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2013 第 8 回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成 26 年度 Vol.4 (通算 131 号) 議会の調査権について 平成 26 年 9 月 横浜市会 議会局政策調査課(法制等担当) 編集・発行

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2013第8回マニフェスト大賞

「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

平成26年度 Vol.4 (通算131号)

議会の調査権について

平成 26 年 9 月

横浜市会 議会局政策調査課(法制等担当)

編集・発行

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第Ⅰ章 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P1

第Ⅱ章 議員の調査権

1 地方議会議員の調査権 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1

2 国会議員の調査権 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P2

第Ⅲ章 議会の調査権

1 地方議会の調査権 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3

(1)100 条調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3

(2)事務の執行についての検閲・検査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P24

(3)監査委員に対する監査の請求 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P25

(4)学識経験を有する者等による調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P28

(5)議員派遣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P29

2 国会の調査権について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P33

第Ⅳ章 委員会の調査権

1 地方議会の委員会の調査権 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P34

(1)常任委員会による調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P34

(2)議会運営委員会による調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P34

(3)特別委員会による調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P35

(4)議会の調査権との違い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P35

2 国会の委員会の調査権 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…P36

資料(総務省「地方自治月報第 56 号」(P37))

目 次

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1

平成 26 年4月1日、横浜市会及び横浜市会議員の活動のより一層の充実及び活性

化を図ること等を目的とした、横浜市議会基本条例が施行されました。

議員がその職務を行うに当たっては様々な調査活動が必要であり、本条例第4条に

おいても、議員の責務として、市の政策形成に係る調査研究や、市長等の事務の執行

に対する監視等を行うことが定められています。

しかし、地方議会でなされる調査については、調査の実施主体が議会、委員会又は

議員であるかによって、その法令上の根拠や調査の及ぶ範囲が異なっています。

議員が調査活動を行うに当たっては、実施主体の違いによる調査権の範囲の差異を

適切に把握することが必要と思われます。

そこで、今回の法制レポートでは、地方議会の調査権とはどのようなものか、実施

主体ごとの調査権の範囲の違いについてまとめていきたいと思います。

市会議員の皆様方は、日々の議会活動の中で、市長等の執行機関に対して資料請求

を行うことは頻繁にあると思います。この市会議員からの資料請求に対して、おそら

く、執行機関は迅速に対応しているものと思います。しかし、法的には、議員個人と

しては調査権限は有していません。執行機関から任意で提供を受けるということにと

どまります。

「最新 詳解議員提要(中島正郎 著)」においても、議会の調査権について述べ

ている部分で、「この調査権は議会だけが認められたものであり、個々の議員には全

然認められないものである」との記載があります。

議員個人に調査権を認めるという議論も十分あり得るとは思いますが、現状では、

憲法や地方自治法(以下「法」といいます。)において議員個人に調査権を認めてい

ないことは、議会が合議体の議事機関であるという性格から導かれるのではないかと

考えます。合議体の機関であるからこそ、「議会」又は「委員会」で決定することに

より調査が可能になる仕組みとしたのではないでしょうか。

本年4月1日から施行された横浜市議会基本条例においては、議員個人への調査権

を付与するまでの規定は設けることはできませんでしたが、資料請求等に係る市長等

の対応について次のような規定を設けています。

第Ⅰ章 はじめに

第Ⅱ章 議員の調査権

1 地方議会議員の調査権

○横浜市議会基本条例

(議会への説明等)

第 14 条 2 市長等は、議会又は議員から、市長等が執行する事務に関する資料の提出又は説

明の要求があったときは、誠実に対応するものとする。

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2

国会議員にも、地方議会議員と同様に、法令上、議員個人の調査権はありません。

しかし、国会においては、国会議員の資料要求についてはできる限り協力すべきと

する内閣総理大臣の見解が示されています。

○第 74 回国会 参議院予算委員会会議録第3号(昭和 49 年 12 月 23 日)

○国務大臣(三木武夫君) 国政調査権と守秘義務との関係について、政府の見解を申

し上げます。

一 いわゆる国政調査権は、憲法第 62 条に由来するものであり、国政の全般にわたっ

てその適正な行使が保障されなければならないことはいうまでもないところである。

一方、憲法第 65 条によって内閣に属することとされている行政権に属する公務の

民主的かつ能率的な運営を確保するために、国家公務員には守秘義務が課されて

いる。

二 そこで、国政調査権と国家公務員の守秘義務との間において調整を必要とする場

合が生ずる。国政調査権に基づいて政府に対して要請があった場合、その要請に

こたえて職務上の秘密を開披するかどうかは、守秘義務によってまもられるべき公益

と国政調査権の行使によって得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較衡量する

ことにより決定されるべきものと考える。

三 個々の事案について右の判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる

場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが、政府としては、国会の国政調

査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される 大限の協力を

すべきものと考える。

ということでございます。

○閣僚等の答弁・説明義務及び「あたご」事故の調査等に関する質問に対する答

弁書(平成 20 年4月4日 内閣総理大臣)

国会議員からの国会審議に必要な資料の要求は、議院の国政調査権を背景としたも

のであり、一私人としてのそれではなく、国会がその機能を発揮する上で重要なものであ

ると認識しており、政府としてはこれに可能な限り協力をすべきものと考えている。しかし

ながら、要求された事項が、例えば、個人に関する情報に係るものである場合、所管外

の事項である場合、他国との信頼関係が損なわれるおそれがある場合、捜査の具体的

内容にかかわる事柄である場合等合理的な理由がある場合には要求に応じないことも

許容されるものと考えている。

2 国会議員の調査権

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地方議会が当該地方公共団体の事務について調査を行う制度としては、法第 100

条に基づく事務に関する調査をはじめ、法に複数規定されています。

それぞれ趣旨、方法等が異なっていることから、運用に当たっては具体的な事例に

応じて適切に使い分けることが必要となります。

(1)100 条調査

ア 概要

地方議会の調査に係る制度の中で調査の及ぶ範囲が特に広汎なものが、法第

100 条第1項に基づく調査です。この調査は、「100 条調査」と呼ばれることも

あります。

100 条調査は、議会が持っている条例制定権や予算議決権等の権限を有効・適

切に行使することを目的としており、当該団体の執行機関だけでなく、第三者であ

る選挙人その他の関係人を証人として喚問し、証言を求め、あるいは資料の提出を

求めることができます。また、調査の実効性をあげるために、罰則による強制力も

付与されています。

100 条調査権は、議会がその権限を十分に遂行できるようにするために認めら

れた、補助的、付随的な権限であり、真実を究明することを目的として議会に与え

られたものといえます。

○地方自治法

第 100 条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務

にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるもの

を除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事

由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを

除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、

当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出

頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。

3 第1項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関

係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しないとき

又は証言を拒んだときは、6箇月以下の禁錮又は 10 万円以下の罰金に処する。

1 地方議会の調査権

第Ⅲ章 議会の調査権

・100 条調査(法第 100 条第1項)

・事務の執行についての検閲・検査(法第 98 条第1項)

・監査委員に対する監査の請求(法第 98 条第2項)

・学識経験を有する者等による調査(法第 100 条の2)

・委員会における調査又は審査(法第 109 条第2項から第4項まで)

