【座長の言葉】動脈硬化診療にabiを活かす - arterial...
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多職種の取り組みを学ぶ 昨今、日常臨床においてチーム医療の重要性がますます高まっているなか、動脈硬化診療においても、循環器内科医と血管外科医との連携は必須であり、また看護師や検査技師など各専門分野からの視点や協力が欠かせなくなっている。そのようななか、「コメディカルとして、脈管領域の診療に従事するに必要な、専門知識・技術を持った者を専門家として認定する」という趣旨のもと、日本血管外科学会、日本脈管学会、日本静脈学会の3学会から構成される「血管診療技師認定機構」が発足した。現在、日本動脈硬化学会が加わり4学会から構成され、血管診療技師(clinical vascular technologist;CVT)取得者の数は891名、全国の都道府県に1名以上のCVTが存在する規模に成長した。 本セッションでは、動脈硬化診療にABI(ankle brachial index:足関節血圧を上腕血圧で除した血圧比でABPI、APIとも略される。通常は1.0以上、1.4未満)をいかに活かすかという内容について、検査技師、看護師、脈管の専門医の立場から、その計測法、ピットフォール、適応、意義などについて解説をいただく。このような場では、とかく同じ専門分野の先生の取り組みを聞くことが多いが、業種を超えて各専門分野の先生方がどのようなスタンスでどう考え、工夫をされているか、その取り組みを聞くことは、われわれ循環器内科医にとっても重要な意味があると考えている。
ABIに注目しその意義を検討 食習慣、生活習慣の変化に伴い、動脈硬化性疾患の患者数の増加が指摘されて久しい。予防から診療、再発対策など多くの医療現場では取り組みがなされているが、脳血管疾患、冠動脈疾患予防につながる早期発見・早期治療の原則に変わりはない。 動脈硬化の早期発見には、血管内皮機能、脈波伝搬速度(pulse wave velocity;PWV)などの指標があるが、今回は、末梢動脈閉塞症(peripheral arterial occlusive disease;PAOD、以後PADと略)の早期発見に寄与するABIに注目してその意義について検討する。PADのなか
でも閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans;ASO)が重要で、PAD/ASOのスクリーニングには、心臓内科の外来で心疾患スクリーニングに心電図を実施するのと同様に、ABIの計測が推奨されている。またこれまでスクリーニングの対象者は高齢者とされていたが、最近になって
「下肢の症候を有する例」「無症候であっても糖尿病や喫煙者は50歳以上」「65歳以上の全例」と対象が広げられた。ASOでは全身の動脈硬化が進行し、脳血管障害、虚血性心疾患、腎虚血など全身の動脈硬化性疾患が合併している頻度が高い。動脈硬化の診療には生活習慣病(糖尿病・喫煙・脂質異常症・高血圧など)の管理が必須であり、進行すればそれぞれの臓器への運動療法、薬物療法、再灌流療法などの対策が必要となる。 ABIはPAD/ASO発見および経過観察の際に指標として用いられるが、その計測法に注意が必要である。わが国では、現在、formなどのような簡便な計測機器が普及しているが、その用い方のピットフォール、また通常のドプラ血流計と血圧計を用いる計測法の熟知、そしてABI値の意義、すなわちABI低値や高値の意味、変動値の評価、治療後の評価など、注意すべき課題もある。さらにABIが低値となると全身の動脈硬化性疾患の増悪も危惧される。足趾血圧が必要な場合もあり、経皮酸素分圧や皮膚灌流圧など他の指標とどのように使い分けるかも周知しておく必要があるだろう。ちなみに、ABIはドプラで測るのが1つの基本でありエビデンスも出ている一方、オシロメトリック法は世界的にみて十分なエビデンスはない。もちろん国内の器械の多くは信憑性が高く日常臨床においては用いても問題はないと思うが、その目的を理解したうえで使わなければならない。
CVTの今後の活躍に期待 baPWV(brachial-ankle pulse wave velocity)の数値も今後さまざまなデータが整理され、2016年以降多くの場でbaPWVの価値が提示されるだろう。また動脈硬化性疾患では前述したように早期発見も大事だが、そこに至らないbaPWV高値、動脈硬化が認められる患者に対し、どう生活習慣の改善などを指導していくのか。こうした社会貢献での役割も求められてくる。CVTの今後の活躍に期待したい。
松尾 汎(医療法人松尾クリニック理事長)
【座長の言葉】動脈硬化診療にABIを活かす
第15回 臨床血圧脈波研究会 CVTセッション
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