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1 群馬県立県民健康科学大学紀要 第 13 巻:1132018 総  説 連絡先:371 0052 群馬県前橋市上沖町 323 1 群馬県立県民健康科学大学 鵜生川恵美子 看護研究論文からみるスピリチュアリティの定義 ――日本と英語圏諸国の比較検討―― 鵜生川恵美子,中 西 陽 子 群馬県立県民健康科学大学看護学部 本論は,看護研究にて関心が高まっている日本と英語圏諸国のスピリチュアリティの定義についての文 献による比較検討である. 1950 年代から 1970 年代の英語圏諸国において,スピリチュアリティが宗教と同一視されていた背景に は,聖職者によるパストラルケアの実践がある.1980 年代から 1990 年代にかけての看護のパラダイムが, 宗教的側面の強調から全人的な人間理解に係る概念へと変わった.日本への概念の導入はその後 1990 代後半 ~2000 年以降になる. 明確な定義は見出されないものの,共通項目は次に示すとおりである.1)人間存在の根源性に関わり, 全ての人間が本来持ち合わせている力.2)「自己」「他者」「超越的存在」との関連性において,人生の意 味や目的を見出す力.3)危機的状況に直面した時に潜在化する.4)宗教的側面を含めるが,宗教と同一 ではない. 定義の必要性の一方,英語圏諸国においては,普遍的な定義を求めることに対する非現実性を示す見解 も見られる. キーワード:スピリチュアリティ,定義,看護文献,日本,英語圏諸国,比較検討 1.緒  言 1980 年代より Quality of Life (QOL) の概念が 発達し,英国のホスピス活動と北米のがん患者の 精神的ケア・スピリチュアルケアに関する研究が 緩和ケア領域で発展し,その核となるスピリチュ アリティの概念も発達した 1) .日本において,ス ピリチュアリティは,特に 1990 年代から多くの 研究者により注目されるようになった概念であり, その背景には,常に病気を治そうと努力し,少し でも長生きすることが至上命であった西洋近代医 学に対する疑問と反省があるといわれる 2) 現代,医療の場でいのちの根源的問題に向き合 う際,スピリチュアリティという概念は,いのち の問題をどう捉えるのか大きなヒントを与えうる 重要な概念 3) である.世界保健機関(以下 WHOは,緩和ケアの定義において, 「人間は全人的な存 在である」と定義 4) しており,全人的側面の一側 面であるスピリチュアルな側面からの人間理解を するには,その基本概念であるスピリチュアリ ティを理解することが必要である.しかしながら, スピリチュアリティという概念は欧米諸国の宗教 的背景から生まれた概念 5) であり,それゆえ,宗 教観や言葉の相違のある日本においては,後追い にて導入されたスピリチュアリティの概念は,曖 昧な言葉のニュアンスで認識されている現状があ

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Page 1: 看護研究論文からみるスピリチュアリティ ...€¦ · 3 cinahl においては1988 年の論文が初出である が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

1群馬県立県民健康科学大学紀要 第 13巻:1~13,2018

 総  説

連絡先:〒371─0052 群馬県前橋市上沖町 323─1群馬県立県民健康科学大学鵜生川恵美子

看護研究論文からみるスピリチュアリティの定義 ――日本と英語圏諸国の比較検討――

鵜生川恵美子,中 西 陽 子

群馬県立県民健康科学大学看護学部

 本論は,看護研究にて関心が高まっている日本と英語圏諸国のスピリチュアリティの定義についての文

献による比較検討である.

 1950年代から 1970年代の英語圏諸国において,スピリチュアリティが宗教と同一視されていた背景には,聖職者によるパストラルケアの実践がある.1980年代から 1990年代にかけての看護のパラダイムが,宗教的側面の強調から全人的な人間理解に係る概念へと変わった.日本への概念の導入はその後 1990年代後半 ~2000年以降になる. 明確な定義は見出されないものの,共通項目は次に示すとおりである.1)人間存在の根源性に関わり,全ての人間が本来持ち合わせている力.2)「自己」「他者」「超越的存在」との関連性において,人生の意味や目的を見出す力.3)危機的状況に直面した時に潜在化する.4)宗教的側面を含めるが,宗教と同一ではない.

 定義の必要性の一方,英語圏諸国においては,普遍的な定義を求めることに対する非現実性を示す見解

も見られる.

   キーワード:スピリチュアリティ,定義,看護文献,日本,英語圏諸国,比較検討

1.緒  言

 1980年代より Quality of Life (QOL) の概念が

発達し,英国のホスピス活動と北米のがん患者の

精神的ケア・スピリチュアルケアに関する研究が

緩和ケア領域で発展し,その核となるスピリチュ

アリティの概念も発達した1).日本において,ス

ピリチュアリティは,特に 1990年代から多くの

研究者により注目されるようになった概念であり,

その背景には,常に病気を治そうと努力し,少し

でも長生きすることが至上命であった西洋近代医

学に対する疑問と反省があるといわれる2).

 現代,医療の場でいのちの根源的問題に向き合

う際,スピリチュアリティという概念は,いのち

の問題をどう捉えるのか大きなヒントを与えうる

重要な概念3)である.世界保健機関(以下WHO)

は,緩和ケアの定義において,「人間は全人的な存

在である」と定義4)しており,全人的側面の一側

面であるスピリチュアルな側面からの人間理解を

するには,その基本概念であるスピリチュアリ

ティを理解することが必要である.しかしながら,

スピリチュアリティという概念は欧米諸国の宗教

的背景から生まれた概念5)であり,それゆえ,宗

教観や言葉の相違のある日本においては,後追い

にて導入されたスピリチュアリティの概念は,曖

昧な言葉のニュアンスで認識されている現状があ

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2

る6).よって,先行した欧米諸国におけるスピリ

チュアリティの概念の変遷と,日本におけるその

概念の導入の過程と概念の認識を把握することが

重要である.

