皮膚悪性リンパ腫について - med...− 76 − 宮崎医会誌 第36巻 第2号 2012年9月...

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73 宮崎医会誌 2012 ; 36 : 73-82. 総  説 はじめに 悪性リンパ腫は免疫担当細胞あるいはその前駆細 胞の腫瘍である。従って個々の悪性リンパ腫は免疫 システム担当細胞の個々の分化段階における様々な 形態,機能を備えているとみなされる。さらにその 診断および分類については純粋形態学的分類法から ポリクローナルないしモノクローナル抗体を用いた 免疫組織化学的検索に加え,染色体検査や分子生物 学的検査などの新しい手法が導入された結果,発生 学的側面,機能的側面からのより詳細な解析が可能 になり,様々な分類法が相次いで提唱された。 さて皮膚原発のリンパ腫であるが,その分類につ いては2000年に発表されたWHO分類に先立つ1997 年のEORTC分類 1) ,次いでWHO分類(2000)との 整合性を持たせるべく発表された2005年のWHO- EORTC分類 2) がある。何を以て皮膚原発とするか については少々変遷があったが,現在では“診断時 に皮膚以外の他臓器に病変がないもの”としている。 FDG-PETをはじめとしてMRI,CTなどの画像検査 の進歩がそれを可能にしたといえる。さらに2008 年には新WHO 分類が発表された(表1) 3) 。病型 診断についてはこれでほぼコンセンサスが得られ, 皮膚科医以外の臨床医にとっても理解しやすい分類 になっている。図1に様々な臨床像を呈する皮膚原 発のリンパ腫を示す。 疫学的事項 皮膚は悪性リンパ腫の好発部位であり,うちT細 胞性リンパ腫が75%程度をしめる 2) 。米国のNCIの 疫学調査(1973-2002) 4) によれば,原発性皮膚リ ンパ腫は毎年100万人に対し6.4例の発生が見られ, その中で代表的なT細胞リンパ腫である菌状息肉症 (mycosis fungoides, MF)は,皮膚リンパ腫の約 72%を占めている。また日本全国からアンケートで 集めた調査 5) によれば,皮膚リンパ腫1942例中T/ NK 細胞リンパ腫が1654例(85.2%),うちMFが 754例(約39%)を占めていた。また成人T細胞白 血病・リンパ腫(ATLL)は294例(15.1%)を示し ていた。鹿児島・宮崎における自験例では圧倒的に 成人T細胞白血病・リンパ腫が多く見られ,MFの 約3倍の発生数を示している(未発表)のと好対照 であった。一方B細胞リンパ腫は287例(14.8%)で 米国のそれ(28%) 6) と比べると低い。 病期分類について 臨床病期分類 病期分類の意義は悪性リンパ腫に限らず,全ての 悪性腫瘍で病期の進行とともに予後は悪化するとい う事実に基づいており,治療に際しては正確に病期 を把握し,それに基づいた治療法を選択することが 欠かせない。病期の決定については皮膚病変,表在 性リンパ節,肝脾腫の視診,触診がまず重要である。 さらにPET,CT,MRI,エコー検査,ガリウムシ ンチグラフィーなどによる画像診断,骨髄穿刺,生 検による内臓各臓器への進展の有無を検討する。さ らに消化管検査も必要である。 MFの病期分類については,従来,Bunnないし Sauseville 7) の病期分類が用いられてきたが近年の 生物学,診断学的技術の進歩により,きめ細かい情 報が得られるようになってきた。そこでこれらの情 報を織り込んで,2007年,従来の病期分類に改訂が 為された(図2,表2,3) 8) 。またMF/Sézary 症候 群以外の皮膚リンパ腫についても,従来用いられて 宮崎大学医学部感覚運動医学講座皮膚科学分野 皮膚悪性リンパ腫について 瀬戸山 充 〔平成24年7月27日入稿,平成24年8月1日受理〕

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宮崎医会誌 2012 ; 36 : 73-82.

