 0.141 0.078 -0.078 [0.826]報酬2 -0.052 0.102 0.073 [0.846]
固有値 3.004 1.528 1.303 1.176
注:a 因子抽出方法:主因子法 b 回転方法:バリマクス回転
組織戦略,HRMおよび企業業績
― 245 ―
価に関する項目(評価の目的と基準,苦情処理)の因子負荷量が高いことから「業績評価」と名づけた。第4因子は,この因子に対する因子負荷量の高い項目が報酬(福利厚生も含む)に関するものなので「報酬」と名づけた。HRMの4つの指標「HRフロー」
「トレーニング」「業績評価」および「報酬」の値は因子1から因子4までの各々に属する項目の平均値でもとめた。これらの4つの変数の平均を「HRMシステム」の値として用いた5)。HRMシステムの値が多いほどメイクHRM戦略,低いほどバイHRM戦略であると解釈可能である。
4.3 組織戦略タイプ別の比較
企業を事業戦略タイプ別に,防御型(39社),攻撃型(30社)および分析型(56社)に分類して,防御型と攻撃型の変数の平均値の比較,防御型と分析型の変数の平均値を比較した。その結果をまとめたものが表6である。表6によると,防御型の平均値と攻撃型の平均値の間に有意差が認められた変数は「HRM システム」(- 0.024,0.226;p<0.01),「HRフロー」(-0.380,-0.122;p<0.10),「トレーニング」(0.278, 0.733;p< 0.01),「売上高成長率」(- 0.018,0.034;p< 0.05)および相対的企業業績(0.053, 0.500;p< 0.01)である。
防御型の平均値と分析型の平均値の間に有意差が認められた変数は「HRMシステム」(- 0.024,0.189;p< 0.01),「トレーニング」(0.278,0.714;p< 0.01),「報酬」
(-0.024, 0.226;p<0.01)および「売上高成長率」(-0.018,0.030;p<0.01)である。こうした分析から組織の事業戦略が異なれば,HRM戦略/システムも異なること
が一部確認された。
4.4 組織戦略のHRM戦略/システムへの効果
組織戦略が,HRM システムにどのような効果を与えるのかを分析するため,次のような階層的回帰分析を行った。表7はその結果を示している。HRM システムと4つのHRM 指標を被説明変数として,第1段階ではコントロール変数(企業規模,企業年齢,業種および組合)がモデルに投入された。第2段階では組織戦略変数が投入された。増分R2は第2段階で投入されたモデルの説明力の増分を表す。
HRM システムが被説明変数である(5-2)におけるモデルの説明力の増分 R2(ΔR2= 0.048)は有意であり(F = 7.14,p< 0.01),このことはコントロール変数を越えて,事業戦略がHRM戦略/システムに有意な影響を与えていることを意味する。さらに,4つのHRM指標に対する分析結果において,「組織戦略」の投入が有意な増分R2を与えるのは(2-2)トレーニング(ΔR2= 0.042,F= 5.55,p= 0.02)と(4-2)報酬(ΔR2= 0.033,偏F値= 4.12,p= 0.045)であった。こうした分析結果から,組織戦略はHRM戦略/システムの重要な規定要因の1つであることが確認できた。
咸 惠 善
― 246 ―
表6 組織戦略タイプ別変数の平均値の比較
防御型戦略 攻撃型戦略 a 分析型戦略 b
コントロール変数企業規模 2.207 2.363 2.295企業年齢 3.779 3.661 3.727業種ダミー 0.538 0.567 0.321*組合ダミー 0.333 0.367 0.214
HRM システム - 0.024 0.226** 0.189**
HR フロー - 0.380 - 0.122+ - 0.263HR フロー 1 - 0.269 - 0.100 - 0.132HR フロー 2 - 0.474 0.000* - 0.156+HR フロー 3 - 0.397 - 0.267 - 0.500
トレーニング 0.278 0.733* 0.714**トレーニング 1 - 0.038 0.400+ 0.500**トレーニング 2 - 0.141 0.333* 0.179+トレーニング 3 1.013 1.467* 1.464*
業績評価 0.115 0.025 0.000業績評価 1 - 0.372 - 0.333 - 0.357業績評価 2 0.192 0.033 0.107業績評価 3 0.397 0.500 0.214業績評価 4 0.244 - 0.100 0.036
報 酬 - 0.108 0.267+ 0.301**報酬 1 - 0.013 0.333 0.334*報酬 2 - 0.202 0.200 0.268*
企業業績経常利益 0.763 0.767 0.821売上高成長率 - 0.018 0.034* 0.030**相対的企業業績 0.053 0.500** 0.232
注: a 防御型戦略と攻撃型戦略の平均値の有意差, b 防御型戦略と分析型戦略の平均値の有意差を示す。 +: p < 0.10,*: p < 0.05,**: p < 0.01
組織戦略,HRMおよび企業業績
― 247 ―
表7
H
RM
を被
説明
変数
とし
た階
層的
回帰
分析
の結
果ab
変
数
HR
フロ
ート
レー
ニン
グ業
績評
価報
酬H
RM
シス
テム
(1
-1
)(
2-
1)
(2
-1
)(
2-
2)
(3
-1
)(
3-
2)
(4
-1
)(
4-
2)
(5
-1
)(
5-
2)
Inte
rcep
t0.