※後述します。

第Ⅲ章 議会の調査権

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イ 制定経緯

地方議会の調査権は、国会が国政について広範な調査権を与えられた趣旨に則っ

て、地方公共団体の意思決定機関である議会に対してもその職責を十分遂行できる

ように、法の制定当初から規定されていました。

制定当初は現在のような罰則規定がなかったため、調査に係る強制力がありませ

んでしたが、国会の調査権について「議院における証人の宣誓及び証言等に関する

法律」が制定され、当該調査権に強制力が付与されたことに伴い、法の一部改正に

よって 100 条調査にも罰則規定による強制力が付与されました。

ウ 対象

100 条調査の対象となるのは、「当該普通地方公共団体の事務」であり、議会の

調査が及ぶ範囲は大変広範であるといえますが、実際の調査に当たっては、個別具

体的に調査事項を特定することになります。100 条調査の実施は、議会が調査に

係る特別委員会を設置し、当該委員会に対して調査を委任※することが一般的です

が、その際、調査事項を個別具体的に特定する必要があるためです。

なぜなら、本来 100 条調査に係る権限は議会に対して認められているものであ

って、当然に委員会が行使できる権限ではないためです。そのため、議会として調

査を行う必要があるときは、その都度、委員会の設置及び当該委員会への調査権限

の委任の議決が必要とされます。

したがって、議会から委員会に対し、「市政全般に関する調査」というような、

一般的、包括的な調査の委任はできません。

※具体的な委任方法については、「エ 実施主体」(P.8)を御覧ください。

○地方自治法 ※制定当時

第 100 條 普通地方公共團体の議会は、当該普通地方公共團体の事務に関する調

査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記錄の提出を請求する

ことができる。 2 議会が、前項の規定による調査を行うため当該普通地方公共團体の区域内の

團体等に対し照会をし又は記錄の送付を求めたときは、当該團体等は、その求

めに應じなければならない。

○第 92 回帝国議会 貴族院議事速記録第 22 号(昭和 22 年3月 24 日)

○國務大臣(植原悦二郎君) 只今上程になりました地方自治法案に付きまして、

其の提案の理由及び法案中主要なる事項の概略を御説明申上げます…、第三

は、地方議會に關する事項であります…新たに國会法に準じ常任委員會及び特

別委員會の制度を設け、又議會が選擧人を召喚し、各種の調査等を行ふことが

出來るものとする等、議會の活動の能率化及び國民との間に於ける緊密なる接

觸を圖ることと致し、之に伴ひまして都道府縣及び市の參事會は之を廢止する

ことと致したのであります…

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この広範な範囲に及ぶ調査は、次の3つに分類されます。

いずれも地方公共団体の公益に関するものについて認められたものであり、議会

又は特定の議員等の特殊な利害のために調査を実施することは、100 条調査に係

る権限の濫用と解すべきとされています。

調査の分類 内容

議案調査

長提出の予算等の議案、議員提出の条例案等の議案、住民から

の請願、条例制定改廃の直接請求等の審議において、現状を把握

し、問題点を調査すること、

政治調査

世論の焦点となっている社会問題、政治問題等の事項のうち、

当該地方公共団体の事務との関連を有している事項の現状を把

握し、問題点を調査すること

事務調査 当該地方公共団体の事務の具体的執行状況を把握し、その問題

点を調査すること

地方公共団体の事務に関する広範な調査が可能となる 100 条調査ですが、事務

の性質上、対象としないことが適当と考えられるものについては、政令によって除

外されています。

○行政実例(昭和 29 年9月 15 日)

問1 第 100 条の議会の調査権については、議会は一般的包括的に市政全般につい

て調査する等の議決をすることができるか。 答1 一般的包括的に市政全般について調査する旨の議決はなしえない。当該地方

公共団体の事務のうちいかなる範囲のものについて調査権を行使するかを議決す

べきものである。

○行政実例(昭和 23 年 10 月 12 日)

問 第 100 条第 11 項による調査経費の取扱方法について同条第1項に議会は当該地

方公共団体の事務に関する調査を行うとあるが、この調査事務の性質はいかなるも

のか。(略) 答 前段 第2条第2項の事務であって、通常は現に議題となっている事項、若しくは

将来議題に上るべき基礎事項(議案調査)につき調査し、又は世論の焦点となって

いる事件(政治調査)等につきその実情を明らかならしめ、その他一般的に地方公

共団体の重要な事務の執行状況を審査(事務調査)をすることをいう。

第Ⅲ章 議会の調査権

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<100 条調査の対象とならない事務>

自治事務

・労働争議のあっせん、調停及び仲裁その他労働委員会の権限

に属する事務

・収用に関する裁決その他収用委員会の権限に属する事務

※どちらも、その組織に関する事務・庶務については 100 条調

査の対象となります。

法定受託事務

・国の安全を害するおそれがある事項に関する事務(当該国の

安全を害するおそれがある部分に限る。)

・個人の秘密を害することとなる事項に関する事務(当該個人

の秘密を害することとなる部分に限る。)

・土地収用法の規定による収容に関する裁決その他収用委員会

の権限に属する事務

○地方自治法

第100条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務に

あつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを

除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由

により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除

く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該

調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び

証言並びに記録の提出を請求することができる。

○地方自治法施行令

第 121 条の4 地方自治法第 98 条第1項に規定する労働委員会及び収用委員会の

権限に属する事務で政令で定めるものは、労働組合法 (昭和 24 年法律第 174 号)

の規定による労働争議のあつせん、調停及び仲裁その他労働委員会の権限に属

する事務(その組織に関する事務及び庶務を除く。)並びに土地収用法 (昭和 26

年法律第 219 号)の規定による収用に関する裁決その他収用委員会の権限に属す

る事務(その組織に関する事務及び庶務を除く。)とする。

2 地方自治法第 98 条第1項に規定する議会の検査の対象とすることが適当でないも

のとして政令で定めるものは、当該検査に際して開示をすることにより、国の安全を

害するおそれがある事項に関する事務(当該国の安全を害するおそれがある部分

に限る。)及び個人の秘密を害することとなる事項に関する事務(当該個人の秘密を

害することとなる部分に限る。)並びに土地収用法の規定による収用に関する裁決

その他収用委員会の権限に属する事務とする。

第 121 条の5 前条第1項の規定は、地方自治法第 100 条第1項に規定する労働委

員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものについて準用する。

2 前条第2項の規定は、地方自治法第 100 条第1項に規定する議会の調査の対象と

することが適当でないものとして政令で定めるものについて準用する。この場合にお

いて、前条第2項中「検査」とあるのは、「調査」と読み替えるものとする。

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自治事務及び法定受託事務は、いずれも地方公共団体の事務であり、平成 11 年

の地方分権一括法による法改正によって新たに区分されました。それまでは、団体

事務(自治事務)と機関委任事務との2種類がありました。

<自治事務と法定受託事務の違い>

自治事務 法定受託事務

定義

地方自治体が処理する事務のうち、

法定受託事務以外のもの(法第2条第

8項)

国・都道府県が本来果たすべき役割

に係る事務であって、国・都道府県に

おいてその適正な処理を特に確保す

る必要があるものとして、法律又はこ

れに基づく政令に特に定めるもの(法

第2条第9項)

