eds (a) o c al (b) sad, eds (a) sad, eds (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5...

50
3-308 SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散 CVD シリカ膜 TEM/EDS 測定結果(5 分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散 CVD シリカ膜 TEM/EDS 測定結果(120 分製膜) EDS (a) EDS (b) EDS (a) EDS (b) 20nm 0 200 400 600 800 0 2 4 keV Intensity 0 200 400 600 800 1000 0 2 4 keV Intensity Si C O Al Si C O Al (a) (b) (a) (b) 0 200 400 600 0 2 4 keV Intensity 0 200 400 600 800 0 2 4 keV Intensity Si C O Al Si C O Al (a) (b) 100nm

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Page 1: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-308

SAD, EDS (a)

SAD, EDS (b)

図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散 CVD シリカ膜 TEM/EDS 測定結果(5 分製膜)

図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散 CVD シリカ膜 TEM/EDS 測定結果(120 分製膜)

EDS (a)

EDS (b)

EDS (a)

EDS (b)

20nm

0

200

400

600

800

0 2 4

keV

Inte

nsity

0

200

400

600

800

1000

0 2 4

keV

Inte

nsity

Si

C

O

Al

SiC

O

Al

(a)

(b)

(a)

(b)

0

200

400

600

0 2 4

keV

Inte

nsity

0

200

400

600

800

0 2 4

keV

Inte

nsity

Si

C

O

Al

SiCO

Al

(a)

(b)

100nm

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3-309

2.1.2.5 モジュール製膜

図 Ⅲ-2.1.2.5-1 に示 すミニモジュール製 膜 装 置 を用 いて、モジュールへの対 向 拡 散

CVD 製膜を行った。図Ⅲ-2.1.2.5-2 に製膜容器とモジュール内ガス流れの模式図を示

す。

図Ⅲ-2.1.2.5-1 ミニモジュール製膜装置

図Ⅲ-2.1.2.5-2 製膜容器およびモジュール内ガス流れの模式図

モジュール製膜容器径がφ6mm 単管φ6mm 単管と 6 本モジュールとの相似性を考慮

して、N2 1000ml/min、O2 1000ml/min の条件で製膜をおこなった結果、酸素過剰であり、

TMOS が粉状になって噴き出してきたため中止した。そこで、酸素流量のみを 200ml/min

に下げて、製膜時間依存性を検討した結果を図Ⅲ-2.1.2.5-3 に示す。

TMOS out

O2 out 反応

O2 in

TMOS in

900mm

70mm

Open

Page 3: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-310

0 50 100 150Deposition period [min]

Perm

eanc

e [m

ol m

-2s-1

Pa-1

]

Sepa

ratio

n ra

tio H

2/N2

[-]

10-5

10-6

10-7

10-8

10-9

10-10

10-11

1000

600

400

200

0

800

H2 N2 H2/N2

図Ⅲ-2.1.2.5-3 モジュール製膜時間依存性

(製膜条件:温度 873K、窒素 1000ml/min、酸素 200ml/min)

2 時間製膜することで、873K において H2/N2 分離係数が 160、水素透過率が 5.2x10-8

mol.m-2.s-1.Pa-1 という性能の膜を得た。これは TMOS バブラー容器の容積が 500ml 程度し

かなく、飽和蒸気圧とならなかったために製膜が十分に行われていない結果であると考え、

窒素流量を 200ml/min に下げて製膜を 2 時間行った結果を図Ⅲ-2.1.2.5-4 に示す。

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3-311

図Ⅲ-2.1.2.5-4 モジュール性能温度依存性

(製膜条件:温度 873K、窒素 200ml/min、酸素 200ml/min、2 時間製膜)

水素透過率は 2.8x10-8 mol.m-2.s-1.Pa-1 と低くなったものの H2/N2 分離係数は 1800 の

膜を得ることが出来た。水素透過の活性化エネルギーは 22kJ/mol であった。

まだ、TMOS 側にシリカ粉が生成しており、酸素がモジュールのデッドエンド部で折り返

す際に圧力が高まり、酸素の噴き出しが起こっていると考え、酸素流量を 100ml/min に下

げて 2 時間製膜を行った結果を図Ⅲ-2.1.2.5-5 に示す。

1 1.2 1.4 1.6 1.8 20

500

1000

1500

2000

Sepa

ratio

n ra

tio H

2/N2

[-]

Perm

eanc

e [m

ol m

-2s-1

Pa-1

]10-6

10-7

10-8

10-9

10-10

10-11

1000/T [K-1]

H2 N2 H2/N2

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3-312

1 1.2 1.4 1.6 1.8 20

2000

4000

6000

Sepa

ratio

n ra

tio H

2/N2

[-]

Perm

eanc

e [m

ol m

-2s-1

Pa-1

]10-6

10-7

10-8

10-9

10-10

10-11

1000/T [K-1]

10-12

H2 N2 H2/N2

図Ⅲ-2.1.2.5-5 モジュール性能温度依存性

(製膜条件:温度 873K、窒素 200ml/min、酸素 100ml/min、2 時間製膜)

水素透過率は 3.2x10-8 mol.m-2.s-1.Pa-1、H2/N2 分離係数は 5800 の膜を得ることが出

来た。水素透過の活性化エネルギーは 19kJ/mol であった。ここで SEM による膜表面観察

を行った結果を図Ⅲ-2.1.2.5-6 に示す。

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3-313

図Ⅲ-2.1.2.5-6 シリカ膜モジュールおよび単管表面 SEM 像

単管と比較して、デッドエンド部のモジュール表面は表面にシリカが多量に生成してい

ることがわかる。酸素流量を下げても酸素が TMOS 側に拡散しているということは、酸素が

TMOS 側に拡散したときに TMOS が細孔内に存在しないのではないかと考えた。

ここで、φ6mm 単管を用いて 3 つの検討を行った。まず、TMOS を先に流し、5 分後に

酸素を供給するという製膜方法を検討した。この製膜方法では 873K において H2/N2 分離

係数が 3200、水素透過率が 1.8x10-7 mol.m-2.s-1.Pa-1 という性能の膜が得られ、水素透

過の活性化エネルギーは 18kJ/mol であった。水素透過率が低くなり、活性化エネルギー

が高くなったことから、TMOS が細孔内部に拡散し、より多く製膜された可能性が高いと考

えられる。

次に TMOS と酸素を同時に流し、5 分後に酸素の供給を停止するという製膜方法の検

討を行った。この製膜方法では 873K において H2/N2 分離係数が 5700、水素透過率が

2.4x10-7 mol.m-2.s-1.Pa-1 という性 能 の膜 が得 られ、水 素 透 過 の活 性 化 エネルギーは

18kJ/mol であった。このことから酸素は内部にある程度存在していれば十分拡散し、製膜

10μm10μm

10μm

10μm

Dead end side Middle Connection side

Single tube

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1 1.2 1.4 1.6 1.8 20

2000

4000

6000

Sepa

ratio

n ra

tio H

2/N2

[-]

Perm

eanc

e [m

ol m

-2s-1

Pa-1

]

10-6

10-7

10-8

10-9

10-10

10-12

1000/T [K-1]

10-11

H2 N2 H2/N2

が行われることがわかった。

後に予想されるモジュール製膜と同じ状況を想定し、先に酸素のみを流し、5 分後に

TMOS を流すという製膜方法で検討した。この製膜方法では 873K において H2/N2 分離

係数が 67、水素透過率が 6.8x10-8 mol.m-2.s-1.Pa-1 という性能の膜が得られた。このことか

ら酸素が拡散した際に細孔内もしくは近傍に十分量の TMOS が存在しなければ、細孔内

に製膜されないことが考えられる。

モジュール製膜容器容積を計算すると、窒素流量 200ml/min では 10 分間で TMOS が

十 分 量 に達 することが分 かった。そこで TMOS のみを先 に供 給 し、10 分 後 に酸 素 を

100ml/min で供給し、2 時間製膜(TMOS 供給時間)を行った結果を図Ⅲ-2.1.2.5-7 に示

す。

図Ⅲ-2.1.2.5-7 モジュール性能温度依存性

(製膜条件:温度 873K、窒素 200ml/min、10 分後に酸素 100ml/min、2 時間製膜)

水素透過率は 7.4x10-8 mol.m-2.s-1.Pa-1、H2/N2 分離係数は 3700 の膜を得ることが出

来た。水素透過の活性化エネルギーは 17kJ/mol であった。図Ⅲ-2.1.2.5-8 に示す SEM

による膜表面観察結果より、膜表面状態はかなり単管に近づいていることがわかった。

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3-315

図Ⅲ-2.1.2.5-8 シリカ膜モジュールおよび単管表面 SEM 像

製膜時間の短縮による水素透過率向上を狙い、15 分間の製膜を行った結果を図Ⅲ

-2.1.2.5-9 に示す。

10μm10μm

10μm

10μm

Dead end side Middle Connection side

Single tube

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1 1.2 1.4 1.6 1.8 20

500

1000

1500

2000

Sepa

ratio

n ra

tio H

2/N2

[-]

Perm

eanc

e [m

ol m

-2s-1

Pa-1

]10-6

10-7

10-8

10-9

10-10

10-11

1000/T [K-1]

H2 N2 H2/N2

図Ⅲ-2.1.2.5-9 モジュール性能温度依存性

(製膜条件:温度 873K、窒素 200ml/min、10 分後に酸素 100ml/min、15 分製膜)

水素透過率は 1.9x10-7 mol.m-2.s-1.Pa-1、H2/N2 分離係数は 1300 の膜を得ることが出

来、水素透過の活性化エネルギーは 14kJ/mol であった。単管と同様の水素透過の活性

化エネルギーが得られたことで、ほぼ同じ構造が得られたと考えられる。この結果より、モジ

ュールで水素透過率 1x10-7 mol.m-2.s-1.Pa-1 以上、H2/N2 分離係数 1000 以上を達成する

ことが出来た。

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3-317

2.2 分離膜モジュール製造プロセス技術

2.2.1 液相法によるスプレー法製膜装置の開発

2.2.1.1 はじめに

多様性があるゾル-ゲル法は、種々の物質からなる無機多孔性分離膜の製膜法として

注目されている。その方法は,コロイドあるいはポリマーゾルを粗い多孔性セラミック基材面

上にコーティング・乾燥・焼成することによって、ナノあるいはマイクロ孔を有する多孔性セ

ラミック薄膜を作製する方法である。ゾルコーティング方法には、ディップコーティング、スリ

ップカースティング、スプレーコーティング等の幾 つかの方法があるが、いずれも常温でコ

ーティングした後、注意深く徐々に乾燥し、焼成のための昇温・降温も徐々に行う方法が、

クラック等の欠陥の発生を防止する方法であると考えられてきた。一方、浅枝 1)は、従来の

方法と全く異なる方法によって、多孔性薄膜を極めて効率的に素早く作製できる方法を

提案した。いわゆる“ホットコーティング法”と称し、コーティングされるべき基材を加熱し、コ

ーティングと同時に乾燥,焼成を行う方法である。しかし、これまではマニュアルでコーティ

ングを行っているため、膜を連続量産する事が困難であり、また塗布時の均一性に懸念が

あった。膜モジュールの大量生産化には、製膜過程の自動化が望ましく、そのための製膜

法としてスプレーホットコーティング法が有用と考えられる。そこで塗布過程をスプレー法に

し均一薄膜を作製する事と工業化への足がかりとしてスプレー製膜研究を行う事にした。

α-アルミナ多孔質管

平均細孔径 1 μm

基材表面平滑化処理(α-アルミナ微粒子の担持)

コロイドゾルの担持(180 ℃にてホットコーティング)

焼成

(500~600 ℃,15 min)

多孔性セラミック膜モジュ-ル

Spray coating

Manual coating

外径 10 mm,肉厚 1 mm

(数回繰返し)

α-アルミナ多孔質管

平均細孔径 1 μm

基材表面平滑化処理(α-アルミナ微粒子の担持)

コロイドゾルの担持(180 ℃にてホットコーティング)

焼成

(500~600 ℃,15 min)

多孔性セラミック膜モジュ-ル

Spray coating

Manual coating

外径 10 mm,肉厚 1 mm

(数回繰返し)