 看護師は,どのような場面においても,患者の

いのちに寄り添い,最も身近な存在として,看護

を提供する義務がある.そのためには,患者の生

活の質・生命の質(QOL)を考える時,全人的

な存在として一人の人間を理解することが必要で

ある.特に,患者および家族が直接的にいのちの

限りと向き合う終末期医療の現場においては,全

人的苦痛の理解のために,スピリチュアリティの

理解が必須であると言える.この様なことを背景

に,患者のスピリチュアリティ概念の重要性を把

握することが必要とされ,現在,看護研究におけ

るスピリチュアリティに対する関心が年々高まっ

ている.

 例えば,2007年から 2011年までのデータベー

スから得られた看護研究者による文献から

spiritualityの定義に関する再検討を行ったReinert

と Koeningは,CINAHLで検索された ‘spirituality

and nursing'のキーワードによる検索文献数が,

1982年から 1991年の間は 1件であったのに対し

て,1992年から 2001年では 50件,2002年から

2011年の間では 281件にまで増加していること

を示している7).2017年 8月現在,同様にCINAHL

を用いて,‘spirituality and nursing'をキーワード

として検索をすると,2677件の文献を見出すこ

とができる.

 日本においても,同様のキーワード(「スピリ

チュアリティと看護」)でデータベースにて検索

すると,2000年,2001年がそれぞれ 1件であっ

たのが,2002年から 2004年では 36件,2005年

から 2017年では 312件にまで増加している.

 このように,日本及び海外(英語圏諸国以外の

国々も含まれる)おいて「スピリチュアリティと

看護」及び ‘spirituality and nursing'のキーワー

ドによる検索文献数が増加していることから,看

護領域におけるスピリチュアリティに対する関心

と必要性の高まりは明白であるといえる.しかし,

看護師を含む医療にかかわる人々のスピリチュア

リティに対する高い関心に反して,国内外問わず,

その定義についての共通理解がほとんどないこと

を指摘する研究者が多いことも事実である8─17).

 本総説では,日本と英語圏諸国(英国,米国,

カナダ)の看護研究論文から見出された看護にお

けるスピリチュアリティの定義についての研究者

による見解を俯瞰するとともに,研究者によるス

ピリチュアリティの定義と,その変遷及び共通性

と相違性について比較検討する.このことにより,

国内外のスピリチュアリティ概念の明確化とその

特徴を明らかにすることへの示唆が得られ,看護

の対象となる人間理解につながると考える.

2.研究論文の抽出

 2017年 8月現在において,英語圏諸国におけ

る看護研究論文においては,CINAHLを用いて

‘spirituality in nursing' and ‘definition'をキーワー

ドとして検索を行った結果,1988年から 2015年

の間で,41件の研究論文が抽出された.日本の

看護研究論文については,医学中央雑誌を用い,

「スピリチュアリティ」「看護」「定義」をキーワー

ドとして検索すると,2000年から 2017年の間で,

24件の研究論文が抽出された.

 これら抽出された論文には,過去数十年間に及

ぶ研究者による定義に関する文献検討,複数の研

究から見出された定義の再検討,再解釈なども含

まれた.

 本論では,日本と英語圏諸国の看護研究におけ

るスピリチュアリティの定義に関する看護研究論

文の中から,研究者によって言及された主な定義

を一覧表にまとめた.ただし,海外におけるスピ

リチュアリティの定義に関する看護研究論文は,

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CINAHLにおいては 1988年の論文が初出である

が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

者が定義したスピリチュアリティの定義を引用し

ている場合は,その原本を入手し確認したものに

ついては,一覧に加えた.

3.看護研究論文にみるスピリチュアリティ

3.1 英語圏諸国におけるスピリチュアリティの

定義

3.1.1 研究者による定義及び定義に対する見解

の変遷

 スピリチュアリティの概念の導入が先行する英

米諸国において,過去 50年間で看護研究論文に

おけるスピリチュアリティの概念や定義に関する

研究はかなりの進化を遂げている.文献において

スピリチュアリティが表現されるようになったの

は,1950年代からで,初期の研究においては,

スピリチュアリティは宗教と同一とみなされてい

た18).Kleidlerが,看護研究論文ではほとんどの

場合,スピリチュアリティという言葉は制度とし

ての宗教と同義語として使用されていると示唆し

ている19)ことからもわかるように,1970年代ご

ろまでは,宗教とスピリチュアリティの概念はほ

ぼ同一のものであり,言葉や示す内容も置き換え

が可能であると捉えられていたと考えられる.

 看護研究論文において,主にローマカトリック

教徒である患者の信仰について,そしてその後,

プロテスタントとユダヤ教徒である患者の宗教へ

と関心が注がれるようになったのは,1950年代

から 1960年代にかけてである20).看護師が患者

に対して治療のために宗教的な介入を施すことが

奨励されていたからである21).この期間,関心が

ほとんど注がれていなかった患者のケアにおける

スピリチュアリティに関する研究が看護研究論文

にみられるようになったのは,1960年代の終わ

りになってからである22).

 宗教からスピリチュアリティへのシフトを行っ

た先駆者の一人として,患者のスピリチュアル・

ニーズを看護師が決定できるようにする基本的ア

セスメントツールを開発した Simsenが挙げられ

るが,1980年代初めに,看護研究論文の焦点は,

徐々にスピリチュアリティが持つ宗教的側面

(religious aspects)からスピリチュアリティの

QOLとしての側面(Quality-of-life aspects)へと

移行していった23).1980年代から 90年代にかけ

ての看護におけるパラダイムシフトにより,看護

研究の焦点はもはや,患者の宗教ではなくスピリ

チュアリティに注がれるようになったのである24).