177
0.01
40.
275
-0.
150.
205
0.33
10.
067
-0.
308
0.18
1-
0.02
8(
0 .39
1)-
0.41
6-
0.50
1-
0.52
4-
0.44
5-
0.47
5-
0.51
-0.
536
-0.
219
-0.
227
コン
トロ
ール
変数
企業
規模
0.40
1**
0.38
4**
0.36
3*0.
319*
0.07
60.
089
0.16
50.
126
0.25
1**
0.22
9**
(0.
110)
(0.
111)
(0.
140)
(0.
139)
(0.
125)
(0.
126)
(0.
143)
(0.
142)
(0.
061)
(0.
060)
企業
年齢
-0 .
343*
*-
0.33
0**
-0.
126
-0.
094
-0.
096
-0.
106
-0.
095
-0.
066
-0.
165*
*-
0.14
9**
(0.
100)
(0.
101)
(0.
128)
(0.
127)
(0.
114)
(0.
115)
(0.
130)
(0.
130)
(0.
056)
(0.
055)
業種
ダミ
ー-
0 .05
8-
0 .06
3-
0.05
0-
0.06
20.
049
0.05
30.
112
0.10
10.
013
0.00
7(
0 .11
1)(
0.11
1)(
0.14
3)(
0.14
0)(
0.12
7)(
0.12
7)(
0.14
5)(
0.14
3)(
0.06
2)(
0.06
1)
組合
ダミ
ー-
0 .19
4-
0 .18
9-
0.09
9-
0.08
70.
007
0.00
40.
092
0.10
3-
0.04
8-
0.04
2(
0 .12
6)(
0.12
5)(
0.16
1)(
0.15
8)(
0.14
3)(
0.14
3)(
0.16
4)(
0.16
2)(
0.07
0)(
0.06
9)
組織
戦略
0 .08
10.
210*
-0.
062
0.18
6*0.
104*
*(
0.07
1)(
0.08
9)(
0.08
1)(
0.09
1)(
0.03
9)
R2
0.16
90 .
178
0.05
90.
101
0.00
80 .
013
0.02
60 .
058
0.15
90 .
206
F6.
115.
161.
892.
680.
250.
320.
791.
475.
666.
18df
12
0
119
12
0
119
12
0
119
12
0
119
12
0
119
ΔR
20.
009
0.04
20.
005
0.03
20.
048
Part
ial F
1.29
5.55
*0.
594.
12*
7.14
**
注:
a モ
デル
1で
は,
コン
トロ
ール
変数
だけ
が投
入さ
れて
いる
。モ
デル
2に
は,
コン
トロ
ール
変数
に主
要変
数が
投入
され
てい
る。
(
)内
の数
字は
標準
誤差
であ
る。
b
HRM
シス
テム
は,(
HR
フロ
ー+
トレ
ーニ
ング
+業
績評
価+
報酬
)/4
で算
出し
た。
+:p<
0.10
,*:
p<0.
05,
**:
p<0.