総  説

は じ め に

 悪性リンパ腫は免疫担当細胞あるいはその前駆細胞の腫瘍である。従って個々の悪性リンパ腫は免疫システム担当細胞の個々の分化段階における様々な形態,機能を備えているとみなされる。さらにその診断および分類については純粋形態学的分類法からポリクローナルないしモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検索に加え,染色体検査や分子生物学的検査などの新しい手法が導入された結果,発生学的側面,機能的側面からのより詳細な解析が可能になり,様々な分類法が相次いで提唱された。 さて皮膚原発のリンパ腫であるが,その分類については2000年に発表されたWHO分類に先立つ1997年のEORTC分類1),次いでWHO分類(2000)との整合性を持たせるべく発表された2005年のWHO-EORTC分類2)がある。何を以て皮膚原発とするかについては少々変遷があったが,現在では“診断時に皮膚以外の他臓器に病変がないもの”としている。FDG-PETをはじめとしてMRI,CTなどの画像検査の進歩がそれを可能にしたといえる。さらに2008 年には新WHO 分類が発表された(表1)3)。病型診断についてはこれでほぼコンセンサスが得られ,皮膚科医以外の臨床医にとっても理解しやすい分類になっている。図1に様々な臨床像を呈する皮膚原発のリンパ腫を示す。

疫学的事項

 皮膚は悪性リンパ腫の好発部位であり,うちT細胞性リンパ腫が75%程度をしめる2)。米国のNCIの疫学調査(1973-2002)4)によれば,原発性皮膚リ

ンパ腫は毎年100万人に対し6.4例の発生が見られ,その中で代表的なT細胞リンパ腫である菌状息肉症

(mycosis fungoides, MF)は,皮膚リンパ腫の約72%を占めている。また日本全国からアンケートで集めた調査5)によれば,皮膚リンパ腫1942例中T/NK 細胞リンパ腫が1654例(85.2%),うちMFが754例(約39%)を占めていた。また成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)は294例(15.1%)を示していた。鹿児島・宮崎における自験例では圧倒的に成人T細胞白血病・リンパ腫が多く見られ,MFの約3倍の発生数を示している(未発表)のと好対照であった。一方B細胞リンパ腫は287例(14.8%)で米国のそれ(28%)6)と比べると低い。

病期分類について

 臨床病期分類 病期分類の意義は悪性リンパ腫に限らず,全ての悪性腫瘍で病期の進行とともに予後は悪化するという事実に基づいており,治療に際しては正確に病期を把握し,それに基づいた治療法を選択することが欠かせない。病期の決定については皮膚病変,表在性リンパ節,肝脾腫の視診,触診がまず重要である。さらにPET,CT, MRI,エコー検査,ガリウムシンチグラフィーなどによる画像診断,骨髄穿刺,生検による内臓各臓器への進展の有無を検討する。さらに消化管検査も必要である。 MFの病期分類については,従来,BunnないしSauseville7)の病期分類が用いられてきたが近年の生物学,診断学的技術の進歩により,きめ細かい情報が得られるようになってきた。そこでこれらの情報を織り込んで,2007年,従来の病期分類に改訂が為された(図2,表2,3)8)。またMF/Sézary 症候群以外の皮膚リンパ腫についても,従来用いられて宮崎大学医学部感覚運動医学講座皮膚科学分野

皮膚悪性リンパ腫について

瀬戸山 充

〔平成24年7月27日入稿,平成24年8月1日受理〕

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宮崎医会誌 第36巻 第2号 2012年9月

図1. 原発性皮膚リンパ腫の様々な臨床像.

表1.原発性皮膚リンパ腫の病型3).

皮膚T 細胞・NK 細胞リンパ腫

菌状息肉症(Mycosis fungoides:MF)菌状息肉症のバリアントと亜型 毛包向性菌状息肉症(Folliculotropic MF) パジェット様細網症(Pagetoid reticulosis) 肉芽腫様弛緩皮膚(Granulomatous slack skin)Sézary 症候群成人T 細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma)原発性皮膚CD30 陽性リンパ増殖症(Primary cutaneous CD30+ T-cell lymphoproliferative disorders)◦原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(Primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma)◦リンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫(Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma)節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型(Extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type)種痘様水疱症様リンパ腫(hydroa vacciniforme-like lymphoma)原発性皮膚γδT 細胞リンパ腫(Primary cutaneous γδ T-cell lymphoma)原発性皮膚CD8 陽性進行性表皮向性細胞傷害性T 細胞リンパ腫

(Primary cutaneous CD8+ aggressive epidermotropic cytotoxic T-cell lymphoma)*原発性皮膚CD4 陽性小・中細胞型T 細胞リンパ腫

(Primary cutaneous CD4+ small/medium T-cell lymphoma)*末梢性T 細胞リンパ腫,非特異(Peripheral T-cell lymphoma, NOS)皮膚B 細胞リンパ腫

粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALT リンパ腫)(Extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)原発性皮膚濾胞中心リンパ腫(Primary cutaneous follicle center lymphoma)原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,下肢型#

(Primary cutaneous diffuse large B-cell lymphoma, leg type)血管内大細胞型B 細胞リンパ腫(Intravascular large B-cell lymphoma)血液前駆細胞腫瘍

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm)

*:暫定的疾患単位,#:新WHO 分類ではびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,非特異に含まれる.  (WHO-EORTC 分類2005 年をもとに新WHO 分類2008 年の病名を採用)

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図2. 菌状息肉症/Sézary 症候群の病変面積算出図8).