 Emblenによる 1963年から 1989年の間に発行さ

れた看護研究論文における ‘religion,' ‘spirituality'

の概念分析(concept analysis)の研究は,宗教と

スピリチュアリティの二つの概念を置き替え,同

義に使用することでは正確な解釈を導かないこと

を示唆し25),同一視することが不可能な異なる概

念であるという見解を示した他の研究者26─28) に

とって強固な裏付けになったといえる.

 20世紀終わりには,看護研究論文に大きな変

化がみられ,スピリチュアリティはもはや宗教と

同一のものではなく29),‘body,' ‘mind,' ‘spirit'に

対するケアを意味するホリスティック・アプロー

チ(holistic approach)という観点からも捉えら

れるようになった30─33).

3.1.2 スピリチュアリティの定義に対する見解

の特徴

 まず一つ目の特徴として,研究者の多くは,ス

ピリチュアリティの定義の困難さを挙げている.

 1980年代から,宗教とは分離した形で受容さ

れてきたスピリチュアリティであるが,看護職者

らは,臨床現場における不可欠な要素としての認

識をもち,明確な定義が必要であると主張するも

のの,その定義に関しては未だ十分な同意には

至っていない34─35)というのが現状である.

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4

 Harrisonは,定義づけ,及び討論の際の問題点

として,言葉に対する抵抗,それを示す表現の困

難さを挙げている36).

 また,Georgeらは,スピリチュアリティの定

義や意味をめぐる複雑さの理由として,多様性,

主観的,個人的性質による構造の複雑さ,宗教と

の互換性などを挙げている37).

 一方,McSherryは,グランディド・セオリー

を用いたスピリチュアリティの意味に関する調査

の結果,スピリチュアリティの定義に使用される

言葉には正確な(precise)専門用語はないとの可

能性を述べ38),さらに,1985年から 2002年まで

の CINAHLなどの電子データを使った簡単な分

析からも,スピリチュアリティが個人の解釈や好

みに基づき,多様な意味を含有しているために,

その概念が主観的で混乱していると指摘した39).

 次にあげられる特徴としては,研究者らの多く

は,型にはめない自由な定義の必要性を述べてい

ることである.

 McSherryとDraperは,主に看護師のスピリチュ

アリティに対する感じ方に焦点をおいた研究の必

要性を訴え,信仰,価値観,宗教的好みに関わら

ず,すべての人間,個人の特性に適応させること

のできるスピリチュアリティの定義を発展させる

ことが看護職者の課題であるとしている40).

 Tanyiは,30年間に及ぶ文献からスピリチュア

リティについて 79論文と 19の著書による概念分

析によって,今日の健康,看護に関連したスピリ

チュアリティの意味を明確にした.一致した定義

がないのにもかかわらず,多くの看護研究者がス

ピリチュアリティの定義として上げているのは,

「超越的存在,明かされない神秘,関係性(つな

がり),人生の意味や目的,より高い力,関係」

であることが示唆された41).

 Williamsは,過去,多くの哲学者がスピリチュ

アリティについて探求し,その関心が一般の人々

や患者の間でも高まりを見せていることを言及し

た.加えて,すべての人が経験することであるが,

多くの要素を含んでいるため,それぞれのスピリ

チュアリティに対する経験は個々によって異なる

とした42).

 Clarkeは,看護において名前が付けられた実

体としてのスピリチュアリティの歴史は浅いとす

る.万人受けするモデルは不適切であることを認

識し,実践に取り入れられるより実用的で使用者

にやさしい方法に焦点を向けることによって,看

護師とスピリチュアリティの関係性とその活用に

ついて探求する余地があるのだとする43).

 同様に,TimminsとMcSherryは,Royal College

of Nursing(2011)註1)が多様なスピリチュアリティ

の概念を提示していることを受け,単一の権威あ

る定義はなく,すべてを包括する定義は,むしろ

看護においては有益ではないと述べている44).さ

らに,Pikeは,スピリチュアリティの定義に対

する統一見解がほとんどないということが,スピ

リチュアリティの概念を豊かに議論し発展させる

ことにつながると述べ,スピリチュアリティの概

念の狭い制限を超えて観察することの重要性を強

調した45).

 実践神学とパストラルケアの教授である

Swintonと Pattisonは,スピリチュアリティの定

義は幅広く,多様であるがゆえに,曖昧さを包含

しているとする.スピリチュアリティを取り巻く

曖昧さゆえにケアの重要な側面としての説得力に

欠けてしまうと主張する批評家の意見に反し,ス

ピリチュアリティの概念が曖昧で,明確さに欠け

ることこそが,政治的,社会的,及び臨床的場に

おいて強力な影響を及ぼすスピリチュアリティの

強みであり,価値であると強調した46).

 Blasdellは,研究者による多様なスピリチュア

リティの定義を紹介しているが,スピリチュアリ

ティは個々のものと捉え,普遍的な定義を求める

のは現実的ではないと言及している47).

3.2 日本におけるスピリチュアリティの定義

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3.2.1 研究者による定義及び定義に対する見解

の変遷

 一方,日本においては,元来外国語であるスピ

リチュアリティという言葉は 1990年前後に入っ

てきており,「宗教性」「精神性」「霊性」などと訳

され,1990年代後半になり,あえて訳さない「ス

ピリチュアリティ」という語が用いられるように

なった48).