図Ⅲ-2.2.1-1 ホットコーティング法による製膜手順

図Ⅲ-2.2.1-1 にホットコーティング法の手順についての概略図を示す.図に示すように、

本研究ではホットコーティングのコロイド担持過程の手塗り作業をスプレーコートに置換し,

尚且つ丁寧に製膜された手作業膜と同等の性能を有する膜の作製が可能な装置を開発

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3-318

することを試みた。

まず、スプレーホットコーティング製膜装置の設計指針を得るために、予備的な手 動ス

プレーホットコーティング製膜装置を作製し、従来の製膜法とスプレーホットコーティング法

によって作製される膜の構造、分離性能の比較検討を行った。その後この予備実験によ

って得られた知見を基に、本格的な全自動スプレーホットコーティング製膜装置を設計・

作製し、スプレー製膜法による分離膜の作製を行った。

2.2.1.2 予備実験装置の作製

スプレーホットコーティング法による製膜を行うためには、膜の支持体となる基材を所定

温度まで加熱して、所定のコロイドゾルをスプレーによって均質に塗布・焼成を数回連 続

的に繰り返す操作を自動的に行うシステムが必要となる。予備実験装置としては、セラミッ

ク製支持体を所定温度まで加熱した後モータに取り付け、回転させながらスプレーにより

コーティングを行うこととし、焼成は従来通り支持体をモーターから取り外して手動操作に

より管状電気炉で焼成した。この方法における検討項目は、①膜支持体の形状、②支持

体のモーターへのマウンティングと回転条件、③支持体の予熱方法、④スプレーノズルの

種類と噴霧液量および噴霧方法、⑤噴霧時の環境と噴霧後の余剰コロイドゾルの回収除

去である。

(a) 膜支持体

本研究では、多孔性セラミック膜の基材として、多孔性セラミック管(多孔性α-アルミナ

管;外径:10 mm、肉厚:1 mm、長さ:100 mm、平均細孔径:1μm,空隙率:約 45%)の両

端にガラス管を図Ⅲ-2.2.1-2 に示すようにガラスフリットにより熔着したものを使用した。こ

の多孔性セラミック基材管外表面の凹凸を小さくし均質化するために、分離層のコーティ

ングを行う前に、約 1.9,0.2μm のα-アルミナ微粒子をシリカ-ジルコニアコロイドゾル

(2wt%)をバインダ-として担持・焼成(500-530oC)した。この支持体形状は、当研究室で

十数年の間 、多孔性セラミック分離 膜の開発・性能試験に使用してきたものであり、その

高温耐性、シール性などに問題がないことは確認されている。また、この支持体形状に適

したガス透過および浸透気化試験装置により、作製した膜の性能評価も容易に行うことが

できる。

(b) 膜支持体およびスプレー部

支持体回転モーター廻りの作製として、モーターと支持体との設置治具、モーター架台、

モーター回転数制御系の作製を行った。図Ⅲ-2.2.1-3 に示すように。モーターと支持体

の設置治具として、Swagelok 製の 8mm-6.35mm 径違いユニオンを用いている。また、モ

ーター軸のサイズを 6.35 mm ユニオンに合うように改造している。モーター軸側はステン

レス製フェルールで固定し、支持体側 (8 mm) は着脱が簡便なようにテフロン製フェルー

ルを用い固定する事とした。

支持体回 転 モーターは支持体を回転させながらスプレー室へ移動できなければならな

Page 12: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-319

い。移動方法は車輌式とした。図Ⅲ-2.2.1-4 にモータ架台の概略図を示す。また、支持

体回転用モーターは。このまま電源を入れると、フル能力の 3200 rpm で回転し、支持体

を設置した状態で使用 すると、支持 体の破 損 及 びモーター軸の偏 芯、さらにモーターの

焼きつきを起こす懸念がある。そこで、スライダックにより電圧を調整し回転数を制御する

システムを作製した。図Ⅲ-2.2.1-4 にモーター回転制御部の概略図を示す。モーター回

転数はエレクトロスライダーにより 500~3200 rpm の範囲で調節可能である。

α-アルミナ多孔質管 平均細孔径 1 mm 外径 10 mm,肉厚 1 mm,長さ 100 mm

ガラス管 外径 8 mm,内径 6 mm

ガラスフリット方端閉塞

α-アルミナ多孔質管 平均細孔径 1 mm 外径 10 mm,肉厚 1 mm,長さ 100 mm

ガラス管 外径 8 mm,内径 6 mm

ガラスフリット方端閉塞

α-アルミナ多孔質管 平均細孔径 1 mm 外径 10 mm,肉厚 1 mm,長さ 100 mm

ガラス管 外径 8 mm,内径 6 mm

ガラスフリット方端閉塞

図Ⅲ-2.2.1-2 セラミック膜支持体

PTF FerruleSUS Ferrule

Swagelok union 8-6.35 φMotor

Membrane

PTF FerruleSUS Ferrule

Swagelok union 8-6.35 φMotor

Membrane

図Ⅲ-2.2.1-3 支持体固定部

Page 13: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-320

SW

AC 100 V Electric slider

Motor

SW

AC 100 V Electric slider

Motor

図Ⅲ-2.2.1-4 モーター制御部

スプレーコーティングに用いるコロイドゾルには酸や有害物質が含まれており、これらを回収除去

する必要がある。コーティング時にコロイド液飛沫を系外に飛散させず、かつ実験(製膜)者を噴霧

液滴から守るために、コーティング操作は防護 BOX 内に設置されたスプレーチャンバー内で行っ

た(図Ⅲ-2.2.1-5)。支持体に担持されなかったコロイドゾルは廃液として下方へ排出され、酸蒸気

は図Ⅲ-2.2.1-6 に示すようにミストトラップを経由してドラフトチャンバーへと吸引される。

To draft chamber (vacuum)

Vapor

Protective box

Liquid waste

Spray chamber

Spray nozzle

To draft chamber (vacuum)