事務処理

法令・政令により事務処理が義務付

けられているものもあるが、任意で行

うものも多い。

【義務付けあり】

介護保険サービス、国民健康保険の

給付、児童福祉・老人福祉・障害者福

祉サービスなど

【義務付けなし】

各種助成金の交付(乳幼児医療費補

助等)、公共施設(文化ホール、スポ

ーツセンター等)の管理など

必ず法令・政令により事務処理が義

務付けられる。

【主な例】

国政選挙、旅券の交付、国の指定統

計、国道の管理、戸籍事務、生活保護

など

国の関与の

度合

原則として、国の関与は是正の要求

まで。

是正の指示、代執行など、国の強い

関与が認められている。

【機関委任事務に対する議会の調査について】

現在、地方公共団体の事務は、自治事務と法定受託事務とに分類されています

が、平成 11 年の地方分権一括法による法改正までは、「団体事務(自治事務)」

と「機関委任事務」の2種類でした。

機関委任事務とは、地方公共団体の長をはじめとする執行機関が、国の下部機

関として主務大臣の一般的かつ包括的な指揮監督を受けて処理する国の事務の

ことです。当該事務は、地方公共団体の業務量において大きな比重を占めており、

都道府県が処理する事務の約7~8割、市町村においても約3~4割を占めてい

たといわれています。

この機関委任事務に対して、100 条調査はその対象とすることができません

でした。機関委任事務は国の事務であり、法が規定する「当該地方公共団体の事

務」には当たらなかったためです。

機関委任事務については、地方自治を侵害するとの批判がありました。住民の

公選による地方公共団体の長も、当該事務を処理する際は国の指揮監督に従わな

ければならず、地方公共団体の実情に応じた行政の妨げとなっていたためです。

そのため、平成 11 年の法改正により機関委任事務は廃止され、「当該地方公

共団体の事務」が拡大したことから、100 条調査の範囲も拡大されることにな

りました。

第Ⅲ章 議会の調査権

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エ 実施主体

調査の実施主体は、議会です。

しかし、あらかじめ議会の権限を委員会に委任する旨の議決を経れば、委員会に

おいて 100 条調査権を行使することは可能であると解されており、通常は、調査

に係る特別委員会を設置して調査を実施することが多くあります。

オ 実施方法

(ア) 特別委員会の設置

100 条調査を実施するに当たっては、まず調査の実施に係る議案等の提出が

必要となります。特別委員会を設置して調査を行う場合は、議案等の内容は次の

ようになります。

<議案等の記載内容>

記載事項 内容

調査事項 調査すべき事項を具体的に記載する。

特別委員会の設置 調査に係る特別委員会名及びその委員定数を記載する。

調査権限 100 条調査の実施権限を特別委員会(又は常任委員会)

に委任することを明示する。

調査期限 本会議で調査を実施する場合は会期中に限られるが、委

員会の場合は会期内に限られないため、必要に応じて調

査期限を記載する。

具体的な期日ではなく「調査終了まで」として議決する

例が多い。

調査経費 当該年度に要する概算の調査経費を記載する。

※予算単年度主義のため、当該年度に要する調査経費し

か計上できない。

調査の実施に係る議案等の実例として、次ページから、長崎県議会(参考1)、

秋田県仙北市議会(参考2)及び栃木県栃木市議会(参考3)を掲載しています。

いずれも、それぞれ 100 条調査の実施に係る議案等の中で、調査の権限を委員

会へ委任しています。

○行政実例(昭和 24 年4月 11 日)

問 法第 110 条の特別委員会に法第 98 条、第 100 条第1項の規定による権限を付与

することができるか。 答 法第 98 条、第 100 条第1項の規定は、直接には委員会に適用されないが、あらか

じめこれらに関する議会の権限を委員会に委任する旨の議決を経ればよい。但し、

その場合も外部に対しては議長名を以て行なうべきである。

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9 第Ⅲ章 議会の調査権

seisakuchousa
テキストボックス
参考1
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議員提出議案第4号

職員の議会運営に対する介入の調査に関する決議について

このことについて、別紙(案)のとおり決議するものとする。

平成21年9月3日 提出

提出者 仙北市議会議員 浦 山 敏 雄

賛成者 〃 青 柳 宗五郎

〃 黒 沢 龍 己

〃 大 石 温 基

〃 安 藤 武

〃 真 崎 寿 浩

〃 髙 久 昭 二

11 第Ⅲ章 議会の調査権

seisakuchousa
テキストボックス
参考2
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職員の議会運営に対する介入の調査に関する決議 (案)

地方自治法第 100 条第 1 項の規定により、次のとおり職員の議会運営に対す

る介入に関する調査を行うものとする。

1 調査事項

職員の議会運営に対する介入の調査に関する事項

2 特別委員会の設置

本調査は、地方自治法第110条及び委員会条例第6条の規定により、委

員 7 人で構成する職員の議会運営に対する介入に関する調査特別委員会

を設置し、これに付託して行なう。

3 調査権限

本議会は、1に掲げる事項の調査を行うため、地方自治法第100 条第1 項

の権限を職員の議会運営に対する介入に関する調査特別委員会に委任す

る。

4 調査期間

職員の議会運営に対する介入に関する調査特別委員会は、1に掲げる調

査が終了するまで、閉会中もなお調査を行うことができる。

5 調査経費

本調査に要する経費は、10万円以内とする。

以上決議する。

平成 21 年 9 月3日

秋田県仙北市議会

12

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(イ) 証人喚問

a 概要

調査を進めていくに当たって、さらなる真相究明のために、選挙人その他の関

係人を証人として調査に係る特別委員会に喚問し、証言をしてもらうことが可能

です。

「選挙人」とは、選挙人名簿に記載されている者ではなく、実質的に選挙権を

有している者のことです。具体的には、日本国民で満 20 歳以上であり、引き続

き3箇月以上当該地方公共団体に住所を有している者を指します。

「その他の関係人」とは、「調査の対象に関係を有する全ての人」であり、当

該地方公共団体の住民に限定されません。そのため、関係人であるかどうかの判

断は、100 条調査を実施する委員会が行うこととなります。

この証人喚問に係る法律上の規定は、法に特別の定めがあるものを除いて、民

事訴訟法が準用されます。

b 証人の不出頭

出頭を請求したにもかかわらず証人が不出頭の場合、その不出頭が正当な理由

によるものかどうかを委員会が判断します。

正当な理由がない、と判断された場合、法第 100 条第 9 項の規定により、議

会は当該証人を告発しなければなりません。

正当な理由について、一般的には病気、長期旅行、変更できない公務、交通事

故、親族の慶弔等が想定されますが、個別具体的な状況に応じて判断することに

なります。

○地方自治法

第 100 条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治

事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定

めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがある

ことその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものと

して政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うこ

とができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認

めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請

求することができる。

2 民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定は、この法律に

特別の定めがあるものを除くほか、前項後段の規定により議会が当該普通

地方公共団体の事務に関する調査のため選挙人その他の関係人の証言を請

求する場合に、これを準用する。ただし、過料、罰金、拘留又は勾引に関

する規定は、この限りでない。

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15

c 宣誓

委員会は、出頭した証人に宣誓をさせなければなりません。証人の宣誓につい

ては、民事訴訟法の規定が準用されます。

宣誓とは、証人が委員会からの尋問に対し良心に従って真実を述べる旨を陳述

することを誓う行為をいいます。

証人が 16 歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解できない者であるときは、民事訴

訟法上の宣誓をさせることができないため、宣誓なしでも証言を求めるかどうか

については委員会が判断することになります。

d 罰則規定

100 条調査権の特徴のひとつとして、罰則による強制力を伴う点があります。

正当な理由がなく、調査のための関係人の出頭及び証言を拒んだときは6箇

月以下の禁錮又は 10 万円以下の罰金に処されます。

○地方自治法

第 100 条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治

事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定

めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがある

ことその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものと

して政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うこ

とができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認

めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請

求することができる。

3 第1項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その

他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提

出しないとき又は証言を拒んだときは、6箇月以下の禁錮又は 10 万円以下

の罰金に処する。

9 議会は、選挙人その他の関係人が、第3項又は第7項の罪を犯したもの

と認めるときは、告発しなければならない。但し、虚偽の陳述をした選挙

人その他の関係人が、議会の調査が終了した旨の議決がある前に自白した

ときは、告発しないことができる。

○民事訴訟法

(宣誓)

第 201 条 証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければな

らない。

2 16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として

尋問する場合には、宣誓をさせることができない。

第Ⅲ章 議会の調査権

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16

また、宣誓した者が虚偽の陳述をしたときは、3箇月以上5年以下の禁錮に

処されます。

e 証言拒絶

(証人又は第三者の刑事訴追、有罪判決、名誉侵害を理由とする証言拒絶)

証人として出頭を求められたときは、原則として証言を拒絶することはできま

せん。

しかし、自己又は一定の親族関係者等の刑事上の訴追又は処罰を招くおそれの

ある事項やそれらの者の恥辱になる事項については、民事訴訟法の規定により、

証人は証言を拒むことができることとされています。

(公務員の証言拒絶)