 神学者でありかつチャプレンでもあった,日本

人のスピリチュアリティ研究の第一人者である窪

寺が,『スピリチュアルケア入門』(2000年)49)の

中で,スピリチュアリティを,「生の危機に直面し

て「人間らしく」「自分らしく」生きるための「存

在の枠組み」「自己同一性」が失われたときに,

それらのものを自分の外の超越的なものに求めた

り,あるいは,自分の内面の究極的な者に求める

機能」と定義し,以降,多くの研究者がこの窪寺

の定義を参考に,研究者自身での視点からスピリ

チュアリティの定義づけをしている50─52).また,

窪寺は,スピリチュアリティが死,病,死別,老

いなどの危機的状況と関わっており,宗教とは深

い関係はあるが同じものではなく,しかし,スピ

リチュアリティは目に見えない超越的なものと関

わっているという事を日本の多くの研究者が指摘

していると述べている53).

 高橋らは,スピリチュアリティの世代間比較の

研究(2004)において,「スピリチュアリティの本

質は,人生の意味や死の恐怖,神の存在の探求な

ど,人間存在の根底に関わる人間自身の内面性で

あり,全ての人間が共通にもつ生命の根源である」

と定義し,スピリチュアリティの概念には宗教的

側面が含まれているものの,宗教性とは同一のも

のではないことを示唆している54).

3.2.2 スピリチュアリティの定義に対する見解

の特徴

 日本においても同様に,まず一つ目の特徴とし

て,研究者の多くは,定義の困難さを挙げている.

 竹田は,日本においてスピリチュアリティとい

う用語が日常生活の中で用いられることがほとん

どないことも関係して,スピリチュアリティ研究

を進めていくうえでの最初の障壁になっているこ

とを指摘している55).

 加えて,spiritualityは,「霊性」「精神性」と訳

され,「心」「霊魂」などのといった目に見えない

側面を持つとともに,「宗教(上)の」「教会」のなど,

宗教的なニュアンスを含んだ言葉であるため,そ

の訳語の限界も相俟って日本人の感覚に沿いにく

いと示唆している56).

 田崎らは,宗教を持たない人が多い日本人に

とって,宗教的な側面を含むスピリチュアリティ

観の個人差が大きいと指摘57)し,藤井は,宗教的

背景も含めた日本人の文化を反映したより精度の

高いスピリチュアリティ概念構造の解明が課題で

あると述べている58).

 日本において,定義の困難さに起因する要素の

一つとして挙げられる点は,宗教と同義語ではな

い「スピリチュアリティ」の訳語の問題があると

考えられる.

 小楠は,spiritualityの訳語の変遷を整理し,1980

年代まではキリスト教を背景にして spiritualityを

とらえ,その必要に応じて役割を果たすのはいわ

ゆる宗教家である牧師であるとされ,宗教家が行

うパストラルケアにおいて spiritualityを「宗教的」

と訳されることが多かったと示している59).その

後,1980年代後半から仏教の立場からの意見もみ

られるようになり,日本人にとっての spirituality

についても注目されるようになり,「宗教的」に加

えて「霊的」という言葉が用いられるようになっ

たと示唆している60).

 また,宗教学研究家である安藤は,日本におい

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て現在スピリチュアリティという語は,宗教や宗

教性とは区別された形で用いられていることを指

摘している61).その理由として,WHOの「“生き

ていること”がもつ霊的な側面には宗教的な因子

が含まれていが,“霊的”は “宗教的”と同じ意

味ではない」という見解62)や,日本語における「霊

性」には霊魂・幽霊などの意味が含まれることか

ら誤解を招く可能性があること,スピリチュアル

という言葉が持っている深さや広がりを的確に表

す日本語が存在しないことを挙げている63).

 次に挙げられる特徴として,多様性を持つ概念

としてスピリチュアリティが捉えられている点で

ある.

 WHOは,スピリチュアリティを「人間として

生きることに関連した経験的一側面であり,身体

感覚な現象を超越して得た体験を表す言葉である」

と定義64)し,窪寺は,「人間的に生得的に備わって

いるもの」65)であるとしている.このような見解

からすると,スピリチュアリティは,人間存在の

根源性に関わる概念であり,全ての人が有するも

のであると捉えることができる.

 しかし,小藪は,日本ではスピリチュアリティ

やスピリチュアルケアの研究や実践が,主に死と

向かい合っている終末期の患者を対象に行われて

きた背景から,同じ看護師であっても,活動する場

の違いによる差が大きいことを指摘している66).

また,田崎らは,特定の宗教を持たない人が多い

日本人のスピリチュアリティ観は個人差が大きい

と指摘している67).また,高橋らは,日本人の持

つスピリチュアリティ概念は,年齢によって異な

る様相を持つことを指摘し,日本の高齢者はスピ

リチュアリティと宗教性とを同一視せず,他の年

代よりもより具体的な俗的な日常概念として捉え

ていることを明らかにしている68).

4.日本と英語圏諸国におけるスピリ

チュアリティの定義    

 看護研究論文から得られた,研究者による主な

スピリチュアリティの定義及び概念について表 1

の通り示す.

5.日本と英語圏諸国におけるスピリチュア

 リティの定義の変遷と共通性・相違性

 スピリチュアリティの概念の導入が先行してい

る英語圏諸国において,看護におけるスピリチュ

アリティの定義について,研究者の見解を俯瞰し

た結果,1950年代から 1970年代の初期の研究に

おいては,スピリチュアリティは宗教と同一のも

のとみなされており,スピリチュアリティと宗教

は置き替え可能であると捉えられていたことが明

らかになった.キリスト教を背景にもつ欧米にお

いて,1920年代からパストラルケアが病院にお

いて実践の場面で活用され始めた95).パストラル

ケアとは,キリスト教会の信者への信仰上の配慮

として実施されてきた聖職者によって執り行われ

る「魂のケア」である96).1960年代にパストラル

ケアと心理学との接近が図られ,心理学者である

Pruyserがスピリチュアルな側面への診断の必要

性を表明し,パストラルケアにおけるスピリチュ

アリティアセスメントの研究が大きく発展した

97).欧米諸国では,この様な文化的・宗教的背景

の影響を受け,初期の看護研究ではスピリチュア

リティの定義への見解の特徴として,スピリチュ

アリティと宗教の同一視がされたのではないかと

考える.