Vapor

Protective box

Liquid waste

Spray chamber

Spray nozzle

図Ⅲ-2.2.1-5 防護 BOX 付きスプレーチャンバー

Aspirator

Mist trap

Draft chamberFan

Spray chamber

Spray

Liquid waste

Aspirator

Mist trap

Draft chamberFan

Spray chamber

Spray

Liquid waste

図Ⅲ-2.2.1-6 酸ミスト除去設備

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3-321

(c) スプレーノズルの選定

スプレー噴霧方法として,超音波噴霧法,1流体ノズル噴霧法,2流体ノズル噴霧法につ

いて検討した。

1) 超音波噴霧法

超音波噴霧法とは、超音波を液体に当てると気泡の急速な膨張と収縮により液体の表

面が破裂と撹乱により霧化しエアロゾル(飛沫)が形成する現象を利用して原料溶液の霧

化を行う方法である。本研究では、オムロン製超音波式ネブライザ NE-U17 を使用した。

噴霧される液滴径が非常に小さことが均一コーティングをする上では有効と考えられたが、

塗布力が弱く製膜に時間がかかること、微霧を輸送するのが困難であること、また連続使

用により試料温度が超音波振動により上昇し、霧化が減少する事等の問題点も多く、装

置化するには困難であるため不採用とした。

2) 1流体ノズル噴霧法

図Ⅲ-2.2.1-7 に1流体ノズルを用いた噴霧装置の概略図を示す。

N2

Regulator

Spray nozzle

Colloidal sol N2

Regulator

Spray nozzle

Colloidal sol

図Ⅲ-2.2.1-7 1流体ノズルを用いた噴霧装置

噴霧量:14.6 ml/min、噴霧圧力:0.1 MPa、噴霧時間:3 sec,製膜温度:180℃乾燥機か

ら取出し後 15 sec 以内の条件下で、1.5 wt% SiO2 コロイドゾルを膜支持体に3回コーティ

ングし、支持体表面の目視観察を行った。噴霧距離によるコーティング状態の違いの模

式図を図Ⅲ-2.2.1-8 に示す。1流体ノズルによるスプレー製膜におては、ノズル距離を離

すことで霧粒子を広範囲に噴霧する事ができたものの、目視観察において薄膜表面に斑

が見られた。通常、1流体ノズルの霧粒径は 100 μm 程度であり霧粒径が大きいことが

影響していると思われたため、噴霧圧力を増加して霧粒径を小さくしたが、薄膜表面には

依然として斑が残存した。1流体ノズルの場合、噴霧量が多く、コーティング表面温度が

低下したことも斑が発生した要因と考えられる。尚、参考事項として、コロイドゾル液噴霧

実験中にノズル詰まりトラブルが頻繁に発生した。これは1流体ノズルとして使用した香水

用アドマイザーのノズル部分は、微小な孔が開いているだけのもので、洗浄不足により、

Page 15: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-322

SiO2 が目詰まりしたと考えられる。

スプレー方向

最初に噴霧される部分に大きな塗りむら

噴霧距離:2.5 cm

噴霧距離:3.5 cm

噴霧距離:5.5 cm

スプレー方向

斑点のような塗りむら

スプレー方向

小さな斑点

スプレー方向

最初に噴霧される部分に大きな塗りむら

噴霧距離:2.5 cm

噴霧距離:3.5 cm

噴霧距離:5.5 cm

スプレー方向

斑点のような塗りむら

スプレー方向

小さな斑点

図Ⅲ-2.2.1-8 コーティング状態の噴霧距離依存性

2) 2流体ノズル噴霧法

使用した2流体ノズル(いけうち BIMV8002S)は、液滴径はおよそ 10 μm と小さく、また

窒素ガス圧力(流量)を調節することにより液量を数 ml/min の少量に制御することが容易

であるという長所を有している。図Ⅲ-2.2.1-9 に2流体ノズルを用いた噴霧装置の概略図

を示す。

Spray nozzle

N2

Regulator

Colloidal sol

Spray nozzle

N2

Regulator

Colloidal sol

図Ⅲ-2.2.1-9 2流体ノズルを用いた噴霧装置

Page 16: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-323

噴霧圧力:0.25 MPa、噴霧時間:0.3 sec、製膜温度:180℃乾燥機から取出し後 15 sec

以内、噴霧距離:5.5 cm の条件下で、1流体ノズルの場合と同様に SiO2 コロイドゾルを膜

支 持 体 に コ ー テ ィ ン グ し 、 支 持 体 表 面 の 目 視 観 察 を 行 っ た 様 子 の 模 式 図 を 図 Ⅲ

-2.2.1-10 に示す。1流体ノズルを用いた場合と異なり、塗りむらは見られず均一にコーテ

ィングすることが可能であったため、2流体ノズルを採用した。

スプレー方向スプレー方向

図Ⅲ-2.2.1-10 2流体ノズルによるコーティング状態

(d) 予備実験装置の概要

スプレーコーティング用予備実験装置の全体概略図を図Ⅲ-2.2.1-11 に示す。

M-1M-2

Fan

Aspirator

Mist trap

Draft chamber

to Draft chamber

TC

Dome heater

Motor Motor

Electro slider

Liquid waste

N2

Colloidal sol Water

Regulator

M-1M-2

Fan

Aspirator

Mist trap

Draft chamber

to Draft chamber

TC

Dome heater

Motor Motor

Electro slider

Liquid waste

N2

Colloidal sol Water

Regulator

図Ⅲ-2.2.1-11 試作したスプレーコートシステムの概略図

Page 17: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-324

膜支持対はモーターに直結し、モーターを設置した台車をレール上で前後にスライドさ

せることにより、膜支持体をスプレー噴霧が行われる防護 BOX 内にスムーズに移動させた。

コロイドゾルに含まれる酸や有害物質を回収するためのドラフトチャンバーを設置し、コー

ティング装置は比較的大掛かりとなった。アトマイザーとしては 2 流体ノズルを用い、一方

向からスプレーを行った。スプレー持続時間は約 5 秒以内である。スプレー後はコロイドゾ

ル供給ラインから純水供給ラインへと切替えることによりノズルの洗浄を行った。また、予熱

炉からスプレーまでの間に基材温度降下が生じるため,スプレー室直前に基材予熱部を

設けた。

2.2.1.3 予備実験装置による製膜性評価

まずメチレンブルー水溶液を噴霧・コーティングし、塗布状態を検討した。その後、シリカ

コロイドゾルを噴霧塗布し、シリカ膜の製膜を行い、その製膜状態を SEM 観察すると共に、

膜の分離性能を従来のマニュアルコーティングにより作製した膜によるものと比較検討した。

なお、分離性能評価は、濃度 73mol%(10wt%-水)の酢酸水溶液の 100oC での浸透気化

法により行った。

(a) 膜 SEM 写真

図Ⅲ-2.2.1-12 にスプレーコーティングによるシリカ膜とマニュアルコーティングによる膜

の断面 SEM 写真を示した。図(a)は予熱炉で加熱(210oC)した後、モーターに取り付けて

噴霧塗布した場合であり、基材の温度が適当な温度よりも低かったために、分離に有効

な薄膜部と基材の粒子担持部との境界が不明瞭となり、分離に活性な膜部の厚さが厚く

なっている様子が伺える。図(b)は、噴霧部の直前に予熱部を設置した場合のスプレーコ

ートの場合であり、図(c)のマニュアルコートの場合と同様に、分離に有効な薄膜部(約 0.5

μm)が明瞭になっている。

×5000   1μm

微粒子層

基 材

膜表面

基 材

微粒子層

シリカコロイトゾル層膜表面 シリカコロイトゾル層

(a) spray coating (b) spray coating (c) manual coating×5000   1μm×5000   1μm

微粒子層

基 材

膜表面

基 材

微粒子層

シリカコロイトゾル層膜表面 シリカコロイトゾル層

(a) spray coating (b) spray coating (c) manual coating

図Ⅲ-2.2.1-12 製膜したシリカ膜の断面 SEM 写真の例

Page 18: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-325

予熱炉で加熱した後、モーターに取り付けて噴霧塗布して製膜したものと、噴霧部の直前

に余熱部を設置して余 熱・塗布を連続的に素早く行って製膜したものを、それぞれ焼成

後にメチレンブルー水溶液を吸引することにより表面欠陥を着色して観察した結果を図Ⅲ

-2.2.1-13 に示す。

温度が十分に高くない場合

温度が十分高い場合

温度が十分に高くない場合

温度が十分高い場合

図Ⅲ-2.2.1-13 シリカ膜コーティング・焼成後

メチレンブルー吸引による表面欠陥観察

コーティング時の基材温度が低い(あるいはコーティングに時間を要する)場合には明かな

着色むらが見られた。一方、基材温度が十分に高く、素早くコーティングを行った場合に

は比較的均一に製膜が行われていることがわかる。

(b) 酢酸/水系水溶液の浸透気化分離性能

作製したシリカ膜の分離性能を比較するために、酢酸 73 mol%水溶液の 100℃での浸

透気化分離を行った。図Ⅲ-2.2.1-14 に浸透気化分離実験装置図を示す。浸透気化法

では、供給状態が液体であるため分離膜表面における境膜の影響が大きくなる。そこで、

膜の上流側(一次側)は混合溶液をスクリューで高速循環させることにより、境膜の影響を

無視できるようにしてある。混合溶液の温度は、リボンヒーターと温度コントローラーを用い

て一定に保った。また、膜の下流側(二次側)を真空ポンプで減圧排気しているため、溶液

は細孔内に浸透した後分離され、透過成分を多く含む混合蒸気となって透過する。透過

してきた蒸気をコールドトラップで補集し、重量を秤量し透過速度を算出、ガスクロマトグラ

フにより組成を求めた。一次側の組成は測定時間の中間でサンプリングした。

酢酸水溶液の浸透気化分離実験結果の例を図Ⅲ-2.2.1-15 に示した。このような分離

条件下ではシリカ膜は極めて安定であることが分かっており、製膜条件の違いによる膜の

分離性能評価が可能である。シリカ膜は、シラノール基の生成により、分離の初期におい

て経時変 化 を示す。しかし、数時 間 後には分離 性能はほとんど一定となる。前述 の図Ⅲ

-2.2.1-12(a) の 膜 に お い て は 、 水 の 透 過 流 束 は 約 220 mol m-2 h-1 で あ る が 、 図 Ⅲ

-2.2.1-12(b)、(c)の膜は水透過流束約 300 mol m-2 h-1、分離係数約 1460 を示しており、

Page 19: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-326

極めて高分離性能を示している。このことは、スプレーホットコーティング法による製膜と従

来のマニュアルホットコーティング法による製膜はほとんど同等な性能を持つ膜を与えるこ

とを示している。

1.membrane2.thermocouple3.heater4.thermocontroller5.screw6.cold trap7.motor

to vacuum pump

1

2

34

5

6

7

1.membrane2.thermocouple3.heater4.thermocontroller5.screw6.cold trap7.motor

to vacuum pump

1

2

34

5

6

7

1.membrane2.thermocouple3.heater4.thermocontroller5.screw6.cold trap7.motor

to vacuum pump

1

2

34

5

6

7

1.membrane2.thermocouple3.heater4.thermocontroller5.screw6.cold trap7.motor

to vacuum pump

1

2

34

5

6

7

図Ⅲ-2.2.1-14 浸透気化分離実験装置

Water Flux

Acetic Acid

0

100

200

300

400

500

600

0 100 200 300 400 500 600

Time [min]

Wat

er

Flu

x [

mol/

(m2h)]

0

1

2

3

4

5

6

Ace

tic A

cid

 Flu

x [m

ol/

(m2h)]SF

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800Sepa

ration F

acto

r [-

]

Flux

Acetic Acid Feed:73mol% ,Temp:100℃

Manual coating (c)Spray coating (b)

Spray coating (a)

Water Flux

Acetic Acid

0

100

200

300

400

500

600

0 100 200 300 400 500 600

Time [min]

Wat

er

Flu

x [

mol/

(m2h)]

0

1

2

3

4

5

6

Ace

tic A

cid

 Flu

x [m

ol/

(m2h)]SF

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800Sepa

ration F

acto

r [-

]

Flux

Acetic Acid Feed:73mol% ,Temp:100℃

Manual coating (c)Spray coating (b)

Spray coating (a)

図Ⅲ-2.2.1-15 酢酸水溶液の浸透気化分離による各種膜の性能評価

Page 20: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-327

2.2.1.4 自動製膜装置の概要

前節の知見をもとに全自動製膜装置の作製を行った。以下の項目に示すように、基本

的なコーティングシステムは図Ⅲ-2.2.1-11 に示した試作機と同一とした。製膜工程は以

下の通りである。

①モーターに基材をマウンティングする。

②予熱用電気管状炉に基材部を挿入する。

③予熱後、基材表面温度を測定する。

④基材をコーティングチャンバー内に挿入しモーターで回転させる。

⑤2流体ノズルによりコロイドゾルを噴霧する。

⑥有害蒸気はドラフトチャンバーへ吸引する。

⑦焼成用電気管状炉に挿入して焼成する。

図Ⅲ-2.2.1-16 に自動製膜装置の外観を示す。試作機との大きな違いは予熱用(180~

210℃)と焼成用(500~600℃)の管状炉を縦に配置し、基材をマウントするモーターを前

後および上下にレールに沿って移動可能にした点である。これによって「予熱」→「コーテ

ィング」→「焼成」の一 連の操作の自動 化が成 された。また、複数のコロイドゾルおよび洗

浄用水タンクが同時に設置可能であり、濃度(コロイド粒径)の異なるゾルを順番にコーテ

ィング、スプレー洗浄ができる。基材予熱温度、予熱時間、噴霧液量、噴霧回数、焼成温

度、焼成時間、および一連の操作の繰返し回数は制御ボックス上のタッチ画面で設定さ

れ、すべて自動運転できるようになっている。各操作を手動で行うことも可能である。

コントロール部

焼成炉

予熱炉

スプレー室

コロイドタンク

回転モーター

コントロール部

焼成炉

予熱炉

スプレー室

コロイドタンク

回転モーター

図Ⅲ-2.2.1-16 自動製膜装置

Page 21: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-328

2.2.1.4 自動製膜装置による製膜性評価

予備実験装置を用いた検討により、スプレーコーティング法により水/酢酸分離に有効

な浸 透 気 化 分 離 膜の作 製が可 能であったので、自 動 製 膜 装 置ではα-アルミナ多 孔質

管上に SiO2-ZrO2(Si/Zr=1)コロイドゾルをホットコーティングすることにより、水素分離膜

用の中間層の製膜を試みた。

(a) 膜 SEM 写真と細孔径分布

予熱温度を 180℃および 190℃として自動製膜を行った膜と 180℃に予熱して従来のマニ

ュアルコーティング法 で作製した膜の細孔径 分布を図Ⅲ-2.2.1-17 に、それぞれの膜の

SEM 写真を図Ⅲ-2.2.1-18 示す。この細孔径分布はナノパームポロメトリにより測定したも

のである。

1.0

0.5

Per

mea

nce

of a

ir [1

0-5m

ol m

-2s-1

Pa-1

]

Pore diameter [nm]0 2 4 6 8 10

予熱190℃→スプレーコーティング 予熱180℃→スプレーコーティング 予熱180℃→ハンドコーティング

1.0

0.5

Per

mea

nce

of a

ir [1

0-5m

ol m

-2s-1

Pa-1

]

Pore diameter [nm]0 2 4 6 8 10

予熱190℃→スプレーコーティング 予熱180℃→スプレーコーティング 予熱180℃→ハンドコーティング

図Ⅲ-2.2.1-17 細孔径分布

予熱190℃→スプレーコーティング予熱180℃→スプレーコーティング予熱180℃→マニュアルコーティング 予熱190℃→スプレーコーティング予熱180℃→スプレーコーティング予熱180℃→マニュアルコーティング

図Ⅲ-2.2.1-18 膜 SEM 写真

Page 22: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-329

細孔径分布図より、予熱温度を 180℃としてスプレーコーティングすることにより、従来のマ

ニュアルコーティング法で作製した膜とほぼ同様な空気透過性能を示す、平均細孔径が

およそ 2 nm 程度の膜が作製可能であることがわかる。これに対して予熱温度が 190℃の

場合は、空気透過速度は同程度であるが細孔径分布がブロードとなっており、平均細孔

径も若干大きくなっている。膜の SEM 写真を見ると、190℃でスプレーコーティングした場

合には、明らかにゲル膜の状態が良好とは言えず、これは予熱温度が高すぎたために表

面に付着したミストが表面上に広がる前に瞬時にゲル化したためと思われる。予熱温度は

高過ぎても製膜製を悪 化させる可能性があり、 適な予熱 温度には十分な注意が必 要

であろう。

(b) 気体透過性能

自動製膜装置により SiO2-ZrO2 中間層を製膜し、その上にコバルトドープ SiO2 コロイド

(Si/Co=3)をコーティングして作製したガス分離膜における He, H2, N2, CH4 透過率の経

時変化を図Ⅲ-2.2.1-19 に、温度依存性を図Ⅲ-2.2.1-20 に示す。この膜は,予熱温度

180℃で、濃度が 2 wt%および 1.5 wt%の SiO2-ZrO2 コロイドゾルをそれぞれ数回スプレーコ

ーティングし、コーティング毎に 550℃で焼成を行うことにより SiO2-ZrO2 中間層を作製して

いる。

0 5 10 15 2010-9

10-8

10-7

10-6

10-5

10-4

Perm

eanc

e [ m

3 ( STP

)/( m

2 .s.kP

a ) ]

He

N2

Time[h]

H2

CH4

10-6

10-7

10-8

10-9

10-10

Perm

eanc

e [ m

ol m-2

s-1Pa

-1]

図Ⅲ-2.2.1-19 透過率の経時変化(300℃)

Page 23: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-330

10-6

10-7

10-8

10-9

10-10

Perm

eanc

e [ m

ol m-2

s-1Pa

-1]

0.002 0.0025 0.00310-9

10-8

10-7

10-6

10-5

10-4

1/T [ K-1 ]

Perm

eanc

e [ m

3 ( STP

)/( m

2 .s.kP

a) ]