議会は、証人が公務員(過去に公務員であった者を含む。)たる地位において

知り得た事実については、その者から職務上の秘密に属するものである旨の申

立てがあったときは、当該官公署の承認がなければ、当該事実に関する証言又

は記録の提出を請求することができません。

この場合、当該官公署が承認を拒むときは、その理由を疏明しなければなり

ません。また、当該官公署の承認がある前までは、公務員は、民事訴訟法の規

定に基づき、証言を拒絶することができます。

○地方自治法

第 100 条

3 第1項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の

関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しない

とき又は証言を拒んだときは、6箇月以下の禁錮又は 10 万円以下の罰金に処す

る。

7 第2項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人そ

の他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを3箇月以上5年以下の禁錮に

処する。

○民事訴訟法

(証言拒絶権)

第196条 証言が証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け、

又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は、証言を拒む

ことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも、同様とす

る。

(1) 配偶者、四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり、又はあった

こと。

(2) 後見人と被後見人の関係にあること。

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議会は、当該官公署の疏明に理由がないとして納得できないときは、当該官公

署に対し、当該証言等が公の利益を害する旨の声明を要求することができます。

この要求を受けた当該官公署が、20 日以内に声明をしないときは、証人は証

言等を行わなければなりません。

(職務上知り得た事実で黙秘すべきことを理由とする証言拒絶)

証人が、医師、弁護士、公証人、宗教関係者等の職業に従事している者又はこ

れらの職にあった者であって、職務上知り得た事実で黙秘すべき事項及び技術又

は職業の秘密に関する事項について尋問を受けたときは、証言を拒絶することが

できます。

ただし、この場合も、秘密を守ることについて利益を有する者や、秘密を公表

することについて決定することができる者の許諾があれば、証言を拒むことはで

きません。

○地方自治法

第 100 条

4 議会は、選挙人その他の関係人が公務員たる地位において知り得た事実に

ついては、その者から職務上の秘密に属するものである旨の申立を受けたとき

は、当該官公署の承認がなければ、当該事実に関する証言又は記録の提出を

請求することができない。この場合において当該官公署が承認を拒むときは、そ

の理由を疏明しなければならない。

○民事訴訟法

第 197 条 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。

(1) 第 191 条第1項の場合

○地方自治法

第 100 条

5 議会が前項の規定による疏明を理由がないと認めるときは、当該官公署

に対し、当該証言又は記録の提出が公の利益を害する旨の声明を要求する

ことができる。

6 当該官公署が前項の規定による要求を受けた日から 20 日以内に声明をし

ないときは、選挙人その他の関係人は、証言又は記録の提出をしなければ

ならない。

第 191条 公務員又は公務員であった者を証人として職務上の秘密につい

て尋問する場合には、裁判所は、当該監督官庁(衆議院若しくは参議院

の議員又はその職にあった者についてはその院、内閣総理大臣その他の

国務大臣又はその職にあった者については内閣)の承認を得なければな

らない。

第Ⅲ章 議会の調査権

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(ウ) 記録の提出

100 条調査を実施する委員会は、証人喚問の他に、選挙人その他の関係人又

は当該地方公共団体の区域内の団体等※に対し、記録の提出を求めることができ

ます。

この場合の記録とは、資料等の文書のほか、写真、設計図、DVD、CD など

の記録媒体も含まれると解されています。

また、記録の提出を求められた選挙人その他の関係人は、正当な理由なく提出

を拒んだ場合は、6箇月以下の禁錮又は 10 万円以下の罰金に処されます。(当

該地方公共団体の区域内の団体等が拒んだ場合は、罰則はありません。)

※当該地方公共団体の区域内の団体等とは、国の行政機関は含まれませんが、

公法人、私法人、財団、人格なき社団等の全てを含むと解されています。

○民事訴訟法

第 197 条 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。

(2) 医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事

務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の

職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべ

きものについて尋問を受ける場合

(3) 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合

2 前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。

○地方自治法

第 100 条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事

務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定める

ものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその

他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定め

るものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合に

おいて、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関

係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。

3 第1項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の

関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しない

とき又は証言を拒んだときは、6箇月以下の禁錮又は 10 万円以下の罰金に処す

る。

10 議会が第1項の規定による調査を行うため当該普通地方公共団体の区域内の

団体等に対し照会をし又は記録の送付を求めたときは、当該団体等は、その求

めに応じなければならない。

○行政実例(昭和 23 年3月 23 日)