01
咸 惠 善
― 248 ―
4.5 企業業績に対するHRM戦略/システムと組織戦略の効果
3つの被説明変数―「経常利益」,「売上高成長率」および「相対的企業業績」―に対する HRMシステムと組織戦略の効果を分析した結果をまとめたものが,表8から表10に示されている。
表8は「経常利益」を被説明変数とした階層的回帰分析の結果である。モデル(6-1)はコントロール変数(企業規模,企業年齢,業種および組合)を投入したものである。コントロール変数のうち,企業規模のみが「経常利益」に有意な正の効果を与える。モデル(6-2)はコントロール変数に加えて,HRMシステムを投入したものである。HRM戦略/システムは有意な効果を与えていない。しかし企業規模は「経常利益」に有意な正の効果を与える。モデル(6-3)は,コントロール変数,HRM戦略/システム,組織戦略を順次に投入したものである。企業規模のみが「経常利益」に有意であった。モデル(6-4)はコントロール変数に,HRMシステムのかわりに4つのHRM指標を投入したものである。モデル(6-5)はコントロール変数,4つのHRM指標,組織戦略を順次に投入したものである。両方のモデルともに有意な変数はなかった。
表9は「売上高成長率」を被説明変数とした階層的回帰分析の結果である。モデル(7-3)はコントロール変数,HRM戦略/システム,組織戦略を順次に投入したものである。モデル(7-3)では組織戦略のみが「売上高成長率」に有意な効果と有意な増分R2( F = 4.64,p= 0.033)をもつ。モデル(7-4)はコントロール変数に,4つのHRM指標を投入したものである。「売上高成長率」に有意な効果を与える変数はない。モデル(7-5)はコントロール変数,4つのHRM 指標,組織戦略を順次に投入したものである。モデル(7-5)では組織戦略が「売上高成長率」に有意な効果と有意な増分R2( F = 3.75,p= 0.055)をもつ。組織戦略のみが「売上高成長率」に有意な効果を与えるのが確かめられた。
表10は「相対的な企業業績」を被説明変数とした階層的回帰分析の結果である。モデル(8-1)はコントロール変数のみが投入されたものである。モデル(8-2)はコントロール変数に加えて,HRMシステムを投入したものである。HRMシステムは有意な正の効果と有意な増分R2(F= 10.22,p< 0.01)をもつ。モデル(8-3)はコントロール変数,HRMシステム,組織戦略を順次に投入したものである。HRMシステムと組織戦略が「相対的企業分析」に有意な正の効果と有意な増分R2(F=5.96,p=0.016)をもつ。モデル(8-4)はコントロール変数に,4つの HRM 指標を投入したものである。報酬のみが「相対的企業業績」に正の効果と有意な増分R2(F= 4.99,p< 0.01)をもつ。モデル(8-5)はコントロール変数,4つの HRM指標,組織戦略を順次に投入したものである。報酬と組織戦略が有意な効果と有意な増分R2(F=5.94,p=0.016)をもつ。「相対的な企業業績」に有意な効果を与えるのはHRMシステム(4つのHRM指標のうち,とくに報酬)と組織戦略であることが確認された。
組織戦略,HRMおよび企業業績
― 249 ―
表8
経
常利
益を
被説
明変
数と
した
回帰
分析
の結
果
変
数
(6
-1
)(
6-
2)(
6-
3)(
6-
4)(
6-
5)
Inte
rcep
t0.
260
(0.
376)
0.22
3(
0.38
1)0.
273
(0.
414)
0.20
1(
0.38
5)0.
272
(0.
418)
コン
トロ
ール
変数
企業
規模
0 .22
8*(
0.09
9)0.
200+
(0.
108)
0.2
04+
(
0.10
9) 0
.181
(0.
112)
0.1
85(
0.11
3)企
業年
齢0 .
016
(0.
104)
0.03
9(
0.11
1) 0
.034
(0.
112)
0.0
50(
0.11
4) 0
.043
(0.
115)
業種
ダミ
ー-
0.00
2(
0.09
8)-
0.00
4(
0.09
9)-
0.00
2(
0.09
9) 0
.004
(0.
100)
0.0
07(
0.10
0)組
合ダ
ミー
-0.
169
(0.
111)
-0.
166
(0.
111)
-0.
166
(0.
112)
-0.
155
(0.
113)
-0.
155
(0.
114)
HR
Mシ
ステ
ム0.
095
(0.
147)
0.1
05(
0.15
0)
HR
フロ
ー 0
.040
(0.
081)
0.04
4(
0.08
2)
トレ
ーニ
ング
0.0
77(
0.07
0) 0
.082
(0.
071)
業績
評価
-0 .
016
(0.
076)
-0.
015
(0.
076)
報
酬-
0 .01
0(
0.06
4)-
0.00
6(
0.06
4)
組織
戦略
-0 .
021
(0.
066)
-0.
030
(0.
067)
R2
0.05
10.
055
0.05
60.
066
0.06
8F
1.61
1.37
1.15
1.02
0.92
df
119
11
8
117
11
5
114
ΔR
2-
0.00
30.
001
0.01
50.
002
Part
ial F
-0.
410.
11-
0.46
0.21
+: p
<0.
