障害のある児童⽣徒・学⽣への アクセシブルな教材...
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障害のある児童⽣徒・学⽣へのアクセシブルな教材と教室環境
(合理的配慮とICT利⽤)近藤武夫
東京⼤学 先端科学技術研究センターDO-IT Japan / DO-IT Center, University of Washington
文科省「デジタル教科書」の位置づけに関する検討会議
• 検討会議における「デジタル教科書」に関する検討の視点について
– http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/attach/1365535.htm
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DO-IT Japanとは
• 多様な障害のある児童生徒のメインストリーミングとリーダー養成を目指すプロジェクト(2007〜継続中)
• テクノロジーを活用し学習・進学機会を保障
LD学習⾯の著しい困難
47万⼈ 4.5%(うち読み書き困難のみ
25万⼈ 2.4%)
ADHD
不注意の問題28万⼈ 2.7%
多動・衝動性14.6万⼈ 1.4%
⾃閉症スペクトラム
対⼈関係やこだわり等11.5万⼈ 1.1%
全国の⼩中学⽣1046万⼈のうち68万⼈:約6.5(6.3)%※括弧内は10年前の同調査結果
平成24年12月5日「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」,文部科学省 初等中等教育局 特別支援教育課
通常学級での発達障害の可能性
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撮影による記録
録音による記録
ü 教科書・書籍ü 宿題・予習・復習ü ノートを取るü 調べ学習ü ドリル・小テストü 入学・学力・資格試験
通常学級でのICTによる読み書き支援(DO-ITJapanの実践例から)
目的:以下の教育活動への参加保障
キーボード利用
書く・ノ
トを取る
音声読み上げ機能の利用
読み
ハイライト文字の拡大や変更
概念マッピングツールの利用
機能代替アプローチの必要性
• 「機能代替アプローチ」に基づくICT利用
1. 治療教育アプローチ• 通常の生徒と同じ方法で読み書き計算ができるように訓練を提
供する
2. 機能代替アプローチ• 「印刷物を読むこと」に関する機能障害のある生徒に,別の(代替
的な)手段で「読むこと」にアクセスできる方法を提供する
– 上記はぶつかり合うものではなく,相互に補い合うもの…しかし2については日本の教室では行われてきていない
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生徒自身が学びたいこと達成したい目標
扱うアクセシブルな教科書教材・オンライン教材
読む音声読み上げ機能,録音図書,電子データ
書くキーボード,音声入力,録音,カメラ
児童生徒
理解 学ぶ権利があること,合理的配慮は公平さを実現するものであること
計算する計算機,数式入力,筆算支援の使用
考えをまとめる概念マッピング,アウトラインエディタ,
代替する機能の獲得
作る非デジタル教材(アクセシブルではないもの)の電子化 説明する
自己権利擁護する
教職員や他者等
障害のある児童生徒のICT利用スキル
活用する獲得した代替機能
環境の整備
⾃⼰決定
アクセシビリティ確保が不可欠な範囲
• 学習と評価の一貫性
–検定教科書
–副読本・問題集
–その他の教材
–試験問題・解答用紙
※上記は教材アクセシビリティに限ったもの,本来はあらゆる教育活動に対して,公平な参加機会(equal access)が求められる
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アクセシビリティ確保の道具はすでに遍在する音声読み上げ,文字サイズ・背景色の調整等
AIMをアクセシビリティ機能を備えた一般製品で利用
Microsoft Word音声読み上げ用アドオン「和太鼓」・ハイライト・漢字はルビを優先読み上げ
Windows 8 音声読み上げ機能とEPUB Reader・Windows8以降は日本語音声を標準搭載
蔵書リストの閲覧
ID ID
ID
書籍のダウンロード
X
教科書データ配信クラウドシステム
利⽤者ID取得済みユーザー(東⼤先端研に利⽤者登録が必要)
その他のユーザー(蔵書リスト閲覧のみ可)
配信されるデータにはID特定可能な電⼦透かしが付与
される
EPUBDOCX
音声教科書の配布サイト(http://AccessReading.org/)
※読むことの特別⽀援を受けている(通常の教科書を読むことに障害のある)徒児童⽣徒は誰でも利⽤申請できます
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AccessReading事務局 約1日(翌営業日)
申請者により異なる
約2日
⽂部科学省データセンター
ウェブサイトからダウンロード
約1ヶ月〜 3ヶ月
約10日〜 1ヶ月
• 教科書データ(DOCX/EPUB)の製作• ウェブサイト上に配信準備
• 教科書PDFデータの準備• AccessReading事務局へ郵送
• 同意書・申立書の内容確認• 利用者登録手続き処理
• 文科省へデータ利用申請
同意書・申立書の記入と郵送
• 申請の内容確認• 同意書・申立書を利用者へ送付
ウェブサイトから申請申請者
申請者
申請者
※
製作済みの場合は即時提供可能
教科書データの製作
AccessReading事務局
AccessReading事務局
学校 保護者 が申請するor
図.Microsoft WordでAccessReadingから入手した教科書データを表示し,表示を調整したり,音声読み上げ機能で読み上げ箇所をハイライトさせながら読み上げている様子
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教育機関における合理的配慮の例
1. 試験の配慮– 別室受験,時間延長,代筆,代読,音声読み上げ,音声入力,キーボード入力の
許可
2. 記録の代替– ノートテイカーの提供,録音,撮影,パソコン利用の許可
3. 教科書・教材へのアクセシビリティ– 教科書・教材を代替フォーマット(点字,音声,拡大,電子テキストファイル等)に
変換したものを提供,字幕のないビデオ教材への字幕追加
4. 音声言語へのアクセシビリティ– 手話通訳,文字通訳(パソコン要約筆記)
5. 建物とその機能へのアクセシビリティ– 教室,寮,コンピュータ室,図書館,実験室等の部屋と設備へのアクセス保障
6. その他の支援技術による自立サポート(1〜5を技術的に支援)– 代替入力装置(特殊キーボード,特殊マウス,スイッチなど),拡大カメラ,タイマー,
耳栓,ノイズキャンセリングヘッドフォン,読み支援目的のルーラー使用,蛍光ペン,緊急避難用階段昇降器具等
障害のある児童生徒の権利保障
• 学ぶ上での機能の制限
–様々な教室で学ぶ上での機能制限とその背景
–書くこと(鉛筆で)/ 読むこと(印刷物を)
–移動すること(両足で)/ 細かい操作(指先で)
–対人コミュニケーション(対面,口頭で)etc…
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学ぶ上での機能の制限
• 例えば「鉛筆で漢字を書く」「印刷物を目で見て読む」という機能は,障害
のある生徒がその授業に参加する上で,本質的に必要不可欠な能力と
いえるか?