問 第 10 項の団体等には、鉄道局その他国家行政機関も含む趣旨か。

答 第 10 項の団体等には、国の行政機関は含まない。但し、選挙人その他関係

人としての個人たる資格において当該機関に第1項の規定を適用することはさ

しつかえない。

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(エ) 調査の限界

ここまで御紹介したとおり、100 条調査は、政令で定めるものを除く地方公

共団体の事務全般を対象とした調査が可能ですが、次に掲げる5つの限界があり

ます。

a 調査目的による限界

b 司法権との関係による限界

c 検察権との関係による限界

d 執行機関との関係による限界

e 基本的人権との関係による限界

a 調査目的による限界

100 条調査権も本質的に補助的な権能である限りは、本来の権限の目的のた

め、かつ、その目的を達成するために必要な範囲内においてのみ認められるもの

です。

第一に、100 条調査権は、条例の制定改廃、予算の審議、議員の資格審議、

執行機関に対する批判監視等の議会の権限の行使を補助するために設けられた

ものであるため、政敵の内情暴露あるいは個人の秘密を探り出して利益を得よう

とする場合等、調査目的の妥当性を欠く場合には 100 条調査権は行使できませ

ん。

第二に、調査は、その調査目的の範囲内において行われなければなりません。

そのため、議会が 100 条調査権の議決を行う場合には、その調査の対象となる

事件を特定しなければなりません。これは、100 条調査権は罰則により担保さ

れた強力な権限であるのでその濫用を防止するためのものです。ここでいう「特

定」とは、必ずしも個々に特定された事件を指すのみではなく、一定範囲を限定

した事件も含まれます。

b 司法権との関係による限界

議会が行う 100 条調査により、裁判官が裁判を行うに当たって重大な影響を

及ぼすような調査を指します。

特に裁判内容についてその内容の適否を判断するような調査は、司法権の独立

を侵害する例であるといえ、判決確定の前後を問わず一切許されないと解されま

す。

なお、その調査目的が司法権の独立を侵害しないで行われる調査であって、裁

判所と同一の事項について 100 条調査を並行して行うことは可能です。

c 検察権との関係による限界

検察が行う起訴、不起訴に関する事項について圧力をかけるような調査であっ

たり、検察が行う捜査の内容に重大な影響を及ぼすような調査等である場合は

100 条調査の限界を超えるものであると解されます。

第Ⅲ章 議会の調査権

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d 執行機関との関係による限界

100 条調査権は、地方公共団体の事務に関し、議会が条例の制定改廃、予算

の審議等、その保持する諸権能を行使するために補助的に与えられた調査権能で

あるので、執行機関への調査に対して限界があります。

すなわち、当該団体の事務に関するものであっても、執行機関に裁量権が委ね

られている事項については、裁量権の逸脱、濫用と認められない限り、100 条

調査の対象とはなりません。

なぜなら、地方自治制度において執行機関と議会という二元代表制いわゆる首

長制をとっている意味合いは、執行機関と議会の役割分担を定め、それぞれ独立

して対等な立場から、相互に牽制・抑制するとともに、均衡と調和を保つための

制度であるからです。

その分担が定められた事項にまで他方の権限が及んでしまったら、執行機関も

議会も独立して対等な立場から、相互に牽制・抑制することができず、均衡と調

和を目的とした二元代表制を採用した意味が失われてしまうからです。

e 基本的人権との関係による限界

憲法で保障されている個人の思想や信条、信仰に係る領域について 100 条調

査を行うことは基本的人権の侵害に該当するため、調査はできません。

さらに、政治責任の追及に関係する内情暴露などの事実の解明、個人の秘密や

プライバシーに関係する事項の暴露のための調査を行うこともできません。

これらについて尋問が行われた場合、証人は次に掲げる憲法第 38 条の黙秘権

及び法第 100 条第3項の正当の理由による証言拒絶を根拠に、証言を拒絶する

ことができます。

カ 横浜市会における 100 条調査権の実施事例について

本市会では、昭和 26 年に、100 条調査が行われた事例があります。

区画整理の移転補償に伴う職員の横領事件を調査するため、昭和 26 年 11 月

29 日、行政事務特別調査委員会(以下「本委員会」)が設置されました。

概要

建設局整地部工事課(当時)が、反町地区及び西神奈川地区の区画整理事業に伴

う移転補償金の支払いを請求されたところ、書類上は既に支払い済みであったこと

から、関係書類等により調査した結果、担当職員による業務上横領又は詐欺の事実

が判明しました。

担当職員はその後所在がつかめなくなりましたが、のちに警察へ自首し、横領罪

等で起訴されました。

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調査事項

建設局整地部関係の不祥事件に係る原因の究明

調査結果

本委員会が調査する中で、次のような事実が判明しました。

・工事課の職員数が 114 名であった。

※当時、1課当たり 40 名程度が適当とされていた。

・補償金の交付について、本来の補償係ではなく移転係が処理しており、事務分

掌どおりに行われていなかった。

・補償金交付に係る関係処理の取扱いが簡便化され、悪用される隙を生じていた。

・担当職員の他にも公金を費消した職員や、長期欠勤していたにもかかわらず出

勤簿上は出勤したことになっている職員がいるなど、上司の監督が不十分であ

った。

・担当職員は、本市採用前の職場において、職場内の物品を窃盗するなど数件の

犯行があり、本市採用後も窃盗罪で起訴猶予処分となっており、職員採用に問

題があった。

・補償金交付に係る関係書類の必要性、関連性等の知識がない職員がいた。

以上の調査結果を踏まえて、本委員会は次の点について要望し、調査は終了しま

した。

キ 他の自治体における 100 条調査権の実施事例について

他の自治体における 100 条調査権の実施事例については、総務省が「地方自治

月報第 56 号」(巻末資料参照)でまとめています。

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31 日までの間に、都道府県では1県、

市町村では 49 団体が 100 条調査を実施しました。

ここでは、他自治体における 100 条調査委員会の例を3件御紹介します。

○行政事務特別調査委員会報告書

(昭和 26 年横浜市会第8回定例会会議録第 14 号より抜粋(原文ママ))

特に次の諸点について市当局は速かに対策を樹て、この種事件の再発を防止

せられたい。 一、職員の任用に当つては、能力の実証に基くのみでなく、身上調査をも嚴に

行うこと。 一、職員に対しては、常に研修を怠らず、公僕精神の徹底を図ると共に、信賞

必罰をもつてのぞむこと。 一、公金尊重の観念を強調し、その取扱に慎重構成を期すること。 一、弘報活動を強化し、市の事務に関する市民の認識を深め、執務の明朗、能

率化を図ること。

第Ⅲ章 議会の調査権

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長崎県議会「大学等発ベンチャー創出事業に関する調査特別委員会」