 その後,1980年代から 1990年代にかけての看

護のパラダイムシフトにより,スピリチュアリ

ティの概念は,宗教的側面の強調から,全人的な

人間理解のもとに QOLに関連する概念へと捉え

られるようになった.表 1においても,1999年

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7表1 主なスピリチュアリティの定義の抜粋(英語圏諸国における定義の和訳:筆者による)

年研究者

定     義

研究者

定     義

1970

Vaill

ot, M

.C.

必ずしも宗教を意味せず,心理的なものを含み,生物学的および機械的なものとは対峙する私たちを動かす力

の特性,あるいは私たちに影響を及ぼす不可欠な原理

69)

1980

Ellis

, D.

神との力学的,及び個人的な関係を持つという特性

70)

1988

Labu

n, E

.人間間のインターパーソナルな関係,また別の領域との超越的な関係を通じて表現される関係性の性質を持つ.

愛,希望,信用の存在を証明する感情,またその中で,ある人生の意味,存在の理由を提供する

71)

1992

Ree

d,P.

G.

個人に力を与え,価値を下げることなく,自己を超える側面との関連性を通じて意味を見出す特質.ここでの

関連性とは,個人の中でのつながり,他者や自然環境におけるつながり,また,不可視の存在である神(

God)

との関連性の中で経験される

72)

1995

God

dard

, N.C

.どのような状況であろうと,様々な状況において証明される人生に対するアプローチ

73)

1999

Nar

ayan

asam

y,

A.

すべての個人の中に存在し,神との関連性や究極の現実,優れたものとしての個人の価値から由来する内なる

平和や力

74)

2001

Car

roll,

B.

存在している人間の内なる本質,個別に存在するのではなく身体と心の統合された部分として存在する.他者,

世界,宇宙との係り合いの中に存在し,独立して存在するものではない

75)

2002

O’H

ara,

D.P

.人々の考え,行動や生き方を活気づけ人間の存在における自己,相互,他者の側面を統一する基本的な人間の

力76)

藤井美和

「人間は,病気の有無に関わらず,存在意義や生きる意味を探しながら生きている」という人間存在の根源性

に関わる概念

77)

2003

岡本宣雄

人が人生の課題に直面した時に,その困難な中においても生が肯定され,安らぎや希望が与えられるために,

自己を超越したものに結びつけ,また,存在の意味や生きる目的を見いださせる活力

78)

生方怜奈

徳丸定子

宗教ではなく個人的な宗教性に通じるものとして,“目に見えない『いのち』のつながり

”について扱うもの

79)

2004

Nar

ayan

asam

y,

A.

私たちを他者や周囲の人々とつながるよう動かす内なる側面.私たちに意味や目的を探求し,他者との積極的

で信頼のある関係を築くように動かすもの.私たちを成長としての旅路に導くもの

80)

鶴若麻里

岡安大仁

宗教や宗教性よりは広い概念であり,人間存在の根本をなすものと関連し,生きる意味や目的,価値などに関

わるもの

81)

安藤満代

人が何らかの苦難や困難に遭遇した時,今まで拠り所としていた価値や信念に疑問を感じ,自分の存在や人生

について問うようになること

82)

小楠範子

人間に本来備わっており,人生の節目となる出来事において覚醒するもの.「自己」「他者」「自分の力を超え

る大きなもの」との関係性を有し,これらの関係性を基盤とし,「生きる意味・目的」「死や苦しみの意味」に

ついて探求する特質をもつ

83)

2005

河 正子

個人の生きる根源的エネルギーとなるものであり,存在の意味に関わる.したがって,そのありようは,個人

の全体的機能,すなわち,個人の身体的,心理的,社会的領域の基盤として各側面の表現形に影響を及ぼす

84)

2006

Will

iam

s, D

.M.人間あることの本質.総合的なエネルギーであり,人生の意味や幸福に対する超越的な要求.最終的に健康や

苦痛の緩和へつながる探求

85)

2007

Sess

anna

, L.

,Fin

ell,D

. &

Jeze

wsl

i,M.A

1)信念や価値についての宗教的組織 

2)人生の意味,目的,他者との関連性

3)信念や価値についての宗教とは関係ない組織 

4)比ゆ的,超越的な現象

86)

2009

小藪智子,他

生きることに深くかかわるもの,生きることを支えるものである.生きる意味や目的,自己の存在や死,超越

者や自然など大いなるものとの関係に関連している.全ての人間に備わっているものであり,人間存在の書く

となるもの

87)

今西二郎

幸福感や生きる喜び,生きる力,生への畏敬,自我の存在感,生きる意欲など.また,自然に対する畏敬の念

や,自然との共生感,自然の中での自我の存在などがさらに上位の概念として続く.さらに宗教的な意味合い

をもつ

88)

中村雅彦

人々の日常生活における体験,信念,態度,価値観の反映された多様な心理的変数であり,それは人々にとっ

て必ずしも自覚され,意識されているとは限らない「潜在因子」89)

2010

本郷久美子,他人を一つに統合する力で,人間の生き方の根源にかかわる,普遍的に与えられている生命の本質である.人間

の内的・外的環境,超越的存在との関係の中で,目覚めながら機能していくもの

90)

2013

岡本宣雄

人間が生来的にもち超越的なものとの関係のなかで,自己の存在のうちに意味を見出す人間の生の側面

91)

2014

進藤伸一

個人が生きる意味や目的を探求すること

92)