10,
*:p<
0.05
,**
:p<
0.01
咸 惠 善
― 250 ―
表9
売
上高
成長
率を
被説
明変
数と
した
回帰
分析
の結
果
変
数
(7
-1)
(7
-2)
(7
-3)
(7
-4)
(7
-5)
Inte
rcep
t0.
124+
(0.
064)
0.11
8+(
0.06
4)0.
069
(0.
067)
0.12
2+(
0.06
4)0.
078
(0.
067)
コン
トロ
ール
変数
企業
規模
-0 .
009
(0.
018)
-0.
017
(0.
019)
-0.
019
(0.
019)
-0.
014
(0.
020)
-0.
015
(0.
019)
企業
年齢
-0 .
022
(0.
016)
-0.
016
(0.
017)
-0.
015
(0.
017)
-0.
021
(0.
017)
-0.
019
(0.
017)
業種
ダミ
ー-
0.00
02(
0.01
8)-
0.00
0(
0.01
8)-
0.00
2(
0.01
8)-
0.00
1(
0.01
8)0.
003
(0.
018)
組合
ダミ
ー-
0.02
3(
0.02
1)-
0.02
1(
0.02
1)-
0.02
0(
0.02
0)-
0.02
4(
0.02
1)-
0.02
3(
0.02
1)
HR
Mシ
ステ
ム0.
032
(0.
027)
0.01
8(
0.02
7)
HR
フロ
ー-
0.00
3(
0.01
5)-
0.00
6(
0.01
5)
トレ
ーニ
ング
0 .01
1(
0.01
3)0.
007
(0.
013)
業績
評価
-0 .
010
(0.
014)
-0.
011
(0.
014)
報
酬0 .
018
(0.
012)
.0.
014
(0.
012)
組織
戦略
0 .02
5*(
0.01
2)0.
023+
(0.
012)
R2
0.04
00.
052
0.08
80.
081
0.11
0F
1.26
1.30
1.89
1.28
1.58
df
120
11
9
118
11
6
115
ΔR
2-
0.01
20.
036
0.04
10.
029
Part
ial F
-1.
444.
64*
1.29
3.75
+
+:
p<
0.10
,*:
p<0.
05,
**:
p<0.
01
組織戦略,HRMおよび企業業績
― 251 ―
表10
相
対的
企業
業績
を被
説明
変数
とし
た回
帰分
析の
結果
変
数
(8
-1)
(8
-2)
(8
-3)
(8
-4)
(8
-5)
Inte
rcep
t0.
843+
(0.
445)
0.61
0(
0.43
4)0.
221
(0.
454)
0.72
1+(
0.42
5)0.
341
(0.
444)
コン
トロ
ール
変数
企業
規模
-0 .
015
(0.
116)
-0.
126
(0.
121)
-0.
193
(0.
119)
-0.
101
(0.
121)
-0.
127
(0.
119)
企業
年齢
-0 .
145
(0.
123)
-0.
011
(0.
125)
0.0
23(
0.12
4)-
0.06
5(
0.12
5)-
0.03
1(
0.12
3)業
種ダ
ミー
-0.
053
(0.
115)
-0.
069
(0.
111)
-0.
079
(0.
109)
-0.
088
(0.
109)
-0.
100
(0.
107)
組合
ダミ
ー-
0.00
6(
0.12
9)0.
012
(0.
125)
0.0
09(
0.12
2)-
0.02
8(
0.12
3)-
0.03
2(
0.12
0)
HR
Mシ
ステ
ム0.
528*
*(
0.16
5) 0
.436
**(
0.16
6)
HR
フロ
ー 0
.055
(0.
089)
0.03
6(
0.08
7)
トレ
ーニ
ング
0.0
06(
0.07
7)-
0.02
9(
0.07
7)
業績
評価
0.0
05(
0.08
3) 0
.006
(0.
081)
報
酬 0
.298
**(
0.06
9) 0
.275
**(
0.06
8)
組織
戦略
0 .17
9*(
0.07
3)0.
177*
(0.
072)
(0.
012)
R2
0.02
20.
101
0.14
50.
169
0.21
1F
0.66
2.61
3.26
2.86
3.32
df
117
11
6
115
11
3
112
ΔR
2-
0.07
90.
044
0.14
70.
042
Part
ial F
-10
.22*
*5.