いたCotswold分類(1989)と異なるTNM分類が提唱されている(図3,表4)9),今後これらの分類を用いて各病期のきめ細かい治療研究がなされ,よりよい治療法の検討がなされることになる。

治   療

 1)一般的治療指針 皮膚悪性リンパ腫の治療方針は病理診断,病期分

表2.菌状息肉症/Sézary 症候群のTNMB分類試案8).

T1:体表面積の<10% T1a(patch だけ),T1b(plaque ± patch)T2:体表面積の>_ 10% T2a(patch だけ),T2b(plaque ± patch)T3:腫瘤形成 1 病変またはそれ以上T4:紅皮症 体表面積の80% 以上の融合する紅斑N0:臨床的に異常リンパ節なし.生検不要N1:臨床的に異常リンパ節あり.組織学的にDutch Gr1, or NCI LN0-2 に相当* N1a:クローン性増殖なし N1b:クローン性増殖ありN2:臨床的に異常リンパ節あり.組織学的にDutch Gr 2, or NCI LN3 に相当* N2a:クローン性増殖なし N2b:クローン性増殖あり N3:臨床的に異常リンパ節あり.組織学的にDutch Gr 3 ~ 4, or NCI LN4 に相当*Nx:臨床的に異常リンパ節あるが,組織的確認ないか,完全なN 分類ができない.M0:内臓病変なし M1:内臓病変ありB0:異型リンパ球が末梢血リンパ球の5% 以下 B0a:クローン性増殖陰性,B0b:クローン性増殖陽性B1:異型リンパ球が末梢血リンパ球の5% を超えるが,B2基準を満たさない. B1a:クローン性増殖陰性,B1b:クローン性増殖陽性B2:Sézary 細胞(クローン性増殖あり)が末梢血中に1,000個/uL 以上.Sézary 細胞が以下の項目の1 項目を満たす:CD4/CD8≧10, CD4+CD7-細胞≧40%,またはCD4+CD26-細胞≧30%.*リンパ節のNCI 分類(旧分類基準)NCI LN0:リンパ節に異型リンパ球なし.NCI LN1:所々,孤立性異型リンパ球(集塊を作らない) NCI LN2:多数の異型リンパ球または3 ~ 6 細胞の小集塊 NCI LN3:異型リンパ球の大きな集塊あるが,リンパ節の基本構造は保たれる.NCI LN4:リンパ節構造が異型リンパ球または腫瘍細胞によって部分的あるいは完全に置換される,

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宮崎医会誌 第36巻 第2号 2012年9月

類,予後診断に基づいて決定される。悪性リンパ腫の分子基盤や分子病態を理解し,さらにその分類に

精通しておくことが肝要である。また皮膚の悪性リンパ腫の皮膚病巣をみるように悪性リンパ腫の進展

表3.菌状息肉症/Sézary 症候群の病期分類試案8).病期 T N M BⅠA 1 0 0 0, 1ⅠB 2 0 0 0, 1ⅡA 1 ~ 2 1, 2, X 0 0, 1ⅡB 3 0 ~ 2, X 0 0, 1ⅢA 4 0 ~ 2, X 0 0ⅢB 4 0 ~ 2, X 0 1ⅣA1 1 ~ 4 0 ~ 2, X 0 2ⅣA2 1 ~ 4 3 0 0 ~ 2ⅣB 1 ~ 4 0 ~ 3, X 1 0 ~ 2X: 臨床的に異常なリンパ節腫大が組織学的に確認されていないか,完全なN分類ができない.

表4.菌状息肉症/Sézary 症候群以外の皮膚リンパ腫TNM分類試案9).