Knudsen

He

N2

CH4

H2

図Ⅲ-2.2.1-20 透過率の温度依存性

300℃においてどのガスも透過試験開始後 20 時間にわたって安定な透過性能を示してお

り、透過率比は、H2/N2=120 を示した。また、透過率の温度依存性の図より、300~100℃

の温度範囲において、He と H2 は活性化拡散的傾向であり、CH4 および N2 は残存した

やや大きな細孔を Knudsen 的に透過しており、分子ふるい的な水素分離膜の特性を示し

た。

2.2.1.5 結言

手動スプレーホットコーティング製膜装置を作製し、従来の製膜法とスプレーホットコー

ティング法による膜の構造、分離性能の比較検討を行うことによって本格的スプレーホット

コーティング製膜装置設計のための知見を得た。特に重要な点は、コーティング温度を適

当な温度に保ち、極めて短時間でコーティングすること、均質コーティングが可能であるよ

うなスプレー法を選択することである。

自 動 製 膜 装 置 を用 いたスプレーホットコーティングによりガス分 離 膜 の作 製 に有 効 な

SiO2-ZrO2 中間層の製膜が可能であり、スプレーホットコーティング法は製膜の自動化に

繋がり、大量生産の可能性が十分あるように思われる。

文献

1) M. Asaeda, K. Okazaki and A. Nakatani, “Preparation of Thin Porous Silica

Membranes for Separation of Non-aqueous Organic Solvent Mixtures,” Ceramic

Transactions, 31 (1992), 411-420

Page 24: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-331

2.2.2 気相法によるキャピラリーミニモジュール製膜技術の開発

2 . 2 . 2 . 1 キャピラリー基 材 での蒸 着 条 件 の検 討

図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 1 に 、 対 向

拡 散 C V D お よ び 透 過 試

験 装 置 の 模 式 図 を示 す。

多 孔 質 α - ア ル ミ ナ 基 材

( 全 長 3 5 0 m m , 有 効 部

分 50 mmもしくは230 m

m : 細 孔 径 0 . 1 μ m : N O

K 社 製 ) に γ - ア ル ミ ナ 層

を ゾ ル ゲ ル 法 で コ ー テ ィ ン

グし、細 孔 径 を4 nmもしく

は 1 3 n m と し た 。 基 材 細 孔

径 は ナ ノ パ ー ム ポ ロ メ ー タ

ー ( 西 華 産 業 製 ) に て 測

定 し た 。 こ の 基 材 を バ イ ト

ンO-リングにて金 属 モジュ

ー ル に 固 定 し た 。 膜 の 内 側 に 酸 素

を 1 0 ~ 2 0 0 0 m l m i n - 1 で 流 通 さ せ 、

膜 の外 側 には、テトラケイ酸 オルトメ

チ ル ( T M O S ) を 3 1 8 K に て 窒 素 バ

ブリングして200 m l m i n - 1 で流 通 さ

せ た 。 製 膜 は 6 0 0 ℃ に て 2 時 間 行 っ

た。製 膜 後 、水 素 もしくは窒 素 の透

過 試 験 を 圧 力 変 化 法 にて 行 っ た。

膜 の 外 側 に 水 素 も し く は 窒 素 を 常

圧 で 流 通 さ せ 、 膜 の 内 側 を 真 空 ポ

ン プ で 吸 引 す る 。 膜 の 内 側 の 圧 力

が一 定 とな った所 で 、 真 空 ポン プを

ストップバルブの操 作 により遮 断 し、

膜 内 側 の 部 分 の圧 力 の 経 時 変 化 を 測 定 し、 透 過 率 を算 出 し た。水 蒸 気 透 過 試

験 は、バブラーに水 を導 入 し、窒 素 バブリングによって膜 の外 側 に水 蒸 気 (+窒 素 )

を供 給 する。その後 、上 記 と同 様 な圧 力 変 化 法 により透 過 率 を測 定 した。水 蒸 気

の 供 給 側 圧 力 は バ ブ ラ ー 温 度 に よ り 制 御 し た 。 モ ジ ュ ー ル 化 は 多 本 数 の 基 材 に

同 時 に シ リ カ 層 を 蒸 着 す る た め 、 製 膜 条 件 の シ ビ ア な コ ン ト ロ ー ル が 必 要 に な る と

考 え ら れ る 。 こ こ では 、 キ ャ ピ ラリ ー 基 材 を 用 い て 、 製 膜 の 再 現 性 、 基 材 細 孔 径 の

図Ⅲ-2.2.2-1 製膜・透過装置の模式図

図Ⅲ-2.2.2-2 製膜の再現性結果

Page 25: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-332

影 響 、温 度 分 布 の影 響 などについて検 討 する。基 本 的 には、蒸 着 温 度 600℃、50

m m 基 材 を用 い 、 酸 素 流 量 は2 00 m l m i n - 1 とした 。 特 に値 を 変 化 さ せた 場 合 の

み明 記 してある。

ま ず 、 製 膜 の 再 現 性 の 検 討 を 行 っ た 。 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 2 に 、 当 研 究 グル ー プ で 製

膜 を行 ったすべてのシリカ膜 の透 過 試 験 結 果 を示 す。製 膜 条 件 は、上 記 に示 した

ように、600℃での蒸 着 で、製 膜 時 間 は2時 間 とした。同 じ条 件 での製 膜 試 験 を15

回 行 い、873 Kでの透 過 試 験 結 果 を水 素 透 過 率 と水 素 /窒 素 透 過 率 比 でプロッ

トした。 目 安 のために 、水 素 透 過 率 が8 x 1 0 - 8 mo l m - 2 s - 1 P a - 1 以 上 、 水 素 /

窒 素 透 過 率 比 が 5 0 0 以 上 を 良 い 膜 の 基 準 と し て 、 図 中 に 点 線 で 示 す 。 こ の 枠 線

より外 れているサンプルは2つのみであり、残 り13サンプルはすべて基 準 をクリアーし

た 。 再 現 性 は 8 7 % ( 1 3 / 1 5 ) と な っ た 。 分 子 ふ る い 性 能 を も つ 膜 の 製 膜 と し て は 非

常 に高 いといえる。均 一 な処 理 ができる対 向 拡 散 CVDのコンセプトが実 現 している

と思 われる。また、図 Ⅲ-2.2 .2-2のような評 価 の場 合 、通 常 はトレードオフラインとな

り、 右 下 が りの 傾 向 が 出 る 。し かし、 今 回 は 右 上 が りの 傾 向 を 示 し ている。 こ れは、

窒 素 透 過 率 の値 が測 定 限 界 に近 いためである可 能 性 が高 い。そのため、窒 素 透

過 率 は膜 によりほとんど変 化 していない。一 方 、上 記 のように水 素 透 過 率 は膜 によ

って8.44 x 10 - 8 mo l m - 2 s - 1 P a - 1 ~4 .26 x 10 - 7 mo l m - 2 s - 1 P a - 1 と5倍 以

