高齢者・認知症ケアチーム · 2018-11-29 ·...

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特集1 高齢者・認知症ケアチームの発足 当院の高齢者・認知症ケアチームは,特定医 療チームの一つとして位置づけられている。組 織図上,院長直下にあり,「特定された医療品 質の改善を目的に,多職種協働による組織横断 的な活動を行うチーム」と規定されている。災 害派遣のDMATや脳死判定チーム,ICT,NST, 褥瘡対策チームなどもこれに該当する。2016年 の診療報酬改定で認知症ケア加算が新設された のを機に,加算1施設基準の専任看護師となる 筆者がチームを立ち上げることとなった(表1)。 当院は国際的医療機能評価であるJCI(Joint Commission International)の認証を受けてお り,医療の質と患者安全を継続的に改善する ミッションを持っている。世界基準での業務改 善や管理体制の視座に立つ時,まず,当院での 認知症患者の定義と認知症ケアのポリシーを明 確にすることが求められる。そこで作成したの が,認知症患者管理規程(表2)である。 続いて,院内で特定医療チーム設置の承認を 得るための準備を開始した。チーム名を定め, 活動目的,活動内容を示したチーム運用手順案 を作成してメンバーを募った。この時,筆者に は2つのこだわりがあった。一つは,チーム名 に「高齢者」を入れることである。老人看護専 門看護師として認知症の側面だけを見るのでは なく,高齢者のからだ・こころ・かかわり・暮 らしなどを包括的にとらえ,考え,アクション を起こすことのできるチームにしたいという思 いがあった。もう一つは,認知症ケア加算1を 算定するためのチームではないと明言すること である。算定対象患者が認知症高齢者の日常生 活自立度判定基準のランクⅢ以上となっている のに対し,当院では認知症患者の定義とチーム の介入対象患者をランクⅡ以上とし,対象範囲 を拡大させた。これは,算定有無を問わず, チームの支援を必要とする人へ積極的にかか わっていきたいと考えたからである。 チーム名が「高齢者・認知症ケアチーム」に 決まり,チームのミッションを表3のように定 めた。これは,病院長(現理事長)から受けた, 「問題も答えも現場にある。とにかく現場に足 を運んでほしい」「現場では問題と感じていな 社会医療法人財団慈泉会  相澤病院 高齢者・認知症ケアチーム リーダー 看護部 看護部長室 老人看護専門看護師 髙橋香代子 たかはしかよこ1988年国立音楽大学教育音楽学科卒 業後,企業で人事採用や人材育成業務に従事。2003年千 葉大学看護学部卒業後,東京医科歯科大学医学部附属病院入職。その後,医 療法人社団慶成会青梅慶友病院に勤務しながら,2007年千葉大学大学院 看護学研究科博士前期課程修了。ナーシングホーム気の里訪問看護ステー ションなどを経て,2015年社会医療法人財団慈泉会相澤病院に入職。同 年,老人看護専門看護師の資格を取得。現在,多職種からなる高齢者・認知 症ケアチームのリーダーと看護採用担当に従事しながら,地域の公民館等で 一般市民向けに音楽と看護を合わせた健康講座を行っている。 高齢者・認知症ケアチーム 経営と質の両立に向けたチャレンジ 診療科:37科 職員数:1,398人(うち看護職員507人) 病床数:460床 入院患者数:年間124,829人,一日平均320人 外来患者数:年間233,339人,一日平均783.0人(透析患者含む) 病床稼働率:88.8% 平均在院日数:10.2日 在宅復帰率:92.1% 入院基本料:一般病棟7対1 勤務体制:2交代 急性期看護補助体制加算:25対1,夜間100対1 病院機能:地域医療支援病院,基幹型臨床研修病院,救命救急 センター,地域がん診療連携拠点病院 救命救急入院料1・2,特定集中治療室管理料3,ハイケア ユニット入院医療管理料1,脳卒中ケアユニット入院医療管 理料,回復期リハビリテーション病棟入院料1 JCI認証取得病院,病院機能評価認定病院 専門看護師:3分野3人(慢性疾患看護専門看護師,精神看護 専門看護師,老人看護専門看護師) 認定看護師:9分野12人(がん化学療法看護認定看護師,がん 放射線療法看護認定看護師,緩和ケア認定看護師3人,皮膚・ 排泄ケア認定看護師2人,感染管理認定看護師,脳卒中リハ ビリテーション看護認定看護師,摂食・嚥下障害看護認定看 護師,糖尿病看護認定看護師,救急看護認定看護師2人) 病院 概要 46 看護部長通信 Volume.16 Number.4

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Page 1: 高齢者・認知症ケアチーム · 2018-11-29 · 害派遣のdmatや脳死判定チーム,ict,nst, 褥瘡対策チームなどもこれに該当する。2016年 の診療報酬改定で認知症ケア加算が新設された

改定から半年!