96*
4.99
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94*
+: p
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10,
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0.05
,**
:p<
0.01
咸 惠 善
― 252 ―
5.考察
HRM戦略/ HRMシステムとその先行変数,組織戦略と,そのアウトカム変数,企業業績からなる概念モデルを設定し,質問紙調査(「人事戦略と人事システムの関連に関する調査」)から得られたデータを用いて,組織戦略がHRM戦略/ HRMシステムにどのような影響を与えるのか,またHRM戦略/ HRMシステムと組織戦略は企業業績にどのような影響を与えるのかを分析してきた。分析結果をまとめると,次の通りである。
第1に,調査対象企業を事業戦略タイプ別に分類して,防御型と攻撃型の各変数の平均値の比較,防御型と分析型の各変数の平均値を比較した結果,「HRM システム」については防御型の平均値と攻撃型の平均値の間に有意差が認められ,同じく防御型の平均値と分析型の平均値の間に有意差が認められた。こうした分析結果から,企業の事業戦略が異なれば,HRM戦略/ HRMシステムも異なることが一部確認できた。
第2に,組織戦略のHRM 戦略/システムへの効果を分析するため,HRM 戦略/システムを被説明変数とした階層的回帰分析を行った。事業戦略(「攻撃志向型」)がHRM戦略/システムに有意な正の効果を与えているのが確かめられた。
第3に,企業業績に対する HRM戦略/ HRMシステムと組織戦略の効果を分析するためには,「経常利益」,「売上高成長率」および「相対的企業業績」各々を被説明変数とした階層的回帰分析を行った。①「経常利益」を被説明変数とした階層的回帰分析を行った結果,企業規模のみが「経常利益」に有意な正の効果を与えているのがわかった。②「売上高成長率」を被説明変数とした階層的回帰分析の結果から,組織戦略のみが「売上高成長率」に有意な効果を与えるのが確かめられた。③「相対的な企業業績」を被説明変数とした階層的回帰分析の結果,「相対的な企業業績」に有意な効果を与えるのは HRMシステム(4つのHRM指標のうち,とくに報酬)と組織戦略であることが確認された。
以上の分析結果から,組織の事業戦略が HRM戦略/ HRMシステムに有意な影響を与えるのが確かめられた。しかしながら,HRM 戦略/ HRM システムと組織戦略は企業業績に対しては部分的に影響を与えるのがわかった。本研究では組織戦略がHRM戦略/ HRMシステムに直接的に効果を与えることは確認できたが,因果関係を確かめるのは今後の課題である。
本研究では攻撃志向型戦略を実行する企業ほど,メイクHRM戦略/ HRMシステムをもつ傾向があるという分析結果を得ている。Miles & Snow(1984)の事業戦略類型とHRM戦略の結び付きでは攻撃型はバイ HRM戦略と結び付いている。その理由の1つとして,本研究のサンプル(129社)の約70%が従業員30人以上300人未満の中小企業であることが考えられる。これについてはさらなる分析が必要である。
組織戦略,HRMおよび企業業績
― 253 ―
[付記] 本研究は,2004年度中部大学産業経済研究所研究助成金による研究成果の一部で
ある。
注
1) Wright & McMahan(1992)は,HRM研究に用いられた理論をレビューしている。それら
は資源ベース理論,行動科学理論,サイバネティク・システム理論,エイジェンシー/取引コ
スト理論,資源依存/パワーモデル,制度理論である。最初からの4つの理論は HRMについ
ての戦略的理論であるが,後の2つの理論は非戦略的理論である。
2) Bird & Beechler(1994)は,Miles & Snow(1978)の戦略類型を用い,アメリカに所在する
日系子会社を調査対象にして,事業戦略と HRM戦略がマッチしている企業はそうでない企
業よりも企業業績がより優れているという分析結果を報告している。彼らは攻撃型と活用者,
防御型と蓄積者,分析型と促進者をマッチさせている。
3) Schuler(1987)は戦略的観点から HRM 施策の規定要因を分析する際に,Porter(1980,
1985)の戦略類型を3つのHRM 戦略に結び付けている。コスト戦略,品質戦略,イノベー
ション戦略各々を活用哲学,蓄積哲学,促進哲学にマッチさせている。
4) Wright , Gardnern, Moynihan, & Allen(2005)はHRMと業績との関係をテストする実証
研究68のうち,8つだけが,結果変数業績を測定する以前に原因変数HRMを測定しており,
その他の研究は原因変数HRMと結果変数業績を同じ時点で測定していると報告している。
5) 本論文では「HRMシステム」は合成変数(composite variable)であり,HRMをシステムと
してとらえて分析する際には,2つの分析方法―クラスター分析と因子分析―があるが,本
論文は因子分析を用いている。
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