2015

Rog

ers,

M.,

&

Wat

tis, J

患者であろうと,看護師であろうと,個人が病気や危機的状態に遭遇した時に弱気な気持ちになった時に特に

重要なものとなる希望や人生の意味や目的を見出す方法

93)

山崎章郎

人生の危機に直面して『人間らしく』『自分らしく』生きることを支えてきた根拠である.それまでの自己と他

者との関係性の在り様では,自己が肯定できなくなった時,自分の外の大きいものに新たな拠り所を求めたり,

内省を深めることによって,過去から現在に至る,自己と他者との関係性の在り様を吟味・見直し,その結果

出現した自己と他者との新たな関係性の在り様を通して,その状況での自己を肯定しようとする機能

94)

Page 8: 看護研究論文からみるスピリチュアリティ ...€¦ · 3 cinahl においては1988 年の論文が初出である が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

8

Narayanasamyの定義に「神との関連性」という表

現がみられるのを最後に,それ以後の定義におい

ては「超越的存在」という表現はあるものの,明

確に「神」(God)という表現が見られなくなった.

 日本における変遷を概観すると,スピリチュア

リティの概念が導入された時期を裏付けるように,

定義の表出は 2000年以降であり,日本における

定義では既に宗教と同一視して捉える傾向はない

ことが明らかになった.

 日本,及び英語圏諸国におけるスピリチュアリ

ティの定義の共通性・相違性を概観すると,共通

してみられる用語は「自己」「他者」「超越的存在」

であり,共通点の一つ目として,人間存在の根源

性に関わる概念であり,全ての人間が本来持ち合

わせている力であるということがあげられる.二

つ目として,「自己」「他者」「超越的存在」との関

連性を基盤として,人生の意味や目的を見出す力

であるとしている.三つ目として,普段は潜在化

しているが,危機的状況に直面した時に潜在化す

るものとして捉えていることが挙げられる.四つ

目として,宗教的な因子が含まれているが,宗教

とは同一のものではなく,区別している点である.

一方,相違点として,英語圏諸国における看護研

究論文においては,普遍的な定義を求めることの

非現実性を述べていることも明らかになった.こ

のような視点は,日本の研究論文には見られな

かった視点である.スピリチュアリティの定義に

関する統一見解がないことが,スピリチュアリ

ティの概念を豊かに議論し発展させることにつな

がると論述しており,今後のスピリチュアリティ

研究への重要な視点を示していると考える.

 日本においても英語圏諸国においても,スピリ

チュアリティの概念については,いまだ定まった

定義は見出せていないという現状がある.スピリ

チュアリティは,個人によって異なる相対的な概

念であり,個人の背景にある文化や環境に影響を

受けるという特徴があると考える.環境は,人間

の営みの場であり,人間の価値観を形成し文化を

築く重要な側面の一つでもある98).よって,個人

の持つ文化や,置かれている環境によってスピリ

チュアリティが影響されるという前提に立ち,概

念の定義をする必要性があると考える.

6.限界と展望

 本論では,看護研究論文においてスピリチュア

リティがどのように定義されているかを検討する

ために,「看護」「スピリチュアリティ」「定義」の

3つのキーワードに絞り,関連ワードを追加して

の文献検索は行っていない.そのため,取り扱っ

た論文の件数が少なく,一般化はできないが,看

護におけるスピリチュアリティについての捉え方

の変遷,及びスピリチュアリティの定義や概念の

概要を把握する一助となったのではないだろうか.

今後はさらに,看護におけるスピリチュアリティ

に関する研究論文や書籍を精読し,新しい知見を

基に看護におけるスピリチュアリティの在り方に

ついてあらゆる側面から模索していきたいと考え

る.

1)論文中で示された Royal College of Nursing

(RCN)(2011)は,2011年に RCNが出版して

いる看護におけるスピリチュアリティについて

のポケットガイド(Spirituality in nursing care:

a pocket guide)の冊子のことである.

参考文献

1)石井八惠子,片岡智子(2003):文献からみ

るスピリチュアリティへの関心の高まり,ホス

ピスケアと在宅ケア,11 (3):288

2)藤井美和,大村英明,窪寺俊之,他編集(2010):

Page 9: 看護研究論文からみるスピリチュアリティ ...€¦ · 3 cinahl においては1988 年の論文が初出である が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

9

生命倫理における宗教とスピリチュアリティ:

16,晃洋書房

3)柏木哲夫(2007):終末期医療をめぐるさま

ざまな言葉,総合臨床,56 (9):2744

4)World Health Organization:「WHO Definition

of Palliative care」: http//www.who.int/cancer/

palliative/definition/en/

5)Pruyser, P. (1976): The minister as diagnostician:

Personal problem in pastoral perspective,

Philadelphia: The Westminster Press. 60-79

6)藤井美和,李 政元,田崎美弥子,他(2005):

日本人のスピリチュアリティの表すもの:

WHOQOLのスピリチュアリティ予備調査から,

日本社会精神医学雑誌,14 (1):5

7 )Reinert, K.G., Koening, H.G. (2013): Re-

examining definitions of spirituality in nursing

research. Journal of Advanced Nursing, 69 (12):

2627

8)McSherry, W., Cash, K. (2004): The language of

spirituality: an emerging taxonomy. International

Journal of Nursing Studies, 41: 152

9)MacLaren, J. (2004): A kaleidoscope of under-

standings: spiritual nursing in a multi-faith

society, Journal of Advanced Nursing, 45 (5): 457

10)Sartori, P. (2010): Spirituality 1: should spiritual

and religious beliefs be part of patient care?