自院にマッチしたデータ収集、実績づくりによる経営ポイント

特集1

高齢者・認知症ケアチームの発足 当院の高齢者・認知症ケアチームは,特定医

療チームの一つとして位置づけられている。組

織図上,院長直下にあり,「特定された医療品

質の改善を目的に,多職種協働による組織横断

的な活動を行うチーム」と規定されている。災

害派遣のDMATや脳死判定チーム,ICT,NST,

褥瘡対策チームなどもこれに該当する。2016年

の診療報酬改定で認知症ケア加算が新設された

のを機に,加算1施設基準の専任看護師となる

筆者がチームを立ち上げることとなった(表1)。

 当院は国際的医療機能評価であるJCI(Joint

Commission International)の認証を受けてお

り,医療の質と患者安全を継続的に改善する

ミッションを持っている。世界基準での業務改

善や管理体制の視座に立つ時,まず,当院での

認知症患者の定義と認知症ケアのポリシーを明

確にすることが求められる。そこで作成したの

が,認知症患者管理規程(表2)である。

 続いて,院内で特定医療チーム設置の承認を

得るための準備を開始した。チーム名を定め,

活動目的,活動内容を示したチーム運用手順案

を作成してメンバーを募った。この時,筆者に

は2つのこだわりがあった。一つは,チーム名

に「高齢者」を入れることである。老人看護専

門看護師として認知症の側面だけを見るのでは

なく,高齢者のからだ・こころ・かかわり・暮

らしなどを包括的にとらえ,考え,アクション

を起こすことのできるチームにしたいという思

いがあった。もう一つは,認知症ケア加算1を

算定するためのチームではないと明言すること

である。算定対象患者が認知症高齢者の日常生

活自立度判定基準のランクⅢ以上となっている

のに対し,当院では認知症患者の定義とチーム

の介入対象患者をランクⅡ以上とし,対象範囲

を拡大させた。これは,算定有無を問わず,

チームの支援を必要とする人へ積極的にかか

わっていきたいと考えたからである。

 チーム名が「高齢者・認知症ケアチーム」に

決まり,チームのミッションを表3のように定

めた。これは,病院長(現理事長)から受けた,

「問題も答えも現場にある。とにかく現場に足

を運んでほしい」「現場では問題と感じていな

社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 高齢者・認知症ケアチーム リーダー 看護部 看護部長室 老人看護専門看護師 髙橋香代子たかはしかよこ●1988年国立音楽大学教育音楽学科卒業後,企業で人事採用や人材育成業務に従事。2003年千

葉大学看護学部卒業後,東京医科歯科大学医学部附属病院入職。その後,医療法人社団慶成会青梅慶友病院に勤務しながら,2007年千葉大学大学院看護学研究科博士前期課程修了。ナーシングホーム気の里訪問看護ステーションなどを経て,2015年社会医療法人財団慈泉会相澤病院に入職。同年,老人看護専門看護師の資格を取得。現在,多職種からなる高齢者・認知症ケアチームのリーダーと看護採用担当に従事しながら,地域の公民館等で一般市民向けに音楽と看護を合わせた健康講座を行っている。

高齢者・認知症ケアチーム 経営と質の両立に向けたチャレンジ

診療科:37科職員数:1,398人(うち看護職員507人)病床数:460床入院患者数:年間124,829人,一日平均320人外来患者数:年間233,339人,一日平均783.0人(透析患者含む)病床稼働率:88.8%平均在院日数:10.2日在宅復帰率:92.1%入院基本料:一般病棟7対1勤務体制:2交代急性期看護補助体制加算:25対1,夜間100対1

病院機能:地域医療支援病院,基幹型臨床研修病院,救命救急センター,地域がん診療連携拠点病院救命救急入院料1・2,特定集中治療室管理料3,ハイケアユニット入院医療管理料1,脳卒中ケアユニット入院医療管理料,回復期リハビリテーション病棟入院料1JCI認証取得病院,病院機能評価認定病院専門看護師:3分野3人(慢性疾患看護専門看護師,精神看護専門看護師,老人看護専門看護師)認定看護師:9分野12人(がん化学療法看護認定看護師,がん放射線療法看護認定看護師,緩和ケア認定看護師3人,皮膚・排泄ケア認定看護師2人,感染管理認定看護師,脳卒中リハビリテーション看護認定看護師,摂食・嚥下障害看護認定看護師,糖尿病看護認定看護師,救急看護認定看護師2人)