上 異 なっている。そのため、高 い水 素 透 過 率 をもつ膜 の選 択 性 が高 くなっていると

思 われる。水 素 /窒 素 透 過 率 比 は十 分 高 いので、水 素 透 過 率 を高 い膜 を得 るこ

とを目 標 とするべきであろう。

更 な る 高 水 素 透 過 率 を も つ 膜 を 得 る た め に は 、 こ の 水 素 透 過 率 の 違 い を 明 確

にすることは重 要 である。今 回 用 いた対 向 拡 散 CVD法 の製 膜 パラメーターは、TM

OS濃 度 、 酸 素 濃 度 、蒸 着 温 度 、基 材 細 孔 径 分 布 などである。対 抗 拡 散 CVD法

は 2 種 の 反 応 種 が 細 孔 中 で 反 応 す る こ と が 特 徴 で あ る こ と より 、 細 孔 径 ( 分 布 ) が

蒸 着 物 の性 質 や有 効 膜 厚 に大 きな影 響 を及 ぼしていると思 われる。そこで、4 nm

および13 nmの細 孔 径 をもつ基 材 へ製 膜 を行 い、水 素 透 過 率 と水 素 /窒 素 透 過

率 比 を比 較 した 。 結 果 を表 Ⅲ- 2 . 2 . 2 - 1に示 す 。基 材 細 孔 径 が1 3 nmと 大 きな 基

材 への蒸 着 では水 素 透 過 率 、水 素 /窒 素 透 過 率 比 が共 に

表 Ⅲ-2 .2 . 2-1 基 材 細 孔 径 が透 過 性 能 に及 ぼす影 響

Pore s i ze o f

subs t r a te

H 2

pe rmeance

H 2 /N 2 pe rmeance

ra t i o

nm mo l m - 2 s - 1

Pa - 1

-

4 8 . 77 x 10 - 8 1200

13 5 . 66 x 10 - 9 56

Page 26: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-333

低 下 す る こ と が わ か っ た 。 基 材 細 孔 径

が 大 き い と 細 孔 中 を 閉 塞 さ せ る た め の

蒸 着 物 の 量 ( 膜 厚 ) が 大 き く な る こ と が

原 因 で あ ろ う 。 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 3 に 蒸 着 の

模 式 図 を示 す。基 材 細 孔 径 が大 きくな

る と 、 直 感 的 に 、 膜 厚 が 厚 く な る こ と が

わ か る 。 今 回 の 実 験 結 果 は こ の モ デ ル

図 と 傾 向 が 一 致 し て い る 。 こ れ よ り 、 水

素 透 過 率 、 水 素 / 窒 素 透 過 率 比 が 高

い膜 を得 るためには、基 材 細 孔 径 が小

さ く 、 細 孔 径 分 布 も 小 さ な 膜 が 有 利 で

あると予 想 される。

γ - ア ル ミ ナ 中 間 層 の 細 孔 径 は 、 5 0

0 ℃ で の 水 蒸 気 処 理 に よ っ て も コ ン ト ロ

ール可 能 である。図 Ⅲ-2 . 2 . 2 -4に水 蒸

気 処 理 に よ る γ - ア ル ミ ナ 中 間 層 の 細

孔 径 変 化 を 示 す 。 5 2 時 間 処 理 に よ り 4

nmの細 孔 が9 nmとなっていることがわ

か る 。 水 蒸 気 処 理 時 間 が 長 く な る に つ

れて細 孔 径 が大 きくなるこ

と が 示 唆 さ れ る 。 次 に 、 γ

- ア ル ミ ナ 中 間 層 の 水 蒸

気 処 理 時 間 を 変 化 さ せ 、

TMOS/O 2 対 向 拡 散 CVD

処 理 後 の 水 素 、 窒 素 透

過 率 を 示 す ( 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2

- 5 ) 。 図 よ り 水 蒸 気 処 理

時 間 が 長 く な る に つ れ 、

製 膜 後 の 水 素 透 過 率 が

減 少 し て い る 。 一 方 、 窒

素 透 過 率 はほぼ一 定 とな

っ て い る 。 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 3

で示 したように、細 孔 径 が大 きくなると水 素 透 過 率 が減 少 することが示 された。また、

この範 囲 では、窒 素 透 過 率 が低 いことより、均 質 な処 理 ができていることがわかる。

図Ⅲ-2.2.2-3 細孔径の違いによる蒸着の違

いの模式図

図 Ⅲ -2.2.2-4 水 蒸 気 処 理 に よ る γ ア ル ミ ナ 中 間 層 の 細

孔径分布

Page 27: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-334

次 に 、 表 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 1 と

図 Ⅲ-2 . 2 . 2 - 5で示 し た膜

の 透 過 の ア レ ニ ウ ス プ ロ ッ

ト を 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 6 に 示 す 。

水 素 透 過 率 に注 目 すると、

す べ て の 膜 の 傾 き が ほ ぼ

一 定 で あ る 。 つ ま り 、 水 素

透 過 の活 性 化 エネルギー

が同 レベルといえる。水 素

透 過 率 は 、 有 効 な シ リ カ

膜 厚 と シ リ カ 中 の 拡 散 係

数 (緻 密 さ)により決 まると

考 え ら れ る 。 水 素 透 過 の

活 性 化 エ ネ ル ギ ー は シ リ

カの緻 密 さと関 係 している

は ず な の で 、 今 回 比 較 し

た 膜 の シ リ カ の 緻 密 さ は

同 レ ベ ル と あ る と い え る 。

つ ま り 、 水 素 透 過 率 の 違

い は 膜 厚 で あ る と 推 測 で

きる 。このことからも、図 Ⅲ

- 2 . 2 . 2 - 3 の 模 式 図 は 支

持 さ れ て い る 。 水 蒸 気 改

質 反 応 へ の シ リ カ 膜 の 適

用 には、基 材 であるγ-ア

ル ミ ナ 層 の 細 孔 径 分 布

や 安 定 性 な ど の 検 討 が

必 要 で あ る 。 な お 、 以 後

の 検 討 で は す べ て 細 孔

径 4 n m の γ - ア ル ミ ナ 基

材 を用 いた。

図 Ⅲ -2.2.2-5 γ ア ル ミ ナ 中 間 層 の 水 蒸 気 処 理 後 の シ リ カ 膜

の透過特性

図Ⅲ-2.2.2-6 細孔径の異なるγアルミナ中間層へ蒸着した

シリカ膜のアレニウスプロット

Page 28: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-335

シリカの密 度 をコントロールするには、蒸 着 温 度 が重 要 なパラメーターとなる。図

Ⅲ- 2 . 2 . 2 - 7に 蒸 着 温 度 の 変 化 に よる

細 孔 内 での蒸 着 の模 式 図 を示 す。蒸

着 温 度 が 高 け れ ば 、 拡 散 ( K n u d s e n

仮 定 で は 比 例 ) よ り 反 応 速 度 ( ア レ ニ

ウス型 ではeの階 乗 )の上 昇 が大 きく、

薄 膜 が 蒸 着 す る は ず で あ る 。 さ ら に 、

高 温 で の 蒸 着 では シ リカ 密 度 も 大 きく

な る こ と が 予 想 さ れ る 。 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 8

に 蒸 着 温 度 が 4 0 0 ℃ から 7 0 0 ℃ で の シ

リカ膜 の水 素 透 過 のアレニウスプロット

を示 す。図 より、蒸 着 温 度 が高 くなると

傾 きが急 になっていることがわかる。図

中 に水 素 透 過 の活 性 化 エネルギーを

示 す。700℃の蒸 着 では、27 kJ mo l -

1 と こ の 中 で は も 高 い 値 と な っ た 。 石

英 ガ ラス 中 の 水 素 の 拡 散 の 活 性 化 エ

ネ ル ギ ー は 3 8 k J m o l - 1 な の で 、 7 0

0℃蒸 着 でも石 英 ガラスよりはルーズな

シリカが蒸 着 しているといえる。水 素 透

過 率 の 向 上 の み を 考 慮 す る と 水 素 透

過 の活 性 陰 エネルギーが低 い低 温 蒸

着 が望 まし い。このとき、耐 久 性 と 透

過 性 の バ ラ ン ス が 検 討 課 題 と な る 。

そ こ で 、 蒸 着 温 度 の 異 な る シ リ カ 膜

に つ い て 水 蒸 気 耐 久 試 験 を 行 っ た 。

4 0 0 ℃ 蒸 着 の 膜 は 、 室 温 の 水 蒸 気

吸 着 で 透 過 性 能 が 劣 化 し 、 5 0 0 ℃

蒸 着 の 膜 は 5 0 0 ℃ 、 7 5 % の 水 蒸 気

雰 囲 気 下 1時 間 で窒 素 透 過 率 が10

倍 以 上 と な っ た 。 6 0 0℃ 以 上 の 蒸 着

温 度 で は 、 窒 素 透 過 率 の 変 化 は ほ

とんどなかった。そこで、水 素 透 過 率

の 変 化 を 調 べ た 。 結 果 を 図 Ⅲ - 2 . 2 .

2 - 9に示 す 。600 ℃以 下 の 蒸 着 の 水

素 透 過 率 の 変 化 は 小 さ か っ た が 、 6

図Ⅲ-2.2.2-7 蒸着温度の違いによる蒸着の違い

の模式図

図Ⅲ-2.2.2-8 蒸着温度が異なるシリカ膜のアレニウス

プロット

Page 29: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-336

50℃および700℃蒸 着 の膜 の水 素 透 過 率 は大 きく減 少 した。図 Ⅲ-2 .2 . 2-7にある

ように高 温 での蒸 着 では水 素 透 過 の活 性 化 エネルギーも大 きく密 なシリカが蒸 着

していると考 えられる 。 一 般 的 に密 なシリカの方 が安 定 である。しかし、水 蒸 気 処

理 による水 素 透 過 率 の減 少 は650℃以 上 の方 が大 きい。詳 細 な原 因 については、

さ ら な る 調 査 が 必 要 で ある が 、 γ ア ル ミ ナ 中 間 層 の 焼 成 温 度 が 6 0 0 ℃ で ある こ と を

考 慮 すると、中 間 層 の安 定 性 が問 題 である可 能 性 が高 いと推 察 できる。650℃以

上 の高 温 での蒸 着 の場 合 は、水 素 透 過 率 が大 きく減 少 することが特 徴 である。

一 方 、 キ ャ ピ ラ リ ー 基

材 内 側 の 酸 素 流 量 も 、

製 膜 の パ ラ メ ー タ ー で あ

る 。 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 1 0 に 酸

素 流 量 を10~2000 m l

m i n - 1 と し た と き に 得 ら れ

た シ リ カ 膜 の 透 過 性 能 を

示 す 。 図 よ り 、 水 素 透 過

率 は ほ と ん ど 変 化 し な い

が 、 水 素 / 窒 素 透 過 率

比 は、2000 m l mon - 1 の

時 に 若 干 低 下 し て い る 。

内 側 の 酸 素 流 量 が 大 き

く、キャピラリー基 材 内 側

の 圧 力 損 失 な ど で シ リ カ

の 蒸 着 の 欠 陥 が で き た

可 能 性 が あ る 。 し か し 、

内 部 流 量 が 2 0 0 倍 と な っ

て も 、 得 ら れ る 膜 の 性 能

は そ れ ほ ど 大 き な 変 化 は

な い 。 対 向 拡 散 C V D で

は 、 基 材 中 へ の プ リ カ ー

サーの拡 散 が重 要 である。

γアルミナ中 間 層 中 の物

質 の移 動 は、Knudsen拡

散 が ベ ー ス と な っ て お り 、

酸 素 流 量 よ り も 酸 素 濃

度 が 重 要 で あ る 。 実 際 、

酸 素 で は な く 空 気 を 内

図Ⅲ-2.2.2-9 蒸着温度の異なるシリカ膜の水蒸気耐久性

図Ⅲ-2.2.2-10 基材内側酸素流用がシリカ膜蒸着に

及ぼす影響

Page 30: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-337

側 に流 通 させた場 合 、選 択 性 の高 い膜 は得 られなかった。

キャピラリー基 材 でのモジュール化 試 験 の 後 として、230 mm基 材 への蒸 着 を

報 告 する。図 Ⅲ-2 .2 .2-11に230 mm基 材 の写 真 を示 す。50 mm基 材 では、全 長

350 mmの基 材 の両 端 の150 mmをガラスシールすることで、中 央 の50 mmを利 用

した。230 mm基 材 では、両

端 の 6 0 m m に ガ ラ ス シ ー ル

し て あ る 。 そ の た め 、 膜 モ ジ

ュ ー ル の 2 ヶ 所 を 変 更 し た 。

まず、製 膜 部 が長 くなったた

め に 、 こ れ ま で 1 ヶ 所 の 熱 電

対 で コ ン ト ロ ー ル し て い た 炉

を 3 分 割 し 、 3 ヶ 所 の 熱 電 対

で 温 度 制 御 を 行 っ た 。 そ の

ため、温 度 分 布 は、これまで

の 5 0 m m モ ジ ュ ー ル と 同 程

度 で あ る 。 ま た 、 両 端 の ガ ラ

スシール部 が短 くなり、Oリングシールが耐 熱 の問 題 で使 用 できなくなった。そこで、

グラファイトフェルールを用 いたシール法 を開 発 した。グラファイトフェルールは、Oリ

ングと異 なり、使 い捨 てであるが500℃程 度 の高 温 でもシール可 能 である。図 Ⅲ-2 .

2 . 2 -12に製 膜 後 の水 素 、窒 素 透 過 率 のアレニウスプロットを示 す。図 中 の実 線 は

同 条 件 で 製 膜 し た 5 0 m m 基

材 で の 透 過 試 験 結 果 で あ る 。

これより、230 mm基 材 へもこれ

までと同 様 に高 い 分 離 選 択 性

を も っ た シ リ カ 膜 が 製 膜 で き た

と い え る 。 水 素 透 過 の 活 性 化

エネルギーも20 k J mo l - 1 と、5

0 m m 基 材 と ほ ぼ 同 じ で あ る 。

図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 1 3 に は 2 3 0 m m

基 材 へ 製 膜 し た シ リ カ 膜 の 水

蒸 気 耐 久 試 験 結 果 を示 す。こ

の図 中 の実 線 も50 mm基 材 の

水 蒸 気 耐 久 性 試 験 結 果 で あ

る。ガス透 過 試 験 とは、若 干 異

な り 、 水 蒸 気 耐 久 試 験 は 、 特

に 初 期 に 違 い が 見 ら れ た 。 2 3 0 m m 基 材 へ 蒸 着 し た シ リ カ 膜 は 初 期 の 窒 素 透 過

図Ⅲ-2.2.2-11 230mm 基材の写真

図Ⅲ-2.2.2-12 230mm 基材への蒸着結果

Page 31: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-338

率 の上 昇 幅 が大 きい。原 因 は、シリカ膜 製 時 のTMOSなどの濃 度 分 布 が考 えられ

る 。 し か し 、 こ の 実 験 結 果 の み か ら は 詳 細 は わ か ら な い 。 初 期 に 窒 素 透 過 率 が 若

干 上 昇 したこと以 外 は、50 mm基 材 上 のシリカ膜 と大 きな違 いは

なく、安 定 した透 過 性 能 を示 した。

こ こ で 、 対 向 拡 散 C V D

法 に よ る シ リ カ 膜 蒸 着 の

性 能 変 化 に 及 ぼ す 各 種

条 件 の影 響 をまとめる。ま

ず、中 間 層 の安 定 性 、細

孔 径 は重 要 な要 素 である。

細 孔 径 が 小 さ い 膜 で は

水 素 透 過 率 が 高 く な る 。

ま た 、 当 然 で あ る が 中 間

層 が不 安 定 な条 件 では、

シ リ カ 膜 の 性 能 も 安 定 し

な い 。 例 外 は 、 T M O S 供

給 側 から水 蒸 気 を供 給 し

て耐 久 試 験 を行 う場 合 で

あ る 。 蒸 着 温 度 は 、 シ リ カ

層 の密 度 などに影 響 を与

える。高 温 蒸 着 ほど水 素 透 過 の活 性 化 エネルギーが大 きくな

る。ただし、窒 素 透 過 率 は低 いので、蒸 着 時 の温 度 分 布 は、選 択 性 には大 きな影

響 を 与 え な い 可 能 性 が 高 い 。6 5 0℃ 以 上 の シリ カ の 蒸 着 では 、 水 蒸 気 処 理 に より

水 素 透 過 率 が 大 き く 減 少 し た 。 シ リ カ 層 自 身 が 変 化 し た と は 考 え に く い の で 、 こ こ

でも中 間 層 の安 定 性 が重 要 であると考 えられる。

2 . 2 . 2 . 2 キャピラリーミニモジュールでの検 討

図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 1 4 に 多 本 数 モ ジ

ュ ー ル の 模 式 図 を 示 す 。 こ の よ う

な 、 複 雑 な 形 状 の 多 本 数 モ ジ ュ

ー ル に 同 時 に 蒸 着 で き る こ と は 、

化 学 蒸 着 法 ( C V D ) の 特 徴 の 一

つであるといえる。図 Ⅲ-2 .2 .2-15

に 多 本 数 同 時 製 膜 用 の キ ャ ピ ラ

リーミニモ ジュール(NOK社 製 ) の

写 真 を示 す。3本 の多 孔 質 ア ルミ

図Ⅲ-2.2.2-13 230mm 基材へ蒸着したシリカ膜の水蒸気

安定性

図Ⅲ-2.2.2-14 多本数モジュールのイメージ図

Page 32: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-339

ナ基 材 の両 端 をガラスシール材 で溶 着 し、セラミック製 の鞘 に固 定 した。外 側 の鞘

の直 径 は18.7 mmである。多 孔 質 アルミナ基 材 (φ2.7 mm)の中 心 間 の距 離 は4.

