憂鬱データの公開と開発者の ③ 特集 オープンデー …...31日までfacebook...

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Page 1: 憂鬱データの公開と開発者の ③ 特集 オープンデー …...31日までFacebook た、同期間に全国1提案が寄せられました。ま案を呼びかけたところ、22ページを通じてアイディア提

54 調査季報 vol.174・2014.3 ■

特集

《5》 

海外・他都市にみるオープンデータの取組

③ 

オープンデータにおける自治体間連携の必要性

自治体の未来を切り拓くオープンデータ

ばならなくなります。同じア

プリなら、新しいデータセッ

トを流し込んだだけで、違う

自治体でもアプリが完成する

のが理想ですが、現実は程遠

い状況です。

首都圏における災害時の

リスク

 

これが、災害時など緊急時

には致命的になります。東日

本大震災の際、大手ポータル

サイトは、自治体の発表する

被害状況などを人海戦術によ

る手入力で再入力していたと

いう話を伺います。そして、

横浜市や当市のある首都圏で

はその重要性が高まります。

 

当該地域では、1日の生活

がひとつの自治体の領域で完

結しない人口が多く存在しま

す。通勤や通学で緊急事態に

遭遇したとき、ポータルサイ

トや自治体のホームページ等

から必要な情報を入手しよう

としますが、円滑にできない

と被害が拡大する恐れがあり

ます。例えば、避難ルートや

避難場所を探すために防災

マップにアクセスしますが、

自治体により形式はバラバラ

です。地図表示で「青」は安

全、「赤」は危険とのイメー

ジがありますが、低地にある

自治体では、浸水が想定され

ることから「青」が危険なエ

リアである可能性もありま

す。

九都県市首脳会議による

公開ルールの標準化

 

そこで、近隣自治体間での

データ公開ルールを定めるこ

とが重要になります。南関東

地域には「九都県市首脳会

議」(埼玉県・千葉県・東京都・

神奈川県・横浜市・川崎市・

千葉市・さいたま市・相模原

市)という共同して広域的課

題に取り組む会議体があり、

平成25年5月15日の第63回会

議において、当市より提案し

た「ビッグデータ・オープン

データのまちづくりへの活用

について」を可決・推進する

ことになりました。ここでの

活動では、「救急」や「防災」

等、緊急性の高い分野におい

て、自治体間でのデータ公開

ルールの標準化を協議してい

ます。また、国のオープンデー

タ標準化の取組とも連携する

方針です。

 

総務省系の「オープンデー

タ流通推進コンソーシアム」

(平成24年7月~)では、技

術部会にてAPIや共通語彙

について検討しているようで

す。また、経済産業省も共通

語彙基盤の検討を進めてお

り、同省系の独立行政法人情

報処理推進機構(IPA)で

は、「語彙データベース」と

「データ設計・作成支援ツー

ル」の要件整理を進めている

ようです(平成25年11月~)。

横浜市は、同コンソーシアム

に参加しており、千葉市はI

PAの検討に協力しているこ

とから、連携を図りつつ、九

都県市において適切な標準を

模索したいと考えておりま

す。

 

首都圏には、日本の全人口

の27%(約3,510万人)

が居住しており、この地域に

おいてデータ公開ルールの標

準化をすることは、多くの

執筆

データの公開と開発者の

憂鬱

 「ハッカソン疲れ」

 

最近、時折耳にする言葉で

す。

 

毎週のように全国各地で

オープンデータのイベントが

開催されています。そして、

会場に行くと他の会場でも見

たことがある面々が座ってい

ます。アイディアソンが賑

わっても、ハッカソンの参加

開発者が少ないことは、鯖江

市出身の有名な開発者の名を

取って「福野さん不足問題」

と言われることもあります。

 

一方、データを提供する側

(自治体)にも開発を阻害す

る要因がいくつもあります。

①データカタログの不在

(様々なページに散らばって

いる)、②利用条件表示(ク

リエイティブコモンズ等)の

非掲載、③機械判読に適さな

いデータ形式、そして④自治

体間での語句の不統一です。

 

これらの理由により、場所

を変えると、開発者は一から

プログラムを作り直さなけれ

三木 浩平

千葉市総務局次長

Page 2: 憂鬱データの公開と開発者の ③ 特集 オープンデー …...31日までFacebook た、同期間に全国1提案が寄せられました。ま案を呼びかけたところ、22ページを通じてアイディア提

方々にそのメリットが享受さ

れるほか、全国での標準化に

つながるものと期待していま

す。

4市協議会を起点とした

サービス実現

 

当市が他の自治体と連携し

て取り組むもうひとつの施策

に「ビッグデータ・オープン

データ活用推進協議会」(4

市協議会)があります。協議

会には、武雄市、奈良市、福

岡市、千葉市が参加するほ

か、東京大学須藤修研究室、

日本IBM、日本マイクロソ

フトが特別会員として活動を

バックアップします。

 

協議会の活動は、アイディ

ア募集とアイディアソンが中

心となりますが、大きな特徴

は、①複数の自治体に跨りア

イディア募集を呼びかける

(イベントを行う)、②複数の

自治体のデータを掛け合わせ

るなど活用範囲が広がる、③

提案されたアイディアが実際

の行政サービスとして実現す

る可能性がある等の点です。

特に③は、参加する4市の首

長全員が、自ら審査員として

参加し、迅速に意思決定をす

ることにより実現します。

 

アイディア募集について

は、平成25年6月1日~8月

31日までFacebook

ページを通じてアイディア提

案を呼びかけたところ、22

1提案が寄せられました。ま

た、同期間に全国4都市にお

いて大学や市役所等を会場と

したアイディアソンを開催

し、延べ208人が参加しま

した。最終選考は11月10日に

幕張のホテルにて開催し、「子

ども感染症進行マップ」、「自

転車走りやすさマップ」、「埋

蔵金アプリ」等が受賞しまし

た。平成26年度は実際のサー

ビスインに向けたアイディア

のブラッシュアップ等や関係

当局との調整を進める予定で

す。

 

アイディアソンやハッカソ

ンに参加する方々は、「社会

をより良くしたい」、「コミュ

ニティの役に立ちたい」とい

図1 ビッグデータ・オープンデータの活用アイデアコンテストの表彰式の様子

図2 ビッグデータ・オープンデータの活用アイデアコンテストの   最優秀賞、千葉市長賞を受賞した応募作

う意思をもち、ボランティア

で、優れたアイディアやスキ

ルを提供していただいていま

す。行政機関は彼らの行為に

甘えることなく、活動しやす

い環境を提供する(データ提

供の標準化等)とともに、提

言を受け取ったのち実際の市

民向けサービスとして実現す

ることが彼らへの最大の報い

だと思います。

55■ 特集・自治体の未来を切り拓くオープンデータ