概要

長崎県では、平成 15 年度から平成 17 年度にかけて、大学等の研究成果を基に

した成長性が期待されるベンチャー企業の創出を目的として、投資等により資金支

援や専門家による経営支援を行う「長崎県大学等発ベンチャー創出事業」を実施し、

各年度1社ずつ採択して1億円の投資を行ってきました。

平成 16 年度は、新薬開発の際の薬効薬理の実験研究の受託事業を行う「バイオ

ラボ株式会社」の事業が採択されました。

ところが、このバイオラボ社は、当初の事業計画から大きく乖離する事業展開を

行い、その結果、事業採択から4年後、本格的に事業を稼働する前に経営破綻に陥

りました。

調査事項

①大学等発ベンチャー創出事業における長崎県及び長崎県産業振興財団からのバ

イオラボ社への 6,000 万円の出資金及び 4,000 万円の補助金の交付に関する

事業執行内容

②その他バイオラボ社の経営破綻に陥るに至るまでの長崎県行政関係当局及び長

崎県産業振興財団の関与について

調査結果

①について

・取締役会において、法定上の重要事項が決議されていないなど、取締役会の運営

が適正に行われていなかった。

・取締役会議録等の署名、押印が適正に行われていなかった。

・取締役会では実際には論議されていない事項が、県議会に提出された資料には記

載されていた。

・財団からの許可を得ずに補助金で購入した物品の売却を行い、運営資金に充てた。

②について

・バイオラボ社の採択に当たって示された、審査会における指摘事項には、破綻に

至る大きな要因が示されていたにもかかわらず、その対応が不十分であったた

め、同社代表取締役の放漫経営、過剰投資を許す結果になった。

秋田県仙北市議会「職員の議会運営に対する介入に関する調査特別委員会」

概要

仙北市議会の産業建設常任委員会(以下「委員会」といいます。)において、木

質バイオマス※事業の契約案件に係る審議をしたところ可否同数となり、産業建設

常任委員長(以下「委員長」といいます。)は業者選定の在り方に対する疑問から

否決としました。

しかし、その後の本会議では、委員会の結論とは異なり、当該契約案件が可決さ

れました。

この結果について、仙北市産業観光部長が、委員長に対し、委員長職の辞任を示

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唆したとの疑いがあることが問題となりました。

※木質バイオマス…木材からなる再生可能な資源のこと。

(例)製材工場から出る樹皮、木屑など

調査事項

職員の議会運営に対する介入の調査に関する事項について

調査結果

・産業観光部長が委員長に対し、「仮に、委員会と本会議で逆転した場合、委員長

の責任とかということにはならないでしょうけれども」と発言した。

・産業観光部長の発言は、委員会と本会議との結論が逆転したという事実背景から、

委員長の辞任を決意させる契機となったと受け取られてもやむを得ない。

・市の幹部職員が、議会の人事問題に発展するような発言をし、議会運営を混乱に

陥れた。

・職員を管理監督する責任者としての市長には、幹部職員に対し節度ある慎重な言

動をとるよう注意を促すと共に、徹底指導を強く求める。

栃木県栃木市議会「オリン晃電社工場跡地土地購入等に係る調査特別委員会」

概要

栃木市が策定した「太平山麓における活性化整備事業計画(素案)」に基づいて

用地取得依頼を受けた栃木市土地開発公社が、オリン晃電社工場跡地を2億 100

万円で購入しましたが、本件土地購入について栃木市議会へ一切報告していなかっ

たことが問題となりました。

調査事項

①「太平山麓における活性化整備事業計画」策定の経緯及びその妥当性に関する事

項について

②栃木市土地開発公社による土地購入をめぐる経緯及び地価の妥当性等に関する

事項について

③市の管理監督責任に関する事項について

調査結果

①本事業計画は、特定事業者の提案から特定の土地の購入を前提に進められてお

り、公平性、客観性の確保、事業の確実性という観点において、事業自体の検証

さえなされておらず、庁内の関係部署等との十分な協議、計画の公表、住民の意

見聴取等の手続きも経られていない。

②土地購入前に行われるべき土壌汚染調査や既存建物の現状調査が行われておら

ず、適正な手順とは言えず、本件土地購入は事業推進のためではなく土地売買が

目的であったというほかない。

③計画策定担当者は、短期間で策定作業を行った結果、計画策定の日付をさかのぼ

って起案するなどの事務処理を行っており、このような作業を行わせた管理職員

の責任は重い。

また、本事業計画は議会へ報告されるべき案件であったが、その報告はなく、計

画内容からも市が土地を先行取得する必然性が認められない。

第Ⅲ章 議会の調査権

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(2)事務の執行についての検閲・検査

ア 概要

地方議会は、当該地方公共団体の事務に関する書類及び計算書を検閲し、当該団

体の長、委員会又は委員の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納

を検査することができます。これが議会による事務の執行についての検閲・検査で

あり、この権限は検査権と呼ばれることもあります。

趣旨は、執行機関(市長等)と意思決定機関(議会)との間の相互の牽制により、

普通地方公共団体の事務処理を適正にすることです。

イ 制定経緯

法の制定当初から、事務の執行についての検閲・検査については規定がありまし

たが、100 条調査と同様に、機関委任事務についてはその対象とすることができ

ませんでした。

しかし、100 条調査が機関委任事務の廃止まで調査対象にできなかったのに対

し、検閲・検査については、平成3年の法改正によってその対象とすることができ

るようになりました。

これは、機関委任事務は、国等から地方公共団体の執行機関に委任された事務と

はいえ、その事務処理自体が地域住民の利害に密接に関連し、その管理・執行は地

方公共団体の組織、人員、支出する経費等によって行われるものであることから、

地方公共団体が民意を反映しつつ適正な執行を確保することができるようにと、改

正されたためです。

ウ 対象

検査の対象は、当該普通地方公共団体の事務です。

自治事務、法定受託事務ともに調査の対象となりますが、100 条調査と同じく、

事務の性質上、議会の検閲・検査の対象としないことが適当であると政令で定めら

れた事務は対象外となります。(対象外となる事務の内容については、P.6を御覧

ください。)

○地方自治法

第98条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務に

あつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを

除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由

により議会の検査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除

く。)に関する書類及び計算書を検閲し、当該普通地方公共団体の長、教育委員

会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員

会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員の報告を請求

して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる。

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エ 実施主体

検査を行うのは議会です。そのため、検査の実施に当たっては、その旨の機関意

思を決定する議決が必要となります。

その実施方法は、議員全員によって議場で行うこともでき、特別の議決により、

予備審査を小委員会委員、特別委員等を選んで、これに行わせることも考えられま

す。通常は、特定の委員会に実施させることとなります。

オ 実施方法

議会が自ら調査を行う場合は、①書類及び計算書の検閲、又は②長その他の執行

機関から受ける報告による調査となります。

検査は、議会が開会されており、活動能力を有するときに限られます。ただし、

委員会に検査を付議している場合は、当該委員会は閉会中でも当該検査に関する活

動を行うことができます。

調査方法は、専ら書面による検査とされ、実地検査は許されないものと解されて

います。

実地検査が必要である場合は、監査委員に監査を請求するべきとされています。

平成 9 年の法の改正による外部監査制度の導入により、この監査請求について、

個別外部監査契約に基づく監査を求めることができるとされています。

なお、第 29 次地方制度調査会の調査審議において、議会の実地検査権について

は、同調査会は、「今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申」

において、今後検討していくべきとしています。

(3)監査委員に対する監査の請求

ア 概要

議会は、監査委員に対し、一定のものを除き、当該普通地方公共団体の事務に関

する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができます。

○今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申について(第 29

次地方制度調査会)

(略)議会に実地検査権を付与することについては、議会の有する監査請求権や調

査権等との関係をどのように考えるのか等の課題があるとの意見もあったところである。

このようなことから、議会の実地調査権については、現在の検査権や調査権の行使の

状況等も勘案しつつ、検討していくべきである。

○地方自治法

第 98 条

2 議会は、監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては

労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法

定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により本

項の監査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)に関

する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができる。この場合にお

ける監査の実施については、第 199 条第2項後段の規定を準用する。

第Ⅲ章 議会の調査権

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イ 制定経緯

監査委員に対する監査の請求については、検閲・検査と同様に、法の制定当初か

ら規定がありました。

この監査請求に係る規定についても、平成3年の法改正までは機関委任事務が対

象となってはいませんでしたが、検閲・検査と同様の理由により、平成3年の法改

正によって機関委任事務も対象に含まれることとなりました。

ウ 対象

(2)で御紹介した検閲・検査と同じく、監査の請求に係る対象は、当該普通地

方公共団体の事務です。

監査請求の対象とならない事務についても、検閲・検査と同じく、事務の性質上、

議会の監査請求の対象としないことが適当であるとされる政令で定める事務は対

象外となります。

エ 実施主体

監査の請求を行うのは議会ですが、実際に監査を行うのは監査委員です。

オ 実施方法

監査の実施に際して必要な事項は、政令で定められています。具体的には、監査

委員は、事務の執行が「最小の経費で最大の効果を挙げる」、「常にその組織及び運

営の合理化に努める」という法の規定の趣旨にのっとって行われているか、「法令

の定めるところに従って適正に行われているか」について、注意することとされて

います。

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27

○地方自治法

第 98 条

2 議会は、監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては

労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法

定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により本

項の監査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)に関

する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができる。この場合にお

ける監査の実施については、第 199 条第2項後段の規定を準用する。

第 199 条

2 監査委員は、前項に定めるもののほか、必要があると認めるときは、普通地方公共

団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事

務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれ

があることその他の事由により監査委員の監査の対象とすることが適当でないもの

として政令で定めるものを除く。)の執行について監査をすることができる。この場

合において、当該監査の実施に関し必要な事項は、政令で定める。

○地方自治法施行令

第140条の6 地方自治法第 199 条第2項の規定による監査の実施に当たつては、

同条第3項の規定によるほか、同条第2項に規定する事務の執行が法令の定める

ところに従つて適正に行われているかどうかについて、適時に監査を行わなけれ

ばならない。

○地方自治法

第 199 条

3 監査委員は、第1項又は前項の規定による監査をするに当たつては、当該普

通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び当該普通地方公共団体の経

営に係る事業の管理又は同項に規定する事務の執行が第2条第 14 項及び第

15 項の規定の趣旨にのつとつてなされているかどうかに、特に、意を用いなけ

ればならない。

○地方自治法

第2条

14 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努

めるとともに、 少の経費で 大の効果を挙げるようにしなければならない。

15 地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地

方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。

第Ⅲ章 議会の調査権

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(4)学識経験を有する者等による調査

ア 概要

議会は、議案の審査及び当該普通地方公共団体の事務の調査に関し専門的な知見

の活用が必要となった場合に、議会が学識経験者等に専門的事項に係る調査をさせ

ることができます。

イ 制定経緯

学識経験を有する者等による調査については、第 28 次地方制度調査会の「地方

の自主性・自立性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申」を踏まえ、平成 18

年の法改正により法第 100 条の2が追加されました。

本条の追加以前から、議会において専門的な知見を要すると考えられる場合の制

度としては、公聴会(法第 115 条の2第1項)や、参考人制度(法第 115 条の

2第2項)がありました。

しかし、これらの制度は、意見を聴取することができるにとどまり、議会が必要

とする専門的な知見を得ることができるような調査・研究を求めて報告を受けると

いったものではありません。

そこで、平成 18 年の地方自治法の改正により、議会の活動として、議案の審査

及び当該地方公共団体の事務の調査に関し専門的な知見の活用が必要となった場

合には、議会が学識経験者等に専門的事項に係る調査をさせることができることと

されました。

○地方自治法

第 100 条の2 普通地方公共団体の議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団

体の事務に関する調査のために必要な専門的事項に係る調査を学識経験を有す

る者等にさせることができる。

○地方の自主性・自立性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申について(第

28 次地方制度調査会)