• 本質でないのに「他の生徒と違う」,「不公平となるかもしれない」という慣
例的・観念的な理由で,調整を行っていないのでは?(社会的障壁)
↓
• 障害のある生徒の教育の機会を奪う可能性とその回避を考慮する
• 本質以外の部分に,参加の障壁があれば,合理的配慮を考慮する
• テクノロジーによる機能代替を積極的に考慮する
ü 上記の考慮がない場合,「差別」につながる?
2011年8⽉:障害者基本法改正:合理的な配慮の登場2013年6⽉:障害者差別解消法成⽴:差別禁⽌と合理的配慮の法制化2014年1⽉:国連障害者権利条約批准:国際的障害者差別禁⽌法
障害者への差別禁⽌と合理的配慮の義務化(2016年4⽉)
就労での義務化障害者雇⽤促進法(2013年6⽉)
初等中等教育での義務化合理的配慮等環境整備検討WGまとめ
(2012年2⽉13⽇)
学びや就労の機会保障は「善意」から「法令遵守」へ
アクセシビリティへの配慮は社会的責任へ
⽂科省 対応指針「障害者差別解消法の実施に関する調査研究協⼒者会議」
⾼等教育での義務化修学⽀援検討会⼀次まとめ
(2012年12⽉25⽇)
厚労省(2015年3⽉)雇⽤促進法に基づく障害者差別禁⽌指針と合理的配慮指針
初等教育
中等教育
中等後/⾼等教育
就労段階
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障害者差別解消法の
文科省対応指針におけるICT利用
• 差別的取扱いの例
– ○試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に、当該試験等の結果を学習評価の対象から除外したり、評価において差を付けたりすること。
• 合理的配慮の例
– ○入学試験において、本人・保護者の希望、障害の状況等を踏まえ、別室での受験、試験時間の延長、点字や拡大文字、音声読み上げ機能の使用等を許可すること。
– ○点字や拡大文字、音声読み上げ機能を使用して学習する児童生徒等のために、授業で使用する教科書や資料、問題文を点訳又は拡大したものやテキストデータを事前に渡すこと。
– ○読み・書き等に困難のある児童生徒等のために、授業や試験でのタブレット端末等のICT機器使用を許可したり、筆記に代えて口頭試問による学習評価を行ったりすること。
DO-IT Japan参加者募集!
• 応募の流れ(予定)
– 2016年4月末頃 応募受付
– 2016年6月中旬頃 選考結果郵送
詳細はウェブサイトをご覧ください
2016
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教室でのICT利用は,「教えるために教師が使う道具」から
「自ら学び生きるために生徒が使う道具」へ
格差や障壁を越え,
誰もが適切な学びの機会を得て
未来に夢を描ける社会へ
情報源
• 近藤武夫(2015)障害のある学生への合理的配慮,大学時報,362,84-91.• 近藤武夫(2014)「思いやり」から「常識」へーDO-IT Japanの挑戦,知のバリアフリー,嶺重 慎・広
瀬浩二郎(編),東京大学出版会,98-101.• 近藤武夫(2012) 読み書きできない子どもの難関大学進学は可能か?中邑賢龍・福島智(編) バ
リアフリー・コンフリクト,東京大学出版会• 近藤武夫(2012)読むことに障害のある児童生徒がアクセス可能な電子教科書の利用 —日米の
現状比較を通じた今後の課題の検討—,特殊教育学研究,50(3),247-256.• DO-IT Japan:障害のある小中高校生の高等教育移行支援,大学生の就労移行支援を通じた
リーダー育成プログラム http://doit-japan.org/
• 日本学生支援機構:障害学生支援情報 http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/• GAO-10-33:HIGHER EDUCATION AND DISABILITY Education Needs a Coordinated Approach
to Improve Its Assistance to Schools in Supporting Students– http://www.gao.gov/prod ucts/ GA O-10 -33
• Higher Education Statistics Agency(2014)Statistical First Release 197: 2012/13 first year students by Disability– http://www.hesa.ac.uk/sta ts
• Questions and Answers on the Final Rule Implementing the ADA Amendments Act of 2008 (U.S. Equal Employment Opportunity Commission)– http://www.eeoc.gov/la ws/reg ulat ions /ada_qa_f ina l_rul e.cf m
• Enforcement Guidance: Reasonable Accommodation and Undue Hardship Under the Americans with Disabilities Act– http://www.eeoc.gov/po lic y/do cs/ac co mmodat ion .html