Nursing Times, 106 (28): 2 http://www.nursingtimes.

net/nurse-managers/spirituality-1-should-

11)Pike, J. (2011): Spirituality in nursing: a system-

atic review of the literature from 2006-10. British

Journal of Nursing, 20 (12): 745

12)前掲書 3):2623

13)Rogers, M., Wattis, J. (2015): Spirituality in

nursing practice. Nursing Standard, 29 (39): 52

14)前掲書 1):288

15)高橋正美,井出 訓(2004):スピリチュア

リティの意味 ―若・中・高齢者の 3世代比較

による霊性・精神性についての分析―,老年社

会科学,26 (3): 296

16)小楠範子(2004):スピリチュアリティの概

念の検討,臨床死生学,9:1-8

17)進藤伸一(2014):リハビリテーションのた

めの修正 ICF(国際生活機能分類)モデルの検討,

秋田大学保健学専攻紀要,22 (1):72

18)Blasdell, N.D. (2015): The Evolution of Spiritu-

ality in the Nursing Literature. International

Journal of Caring Sciences, 8 (3): 756

19)Kleidler, M.C. (1978): Meaning in suffering: a

nursing dilemma. Unpublished doctoral disser-

tation, Teacher College, Columbia University,

New York Labun, E. (1988): Spiritual care: an

element in nursing care planning, Journal of

Advanced Nursing, 13:314中に引用

20)前掲書 18):757

21)前掲書 18):757

22)前掲書 18):758

23)Simsen, B. (1976): Spiritual dimension. The

New Zealand Nursing Journal, 69 (1):12-14前掲

書 14):758中に引用

24)前掲書 18):761

25)Emblen, J.D. (1992): Religion and Spirituality

Defined According to Current Use in Nursing

Literature. Journal of Professional Nursing, 8 (1):

44

26)Harrison, J. (1993): Spirituality and nursing

practice. Journal of Clinical Nursing, 2: 211

27)Goddard, N.C. (1995): ‘Spirituality as integ-

rative energy': a philosophical analysis as requi-

site precursor to holistic nursing practice. Journal

of Advanced Nursing, 22: 809

28)前掲書 11):746

29)前掲書 18):756

30)Labun, E. (1988): Spiritual care: an element in

nursing care planning, Journal of Advanced

Page 10: 看護研究論文からみるスピリチュアリティ ...€¦ · 3 cinahl においては1988 年の論文が初出である が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

10

Nursing, 13: 314

31)前掲書 27):814

32)Narayanasamy, A. (1999): A review of spiritu-

ality as applied to nursing. International Journal of

Nursing Studies, 36: 118-119

33)前掲書 8):151

34)前掲書 27):810

35)Sessanna, L., Finnell,D., and Jezewski, M.A.

(2007): Spirituality in Nursing and Health-Related

Literature :A Concept Analysis. Journal of Holistic

Nursing, 25 (4): 252

36)前掲書 26):216

37)George, L.K., Larson, D.B., Koenig, H.G. and

McCullogh, M.E. (2000): Spirituality and Health:

What We Know, What We Need to Know. Journal

of Social and Clinical Psychology, 19 (1): 103

38)McSherry, W., Cash, K., Ross, L. (2003):

Meaning of spirituality: implications for nursing

practice. Journal of Clinical Nursing, 13: 939

39)前掲書 8):154

40)McSherry, W., Draper, P. (1998): The debates

emerging from the literature surrounding the

concept of spirituality as applied to nursing.

Journal of Advanced Nursing, 27: 690

41)Tanyi, R.A. (2002): Towards clarification of the

meaning of spirituality. Journal of Advanced

Nursing, 39 (5): 501-502

42)Williams, D.M. (2006): Putting a puzzle togeth-

er: making spirituality meaningful for nursing

using an evolving theoretical framework. Journal

of Clinical Nursing, 15: 812

43)Clarke, J. (2009): A critical view of how nursing

has defined spirituality. Journal of Clinical

Nursing, 18: 1672

44)Timmins, F, McSherry, W. (2012): Spirituality:

the Holy Grail of contemporary nursing practice.

Journal of Nursing Management, 20: 952

45)前掲書 11):748

46)Swinton, J., Pattison, S. (2010): Moving beyond

clarity: towards a thin, vague, and useful

understanding of spirituality in nursing care.

Nursing Philosophy, 11: 226

47)前掲書 18):760

48)安藤泰至(2008):「スピリチュアリティ」概

念の再考,東洋英和女学院大学死生学研究所編,

死生学年報 4巻,7,東京

49)窪寺俊之(2000):スピリチュアル入門,第 1

版,16-37,三輪書店,東京

50)鶴若麻里,岡安大仁(2004):リビングウィ

ルへのスピリチュアリティの関連性の検討,臨

床死生学,9 (1):10

51)小藪智子,白岩千恵子,竹田恵子,他 (2009):

スピリチュアリティの認知の有無と言葉のイ

メージ ―緩和ケア病棟の看護師,一般病棟の

看護師,一般の人,大学生の特徴―,川崎医療

福祉学会誌,19 (1):60

52)山崎章郎(2015):スピリチュアルペインと

ケア ―その良き理解のためにスピリチュアリ

ティを定義する―,死の臨床,38 (1):26-27

53)窪寺俊之(2005):スピリチュアルケアとは

何か,心の臨床,24 (2):164-165

54)前掲書 15):296-297

55)竹田恵子,太湯好子(2006):日本人高齢者

のスピリチュアリティ概念構造の検討,川崎医

療福祉学会誌,16 (1):57

56)前掲書 55):54

57)田崎美弥子,松田正巳,中根充文(2001):

スピリチュアリティに関する質的調査の試み

 ―健康およびQOLの概念のからみの中で―,

日本醫事新報,4036:24-32

58)前掲書 6):11

59)前掲書 16):5

60)前掲書 16):6-7

61)前掲書 48):7

Page 11: 看護研究論文からみるスピリチュアリティ ...€¦ · 3 cinahl においては1988 年の論文が初出である が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