T:T1:単発の皮膚病変 T1a:単発の病変  <直径5cm T1b:単発の病変  >直径5cm T2:限局性皮膚病変:多発性病変が1つないし連続した2つの身体部位*に限局 T2a:すべての病変部位が直径15cm 未満の円形領域に含まれる T2b:すべての病変部位が直径15cm 超で30cm 未満の円形領域に含まれる T2c:すべての病変部位が直径30cm の円形領域を超える T3:汎発性皮膚病変 T3a:多発性病変が非連続性の2 身体領域に見られる T3b:多発性病変が3 身体領域にみられるN:N0:臨床的および病理学的にリンパ節病変なし N1:現在あるいは以前の皮膚病変の1つの所属リンパ節領域の病変 N2:現在あるいは以前の皮膚病変の2つないしそれ以上の末梢リンパ節領域病変 N3:中枢性(深在性)リンパ節病変M: M0:皮膚外に非リンパ節病変を認めない M1:皮膚外に非リンパ節病変を有する

HN

UB

RUA

RLAH

LBB

RUL

RLLF

RUA

RLAH

RUL

RLLF

C

LUA

LLAH

AG

LUL

LLLF

HN Head & Neck

C Chest

LUA Left Upper Arm

LLAH Left Lower Arm& Hand

AG Abdominal &Genital

LUL Left Upper Leg

LLLF Left Lower Leg& Feet

RUA Right UpperArm

RLAH Right LowerArm & Hand

RUL Right UpperLeg

RLLF Right LowerLeg & Feet

UB Upper Back

LBB Lower Back &Buttock

図3. 菌状息肉症/Sézary 症候群以外の皮膚リンパ腫のT分類のための体表区画9).

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瀬戸山 充:皮膚悪性リンパ腫について

は一般に多中心性であり,病巣が1臓器,1部分に限局せず病変の進行に伴い他の部位にも進展する。 2)治療目標の設定 悪性リンパ腫は放射線療法や化学療法がきわめて有効な悪性腫瘍であり,その治療の究極の目標は根治であるが,その病態も多様であり,治療に対する効果は宿主,部位,組織型,病期などの因子により異なってくる。治療を開始するにあたって患者毎に根治の可能性を予測し,目標を根治に置くのか,QOLの改善をとおして生存期間の延長を目指すのか的確に判断する必要がある。

皮膚リンパ腫の各病型について(表1)3)

 以下皮膚原発のリンパ腫について主としてWHO分類を基に臨床的,組織学的事項について概説する。 1)皮膚B細胞リンパ腫 ① .粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫

(MALT リンパ腫) (Extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue), Syn:原発性皮膚濾胞辺縁帯B細胞リンパ腫(primary cutaneous marginal zone B-cell lymphoma in WHO-EORTC)臨床・病理組織学的特徴:顔面,体幹,四肢(特に上肢)に紅色の丘疹/結節,浸潤性紅斑がみられる。組織学的には真皮内の反応性リンパ濾胞の周辺にびまん性ないし結節性に胚中心細胞に類似した軽度に不整形の核を有する中型の細胞と,より豊富な細胞質を有するmonocytoid B-cellと呼ばれる小型B細胞の増殖,小型リンパ球,少数の免疫芽球immunoblastや胚中心芽球centroblast様細胞など多彩な腫瘍細胞から構成される。形質細胞への分化が見られることもある。反応性ろ胞形成がしばしば認められる。また汗腺上皮への破壊を伴う浸潤(lymphoepithelial lesion)がみられる事がある。 腫瘍細胞はCD5, 10,23,bcl6は陰性でCD19, 20, 22, bcl2が陽性を示す。治療方針(第一選択):単発の場合,外科的切除ないし放射線療法。多発例にはリツキシマブ単剤投与。予後:非常に良好で5生率が100%を示す。 ② . 原 発 性 皮 膚 濾 胞 中 心 リ ン パ 腫 (primary

cutaneous follicle center lymphoma)

臨床・病理組織学的特徴:単発ないし多発する紅斑性局面,結節が被髪頭部,前頭部,躯幹,時に下肢に限局してみられる。 組織学的に腫瘍細胞は真皮内に結節状ないしびまん性に増殖する。腫瘍細胞は,centrocyte ないしcentroblast様形態を示し,反応性にT細胞が浸潤する。腫瘍細胞は免疫組織学的にCD20, CD79a陽性であり,BCL6は陽性で,BCL2は陰性なしし弱陽性。治療方針(第一選択):単発の場合,外科的切除ないし放射線療法。多発例にはリツキシマブ単剤投与。予後:5生率は95%を示す。 ③ .原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ

腫,下肢型 (Primary cutaneous di f fuse large B-cel l lymphoma, leg type) WHO分類ではびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,非特異に包含されている。臨床・病理組織学的特徴:女性の下肢に多く発生。急速に増大する紫紅色の腫瘤としてみられる。組織学的には時に皮下におよぶびまん性発育を示す腫瘍細胞からなる。centroblastあるいはimmunoblast様細胞の単調なシート状発育を示す。免疫組織学的に腫瘍細胞はCD20,79aが陽性でmonotypic sIgないしcIgを示す。bcl2,MUM- 1陽性である。治療方針(第一選択):リツキシマブ+多剤併用化学療法。予後:5生率は55%。 2).皮膚T/NK細胞リンパ腫 皮膚のT細胞リンパ腫における腫瘍細胞の皮膚親和性,表皮向性およびポ−トリエ微小膿瘍の形成は大きな特徴の一つであり,診断的価値も大きい。これについては下記のケモカイン受容体の発現で説明されている。リンパ球が発現するケモカイン受容体は7回膜貫通型のG蛋白共役受容体であり,現在まで19種が同定されている。そのうちCCR4, CCR10はMFを含む腫瘍性T細胞に発現がみられ,皮膚へのホーミングに関与している。CCL17はCCR4の主要なリガンドであり,活性化ケラチノサイト,樹状細胞,内皮細胞より作られるがMF患者の血清レベルにおいても増加しているのがわかっている10)。またCCR10のリガンドであるCCL27はケラチノサイ

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宮崎医会誌 第36巻 第2号 2012年9月

トにより作られ,炎症時におけるCLA陽性メモリー細胞の皮膚へのホーミングに関与しているとされてきた11,12)。腫瘍細胞はCCL17とCCL27により血管の内腔側にとらえられ,内皮細胞間を通して遊出,皮膚に存在するケラチノサイトと免疫細胞の産生するケモカイン勾配に沿って皮膚に移動するのである。さらに血清中のCCL17とCCL27の増加はMFの活動性と関係すると考えられている13,14)。 殆どのケモカイン受容体はphosphadylinositol-3-kinaseと Akt

(protein kinase B) を 含 む 下 流 のprosurvival pathwayを活性化し,アポトーシスに対する抵抗性を増強する。このようにケモカインはT細胞の皮膚への移動を促進するのみでなく,自身の生存維持に関係のである15,16)。これらのことはCCR 4,CCR10を標的にすれば,腫瘍細胞の皮膚への移動を阻止し,殺細胞効果を得られることを意味する。 ①.MF (菌状息肉症) 1806年, Alibert らがキノコ状の皮膚腫瘤を見る患者にMFの命名を与えたのを嚆矢とする。その後Bazinらにより,病変の進行に沿って紅斑期,扁平浸潤期,腫瘍期の3期に分けることが提唱された。今日に至る古典型(Alibert-Bazin)のそれである。その後の研究でTh2型の性状を示す緩徐に経過する皮膚原発のT細胞リンパ腫と考えられている17,18)。かってLutznerら19)はMFとSézary 症候群(SS)を CTCL (Cutaneous T-cell lymphoma)の名の下に一括呼称したが,現在ではCTCLの呼称は皮膚原発のT細胞リンパ腫全てを指している。MFの臨床・病理組織学的特徴:MFは年余にわたり緩徐(indolent)に進行するリンパ腫である。初期は非露光部に好発する(落屑を伴う)紅斑ではじまり,数年から10数年後浸潤を触れる局面を形成するようになり,最終的には腫瘤を形成し,末期にはリンパ節,内臓へ浸潤する。 ⅰ)紅斑期 躯幹・四肢の主として非露光部に鱗屑 を伴うアトピ―性皮膚炎,脂漏性湿疹,乾癬,ジベルバラ色粃糠疹などと類似した紅斑が出現し,数年から10数年にわたり出没を繰り返す。進行に伴い色素沈着,色素脱失,皮膚萎縮がみられる様になる。特に局面状類乾癬は本症への移行が見られ,特に最大径5cm

以上の大局面型は紅斑期の1病型としてとらえる事もできる。 組織学的には真皮浅層の血管周囲ないし帯状に細胞浸潤がみられる。組織学的には腫瘍細胞(リンパ球様細胞)の表皮内浸潤も認められる(exocytosis)。この場合基底層にそってコロニーを作ることも特徴的である。このstageでは診断がつかず,後述のstageに進行して初めて診断がつく場合が多い。このためこの時期における診断法が求められていた。2005年,ISCL(International society for cutaneous lymphoma)のグループは臨床,病理組織学,免疫組織学,分子生物学的所見を総合的にスコア化し,その総和を以て(4ポイント以上),早期の菌状息肉症を診断することを提唱している(表5)20)。 ⅱ)扁平浸潤期 紅斑性局面に浸潤,肥厚が生じ,扁平に隆起してくる。境界は鮮明である。組織学的には表皮直下に