5 mmと6 . 1 mmの2種 類 で検 討 し た。

このキャピラリーミニモジュールをバイ

ト ン O - リ ン グ に て 金 属 モ ジ ュ ー ル に

固 定 し 、 C V D 装 置 に セ ッ ト し た 。 実

験 装 置 図 は 、 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 - 1 と 同 じ

構 造 と し 、 昇 温 速 度 は 1 0 K m i n - 1

と し た 。 昇 温 速 度 は キ ャ ピ ラ リ ー ミ ニ

モ ジ ュ ー ル の 保 護 の た め に 昇 温 速

度 を下 げている。モジュールが大 きく

な る と 熱 シ ョ ッ ク に よ る モ ジ ュ ー ル の

劣 化 の 可 能 性 が 高 く なると 思 わ れる 。

その他 のC VD製 膜 条 件 は、2 . 2 . 2 . 1

に示 したキャピラリー基 材 の基 材 と同 じとした。

2 . 2 . 2 . 1で 議 論 し た よう に 、 キ ャピ ラリ ー 基 材 の 膜 に て 高 い 製 膜 の 再 現 性 が 得 ら

れたことより、複 雑 な膜 構 造 をもつモジュールの製 膜 のため、複 数 本 の基 材 への同

時 製 膜 の検 討 を行 った。図 Ⅲ-2 .2 .2-15に示 した3本 膜 キャピラリーミニモジュール

を 用 い 、 基 材 中 心 間 の

距 離 が 4 . 5 m m と 6 . 1 m

mの2種 類 について検 討

を 行 っ た 。 図 Ⅲ - 2 . 2 . 2 -

1 6 に 製 膜 後 の 水 素 、 窒

素 透 過 率 の 温 度 依 存

性 を 示 す 。 図 よ り 明 ら か

な よう に 、 基 材 ピ ッ チ が 4 .

5 m m お よ び 6 . 1 m m の

キ ャ ピ ラ リ ー ミ ニ モ ジ ュ ー

ル で の 違 い は ほ と ん ど な

い 。 6 0 0 ℃ で の 水 素 透

過 率 は 、 そ れ ぞ れ 5 . 0 2

x 10 - 8 mo l m - 2 s - 1 P

a - 1 および6 .58 x 1 0 - 8

mo l m - 2 s - 1 Pa - 1 であり、

水 素 / 窒 素 透 過 率 比 は

3200と4000であった。キ

図Ⅲ-2.2.2-15 18.7mm キャピラリーミニモジュール

の外観

図Ⅲ-2.2.2-16 キャピラリーミニモジュールへのシリカ膜

の蒸着

Page 33: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-340

ャピラリー基 材 への製 膜 試 験 結 果 と比 較 して、水 素 透 過 率 は若 干 低 いが選 択 性

が高 かった。水 素 透 過 の活 性 化 エネルギーも、21 .0 k J mo l - 1 、20 . 9 k J mo l - 1 と

キャピラリー基 材 の値 (約 21kJ mo l-1)と等 しい。水 素 透 過 の活 性 化 エネルギーの

値 が同 程 度 であったことより、キャピラリーミニモジュールの蒸 着 温 度 は均 質 であっ

たといえる。以 上 より、4 .5 mmおよび6.1 mmのキャピラリーミニモジュールどちらで

もキャピラリー基 材 と同 じ性 質 のシリカ膜 が製 膜 できたといえる。

次 に 、 基 材 ピ ッ チ が 4 . 5 m m の キ ャ ピ ラ リ ー ミ ニ モ ジ ュ ー ル へ 製 膜 し た シ リ カ 膜 の

水 蒸 気 耐 久 性 を調 べた。図 Ⅲ-2 .2 .2-17に、500℃での水 蒸 気 暴 露 試 験 によるキ

ャピラリーミニモジュールの水 素 および窒 素 の透 過 率 の経 時 変 化 を示 す。水 蒸 気

暴 露 試 験 では、キャピラリーミニモジュールの片 側 を真 空 ポンプで吸 引 し、水 蒸 気

が 膜 を 透 過 す る 状 況 と し た 。 水 蒸 気 バ ブ ラ ー の 温 度 は 9 2 ℃ に 保 ち 、 水 蒸 気 分 圧

は75 kPaとなるようにした。一 定 時 間 経 過 後 に、水 蒸 気 の供 給 を停 止 して水 素 、

窒 素 の透 過 試 験 を行 った。これらの操 作 を繰 り返 すことで水 蒸 気 暴 露 試 験 とした。

試 験 の 初 期 に、水 素 および窒 素 透 過 率 が 若 干 変 化 しているが、その後 、 透 過 率

の変 化 は観 察 されなかった。初 期 に水 素 、窒 素 透 過 率 がわずかに変 化 する点 、そ

の後 の水 素 および窒 素 透 過 率 が安 定 する点 、共 にキャピラリー基 材 の膜 と同 じ傾

向 を 示 し た 。 こ の 膜 の 透 過 特 性 ( 特 に 高 い 水 素 / 窒 素 透 過 率 比 ) と 水 蒸 気 耐 久

性 がキャピラリー基 材 へのシリカ膜 蒸 着 と同 じ性 質 を示 したことより、3本 同 時 蒸 着

においても均 質 なCVD処 理 ができたといえる。

図Ⅲ-2.2.2-17 キャピラリーミニモジュールへ蒸着した

シリカ膜の水蒸気耐久性

Page 34: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-341

2.3 分離膜/基材と改質反応用触媒の複合化技術

2.3.1 膜反応器用触媒選定のための基礎試験

2.3.1.1 緒言

通常、メタン水蒸気改質反応は 800℃程度の高温下で行われており、膜反応器にて想

定される 500~600℃程度の低温における触媒活性や耐コーキング性は殆ど明らかでない。

そこで膜 反 応 器 の予 備 試 験 として、代 表 的 な市 販 水 蒸 気 改 質 触 媒 を入 手 し、500~

600℃でのそれらの活性や耐コーキング性を把握することを目的とした実験を行った。

2.3.1.2 実験

表Ⅲ-2.3.1-1 に評価した触媒とその組成を示す。反応は、固定床型触媒反応器(石

英製:外径 12mm、内径 10mm)に粒径 180~300μmに粉砕・整粒した市販の改質触媒

を充填し、550℃・S/C=3・1atm にて行った。図Ⅲ-2.3.1-1 に評価装置の概略図を示す。

転化率は出口生成ガスを TCD 型ガスクロマトグラフィーで分析することにより求めた。コー

ク析出率は燃焼法により得た。

表Ⅲ-2.3.1-1 評価した触媒とその組成

図Ⅲ-2.3.1-1 改質触媒評価装置

主成分(MSDS記載)

Ru系(A社) 2% Ru、Al2O3

Ru系(B社) 2% Ru、Al2O3

Ru系(C社) 2% Ru、Al2O3

Rh系(A社) 0.5% Rh、Al2O3

Ni系1(B社) 16% NiO、MgO、SiO2、Al2O3、CaCO3

Ni系2(B社) 7.4% Ni、40.2% NiO、MgO、SiO2

Ni系3(B社) 56% NiO、MgO、SiO2

Ni系4(B社) 58.4% NiO、Al2O3、CeO2

Ni系(C社) 12~18 % Ni、Al2O3

リボンヒーター

三方コック

ストップバルブ

マスフローコントローラー

電気炉

ガスクロor Vent

CH4

Ar

H2

Ar

水蒸気発生器

Vent

Vent

水蒸気トラップ

反応管

10mm

3mm

3mm

5mm

石英ウール

触媒層

(粒径180-300 um)

熱伝対

リボンヒーター

三方コック

ストップバルブ

マスフローコントローラー

電気炉

リボンヒーター

三方コック

ストップバルブ

マスフローコントローラー

電気炉

ガスクロor Vent

CH4

Ar

H2

Ar

水蒸気発生器

Vent

Vent

水蒸気トラップ

反応管

10mm

3mm

3mm

5mm

石英ウール

触媒層

(粒径180-300 um)

熱伝対

Page 35: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-342

2.3.1.3 結果と考察

図Ⅲ-2.3.1-2 に示すようにメタン転化率の W/F 依存性を調べた。その結果、Ru・Rh 系、

Ni 系ではそれぞれメーカーが異なっても、ほぼ活性は同程度であることがわかった。また、

Ru・Rh 系の方が、Ni 系に比べて半分の触媒量で反応が見かけの平衡転化率(図中点

線)に達することがわかった。具体的には、見かけの平衡転化率に到達する W/F としては、

Ru ・ Rh 系 は 15 ~ 20mg/(cc/min-CH4) 程 度 で あ る の に 対 し て 、 Ni 系 は

40mg/(cc/min-CH4)程度を要した。

なお Ru・Rh 系、Ni 系共にメタンの見かけの平衡転化率は約 51%であり、熱力学的に予

測される 550℃での平衡転化率 59%に対して低かった。熱力学的に予測される値としては

メタン転化率 51%はおおよそ 520~530℃での値である。転化率が低かったのは、反応が吸

熱であるために触 媒の温度が熱電 対での温度 に比べて低かったことが原因と考える。転

化率が高いほど吸熱量は大きくなるため、高転化率を目指す膜型反応器ではより温度低

下が大きくなるものと推測される。そのため膜型反応器では温度低下に対する考慮が必要

となるものと考えられる。

一方、耐久性に関しては、反応時間 4 時間ではメタン転化率に顕著な変化はみとめら

れなかった。しかしながら、膜反応器ではコーク析出による性能の劣化が懸念されるため、

反応終了後の触媒のコーク析出率(=コークとなって析出したメタン/反応したメタン)を検

討した。Ru 系は何れもコークが検出されなかったのに対し、Ni 系ではコークが検出されるも

のがあった。図Ⅲ-2.3.1-3 に示すように、コーク析出率は触媒によって異なり、またメタン転

化率の上昇と共にコークが析出する傾向にあった。

図Ⅲ-2.3.1-4 に、一般にコーキングの原因になるとされている CH4 分解反応(CH4→

C+2H2)と CO 不均化反応(2CO→C+CO2)の平衡定数の温度依存性を示す。CH4 分解

反応は吸熱反応であり、平衡定数は高温ほど増大するのに対して、CO 不均化反応は発

熱反応であり低温ほど増大する。結果として、反応温度 500~600℃では、CO 不均化反

応の平衡定数は 1 より大きく、その進行が熱力学的に懸念されることが判明した。従って、

本検討での、Ni 系のコーク析出は、Ni の CO 吸着力やコーク親和性が Ru 系に比べて高

いためと推察される。

以上の結果から、膜反応器で用いる改質触媒として、高活性、且つ、コーク析出性が

低く、また比較的安価な Ru 系触媒を用いることに結論した。さらに膜反応器においては、

CO 不均化反応によるコーク析出の可能性に着目することとした。

Page 36: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-343

図Ⅲ-2.3.1-2 触媒活性評価試験結果:(左)Ru・Rh 系、(右)Ni 系@550℃、S/C=3

図Ⅲ-2.3.1-3 メタン転化率とコーク析出率の関係 図Ⅲ-2.3.1-4 メタン分解と CO 不均化

反応の

Ni 系触媒、550℃、S/C=3 平衡定数の温度依存性

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0 10 20 30 40 50

転化率 [ % ]

コー

ク析

出率

[ %

] Ni系(B社1)

Ni系(B社2)

Ni系(B社3)

Ni系(B社4)

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50

W/F [ mg/(cc/min-CH4) ]

メタン転

化率

[ %

]

Ru系(A社)

Ru系(B社)

Ru系(C社)

Rh系(A社)

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50

W/F [ mg/(cc/min-CH4) ]メタン転

化率

[ %

]

Ni系(B社1)

Ni系(B社2)

Ni系(B社3)

Ni系(B社4)

Ni系(C社)