病院概要

46 看護部長通信 V o l um e . 1 6 N umb e r . 4

Page 2: 高齢者・認知症ケアチーム · 2018-11-29 · 害派遣のdmatや脳死判定チーム,ict,nst, 褥瘡対策チームなどもこれに該当する。2016年 の診療報酬改定で認知症ケア加算が新設された

くても,チームには問題が見えるはず。それを

教えてあげてほしい」「チームが支援する対象

は患者よりも,まずは現場の職員」という言葉

に応えるものだった。そして,高齢者・認知症

ケアチーム運用手順にある「多職種による多角

的な視点」を持つため,専任届出者である医師,

社会福祉士以外のメンバーの選出を,各職種の

トップへ依頼した。2018年度のメンバー構成

は表4のとおりである。

 認知症患者管理規程と高齢者・認知症ケア

チーム運用手順は,病院長や看護部長,看護副

部長と目指す方向や思いのすり合わせを重ね,

各種会議で審議を繰り返し,2016年12月に承

認された。筆者は病院長から正式にチームリー

ダーとして任命され,リーダーが任命したメン

バーから成るチームの設置が承認された。晴れ

て高齢者・認知症ケアチームが誕生したこの日

の安堵と喜びは,格別だったのを覚えている。

 そして,2017年1月からチーム活動を開始

した。チーム発足を周知するため病棟へ出向

き,説明会を開催した。また,ポスターを作成

して院内イントラネットに掲示し,病棟や外来,

患者相談室にも声をかけながら手渡しで配付し

た。そのほか,チーム専用PHSを設け,平日9~

17時はチームにつながる体制を整え,気軽に

相談や介入依頼をしてほしいことを伝えた。

介入件数の確保 実際に活動を開始してみると,困った事態が

生じた。それは,現場からの介入依頼がゼロに

近かったことである。チーム専用PHSは鳴ら

ず,ラウンドして状況を尋ねても「困っていま

せん」と言われる。認知症ケア加算のための

チームではないと豪語したものの,算定件数と

いう目に見える結果がなければ,チームの存在

意義が問われてしまう。この問題を打開するた

め,待ちの姿勢から攻めの姿勢に舵を切った。

 まずは,当院戦略企画室の協力で,重症度,

医療・看護必要度B項目の「診療・療養上の指

示が通じる」が「いいえ」,「危険行動」が「あ

【規程の目的】必要な急性期医療を受けられ,安全,安寧な入院生活を送ることができる

【認知症患者の定義】認知症の診断・治療あり,または,認知症高齢者自立度Ⅱ以上

【10の方針】①全人的医療    ②チーム医療③患者・家族への情報提供と意思決定支援④患者安全  ⑤認知症の症状とアセスメント⑥尊厳と身体拘束  ⑦転院・退院支援⑧薬物療法     ⑨認知症患者のケア⑩職員の教育

表2●認知症患者管理規程

【ミッション】わたしたちは,高齢患者や認知症患者が入院生活を送る現場において,多職種による多角的な視点から,高齢者・認知症ケアの現状をとらえ,問題を明確にし,職員への助言や指導を行う。

表3●高齢者・認知症ケアチーム運用手順

リーダー:老人看護専門看護師(1人)サブリーダー:作業療法士(1人),      脳神経内科医(1人)マネジャー:管理栄養士(1人)メンバー:作業療法士(2人),薬剤師(2人),     管理栄養士(1人),介護福祉士(3人),    社会福祉士(1人),病棟看護師(6人)

表4●2018年度のチームメンバー

2016年4月

7月

12月

2017年1月

認知症ケア加算1 届出方針決まる

当院の認知症ケアのポリシーを検討開始

特定医療チーム設置承認を得るための準備開始

チームメンバーの選出開始

「認知症患者管理規程」承認「高齢者・認知症ケアチーム運用手順」承認

チーム設置の承認チームリーダー任命チームメンバー決定

チーム専用電話の獲得

チーム活動開始

表1●高齢者・認知症ケアチーム発足までの経緯

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Page 3: 高齢者・認知症ケアチーム · 2018-11-29 · 害派遣のdmatや脳死判定チーム,ict,nst, 褥瘡対策チームなどもこれに該当する。2016年 の診療報酬改定で認知症ケア加算が新設された