表5.菌状息肉症の早期診断のためのスコア20).臨床的所見基本項目◦持続性 および/ないし進行性の斑 /浸潤の乏しい局面追加項目◦非露光部◦大きさ/形の変化◦多形皮膚スコア2ポイント: 基本項目 + 2 追加項目1 ポイント: 基本項目+ 1追加項目病理組織学的所見基本項目◦表在性リンパ球様細胞の浸潤追加項目◦海綿状態を伴わない表皮浸潤◦リンパ球様細胞の異型性スコア2ポイント: 基本項目+ 2追加項目1 ポイント: 基本項目+ 1追加項目分子生物学的所見◦TCR 遺伝子 の再構成(クローナリテイ)(+)スコア 1ポイント:クローナリテイ(+)免疫病理学的所見◦<50% CD2+, CD3, aおよび/または CD5陽性T細胞◦<10% CD7+陽性T細胞◦表皮/真皮 における CD2, CD3, CD5, CD7*の不一致スコア 1ポイント(いずれかの項目)合計4ポイントを以てMFと診断する。*: 表皮内でのT細胞抗原の欠失

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瀬戸山 充:皮膚悪性リンパ腫について

比較的密集した異型性を示すリンパ球様細胞の浸潤がみられるようになる。胞巣を形成(ポートリエ微小膿瘍)すると,診断はより容易となる。 ⅲ)腫瘤期 この時期では腫瘍細胞は塊状に真皮内に浸潤し,次第に表皮向性は消失し,深部への浸潤傾向が強くなる。さらには核の大型化がみられるようになる。成熟リンパ球の約4倍の大きさになる場合をtransformationと呼称する。これは予後不良の徴候であり,リンパ節や臓器浸潤の傾向が強くなる。免疫組織化学的に腫瘍細胞はCD3+,4+,45RO+,8-であるが時にCD4-,8+を示すことがある。またCD2,3,5の汎T細胞マーカーを欠失することがある。 * バリアント 現在4種のバリアントが認められている。 ⅰ)Folliculotropic MF:表皮の変わりに毛包中心にMF腫瘍細胞が浸潤するもので,毛包ムチノーシスを伴うものと伴わないものがある。頭頸部に好発し,毛包性丘疹,ざ瘡様発疹,浸潤局面,脱毛斑を呈する。特に眉毛部の浸潤と脱毛斑は診断的価値が高い。古典的MFに比べそう痒が強いのも特徴である。免疫組織学的に腫瘍細胞は古典型と同様CD3+,4+,8-を示すが,CD30+細胞の混在が通常見られる。予後は古典型の腫瘤期と同様で悪い。 ⅱ)Pagetoid reticulosis:局在する局面ないし紅斑で表皮内腫瘍細胞浸潤を示す型である。従来同名で呼称されていた幡種型(Ketron-Goodman type)はprimary cutaneous T-cell lymphoma, unspecifiedの範疇かMF腫瘤型に属し,ここには含まれない。多くは四肢に単発する乾癬様ないし過角化性紅斑~局面を呈し緩徐に進行する。組織学的には特徴的なPaget細胞様腫瘍細胞が表皮内に散在性又は胞巣を形成して浸潤する。真皮上層にも細胞浸潤が見られるがここには腫瘍細胞は混在しない。腫瘍細胞はCD3+,4+,8-ないしCD3+,4-,8+である。CD30+腫瘍細胞もしばしば出現する。経過はきわめて良好である。 ⅲ)Granulomatous slack skin:非常に希な病型で,ぶよぶよとした弛緩性皮膚を症状とする。好発部位は腋窩と鼡径部で,組織学的には腫瘍細胞と組織球,多核巨細胞を混じる肉芽腫を形成する。腫瘍

細胞の表面形質はCD3+,4+,8-である。殆どの症例が緩徐な経過をとる。 ② .成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell

leukemia/lymphoma;ATLL),皮膚型臨床・病理組織学的特徴:ヒトT細胞白血病ウィルス1型(human T-cell leukemia virus type 1;HTLV-1 )の感染により発症するリンパ腫である。下山らはATLLを急性型,リンパ腫型,慢性型,くすぶり型の4型に分けたが,皮膚病変を伴うことは多く,著者ら21)は皮膚原発ないし初発と考えられる皮膚リンパ腫の病態を呈するものを皮膚型とし予後不良であると解析し提唱している。 皮疹は多彩で表皮,真皮、皮下組織を主座とする他の炎症性,腫瘍性疾患と類似する病変を有し,表皮向性を伴う腫瘍細胞の浸潤を呈するため,鑑別が必要となるがHTLV-1 provirus DNAのクロナリティの有無で鑑別することが勧められている。腫瘍細 胞 はCD4,CD25の 表 面 形 質 有 し,CCR4やFOXP3を発現しregulatory T-cell(Treg)の特徴を呈するが22),本来のTregを起源とする腫瘍ではないとする報告もなされている23)。治療方針(第一選択):丘疹,浸潤性紅斑に対しては放射線療法,紫外線療法,インターフェロン,レチノイド投与が勧められている。腫瘤形成期には単剤化学療法,多剤化学療法が為される。予後:5生率は20%を示す。 ③.原発性皮膚CD30 陽性リンパ増殖症 ( p r i m a r y c u t a n e o u s C D 3 0 + T - c e l l lymphoproliferative disorders)  原 発 性 皮 膚CD30陽 性T細 胞 リ ン パ 増 殖 症 はC-ALCL(primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma)とLyP (lymphomatoid papulosis)を含む連続したスペクトルを有し,境界型のものも含有する概念であるが,菌状息肉症から続発するCD30陽性腫瘍は除外される。浸潤細胞の75%以上の細胞がCD30陽性を示す。 ⅰ  原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(primary

cutaneous anaplastic large cell lymphoma;C-ALCL)

臨床・病理組織学的特徴:隆起病変や皮下腫瘤を呈ししばしば中央が潰瘍化する。自然寛解することも

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宮崎医会誌 第36巻 第2号 2012年9月

多く,皮膚に再発する傾向があり約10%に皮膚外病変は生じ,所属リンパ節へ広がる。組織学的には反応性のリンパ球や好中球や好酸球浸潤を伴う。腫瘍細胞の形質はCD4陽性のことが多いが,細胞障害性分子のgranzyme B,perforin,TIA-1(T-lymphocyte intracellular antigen-1)が70%の症例で陽性である。全身性ALCLと違いCLA(cutaneous lymphocyte antigen)が陽性でALK(anaplastic lymphoma kinase)やEMA(上皮膜抗原)は陰性である。リンパ節病変ではCD30陽性細胞がシート状に増殖し,転移性腫瘍に類似する。治療方針(第一選択):限局性病変には外科的切除,放射線療法。汎発性病変については単剤化学療法。予後: 5年生存率は80%,10年生存率は71%である。 ⅱ  リンパ腫様丘疹症(lymphomatoid papulosis;

LyP)臨床・病理組織学的特徴:大型の丘疹の出没を繰り返し,消退時に痂皮を伴い脱色素斑や瘢痕を残す。LyPの病理像は多様であり,CD30陽性細胞が楔形に浸潤するタイプ(type A),菌状息肉症細胞と類似の細胞が表皮向性に浸潤するタイプ(type B),腫瘍細胞がmonotonousにシート状に増殖するタイプ(type C)がある。浸潤するT細胞のクロナリティが証明されても悪性リンパ腫として取り扱わない。治療方針(第一選択):経過観察ないし小量のメトトレキサート投与。予後:良好である。5生率100%。(WHO-EORTC)118例中リンパ腫に進行したのは5例(4%)のみであり,中央値77ヵ月の観察では2例(2%)のみ原病死している。 ④ .皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫(subcutaneous

panniculitis-like T-cell lymphoma;SPTCL)臨床・病理組織学的特徴:主に皮下脂肪組織を中心に浸潤し四肢や体幹部に紅斑を伴う皮下硬結や結節として発症し局所の熱感や圧痛を伴い発熱を伴うことが多く肝機能障害やフェリチン値の上昇を呈すことが多い。進行すると肝脾腫を伴い汎血球減少を呈し血球貪食症候群を来たす。組織像において皮下脂肪小葉に浸潤する異型細胞は脂肪細胞周囲を取り巻きrimingを呈する。細胞障害性T細胞からのリンパ腫で,CD8陽性,granzyme B,TIA-1陽性でα/β

T細胞受容体表現型を有し,予後不良のγ/δ型のものは別概念として区別されている。治療方針(第一選択):限局性病変については放射線療法,ステロイド内服は多発性病変についても第一選択になる。予後:良好。5生率は80%である。血球貪食症候群を伴う症例は予後不良。 ⑤ .節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型(extranodal