1.E-02

1.E-01

1.E+00

1.E+01

1.E+02

1.E+03

400 450 500 550 600 650 700

温度 [ ℃ ]

平衡

定数

[ -

]

メタン分解

不均化反応

Page 37: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-344

2.3.2 膜反応器における水素引抜による反応促進効果の原理確認

2.3.2.1 緒言

反応条件、膜透過係数、触媒の形状等の各種パラメーターがメタン転化率や水素回

収率に及ぼす効果について、水素分離膜として模擬膜(パラジウム膜)を用いて検討を行

った。

2.3.2.2 実験

図Ⅲ-2.3.2-1 に、本実験に用いた、膜-触媒複合体性能評価装置を示す。分離膜に

は透過係数の異なる 3 種類のパラジウム膜を使用した(チューブ形状:外径約 10mm、長さ

約 70mm)。触媒は 2.3.1.の検討で選出した市販の 2%Ru/Al2O3 ペレット(大きさ約 3mm)

を用い、これを分離膜の周辺に充填した。原料ガスは、スチームとメタンの比(S/C)を 3 と

して、500~8000ml/min を供給した。反応温度は 550℃とし、反応側圧力及び透過側圧

力は、背 圧 弁 並びに真 空ポンプ等 を用いて適 宜 設 定した。なお反 応 温 度に関しては触

媒層に挿入した熱電対により測定・制御した。反応側及び透過側のガス組成及びガス流

量をそれぞれガスクロマトグラフィーとガスメーターで分析することにより、メタン転化率と水

素回収率(=膜を透過した水素/反応により生成した水素 x100)を求めた。

図Ⅲ-2.3.2-1 膜-触媒複合体性能評価装置

Page 38: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-345

2.3.2.3 結果と考察

図Ⅲ-2.3.2-2 にメタン転化率と水素回収率の反応圧力依存性について示す。反応は

温度 550℃、原料ガスのスチームとメタンの比を 3、透過側圧力を減圧して約 0.1atm とし、

反応圧力と原料ガス流量をパラメーターとして行った。図Ⅲ-2.3.2-2(左)中、実線は水素

の引き抜きがない場 合 の平 衡 転 化 率を示す。いずれの反 応 条 件においても、平 衡 転 化

率を超えることが実証できた。また、原料ガス流量を小さくすると平衡からのメタン転化率

の向上度合いが高くなることや、圧力を高くすると水素回収率は向上し、同じ圧力では原

料ガス流量は小さい方が水素回収率は高くなることが判明した。

以上の結果から、膜反応器において、①平衡転化率を大きく超えるメタン転化率を得

ることが可 能であること、②メタン転化率 80%以 上を得ることができること、③水素 回 収率

90%以上を得ることが出来ることがわかった。また、本実験を通して触媒は安定して機能し、

またコークの析出もみとめられなかったことから、選定した触媒が膜反応器用として有望で

あることがわかった。

図Ⅲ-2.3.2-2 反応圧力とメタン転化率(左)、水素回収率(右)の関係

原料ガス流量(スチーム/メタン):(○)375/125、(△)750/250、(□)1500/500cc/min

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタ

ン転

化率

[ %

]

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

水素

回収

率 [

% ]

Page 39: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-346

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタ

ン転

化率

[ % ]

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタ

ン転

化率

[ % ]

分離膜の水素透過係数が膜反応器の性能に与える効果を調べる目的で、透過係数

の異なる 3 種類の模擬膜を用いて反応を行った結果を図Ⅲ-2.3.2-3 に示す。その結果、

水素透過係数が高い分離膜を用いた方がメタン転化率の平衡転化率からの向上度合い

が大きいことがわかった。

膜反応器における水素引き抜き効果を理解することを目的として、メタン転化率と水素

回収率の関係を平衡計算から熱力学的にシミュレートすると共に、これまでの実験結果と

の比較を行った。図Ⅲ-2.3.2-4 に反応圧力 5atm での結果を示す。実験値(プロット)と計

算値(実線)は概ね良好な一致を示した。従って①膜反応器における水素引き抜き効果

が熱力学的に説明出来ることと、②反応場では熱力学的平衡が保たれていることがわか

った。なお転化率が高い領域において、実験値と計算値で若干の違いがみとめられるが

これは吸熱による温度低下の影響があらわれているためと思われる。

図Ⅲ-2.3.2-3 反応圧力とメタン転化率の関係

原料ガス流量(スチーム/メタン):(左)375/125cc/min、(右)1500/500cc/min

透過係数:(●)240、(▲)95、(■)59 cc/min cm2 atm1/2

図Ⅲ-2.3.2-4 メタン転化率と水素回収率の関係@5atm

原料ガス流量(スチーム/メタン):

(●)375/125、(▲)750/250、(■)1500/500cc/min、(◆)8000/2000cc/min

透過側圧力を変えることにより、水素回収率を変化(0.1~1atm)

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100

水素回収率 [ % ]

メタン転

化率

[ %

]

Page 40: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-347

一方、高透過性膜を用いたガス分離及び膜反応器では、膜表面近傍での濃度分極の影

響が懸念されている。そこで、この点について検討を実施した。具体的には、濃度分極が

無い理想状態での膜反応器の反応と分離を加味したシミュレーションから得られるメタン

転化率や水素回収率の計算値と実験値との比較を行った。その結果、本実験での膜反

応器は①水素引き抜きに見合うだけ反応は促進されているものの、水素引き抜き自身が

何らかの原因により目減りしていること、そして、②水素引き抜きの目減り度合いは水素回

収率が高くかつ水素透過流量大きいときに顕著であること、③高透過性膜では水素引き

抜きの目減り度合いは大きく、結果として、本膜反応器では分離膜の性能が十分には引

き出されていない状態にあることがわかった。

膜反応器では反応と分離が同時に生ずるため、後者のみを検討することは難しいもの

と思われる。そのため、反応を伴わない H2/N2 混合ガスからの水素回収率を実測すると共

に、濃度分極がないと仮定してシミュレーションにより算出した計算値と比較することで、現

行の膜反応器における濃度分極の影響を検討した。その結果、図Ⅲ-2.3.2-5 に示すよう

に、水素回収率の実測値は濃度分極がないと仮定して算出した計算値よりも小さく、濃度

分極の影響が示唆された。膜反応器内の濃度分極は水素回収率の低下、ひいては膜反

応器の性能を低下させるため、その存在は望ましくない。従ってその低減策を講ずることが

必要と考えられた。

図Ⅲ -2.3.2-5 50%H2-50%N2 混合ガスからの水素回収率 供給ガス流量:(●)1 L/min、 (● )5 L/min、 (● )10 L/min

プロットは実測値、実線はシミュレーション値

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

供給圧力 [ atm ]

水素

回収

率 [

% ]

Page 41: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-348

2.3.3 膜反応器における触媒と分離膜の配置の検討 2.3.3.1 緒言

2.3.2.で述べたように、高透過性膜並びにそれを用いた膜反応器の性能を十分に引

き出すためには濃度分極低減策を講ずることが必要と思われた。そこで、濃度分極低減

を低減することを目 的として、膜反 応 器における触媒と分 離 膜の配 置 に関して検 討を実

施することとした。

2.3.3.2. 実験

基本的な実験方法は 2.3.2.と同じであるが、新たに 4 種類の Reactor configuration を

評価した。図Ⅲ-2.3.3-1(a)は前章で用いた Reactor configuration、(b)~(e)が今回新た

に用いたものである。(b)は反応管は前章と同じであるが、触媒が前回に比べて小さくなっ

ている。(c)~(e)は前章の(a)に比べて内径が細く、かつ(d)は触媒充填層内に整流板を設

置してある。(c)~(e)の温度制御に関しては、反応管が細くなったことに伴い、熱電対が触

媒層に挿入出来なくなったために、反応管外表 面での温度を測定すると共に、そこでの

温度が 550℃となるように電気炉の温度をマニュアルで調整した。

図Ⅲ-2.3.3-1 膜反応器セットアップ(d は反応管内壁と膜外表面の距離)

(a) ( b) (c) (d)

40mm

Membrane

Thermocouple

Catalyst

( ( ( (

40mm

Membrane

Thermocouple

Catalyst

25mm 25mm25mm

Stainless

Baffle plate

25mm25mm 25mm25mm25

Stainless

Baffle plate

16mm

40mm40mm

(e)((a) ( b) (c) (d)

40mm

Membrane

Thermocouple

Catalyst

( ( ( (

40mm

Membrane

Thermocouple

Catalyst

25mm 25mm25mm

Stainless

Baffle plate

25mm25mm 25mm25mm25

Stainless

Baffle plate

16mm

25mm25mm 25mm25mm25mm

Stainless

Baffle plate

25mm25mm 25mm25mm25

Stainless

Baffle plate

16mm

40mm40mm

(e)(

type 反応管内径 d 触媒粒径 整流板

a 40mm 15mm 3mm なしb 40mm 15mm 1mm なしc 25mm 7.5mm 1mm なしd 16mm 3mm 1mm なしe 25mm 7.5mm 1mm あり

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3-349

2.3.3.3 結果と考察 反応管の内径(φ40mm)と触媒粒径の関係を考えると高流量域での触媒層における

原料ガスの吹き抜けが懸念された。そこで、これまでよりも粒径の小さな触媒を使用して反

応を行い、原料ガスの吹き抜けの影響を調べた。その結果、図Ⅲ-2.3.3-2 (a)、(b)に示す

ように、触媒粒径が 1mm の場合と 3mm ではメタン転化率に顕著な違いはなく、原料ガス

吹き抜けの影響がないことが確認された。

次に反応管径について検討を行った結果について述べる。具体的には、これまで(内

径 40mm)に比べて細い反応管(内径 25、16mm)を用いた。これにより、ガス線速はこれま

でのおよそ 3、10 倍となった。図Ⅲ-2.3.3-2 (a)、(c)、(d)に示すように、より細い反応管を用

いることでメタン転化率は向上した。この結果は、反応管を細くすることで、「ガス線速が増

大→乱 流 化 促進→境 膜 厚み低 減」されたために濃度 分 極 が低減されたことによるものと

考察される。

次に整流板設置効果を検討した結果について述べる。図Ⅲ-2.3.3-2 (c)、(e)に示すよ

うに、同一条件(メタン流量 250cc/min、反応圧力 9 atm)におけるメタン転化率は整流板

を設置することによって 80%から 86%に向上した。またメタン転化率は、これまでと異なり、圧

力の増加に伴って概ね増大する傾向が見受けられた。一連の検討結果として、同一反応

条件において、メタン転化率、水素回収率は図Ⅲ-2.3.3-3 に示すように向上した。

以上の結果において、メタン転化率の向上が濃度分極が低減されたことによるものかど

うかを検 証 するために H2/N2 混 合 ガスからの水 素 回 収 率 を比 較 検 討 した結 果 を図 Ⅲ

-2.3.3-4 に示す。反応管の細径化或いは整流板設置により、水素回収率は改善してい

ることがわかった。また、水素回収率の大小は、メンブレンリアクタでのメタン転化率の大小

関係と合致した。

一方、触媒充填量は内径 16mm 反応管で従来型の内径 40mm 反応管に比べて 1/10

となった。図Ⅲ-2.3.3-5 の実線は平衡が成立していると仮定した場合に熱力学計算から

得られるメタン転化率と水素回収率の関係である。計算値(実線)と実験値(プロット)はよ

く一致していることから、触媒量が 1/10 に低減しても反応場は平衡にあるものと判断した。

また、反応管が細くなると、熱力学平衡に従って水素回収率の向上分に相当するだけの

メタン転化率が増大していることがわかった。

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3-350

図Ⅲ-2.3.3-2 実験結果(メタン転化率)

原料ガス流量(スチーム/メタン):(○)375/125、(△)750/250、(□)1500/500cc/min

図 メタン転化率@反応管(内径40m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率 [ %

] 125/375

250/750

500/1500

図 メタン転化率@反応管(内径16m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率

[ %

] 125/375

250/750

500/1500

反応管を細径化( 反応管内径40mm→25mm→16m m )

整流板を設置( 反応管内径25mm)

図 メタン転化率@(反応管内径25m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率

[ %

]