議会が、議案の審査又は当該地方公共団体の事務に関する調査のため必要があ

ると認めるときは、その議決により、学識経験を有する者等必要な者に、個別具

体の事項について調査・報告をさせることができることとするとともに、複数の

者の合議による調査、報告もできることとすべきである。

○地方自治法

第 115 条の2 普通地方公共団体の議会は、会議において、予算その他重要な議

案、請願等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験を有す

る者等から意見を聴くことができる。

2 普通地方公共団体の議会は、会議において、当該普通地方公共団体の事務に

関する調査又は審査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その

意見を聴くことができる。

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ウ 対象

対象は、議案の審査及び当該普通地方公共団体の事務の調査に関する事項です。

議案の審査及び当該普通地方公共団体の事務の調査を既に実施していることが

前提となるため、100 条調査と異なり、その調査事項は限定されます。

エ 実施主体

専門的事項に係る調査をさせるのは議会であるので、議会の機関意思の決定とし

ての議決が必要です。

調査を求める相手方である「学識経験を有する者等」とは、個人だけではなく、

法人、法人格のない団体・組織等も対象となるもので、大学、調査研究機関、コン

サルタント会社等も含まれます。

この調査を求める相手方として、当該地方公共団体の議員や執行機関の職員も対

象となるかが問題となります。

この制度は、地方公共団体の外部の知見を活用する方策として制度化されたもの

であることから、当該地方公共団体の議員や執行機関の職員に調査をさせることは

想定されていません。しかし、議員としての活動や執行機関の職員としての職務と

は関係のない議員や職員の知見をこの制度を通じて活用することまでは否定され

るものではないとされています。

オ 実施方法

議会の議決の内容は、調査の対象である専門的事項、期間、調査を求める相手方

の氏名又は名称、調査結果の提出方法等となります。調査の具体的な手続等につい

ては、委員会において取り扱うこととして差し支えないとされています。

本条による調査は、議案の審査又は当該地方公共団体の事務に関する調査が議会

において行われていることが前提となります。

したがって、議会が閉会した後においても引き続き調査を継続させる場合は、閉

会中審査の手続をとる必要があります。

(5)議員派遣

ア 概要

議員派遣制度は、平成 14 年3月に「地方自治法等の一部を改正する法律(平成

14 年法律第4号)」により明文化された、議会の調査に係る制度のひとつです。

①「議案の審査」

②「当該地方公共団体の事務に関する調査」

③「その他議会において必要があると認めるとき」

のいずれかの場合に、議会は、会議規則の定めるところにより議員の派遣を決定す

ることができます。

本市の議会基本条例においても、議員の議案審査及び政策立案等の能力向上のた

第Ⅲ章 議会の調査権

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め、議員派遣等の制度を積極的に活用するなど、必要な研修及び調査研究に取り組

むものとする、と定められています。

イ 制定経緯

(ア) 法改正前における議員派遣

平成 14 年の法改正前は、地方議会の議員派遣については、国会議員の派遣を

定めた国会法第 103 条のような根拠規定を欠いていましたが、事実上、広く実

施されている状況にありました。

このような中、堺市議会の議員派遣による海外視察の可否が住民訴訟にて争わ

れました。最高裁判所は、昭和 63 年3月 10 日、地方議会においても合理的な

必要性がある場合には、その裁量により議員を派遣することができるとの判断を

初めて示し、以降の裁判例も同様の判断を示しています。

○地方自治法

第 100 条

13 議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためそ

の他議会において必要があると認めるときは、会議規則の定めるところにより、議員

を派遣することができる。

○横浜市会会議規則

(議員の派遣)

第 117 条 市会において審査、調査その他必要により議員を派遣する場合は、市会

の議決でこれを決定する。ただし、緊急を要する場合又は閉会中にあっては、議長

において議員の派遣を決定することができる。

2 前項の規定により、議員の派遣を決定するに当たっては、派遣の目的、場所、期

間その他必要な事項を明らかにしなければならない

○横浜市議会基本条例

(研修及び調査研究)

第 25 条 議員は、議案等の審査及び政策立案等に関する能力の向上のため、議

員派遣(法第 100 条第 13 項の規定による議員の派遣をいう。)を積極的に活

用するなど、必要な研修及び調査研究に取り組むものとする。

○国会法

第 103 条 各議院は、議案その他の審査若しくは国政に関する調査のために又は

議院において必要と認めた場合に、議員を派遣することができる。

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(イ) 法制化の要望

議員派遣については、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会及び全国町

村議会議長会による「地方自治法の改正等に関する要望」にて法制化を求められ

た経緯等もあり、議会制度の充実の一環として、平成 14 年の法改正により、そ

の根拠及び手続が明確化されました。

○最高裁判所第一小法廷昭和 63 年3月 10 日判決(堺市の事例)

<住民の主張>(第1審判決(大阪地方裁判所 昭和 57 年 11 月 10 日判決)抜粋)

「国会議員の派遣については国会法 103 条に明文規定があることと対比し、市議会が

議員を派遣することは、明文の規定がない以上、できないと解すべきである。」

<裁判所の判断>

「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関として、その機能を

適切に果たすために必要な限度で広範な権能を有し、合理的な必要性があるときはその

裁量により議員を海外に派遣することもできる」

○最高裁判所第三小法廷平成9年9月 30 日判決(徳島県吉野町の事例)

「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関として、その機能を

適切に果たすために合理的な必要性がある場合には、その裁量により議員を国内や海外

に派遣することができるが、右裁量権の行使に逸脱又は濫用があるときは、議会による

議員派遣の決定が違法となる場合のあることは、当裁判所の判決の示すところである。」

○地方自治法の改正等に関する要望(抜粋)

平成 12 年7月

地方分権の進展に対応し、地方議会の監視機能及び政策提言機能の強化並び

に議会の自主性の発揮と独自性の確保を図るため、次のとおり地方自治法の改正

等を早期に行われるよう要望いたします。

(中略)

3 議員派遣の法制化

現在、閉会中に議会活動として議員を調査・研究のため派遣できるのは委員会

の継続審査事件に関連したいわゆる委員会視察に限るものとされているが、議会の

調査機能の充実を図るため、議員派遣の制度を明文化すること。

○第 151 回国会 衆議院本会議第 38 号(平成 13 年6月 12 日)(総務大臣説明

より抜粋)

地方自治法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

地方自治法等の一部を改正する法律案につきましては、住民自治のさらなる充

実及び自主的な市町村の合併の推進を図り、もって地方分権を推進するため、地

方制度調査会の答申及び地方分権推進委員会の意見にのっとり、直接請求に必

要な署名数の要件の緩和、議会制度の充実、住民監査請求制度及び住民訴訟制

度の充実、(中略)ほか、所要の規定の整備を行おうとするものであります。

以下、その概要について御説明申し上げます。

第一は、地方自治法の一部改正に関する事項であります。(中略)

次に、議会制度の充実に関する事項として、議員派遣の根拠及び手続を明確化

するとともに、議会における選挙において、点字投票の導入を図ることとしておりま

す。

第Ⅲ章 議会の調査権

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ウ 対象

概要で御説明したように、「議案の審査」、「当該地方公共団体の事務に関する調

査」、「その他議会において必要があると認めるとき」のいずれかに該当する場合、

議会は議員を派遣することができます。

しかし、法律上、どのような目的・内容の派遣であれば適法となるのか(議会の

裁量権の限界)が具体的にはされていません。

エ 実施主体

議員派遣を決定するのは議会ですが、実際に調査を行うのは派遣された議員です。

オ 実施方法

法及び会議規則の規定に基づき、議会の議決により議員の派遣を決定します。

この際に、派遣の目的、場所、期間その他必要な事項を明らかにする必要があり

ます。

ここまで御紹介した議会の調査権の他にも、議員が調査権を有効に活用するために

は政策立案・監視能力を高める必要があることから、政務活動費(法第 100 条第

14 項)の交付、図書室の設置(法第 100 条第 19 項)、刊行物等の送付の受領(法

第 100 条第 19 項)等の規定が定められています。

○地方自治法

第 100 条

13 議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためそ

の他議会において必要があると認めるときは、会議規則の定めるところにより、議員

を派遣することができる。

○横浜市会会議規則

(議員の派遣)