NK/T-cell lymphoma, nasal type)臨床・病理組織学的特徴:鼻腔,咽頭,副鼻腔に好発するが皮膚原発のものでは,皮膚・皮下組織に浸潤し壊死を伴う紅斑,浸潤性局面を呈することが多い。EBウィルスの感染を伴うNK細胞(時に細胞障害性T細胞)からなるリンパ腫でアジア,南米に患者は集中している。組織像は血管中心性,血管破壊性に浸潤増殖し,表皮向性は認めない。腫瘍細胞はCD56,CD3e,細胞障害性分子に陽性を示す。クロナリティの証明にはサザンブロッディング検査においてTCR再構成がgerm lineを示すものにはEBウィルスDNAのTR領域をもって行う。腫瘍細胞はEBER(EB virus-encoded small nuclear RNA)陽性である。治療方針(第一選択):放射線療法と化学療法の併用。予後:不良であり,5生率は0%。生存期間中央値は12か月以下である。 ⑥ .種痘様水疱症様リンパ腫 (hydroa vacciniforme-

like lymphoma)臨床・病理組織学的特徴:種痘様水疱症は小児の日光あるいは虫刺過敏症を示し,EBウィルス感染細胞障害性T細胞ないしNK細胞によって生じる疾患である。中心臍下や壊死を伴う丘疹,水疱が顔面を中心とした日光露光部に多発する。一部のものは発熱が続き,肝脾腫やリンパ節腫脹を伴い,数年の経過で悪性リンパ腫に移行したり血球貪食症候群を合併し予後不良である。アジア,南米に患者は集中し,小児 か ら 青 年 に 多 い。EBV-positive T-cell lymphoproliferative disorders of childhoodのうちindolentな経過を呈するsubtypeとされており,全身症状が強く進行の速いCAEBV(chronic active EBV infection)と同じ範疇に入る。組織学的には血管中心性,血管破壊性に浸潤し腫瘍細胞は細胞障害性T

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瀬戸山 充:皮膚悪性リンパ腫について

細 胞 の 特 徴 を 有 しCD56は 陰 性 でgranzyme B,TIA-1陽性を示す。EBER陽性細胞を認める。治療方針(第一選択):未だ一定の見解無し。予後:多様である。10 ~ 15年皮疹の出没を繰り返す。 ⑦ .原発性皮膚γδT 細胞リンパ腫(primary

cutaneous γδ T-cell lymphoma)臨床・病理組織学的特徴:四肢に好発し潰瘍を伴う腫瘤,結節,局面を呈することが多く,腫瘍は皮膚及び皮下組織へ浸潤する。発熱を伴うことが多く,血球貪食症候群を合併することもありSPTCLと臨床的にも組織学的にも類似する。組織学的に中型から大型の腫瘍細胞は皮膚皮下脂肪組織を中心に浸潤しCD2,CD3,CD56,TCRδは陽性,βF1,CD5は陰性,CD7は+/-で強く細胞障害性蛋白を発現し,多くはCD4,CD 8陰性であるがCD8陽性を呈することもある。治療方針(第一選択):未だ一定の見解無し。予後:治療抵抗性で予後不良である。生存期間中央値は15ヵ月となる。 ⑧ .原発性皮膚CD8 陽性進行性表皮向性細胞傷

害性T 細胞リンパ腫 (Pr imary cu t aneous CD8+ aggre s s i ve epidermotropic cytotoxic T-cell lymphoma)臨床・病理組織学的特徴:全身の皮膚に局在,散在する中心壊死や皮膚潰瘍を伴う丘疹,結節,腫瘍や角質肥厚を伴う局面を呈す。浸潤する腫瘍細胞は著明な表皮向性を伴う苔癬型組織反応を示す。小型から大型の腫瘍細胞は多形性で芽球様の核を有する。CD3,CD8,granzyme B,perforin,TIA-1,CD45RA陽性でCD2,CD4,CD5,CD45RO陰性である。治療方針(第一選択):未だ一定の見解無し。予後:進行性で予後不良であり,中央生存期間は32か月を示す。 ⑨ .原発性皮膚CD4 陽性小・中細胞型T 細胞リ

ンパ腫 (Primary cutaneous CD4+ small/medium T-cell lymphoma)臨床・病理組織学的特徴:菌状息肉症に典型的な紅斑,浸潤局面を欠き,単発の皮膚結節や浸潤病変が顔や頚部から体幹に好発する。浸潤する腫瘍細胞は小型から中型でCD3,CD4陽性,CD8,CD30陰性

で細胞障害性分子の発現はない。形質細胞やB細胞などの反応性の細胞浸潤を伴う。治療方針(第一選択):限局性病変には放射線療法,汎発性病変には単剤化学療法。予後:緩徐な経過で5年生存率は80%である。 以上,WHO分類(2008)3)を基に主な皮膚原発性リンパ腫について臨床的/病理組織学的事項,および治療について最近の知見を交えて概説した。

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宮崎医会誌 第36巻 第2号 2012年9月

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