11

62)世界保健機構編,武田文和訳(1995):がん

の痛みからの解放とパリアティブ・ケア:48,

金原出版,東京

63)稲葉裕(2000):スピリチュアルの邦訳につ

いての考察,ターミナルケア,10 (2):94-96

64)前掲書 62):48

65)窪寺俊之(2004):スピリチュアルケア学序説,

第 1版:8,三輪書店,東京

66)前掲書 51):67-69

67)前掲書 57):24-32

68)前掲書 15):296

69)Vaillot, M.C. (1970): The Spiritual Factors in

Nursing. Journal of Practical Nursing, 20: 30

70)Ellis, D. (1980): Whatever happened to the

Spiritual Dimension? The Canadian Nurse, 76: 42

71)前掲書 30): 315

72)Reed, P.G. (1992): An Emerging Paradigm for

the Investigation of Spirituality in Nursing.

Research in Nursing & Health, 15: 350

73)前掲書 27):809

74)前掲書 32): 123-124

75)Carroll, B. (2001): A phenomenological explo-

ration of the nature of spirituality and spiri-tual

care. Mortality, 6 (1): 95

76)O'Hara, D.P. (2002): IS THERE A ROLE FOR

PRAYER AND SPIRITUALITY IN HEALTH

CARE? Complementary and Alternative Medicine,

86: 42

77)前掲書 6):4

78)岡本宣雄(2003):高齢者のスピリチュアル

な課題に関する研究 ―高齢者へのアンケート

調査から―,キリスト教社会福祉学研究,35:

37-38

79)生方玲奈,得丸定子(2003):「いのち教育」

におけるスピリチュアリティについて ―定義

の考察と CD-ROM教材の開発―,死の臨床,

26 (2):250

80)Narayanasamy, A. (2004): The puzzle of spiri-

tuality for nursing: a guide to practical assess-

ment. British Journal of Nursing, 13 (19): 1140

81)前掲書 50):9-10

82)安藤満代(2004):末期がん患者に対するラ

イフレビュー・インタビューの試み,カウンセ

リング研究,37 (3):221-231

83)前掲書 16):1-8

84)河正子(2005):スピリチュアリティ,スピ

リチュアルペインの探求からスピリチュアルケ

アへ,緩和ケア,15 (5),368-369

85)前掲書 42):813

86)前掲書 35):255-7

87)前掲書 51):60

88)今西二郎(2009):次世代型統合医療とバイ

オフィードバック,バイオフィードバック研究,

36 (2),153

89)中村雅彦(2009):スピリチュアリティ(霊性)

概念の再検討 ―市井の人々が語る日本的なス

ピリチュアリティの定量的,定性的分析のパラ

ダイム―,http://homepage3.nifty.com/yahoyorodu/

rsts.htm

90)本郷久美子(2010):我が国の看護領域にお

けるスピリチュアリティに関する文献的考察,

三育学院大学紀要,2 (1):54

91)岡本宣雄(2013):高齢者の Spiritual well-being

の概念の位置づけとその特徴,川崎医療福祉学

会誌,23 (1):38

92)前掲書 17):74

93)Rogers, M., Wattis, J. (2015): Spirituality in

nursing practice. Nursing Standard, 29 (39): 51

94)前掲書 52):26-27

95)岡本宣雄(2010):スピリチュアリティを焦

点としたケアのアプローチモデルに関する研究

 ―パストラルケアにおけるアセスメントの研

究史から―,川崎医療福祉学会誌,20 (1):90-

91

Page 12: 看護研究論文からみるスピリチュアリティ ...€¦ · 3 cinahl においては1988 年の論文が初出である が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

12

96)前掲書 95):90

97)前掲書 95):92

98)中谷啓子,島田涼子,大東俊一(2013):ス

ピリチュアリティの概念の構造に関する研究

 ―「スピリチュアリティの覚醒」の概念分析―,

心身健康医学,9 (1):38

Page 13: 看護研究論文からみるスピリチュアリティ ...€¦ · 3 cinahl においては1988 年の論文が初出である が,研究者が研究論文中で,それ以前に他の研究

13

Definitions of Spirituality in Nursing Literature from Japan

and English-speaking Countries: A Comparative Review Study

Emiko Ubukawa, Yoko Nakanishi Gunma Prefectural College of Health Sciences

  This paper aims to provide a comparative overview of definitions of spirituality in the nursing literature from Japan and three English-speaking countries (the United Kingdom, the United States and Canada).  Much of the nursing literature selected in this paper includes research on definitions of spirituality suggested by individual researchers, review studies on definitions mentioned by previous researchers and researchers' opinions of spirituality.  As indicated by one research paper, from the 1950s to the 1970s, spirituality in the target countries was regarded as the same as religion under the influence of pastoral care offered by priests in medical settings. From the 1980s to the 1990s, the paradigm in the nursing field shifted from the religious dimension to the holistic dimension of human beings. The concept of spirituality was introduced in Japan between the late 1990s and the early 2000s.  The findings of our research indicate difficulties in conceptualizing spirituality in the nursing field because of its ambiguity and conceptual confusion.  Despite the increased interest in spirituality, there has been little agreement over its definition. However, the traits common in definitions of spirituality as suggested by many researchers are as follows: 1) the innate power all individuals possess; 2) an essential, integrative energy which could drive us to search for the meaning or purpose of life in relationships with ‘self,'‘others,' and ‘transcendence;' 3) the potential power we find when people are faced with difficulties or crises; and 4) spirituality has been associated with religion but is not the same as religion.  Many nursing researchers have stated it is necessary to define spirituality for better practice in the nursing field while others find it unnecessary to define spirituality due to its uniqueness to individuals.

   Keywords: spirituality, definition, nursing literature, comparative review research, Japan,        English-speaking countries