第 117 条 市会において審査、調査その他必要により議員を派遣する場合は、市会

の議決でこれを決定する。ただし、緊急を要する場合又は閉会中にあっては、議長

において議員の派遣を決定することができる。

2 前項の規定により、議員の派遣を決定するに当たっては、派遣の目的、場所、期

間その他必要な事項を明らかにしなければならない

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国会には、地方議会が 100 条調査に係る権限を付与されることの契機となった調

査権があります。

この調査権を「国政調査権」といい、国会の衆参両議院は、憲法第 62 条及び国会

法第 104 条の規定によってこの権限が与えられています。

国政調査権は、衆参両議院が、法律の制定や予算の議決など、その憲法上の権限は

もとより、広く国政、特に行政に対する監督・統制の権限を実効的に行使するために

必要な調査を行う権限です。

国政調査権の性質については、学説上対立がありますが、通説としては、代表民主

制のもとにおいて、国民に代わって国政に関与する代表者が、国会が保持する諸権能

を行使するために、国政に関する十分な知識、正確な認識を獲得する必要があること

から、議院に対して補充的に与えられた事実の調査権能であるとするものです。

議院が国会の一院として保持する権能は、立法的権能を中心に、きわめて広範な事

項に及び、したがって、調査権の範囲に一定の限界があるといっても、実際には、純

粋に私的な事項を除き、国政全体が調査の対象となります。

しかし、権力分立と人権の原理からの制約として、地方議会と同様の調査権の限界

があります。

○日本国憲法

第 62 条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及

び証言並びに記録の提出を要求することができる。

○国会法

第 104 条 各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その

他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければ

ならない。

2 内閣又は官公署が前項の求めに応じないときは、その理由を疎明しなければな

らない。その理由をその議院又は委員会において受諾し得る場合には、内閣又は

官公署は、その報告又は記録の提出をする必要がない。

3 前項の理由を受諾することができない場合は、その議院又は委員会は、更にそ

の報告又は記録の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を

要求することができる。その声明があつた場合は、内閣又は官公署は、その報告

又は記録の提出をする必要がない。

4 前項の要求後 10 日以内に、内閣がその声明を出さないときは、内閣又は官公

署は、先に求められた報告又は記録の提出をしなければならない。

2 国会の調査権について

第Ⅲ章 議会の調査権

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委員会には、常任委員会、議会運営委員会、特別委員会の3種類があります。

(1)常任委員会による調査

常任委員会について「事務に関する調査を行い」(法第 109 条第2項)とは、委

員会固有の機能として調査活動ができることであって、常任委員会は、自らの意思に

よってその部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行うことがで

きます。

常任委員会の行う調査は、条例案その他の議案の審査のための調査であり、所掌事

務の調査については議会の議決を要しません。

この調査に当たっては、執行機関に書類など必要な資料の提出を求めることはでき

ますが、100 条調査のように関係人の出頭及び証言並びに同条に規定する記録の提

出の要求などをすることはできません。

また、常任委員会の委員が単独で個人として調査権を行使することもできません。

(2)議会運営委員会による調査

議会運営委員会による調査事項については、常任委員会や特別委員会と違い、法律

で具体的に定められています。

具体的には、法第 109 条第3項において、「議会の運営に関する事項」、「議会の

会議規則、委員会に関する条例等に関する事項」、「議長の諮問に関する事項」に限ら

れています。

○地方自治法

第 109 条

2 常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を

行い、議案、請願等を審査する。

第Ⅳ章 委員会の調査権

1 地方議会の委員会の調査権

○行政実例(昭和 26 年 10 月 10 日)

問1 常任委員会の所管事務の調査については議会の議決を必要とせず、審査につ

いては議会の議決を必要とすると解してよいか。 答1 前段、お見込みのとおり。後段、議案、陳情等が委員会の審査に付議されれ

ば当然に審査しうる。

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(3)特別委員会による調査

特別委員会の調査に係る法の規定はありません。

特別委員会は議会の議決による特定の付議事件に限り審査する権限が与えられて

いるため、常任委員会が有する事務調査権をもつものではありません。ただし、付議

事件に関する限りで調査権は有します。

(4)議会の調査権との違い

委員会の調査権と議会の調査権は、次のような違いがあります。

事項 委員会の調査権 議会の調査権

調査の対象 当該普通地方公共団体の事務 同左

主な調査方法 執行機関に対する論議及び委

員会内での委員同士の論議

第三者に対する証言及び記

録の提出を請求

罰則による強制力

の有無 無 有

実地調査の可否 可 可

実地検査の可否 否 否

○地方自治法

第 109 条

3 議会運営委員会は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、請願等を審査

する。 (1) 議会の運営に関する事項 (2) 議会の会議規則、委員会に関する条例等に関する事項 (3) 議長の諮問に関する事項

○地方自治法

第 109 条

4 特別委員会は、議会の議決により付議された事件を審査する。

第Ⅳ章 委員会の調査権

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「1 地方議会の委員会の調査権」で御紹介したとおり、地方議会の常任委員会は、

「その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査」とされていることか

ら、調査権の及ぶ範囲は、当該常任委員会の部門に属する事項に限定されているとい

えます。運営委員会や特別委員会の調査権の範囲についても、その所管事項に限定さ

れています。

これに対し、国会の委員会においては、国会法の規定により、衆参両議院の調査権

と同様の権限が認められています。

委員会における国政調査は、議案の審査及び調査事件の調査のため、それぞれの所

管に応じ国政の全般を対象として行われます。調査は、委員の要求又は理事会におけ

る協議を端緒に、その方法としては、政府から説明を聴取し、必要に応じて証人又は

参考人から証言又は意見を聴き、質疑を行い、内閣、官公署その他に対し報告又は記

録の提出を求め、あるいは、委員を派遣する等によって行われています。委員会の決

定を要する方法により調査を行うには、委員会の多数会派の賛同を得ることが不可欠

となるため、少数会派の要望をどのように容れていくかが課題となっています。

(参議院ホームページ「委員会の活動(2)国政調査」より。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/katudo02.html)

○国会法

第 104 条 各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その

他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければ

ならない。

2 内閣又は官公署が前項の求めに応じないときは、その理由を疎明しなければな

らない。その理由をその議院又は委員会において受諾し得る場合には、内閣又は

官公署は、その報告又は記録の提出をする必要がない。

3 前項の理由を受諾することができない場合は、その議院又は委員会は、更にそ

の報告又は記録の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を

要求することができる。その声明があつた場合は、内閣又は官公署は、その報告

又は記録の提出をする必要がない。

4 前項の要求後 10 日以内に、内閣がその声明を出さないときは、内閣又は官公

署は、先に求められた報告又は記録の提出をしなければならない。

2 国会の委員会の調査権

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37 資料:総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料:総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)
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39 資料:総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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41 資料:総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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43 資料:総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料:総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『新版 逐条地方自治法(第7次改訂版)』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明、園部逸夫、金子宏、塩野宏、磯部力、小早川

光郎 著(第一法規)

『要説 地方自治法(第8次改訂版)』松本英昭 著(ぎょうせい)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『最新 詳解議員提要』中島正郎 著(ぎょうせい)

『100 条調査ハンドブック 地方議会の調査特別委員会は何ができるか』廣瀬和彦

著(ぎょうせい)

『議会人が知っておきたい危機管理術』大塚康男 著(ぎょうせい)

『図解 地方議会改革-実践のポイント 100-』江藤俊昭 著(学陽書房)

『(最新地方自治法講座⑤)議会』井上源三 編(ぎょうせい)

『コンメンタール民事訴訟法Ⅳ』秋山幹男、伊藤眞、加藤新太郎、高田裕成、福田剛

久、山本和彦 著(日本評論社)

『憲法(第5版)』芦部信喜 著、高橋和之 補訂(岩波書店)

『憲法Ⅱ 第5版』野中俊彦、中村睦男、高橋和之、高見勝利 著(有斐閣)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改定版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

「法制レポート」は、「市会ジャーナル」の特別編として、議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として、議会局政策調査課(法制等

担当)が編集・発行しているものです。