る」に該当する患者を抽出するソフトウエアが

出来上がった。カルテから探し出すのに比べ,

効率的に抽出することが可能となった。しか

し,患者のもとへ出向く頃には全身状態が快方

に近づき,不穏の誘因となる身体的苦痛や医療

処置が減り,精神状態は穏やかになりつつあっ

た。病棟で重症度,医療・看護必要度が確定入

力されてから,抽出用ソフトウエアにリストアッ

プされてチームが患者のところへ出向くまでには

時間差が生じるため,時すでに遅しという状況

だった。

 どうしたら介入が必要な患者を効率よく把握

してタイムリーに介入できるのか,悩む日々が

続いた。入院間もない患者のカルテを専任社会

福祉士と一つひとつ調べ,介入患者を抽出する

方法も試したが,時間を要し,通常業務に支障

を来すため取りやめた。

 ある日,認知症ケア加算の算定件数が少ない

ことが,経営的に問題となっていることを知っ

た。筆者は保険診療管理会議での説明を求めら

れた。認知症ケア加算のためにできたチームで

はないということは理解されたものの,介入患

者が少ないということは,チームの支援が必要

な患者が支援を受けられず困っていることの表

れではないかという意見に返す言葉がなかった。

 しかし,専任看護師1人の活動では算定要件

を満たせず,専任医師と専任社会福祉士の3人

と病棟看護師の4者がそろってカンファレンス

をする必要があることを説明し,その時間の確

保が課題であると発言した。同席した専任医師

は,この4者がそろうタイミングと患者にとっ

て最適な介入タイミングが合致しなければ,期

待される効果は得られないだろうと発言した。

限られた活動時間の中で,職員にとっても患者

にとっても,最善のタイミングで効果的に介入

することの困難さが共通認識された。だからと

言って,あきらめたり投げ出したりすることは

できない。できる限りの工夫と努力で,2017

年度の「新規介入開始患者数50人/月」を目標

に取り組みたいとして,会議の承認が得られた。

活動目標値の設定と結果 特定医療チームは年間計画を立て,効果判定

のための測定指標を打ち出し,病院長の承認を

得て本格的活動に入る。評価結果はチームメン

バーの賞与加算に反映される仕組みである。

 2017年度の測定指標となる目標は,先の会

議で承認された「新規介入開始患者数50人/月」

となった。チームメンバーで共に悩み,知恵を

出し合い,メンバーの所属部門にも助けられ,

結果として2017年度の新規介入患者数は平均

53.3人/月となり,目標を達成することができ

た。目標達成に至った取り組みを次に述べる。

看看連携作戦 認知症患者は身体的苦痛をうまく訴えられ

ず,精神症状として表現することが少なくな

い。身体的苦痛と突然の環境変化によって混乱

している患者は,入院後間もない人に多い。認

知症ケア加算は毎日算定可能で,入院15日目

から減算される。そこで,患者側のニーズも高

く,かつ保険点数が高い日を増やすために,入

院直後に対象患者を決めて早期に介入すること

が効果的・効率的と考えた。

 本来であれば,入院時のスクリーニングから

チームに介入依頼するフローを作成したかっ

た。しかし,当院は平均在院日数10日,平均

新規入院患者34人/日,緊急入院が約6割を占

め,入院患者の約7割が70歳以上である。そ

のため,入院時にはすでに多数のスクリーニン

グ項目があり,新規に項目を追加すれば看護師

の負担増が見込まれる。しかしながら,簡略化

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を優先させた選択項目にすると,多数の患者が

チーム介入患者として抽出される恐れがあり,

本当にチームの支援が必要な患者が埋もれてし

まう可能性があることが懸念された。

 認知症であっても,認知症患者管理規程に定

めた「必要な急性期医療を受けられ,安全,安

寧な入院生活を送ることができる」を病棟で提

供できていれば,あえてチームが介入する必要

はない。やはり,患者個々の状況を見て判断す

ることが最善ではないかと考えた。

■看護部長の協力 筆者は看護部長室に在籍し,看護部長の隣が

自席である。毎朝,看護部長が看護管理当直日

誌を確認する際,夜間不穏だった患者や転倒し

た患者に関する記載があると,情報を提供して

くれた。すぐにカルテで状況を確認し,病棟に

出向くことができた。「看護部長からの介入依

頼です」と病棟管理者に声をかけ,原因分析や

対策を一緒に検討することができた。