125/375

250/750

500/1500

(a) (c)

(d)

(e)

図 メタン転化率@反応管(内径25m m /整流板)

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率 [ %

] 125/375

250/750

500/1500

(b)

図 メタン転化率@反応管(内径40m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

圧力 [ atm ]

メタン転化

率 [ %

] 125/375

250/750

500/1500

(b)触媒を細粒化

( 3mm→1m m)

図 メタン転化率@反応管(内径40m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率 [ %

] 125/375

250/750

500/1500

図 メタン転化率@反応管(内径16m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率

[ %

] 125/375

250/750

500/1500

反応管を細径化( 反応管内径40mm→25mm→16m m )

整流板を設置( 反応管内径25mm)

図 メタン転化率@(反応管内径25m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率

[ %

]

125/375

250/750

500/1500

(a) (c)

(d)

(e)

図 メタン転化率@反応管(内径25m m /整流板)

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

反応圧力 [ atm ]

メタン転

化率 [ %

] 125/375

250/750

500/1500

(b)

図 メタン転化率@反応管(内径40m m )

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10

圧力 [ atm ]

メタン転化

率 [ %

] 125/375

250/750

500/1500

(b)触媒を細粒化

( 3mm→1m m)

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3-351

図Ⅲ-2.3.3-3 濃度分極低減策結果まとめ

原料ガス流量(スチーム/メタン):750/250 cc/min、

反応圧力:9atm、透過圧力:0.1atm

図Ⅲ-2.3.3-4 H2/N2 分離試験結果 図Ⅲ-2.3.3-5 メタン転化率と水素回収率の関

フィード H2/N2 5L/min@供給 5atm、透過 0.1atm 原料ガス流量(スチーム/メタン):

Reactor configuration: (△)750/250、(□)1500/500 cc/min

(◇)type a、(○)type c、 Reactor configuration:

(△)type d、(□)type e Key:(Open)type a、(Closed)type e

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100

水素回収率 [ % ]

メタ

ン転

化率

[ %

]

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100

フィードH2濃度[%]

水素

回収

率 [

% ]

50

60

70

80

90

100

a b c d e

メタ

ン転

化率

、水

素回

収率

[ %

]

メタン転化率

水素回収率

Page 45: EDS (a) O C Al (b) SAD, EDS (a) SAD, EDS (b) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-5 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(5分製膜) 図Ⅲ-2.1.2.4.4-6 対向拡散CVDシリカ膜TEM/EDS測定結果(120分製膜)

3-352

以上の検討により、濃度分極低減策の一つとして、細い反応管を用いることが有効で

あることがわかった。一方で、この方策は配置出来る触媒量が少なくなることにつながるこ

とから、膜反応器において高透過性膜を利用する際には、触媒に関しても活性の高いも

のを用いる必 要があるものと思われた。そこで、活 性の異 なる二つの触 媒を用い、この仮

説の検証を行った。

図Ⅲ-2.3.3-6(黄色枠内)に高活性触媒 A と活性触媒 B の膜無しでの活性を評価し

た結果を示す。横軸は Space Velocity[ h-1 ](原料ガス流量/触媒層体積)であり、この値

が大きいほど、原料ガス流量が大きいことを意味する。図中の線は水素の引き抜きがない

場合の平衡転化率である。触媒 A は 18000h-1 においても平衡転化率を得ることが出来た

のに対して、触媒 B は触媒 A に比べて活性が低く、おおよそ 3000 h-1 までしか平衡を達

成出来なかった。

この二 つの触 媒 を、同 量 ・同 配 置 にて膜 と組 み合 わせた際 の結 果 を図 Ⅲ-2.3.3-6

(緑色枠内)に示す。SV<3000 h-1 では、触媒 A と触媒 B において、同じ SV の際にメタン

転化率に顕著な違いはなかった。一方、SV>3000 h-1 では両者においてメタン転化率に違

いが生じた。すなわち、触媒 B でのメタン転化率は触媒 A でのそれに比べて低く、SV が大

きくなるほどその差は大きいものとなった。図Ⅲ-2.3.3-6 の実験データを熱力学的に検証

した結果、触媒 B では、SV>3000 h-1 では反応が平衡に達していないことが判明した。以

上の実験結果から、反応条件が高 SV 領域となる高透過性膜を用いた膜反応器では、膜

の性能に応じた、高い活性を有した触媒を用いることの必要性が示されたものと考える。

図Ⅲ-2.3.3-6 SV とメタン転化率の関係

0

20

40

60

80

100

0 5000 10000 15000 20000

SV [ h-1 ]

メタ

ン転

化率

[ %

]

膜無しでの最大転化率(平衡転化率)

触媒A(膜有り)触媒A(膜無し)触媒B(膜有り)触媒B(膜無し)

膜無し

膜有り

0

20

40

60

80

100

0 5000 10000 15000 20000

SV [ h-1 ]

メタ

ン転

化率

[ %

]

膜無しでの最大転化率(平衡転化率)

触媒A(膜有り)触媒A(膜無し)触媒B(膜有り)触媒B(膜無し)

触媒A(膜有り)触媒A(膜無し)触媒B(膜有り)触媒B(膜無し)

膜無し

膜有り

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3-353

2.3.4 膜型反応器の大型化に関する検討

2.3.4.1 緒言

膜型反応器の大型化に関わる問題点を明らかにすることを目的として、これまでよりも

膜面積が約 8 倍となる大型の水素分離膜を用いた膜型反応器の評価を行った。

2.3.4.2 実験

分離膜には大型のパラジウム膜(チューブ形状:外径約 30mm、長さ約 200mm)を使用

した。この分離膜を大型複合体性能評価用反応器(反応管内径 60mm)に接続すると共

に、2%Ru/Al2O3 ペレットをその周りに充填した。反応方法及び評価方法は 2.3.2.と同様で

ある。

2.3.4.3 結果と考察

濃度分極のない理想的な膜型反応器では、単位膜面積あたりの原料ガス流量が同じ

であれば反応圧力とメタン転化率の関係は同じになるものと考えられる。そこで原料ガス流

量を膜面積の比例分に応じて、小型(φ10mmL70mm)の時に比べて原料ガス流量を 8 倍

にして反応を行った。原料ガス流量以外の反応パラメーターを同一条件(反応温度 550℃、

反応圧力 3atm、透過圧力 0.1atm)として反応を行った結果、メタン転化率は小型反応器

78%(反応管内径 40mm)に対して大型反応器 71%であり、大型化に伴って性能が低下

していることが明らかとなった。

大型反応器が小型反応器に比べてメタン転化率が低かった原因については以下のよ

うに考察する。まずは 2.3.3.の検討で述べたように濃度分極の影響があげられる。これに関

しては、先に見出したように高活性触媒及び細径反応管の適用と整流板の設置により、そ

の影響が低減出来るものと思われる。さらに原因として、大型反応器では反応量が増大し

たことによって、触媒層内部の温度が低下していた可能性が推察される。解決手段として

は、その一つに原料に酸素(空気)を添加することによって、触媒層において燃焼反応を

行わせることにより、改質反応に必要な熱を供給する空気添加水蒸気改質の採用が挙げ

られる。空気添加水蒸気改質用触媒としては、550℃での触媒試験から Rh/Al2O3 が有望

であることが判明しており、これを用いれば、水蒸気改質同様に膜反応器により空気添加

水蒸気改質 を行えるものと考えられる。以上の方策を実施することにより、大型反応 器に

おいても小型反応器の性能を発現出来るものと思われる。

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3-354

2.3.4 膜反応器における触媒の耐久性に関する検討

2.3.4.1 緒言

2.3.1.で述べたように通常、メタン水蒸気改質反応は 800℃程度の高温下で行われて

おり、膜反応器にて想定される 500~600℃程度の低温における耐コーキング性は一般に

は知られていない。特に膜反応器では水素分圧が低くなるためにコーキングによる触媒の

失活が強く懸念される。一方、2.3.2.の検討により、2.3.1.で選定した Ru 系触媒が 50h 程

度ではあるが、コークを析出することなく安定して機能することがわかった。本章では、さら

にその耐久性を確認するべく、模擬膜(パラジウム膜)を用いて 1,000 時間の連続試験を

実施した。

2.3.4.2 実験

実験には膜反応器耐久試験装置(図Ⅲ-2.3.4-1)を用いた。本装置は、種々の安全

機構が施され、膜反応器試験の無人運転が行えるようになっている。

触媒は 2.3.1.の検討で選定した市販の 2%Ru/Al2O3(1mm)を用い、これを模擬膜(チ

ューブ形状:外径約 10mm、長さ約 70mm)の周辺に充填した。反応器としては内径 25mm

のものを用いた。反応方法及び評価方法は 2.3.2.と同様である。

図Ⅲ-2.3.4-1 膜反応器耐久試験装置

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3-355

2.3.4.3 結果と考察

反応圧力 8atm、透過圧力 0.1atm、反応温度 550℃、S/C=3 として、連続 1000 時間の

長期耐久試験を行った。図Ⅲ-2.3.4-2 及び図Ⅲ-2.3.4-3 に、反応側の生成ガス組成及

びメタン転化率の経時変化を示す。両者共に 1000 時間を通して顕著な変化はみとめられ

なかった。また反応後の触媒にはコーキングは析出していなかった。以上の結果から、活

性と耐久性の両面において、本研究で選定した触媒は膜反応器に好適である可能性が

極めて高いものと結論した。

図Ⅲ-2.3.4-2 反応側の生成ガス組成の経時変化

図Ⅲ-2.3.4-3 メタン転化率の経時変化

0

10

20

30

40

50

60

70

0 200 400 600 800 1000

経過時間[h]

反応

側ガ

ス組

成 [

%-dr

y]

CH4

CO2

CO

H2

0

20

40

60

80

100

0 200 400 600 800 1000

経過時間[h]

メタン転

化率

[%]

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2.3.5 膜反応器用構造体触媒の作製

2.3.5.1 緒言

これまで本研究では、分離膜の周辺にペレット形状触媒を充填する Packed bed 型膜

反応器にて検討を実施してきた。しかしながら、Packed bed 型膜反応器では、分離膜と触

媒の接触による分離膜の物理的、化学的劣化が懸念されるため、実用的ではない可能性

が考えられる。また、分離膜がモジュール化に伴って、大型化或いは複雑化してくると、反

応器内でのガス流れを制御したり、圧力損失を低減するための工夫を講ずる必要が生じ

てくるものと思われる。

一 方、近 年 、触 媒 活 性 成 分をハニカムやフォーム形 状のセラミック構 造 体に担 持 した

“構造 体 触 媒”が注 目 されている。構 造 体 触 媒 はペレット形 状に比べて配 置や構 造 が制

御しやすく、また圧力損失が低い等の特徴を有しており、膜反応器においてもメリットが期

待される。そこで、このような観点からセラミック構造体への改質触媒の担持を検討した。

2.3.5.2 実験

市販改質触媒(2.3.1.の検討で選出した触媒)を粉砕した後、セラミックバインダー、水

と混合することにより、前駆体スラリーを調合した。このスラリーを用いて、ディップ法等によ

り、各 種セラミック構 造 体 に担持を行 った。また、市 販改 質 触 媒の代わりに、多 孔質 触 媒

担体と金属塩溶液を用いて、触媒自身を調合する方法についても実施した。得られた構

造体触媒のメタン水蒸気改質活性を 2.3.1.と同様の装置・方法により評価した。

2.3.5.3 結果と考察

前駆体スラリ―の濃度調整等により、気孔率や気孔径を大きく損なうことなく、各種セラ

ミック構造体に触媒を担持することが出来た。図Ⅲ-2.3.5-1~図Ⅲ-2.3.5-3 に、触媒を担

持したセラミックハニカム、セラミックフォーム、セラミックスティックの外観等を示す。なお触

媒のセラミック担体への付着強度に関しても良好であった。

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図Ⅲ-2.3.5-1 セラミックハニカム

(左図)左から、触媒担持前、触媒担体担持後、触媒金属成分担持後の外観

(右図)触媒担持後の上から見た外観

図Ⅲ-2.3.5-2 セラミックフォーム

(左図)触媒担持前の微構造

(右図)触媒担持後の外観