■ベッドコントロール看護師との連携

 筆者の所属する看護部長室にはベッドコント

ロール担当看護師がおり,救急救命センター

(以下,ER)での患者の状態や生活背景の概況

を把握している。そこで,既往に認知症があっ

たり,ERで混乱を起こしていたり,介護者が

認知症症状に苦慮しているなどの気になる患者

について,情報提供してもらえるよう連携を

図った。これにより,情報が入るとERに出向

き,患者や付き添い者に会い,ER看護師から

患者状態や治療方針を聴取してケア方法を検討

することが可能となった。また,筆者は患者よ

りも先に入院予定病棟に出向き,環境調整やか

かわり方について助言・提案することができる

ようになった。

■退院支援看護師・訪問看護師との連携 認知症ケア加算1では,看護計画だけでな

く,退院支援計画にも関与することとなってい

る。退院支援看護師は,地域のケアマネジャー

や訪問看護師から患者の生活背景などの情報を

いち早く入手できる。また,入院早期から患

者・家族と面談をして,退院後の暮らしに関す

る意向を直接聴取している。そのため,退院支

援看護師と連携を図ることで,入院早期から退

院後を見据えた介入が図れるようになった。

 さらに,筆者の前職は退院支援看護師であ

り,すでに顔の見える関係ができている地域の

訪問看護師やケアマネジャーなどから,認知症

やせん妄リスクの高い利用者の入院時に,直接

情報を得ることも可能になった。

チームの知名度向上作戦 現場の看護師から介入依頼をもらえるよう,

チームの知名度を上げ,身近な存在と感じても

らう方策を立てた。

■広報紙の発行 チーム広報紙「ひなたぼっこ」を発行し,チー

ム活動やメンバー紹介,チームの多職種は認知

症ケアでどのような貢献をしているのか,認知

症に関連する事故情報や注意喚起などを掲載し

た。当初は院内イントラネットに掲示するだけ

であったが,多くの人に見てもらえるよう,印

刷して全病棟に声をかけながら手渡しした。こ

れにより,広報紙は病棟の連絡ノートに挟まれ

たり,休憩室に掲示されたりするようになっ

た。また,いつでもバックナンバーが見られる

よう,イントラネットのトップページにチーム

のタグを新設した。

 年4回発行としたが,第4号から内容を大き

く見直した。それまでは,チーム活動の紹介に

主眼を置いていたが,チームではなく現場の頑

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張りを紹介し,評価することが大事ではないか

と発想の転換を図った。これは,掲載文の推敲

に悩んでいた時,チームのサブリーダーである

作業療法士から「語尾の表現を変えてみたら?」

と助言があり,上から目線になっている自分に

気づかされたからである。それまでは,「チー

ムはこんな成果を上げました」「患者認証をしっ

かり行いましょう」といった,受け止め方に

よっては自慢や指示になりかねない内容だった。

 そこで第4号では,介護福祉士が運営する院

内デイサービスで97%の患者の身体拘束を解

除できたことや,チーム主催研修に多数の参加

があったことへの感謝の思いを記事にした。第

5号では,病棟看護師の寄稿によるせん妄予防

への取り組みを紹介した(資料)。「ひなたぼっ

こ」が現場目線の身近な広報紙になることで,

チームが現場に近い存在になることを期待して

いる。

■認知症関連研修窓口 当院総務部から,病院宛てに届く高齢者や認

知症に関連する研修の受付窓口になってほしい

との依頼を受けた。事務作業が増えることを懸

念したが,どこでどのような研修が開催され,

誰が受講しているかを把握することは,チーム

活動に生かされると考え承諾した。院内イント

ラネットに開催通知を掲示する都度,発信元や

問い合わせ先としてチーム名が出るため,宣伝

効果も期待された。後日,当院広報担当者から,

周知するには目や耳に入る機会をとにかく多く

設けることが大事だと言われ,労力は無駄では

ないと考えている。

■看護部の会議・委員会の活用 看護部で行われるさまざまな会議,委員会な

どで,チームを紹介する時間をもらった。その

際は,「チームのため,算定のために患者を紹

介してください」ではなく,「身体疾患の治療

資料●チーム広報誌第4号 第5号

50 看護部長通信 V o l um e . 1 6 N umb e r . 4

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